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シナリオ詳細

<竜想エリタージュ>汚泥の捕食者

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<竜想エリタージュ>汚泥の捕食者
 広く広く、蒼き海が拡がる地、海洋。
 その一角、『静寂の青』の地に浮かびしフェデリア島、いや、『シレンツィオリゾート』。
 開拓二周年を機に、盛大な祝祭を催そうと動くは様々な国……そう、今はこの国は様々な国の思惑が入り交じる。
 そしてその思惑の中において、芽吹くは様々な問題。
 深海に眠る魔物、深海魔やそれを追い払うと言われる玉匣、その復活のために必要となる竜宮幣。
 過日の依頼に置いて、竜宮幣を集める事に成功したイレギュラーズ達は、竜宮城を防衛……そして竜宮は、豊穣とシレンツィオに対し、交流の門戸を開く事となった。
 だが……門戸を開こうとも、未だにこの地には様々な問題が点在していた。

『……ウゥゥゥ……』
 そして深夜の刻……海底から響きわたる、不穏な呻き声。
 その呻き声はシレンツィオリゾートから少し離れた地、『ダガヌ海域』で夜な夜な響き渡る。
『……ったく、こんな真也の刻に急ぎの二運びだなんて、ついてねぇぜ……』
 そしてそんな深夜のダガヌ海域を渡るは、シレンツィオリゾートと豊穣の国を結ぶ交易船。
 急ぎ運んで欲しいという荷物があり、特急料金も支払うから、と言う事で引き受けたのであるが……最短距離を通ろうと航路を進めた先にあるのは、荒れ狂うダガヌ海域。
 本来であればこの海域を通ること等しないのだが……急いでいたという事も在り、冷静な判断力を失わせていたのだろう。
 そしてダガヌ海域の荒れ狂う海を、左へ右へとどうにか躱しながら進むかの船……だが。
『……ウウウウ……』
 再び響きわたりし声は、身を震わせる程に悪意に満ちていて。
『っ……何だ、この声っ……』
 その声に怯み、怯え……操舵輪を握る手が止まる。
 さすれば船は荒れ狂う波に呑まれ、大きく転覆。
 ……そして、海に投げ出された船員達は、溺れながらも必死に抵抗。
 だが、次の瞬間……船員達の前で、船の上で姿を表すのは……奇っ怪な姿の存在。
『ひぃっ、な、何なんだよこいつぅ……!?』
 恐怖の中、絞り出す言葉……だが、その悲鳴を聞いて、ニタァ、と笑みを浮かべたその存在は……すっ、と船員達に身を合わす。
『ぐ……う、うぁあああ……!!』
 そして叫び声と共に……船員達は気を失い……その者と同じ姿へ変化し、再び海の中へと潜っていった。


「さて……今日も皆に依頼、って訳なんだが……最近この海洋に現れた『ダガヌチ』って知ってるか?」
 と、『黒猫の』ショウ(p3n00005)は、ふと君らに声を掛ける。
 その言葉に首を傾げるのもいれば、頷くのもいる……まだまだ有名、という所では無いだろう。
「そうか。まぁこの『ダガヌチ』ってヤツは、簡単に言えば竜宮幣に取り憑く事で実体化する悪霊の類い、の事だ。どうもまだ、竜宮幣はダガヌ海域近海に散らばっている様でな……最近その影響が頻発してきてる、ってな訳なのさ」
「この『ダガヌチ』は、実体化すると単体でも強い戦闘能力を持つ厄介な相手だ。更に、人々に取り憑き、その欲望を強化させると共に、使役するという行動を起こしている。そう……つい先日だが、ダガヌ海域に、この被害者が現れてしまった様なのさ」
「更にこいつらは、フリーパレットをも喰らい、それをも己が力に変えるというしな……『ダガヌチ』らを放置しておけば、最悪な事態になる事も在りうる。だからこそ、まだまだ力を付け始めの今の内に叩いてきて欲しい、ってな訳なのさ」
 と、そこまで言うとショウはもう一度皆を見渡して。
「……前にフリーパレットの依頼に参加した奴なら分かるだろうが、フリーパレットは幽霊ではあるが、凶暴な性格を持つ様な奴らではない。一方でダガヌチはそれを喰らう存在だ。弱肉強食、と言えばそれまでだが、奴らも被害者……なのかもしれん。という訳でよ、宜しく頼むぜ?」
 と、期待するかの如く、肩をポンッ、と軽く叩くのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 今回の依頼は、ダガヌ海域に現れた凶暴な存在『ダガヌチ』退治です。

 ●成功条件
  ダガヌチを退治、また彼に取り憑かれてしまった人々を討伐する事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  今回の舞台は、ダガヌ海域のド真ん中になります。
  荒れ狂う海の中、ダガヌチに操られた船員達は操られるが如くボロボロの船に乗り、ターゲットを探し求めています。
  人気が居ない時間(深夜)であれば、他の船も居ませんので彼等と遭遇する事は容易でしょう……ただその場合、荒れ狂う海での戦いになりますので、足場は極悪となります。
  尚、敵陣営は悪霊ですので、揺れる足場を全くものともしません。
  大きく揺れるので、飛行能力があったとしても不意の影響が出る可能性もありますので、その辺りは念頭に置いておいてください。

 ●討伐目標
  ・ダガヌ海域に救う『ダガヌチ』
    邪神ダガンより生み出された泥から構成された怪物『ダガヌチ』です。
    悪霊の如き存在、かつ戦闘能力(攻撃力、体力)がとても高い相手です。
    攻撃手段は戦場への呪い効果と共に、遠距離まで届く怨嗟の声による攻撃と、周りの配下達を回復する範囲ヒール能力、そして叫びを上げることでの近接範囲への呪縛(抵抗無効)の攻撃になります。
  
  ・ダガヌチに取り憑かれし船員達 6人
    ダガヌチに取り憑かれ、ダガヌ海域を流離う半分悪霊、半分人間の存在です。
    既に人としての意識は持って居らず、ダガヌチの指示に従い、目の前の敵対者を殺すだけに動きます。
    攻撃力、体力はそこまで高く無いものの、回避能力が極めて高い敵です。
    彼等を倒すには、彼等の動きを制御しないと中々攻撃が当たらない羽目になりますので、ご注意下さい。

●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができ、水中では呼吸が可能になります。水中行動スキルを持っている場合更に有利になります。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

 ●特殊ドロップ『竜宮幣』
  当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
  竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
  https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <竜想エリタージュ>汚泥の捕食者完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月10日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
レッド(p3p000395)
赤々靴
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
シラス(p3p004421)
超える者
ロロン・ラプス(p3p007992)
見守る
型破 命(p3p009483)
金剛不壊の華
ファニー(p3p010255)
水無比 然音(p3p010637)
旧世代型暗殺者

リプレイ

●海魔の影
 広く広く、広大な青き海の拡がる海洋国。
 その一角、『シレンツィオリゾート』と呼ばれしフェデリア島では、開拓二周年を記念した祝祭が行われている。
 そしてその開拓二周年を祝う様々な物資は、豊穣の国との交易等によりもたらされており……時の経過と共に、その物資の数も量も段々と多くなる。
 しかしながら、その時間的余裕は少なくなり始め、交易船に無理難題がふっかけられてしまうのもしばしば。
 だからこそ、いつもは通る事の無い荒れ狂う『ダガヌ海域』を突っ切らなければ間に合わないだなんて事も頻発していて。
「時刻は深夜、天候は悪く波高し……されど視界は……問題無し……しかし、怪物が出そうな雰囲気ではありますね。まぁ、その怪物をこれから討伐に行くのですが……」
 そのダガヌ海域に差し掛かった所で、甲板に出た『旧世代型暗殺者』水無比 然音(p3p010637)が周りを見渡し一言。
 それに己を発光させる事で灯りを確保しながらの『竜剣』シラス(p3p004421)も。
「ああ。しっかしこの真夜中に大しけの海に船を出すだなんて、正気じゃねぇよな」
 口元をついつい緩ませながらも、どこか楽しそうなシラス、その一方で。
「まぁ……こういう無理難題吹っかける上の面々にもちょっと進言しとかなきゃ、無くならねえんだろうけど、交易船の船員達も災難だったよな」
 と、空を仰ぎ見るは、『太陽の翼』カイト・シャルラハ(p3p000684)。
 いつも被害に逢うのは、罪も無い一般人達……そういった所にも想いを馳せてしまうのは、王国海軍に連なる故。
 そんなカイトの言葉に『頂点捕食者』ロロン・ラプス(p3p007992)も。
「うーん。食事に来たつもりだったけど、配下は一般人が操られているだけなんだっけ?」
 その問いかけに、ああ、そうだな……と『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は苦笑を浮かべつつ。
「ああ。今回の原因である『ダガヌチ』達は竜宮幣に取り憑いて現れるって言う。竜宮幣に取り憑くって辺りはフリーパレットの親戚みたいなモンかとちらっと思ったモンだが……あいつらと違って、随分と質の悪い連中らしいな」
 と縁の言葉に『スケルトンの』ファニー(p3p010255)と『金剛不壊の華』型破 命(p3p009483)が。
「ああ。随分とまぁ厄介なモンが現れたもんだな」
「そうだな。それにフリーパレットを食う……は、百歩譲って腹を満たすためかもしれねぇが、人間に取り憑いて取り返しの付かない状態にするってぇのがいただけねぇ。放置したら、フリーパレットにも人間にもどんどん被害者が出ちまうって訳だ」
「ああ。取り憑いたまま剥がせねぇなら、ひと思いに殺してやるしかねぇのか……やれやれ、物語に介入したところで、出来る事は少ねぇなぁ……」
 二人のぼやきに、縁はははっ、と笑い飛ばしながら。
「そうだな。フリーパレットまで喰らわれちまうとくりゃぁ、流石に放っておく訳にもいかねぇかね。何だかんだ、あいつらの姿もすっかり見慣れちまって、俺もそれなりに愛着も湧いてきているんでな」
 と、それに微妙な表情をしながらロロンが。
「うーん……まぁ、良く分からないけど、こんぼ顔ぶれなら殲滅は容易いのかな? まぁなるべく原型は残して回収したい所だし。ダガヌチ本体は食べてもいいよね?」
「ああ、構わねえ。ま、竜宮幣諸共食べるのはやめてくれよ?」
 はははと笑うシラスと、うん、と頷くロロン。
 そんな仲間達の言葉を聞き流しつつ、然音は目を閉じて。
(「……この匂い……海の匂いに微少だけど、死臭が混ざっている……『仕事』の後によく嗅ぐ、いやな臭いだ……」)
 そんな然音の不安に気付いたのか、命は。
「ん……どうした?」
「いえ……何でもありません。何にせよ、ダガヌチ達を確実に仕留めるしかありませんね……」
 そんな然音の言葉に、『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)も。
「そうっすね。ダガヌチというのはどんなものなのか? 噂でしかボクは知らないっすけど……でも、楽しいリゾート近海と、フリーパレットさん達を脅かすモノは退治しちゃおうっす!」
 ぐぐっと拳を握りしめて気合いを入れるレッドに、命も。
「ああ、そうだな。きっちりぶっ飛ばそうぜ!」
 と気合いを入れるのであった。

●海底より響くは
 周りは荒れ狂う海……カイト自慢の小型船『紅鷹丸』であっても、その揺れとあっては中々先へと進めない……そんな荒れ模様。
「っ……こりゃぁ、中々なモンだな」
 とカイトは言いつつも、しっかりと操舵輪を握りしめて、揺れの影響を最小限にした上で、航路を進む。
 勿論、時刻の程は深夜故、周りには他の船の影灯りもなく、今この海域に居るのは、ほぼ間違いなく彼等だけであろう。
 そして、ショウより聞いた、かの船が難破した海域に辿り着くイレギュラーズ。
「この辺りか……本当、いい船にいい操舵手、これで天気が良けりゃぁ最高の船旅になったんだがなぁ」
「へっ、まぁ確かにな!」
 縁の褒め言葉にサムズアップで答えるカイト。
 ただ……その揺れにすっかり弱っているのも居た訳で、船縁で座り込んでいたのは……レッド。
「き、キツイっす……」
「ん、大丈夫か?」
「だい……じょうぶ……っす……い、イルカさん、カモーン……っす……」
 息も絶え絶えながらレッドは、声高らかに手を掲げる。
 すると、それに呼応するかの如く、イルカ達の影がその周りに出現し、仲間達の周りをふわりふわりと飛び跳ねる。
「ん、なんだいこりゃ?」
「イルカさん、っす……これで、海の上でも、海の中でもすいすい、っす……」
 弱々しいレッドの言葉ながら、イルカ達の加護はイレギュラーズ達に恩恵を与え、水上、水中問わずのサポートをもたらす。
「そうかそうか、こりゃぁいい! これで何時襲われても問題無いって訳だな!」
「オーケー、それじゃ早速だが始めるぜ」
 と言いつつ、シラスは突如、己の身体を発光させる。
 煌びやかに光るシラスの身体……漆黒の闇に包まれたこの海域においては、かなり目立つ事だろうし、イレギュラーズ達からすれば、周囲の視界確保にもなる。
 そして、そんな光に吸い寄せられるのは……然音。
(「……それにしても、何故か光ってるシラスさんが気になって仕方がありません……! シラスさんのお陰で、視界が確保されている分、下手に聞けませんけれど……!」)
 何故に身体が光るのか、とっても不思議ではあるけれど……今はそんな事を考えている暇も無い。
 そして彼が光りながら、ダガヌ海域に船を停泊させて数十分。
『……ゥゥ……』
 ほんの僅かな声音。
 その声音に鋭く気付いたのはレッド。
「む……あっちの方から、声がしたっす」
 指を差した方向は、未だ漆黒の闇に包まれている。
 だが……明らかにその方向から漂ってきたのは、強い匂い。
(「……っと、さっきよりも匂いが強くなってきた……」)
 その匂いを感じ取った然音がレッドに目を配る……そして。
「目的地が、近いようですね……」
 その言葉にカイトとファニーが。
「そうか……黄水晶の灯りでこの船はまるで提灯鮟鱇、と。狙う獲物は幽霊船って訳で、普通は逆だが、な」
「んー、そういうもんか。ま、荒れた海で幽霊船を釣ろうってな訳だから、あんま変わらん……っと」
 と二人が軽く笑った、その瞬間。
『……ウゥゥゥウ……!!』
 更に一際大きく、亡者の呻き声が響きわたる。
 そして次の瞬間……イレギュラーズ達の目前に、ボロボロの船が姿を表す。
「出てきたぞ!」
 命が大声で叫び、カイトが船を転回。
 勿論躱しきる事は出来ず、船横が敵船と衝突し、両者の船は大きく揺れる。
 飛行能力故に、転倒等までは堪えきるが……敵船から服はボロボロ、何処か虚ろな視線の亡者達が、次々とイレギュラーズの船へと乗り込んでくる。
「ちっ、早速来やがったか……ちぃとばかし妨害してやるぜ!」
 とファニーは襲い来る亡者達に向けて、熱砂の精を使役し、砂嵐にて敵陣を足止めする。
 そしてファニーが足止めしている間に、ロロンは一旦海を経由……敵陣の背後を取るべく移動。
 更にロロンの動きを悟られない様、縁、カイト、シラス、命、レッドの五人は船縁へと転じ、敵が乗り込む直前の所に割込み進路を閉鎖する。
『ウゥゥ……』
 イレギュラーズ達の展開に、恨めしい視線を投げかける亡者……更に、その後ろからは。
『コロ、セ……コロセコロセコロセ!!』
 心底まで冷え切りそうな怨恨の声を上げる、半泥半人の如き『何か』。
 それこそがダガヌ海域に巣くいし怪物『ダガヌチ』であると理解するのには時間は要らない……そして眉間に皺を寄せながらレッドが。
「あれがダガヌチっすか……醜悪な姿っすね。となると、この人達はダガヌチに取り憑かれた船員、って事っすね」
 船員達の顔はかなり腐敗しているものの、どうにか人となり位は判別出来そう。
「あの取り憑かれた人達はもう手遅れっす? 助かりはしないんっすか?」
 とレッドが仲間達に問う。
 ……とは言え、ダガヌチを倒そうとも、その支配から抜ける術は最早無い。
「ええ……ダガヌチに支配され、彼等が助かる術はありません。倒す他に……ないのですから」
「そうっすか……分かったっす。でも、それならせめて、家族の元には返してあげたいっす。だから……余り傷つけない様にするっす」
 そんなレッドの言葉にシラスは。
「そうか……正直気の毒に思わなくも無いが、だが奴らも海賊なら海の藻屑も本望だろ。油断はしねぇぜ」
 勇者たる矜持に目を光らせるシラス……そして先陣を切り、立ち塞がる亡者の船員六人に真っ向から勝負を挑む。
「さぁ、まずはアンタだ!」
 そう声高らかに宣言し、仲間達のターゲットを敵一体に集中。
 先ずに放つは混沌揺蕩う汚泥の力に敵を誘い、彼等の運命を悪展させる。
 それに応じるかの如く、カイトも真っ赤な翼を大きくはためかせて己の力を引き揚げると共に、必中たる緋色の羽根の一閃を放つ。
 先陣切った二人の攻撃で、亡者らの動きが少し混乱した所へ、更にロロンがザバァと水中から飛び出し、頭上からぬるぬるの水を振らせて更に敵陣の幸悪を悪化させる。
 大幅に不運に陥りし亡者達……ダガヌ海域の嵐に回避が中々上手く行かなくなってしまう。
 その不運に陥りし亡者達の脇を、跳ねるように越えていくのは縁、その目前に収めるは、ダガヌチ。
「他の連中を回復させる訳にはいかねぇんでな。しばらくおっさんの相手をして貰うぜ?」
 ニッ、と不敵な笑みを浮かべると共に、ダガヌチの怒りをその身一つに引き寄せる。
 無論ダガヌチは、そんな縁に攻撃……亡者を生み出しし悪霊の力はかなり高く、呪いの効果も相俟って縁を呪縛で縛り上げた上での、強力な一撃を次々と与えてくる。
 ……だが、そんな敵の攻撃には涼しい顔で対処する縁。
 勿論仲間の回復があるのを信じた上での行動であり、そんな彼に向けてレッドが。
「そうはさせないっす。船員の方達を助ける為にも、誰一人として倒れさせはしないっすよ!」
 との強い思いと共に、仲間達を癒す聖体頌歌で回復。
 そして、回復の後には前衛の命。
「縁、船員達を倒すまで耐えといてくれよ!」
 と声を掛けつつ、命は敵陣纏めて狙い澄ませる雷撃の鎖。
 一方後衛の然音は、船員達の動きを制限するべくに、熱砂の風を敵に纏わりつかせる。
『グゥゥ……ァァァ……』
 そんな亡者の呻き声に、然音は。
「自意識が無い分……単純な罠でも引っかかりやすくて助かります……」
 と零す。
 そして、ダガヌチを縁が抑えている間に、残るイレギュラーズ達は総力を挙げて船員達へ攻撃。
 高い回避能力をも、多重の悪運によっては最早大きな意味も持たなくなり、攻撃をかわせずに体力を減らす。
 数刻の先には一体が倒れ、消滅……その後も悪意の連鎖に大した抵抗も出来ずして、一体、また一体……と消滅していく。
 そして、六体の船員達が全て消滅した所で、残るはダガヌチのみ。
「フゥ……さてと、後はお前だけだ。どうだ? 命乞いでもするか?」
 ファニーは骨故に表情は見て取れないが、その声はどこか楽しげ。
 だが、ダガヌチは……その声に怨恨を上げるがのみ。
「ま、回答を期待なんてしてなかったしな……ほら、さっさとぶっ倒させて貰うぜ」
 そう言いつつ、ファニーは構える。
 そして……その切先から放たれるは、全ての力を魔力へと変換した一撃。
 ダガヌチの泥の身を半分以上、その一撃で吹き飛ばし、見た目にも大ダメージを与える。
 だが、その一撃だけでは終わる事は無い……命も同じく大魔力を込めた一撃で敵を穿ち、更に身を吹き飛ばす。
 そして……トドメとばかりに、今迄退治していた縁が。
「……終いだ。さっさと海に帰りな」
 との最後通牒を突きつけて、黒き大顎でもって敵の身を丸ごと喰らい……ダガヌチは漆黒の中に霧散した。

●海辺を穿つ
 そして、ダガヌチを倒し終えたイレギュラーズ。
 自船に戻ると、まるで夢の如く先程の船は崩れ去る。
 そして船の藻屑だけが残されており……幽霊となってしまった彼等の息づいていた痕跡だけが、僅かに知れる状況。
「しかし……また泥で出来た怪物ですか……以前にも、同種と思わしきモノは討伐した事はありましたが……」
 そう、ダガヌチの姿を思い浮かべながら然音が瞑目する。
 それに縁も。
「ああ……そういやそうだったな。ま、裏ではそいつに繋がっているかもしれねぇ。とは言え海洋の平和を乱す奴らならば、放置しとく訳には行かないしな」
「ええ……そう、思います。ですが、この海域に漂う嫌な雰囲気……これで終わりという訳にはいかないでしょうね……」
 暗い夜空を見上げた然音。
 強い胸騒ぎを覚えるものの、それが真実かどうかは、今確かめる術も無い。
 ともあれ、そう憂う言葉を聞いてかどうかは分からないが、仲間達が船上に上がった後でロロンが。
「それじゃ、僕は後片付けおしてくるね」
 とだけ言い残して、再び海へとダイブ。
 ロロンが沈没船の欠片を取り込みつつ、被害者である者達の遺体を回収していく。
 それを船上から灯りを照らしながら指示するファニー。
 ……結構な時間を掛けて、壊れた貿易船に眠る全ての遺体を回収。
「これで、良し……か。さて、と。それじゃあ一つ一つ、確りと弔ってやるとしようぜ」
 とファニーが一人一人の遺体を棺に収めていき……そして。
「それじゃ、もうここに残したモノはないな? まだ荒れている海だからよ、皆しっかりと捕まってろよな!」
 とカイトは操舵輪を180度展開し、ダガヌ海域から離脱。
 荒れた海も、やっと収まりつつあり……漆黒の空も、朝焼けが浮かびつつある刻。
 その陽射しを背中に受けながら、カイトは目を細めて。
「しかし、こうして無事に帰ってきたから良いものの……一歩間違えると、俺もあんな感じになってたかもしれないんだよなぁ……」
 海に生き、海で戦うイレギュラーズであるからこそ、いつ自分達が彼等の様になってしまうかは十分に理解為ている。
 それに恐怖がない訳もないが……だからと言って、手をこまねくわけにもならず。
「そうっすよねぇ……ま、ボク達の仕事が危険なのは十分に理解しているから後悔も何もないけど」
「ああ、、勿論さ。取りあえず、海で散っていった彼等を確りと送り届けねえと。一日も早く、な」
 レッドの言葉に、自分に言い聞かせるが如く頷いたカイト。
 そしてイレギュラーズ達は、カイトの操る『紅鷹丸』と共に航路を取り……フェデリア島へと急ぎ戻るのであった。

成否

成功

MVP

レッド(p3p000395)
赤々靴

状態異常

なし

あとがき

ダガヌチ退治、お疲れ様でございました。
皆様のプレイングにより、船員達は骸ではありますが無事に家族の元に戻る事になりました。
家族の方々も、皆様に感謝している事でしょう……。

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