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シナリオ詳細

名残花火に思いをはせて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●過ぎゆく夏に
 俺の家では子供向けに夏になると手持ち花火を売っていた。あまり大きな店ではなく、目玉商品もない雑貨屋。こまごまとした日常に必要なものを商って日々の糧を得る。小さめの農具や工具、季節ごとの山菜や薬草、調合師から卸してもらった薬に各シーズンで必要になるもの。例えば春なら山菜を取る籠や花見用のレジャーシート、夏なら蚊よけの道具や花火、秋なら果物のジャムを作ったあと保存に使う瓶、冬ならカイロや湯たんぽ、手袋に帽子に雪除けのゴーグル。積もった雪を除雪するためのスコップなんかも。
 親父が亡くなって、母も後を追うようにこの世を去って。弟と二人、まだ小さな妹の面倒を見ながら店を切り盛りしていた。
 少しずつだが日ごとに大きくなっていく妹の成長を、弟と二人で励みにして生きてきた。妹は今年で八歳になる。油断するとあちこちに出かけて行ってしまって俺か弟が方々を探し回って一人で出かけてはいけないと叱るとしょんぼりと気落ちするけれど反省するのは数時間から数日だけ。けろりと叱られたことを忘れてまた一人で出かけて行ってしまうわんぱくぶりに、このまま元気に育ってほしいけれど人さらいにあったりしないか心配だ、なんて話をしていたら。
『お前の妹を預かった。返してほしければ有り金すべてを身代金として渡せ。店も明け渡してもらう』
 そんな脅迫状が、届いたのだった。差出人は人身売買をして汚い金を集めているとうわさの村のごろつきたちからだった。店を明け渡して有り金すべてを渡したりしたら、俺たちは妹を育てていくことはできない。報酬としていくら出せば解決してくれるかはわからないけれど俺は夜、ごろつきたちが監視していないことをよく確かめて村を出た。
 目指すはローレット。彼らの耳にこの事件が届けばきっと助けてくれるだろう。藁にもすがる思いだったがその藁は、きっと丸太より頼りになる。そう信じてひた走る。

●妹を助けて!
 八歳になる妹がさらわれた、とローレットに二十代後半の男性が駆け込んできたのは深夜になろうかというころ合い。驚いた夜勤の職員が事情を聞けばその村では人身売買や中毒性のある薬を売ったり盗んだ品物を非合法な組織に横流して金銭を得ているごろつきたちがいて、そいつらから脅迫状が届いたというのだ。
「詳しい話を聞かせてくれるかい? 大丈夫、ここのメンバーは腕利きだ。落ち着いて話してくれれば悪いようにはならないよ。情報収集は数の差を埋めるのに重要だからね」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)が椅子を引いて男性を座らせると情報を取りまとめるためにしばらく一対一で話を聞き始める。そして疲労困憊している様子の青年に少し休むように勧めると改めてイレギュラーズに向かって情報を提供するために口を開いた。
「ごろつきの数は大体二十人前後。多少増えたり減ったりしているらしいが数に物を言わせて村人たちを脅している。中毒性のあるバッドなステータスを付与しそうな怪しげな薬の売人をやったり、金目の物を買った噂とかが流れた家に強盗に入って家財道具を盗んだりする性悪だ。女子供は使い道があるからって人身売買の道具にされていて今回の依頼人の妹さんはこのケースでさらわれたらしいね。特別な戦闘訓練は受けてないけど屈強な男たちを一気に二十人も相手にする力量は村人たちにはなくて泣き寝入りするしかなかったらしい。まったく、分かりやすく典型的な悪党だな。腐りきった性根の臭いで話を聞いているだけで鼻が曲がりそうだぜ」
 自分の悪臭には気づいてないんだろうな、奴ら。とショウは実際にひどいにおいをかいだかのように鼻にしわを寄せた。
「ごろつきというより犯罪集団ですね。余罪や、人身売買のルートを確かめるために殺さず生け捕りにしてほしいところですが……お願いできますか?」
 ショウの傍らに立っていた斡旋役の職員がイレギュラーズたちに問いかける。続いてショウが放った問いは青年に向けて。
「武装なんかはしてるのかい?そいつを聞き忘れてた。どんなパラメーターがが上がりそうな武器なんだろうな、悪党っていうのは」
「皮鎧や魚鱗づくりの鎧、籠手、脛当て、それから武器はナイフだったり狩猟用の大弓だったり斧だったり片手剣だったり……銃の類は持っていなかったと思う。あとは……そうだな、火炎瓶を言うことを聞かなかった家に投げて火事を起こしたりしたこともあったから、その手のものはあるかもしれない」
「感謝するよ。小さい子をそんな場所に置いておくのはトラウマしか生まないな。早く救助してやるべきだろう。なぁ、みんな?」
「あの……それと。いつも今頃になると、花火が売れなくなって、雨で湿気る前に家族で過ぎる夏を思って売れ残った花火で遊んでたんだ。妹もそれを楽しみにしてた。多分すげぇ怖い思いをしてると思う。だからこそ、助けてくれた恩人がもう一人で出歩いたら駄目だよってさとしてくれたり、助かってよかったねって花火を一緒にやってくれたら、怖いだけの記憶が、ほんの少しだけでも和らぐんじゃないかって……」
「では依頼はごろつきの捕縛と妹さんの奪還、それから皆さんで花火、ですね。大丈夫、イレギュラーズの皆さんは腕が立ちますからきっと妹さんは無事で帰ってきますよ」
「ごろつきたちは村はずれの材木場を拠点にしてるらしい。材木なんかはもう撤去してあるけど昼でもうっそうとした林で薄暗い。突入のタイミングは任せるけど夜なら灯りがいるだろうな。朗報を待ってるよ。頼まれたからには任務を達成するために全力を尽くすのがローレットの流儀。ごろつきたちには年貢の納め時ってやつを、そろそろ誰かが教えてやらないとな」
「よろしくお願いします……っ」

GMコメント

●目標
ごろつきの捕縛、八歳の少女の奪還、売れ残りの花火で花火をしつつ少女の心のアフターケア

●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
小さな村の使われていない材木場がごろつきたちのアジトです。周りはうっそうとした林になっていてごろつきを恐れて村人たちは近寄りません。
昼でも薄暗いですが昼間突入するなら灯りは不要、夜戦を挑むなら灯りはあった方が無難です。
ごろつきたちは人身売買の商品がアジトにいる間はできるだけ固まって外食などに行かずこもっています。

●敵
ごろつきが二十人。皮や魚鱗でできた防具をまとい、粗末ながら武装しています。
戦闘については素人同然ですが村人にとっては数と、倒しきれなかった時の報復が脅威になって現在に至ります。
麻薬に似た効果を持つ薬や植物の流通ルートや人身売買のルート、非合法な市場や組織とのつながりなど余罪を白状させるためと少女が見ている現場での戦いになりますので生け捕りにしてください。
殺戮しても失敗にはなりませんが少女の心に深い傷として残ります。

●少女
今年八歳になった、雑貨屋の兄弟の年の離れた妹です。元気はつらつとしておしゃまな女の子ですがごろつきに捕らえられている今はおびえきっています。
どうせすぐ売り飛ばすのだから、と満足に飲食物を与えられておらず衰弱しています。
今の時期に毎年家族でやる「名残花火」を心待ちにしていました。
花火の時に楽しい気分にさせてあげることも今回の任務の一つです。

皆様のご参加、プレイングをお待ちしております。
戦闘パートと花火の描写があります

  • 名残花火に思いをはせて完了
  • GM名秋月雅哉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月01日 20時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)
シティー・メイド
銀(p3p005055)
ツェペシュ
津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド
陽・サン(p3p006440)
平和への祈り

リプレイ

●少女の救出作戦、開始
 八歳の幼い少女が人身売買や中毒性のある薬物の横流しなど黒い噂の絶えないごろつきたちにさらわれた、どうぞ妹を助けてほしい。依頼人は二十代後半の、少女の兄。その悲痛な叫びを拾って集ったのは八人のイレギュラーズたちだった。
 囮と陽動でごろつきたちをかく乱する前に事前の情報収集のために『永久の罪人』銀(p3p005055) と『妖精使い』エリーナ(p3p005250)はファミリア―を召喚、使役してアジトとなっているらしい材木置き場の調査を行うよう指示を出す。
 事前情報通り材木などは撤去されていて中にはごろつきが二十人、少女のほかに人質となり得る人物の存在はなく、少女のそばに見張りとして五人が待機。残りの十五人は思い思いに調達……彼らのうわさを聞く限り強奪だろうか、持ち込んだ食料や酒を飲んでいるという。
 障害物となるものは特になく、粗末なつくりのテーブルと椅子がいくつか。少女は縛られて猿轡をかまされているが目隠しはされていない。
 以上がファミリア―と五感を共有して明らかになったアジトの様子だった。
 出入り口の数は大きなシャッターが開け放たれた正面の一つだけ。普通に考えて振りを悟って逃げられることはないだろう。
 銀はその後ファミリア―を屋根の梁に移動させて人の動きを見張るように指示を出す。
 今回の作戦で彼らは人質、陽動、潜入の三班に分かれることを決めていた。可能な限り少女にこれ以上の精神的なショックや被害を出させないため、そして数の不利を補うために。
 わざと見つかり少女と接触する囮に『月影の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)、目立つ行動で敵の目を引き付ける『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)、五両の後ろでフォローをする 『静かに咲く太陽』陽・サン(p3p006440)、あとのメンバーは忍び込んで少女の救出や護衛を担当する。
(敵を倒すのも大事ですが何より優先するべきは女の子の無事。人質に取られたり戦闘を目撃することのないように)
 囮を担当する弥恵は改めて自分の目標を心に掲げる。
「この子の笑顔がこの先も曇ってしまうようなことは起こさせません」
「頼んだぜ、フォローは任せろ」
 ゴリョウに声を掛けられ頷きを返すと敵にわざと捕まるために弥恵は先行してアジトへ向かう。
「村を訪れるつもりが道に迷ってしまい……助けていただけませんか?」
 ごろつきたちは弥恵の美しさとさりげなく見えるように身に着けた宝石に目配せをしあう。道に不案内なら人質として身代金を取ることはできないが人身売買のルートに流して人稼ぎすることはできる、と下品な笑みを浮かべた。
「道を教えてやるのはいいが世の中ギブアンドテイクだぜ、別嬪さん」
「アンタみたいな美人がこんなひなびた場所に何の用だい」
 肩を抱いたり腰をなでたりと無礼千万な行いを始めるごろつきたちに弥恵は体を触られても今は我慢です、と言い聞かせて微笑みを浮かべて見せる。
 縛られないように無抵抗、無力な女を演じてふと気づいたように五人のごろつきに囲まれている少女をじっとみつめる。
 逃げて、そう言いたげな少女と目が合った。
「あぁ、夜も遅いしな。今日は泊っていけよ、別嬪さん。できればあの泣き喚いてうるさいガキの面倒を見てくれると助かるね」
「どなたかの妹さんですか?」
「預かってるのさ。俺たちの顔が怖いからか泣き叫んで往生してたところだ」
(あなた方が極悪人だということを知っているから恐怖しているのでしょうし、お兄さんがたに申し訳ないから泣いていたのでしょう。さらっておいていけしゃあしゃあと……)
 怒りをぐっとこらえて少女の近くに寄って、縛られていることに今気づきましたというように驚きの声をあげる。
「こんな小さな子を縛るなんてよくありません。ほどいてあげてください」
「暴れて自分を傷つけててな、縛っておとなしくさせてたんだ。別嬪さんがなだめてくれるならもちろんほどくとも」
 弥恵の武器は暗器のため弥恵自身が縄を切ってもよかったが男たちに囲まれている中で縄を切ってやるのは難しいと考えなおし、男たちに非難の目を向けることで少女を解放させる。
「縄で縛られたところは痛くはありませんか?」
「ぅ……」
 目に一杯の涙を浮かべた少女をそっと抱きしめる。これからおこる戦いから目と耳をふさぐためと安心させてやるためだ。ごろつきたちに聞こえないようにもう大丈夫ですよ、助けに来ました、と耳打ちすると少女はぎゅっと弥恵にしがみついてきた。
 『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が作成したアジトの地図を見て次に潜入するのは陽動役のゴリョウとサン。
「誰も未だ死なず。この幸運は彼らにはわからないか。いいわ、教えてあげる。神がそれを望まれる。ゴリョウ、任せたわよ」
「あぁ、派手に引き付けてやるぜ」
 全身鎧に身を固めたゴリョウと、極力目立たないように彼の後ろをついていくサンにごろつきたちは弥恵の登場とは真逆の、つまり全力の警戒を見せた。
「無辜の民を脅かすクソ野郎ども! この俺が成敗してやるからかかってきやがれぇッ!」
 あくまでゴリョウとサンの役割は陽動で弥恵や少女からごろつきたちを引き離し、一か所にまとめることなので派手に名乗りを上げて意識を引き付ける。
 袋叩きにされることを前提にした作戦なので防御重視に切り替えて高い意識で万全の態勢を築いたゴリョウをごろつきたちが取り囲んだ。
「一人でこの人数を相手にできると思ってるのか? オタク頭おかしいんじゃねぇの?」
「おい、やっちまえ!」
 粗末な武装で襲い掛かるごろつきたち。万が一ゴリョウがごろつきたちを突破することを警戒してか五人中三人のごろつきたちはまだ少女と弥恵のそばだ。
 狩猟用の弓を持った三人が弥恵たちのそばから弓を構えるが入り乱れていてうまく狙いが定まらないことを知るといつでも射ることができるように弓を構えて待機する。
「なんだ、こいつ!? ナイフが通らねぇ!」
「こっちもだ! どうなってやがる!?」
「おいおいその程度で俺を倒そうなんざ片腹痛いぜ! あと十人連れて来いやぁ!」
 カンテラを敵方向に向け照らしてサンの存在を巧妙に隠し、サンが回復効果のある薬でゴリョウを回復させればそれが確かに聞いたことを知らせるために、そしてごろつきたちに自分はまだまだ健在であると知らせるために喝を入れる。
 そのうち数の多さを有利に背後に回り込もうとしたごろつきがついにサンの存在に気づいてもう一人いるぞ、と叫び声をあげた。
「ゴリョウさん、ここからは私も攻撃に出ます」
 衝撃を与えて近づいてきたごろつきを吹き飛ばしながらサンがゴリョウに声をかけるとゴリョウもそれに応じた。
 騒ぎが大きくなってきたころ合いを見計らって潜入した『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が怒りに髪の毛を炎のように揺らめかせながら自立式の爆弾を使い数人を爆発させた。
 余罪の追及のためと少女に死体をみせないために全員が不殺を心掛けているがだからといって容赦はしないのがイレギュラー流。
「大人しく投降するならば、良し。武器を取るならば、腕ごと折ることになるぞ?」
「くそ、はめられたのか!? 気をつけろ、こいつら無抵抗な奴等とは違うぞ!」
『シティー・メイド』アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)が混乱に乗じて少女と弥恵のもとに近づき確保、少女の護衛を担当する。
 そばにいた三人のごろつきは殴りかかってきた相手の力と己の膂力で強力なカウンターを用いて牽制し、それでもあらがってきた相手には組技を使って無力化する。
「少し物騒な音が響きますから、しっかり目を閉じて、耳をふさいでいてください。私たちはローレットに所属するイレギュラーズ。貴女のお兄さんに頼まれて助けにきました」
「お兄ちゃんに……?」
「はい、だから大丈夫ですよ。あなたのことはわたくしたちが守ります」
「ん……私にできることがあったら、協力するから教えてほしいの」
「いい子ですね。怖いかもしれませんができるだけ騒がずじっとしていてください。大丈夫、すぐに終わります」
「俺の目から逃れられると思うなよ……外道ども」
 それぞれの班の突入のタイミングを計り合図を出した後自身も戦闘に参加した銀のすごみにごろつきたちが身構える。
 銀はダメージを与えるというよりは威嚇を中心に立ち回り、そんな自分を牧羊犬のようだ、と内心で思うのだった。
 鳥の姿を取っていたエリーナのファミリア―が上空からの情報を彼女に伝え、エリーナ自身は威嚇術をつかって殺傷性の低い攻撃を弱っている敵に放つ。
「あの女が何かしてるぞ! 集中的に狙え! こうなったら一人でも多く道連にしてやる!」
 ファミリア―を使役しているエリーナにごろつきの一人が目ざとく気づき総出で攻撃に出る。
「……っ、ただのごろつきでも数が集まればそれは侮れない暴力になりますか」
 自分が倒れる場所を少女に見せてはいけない。少女が倒されてはいけない。少女を護る二人が自分を倒したことによって調子づいたごろつきに害されてはいけない。そんな強い決意が奇跡を呼び起こす。
 崩れ落ちかけた体を立て直し、エリーナは毅然とした目でごろつきたちをにらみつけた。
「貴方たちに、私たちは負けません」
「これはさっき体を触られた腹いせです。あぁ、まったく。不愉快極まりありませんでしたよ?」
 エリーナの反撃と、それをサポートする弥恵が髪をなびかせ狂熱的なダンスでごろつきたちの運命を翻弄するとそれが戦闘の幕引きとなった。
 捕縛していなかった残りのメンバーを全員捕縛し、司法機関に連れていく前にあと一仕事。
『妹が楽しみにしていた名残花火を一緒にやって、危ないことはしたら駄目だと注意してほしい』
 そんな兄の思いやりをかなえるためにイレギュラーズたちは少女を連れて兄弟のもとへと向かったのだった。

 エクスマリアは少女と外見的には同年代のため心を開いてくれるかもしれない、とリズムよく髪を波打たせながら一緒に花火をしている。
 彼女の動く髪に少女は興味津々ながらも今は花火にも集中したい。そんなそわそわした様子を見て兄二人とイレギュラーズたちは心に傷は追わせずに済んだらしい、と一安心。
「今後は独り歩きは控えるべきだが……怖かっただろうに、よく耐えたな。気に入っている花火はあるか? マリアは、線香花火というのが気に入った」
「私はね、これが好き。お母さんが好きだったの。……お兄ちゃんたちがどうして一人で出歩かないかっていうのか、今回のことでようやくわかった……心配かけてごめんなさい。助けてくれてありがとう」
「ん、反省できるのはいい子の証拠だ」
「貴方がもし、本当にごめんなさいって思うなら。一日一つ家の手伝いをなさい」
 イーリンの提案に少女はしばらくまじめに考えこみ。
「それじゃあ、ご飯の後の洗いもの、手伝う。お料理はまだ日が危ないからダメって言われてるし……」
「そう。ならこれはお土産。それとこれは怖いのを頑張って耐えたご褒美」
 片手花火を幾本かまとめてもって演舞で魅せると少女は歓声を上げた。お土産というのはジャーキーのことのようだ。
 花火が終わるとイーリンは兄二人に作戦で使った地図を示しながら材木置き場が今度は別のごろつきのアジトに使われるかもしれないから、村人と相談して有効利用した方がいいのではないか、と提案する。
「結構広い場所だったし、公民館とか子供の室内遊技場とか。そういうふうに定期的に人が入る場所に作り替えれば、たまり場にはされないと思うのよ」
「わかりました、相談してみます。アフターケアまでありがとうございます」
「神がそれを望まれたから、私はそれをしたまでよ」
 ゴリョウは浴衣に着替えてサンの料理の下ごしらえを手伝った後少女を肩車。
「ぶはは、危ないことはもうしたら駄目だぜ、身に染みただろうがな!」
 肩車されている少女としているゴリョウが同時に花火に火をつけると段差のある滝のように光の火花が散ったのだった。
 救助の後にアーデルトラウトは簡単な食事をとらせていたが育ち盛りの子供がそれでは足りないだろう、とサンは台所を借りて料理を作っている。
 サンは料理を作り終えた後配膳を任せて自分のギフトでローズの香りを作成して少女に話しかけた。
「どうです? 少しは落ち着きましたか? この香りは緊張をほぐす効果がありますので、少しは楽になるでしょう」
 力の弱い自分にできる、心と体への癒しだと微笑むサンに少女はお料理美味しそうだね、と笑顔でお礼を言ったのだった。
 エリーナもつギフトで呼び出された妖精が少女の周りで踊るのを見ながら銀はあまり気の利いたことをできそうにないので、とそれっぽく格好をつけて用意された食事やお茶、お菓子を配膳する。
「お菓子の用意ができましたよ、お嬢様……こちらへどうぞ」
「ありがとう! お姫様になったみたい!」
 もともとおしゃまな女の子ということだったしお嬢様扱いはお気に召したらしく満面の笑顔だ。
 それを見ながら弥恵は舞を披露する。喜ぶ少女の声と声は舞姫にとって最高の音楽。楽しんでもらえてよかった、と微笑む姿は文句なしに美しい。
 メイドに憧れるアーデルトラウトは配膳の済んだ料理の給仕をしながら花火を楽しむ人々の姿に目を細めている。
「今日も社会のごみを掃除する、街の掃除屋……シティー・メイドとしての役割を果たせましたね」
 そうしてひとしきり名残花火を楽しんだ後はイレギュラーズたちは司法機関にごろつきたちを引き渡すために村を後にしたのだった。
「ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん、私、これからはいい子にするからね!」
「妹を助けてくださってありがとうございました」
「村の人たちもこれで安心できます。本当にありがとう!」
 三兄妹のお礼の声は、いつまでもいつまでも響いていた。

成否

成功

MVP

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド

状態異常

なし

あとがき

いつもはできるだけすぐの納品を心掛けているのですが今回少し通信とキーボードの調子が悪くお待たせしてしまいました。
きっちりとたてられた作戦に少女の心のアフターケア、きっと怖い思いもしたけれど少女にとってあこがれの存在となったことと思います。
ご参加ありがとうございました。

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