PandoraPartyProject

シナリオ詳細

追跡者であり収集家

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●追跡者
「嗚呼……。今日もユーちゃんは可愛いなぁ……」

 彼は1人、物陰に隠れながらそう呟いた。ここは海洋のとある一角。花街通りとも揶揄される場所で、こっそりと身を潜めている彼の視線の先にいるのは、シマエナガのスカイウェザー種である1人の娼婦である。今日はどうやら、デートをするのが仕事らしい。珍しく彼女が夕方ではなく、朝方に家を出たのにはそういった事情があったようだ。
 このユーアという花名で活動する彼女を、彼はたいそう好いていたし、他の男性客に好かれているのも重々承知していた。というより、それが『娼婦』の仕事である事にも、理解を示していた。当然、好いた女を独占したいと欲が湧きたつことはある。それでも彼にはそれが出来なかった。
 しかし、それでもユーアを好いていたのは、彼にとってユーアは初恋であり、幼いころから近所に住んでいたお姉さんであり、そして1番の理由は――

「早く大人になって、およめさんになってほしいな……」

 スカイウェザーの男――『レノー』はまだ15歳。つまり……未成年だったのである。本来、この花街通りにいるのがばれれば怒られてしまうレノーだが、幸い黒い髪と翼をもつカラスのスカイウェザーだったおかげで、スカイウェザーの中でも目立たずに行動できているようだ。笑うだけできらびやかなユーアはまさに本能を刺激する存在だったのだろうとレノーは思っているのだが……カラスの本能がスカイウェザーに適応されるかは定かではない上、比較的年齢相応に純粋だった少年はそれが異常行動《ストーカー行為》であるとはまだ知らなかった。

「娼館限定『ユーアのドリームキャッチャー』欲しかったな……。ユーちゃんの羽が付いてるドリームキャッチャーとか絶対いい夢見れるもん……。羽枕とか羽ペンもいいな……ユーちゃんを日常に感じながら生活したい……」
「集める方法だけなら、教えてあげよっか?」



●ストーカー気質
「というわけで、依頼人は娼婦ユーアに関係するあらゆるものを欲してるみたい」

 無意識にストーカーを生成している事実についてはさておき、5歳の頃から母親の手伝いで毎日100Gを貯金していたレノーがなんとか今回雇ったイレギュラーズたちに、シグルーンはそう告げた。

「好きな人に関するものは欲しくなる……んだよね? 練達の子が『オシカツ』っていうのを教えてくれたんだ。『オシハ オセルトキニ オセ』とも言ってた。これって、欲しいときに欲するべきって意味なんだって。だから、イレギュラーズに頼めばきっと手伝ってあげれるって教えることにしたの!」

 ニコニコとしながら言葉を続けているシグルーン。誰がそんな言葉を教えたのだろうか。というよりそれは犯罪である。その友人はさぞ財布のがま口がゆるゆるなのだろう。もしかしたら壊れてしまっているのかもしれない。

「入手手段? まぁ、販売してるわけだし、オトナの人は娼館に行って買うでもいいんじゃないかな。盗むでもなんでも、まぁおまかせ。依頼人はユーアに関するものだったらなんでもいいって言ってたし」

――サインとかでもいいんじゃない? 

NMコメント

●状況説明
悪属性なのはレノー本人がまだ未成年なのにもかかわらず、成人していないと手にできないものを代理購入・代理入手する為です。
娼館の名前は『ふわふわドリーム』。略してふわドリですが、当シナリオ中では『娼館』『娼婦』と省略してプレイングに記載して問題ありません。建物は2階建てです。
この依頼は絶対に成功する『カジュアル』です。
が、皆さんの働き掛けによってNPCの関係性が変化する可能性があります。ご了承ください。

ふわドリは夕方4時から朝4時までの間に夜の相手をするのが基本営業です。ただし、予約必須とはなりますが娼婦を指名してデートに連れ出すこともできます。その場合はすべての経費を客が払うことになりますが、娼婦にとってはデート指名が一番の収入源となります。なにせ、デート中の食費はかかりませんし、買ってもらった手に入れた鞄やアクセサリーは趣味でなければ質に入れることもできるので。

●目標
 シナリオ目標:ユーアグッズの購入、あるいはユーアに関するものを入手する
※ユーアはこの娼館で30人中4番目に売れている娼婦の為、グッズは販売前日の朝4時までの間に整理券が頒布されている(シナリオ中は原則販売当日扱い)

●他に出来る事
・娼館で普通に整理券を購入しておく(事前準備系のスキルで可)
・整理券を巡ってユーアオタクとのダンスバトル
・娼館に侵入してユーアの部屋に忍び込み、抜け羽などを盗み出す
・むしろ娼館でユーアと楽しいひと時を過ごし、お土産話をレノーに聞かせる

●敵
・「警備員」
   暴漢が出たら取り押さえて追い払うことができる程度の強さ。
   出入口と裏口に3人ずつ配置されています。

・「店長」
   この娼館の店長。60歳女性。キジのスカイウェザー。
   怒ると警備兵より怖い。●ミケの整理員さながらの人員配置統治スキルが高い。

  • 追跡者であり収集家完了
  • NM名蛇穴 典雅
  • 種別カジュアル
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月08日 21時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
綾志 以蔵(p3p008975)
煙草のくゆるは

リプレイ

●グッズ入手
「はぁん、面倒臭ェ依頼だなァ。カネがあるなら年齢偽って店行って指名すりゃ早ェだろーに」
 『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)の言葉に、『煙草のくゆるは』綾志 以蔵(p3p008975)は苦笑しながらゆるく首を振る。

「あれは外見を取り繕っても見ても、口調がな。未成年にしか聞こえねえから無茶だろ」
「まーこっちに依頼するっつーなら否やはねェが。カネが入るしな!」
「つーか、親は大丈夫なんかね、商い処のボンボンなんだろ? とりあえず本格的に娼館通える様になる前に再教育した方がいいんじゃないのかそいつ」
「確かに、今はまだ可愛いものですが、万一行きつくところまで行きついてしまったらどうなるか。レノー君とユーアさん、お互いの為にもちょっと心配なのです」

 そう言葉では言っているものの、何かを考えていることがあるのか『迷い猫』クーア・M・サキュバス(p3p003529)は緩く口角を上げていた。準備はできているだろうと首をかしげてかわいらしく問いかける姿を見た綾志は「ほどほどにしとけよ」と告げながら整理券を2枚と予約札を2枚鞄から取り出した。クーアの根回しはもちろんのこと、商業という分野において店を任されている綾志は事前に入手ルートを確保していたのだ。

「娼館の店長との交渉はアンタに任せるよ」
「任せておきな」

 極楽院はそれを受け取り、『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)にも回す。シスター服を普段から着こなしているライはそれをしげしげを眺めた後、にこりと笑って聞かれてもいないのに「決して自分の楽しみのために動いているのではありませんからね」と極楽院に告げれば、その言葉からかぎ取った胡散臭さをかぎ取ったのか、同じ気配のする笑顔を浮かべて「そら、しょうがないよなァ?」と責任をよそへと転嫁する。
 そうして歩いていくうちに、娼館『ふわふわドリーム』へとたどり着いた。そこそこの人数が居る店内だったが整理券というシステムを使っていることも在って、その混乱は最低限に抑えられているようだ。呼び出される番号が迫る中、そういえば、とライが顔を上げる。

「結局、ユーアさんとデートするのか、閨へ赴くのか、相談してませんでしたけど……結局どうしたんです?」
「深い話をしたり、ちょっとした『落とし物』を回収するなら当然閨だろうけどなぁ。ユーア好みのってなると、どっちかっつーとデートとかの方がわかりやすいんじゃないかって話になったよ」
「いくらか日を跨いでの調査が出来ればよかったんだけどね……」
「それに予約制ともなれば確実にユーアと接触できるからな。事前に枠は取れた」

 依頼人であるレノーは確かにイレギュラーズを雇用し、こうして依頼をするにたりえる料金こそ支払うことはできた。が、本当に『かろうじて』『ギリギリのライン』かつ『4人への依頼料が精いっぱい』だったのである。さして重要な捜査ではないことはもちろんのことだが、さすがに日を跨いでの長期調査をするには割に合わない仕事になってしまう。極楽院の結論にクーアは同意を示すとともに、それでもなお焦がれる様を思い出して肩をすくめる。予約を取るときに少々苦労があったのか、少し遠い目をする綾志。ことさら残念そうに小さくため息をついて、ライは頬に片手を当て、困ったというように眉を下げた。

「まぁ……そうですね。閨となると1対1になってしまいますし、今回はデート……と言うことにしましょうか。そうすれば多人数でユーアさんとご一緒してもさほど困らないでしょう。複数人を一夜でお相手するのは大変でしょうしね」
「なぁんでその意見がシスターから出るんだろうねぇ……」
「それは神々のみが知るヴェールの向こう側のお話でございますので」

 元は夜花として接客する側だったとはさすがに口にせず、ライは目を伏せて粛々とした口調を用いてはぐらかす。クーアはといえば、そこまで大変だろうかと思いつつもサキュバスの眷属たる彼女にとって苦労はないものの、一般人ならそうなのかもしれないと認識を改めたところで、極楽院が前に出た。予約番号がようやく告げられたようなので、その背中を追う。

「68番の方、ようこそいらっしゃいました。ご希望の品物はございますか?」
「『ユーアのドリームキャッチャー』を1つ。あと……」

 人ごみの向こうで、何かを手渡したらしい姿が見えれば、しばらくして派手な服を着こなす女がやってきた。どうやら、あれが店長らしい。何を包んで渡したのかまでは遠目で見えなかったが、かなりの好印象を抱いたようで、わずかながらに聞こえる極楽院の言葉に快く応じてくれる姿があった。

「この店にユーアってのがいるよな? ちょっとハナシを聞きてェんだが……イヤなにも身辺調査とかじゃねェンだよ。インタビューみたいなモンさ」
「では……長い話になりますし、奥で話すこととしよう」
「世話になるよ」
「……じゃ、店長へのインタビューは任せるので、これは私が預かりますね」

 クーアの言葉に極楽院は『頼んだよ』と告げて、今しがた購入したグッズ商品を抱えて店を出る。さすがにグッズをもったままのデートは本人も困るだろうという配慮だ。一方で綾志とライは予約札を手に、受付へ向かっていく。

「おまたせいたしました。本日はよろしくお願いします」

 2人の前に現れたのはシマエナガのスカイフェザーであるユーアだ。ゆったりとした動きで礼をする彼女に、ライもまた礼を返し、綾志はひらひらと手を振り、そんなに硬くならなくていいと笑った。

「普段、仕事が忙しくて可愛い姉さんとの縁もなくてなぁ。寂しい男の息抜きに付き合ってくれ」
「お隣の方は……?」
 
首をかしげるユーアにライはにっこりと笑う。

「このような身の上ですから、男性一人との外出となると世間体がよろしくないでしょう? それにお友達が少なくて」

 具体的な身の上や職業こそ口にしないが、ライの外見はシスターである。その言葉には意図的な虚言が含まれていたが、それに気が付いてるのかいないのか、ユーアのまんまるとしていた目は元に戻り、その瞳には納得の色が浮かんでいた。デートらしいデートとは少々毛色が変わるだろうと綾志は前もって確認をする。ここで嫌がることをするとのちの仕事に差し支えが出てしまうだろう。
 
「あら……そういった御事情でしたか。お昼のご予約で様々な外出は経験しましたけれど、そのようなご利用のされかたは初めての経験です」
「不快だったか?」
「いいえ、全然。……むしろ、そうですね」

 私も同性のお友達は多くないのでうれしいです、とユーアは笑った。


●情報と誘惑
 ユーアは芸人一座の中でも、楽器とナイフを扱うのがとりわけ上手な芸人だったらしい。生まれは孤児、だが拾ってくれた両親が芸人団の長だったことが幸いし、腕はもちろん、見目も良いユーアはその一座の中でも多くの客と仲間に愛されて育っていった。しかし、貴族が婚約者を放置し、ユーアの芸をたびたび見に行くことがあったということが発端で、嫉妬深い婚約者がユーアを誘拐し、奴隷商人へ売り飛ばそうとしたらしい。偶然、誘拐現場を目撃した商人からの通報で駆け付けた警備隊のおかげで事なきを得たが、保護はもちろん、身元をくらませるために、ユーアはその商人に、一時的に身元を買ってもらい、その料金を商人が属するグループ傘下の娼館『ふわふわドリーム』で稼いでいるらしい。

「で、その通報した商人っていうのがレノーの父親らしいんだよ」

 極楽院の言葉に、綾志は苦笑する。

「奇妙な偶然というか、なんというか……」
「まぁでもこれで謎は解けましたね。返済の度に会いに行っていたからこそレノーと会う機会もあったわけですし。なにより、とてもかわいらしい方でしたからその手に疎い殿方がうっかり恋に落ちてしまうのも致し方ないと思いましたよ。嗚呼……じつに楽しいひと時でした」

 常連になるのも悪くない、と内心で呟きながら思いをはせるライを置いて、綾志も報告をする。

「友人関係はあまり広くないらしい。アンタが気に入ったものがあればそれをお近づきの印にさせてくれって言ったら『せっかくですから』といって、俺とライの目と色合いが揃いの耳飾りを所望した位だ。いくらか愛情に飢えていそうだった」
「そう見せるのが上手なのか、それとも本心なのか……そのあたりはどうなんだい?」
「7割本心でしょう。3割くらいは言い回しと仕草で誇張していましたが」

 ライがいうなら間違いないと極楽院が告げたのち、報告書をまとめ終わると、それまで静かにしていたクーアが手を挙げた。

「それ、私が報告してもいいですか?」
「報酬の独占さえなければ止めないさ」
「面白s……、いえ。愛の試練というのも、また人生には必要だと思いますから」
「ほどほどにしとけよ?」

 全員の許可が下りれば、クーアは上機嫌にレノーの元へと向かう。純粋ながらも、無垢とは言えぬ行いをした少年にほんの少しくらい『悪戯』をしたところでさしたる問題はない。そもそもレノーの恋が実る結末の方がいくらか薄いのだ。……それならいっそ、自分がレノー君の心を奪ってしまった方が話が早いのではと思考する。報告の為の待ち合わせ場所はいくらか人の目を隠しやすい裏通りだ。

「あ! イレギュラーズのお姉さん。こんばんは。……その、お仕事はどうなりましたか」
「もちろん、上手くいきましたよ。報告書もまとめてありますし、依頼していた商品も、ほら」
 
 レノーが嬉々として受け取ろうと伸ばしたその手に『焦らなくても、逃げませんから』と告げ、そっと掌を重ねたあと、わざと、クーアは屈み、目線を合わせて囁いた。

 ……その夜。純情な少年の初恋は別種の熱に焼かれて死んだ。あまりにも脆いその恋物語の結末へ至る過程は、月と猫だけが知っていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

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