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シナリオ詳細

<深海メーディウム>禍ツ渦へ誘う

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「それで、鮫とか人面魚をバラして何か成果はあったのか?」
 深怪魔が現れ、人魚と称される人面魚が現れ、果ては幽霊船までが現れたダガヌ海域での戦闘から暫くが経過した。イズマ・トーティス(p3p009471)ら依頼の参加者達はなんとか襲撃者達の亡骸を一部ながら回収し、その肉体から新たな情報を得るべく動いていた。過去の事例を考えればその肉体に何らかの情報、場合によっては敵の本拠を特定する情報が得られる可能性も在り得たのだ。
「珠緒はよく分からなかったのですが、外付けの甲殻類の鋏や他のものも含め、鮫同様……その、匂いが強く食べられたものではないと……」
「珠緒さん、何度も言ってるけど間違っても次あんなのが出たら食べちゃ駄目だからね?! ……でも、そうね。鮫本体には特に何かを呼び出したり引き寄せたりする性質はちょっと見当たらなかったかな……?」
 桜咲 珠緒(p3p004426)は解体された鮫にこびりついた匂いを思い返し、口惜しそうに臍を噛む。藤野 蛍(p3p003861)はすっかり混沌の生物に勘違いを覚えた相手にちょっとした不安を覚えつつも、件の深怪魔から得られた情報は多くはなかった、と告げた。となると、次に調べるは幽霊船だが。
「皆、ここに居たか。先日解体した鮫なんだが」
「特に変わった特徴はなかったって聞いたけど……」
 そこに現れたジョージ・キングマン(p3p007332)は、何処か焦りを感じさせる様子で一同の前に現れる。今しがた、その件は終わったと聞いていただけにイズマは思わず首を捻った。
「いや。実は、肉体そのものにはなんの異常もなかったんだが、節足部が本体から切り離した途端に動き出してな」
「ほう……新鮮だったのですね」
「多分違うと思うよ?」
 ジョージの衝撃の発言に色めきだつ珠緒、止めに入る蛍。今更ではあるが、本当に両者は相性がよいらしい。
「で? 節足部は移動したのか?」
「移動はしなかった。が、一方向だけ向いて止まっているし、色々なところに移動させても向きを変えて止まる。どうやら何処かを指しているらしい」
 イズマはその回答を聞き顔を顰めた。恐らくはあの海域を指していることは容易に想像できる。誘い出されているのか、より詳細な場所を示しているのか。いずれにせよ、節足を手に海域に向かえば新たな発見があるかもしれない。……或いは罠に近づいているかのどちらかだ。


「騙されたつもりで来てみるもんだな……本当に居るとは……」
「だが、悠長に構えていられるようではないな。こちらとあの船との間にある渦、あれはかなり勢いが速い。船が引き込まれればひとたまりもないし、かといって放っておけば一方的に砲撃が飛んでくる。当てずっぽうだろうが、当たれば不利だ」
 かくして、節足を羅針盤代わりに海を渡ってきた一行は、先日の幽霊船の姿を確認することと相成った。相変わらず船員の姿は確認できない。もしかしたら、フジツボか、幽霊船そのものが敵である可能性もある。
「……あれ、渦の中心になにかいるね。なんとなく、リヴァイアサンに似てるけど凄く小さい。群れ……?」
「小魚ですか。今度こそ」
「落ち着いて」
 蛍が目ざとくその姿を確認したのは、渦を形成すためぐるぐると回っている姿だった。小魚、というよりは小型のリヴァイアサンめいている。個体能力は遥かに及ばないが、群れで動いているということは『そういうこと』だろう。
 ともあれ、幽霊船が現れた以上は今度こそ逃す訳にはいかない。もしかしたら、あの船にこそ竜宮幣が隠されていても何ら不思議はないのだから。

GMコメント

●成功条件
 幽霊船の完全沈黙(虚滅種の殲滅は条件としない)

●幽霊船
 側面に大型のフジツボを有し、それを砲台として運用する。
 船員はほど近くまで接近できてなお確認できず、存在しない可能性が高い。恐らくは船自体が残留思念などで動いているか、フジツボが動力となっているか、見えていない部分になにかあるかの三択。
 どちらにせよ幽霊船に攻撃を叩き込み続ければいい話である。
 フジツボによる砲撃(レンジ4超まで届くが命中精度がかなり低い。戦闘距離まで近付ければそこそこの命中率。【火炎系統】【乱れ系列】【呪い】などのBSを有す)や、船体ごとの突撃(水中行動者が食らえばダメージ極大)、負のオーラ(自分を中心にレンジ2【不吉系列】【暗闇】)などを用いる。
 初期位置は大渦(直径50m)を挟んで反対側におり、渦に巻き込まれぬよう遠くに控えている。渦を迂回しようとすれば同じように距離を取るだろう。

●虚滅種(ホロウクレスト)×多数
 海中で渦を形成する、リヴァイアサンによくにた非常に小さい亜竜の幻影。
 基本的に渦によって船を引き寄せ破砕することをメインに考えていますが、敵対行動を取られた場合は群れであることを活かし、小型の渦(物中単【足止系列】【出血系列】)や体当たり(物超単:【移】)などを駆使してきます。
 渦は個体数が極端に減った場合に規模が縮小し、最終的には消滅します。
 後述しますが、倒そうとするなら渦より下から攻撃する必要があります。

●禍ツ渦
 虚滅種が発生させる大渦です。
 小型船クラスが5mより近づいた場合は操舵者の抵抗判定となり、失敗すると巻き込まれて破損します(リプレイ時にアイテムに影響はありませんが、当該リプレイ中では乗船不可となります)。
 水中から近づく場合、側面から10mより近付くと同様の判定(「【鬼道】(中)」程度を付与)を行い、失敗した場合【封殺(大)】相当の不利が発生します。
 そのため、渦の下方から回り込み虚滅種を叩く方法が有効です。


●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
 投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
 ※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります

●シレンツィオ・リゾート
 かつて絶望の青と呼ばれた海域において、決戦の場となった島です。
 現在は豊穣・海洋の貿易拠点として急速に発展し、半ばリゾート地の姿を見せています。
 多くの海洋・豊穣の富裕層や商人がバカンスに利用しています。また、二国の貿易に強くかかわる鉄帝国人や、幻想の裕福な貴族なども、様々な思惑でこの地に姿を現すことがあります。
 住民同士のささやかなトラブルこそあれど、大きな事件は発生しておらず、平和なリゾート地として、今は多くの金を生み出す重要都市となっています。
 https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <深海メーディウム>禍ツ渦へ誘う完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月05日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
防戦巧者
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
シラス(p3p004421)
超える者
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
コヒナタ・セイ(p3p010738)
挫けぬ魔弾

リプレイ


「これはちょっと予想してなかったな……一体どういう理屈なんだ、これ?」
「前回取り逃しただけに、今度こそ逃したくはないが。やはり鮫は道理が通じないものなのだな」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は両手に鮫に生えていた節足を握り、ダウジングの要領で渦と、幽霊船を呆然と眺めた。持ち帰った鮫がこんな能力を持ち合わせているなど知らなかったし知りたくもなかった。『絶海』ジョージ・キングマン(p3p007332)は海洋を熟知しているが故にこれくらいの異常は気にしてなさそうだが、鮫だからといって限度はある。何より、ここで足止めを喰らってまた取り逃す愚は避けたい。
「船か……穴が開けば沈んでくれるんですけどねぇ」
「普通だったらそうなんですが、幽霊船なのでわからないですよ。フリーパレット、でしたか? あれ絡みだと余計にやることが増えるんですけど」
「禍ツ渦を消すなら水中に長けた俺達が行かねえとな。イズマ、コヒナタ、そっちは任せたぜ」
 『挫けぬ魔弾』コヒナタ・セイ(p3p010738)は幽霊船の不気味な動きに、あわよくばを期待していた。いたのだが、幽霊船や『この海域』を熟知する『不屈の障壁』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)含めた熟達のイレギュラーズからすれば、それだけでは足りぬということは織り込み済みだ。穴を開けても、不可思議な力で直してくるまである。『竜剣』シラス(p3p004421)は水中だろうと空だろうと行動は可能だが、竜宮の加護を鑑みれば水中で居たほうが都合がいい。少なくとも、撃墜されるリスクを取る理由がない。
「さあ、今度こそ逃がさないわよ!」
「幽霊船にしろ渦を作る魚にしろ、斬り捨てるに迷いなし、なのです!」
 『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)と『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)の二人は、前回の一件から今回に至るまでに色々と見聞きしたのだろう、深怪魔やそれに伴う諸々に対し確実に倒さねばならぬという強い決意を持って臨んでいた。そうして現れたのが、リヴァイアサンの似姿をした存在だったというのは出来すぎた冗談ではあるが。
「幻影……こんなものまで牙を剥くか。じゃが、まがい物如きに手を焼くつもりはない」
「あんなナリでリヴァイアサンを名乗られたくはないよな。俺だって同じだぜ」
 『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)にとって、リヴァイアサンの存在は殊更に重い意味を持つ。『絶望の青』と呼称された、この海域に座した竜種とは汎ゆる意味で縁深い相手であった。その姿を借りて現れた者がいるなら、倒さねばならない。シラスは彼女が海へと視線を向け、身を投げ出すタイミングを取っていることを察している。それに乗じ、最高のタイミングで攻め込もうというのだ。
「これで大丈夫、水中もオーラも怖くない。思いっきりやってくれ」
「ありがとうございます、心強いです」
「任せて! 珠緒さんとなら何も怖くないよ!」
 イズマの響奏術によって船上にいた全員が海を往く力を授かり、幽霊船に近付く不利を退ける力を得た。時間的制約はあるが、さりとてあるとないとでは天地の差だ。珠緒と蛍は口々に礼を告げ、素早く海中へと飛び込んでいく。続けざまにクレマァダとシラスが機を見て飛び込み、全員の安全を確認してからベークとジョージが続く。
 船上に残されたセイとイズマの責任は――はっきり言って重大だ。戻る場所がなくなれば、一同がさらなる窮地に陥る可能性が残されている。舵を握るイズマの手に力が入ったのは無理からぬ話であった。


(取り敢えず海中から渦に……突っ込む? 流石に過酷だけど、渦の生成を止められるならアリでしょうか……)
 ベークは虚滅種の姿を視認すると、それらに向けて己の存在をアピールする。といっても、そこに在るだけで半ば強制的に漏れ出る香りなのだからアピール、といっていいかは疑問だ。
 勢い余って渦に飛び込もうとしたベークであったが、そんなことをしなくても虚滅種達は渦から飛び出し、新たな渦を作らんばかりの勢いと数で襲いかかる。個体の力が弱いため、その肉体を大きく損なうことはない。が、しかし痛いものは痛い。
(畏れ……のようなものか。まさか幼体のわけがあるまい)
 渦の下方から距離を詰めたクレマァダは、ベークの犠牲で勢いを減じた渦めがけ、次々と魔力の波を叩きつけていく。渦の勢いで多少は相殺されているが、それでも水中戦に於いて彼女が後れを取る可能性は薄い。虚滅種も彼女の驚異は理解している筈だが、しかしそちらにかかずらっている余裕はなかった。
(リヴァイアサンとは比べ物にならねえな。この程度の魔力で簡単に調子を崩しやがる)
 シラスの放った混沌の泥が、海中で拡散しながら渦に吸い込まれ、次々と虚滅種の動きに影響を与えつつあったのだ。海中であるがゆえに仲間への影響が懸念されたが、魔術である以上はその心配も薄い。
 そして、ベークとは別の側へと引き寄せられる虚滅種の群体が存在したのも、ひとつの理由。
(珠緒さん、こっち!)
(ありがとうございます……あとは此方で)
 蛍が、十分に距離を取ったところから虚滅種を引き付け、その流れに乗った者達を珠緒が次々と沈めていたのだ。虚滅種は命を失うと、本当に亡霊であったかのように海の中へと溶けていく。
 二人の連携は浅からぬ経験からその練度を上げていたが、水中戦ではあと一歩を仲間に譲っていた。イズマの術式の影響下、そして竜宮の加護下にあることで、地上と遜色ない戦いが出来ているのだ。畢竟、それは虚滅種の行動を大きく制限することにも繋がる。小型の渦を多数起こし、それらを挽回しようとするが、それを狙いすましたようにジョージの一撃が渦の中心に叩き込まれた。

「凄いな、渦がかなり小さくなってきてる……これなら、幽霊船に近付けるぞ!」
「なら、ここからでも幽霊船を狙えますね? あれくらいならボクでも当た――!?」
 イズマは海中の仲間達へと術式を施せる位置を選びつつ、幽霊船に近付くべく舵輪を握る。禍ツ渦の規模が小さくなりつつある状況下なら、幽霊船との距離は詰めやすくなっている。セイの銃の腕でも、十分狙い得るはずだった。が、彼のライフルは唐突に弾詰まりを起こし撃つことすら許されない。その隙を狙い撃つように飛び込んできたフジツボの砲撃は、最悪なことに彼の頭部を正確に穿ち、意識を刈り取りにかかった。……それで倒れなかっただけ、彼は幸運と、そして根性だけはあるようだ。
「済まない、近付くにはまだ早かったか……! 皆に渦を任せきりにするくらいなら、このまま一気に消すしかない!」
 次々と襲いかかるフジツボの砲撃は、射程圏に入ったからか一気にその精度と密度をまして小型船に襲いかかる。中途半端に近付けばこれか。逃げ回っているのは、自分達ではなく渦からだったのか……?
 イズマの脳内で思考が二転三転するが、そんなことを考える前に、海に意識を向け響奏撃を叩き込む。
 見る間に弱まっていく渦は、それでも根絶する様子がみえない。だが、先程よりは格段に『無視できる』レベルだ。大きく渦から距離を離したイズマは、角度をつけて幽霊船へと突っこんでいく。
「あの船、狙いがつかぬと知ったら体当たりのつもりか……! 流石にそれはさせんぞ!」
「フジツボを落とせばバランスも崩せるだろう、当てるなら、あれだ!」
 クレマァダとジョージは渦の無力化を見届けてから即座に海上に顔を出すと、ジョージはフジツボ砲弾めがけ強撃を叩き込み、クレマァダは一気に小型船に飛び上がると、幽霊船による後方体当たりを身を挺して受け止める。当然ながら、ただで済まされる勢いではないが、運命の力に頼る際でなんとか受けきり、小型船の軌道修正の暇を生み出した。驚愕スべきはその体力と、根性か。
「デカいな、だが……」
「軽々に突進したことを後悔させてあげます」
 シラスは、突進後に大きな隙が生まれた船体めがけ猛然と拳を叩き込む。素手であるというのに、船底に罅を入れるほどの破壊力。普通に考えればそれだけで致命傷になりうるが、しかし幽霊船はモノが違った。罅が出来るそばから修復し、どころか竜骨に生まれた破損すらも表向き直してみせたのだ。
 珠緒は船底を経由し側方から飛び上がると、甲板に飛び乗り船内へと乗り込む。蛍も別ルートを用いて潜入に成功、そのまま破壊しつつ船内を進んでいった。
「こちらで砲撃は引き受けます。船は任せました。幽霊船も、多分あの調子なら大丈夫かと」
「わかった。無理はしないでくれよベークさん」
 ベークは虚滅種の消滅を確認すると、すかさずフジツボ砲に向き直り、香気を差し向ける。異形の砲塔といえどもやはり生物ベースか、次々と降り注ぐ砲弾はしかし、ベークを倒し切るには勢いが足りなかった。その隙をついて距離を取った小型船から、ジョージが幽霊船にとりつき潜入していく。次々と巻き起こる破壊の音と、木々が軋む修復音が反響し、状況は混沌を極める。
「ここまで修正力が働いてるのに、クルー一人残されていないとは……やはり、これは竜宮幣によって動く沈没船か」
 四方から聞こえる破壊音に耳を抑えながら駆けるジョージは、内部中層あたりから船尾へと向かっていた。船倉、もしくは宝物庫を探すのが最善と判断してのことだ。
 仲間達もそれぞれ探しているようだが、徹底的な破壊を前提としているためか、船の補修力との押し合いを続けているため探索に目を向ける余裕がなさそうでもある。
「珠緒さん、ここからなら船底を一気に狙えるんじゃないかな?」
「シラスさんが下から破壊を続けています。挟むように攻撃すれば……」
 珠緒と蛍の物騒極まりない発想は、必然的に海中から攻めるシラスにも伝わったらしい。より回転数を上げる拳が、船内からの破壊に呼応し、激しい破砕音が響き渡り。
「――竜宮幣を確保した! ほかに要因らしいものは見つからない! 迅速に撤退するぞ!」
 ジョージがそう叫びながら船内を駆け回り、甲板から海中へとダイブ。
 船底を叩き壊した三人は、船に押しつぶされぬように距離を取る……。


 竜宮幣を失い、イレギュラーズが船に戻ったのを見計らったように幽霊船は急速に朽ちていき、先程修復されたはずの船体の傷や、つけられた竜骨の傷が浮かび上がっていく。最早、何らかの力が働いても航行は無理だろう。後はゆっくり、海の底に沈むだけだ。
「やはり竜宮幣の力だったか。フリーパレットといい、この海域はまだ謎が多いな……だが、朽ちて尚動くことが無くなったのは救いなのだろうな」
「あんなのが徘徊してたら海の平和もなにもあったもんじゃないですからね。沈んで本望なんじゃないですか?」
「もう今日はダイビングは終わりでいいだろ……泳げるのと、泳ぎ続けるのが好きかどうかは別問題だぜ」
 竜宮幣が入った麻袋から一枚ずつ取り出し、ジョージは仲間達に配分していく。どんな経緯で放り込まれたかは不明だが、この数で船一隻を動かせるのか、という驚きは確かにあった。幽霊船そのものへの思い、というよりはそれが徘徊する危険性を考えれば、ベークの言葉も尤もだ。クレマァダやベークら海種であれば話は違うが、満身創痍の体となったイズマとセイ以外で海に挑んだ者は、シラス含め半数が泳ぎ着かれている。
 無理もない。巨大な渦を回避し、撃破しつつ幽霊船と戦ったのだから。
「あの幽霊船は、強力な自己修復機能を備えていました。竜宮幣やフリーパレットは、それだけの力を秘めているということでしょうか」
「なおさら放っておく理由がなくなっちゃったね……」
「それにつけても虚滅種じゃな。絶望の青の生き物や深怪魔はまだ、生物の範疇を留めておったが、あれは……まるで亡霊じゃ」
 珠緒と蛍は、幽霊船そのものになにかの原因があると踏んでいた。だが事実は、竜宮幣の持つ力による変質……つまりはアレ自体が、放置しておくとよりヤバいことになる物体であるという事実。それは今まさに、次々と起きている事件の裏付けともいえようか。クレマァダにとってみれば、それ以上に虚滅種の存在が不気味であり、放置しておくことへの危機感を覚えざるを得ぬものであった。
「ひ……ひとまず帰ろう。俺が操舵しないと帰れないから、それまではなんとか保たせる、から……」
 本当なら意識が途絶えていてもおかしくないイズマであったが、さりとてこの状況から帰還するには彼の存在は不可欠だ。あと一歩で沈没というところまで追い込まれて尚、小型船はその性能を保っている。
 一同は一路、シレンツィオ・リゾートへの帰途に就く。その間、ヒヤヒヤする場面が一度二度ではなかったのは間違いないが。

成否

成功

MVP

ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海

状態異常

イズマ・トーティス(p3p009471)[重傷]
青き鋼の音色
コヒナタ・セイ(p3p010738)[重傷]
挫けぬ魔弾

あとがき

 お疲れ様でした。幽霊船は、沈没船として船底で眠りに就きました。それが幸せというものでしょう。

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