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シナリオ詳細

再現性東京202X:レジャープールと潜む夜妖

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●いつもの出だし
「レジャープールに」
 と、炎堂 焔 (p3p004727)がそう言ったので、ヴァイオレット・ホロウウォーカー (p3p007470)、小金井・正純 (p3p008000)、ジェック・アーロン (p3p004755)、コルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)、アルテミア・フィルティス (p3p001981)、リウィルディア=エスカ=ノルン (p3p006761)、ボディ・ダクレ (p3p008384)は、異口同音にこう言った。
『帰ります』
 と。
「ま、待って! 帰らないで! お仕事だよ!?」
 焔がむぅ、と頬を膨らませて言うのへ、正純は目を細めた。
「……拒否権というものがあります」
「ないよ、もう受けてきちゃったからね!」
 ブイサインをする焔。「えぇ……」とジェックが言った。
「聞いてない……いや、嘘だった。仕事があるから来てね、とは言われていたんだった……でも、どんな仕事なのかは聞いてなかった……」
 ジェックが頭を抱える。うかつだった。
「もう、ちゃんとしたお仕事だから、大丈夫だよ!」
 焔がプンプンというので、ボディが「ふむん」と唸った。
「そうですね。まずはお話を聞いてみましょう」
 ボディの言葉に、コルネリアが嫌そうな顔をする。
「絶対きかない方がいい気がするわ……」
「まぁ、まぁ。それで、お仕事とは?」
 ボディが尋ねるのへ、焔は頷く。
 なんでも――。
 希望ヶ浜のとあるレジャープールに、夜妖が現れたのだという。被害を重く見たオーナーは、希望ヶ浜学園に夜妖の討伐を依頼。それが、ローレットにも回ってきた……という形だ。
「ふむ。ふつう、ですね」
 ボディが言うのへ、アルテミアが勘のいい表情をした。
「いいえ、これからよ、ボディさん。
 焔さん、夜妖の特徴を教えてほしいのだけれど」
 アルテミアがそういうのへ、焔が頷く。
「うん! 水着の生地から体が透けかけてる女の子を見るのが大好きな夜妖だって!」
「は」
 ボディが言った。
「今なんと」
 尋ねると、焔が言った。
「うん! 水着の生地を徐々に透けさせて、そのきわどい感じの透け感を楽しむのが大好きだから、皆の水着を透けさせる夜妖だって!」
「やっぱり!!」
 ヴァイオレットが頭を抱えた。
「こういう事だと思っていました……!」
「これ以上事件の詳細をきかない方がいいわよ! 絶対どんどん条件が追加される!!
 それに、夜妖は絶対アライグマっぽいタイプの奴だわ!!」
 コルネリアがそういうのへ、焔がきょとんとした。
「詳しいね、コルネリアちゃん。経験者?」
「どうかしらねぇ!」
 コルネリアが吠える。リウィルディアが言った。
「こ、こまったね……水着を透けさせる……っていう事は、もう、水着じゃないと出てこない、みたいな夜妖なんだよね?」
「そうだね! 皆で水着を着て、流れるプールを探索するんだ!
 でも、水にぬれると水着は徐々に透けていっちゃうから、PPP倫理委員会に洗井落雲が首にされる前にていやーしないといけない奴だよ!」
「この際洗井落雲が首になってもいいんだけど」
 リウィルディアが言った。
「水着が……透けちゃうのは、勘弁してほしい、な……」
「でも、これってアレですよ。水着がある程度透けないと夜妖が出てこないタイプの依頼ですよ。ワタクシは知ってます」
 ヴァイオレットがそういうのへ、焔が頷いた。
「詳しいね、ヴァイオレットちゃん! 経験者?」
「どうでしょうねぇ!」
 ヴァイオレットが吠えた。
「所で」
 ボディが言った。
「私は男性体で行っても?」
「ダメです」
 正純が言った。
「こうなっては一蓮托生。一緒に地獄に行きましょう」
 正純がにっこりと笑ったので、ボディが身震いをした。
「……どうしたものかなー」
 ジェックが頭を抱えた。
 詰まる所、これは生き残りをかけた戦いと言ってもいい。情報を整理するならば、『夜妖は、水着の透けた女性がいないと出てこない』。これは確定だろう。どうせ情報精度はAに違いない。が、ポイントとしては、『全員』とは言われていない事だ。つまり、うまい事立ち回れば、自分の水着透けは回避できる……まぁ、露骨に回避すると、どうせ神の力で全員水着透けにされるのだろうから、ほんとうにうまい事立ち回らなければならないわけだが。
 そのことに気づいたのは、焔以外の全員だった。ちなみに焔は「どうせ全員水着透けになるのにね!」と思っている。
「とにかく、やらないといけないのは確かだよね。依頼、受けちゃったし」
 ジェックの言葉に、リウィルディアが頷いた。
「……とにかく。なるべく被害が少なくなるように、頑張ろうか」
 その言葉に、仲間達は頷く。
 かくして――レジャープールでの落とし合いが、始まる……!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 これはリクエストシナリオですので、僕の罪も帳消しになるはずです。
 それはそれとして、水着が透けてしまって「きゃー、恥ずかしい!」ってなる皆もみたいです。
 対戦、よろしくお願いいたします。

●成功条件
 夜妖をみつけてていやーする

●情報精度
 このシナリオの情報精度は炎堂 焔 (p3p004727)です。
 グッドラック。

●状況
 焔ちゃんがまた依頼を持ってきたぞ! 今度はレジャープールでの夜妖退治だ!
 いつもの奴です。レジャープールの夜妖は、『水着が透けて肌が徐々にあらわになっていく人の姿と、そのリアクションを見るのが好き』という洗井落雲みたいな夜妖です。許せないのでやっつけてください。
 当然、夜妖もそう簡単には出てきません。流れるプールに潜む奴を、巨大なビニールボート(すごい大きい。上で戦闘できるくらいに)に乗って、皆で探索してください!
 しかし、問題があります。みなさんは、水にぬれるたびに水着が徐々に透けてしまいます! なんと恐ろしい事でしょう! そういうわけで、夜妖は波を起こしてビニールボートに水しぶきをかけたり、ボートを揺らしてプールに落っことしたりします。
 この結果、ある程度水着が透けてきたら夜妖が出てくるでしょう。そこをていやーしてください。もちろん、水着を濡らさないまま、探索することも可能でしょう。その場合の難易度はVHくらいになります。頑張ってください。
 ちなみに、夜妖は素早く、見つけにくいですが、戦闘能力はないので、ていやーすれば倒せます。
 作戦エリアは、長大な流れるプール。その上に浮かんだビニールボートの上です。特にペナルティとかはありませんので、あらゆる手段を使って生き残ってください。

●エネミーデータ
 『水着が透けて肌が徐々にあらわになっていく人の姿と、そのリアクションを見るのが好き』という洗井落雲みたいな夜妖 ×7
  すばしっこく、隠れるのがうまい夜妖です。
  探すのは困難なので、いけにえを捧げて誰かの水着を透けさせ、おびき寄せて倒すのが良いでしょう。
  敵は七人います。七人は水着を透けさせる必要がありますね?
  所で皆さんは八人ですか。おっと?

●首謀者
 炎堂 焔 (p3p004727)
  「ち、違うんだよ! ボクもこんなことになるなんて思ってなかったんだよ!」って言ってます。

 それではみなさん、仲良く相談してね!

  • 再現性東京202X:レジャープールと潜む夜妖完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年09月22日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
咲き誇る菫、友に抱かれ
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤

リプレイ

●いん・ざ・れじゃーぷーる
 レジャープールに潜む、『『水着が透けて肌が徐々にあらわになっていく人の姿と、そのリアクションを見るのが好き』という洗井落雲みたいな夜妖』(七匹もいる)の討伐を依頼されたイレギュラーズ達!
「うん! 今日もいい天気だね!」
 と、にこやかに笑うのは、夜妖の首魁……じゃなくて、夜妖の協力者……じゃなくて、今回の件の首謀者……でもなくて、ええと、そう、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)ちゃんである。
「うーん、絶好の依頼日和だね! 『銀青の戦乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)ちゃん!
 狙撃の力、頼りにしてるよ! 『天空の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)ちゃん!
 貴族としての優雅な戦い方、楽しみだね! 『叡智の娘』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)ちゃん!
 ちゃんと可愛い水着も用意してあるから、恥ずかしがらないでね! 『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)ちゃん!
 もしおぼれちゃっても、皆助けるから心配しないで! 『燻る微熱』小金井・正純(p3p008000)ちゃん!
 ローレットの依頼は録画されていつでも閲覧できるから、みんなに見てもらえるね! 『紫香に包まれて』ボディ・ダクレ(p3p008384)ちゃん!
 そして『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)ちゃんはなんか水とかに強そうだよね! 期待してる!」
 と、一人一人の仲間達の顔見ながら、にこやかに笑いかけていく焔。
「くっ、ID付きで逃げ場のないように強調を……!」
 リウィルディアがそういうのへ、アルテミアは嘆息した。
「あれ、無意識にやってるから怖いのよね……」
「……地獄への道って善意で舗装されてる、っていう格言。あれ本当なんだね」
 リウィルディアが頭に手をやる。
「果たして善意なのか……このワタシでも計り知れぬところがあります。いいえ、焔様は間違いなく善意100%なのですが、なんというか……」
 ヴァイオレットがなんか遠い目をするのへ、しかしその眼が何かを捉えることはない。もしこの事態を作り上げたものがいたとしたら、それはもや神だろう。神には逆らえないなー。
「諦めましょう。こういう場合、心を無にして終わらせるのが一番、というのが経験則です」
 正純が言うのへ、ジェックが嫌そうな顔をした。
「経験がたまるほどにこんな思いを……?」
「にっこり」
 にっこり、って言いながら、正純はにっこり笑った。哀しい顔だった。
「っていうか、アタシさりげなくディスられてなかった?」
 コルネリアが小首をかしげた。
「水に……強そうに見える?」
「そうですね」
 ボディ(雛菊)が頷いた。
「ですが、海水につけてはだめですよ。浸透圧で死にます」
「アタシは淡水魚かカエルかなんかかッ!!」
 ばしん、とコルネリアが水泳キャップをボートにたたきつけた。ぐらり、とボートが揺れる。おっとと、とみんながバランスをとるのへ、コルネリアが「あっ」と言った。
「ああ、ごめんごめん。そうよね、此処ボートの上だったわね」
「おっ、コルネリアちゃん、早速やる気だね!?」
 焔がなんか嬉しそうに言った。
「やる気って何が?」
「もう、わかってるくせに!」
「……そうね。敵は七体。此方は八人。一体をおびき寄せるのに、一人がスケスケ水着になるとして……一人は生き残れる計算……!」
 アルテミアが言った。じろり、と、焔とコルネリアを覗く仲間達が、視線をぶつけ合う。ばちばちと火花が散る様な、そんな激しい熱。当然だろう。これは要するに、「上手くやったら一人は生き残れるぞ」という事なのである。
(? どうせみんな濡れるのに、なにを言ってるのかな? コルネリアちゃんだって、早速みんなで濡れようとしてるのにね! 皆で濡れた方が楽しいのに!)
 焔ちゃんは頭焔ちゃんなので、地獄にたらされた蜘蛛の糸にすがる者たちの気持ちを理解していない。何せ一番にプレイングを書き上げたような、覚悟の決まりきったような人なのである。が、されど事態を最悪の状況に持っていくのが炎堂 焔という存在なのだ。汝心せよ。地獄への道は焔ちゃんによって舗装されている。
「生き残るのは、僕だ……」
 リウィルディアが静かに呟く。その言葉は、他のメンバー(焔ちゃん以外)にとっても同じ思いだった。必ず、生きて帰る。恥ずかしい姿なんて、さらさない。そう、そういう、生への渇望、死地から絶対に帰還するぞという熱い思いが、今ここで仲間達の内に芽生えていた。
 これが「皆で協力して」とかだったら尊いが、今はみんな「如何に相手を蹴落として」と考えているので、邪悪と言えば邪悪。
「じゃ、流れるプール流しまーす」
 職員の声が響いた。同時、ビニールボートがぐらりと揺れて、少しずつ、少しずつ、進み始めた。それは徐々に、徐々に、速度を上げて、やがてプールの水流が既定の値に達したころに、ボートも最高速に達した。
「けっこう、揺れますね……」
 ヴァイオレットが言う。
「そうだね。バランスをとるのが大変そうだ」
 ジェックがそういう。
「さて、始めましょう」
 正純が言った。
「なんにしても、水着が透け……面倒くさいので、洗井落雲と呼びましょう。洗井落雲はボコボコにします」
「ええ。
 ……しかし、洗井落雲とは何なのでしょうね。概念……?」
 ボディが小首をかしげた。なんかちょいちょい、そのような概念的存在の名前を聞くような気がした。邪神の名前なのかもしれない。
「じゃあ、行くわよ、皆!」
 コルネリアがそう言った。
「さくっと終わらせて、ちゃんとした水着に着替えて遊んで帰りましょ! もちろん、アタシは絶対にぬれないけどね!!!!
 フッ――何時までも騒いでるアタシじゃないんでね。
 何回透けさせられて、何回脱がされてるとおもってんの?
 終わらせてやるのよ、脱ぎキャラ……負け風潮……泣きっ面が似合うとかいう印象を!
 そうでしょう皆、何時までも焔に巻き込まれてるだけのアタシ達じゃない、見せつけてやるのよ!
 アタシ達の強さを!」
 そう言って、コルネリアがボートの先頭に立った。びしっ、と前方を指さす。その先に、輝かしい未来があった。確かな希望があった。もう絶対に出オチはやらないぞ、ネタキャラにはならないぞ、という確固たる覚悟と決意があった。

 とりあえず、先頭に立っていて邪魔だったので、満場一致で皆は頷き合った。
「あ、ごめんなさい。弓が当たってしまいました」
 正純がそういうと、手にしていた弓を振るった。ぺちん、という音がして、コルネリアがプールに叩き落とされた。

●蜘蛛の糸に囚人たちが群がって途切れる一歩手前
「なああああああんでよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
 コルネリアがプールの中で自らの身体を抱きしめた。透けて恥ずかしい所が見えるからだ。可愛いね。
「そんな所にいたら落ちてもしょうがないでしょう」
 正純がそういう。ちなみに、おびき出された洗井落雲はすでにていやーされて流れるプールに浮かんでいた。数秒ぷかぷか浮かんでから、消える。
「わざとでしょ!? ねぇ、わざとなんでしょ!? 絶対あたしを狙っていたわよね、あの動き!」
「い~~~いえぇ? たまたま敵を狙ったら、弓の本体が当たってしまってぇ~。大きい弓ですからぁ~~」
 ぺん、と弦を引っ張ると、なんか亡者がけらけら笑ったような声が聞こえるような気がする。さておき。
「残り六体だね!」
 焔ちゃんが楽しそうに言う。楽しくはない。後六人、死んでくれ、という流れであるのだから。
「……しかし、意外とこのボート、揺れるね……!」
 リウィルディアがそういう。そう、当然ながら、水の上。不安定な足場。そういうセッティングにしたから当然なのだが、揺れる。揺れる。揺れるって事は、バランスが悪いという事で、バランスをとれなければ即ち死。それがここの掟ゾイ。
「……という事は、長期戦は不利とみた!」
 リウィルディアの貴族的脳細胞が、この時最適解をはじき出した。そう、このシナリオ、長引けば長引くほど不利。何故ならバランスをとるのに集中してしまい、他かからの攻撃に対応しきれなくなるからである。
「くっ……いくぞ!
 水面に向かってエンピリアルローサイトを撃ち込んで水飛沫を飛ばす!
 時短だ時短! 全員にかかれ!!!」
 解き放たれる、プールの水! さく裂する水しぶきが、プールの上、イレギュラーズ達に襲い掛かる!
「なんという事を……」
 ボディが声をあげた。そのまま、さっ、とリウィルディアの後ろに隠れる!!!
「ああっ、なんで!?」
「リウィルディア様なら、貴族的精神で何とか……というか、この事態はリウィルディア様のせいでは……?」
 前方で見にくい争いが繰り広げられる中、残るメンバーもまた、醜い争いを続けていた!
「くっ……このままでは全滅……! 焔様の思うがままになってしまいます!」
 ヴァイオレットが叫んだ。そう、これでは、焔の思惑通りだ! いや、違う、夜妖の思惑通りだ!
「そうね……不味い状況だわ!」
 アルテミアがヴァイオレットの後ろに隠れながら声をあげる!
「いえ、なにを当然のように後ろに隠れているのですか?」
「だって! 貴方、
 『ていうかもう手っ取り早く全員が濡れればいいんじゃないです?
 もう占うまでもなく全滅(意味深)する運命なんですから皆様大人しく水被りましょうよ。
 裸エプロンだの白ゴスだの恥ずかしい格好になるのに比べたら濡れ透けくらい何ですか(達観)』
 って言ってたから、大丈夫なのかな、って」
「言ってません~~~! プレイングにはそう書きましたが、リプレイではまだ発言してないので言ってません~~~!
 ですが、ええ、ええ。こうなったら言葉通りにして差し上げましょう! 焔様!」
「ほいきた!」
 焔がぴょん、と飛び跳ねる! 舞う水しぶき! 揺れるボート! もはやこの世は地獄の様相を呈している!
「あはは、楽しいね! 皆と遊べて嬉しいなぁ~」
 満面の笑顔で焔が笑う。この世のどんな邪神よりも邪悪な顔をしていた。
「くっ……なんという事を! コルネリアさん! 貴方もう失うものはないでしょう!? 焔さんを止めてください!」
 正純が叫ぶのへ、コルネリアが叫び返した。
「ぜってー助けないからねぇ!? まだ失うものはあるわよ! プライドとか!!」
 コルネリアが復讐とばかりに、ボートをグラグラと揺らした! さらに足場が不安定になる!
「おっと、危ない!」
 ぴょんぴょん跳びはねていた焔が、ボートから転落した! ばしゃん、と水しぶきが吹きあがる! ボートの上に残ったイレギュラーズ達の水着が、僅かに飛沫にぬれた。するとどうだろう、濡れた底が徐々に透け始め、薄い白の水着(全員白の水着を着ていることにした。今決めた)から、うっすらと肌色が透け始めたではないか! そう、直に肌を見るわけではない、この、白い水着の生地越しに見える、僅かな肌の色。それがたまらなくエロいのである!
「キッショ!!」
 天に向かってアルテミアが叫んだ。「それはご褒美です!」とつられて飛んできた洗井落雲がいたので、アルテミアは高く足を蹴り上げてそいつを迎撃、水に沈めた。残り五体。
「ま、まずい! 水にぬれたところを隠さないといけなくて、余計にバランスがとりづらく……!」
 リウィルディアが叫ぶ! そう、濡れれば濡れる程、自らの羞恥心と洗井落雲の首を守るために、大切な所を隠さなければならなくなるのである! そうなれば、バランスをとるの難しい……これは、そういう恐ろしいシナリオなのだ!
「巧妙な……後で覚えておきなさい、洗井落雲!」
 リウィルディアが声をあげた。が、既に暴れた出したボートと、舞い散る水しぶきは止まらない! それに落ちた焔ちゃんは泳げないため、ボートにしがみついてあちこちで水しぶきを立てて暴れまわっているのだ!
「焔はどっちの味方なんだ!?」
 焔ちゃんは焔ちゃんの味方である。
「焔さん! だめよ、暴れないで! 今引き上げるから……!」
 アルテミアが焔に手を伸ばした。優しさは時として罠となる。この時、どちらにも悪意はなかった。ただ、地獄への道は善意によって舗装されているだけだった。
「ありがとう、アルテミアちゃん! 遠慮なく引っ張るね!」
 がしっ、と焔がアルテミアを引っ張る! アルテミアがバランスを崩した!
「えっ、そんな急に引っ張るとがぼぼぼぼ」
 アルテミアが上半身だけ水没する! 下半身だけが水上へと突き出されたそれは、往年の名作推理小小説のワンシーンめいていた。
「アルテミアさん」
 ボディが思わず声をあげる。ヤバい絵面だった。
「危険です、そこまで来たらいっそ水没してください。下半身に水がかかると透けて危険です」
「がぼぼぼぼ」
 アルテミアが沈んでいく。ふぅ、とボディが一息ついた。洗井落雲の首が守られた。
「あのまま透けていれば」
 と、ボディの横で洗井落雲が言ったので、ボディは無言でていやーした。残り、4。
「おっと、突然波の出るコースに突入しましたね」
 棒読みでヴァイオレットがそう言いながらジャンプする。びょん、とボートが揺れた。ぽん、とボディが飛んだ。ああ、屍兵の姿であったら――そんなことを想いつつ、ボディが水没。現れた洗井落雲を、ヴァイオレットがていやーする。残り3。
「正純君! 彼女はすでに正気を失っているよ!」
「ええ、あれはPPPの焔面に堕ちたに違いありません!」
 ヴァイオレットに対峙する、リウィルディアと正純。ヴァイオレットは笑った。
「ふふふ……元よりワタクシは悪しき存在……このような場に連れてきたのが大失敗というもの……!
 さぁ、この揺れるボートの上で、いつまで生き残れますきゃんっ」
 ぴょん、とジャンプしたヴァイオレットが、つるん、と滑って水没した。洗井落雲がバシャバシャ写真を撮っていたので、正純が蹴りとばした。残り、2。
「どうやら、僕たちが決着をつける時がきたみたいだ」
「ええ……生き残れるとしたら、残りは一人。敵は二体……あれ?」
 正純が小首をかしげた。敵の数は2。此方の数は、2。計算が合わない――。
「――ふふふ」
 その時! 頭上から声が聞こえた!
「その声は――」
「ジェックさん!」
 そう! この時のために、上空で退避していた天空の勇者、ジェックである!
「見せてもらったよ、皆の醜い争いを……! アタシは、依頼が始まって即上空へと逃げた!
 相談なんかで仮プレも晒さないで置いたのはこのため!
 そう! どうせ相談卓で言っても対策されるなら! 言わないで秘密のまま実行すればいいって、アタシは学んだ!」
 ジェックが叫ぶ。そう、こうなっては、もはやだれにも手出しはできない! 流石の直接攻撃は、ハイ・ルールで御法度……なれば、このゲーム、ジェックの勝ちか!?
「なんという……どうすれば……!?
 あっ」
 呟いた刹那、波が、ボートを揺らした。正純がバランスを崩し、転落する。
「正純君!」
 リウィルディアが、駆けだす。正純の、手を引いた。
「がっ……ごふっ……!」
 激しくせき込む正純。泳げないのだ。身体がどうしても、沈む。沈んでしまう。このままでは、死につながりかねない――!
「ジェック君、手伝って!」
「正純!」
 ジェックは叫んだ。血相を変えて、ボートの上に降り立つ。正純が、その手を伸ばした。
「ジェックさん……濡れてしまいます……!」
「正純、キミの方が心配だよ……!」
 ジェックが、笑った。正純も、微笑んだ。リウィルディアもまた、微笑んでいた。友情があった。三人の、断ち切れぬ絆が、此処にあった――。
「じゃあ、皆で不幸になりましょうか」
 正純が、にっこりと笑った。そのまま、勢いよく、リウィルディアと、ジェックを、引っ張る。
「あ」
 ジェックが大きく口を開いた。
 そのまま、全員転落した。

「……」
 ジェックが、ぷい、と顔をそむけた。
「もう、そんなに怒らない下さい。騙したのは、謝りますから」
 正純が苦笑する。
 あれから、出てきた洗井落雲を全員で満足いくまでボコボコにして、その後。
 報酬でもある貸し切りのプールで、皆は思い思いに休んでいた。ちなみに水着は焔が用意していて、これはちゃんとした生地のやつだった。ヴァイオレットなどは、フリル付きの可愛い水着を用意されていて、顔を真っ赤にしながらもじもじしている。それを洗井落雲と焔ちゃんが写真撮っていた。今度現像してください。
「ほんとに、心配したんだよ?」
 そう言った、ジェックは、少し怒っている。勝ち確だったから、ではない。本当に、心配だったのだ。
「まぁ、さすがに悪乗りがすぎた気はするけど……」
 リウィルディアも反省するようにそういう。
「ふふ。でも、楽しかったでしょう?」
 正純が笑った。
「そうだね」
 ジェックは、頷いた。
 気の合う仲間達と、人目を気にせず大騒ぎ。確かに楽しかったかもしれない。そうして、思い起こしてみれば、いい思い出になりそうだ。現れた洗井落雲。透ける水着。取られた写真。映像化。依頼で報告。
「いや、ないわ」
 ジェックが言った。
 ないわ。

 完。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 写真とか動画はいつでもお待ちしています。

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