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シナリオ詳細

<竜想エリタージュ>アレをガッてしてからバニークラブで遊ぶ依頼

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●家政婦ならぬ魔女は見た
「嗚呼――シラスはん、逢いたかったわぁ」
 見た。
 アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は見てしまった。
 大切なひとの左腕が豊かな双峰に挟まれているのを見た。
 『竜剣』の名で知られる勇者、シラス(p3p004421)の腕にひっしと抱きつき、自らの身体を密着させしなやかに手のひらへと指をはわせる美女を見た。
 控えめに言ってキャバ嬢みたいな髪型とメイクをした女は見事なバニーガールであり、遊女風の和装と水着バニーを融合させた服装はまるでそのために産まれたかのようによく似合っている。
 何より、女から醸し出されるオトナの色香。シラスの耳元に唇を近づけうっとりと微笑み、囁きかけるさまがまるで絵画のようによく嵌まる。
 あまりの情報量に脳がフリーズしたアレクシアの手から……手提げ鞄がどさりと落ちた。
 その音にシラスが振り向くまで、コンマ五秒。

 彼氏のキャバ通いを知った彼女ってどんな気分なんだろう。
 そーゆーのよくわかんないけど、言っても何かのプロなんだし別に浮気とかじゃないよね。
 アレクシアはそんな事が(仮に議論されたとして)言える程度には理性的な、そして知恵の回る25歳の女であった。
 しかしそれは、知恵が回り冷静でいられればの話である。
 リアルとは時にして、その予断を許さない。
「ア、アレクシア? あの、違うんだ」
 たぶん全人類の五割(主に男性)が言いそうなことを一通り言ったシラスは、両手をすごい速さでジタバタさせながらジェスチャーの限りを尽くしていた。
 そこは海洋と豊穣の間に存在するシレンツィオ近海。竜宮城と呼ばれる海底都市のなかでのこと。
 里を救ったイレギュラーズへの感謝と敬意から、閉ざしていたその門を開いた竜宮では早速歓迎の姿勢がとられていた。
 具体的には『CLUB RYUGU』に招かれ、ソファの真ん中に座ったシラスの両端にバニーガールがついてノンアルなしゅわしゅわしたやつを酌しながらその肩にしなだれかかるという一般的かつ社交的な歓迎である。
「そやねぇ、うちとシラスはんはぁ、トクベツな関係なんよ」
 おっとりと、そして甘い囁き声で言うバニー。名をシレーナ・セレーネという。
 有名な竜宮の嬢つまり竜宮嬢である。
「トクベツ……」
 手にしたグラスの中身がすごい波打ってるアレクシア。
 シラスのジェスチャー速度が倍になった。

●エピゴウネ討滅作戦
 竜宮城郊外には、未だ深怪魔の脅威がある。
 これらを排除すべく、イレギュラーズたちは竜宮城からの依頼を受けていた。
 今回のケースは(シラスたちの事情を抜きにすれば)割とシンプルである。
「エピゴウネ……おっきなマンタの深怪魔がおるんよぉ」
 おっとりと語るシレーナがいうには、郊外の海底遺跡に深怪魔の一団が棲み着いており、そのボスとして『エピゴウネ』なる深怪魔が確認されているという。
 このタイプの深怪魔はこれまでも何度か確認されており、攻略法もハッキリとしている種だ。
「放っておいたら、また竜宮が襲われてまう……こわいわぁ」
 耳元に囁きかけるシレーナ。天井を見つめるシラス。振動するアレクシア。
 依頼されたのはこのエピゴウネとその他の深怪魔を討滅すること。
 それが済んだら再びここ『CLUB RYUGU』へと戻り、楽しく飲み直そうという話である。
「よろしく、お頼み申します」
 シレーナはおっとりと頭を下げ、皆をクラブから見送るのだった。

GMコメント

●オーダー
 深怪魔を退治し、竜宮城のクラブで遊びましょう。
 背景がすんごいことになってるので、バランスをとって表面はシンプルなバトルシナリオなのであります。
 リプレイの前半はバトルパート、後半はクラブで遊んだりするパートに分ける予定です。

●バトルパート
・エピゴウネ×2~3
 巨大マンタ型深怪魔です。相手の頭上をとり、卵形の爆弾を次々に下方へ発射することで爆撃を行います。爆撃は高い攻撃力のほか【業炎】【足止】【飛】といった厄介なBSを持っています。
 ですが上を取られると爆撃ができなくなるためかなり無防備です。

・フォアレスター×複数
 半魚人型の深怪魔です。
 エピゴウネの上部を守る形で配置されています。
 個体数が多く、頭数でこちらの侵攻を阻んだり回避ペナルティを狙ったりといった行動をとります。
 中には強い個体が混ざっており、エピゴウネの上をとらせないようにぶつかってくるでしょう。

 石の柱が並ぶ海底古代遺跡がフィールドとなっています。
 エピゴウネの上をとろうとすると必然、遺跡の影にかくれて爆撃をかわしやすくするという手段がとれません。そのうえフォアレスターに足止めをくらってる間にエピゴウネに上をとられると(物陰に隠れられないのもあって)かなりピンチになるでしょう。
 なので、フォアレスターを引き受ける係、エピゴウネの爆撃をあえて受けて上昇を遅らせる係、定期的に上をとって攻撃を仕掛ける係――といった具合に分担をしていくとスムーズになるでしょう。
 エピゴウネも複数いるので、先述したチームを2~3組つくり相手を分散させて戦うのも有効な手です。

●クラブパート
 『CLUB RYUGU』で竜宮嬢たちの接待を受けます。
 ここではシレーネを初めとする嬢に竜宮城のことを尋ねたり、単に飲んで食べたり、美女たちに囲まれてなんか良い気分になったりすることができます。
 この手の接待がどうもなーという方も、単純にご飯食べてるだけでも楽しい場所なので、この華やかな空気をどうぞ楽しんで下さい。

----用語説明----

●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができ、水中では呼吸が可能になります。水中行動スキルを持っている場合更に有利になります。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
 https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru

●シレンツィオ・リゾート
 かつて絶望の青と呼ばれた海域において、決戦の場となった島です。
 現在は豊穣・海洋の貿易拠点として急速に発展し、半ばリゾート地の姿を見せています。
 多くの海洋・豊穣の富裕層や商人がバカンスに利用しています。また、二国の貿易に強くかかわる鉄帝国人や、幻想の裕福な貴族なども、様々な思惑でこの地に姿を現すことがあります。
 住民同士のささやかなトラブルこそあれど、大きな事件は発生しておらず、平和なリゾート地として、今は多くの金を生み出す重要都市となっています。
 https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio

  • <竜想エリタージュ>アレをガッてしてからバニークラブで遊ぶ依頼完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月05日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
防戦巧者
メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)
悦楽種
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
シラス(p3p004421)
超える者
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者

リプレイ


「ハハッ、なんか今日は深怪魔スゲーぶっ飛ばせる気がするぜ」
 攻撃性が120%向上したスペシャルな『竜剣』シラス(p3p004421)がいた。
 理由は問うまい。
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)はその背中をばしんと叩き、いつものようにゲハハと笑った。
「やれやれ、おめえも大変だねえ、ボウズ。ま、次はうまくやるこったな!ゲハハハ!」
 攻撃性を維持するシラスの背を変わらずばんばんしているグドルフ。そんな二人の後ろ姿をぼんやりながめながら、『不屈の障壁』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)はいつものテンションを維持していた。
(……えー、なんかシラスさんが大変なことになってたらしいのですが、僕にはおそらく関わり合いのない話なのであまり考えすぎなくてもいいでしょう)
 およそ大抵の場合フラットな精神状態を保ち続けるベークである。今日も彼らは(ある意味)平常運行だった。

 CLUB RYUGUから出てきた『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は、ネクタイをきゅっと締め直して石畳の中央通りを歩き始める。
 相変わらずなシラス、グドルフ、ベークの後ろ姿は煌びやかなネオンが溢れる海底都市という新鮮な光景のなかでも、まるで色あせぬかのようにそのままだ。
 どこへ行っても人は人、ということなのかもしれない。
「折角平和になった竜宮城をまた壊させるわけにはいかないからな。確か敵は……エピゴウネ。深怪魔の一種だな?」
「そうね。巨大なマンタ型の深怪魔で、高所をとって爆撃をしかける戦法が知られてるわ。その分、対処法もね」
 フウ、とため息をついて『決死行の立役者』ルチア・アフラニア(p3p006865)は古びた手帳を閉じた。
「決戦を終えても、いまだに深海魔の脅威は去っていないのね。別に全ての深海魔があの時に倒された訳じゃないのだから、当たり前と言えば当たり前なのでしょうけれど……いい加減、諦めてくれると嬉しいのだけれどね」
「さてさて、心置きなくバニーの皆様と遊び倒すべく。
 後顧の憂いはきっちり絶つと致しましょう!
 ね、皆様!」
「この仕事を終えれば! バニーの方々と! やっと遊ぶことができるというのです!
 さぁて頑張っていきますかねぇ! はっはっは!」
 『悦楽種』メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)はうっとりと頬に手を当て、『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)は世にも楽しそうに準備体操をしている。
 どうやら二人ともバニーガールの接待が楽しみで仕方ないという様子である。
 バルガルに至っては両手を組んで背伸びをし、目をキラッキラさせながら左右に身体をくねくねさせる柔軟体操をしていた。いままでこんなバルガル見たこと無かった。彼のもつ無類のバニー好きを知っている者なら、さもあらんと思うところだろう。
 最後に店を出た『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)は、ふとCLUB RYUGUを振り返って瞬きをする。
「見た目は兎も角、存外に享楽的なお店ではない様でしたが……」
 こほんと咳払いをして、その先はあえて言わずに歩き出す。
(其れは其れとして…複雑な想いを抱かざるを得ないというのが乙女心というものでしょうか)
 今日の仕事は深怪魔退治。場所は、海底遺跡。


 竜宮城から出た一行は大きな亀にひかれた貝殻型の水中馬車『亀引舟(かめひきぶね。どうやら俗称らしくもっと正しい名前があるとかないとか)』に乗って深怪魔がでるという遺跡へ近づいていた。
「柱が十、十一、十二……かなりあるな。一部は天井も残ってる」
 シラスは半透明な魔法の泡(水が入ることを防いでくれている不思議な泡)の中から遺跡の様子を確かめる。
「深怪魔はあの中に隠れ潜んでるってわけか。確かに、上から攻撃するのはちょっと厄介そうだな」
 エピゴウネを上から押さえつけることはできても、遺跡に隠れたフォアレスターを倒しづらいし、手子摺っている間に相手に十全な対策をとる時間を与えてしまいかねない。情報を持っている有利を活かせるのは、彼我の情報量がおおきく偏っている時のみなのだ。
「やはり、作戦通りに行きましょう。おさらいしておきますか?」
 ベークが亀引舟の内側から様子をうかがいつつ、仲間達へと振り返る。
「僕が香りでフォアレスターを引きつけます。命中力に若干の難があるので……」
「おう、取り逃した奴がいたらコイツで引っ張りゃいいんだろ?」
 グドルフが特殊なボウガンを翳して見せた。小型化した捕鯨銛のような武器で、かえしのある槍で相手を刺してリールで無理矢理引っ張るというなんとも強引な仕組みだ。
「それでも抜けられたら、私がお相手しますね」
 メルトアイがはえた触手をくねくねと動かす。
「けど……」
「ああ、おそらく抜けられる心配は無い。ベークとグドルフとは別に、私が回り込んで誘引するからな」
 ブレンダが腰にさした剣柄をポンとたたいて見せる。防御と再生に特化したベークとはまた違って、ブレンダは回避と命中に大きなリソースをさいた最前衛での活躍ができるビルドをもっていた。弱点があるとしたら、ベークのように自己再生&充填ができないので長期戦で生じるブレやAPの枯渇に弱いという所だろうか。それでも充分過ぎるだけのAPを確保しているので、今回ガス欠を心配する必要はなさそうである。
 エピゴウネを上下からはさむように押さえつけたおす作戦は、フォアレスターに『どれだけ邪魔されないか』が重要だ。
 たとえば一人だけでもブロックされれば、作戦が大幅に狂ってしまう。敵の集中攻撃をうけて隙ができた所でエピゴウネの爆撃に倒されでもしたらもっと悪い。
 その点、誘引戦術に慣れたベークや敵の陣形を壊すことに優れたグドルフ、そして瞬間火力がかなり高いメルトアイの三人に任せておけるなら安心だ。
 シラスは残る仲間達の顔を順に見て、遺跡の上下を指さしてみせる。
「作戦のキモはエピゴウネを上下から挟んで上昇を遅らせることだ。俺が遺跡の下部を走って注意を引く。今回エピゴウネへの囮役を担うのは俺だけだったな」
「何体かいるみたいだから、他のエピゴウネがフリーになるリスクは飲まなきゃいけないわよ」
 ルチアは黒革張りのコデックスを取り出し、その表面を撫でる。
「……そうね、最初のうちは私もエピゴウネの引きつけを担当しようかしら。ああいうタイプは抵抗力が高そうだけど、私の『Dies Irae』なら多少は通用するはずよ」
「スキルやビルドによってはスタンダードな攻略を外れたり楽ができたりするのが、この世界の愉快なところですねえ」
 バルガルが『茨咎の鎖』をぷらぷらとやった。
「幸い、あの遺跡は隠れる場所が多そうです。攻撃ができるタイミングまでは身を潜めておくことにしましょう。攻撃担当が先に狙われることは避けなくてはなりませんからね」
「そこへ行くと、私の行動はかなりスタンダード寄りになりそうですね」
 アッシュは弓をとり、つるをぴんと弾く。
「それにしても……エピゴウネ。少々複雑な気持ちを抱く名ですね」
「何か意味があるのです?」
 メルトアイが小首をかしげると、アッシュはすこしだけ目をそらした。
「Epigonen。ドイツ語で、先人の芸術を模倣者し個性を欠くことをさします。勿論、悪い意味ですよ」
 模写は学習において重要だが、それが行きすぎて模倣のみとなってしまうことがある。
「あの深怪魔にその名がついたことは、ある意味……」
 アッシュは『語りすぎた』という顔で口を閉ざし、矢筒から銀色の矢を取り出す。
「話はまた今度。そろそろ、行きましょうか」
 船の貝蓋が大きく開き、泡の気膜を抜けメルトアイたちは泳ぎ出す。

「さて、では頑張りましょうか」
 ここは海底、名も無き遺跡。はるか昔に誰かが建てて、今やその名も残さぬ石と海水のたまり場である。
 そこへベークはたい焼き姿でふよふよと泳いで入り、甘い匂いをふうんわりとたてはじめた。
 誰も住んでいない遺跡であっても貝や魚や珊瑚は住まうのが海というもの。そこへ更に棲み着いたであろうフォアレスターたちが水中銃などを手に立ち並ぶ柱の間から顔を出した。
 ブレンダはここぞとばかりに剣をぬく。ブレンダのもったふたふりの剣、フランマ・デクステラとウェントゥス・シニストラ。焔と風の魔法剣である。その煌めきを見たためか、フォアレスターたちはギラギラとした目でブレンダに水中銃の狙いをつける。
「散るぞ、ベーク。こちらが固まっていればエピゴウネのいい的だ」
「はい。そちらも気をつけて」
 ぴちぴちと尾びれを振って左に泳ぐベーク。ブレンダは反対の右側へ。
 フォアレスターたちはそれを逃すまいと水中銃を撃ちながら、一部は短剣を抜いて追いかけはじめる。
 拡散した石玉が遺跡の柱にぶつかって小さく表面を削り、ブレンダたちはそれを盾にして離れていく。
 もうそこまでくればエピゴウネも居眠りというわけにはいかないようで。身体を大きく羽ばたかせて上昇をはじめた。
 いくら柱や屋根に隠れようとも、エピゴウネの爆撃であればもろとも破壊できると考えたのだろう。
 が、そこへシラスが大きくバタ足をかけて割り込んでいった。
「こっち降りて来いよ、この雑魚共が。マグロだろうがマンタだろうがシラスの方が強いに決まってんだろ」
 挑発をしながら柱の間をすいすいと泳いでいくシラス。エピゴウネはそんなシラスを撃つべく遺跡のわずか上へと上がって爆撃を開始した。
 次々と起こる爆発。倒れる柱。
 ブレンダたちに引きつけられなかったフォアレスターがそんなシラスを足止めすべく水中銃を構えるが――その手首をざくんと小さな銛が貫いた。
 思わず銃の狙いをそらしてしまうフォアレスターだが、すぐにグドルフのリールによって引っ張りこまれ、斧で頭をたたき切られることになった。
「こいつらを上に行かすなって言われたけどよォ、別に倒しちまっても構わねえよな?」
 グドルフは次にエピゴウネの一体めがけて先ほどの銛を発射。
 今度はフォアレスターほど軽くはいかないようで、グドルフの身体がぐいっと引っ張られる。
 石柱に足をつっぱる形でなんとかこらえるグドルフの一方で、ルチアは遺跡の中央――どこか神々しい細工の施された建物を見た。
 ドッという音と共に建物が崩れ、もう一体のエピゴウネが飛び上がる。
「三体……ね。ここへきてまだ出てこないなんてことはないだろうから。これが最後の筈よ!」
 こいつは任せてとばかりにルチアは『Dies Irae』の魔術を発動。海中に雷が走り、飛び上がろうとしたエピゴウネへと直撃する。
「そんな所で泳いでないで、私と遊ばない?」
 くいくいと手招きをするルチア。
 集中攻撃のチャンスだ。
 バルガルは潜んでいた石柱をよじ登るかのように両手両足を使って海中をかけあがると、エピゴウネの上をとって『茨咎の鎖』を解き放った。
 まるで生きた蛇のように絡みついた鎖がエピゴウネの身体を複雑に引き裂いていく。
 最後に手元へ戻ったナイフをエピゴウネの背へ突き立てると、振り落とされまいとしっかり両手で握り込んだ。
「今です! 傷口へ!」
 アッシュは柱の上から飛び上がると、銀の矢を弓につがえて狙いをつけた。
 と同時に、メルトアイもまた狙いを付ける。
 撃つべき箇所はひとつだ。エピゴウネの背にX字に刻まれた傷跡。その中心。
「シラスさんの健全なお付き合いの為にも仕事を早く済まさねば、ですね」
「はい。では、せーの――」
 放たれた銀の矢。そしてメルトアイが展開した触手群から一斉に放たれる魔力の光線。その全てがエピゴウネの背に命中し、そしてめりっと傷口の奥へ浸透したかと思うと……内側から派手に爆発を起こしたのだった。
 頭上で散ったエピゴウネを見上げ、シラスはニッと笑う。
「……ブッ散れ!」
 引きつけ係が一つ浮いたとばかりに、シラスはドルフィンキックで遺跡上部へ飛び出すと、残るエピゴウネめがけ拳を振り上げる。
 慌てて高度をとろうとするエピゴウネだが、シラスの拳がその頭部(?)へめり込むほうが早かった。
 べこんと身体をゆがませ、力なく沈んでいくエピゴウネ。爆撃で脆くなった柱をいくつもなぎ倒し、ついでに引きつけていたフォアレスターたちまで下敷きにして激しい砂煙をあげたのだった。


 かくして――。
「ちょいとガキが多いと思ったが、ちゃんとおれさま好みのイイオンナもいるじゃねえか!
 オンナを両手に侍らすのは気分がいいぜえ!
 オマケにタダ飯タダ飯ときたもんだ。最高だねェ!」
「ええぇ! 最高ですねぇー!」
 グドルフとバルガルが肩を組んでげらげら笑っていた。開いた手にはグラスが握られ、左右でお酌をしてくれたバニーガールを乾杯する。
「レッツパーティですわ!」
 メルトアイもグラスを掲げて上機嫌である。CLUB RYUGUはわりかしお触りに対して固めのラインを引いているらしく、絶妙な距離感を保ちながら接待をしてくれている。
「はい、あーん」
「あーん」
 チョコレートを口に入れて貰ってニコニコ顔のメルトアイ。接触密度のみが幸福の度合いではないことが、彼女たちの接客姿勢から伝わってくる。
「こちらも依頼なのでそこまでしてもらうことはないと思うが折角の厚意を無下にするわけにいくまい。
 流石にハメを外すほどは飲まないが楽しませてもらうとしよう」
 ブレンダはクールにソファに座り、注がれたシャンパンに口をつける。
「こんなに可愛らしいお嬢さん方がいるのだからな。貴女たちのような女性がいると知られたらここも人気になってしまう。
 そうなる前に今はこの時間を目いっぱい楽しませてもらうよ」
 髪で片目を隠したその瞳で、流すように見つめるブレンダ。低いトーンで語る言葉は、なんとも甘い空気がした。
「ふ――少々気障なことを言ってしまったか? だが本心さ。嘘は言っていない」
 とかなんとかやっていると、グドルフとバルガルの盛り上がりがマックスに達したらしく……。
「ま、おれさまはシャンパンなんてこじゃれたもんは飲まねえが──どうせタダだしな。 金持ちの気分を味わうだけでもスカッとするね!
 いやあ、最高に気分がいいぜえ!ゲハハハ!!
 おらあ、飲め飲め!オゴリだオゴリだ!!
 ボーイ! シャンパン・ゴールド! タワーでいってくれやあ! この店にいる全員に飲ませてやれ!」
「ヨッ! レジェンド山賊!」
 景気の良い言葉に合いの手をいれるバルガル。
 持ってこられたタワーがミラーボールに煌めき、舞台裏からバニーガールとなったアッシュが姿を見せた。
「何ッ――サプライズバニーですと!?」
 驚愕するバルガルにピッとサムズアップしてみせると、アッシュは両手を頭にやった。
「うさぎさんは好きなのでちょっぴり複雑な気持ちです。うさうさ」
 国を挙げて接待をするというだけあって、CLUB RYUGUはおもいのほか上品な店であった。
 伝統と格式から自分からの接触をやや強めにする一方、それでいて下品にならない絶妙なラインがしかれていたのである。
(存外に、普通のお店といいますか……わたしが知りうる限りでは、練達で皆さんのような格好をする方のお店は大人の男性が楽しむお店だという認識でした。
 なんだか少し不思議な気分です)
 アッシュはバニーガールたちと一緒に踊りながら、夜の竜宮を満喫したのだった。

 一方、店の外。中央通りはネオンが輝く独特の雰囲気が保たれている。
 この場所には夜も昼もないのだが、転じて眠らぬ町になることを、どうやら竜宮は選んだらしい。
「いいの? みんな楽しんでるみたいだけど」
 ルチアが問いかけると、外でぼんやりと立っていたシラスが首を振った。
「俺が欲しいのはこの竜宮でも名前を上げるお仕事だよ」
「そういうものですか……」
 僕も接客はとくにいらないですね、とベークが隣に並ぶ。
「けど、ご飯は美味しかったですよ。メンダコ(?)さんが作っているとか」
「めんだこ?」
 ルチアは料理の中に寿司さ刺身だかまぼこだってのが普通に混ざっていたのを思い出した。
 ディープシーの中には海洋生物を食べられないというタイプのひとが一定数いるらしいが、どうやらここでは普通にいくようだ。
「魚が魚を食べるって……いうのかしら? ちょっとよく分からないけど」
「人だって哺乳類食べるじゃないですか。一緒ですよ。あえて食べないのは、ヴィーガンやベジタリアンみたいなものじゃないですか?」
「そういうものなのね……」
 文字通り生まれた世界が違う話だ。
 シラスは話は済んだのかなとばかりに、両手をポケットにいれて中央通りを歩き始める。
「さて、これからどうしていこうかな……」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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