シナリオ詳細
<竜想エリタージュ>アレクサンダー・スターミュージー
オープニング
●
ネオンサインが流れて行く。
看板の文字は寿司、天ぷら、実際美味い、品質重点といった賑やかなものばかりだ。
ピンクやパープルの歓楽街を思わせる色合いであることを除けば、シレンツィオ二番街の庶民的なストリートとそうかわらない。
たしか、薄暗い海底を明るく照らし、遠くまで光が見えるようにとこうしたネオンサインが用いられているらしい。
そんな場所を走り抜けると、まるで世界が高速で移り変わっていくような気持ちになれる。
ランナーズハイもあってか、シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)はうっかりそんなことを考え――。
「お嬢ォさんンンンンンンンッ!」
後ろからサンマ頭のバーテンが猛スピードで追っかけてきている事実を思い出して悲鳴をあげた。
すらりとした細身。背が高く脚も長い。そんな肉体から繰り出される脚力たるや凄まじく、陸上短距離走選手のごときシャープなフォームでこの竜宮城ケルネ通りを駆け抜けるのである。
そのサンマそのものといった頭をふり、長いサンマの尾を靡かせて。
さしものシフォリィも逃げ切れぬと察し足を止めたところに、サンマ頭のバーテンはぽんと肩を掴んで……こう言った。
「ハンカチ、落としましたよ」
「……えっ?」
それが、ケルネ通りのダンディバーテンダーことアレクサンダー・スターミュージーとの出会いであった。
●
「あのときは必死に逃げてしまって……」
「フッ、もう昔の話ですよ」
数日前のことでありながら既に飲み込みきっているという様子のこの男、アレクサンダーは見たとおりのバーテンであり、『バー・ヴィージア』のマスターでもある。
彼は手際よくカクテルを作ると、グラスに注いでシフォリィへと差し出してくる。
ダンディな声と落ち着いた物腰、そしてすらりとした身体は老若男女を魅了し、若い頃はさぞかしモテたろうと言われるディープシー……なのだが、首から上がサンマなのでその感覚がよくふっとぶ。
「そちらは、噂に聞くローレットの方々……ですか? 結構」
シフォリィの横に、あるいはテーブル席に座るイレギュラーズを見て、アレクサンダーはそれぞれの注文するドリンクを差し出していく。
ジャズの流れる店内にはほんのりとコーヒーの香りが残り、ネオン輝く賑やかな竜宮にあって一風変わった落ち着きのある空間が演出されている。
「皆様に、今回は依頼したい件が御座います。報酬は……そうですね、ケルネ通りをご案内して差し上げるというのは、いかがでしょうか?」
依頼内容というのはそれほど複雑な話ではない。
昨今竜宮城は深怪魔の脅威にさらされ、先日ローレット・イレギュラーズの支援もあって難を逃れたものの未だに攻撃は続いている。
近郊の深怪魔退治は急務といって差し支えないだろう。
「たしかこの種は……『エバーシルバー』と『フォアレスター』でしたっけ」
シフォリィがスケッチを見ながらグラスを置く。
リュウグウノツカイに似たフォルムの怪物と、半魚人めいた怪物たちだ。
前者はタンクヒーラーとも言うべき性質を持ち、後者は武器を持ちかえることで汎用性を発揮する種だ。今回は水中でも使える魔術式のフリントロックピストルとサーベルを装備している。
「見たところ、エバーシルバーを盾にしながら後衛から集中攻撃を浴びせる戦法をとってきそうですね。よしんばエバーシルバーを抜けたとしても、サーベルとピストルの攻撃カバー範囲は広いですから、いずれにせよ集中攻撃は免れないでしょう。
フォアレスターを蹴散らそうにも、エバーシルバーの治癒力があればかなり持ちこたえるでしょうし……一筋縄では攻略できなさそうですね」
「その通り。流石です」
アレクサンダーはそう言うが、心配している様子は全くなかった。
「お任せしても?」
「はい、大丈夫です。私達なら問題無く倒せるでしょう」
気になるのはむしろ、そのあとだ。
竜宮城のケルネ通りを案内してくれるとのことだ。
ネオン輝くケルネ通りは、中央通りのようなバニークラブでいっぱいの場所とは雰囲気が異なり、飲食店や宿泊施設といった生活感のある店舗が並んでいるのだ。
アレクサンダーが報酬代わりにと言っているように、多少高級な店も彼が報酬として奢ってくれることだろう。
この機に、竜宮グルメツアーとしゃれ込んでみるのも悪くない筈だ
「どんな店で楽しみたいか、リクエストを考えておいて下さい。良い店を紹介しますよ」
- <竜想エリタージュ>アレクサンダー・スターミュージー完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年09月05日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
カララン――というウェルカムベルの音と共に、まろやかなコーヒーの香りがした。
つやのある木製の扉からもわかる通りに、ここ『バー・ヴィージア』は上品なバーだ。
カウンター席についた『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)の前に、銀色のドリンクにチェリーののったカクテルが差し出される。
「これは?」
「名前は御座いません。強いて名を付けるなら……『シフォリィネージュ』でしょうか」
自分をイメージしたカクテルを出された経験が――まあないわけではないが、シフォリィはほっこりと笑ってグラスを手に取った。
「もう楽しんでるみたいだな、シフォリィ。マスター、俺にも一杯もらえるかい」
ドアから入ってきた『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)はカウンター席につくと、あえて具体的な名前を出さずに注文をした。
彼らの前に立っているのは壮年の男性。細身で低く渋い声をした、バーのマスターになるべくしてなったような、実に上品な人物だ。首から上がおもいっきりサンマであることを除いて。
「どうぞ、十夜様」
青いドリンクがグラスの中でゆっくり黒い液体と混ざり合う、不思議なカクテルだ。
十夜は苦笑し、グラスをてにとる。自分もこういうとき、『苦笑』できるようになったのだな……などと思いつつ。
「確かにいい店だ。深怪魔連中のゴタゴタが片付いたら、時々通わせて貰いたいモンだな」
「そうでしょう? 出会いは色々とあれでしたが……アレクサンダーさんがこちらを頼ってきてくれた以上は応えたいところですね」
「それも同感だ」
ややあって、扉が再び開きベルがなった。
「お、バーってやつか。竜宮城にも色んな場所があるんだなぁ……」
『金剛不壊の華』型破 命(p3p009483)は入るなり店の中を見回した。
カウンターや僅かなテーブル席もさることながら、家具類が落ち着きながらも高級感を放っている。
命にはよくわからないが、アンティークかなにかだろう……と頭の中で片付けた。
なにより店全体から落ち着いた大人の雰囲気がただようのだ。
イカした大人というのはこういう場所に通うのだろう……などと。
「バニー……って文化はいまいち馴染みがないが、困ってる人は普通に放ってはおけねぇよな。アンタも、その依頼で己れ達を呼んだんだろう?」
命の問いかけに、マスターのアレクサンダーは『はい』と短く答えた。
すると――。
「メイさん、ゼフィラさん! この店だ!」
扉が閉まるよりも早く、『ドキドキの躍動』エドワード・S・アリゼ(p3p009403)が店に入ってきた。
なんとも元気の良い少年である。バーにやってくるには若そうに見えるが、アレクサンダーが難色を示す様子はない。
「いらっしゃいませ。エドワード様に、メイ様――」
「はーい!」
エドワードの後ろから顔を出す『大艦巨砲なピーターパン』メイ・ノファーマ(p3p009486)。
「深怪魔たおして、それから観光なんだよね! すごいね、ケルネ通り! いろんなお店があったよ!」
「竜宮城は外界から隔絶された海底都市だと聞いていたけれど……やけにオープンな雰囲気だね」
「それがこの都市の伝統なのですよ。私が産まれるより、ずっと前からのね」
アレクサンダーの口調はやはりどこまでも落ち着いたものだ。
ゼフィラは『興味深い』と呟き、テーブル席へと腰掛ける。
「私としては良い機会だ。竜宮城に来るのは初めてだし、通りを案内してもらおうかな。
ふふっ、未知の土地を見て回る機会は貴重だし、今日は目一杯この竜宮城を楽しもう」
「あれ、もう揃ってるのか?」
暫くそうして楽しんでいると、『ゴミ山の英雄』サンディ・カルタ(p3p000438)と『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)が店に入ってきた。
貴道は店内を一通り眺めたあと、ふむと小さく唸った。
「いい店だな。ミーにはもっと、いかにもな居酒屋が性に合うんだが……あとでここへ戻ってくるのも悪くなさそうだぜ」
「おいおい観光に来たわけじゃ……あるけどさ、先に深怪魔退治だろ?」
サンディが武器をぽんぽんと叩くと、貴道は自らの拳をぽんと叩いて笑った。
「当然」
獰猛に笑う貴道。どうやらこう見えて、既に臨戦態勢であったらしい。サンディは笑みを返し、きびすをかえす。
「OK。それじゃあ皆揃ったことだし、早速行くか!」
●
今回討伐対象となっているのはエバーシルバーとフォアレスター。
半壊した海底遺跡が戦いの舞台となるらしい。
「エバーシルバーっていうのは、確かタンクヒーラー型の深怪魔だったよな」
大きな亀が巨大な貝殻をひくという海底独特の馬車的乗り物、通称『亀引舟』の中で、サンディは手帳を開いて情報を確認していた。
「エバーシルバーから先に倒す作戦……でいいのか? 俺は防御が堅くても強引に防御の隙を突けるけど……タンクヒーラーってのは落としづらいことで有名だからな。
下手すると滅茶苦茶粘られるぞ?」
貴道がHAHAHAと笑った。
「かもな。幸い今日のメンツは相手の防御を崩したり通り抜けたりするのに適してる。仮にエバーシルバーが結界を張ってもミーの拳でぶち壊せるぜ」
『ヒーラーから倒す』を常識としてとらえすぎると、『堅すぎるヒーラーに手子摺ってる間にこちらが落とされる』という事態に転ぶことがある。
実際問題、ローレットには『いっそ放っておいたほうが効率的』なタンクヒーラーは山ほど居るものだ。
もしエバーシルバーを素早く倒す手段がないなら、エバーシルバーに高い攻撃性能がない弱点をついてフォアレスターを一人ずつキルしていくという戦術が、ここではとられることになるだろう。いくら回復能力が高くても殺してしまえば回復しないのだ。その点フォアレスターはあまりタフという情報をきかないので、火力を集中しさえすれば突破は可能だろう。
……そういう意味で、今回は味方の高スペックをふんだんにつかった贅沢な作戦と言えた。
「懸念は、複数いるエバーシルバーが一体を倒す間に回復を重ねて粘ってしまうことですが、火力をできるだけ集中させれば解決できるでしょう」
シフォリィは剣に手をかける。先ほど贅沢な作戦といったが、全員が全員高防御高治癒のユニットを突破する能力を有しているというケースは稀である。
それに、フォアレスターたちが庇いに入ることで復旧されてはたまらない。極最小の人数でフォアレスターを引きつけることも必要になるだろう。
十夜が首をこきりとならす。
「ま、フォアレスターの相手はいざとなったら俺がやっておくかね。一応は、フォアレスターに【怒り】を付与すんのが俺の仕事だ。あんまり抵抗されると面倒だけどな……」
「あー、つまり【感電】させときゃいいってことか?」
命が雷の術をすぐに仕えるように札を懐から取り出した。
「だな! 抵抗を下げといてくれればオレの挑発も通りやすくなるし」
エドワードがシュッシュとボクシングみたいな構えをとる。
「ね、ゼフィラおねーさん。一緒に撃とうね。ボク、これでどーんってやるから!」
メイはビーチパラソルレーザーを抱えてぺちぺち叩いて見せた。
このおニューかつ夏らしい武器がおおいに気に入っているらしい。
ゼフィラは『ああ』といって頷く。義手の操作パネルを開いて微調整をかけていたようだが、全てすんだらしくパタンと閉じる。
「一応治癒魔法の準備はしておくけれど、『エバーシルバー1個体を1ターンで倒しきる』ことが成功の要だ。できるだけ攻撃にリソースを割くつもりだ。余計な一撃になりそうだと判断したら、フォアレスターからのダメージを治癒する側に回ろう」
よし、と命は両手で自分の頬を叩いて気合いを入れると亀引舟から飛び出した。
●
さあ、準備は充分整った。敵の情報は完璧。スキルの備えは充分。レベルもバッチリ足りている。
こうなれば――。
「サンディ、オレと拳を合わせてくれ!!」
「いいぜ! やっぱ出来る後輩は違うな!」
エドワードは拳を握って防御姿勢。フォアレスターたちによる集中砲火を一人で受けると、その横を駆け抜けるサンディとごつんと拳を打ち合わせた。
パワーをわけてもらったサンディはエバーシルバーめがけて突進。トランプナイフを鋭く構え、防御を固めようとしているエバーシルバーのボディに鋭く斬り込んだ。
吹き上がり、広がる血。これ以上ダメージをうけては困るとばかりにエバーシルバーが物理攻撃を無効化するバリアを展開するが、貴道はそんなものは意に介さないとばかりにバリアごとストレートなパンチを打ち込んでいく。
普通壁を殴れば壁に拳が止められ、よしんば壊せても拳がめり込む程度だろう。しかし力も技もその肉体構造すらも鍛え抜いた極限のボクサーである貴道は、(あるいは元世界におけるマスタークラスの武力をとりもどしつつある彼は)バリアを破壊しそのままエバーシルバーの頭部を破壊。粉砕する。
「HAHAHA!」
そうしている間にも十夜はエバーシルバーたちを引きつけにかかる。相手も(異常状態で動けなくなるのはヒーラーとして致命的なのもあってか)抵抗を高めにとっていたようだが……命がここぞとばかりに投げた札が起動。雷の術が辺り一面を多い、エバーシルバーの抵抗力を無理矢理低下させていた。
十夜はコォンと小気味よく刀を近くの石柱にぶつけて音を出し、それにうっかり気を取られたエバーシルバーめがけ――。
「ゼフィラおねーさん、せーの!」
ゼフィラとメイが同時に構え、発射。
メイの綺麗なパラソルの表面に螺旋状のエネルギーラインが描かれ、戦端に集まり膨らんだ光が耐えきれぬとばかりに発射される。
同時に、ゼフィラも両手の義手を突き出すように構え、両手を組む。リンクした両手首にエメラルドグリーンの光があつまったかと思うと、まるで大砲のように光をエバーシルバーめがけて発射した。
合わさった二つの光はまるで夏のカクテルのように色をまぜあわせ、エバーシルバーに着弾したと同時に光の中に包み込んでいく。
「これで最後です。深海魔は共通の敵、存分に倒させていただきます!」
シフォリィはドルフィンキックで加速すると、自らを回復してしのごうとするエバーシルバーの首を刺突剣によって素早く貫いた。
剣から伝わる凍てつく波動がエバーシルバーを包み込み、ばきんと音をたて頭部を破砕した。
そして、ちらりとフォアレスターたちを見る。
もはや消化試合に過ぎぬとばかりに。
●
「観光だーーーーーーー!」
わーーーーい!
メイは羽でも生えたかのように跳びはね、ケルネ通りの規則正しく並んだタイルの道をスキップしていく。
その後ろをエドワードとゼフィラが微笑ましい様子でついていく、といった具合だ。
「ね、うさみみ屋さんがあるよ! エドワードくん、ゼフィラおねーさん!」
メイが指さしたさきを見てみると、確かに『うさみみ屋』という看板がある。ウサギの横顔めいたシルエットが描かれ、ネオンサインのキラキラした感じとは裏腹になんだかシックでオシャレな雰囲気だ。
「ね、ね、入ってみよ!」
「郷に入っては郷に従えってやつか……」
エドワードが入ってみると、多種多様なバニースーツやつけうさ耳が並び、中にはシルクハットと一緒になった耳やバレエダンサーのような綺麗なレオタード風のスーツも並んでいる。
「そーいやここって、頭にこういうの付けてる人が多いよなー。ウサギ好きなのか?」
「バニーガールを好きな人間はウサギはそれほど好きじゃないかもしれないな」
「そうなのかあ?」
小首をかしげるエドワード。シルクハットタイプのうさみみを手に取り、被ってみせる。
「どう、似合ってる?」
「ボクもボクも! どう!?」
メイはオーソドックスなうさ耳カチューシャを装着し、両手を頭にやってうさうさしていた。
「ん、二人とも似合ってるじゃないか」
くすくすと笑うゼフィラ。折角だからとゼフィラもうさみみを装着してみた。
機能性に富んだうさ耳型アンテナ……とはまた違う、非常にファッショナブルなうさみみだ。
ゼフィラは気付くとオシャレでセクシーな服装を更新しているオトナな女性なのだが、今日はだいぶ可愛らしい路線にふったらしい。エドワードたちに付き合ってのことだろうか。
「あとは食事だね。折角だし、現地の美味しい店を紹介してもらおう。個人的にはコーヒーが飲める所が良いな」
「食べ物はやっぱ海物が多いのかな、いろいろ食べ歩きしたいぜ!」
一方こちらは命と貴道。
「なんだかんだ、食うのは好きだからなぁ。お、これ美味そうだ。ひとつくれねぇかい?」
露店というかテイクアウト専門の店の前に立ち、命は店主のメンダコに金を渡した。
返ってきたのはまさかのたこ焼きであり、看板をみると『めんてんやき』と書いてあった。
タコがたこ焼き売ってるとかすごいブラックなジョークなのだが、どうやらここではフツーにやるらしい。
「しっかし食い物屋が滅茶苦茶あるな」
「歌舞伎町……いや道頓堀を思い出すぜ」
貴道はHAHAHAと笑いながらネオン看板を端から眺める。
「どうだ、あそこの居酒屋に行ってみるか?」
「あんこう鍋がメインの店か。よさそうだなあ」
「食い物と酒があれば満足だ、美味いもんを頼むぜ! HAHAHA!」
二人は肩を組み、居酒屋へと入っていった。
バー・ヴィージアでは三人の男女――十夜、シフォリィ、サンディがカウンター席でまったりとした時間をすごしていた。
「なあ、アレクサンダーってバーテンなんだろ? バーテンってのは、あれよな、なんていうか……いろいろ知っててモテる職業」
「皆さんよくそう仰いますね」
はははとアレクサンダーは笑ってこたえた。遠回しにノーと言ったのだが、アレクサンダーがモテること自体は事実らしくあながちノーとも言い切れない、ということらしい。
「この辺でデートとかに使えそうな店とかさ、女の子の間で話題の店とかねーのか?」
「沢山御座いますよ。裏通りのボーリング場やバッティングセンターは人気ですね」
「女の子に!?」
サンディは思わず顔を上げて問い返すが、よく考えると竜宮はかなり男女比が女に偏っている都市に見える。女性社会になるとそういった運動するタイプの娯楽施設が人気になるのだろうか。
「他でしたら、スイーツバイキングなどどうでしょうか」
「それはちょっと行ってみたいですねえ」
シフォリィがやや身を乗り出す。戦闘時と違って今は青いドレス姿だ。社交場にいるような、非常に上品な格好である。
グラスの中の氷がとけ、からんと音を立てた。
「十夜さんは行かないんですか? 他のお店に」
「生憎とおっさんはもうへとへとなんでな。これ以上歩き回る体力は残ってなさそうだ」
十夜は冗談めかして両手をあげて降参のポーズをとってみせると、苦笑してカウンターのグラスに手をかける。
「折角だ、マスターも一杯付き合ってくれや」
「それではお言葉に甘えて」
アレクサンダーはグラスになぜだかキラキラしたドリンクを注ぐと、そこに煮干しめいた物体をスッと刺した。
ファジーネーブルみてーに自然にさしたもんだから二度見したが、どうやら間違いじゃないらしい。
「スターゲイジーカクテル……裏メニューなのですよ」
アレクサンダーはそれに口をつけると、気分がのってきたのか部屋の角においてあるサックスに目をやった。
「マスター、一曲お願いしても?」
シフォリィのリクエストに、アレクサンダーは快く頷いた。
バーにサックスの演奏が響く。
心地よい夜が、続いていく……。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●オーダー
このシナリオは戦闘パートと観光パートに分かれます
戦闘パートで深怪魔を倒し、観光パートでグルメツアーを楽しんで下さい。
●戦闘パート
深怪魔との戦闘です。
竜宮城郊外にある海底遺跡を舞台とします。
石柱のようなものが乱雑にならぶエリアです。
・エバーシルバー×複数
リュウグウノツカイ型の深海魔です。銀色に光る魔法を放ち、味方の治癒や自身の防御を行います。HPやAPを回復する魔法や、自身の防御・抵抗・最大HPをアップさせる魔法を使うほか、カウンター瞬付による【物無】のバリアを自身に付与することがあります。
・フォアレスター×複数
半魚人型深海魔です。首から上に魚がまるごと乗っているような造形をしており、人間と同じく武器をもって戦います。
武装は主にピストルとサーベル。オールレンジに対応し味方と連携した集中攻撃を狙っているようです。
●観光パート
ケルネ通りでのグルメツアーです
ケルネ通りについての説明はOPとシレンツィオ特設ページをご覧下さい。
アレクサンダーに『こういう感じのお店に行きたいな』とリクエストすれば、いいお店を紹介してくれます。
一緒に行ってもいいですし、一人であるいは他のメンバーと行ってもいいでしょう。勿論、アレクサンダーの『バー・ヴィージア』で楽しんでもOKです。
竜宮独特の観光をお楽しみください。
----用語説明----
●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができ、水中では呼吸が可能になります。水中行動スキルを持っている場合更に有利になります。
竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。
●特殊ドロップ『竜宮幣』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru
●シレンツィオ・リゾート
かつて絶望の青と呼ばれた海域において、決戦の場となった島です。
現在は豊穣・海洋の貿易拠点として急速に発展し、半ばリゾート地の姿を見せています。
多くの海洋・豊穣の富裕層や商人がバカンスに利用しています。また、二国の貿易に強くかかわる鉄帝国人や、幻想の裕福な貴族なども、様々な思惑でこの地に姿を現すことがあります。
住民同士のささやかなトラブルこそあれど、大きな事件は発生しておらず、平和なリゾート地として、今は多くの金を生み出す重要都市となっています。
https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio
Tweet