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シナリオ詳細

カオティック・エステとリラクゼーション・デイ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●練達のカオティック・エステ
 混沌世界――。
 様々な『人間』達の住む、『種族』のるつぼ。
 純種だけでも、獣種、鉄騎種、飛行種……と、様々な種族が存在し、そしてそれを超える無数の姿を持つ『旅人(ウォーカー)』の集う世界。必然、それぞれの身体的特徴――例えば、翼であったり、獣の手足であったり――という、人間種とは異なる、独特な特徴を持つものもまた、多い。
 人が人として生きてく上で、美、というものは重要である。そうでなくても、人の身体は劣化をするものであるし、そうなれば何らかの手段で補わなければならない。
 何も難しい話ではなく、例えば髪や爪が伸びれば切って長さを調節するし、単純な所で言えば、汚れれば体を洗うだろう。その程度の話だ。
 例えば、鉄騎種の多い街では、その鉄製の手足を『整える』ための何か、があるだろう。
 海種の多い場所では、その海洋生物の特徴を持つ部位を『保つ』ための何か、があるだろう。
 獣種の多い場所では、己の毛づくろいをするための何かを持つだろうし、飛行種の多い場所では翼を綺麗に保つための何か、を持つだろう。
 要するに、日常的なケア、という観点での話だ。
 人の身体は劣化する。整えなければ、獣種のふわふわの毛もごわごわするだろうし、飛行種の翼もその輝きを失うかもしれない。
 そこまでは極端だが、とにもかくにも、整える。これは美しさを保つという意味でもあるし、同時に疲れをとるという意味でもある。
 ここ迄回りくどく言ってきたが、要するに一言で言ってしまえば、『種族特徴ごとの専門サービスを行うエステもあるのでは?』という事を言いたいわけである。
 で、結論から言うと、ある。
 練達。旅人(ウォーカー)の集まる街。この街の住人は旅人(ウォーカー)がおおいわけなのだが、ウォーカーとは純種の特徴を超えるような、まさに様々な姿特徴を持つ者たちがいるわけで、そう言ったもの達に対応するため、様々な種族、旅人(ウォーカー)ならず、純種たちにも対応するような『腕』を持つ、天才的なエステティシャンたちの集まる店が、あるのだ。
 なお、カオティック・エステサロン。
 混沌世界に対応した、混沌的なエステサロンである。

「というわけで、実は営業ができなくなってしまいまして」
 と、言うのは、カオティック・エステサロンのオーナー、メイローヌである。女性、旅人(ウォーカー)。元々は現代地球(あるいはそれによく似た)世界の出身らしいが混沌にやってきて以来、様々な種族の存在するこの世界に魅了され、様々な種族に対応した、それぞれの美しさを磨く……つまりエステサロンを開こうと一念発起。こうしてお店を開き、軌道に乗せたわけである。
 メイローヌからの依頼を受けたイレギュラーズ達(そこにはハンナ・フォン・ルーデル (p3p010234)の姿もあった)は、早速店に向かう。お店は練達のビル一つを店舗とする大きな建物で、様々なエステ機械が存在する。
 で、メイローヌが言うには、この度導入した新型エステマシン、『どんな種族でも整えちゃうぞマシンXIV号くん』が故障してしまったのだという。
 ただ故障しているのなら、まあ良い。修理すればいいのである。が、このマシン、何か妙な壊れ方をしてしまった。
「マシンにはAIが搭載されているのですが、そのAIにバグがあったようで。此方の言う事をきかずに、近づくものを無理矢理癒す無差別エステマシンになってしまったのです……」
「無差別エステ……」
 ハンナが胡乱気な顔をした。
「なんだか、何とかなりそうな気もしますが……?」
「いいえ、マシンのエステは最高のもの……迂闊に近づけば癒し殺されてしまいます……」
「癒し殺されるって何ですか」
 ハンナがこめかみに手をやる。意味は分からないが、おそらくは癒しまくられて無力化されてしまう、という事なのだろう。
「とにかく、あの究極の癒しにたえるには、相当の精神力が必要だと思います。それこそ、ローレットの皆さんのような」
「なんとも、未知の事態ですが……」
 ハンナが言った。
「とにかく。マシンの妨害を退け、停止……最悪、破壊すればよいのですね?」
「はい。無事に済みましたら、皆さんに極上エステをプレゼントいたしますので!」
 そういうメイローヌに、イレギュラーズ達は頷いた。
 状況はややコミカルだが、依頼は依頼である。
「とにかく、やってみます。
 それでは、しばらくここで待っていてください」
 ハンナの言葉に、メイローヌは頷いた。そしてイレギュラーズ達は頷き合うと、最上階、スペシャルエステルーム――『どんな種族でも整えちゃうぞマシンXIV号くん』の待つ部屋へと向かう。
 だが! そこには究極の癒し天国が、イレギュラーズ達を待ち受けているのであった!!!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 皆~! 癒されたいか~!

●成功条件
 『どんな種族でも整えちゃうぞマシンXIV号くん』の停止。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 練達に存在する、『全種族対応型エステサロン、カオティック・エステサロン』。混沌に存在する、どんな種族特徴を持つものにも究極の癒しを……で知られるこのお店から依頼を受けた皆さん。
 なんでも、新導入の究極エステマシーン、『どんな種族でも整えちゃうぞマシンXIV号くん』が突如暴走。近づくものを無差別にエステして癒す、無差別エステマシンとなってしまったのです。
 それはそれで有り難いですが、しかしこのままではカオティック・エステサロンが営業できません。これは困ります。
 というわけで、皆さんの出番なわけです! この癒し天国と戦い、心を強く持ってマシンを停止するのです!
 作戦エリアは、練達はカオティック・エステサロン。何らかの行動ペナルティなどが発生する要素はありません。

●『どんな種族でも整えちゃうぞマシンXIV号くん』について
 どんな種族でも整えちゃうと豪語する究極エステマシンです。このエステマシンは、その名の通り、種族ごとに最適なエステを行い、対象を徹底的に癒します。海種の方であったら、その身体的特徴である鱗などを徹底的に優しく甘くきれいにしますし、鬼人種の人は例えば額の角などを丁寧に磨いてくれます。
 そのエステは、まさに天国のごとし。一度受ければ二度とは離れられぬ、そんな恐ろしい癒しマシーンなのです。
 というわけで、皆さんは強制的に、このエステマシーンのエステを受けることとなります。プレイングでは、主に『どのようなエステを受けたいか』を書くと、良い感じにエステしてもらえます。例えば、飛行種の方だったら、その翼をふわふわなまでに整えてくれますし、鉄機種の方でしたら、機械の手足はまるで作り立てのようにキラキラと輝き、以前よりもスムーズに動くようになるかもしれません。
 めっちゃリアクションを書いてください。ちょっとエッチな感じのリアクションもOKです。とにかく癒されて、癒されて、癒されて――まぁ、最後は何とか正気に戻って、マシンを止めてください。それがお仕事なので!
 あ、お友達と一緒に参加して、エステして差し上げるのもいいですね! マシンは空気読むタイプなので許します。むしろ手伝ってくれます。ナイスマシン。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • カオティック・エステとリラクゼーション・デイ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年09月24日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エマ(p3p000257)
こそどろ
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
鵜来巣 冥夜(p3p008218)
無限ライダー2号
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星
ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)
天空の魔王
※参加確定済み※
フロイント ハイン(p3p010570)
謳う死神

リプレイ

●突入! 癒し天国!
 さて、ここは練達、『全種族対応型エステサロン、カオティック・エステサロン』。イレギュラーズ達は、最上階、スペシャルエステルームの入り口に集まっていた。というのも、このスペシャルエステルームに設置されている『どんな種族でも整えちゃうぞマシンXIV号くん』が暴走し、無差別癒しマシンになってしまったというのだ!
「いえ、そもそも無差別エステとは……?」
 怪訝な顔をするのは、『天空の魔王』ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)である。
「相変わらずこの世界には私の知らない言葉と状況が生まれていますね……」
 嘆息してみれど、状況が変わるわけではない。世界は混沌。それは変わらず、ハンナの目の前に広がっている。
「えひひ、癒しですかぁ……」
 そう言ってみるのは『こそどろ』エマ(p3p000257)である。肩を落とし、何となくどよーんとした目をしているエマは、とても疲れ切っていた。
「いいですねいいですね……私も結構、疲れていまして。
 来る日も来る日も逃げ回り、走り回り戦う、ローレットの一員としての日常。
 私はごらんのとおりの盗賊。戦法も、些か泥臭いものばかりです。
 それに、盗賊故に脚には自信がありますから、走り回り、闇から闇へ目を凝らし、情報と命を狙い、走り、走り――。
 そのような日常に、悲鳴を上げる体に可能性をすり減らして立ち上がり、また戦場へ。
 ええ、ええ! そういうわけで、自分の身体のメンテナンスなんてまったく、手につかないわけですよ!
 そんな状況での、このお仕事! いいですね! エステ! 癒し! 私に足りなかった言葉です! えひっ、えひひひひっ!」
 実に嬉しそうなエマである。相当お疲れのようだ。
「ううむ、厳密にはエステを受ける仕事ではないのだが――」
 『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が言った。
「しかし、些か楽しみに思ってしまうのも――仕方あるまい。
 カオティック・エステサロン。名前を聞いたことがあるぞ。評判もいい。
 その施術は極上。生半可な精神では、あっと今にとろっとろのゆるふわにされてしまうであろう!
 故に――ここは、私が囮となろう!」
 ばっ! と上位を脱ぎ去る汰磨羈! そこにはエステ用の水着を着たキャットの姿があった!
「極上の癒しの評判、この身で確かめようではないか! そしてその隙をついて、装置を止めるが良い!」
「エステ受ける気満々ではないですか」
 『カチコミリーダー』鵜来巣 冥夜(p3p008218)が嘆息する。汰磨羈が、ふふ、と笑いながら視線をそらした。
「とは言え、囮……というか、何らかの対策は必要でしょう。私はあえて、エステする側に回ってみようかと思います。つまり、エステマシンの虚をつくのです」
「なるほど、一理ある」
 『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が頷いた。
「相手は高性能エステマシン。目の前でエステをしている人間がいたならば、それを手伝わずにはいられないはず!」
 そうだろうか。
「ええ、間違いなく」
 そうだろうか。
「ですが、私が女性陣に触れるのは、今一つよろしくないイメージがあります。最近はコンプライアンスなども厳しいですし、同性のエステティシャンが対応した方が、お客様も気分が良いでしょう……という事で、私はゲオルグ様を存分にエステいたします」
「えっ」
 ゲオルグが目を丸くした。
「私が?」
「はい。極上のひと時をお約束いたしましょう」
 にっこりと笑う冥夜。ゲオルグは怪訝な顔をしつつ、
「ああ、よろしく頼む……しかし、エステか。この店は美容エステと思っていたが、リラクゼーションエステなのだな」
「美容もリラクゼーションも、コースに応じて、みたいでして!」
 『ょぅι゛ょ』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)が頷く。
「美容……の方面は、ルシアまだまだ必要のない年齢だとは思いますが!
 けれど、リラクゼーションの方には興味がありまして!
 というのも、魔砲は体に負担がかかります。
 常日頃から明日のことは考えずに今日を生きたい!
 という心構えで一発一発が全身全霊で負荷のかかる魔砲を、それを何度も何度もですよ!
 魔砲をずどーんするのは楽しいのでそれ自体は特にいう事は無いのです!

 でも……。
 最近は魔力を踏み倒したり短期間に撃ちまくったりして自分の本来の限界の何倍も超えていて……。
 そのせいで今は特に身体のケアが本当に大変でして……!」
 くっ、と辛そうな顔をして見せるルシア。まぁ、実際に、その身体への負担は大きいのだろう。それに、魔砲を放つ機会とは、おおむね依頼による戦闘を介してのこととなる。そうなれば、必然的に身体への負担はさらに倍増する。
 齢10を超えたあたりとは言え、その身体にかかる負担は重い……となれば、エステは必須!
「というわけで! 覚悟は完了してきまして!」
 むふー、と水着を用意するルシア。『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)が苦笑した。
「結局、皆エステに興味津々ってかんじッスね!」
「そういうイルミナさんは、興味はないのですか?」
 と、『友人/死神』フロイント ハイン(p3p010570)が尋ねるのへ、イルミナ頷いた。
「興味がない……というわけではないッスけど。
 そもそも、イルミナは混沌世界よりもはるかに科学技術の進んだ世界からやってきた旅人(ウォーカー)!
 その技術は、練達にも劣らないと自負しているッス!
 そんな超未来技術の塊であり、精神向こうまで持っているイルミナを、そう簡単にとろとろのふわっふわに癒すことなどはできない! と断言させてもらうッスよ!」
 胸を張るイルミナに、ハインはぱちぱちと手を叩いた。
「なるほどです! 僕は秘宝種ですが、コアに関与されなければ、容れ物の身体などをいくら癒されようとも堕ちたりはしません。
 ふふ、このお仕事、僕とイルミナさんがキーパーソンと見ました!」
「皆が癒される中、イルミナとハインさんでスマートに機械を停止させるッス!」
「はい! 頑張りましょう!」
 ハインがにっこりと笑ったので、イルミナも微笑みかける。
「では、早速行きましょうか」
 ハンナが言った。
「どうやら、囮役の方も、機械停止役の方も準備万端なようですし……。
 絶対に、エステなんかには負けない、という気持ちで頑張りましょう!」
 ハンナの言葉に、仲間達は頷く。
 かくして、一行はスペシャルエステルームに突入し――。
 そのしばしの後に、とろっとろのふわっふわに癒しつくされた八人の姿をさらすことになったのである!!!

●癒し天国、また来て天国
 さて、どうして八人がとろとろのふわっふわに癒しつくされたのか――いや、もう発言という発言がフラグにしか見えなかったと思われるのでこの結果は予想通りだと思われるがさておき、とにかくどうして八人が癒しつくされたのか、それの過程を説明しよう!
「それじゃあ、最初に私が行きましょう! エステよろしくお願いしまーす!」
 と、意気揚々と出発したのはエマである。エマはすでに水着であったので、「ああ、もう陥落は見えたな……」とみんな思っていた。ちなみに、大多数のイレギュラーズが水着なので、もう陥落は目の前である。
 エステルームに入ってみれば、霧のようなものがあたりを包んでいる。エマは訝しんだ。
「妙ですね……室内に、霧?
 ……! いいえ、これは……!」
 エマは驚愕の表情を浮かべた! 室内に漂う霧! そこからは、とても良い香りがする! そう、リラックスを促すような、甘くもさわやかな香り――!
「これは! アロマッ! リラックスを促すアロマ――!」
 そう、アロマだ! 機械からもたらされるアロマが、エマの身体がから一瞬にした力を抜き取る!
「こ、こんな事が……!?」
 その反応に、エマが驚く。が、その時! その身体を何者かに拘束されるのが分かった。力強くではない、此方の体をいたわり、ゆっくりと持ち上げるそれは、アロマの力も借りて、抵抗する気力を一瞬にして奪うものだ!
「こ、これが、エステマシンですか!?」
 エマが呟くその隙にも、エステマシンはリラックスできるふわふわの椅子にエマを座らせた。これからどうなるのか……エマがごくり、とつばを飲み込んだ瞬間! 強烈な振動が、その肩を揺らした!
「えべべべべびびひひひひひひひ」
 肩たたきである! その絶妙な、痛くはなく、かといって十分な刺激をもたらす振動――同時、機械の手が、エマの脚を握った! 足つぼマッサージだ!
「あだだだだだだだだだいたたたたた」
 痛みが快感に変換される! 体の内側からほぐされる感覚! それがエマをどろどろに溶かしていく――!
「あーっ! これ無理、むりえひひひひひ」
 悲鳴が室内に響く!
「むっ! これはいかん!」
 めっちゃにっこにこで汰磨羈が叫んだ。
「エマを助けなくては! 私もいくぞー!」
 ぴょーん、ととびこむにゃんこ。数秒後、霧の中から響いたのは、汰磨羈のとろけるような声だった!
「……ほっ、ほぁぁ!? ほぐっ、ほぐれりゅっ!? ほぐれりゅぅ~ッ☆
 筋膜リリースしゅごい! しゅごいのぉ!! どりょどりょになりゅぅぅ~~~っ☆」
「た、たまきさーん! でしてー!」
 ルシアが叫ぶのへ、しかし返ってきたのはたまきちのだらしない声であった!
「ふわぁ、ふわぁあ☆ 今までで最高のブラッシングにゃぁ~~ん☆
 ヘッドスパされながら尻尾ふわふわにされるのいいのぉぉぉ!
 だめ、たまき、ダメ猫になっちゃうにゃぁ~~~ん☆
 にゃるぅ、ダメ猫ににゃるからぁ、やめにゃいでぇぇぇぇ~~~~♡」
「ダメですねこれ」
 ハンナが嘆息した。
「どうしましょうか……この状況……?」
「こうなったら、突撃でして! ルシアとハンナちゃん、二人で一気に駆け抜けましょう!」
 ルシアがそういうのへ、ハンナは頷いた。
「では……1,2の、3っ!」
 ハンナの声に従い、二人は駆けだした! が、すぐにルシアが声をあげる。
「あーっ、掴まってしまいまして~~~」
「本当ですか? わざとではないですか!?」
 ハンナが叫ぶのへ、ルシアは否定の声をあげる!
「違います! 一生懸命逃げました……ああ、あぁぁぁ……! すご、すごいぃのぉ……!
 ひあっ、あああぁぁぁ……!
 まだっ、まだぁ……! さいしょのほう、なのにぃぃぃ……!
 これすごいのぉ、ですよぉぉぉぉ……!
 でもっ、でもぉぉぉ……! まだるしあぁ、だいじょぉぶでしてぇぇぇ……♡
 なんとかっ……たえてぇ……とめるのぉですよぉぉぉ……♡
 ふああぁぁ…♡ はぁああっああぁぁぁぁぁ……♡」
「ダメですねこれ!」
 ハンナが諦めた顔をする。霧の中に目を凝らせばわかるだろう、フレキシブルなマシンハンドに体中をほぐされて、とろっとろの笑顔で椅子に腰かけるルシアの姿があることに! ハンナはそれでも、霧の中を走った――が、その肩を、マシンハンドに掴まれる!
「くっ、ですが、私はこの程度では落ちません落ちませんよ! あ、ちょ、どこ触って、んんんっ……!」
 的確に、筋肉のコリをほぐそうとする、マシンハンド! それは、ハンナの丁度硬くなっていた部分(肩甲骨の筋肉とか)を優しく撫でるようにほぐし始めた!
「んっ、だ、ダメ……そんな……くすぐらないで……!」
 マシンハンドは、ゆっくりとハンナの翼に手を伸ばす。手にはどろどろとした液体(マッサージオイル)がしたたり落ちる! それを優しく撫でまわすと、ハンナの口から嬌声が漏れた!
「んっ……っ! そんな……! 翼は、個人個人で扱いの違う部位……ましてや私のそれは飛行種とも違う! それをこのように的確に、オイルも、私の身体にあったもので……んっ、そ、そんな風に撫でられた、わたし、わたし、ダメになっちゃいます……!」
「ダメだな、これは」
 ゲオルグがそう呟く。霧の中にはとろっとろに癒されたハンナの姿があるのだろう。冥夜が頷いた。
「仕方ありませんね……ゲオルグ様、私があなたをエステします。その隙に、皆さんは突入を」
 何を言っているのか意味が解らないが、描いている方も意味が解らない。だが、これこそが起死回生の一手に間違いなかった。冥夜がぱちん、と指を鳴らすと、エステマシンが、ささっ、とエステ道具一式を用意する。サポートも一流なのである。
「さぁ、ゲオルグ様。此方に横になってください」
「あ、ああ……嫌に準備がいいな……経験者か?」
「ふふ、どうでしょうね……? さ、此方のオイルをどうぞ。アロマゼリーです」
「くっ……冷たい……だが、不思議だ、触れたところが、熱く……!?」
「特別製でね……いい香りだろ? アンタの為に選んだんだ。冷たさの中に燻る熱が、きっと身体を火照らせる。
 ハハッ、息が荒くなってるじゃないか……?」
「それは……お前が、そんな所(首の筋肉とか)、触るから」
「情けないな……すごく硬くなってるぞ(コリで)。優しく、上下に……さすってやるよ(首筋のコリを)……」
「んっ……あっ……だ、ダメだ、そ、そこは流石に際どすぎ……ひっ!?
 待ってくれ、今は依頼の最中で他にも仲間が――」
「見られてうれしいんだろ……? ああ、我慢しなくてもいいんだ……。
 ほら、気持ちイイって言えよ……!」
「ああっ、気持ち、イイ……!
 頼む……もっと……」

「ヤバいッスよ!! あっち!! 絶対カメラむけられない奴!!!」
 イルミナが叫んだ。幸い、霧の中に隠れていて詳細な描写ができなかったのが幸いである。いや、描写してもいいのだが。アロマオイル使って今、肩甲骨のあたりをほぐしてるだけだし。
「ハインさん! 突破するしかないッス! これ以上は、洗井落雲のクビが飛ぶッス!」
 イルミナがばっと振り返る! だが、そこには院の姿はなかった。
「ハイン、さん……?」
 イルミナが、霧の中に目を凝らす。うっすらと、霧の奥から、人影が見えてきた。深く椅子に腰かけた、一人の姿。それは、間違いなくハインであり、目にハートマークを浮かべ、だらしなく涎を垂らすかのような極上の表情で癒されている姿であった!
「やっ、やめ、触らないで……僕のコア、これ以上、中に入らないでぇぇぇぇぇ♡
 で、デフラグ、デフラグメーションされてるのぉぉぉ♡
 僕の、データ、再配置されてるぅぅぅぅ♡
 僕の、記憶が、最適化されてぇっ!♡
 メインルーチンとサブルーチンのコンフリクト、解消されてるの、わか、ります……!♡
 あっ、や、身体にまで影響が出てるぅ♡ アクチュエータとスタビライザー、機能向上しちゃってますぅぅ♡
 キャパシタの容量、どんどん拡張されちゃってぇ……こんなの、僕、知らないぃぃ……♡
 と、整っちゃうぅぅぅ!!!♡」
「やっば」
 イルミナの顔色が、さーっと青くなる。この機械、マシン系の方にも完全に対応しているうえに、データ補修サービスまで行っているらしい。
「だめぇ、だめなのぉぉぉぉ♡
 いらないキャッシュデータ、削除されちゃうぅぅぅぅ♡ メモリのゴミデータもすっきり空っぽにされて、頭がすっきりしゅるのぉぉぉお♡」
 どう聞いても頭がすっきりした人のセリフではないのだが、ハイン君もとろとろの顔でデフラグされているではないか!
 怯えるイルミナに。あわわ、と思わず声をあげる。このマシンは、危険だ。間違いなく。人の世に、解き放たれてはいけないものだったのだ――。
 とん、と、イルミナの肩に、マシンハンドが乗せられた。
 イルミナが、ゆっくりと、振り返る。
 ごくり、とつばを飲み込んだ。
 無数のマシンハンドが、イルミナを捕まえんとしていた――。

「あ゛ぁ゛……! こ、これは予想以上に効くッスよ……!」
 手にオイル(機械用)のまぶしてから、体中の『筋』をほぐしていく。汚れたオイルを取り払い、新しいオイルへとクレンジング。ほつれた繊維は新しい代替品へと取り換えたり修理したりして、新品同様のそれへと変わっていった。
 耳のあたりからコードが伸びて、電子頭脳のデフラグと、ゴミデータの削除を行っていた。超未来電子頭脳とて、不要なゴミデータはたまるもの。それを最適にクリーニングして、用量も確保、メモリの稼働領域も確保。いいことづくめだし、なんかこう言う絵面、とってもえっち。
「あぁ~~……これ、極楽ッスね~……」
 とろりととろけた表情で、イルミナがイスに深く腰掛ける。マシンハンドが、スムージーを入れたカップを差し出したので、イルミナがストローでそれを飲んだ。お腹の中からリフレッシュする気がした。
「はふぇぇぇ……」
 思いっきり、息を吐いた。そうすればするほど、力が抜けるような気がした。
 いまや、エステルームのあちこちから、極楽にいるかのような声が聞こえてきた。そう、此処が癒し天国である。だが、天国とは時に地獄ともいえるのではないだろうか。少なくともこのまま、イレギュラーズ達は癒し尽くされるまで放しもらえないのだ……!

 けど、まぁ、いいか、と思った。今日はこう言う日で、休日みたいなものだと思えば。
 嬌声が響く中、ばたん、とエステルームの扉が閉まる音がした――。

 この後、すっかり整ったイレギュラーズ達が、気合で移動して電源を切ったので、めでたしめでたしです。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 僕もリラクゼーションエステで肩こりとかなんとかしたいなぁ~~~~。

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