PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ほんの少しでいいから

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ローレット
「今回は海洋貴族からの依頼でね、ヒカリクラゲを確保してきてほしいのさ」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)はカップを持ち上げ、紅茶を口に含んだ。
 幻想ではあまり嗅ぐことのない香りがカップから漂う。
 海洋の茶葉だってさ、と言うショウはイレギュラーズに視線を向けた。
「ヒカリクラゲは……ああ、海洋出身のイレギュラーズは知ってるかもしれないな」
 特定の海域を漂うクラゲの一種。見た目はただのクラゲと大差ないのだと言う。
 月のない夜にぼんやりと光る様は、陸側から見ると大層綺麗なのだそうだ。
 重要な観光資源ゆえに生息海域周辺の海洋貴族が密漁などに遭わないよう、私兵を巡回させて守っているというのも海洋では有名な話。
「それならローレットに頼まなくても、って思うだろ? 依頼してきた貴族が治めているのはヒカリクラゲが生息する海域と程遠い場所なのさ。つまり……これは『密漁』だよ」
 ほんの少しでいい。ヒカリクラゲを持ってきてくれ。
 それが今回の依頼である。最低でも1匹いれば条件は満たしたことになるが、1匹でも獲れば立派な密漁だ。
「まあ、この依頼を受けるかどうかはイレギュラーズに選択権がある。即決しろってわけじゃないから、少し考えてみてごらん」
 ショウはイレギュラーズを見渡すと、海域周辺に出没しそうな海賊や巡回する船の情報が乗る羊皮紙を机へ置いた。

●暗き海上にて
 ぽつり、ぽつりと海が光る。
 否、光っているのは海の中のクラゲだ。
 ホタルのように淡い光を放つヒカリクラゲは数体ずつの群れで海の中を漂っていく。
 その光を邪魔しないよう、海上を通る1隻の船があった。
「お頭、この辺りっすかね」
「あんまり近付いちゃ見つかった時が厄介だからな。野郎ども、さっさと捕まえてズラかるぜ」
 お頭と呼ばれた男が指示をすると、次々と海の中へ網が投げ込まれた。
 船へ引き上げられていくヒカリクラゲ。生け簀に入れられると、光が漏れないよう蓋を被せられる。
「お頭! 船が近づいてきてる!」
「何?」
 見張り台から周囲を警戒していた船員が声を上げた。
 ヒカリクラゲの光に船体が見えたのだ。けれど、それは貴族の船ではない。
「相手が誰であろうと関係ねえ。沈めてやれ!」
 男が声を上げると船は──海賊船は、イレギュラーズの乗る船へ接近し始めた。

GMコメント

●成功条件
 ヒカリクラゲの密漁
 イレギュラーズだとばれないよう帰還する

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、海洋における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●海上
 波は穏やかで、操縦に苦労することはないでしょう。
 天気も悪くはありませんが、月が出ていないので暗闇です。
 ヒカリクラゲのいる海域はところどころぼんやりと光っています。船を進めるのに支障はありませんが、船上で戦う場合はやや見通しが悪くなります。

●敵
・海賊
 OPにある通り、既にイレギュラーズの乗る船に気づいています。生け簀には5匹ほどのヒカリクラゲが入れられています。
 操舵者含めて10名。いずれも曲刀を所持しており、手練れです。
 海賊船には大砲がありますが、今回はなんらかの理由で使用せずに船を接近させているようです。

・巡回兵
 貴族の私兵です。海賊との戦闘が長引くなど、その海域に居続けると発見されます。
 戦闘能力は海賊より若干劣りますが、船が大きく人数もいます。剣や銃など、持つ武器は様々です。
 巡回兵との戦闘は長引けば長引くほど援軍によって人数が増えます。

●ご挨拶
 愁と申します。海洋の悪属性依頼です。
 巡回兵に向かって「我らはイレギュラーズだ!」と名乗り上げるなど、組織に著しい被害を与えかねない言動にはご注意ください。ローレットでも庇いきれなくなってしまいます。
 それではご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • ほんの少しでいいから完了
  • GM名
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月02日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
武器商人(p3p001107)
闇之雲
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
梯・芒(p3p004532)
実験的殺人者
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役

リプレイ

●海とクラゲと海賊と
 空からの光がない代わりに、海からの光が波で揺れる。
「クラゲは派手だがやる事ァ地味だなオイ」
 『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)は船からヒカリクラゲを見下ろしていた。
 依頼人はこれをどうするつもりなのだろうか。
(水槽にでも入れて飼うのかねェ? 見る分にゃキレーだが……)
 それは、海で見るからこそではないのだろうか──なんて。
 ことほぎの頭上を使役する鳥が旋回して行く。
「確かに地味かも。それに密漁で悪名がつくって、幻想に比べると海洋はまったりめな感じかな?」
 ことほぎの言葉に『Code187』梯・芒(p3p004532)が首を傾げた。
 くふふ、と笑う『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)は密漁という言葉にワクワクを抑えきれないようで。
「バレて怒られぬようにせねばの」
「こっそり、こっそり。ワクワクするね。ヒヒッ」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)も楽し気に口端を上げる。
「ほう、天使の眼前で悪事を働くか?」
 『演劇ユニット』Tricky・Stars(p3p004734)──稔がそう呟くと次の瞬間姿が変わる。
 深い青の髪から鮮やかな橙の髪へ。外見の変化に伴って中身も変わる。
「依頼なんだから仕方ないじゃん」
 それにさ、と虚は海面を見る。
 1匹捕まえたとしても、この景観を損なうなんてないだろう。正確な数を知るものだっていないに違いない。
「だから大丈夫……あ」
 他の船の存在に気づき、虚は思わず声を上げた。
 巡回船のような大きな船ではない。だが、こんな場所へ船を勧めているのだから少なくとも悪い人間が乗っているのだろう。
 例えばイレギュラーズ達のような密漁、とか。
 虚より極僅か先に船の影を視認した男──『カオスシーカー』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)が肩を竦めた。
「いきなり同業に見つけられるとは幸先不安だねえ」
 近付いてくる相手が臨戦態勢であろうことが、向こうの船上から雰囲気で伝わってくる。
 隣にいた『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)もその雰囲気を感じ取った。
「貴重なものほど欲しがるのは人間の習性なのかな?」
「かもしれないね」
 ルーキスの言葉にラルフは頷いた。
 依頼人と目の前の同業者。用途は違えど、貴重なクラゲを欲する者へ渡っていくのだろう。

 船の隅で『蒼海守護』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)はじっと海面を見つめていた。
 ヒカリクラゲ。海の生物。それはココロにとって家族のようなもの。
 依頼内容はその家族を海から引き離す行為だ。誰かが遂行すると言うのなら──
(──私が行けば、より密漁数を少なくできるはず)
 少しして聞こえてきた仲間の声に、闇に紛れる海賊船の姿に。
 ココロはきゅっと唇を引き結び、海の中へと飛び込んだ。

 船の側面へ回り込んできた海賊船は、向かってきた時同様に大砲を使うことなく白兵戦で仕掛けてきた。
「なんだ、変な奴等ばかりだな」
 海賊の1人がそんな感想を漏らす。しかし曲刀を抜くと残忍な笑みを浮かべ、芒へと斬りかかった。
 近くにあった木箱へと隠れた芒は、その陰からナイフで素早く攻撃を仕掛ける。
 船の中心で榊神楽を舞うデイジーは、それが終わると近くまで迫っていた海賊の攻撃を見て咄嗟に体を捻る。直撃を回避し、デイジーは武器で──つぼなので殴り倒したが性格かもしれないが──薙ぎ払った。
「殺さない程度に威嚇で宜しくねぇ」
 ルーキスにそう告げられた翼狼は海賊の元へ飛来し、鋭い爪で海賊を襲う。
「なんだこいつ……!」
「ひるむんじゃねぇ! やっちまえ!」
 1人の男が声を出すと海賊の動きがまとまった。
 それは不可解なものへの怯えを捨てさせるものではないが、こちらへの敵意を明確にする。
(あれが頭目かな)
 芒はそう判断しながら、いるであろう副長を探す。
 ラルフはサイドアームについている拳銃で海賊の腕を撃ち抜いた。
 残念ながら──海賊にとっては不幸中の幸いだが──これといった状態異常にかかっていない海賊に、弾へ込められた呪いは効かない。しかし、その弾単体の威力だけで十分な脅威だ。
 虚は守りの姿勢を崩さず、海賊の攻撃を盾で受け止めた。そうして相手に掴みかかると、再生と反対の力──破壊の痛みに海賊が悲鳴をあげる。
 武器商人も同様に細胞を破壊させる力でもって海賊に襲い掛かった。
 海賊達の表情に再び動揺が走り始める。
 巡回船がいるのだから当然武の心得はあるだろうと踏んでいた。しかしその強さは海賊にとって予想外。
 なにより武器商人とラルフの余裕を崩さない表情が、逆に海賊達の余裕を崩すのである。
「こいつら、徐々に傷が塞がってないか……?」
「そんなわけないだろ! かかれ!」
「余裕ぶった表情を引きはがしてやる!」
 こうなれば自棄だ。
 その攻撃を躱し、あるいは直撃を避けながら武器商人は海賊達に問う。
「船長はどのコ?」
 比較的大きなその声は、頭目である男を振り返らせた。
 魔力を放出して攻撃しつつ、海賊たちの様子を見ていたことほぎがそのタイミングで声を上げる。

「なぁ。お互いにとって利益のあるハナシがあるんだが、乗らね?」

 ことほぎの言葉は予想外であったのだろう。
 頭目の眉が思いきり寄せられる。
「どういうこった」
「話の前に、戦いを止めてくれないかい?」
 武器商人がそう問うと、頭目が一瞬押し黙り──「野郎ども!」と手下を止めたのだった。 


●対話
「少ない気がするが……まあいい。見れば見るほど珍妙なやつらばかりだな」
 一旦休戦した船上。海賊は芒がどこかに潜んだことはわかっているようだ。
 しかしそれを追求することなく、頭目はイレギュラーズ達のなりを見て困惑の表情を浮かべた。
 地味な服装、それはこの海で見つかりにくくするためと納得できる。
 しかしベールで顔を隠していたり、仮面をしていたり、フードを被っていたりと──
「芸人の集団か?」
「いいや、キミ達の同業みたいなものだよ」
 キヒヒ! と笑う武器商人の肩には黒い鴉が乗っており──外見はやはり芸人の集団である。
 しかし先ほどの戦い。その実力はただの芸人ではないと海賊達に知らしめた。
「──おい、そこのあんた。俺の顔に何かついてるか?」
 頭目がことほぎの視線に気づき、じっと見つめ返した。
(流石に、操られちゃくれねェみたいだな)
 催眠にかかってくれれば、と思ったがそこは海賊団を率いる人間である。一筋縄ではいかない。
 目を閉じたことほぎはいいや、と頭目に小さく頭を振った。
「それで、話だが──」
「おっと、その前に……交渉中も密漁しようなんざ、対話を望んだ奴のすることかい?」
 今、この場はどちらのものとも決まっていない、と。
 話を遮った頭目は、目ざとく船尾で網を持っていたルーキスのことを指摘した。
 ルーキスは目を瞬かせると網を手放し、両手を上げた。
 頭目とルーキスの間に虚が素早く割り込み、へらりと笑みを浮かべる。
「別にお前らの取り分寄こせとか言わないからさ。な? 時間がもったいねぇよー」
「我々は1匹捕らえればいいのだ」
 続いたラルフの言葉に頭目が怪しむ表情を浮かべる。海賊の誰もがそうだ。
 貴族に見つかるかもしれない場所まで、たった1匹の為に来たのか。
 そんな疑惑の念がありありと見える。
「だからさ。キミたちも、我(アタシ)たちも時間の勝負なのだし、ここはどっちも見なかったフリをするのはどうだぃ?」
「妾たちは1匹確保すれば事足りる故、今後も邪魔することは無いのじゃ」
 いつ来るかも知れない巡回船。危険なのはイレギュラーズ達も海賊達も変わらないのだ。
 時間が惜しい。そして何より、いざというときの為戦力を残しておきたいはず。
 武器商人とデイジーの言葉に頭目はまだ頷かない。しかし、イレギュラーズを見つめてくる瞳に揺らぎは確かにある。
 さらに畳みかけるのはラルフだ。
「戦闘が起きる、長引く。それらは全て、密漁に手間取るということだ。いずれ巡回隊もこの辺りを通るだろう。我々はまだ確保していないし、我々を倒せた所で其方もただでは済むまい」
 傷を負えば、その後の非常事態に対して万全を期すことはできない。しかも海賊を相手取るのは腕に覚えのあるイレギュラーズだ。
 ラルフ達のことをイレギュラーズとわかっていなくとも、その実力はもう知っている。
 それに、とラルフは海賊船を見た。
「その船の大砲があるなら面倒な白兵戦をする必要もない。不意を撃ってそれで終わり。……しなかったのは君達にとって不都合だからだろう? 益々、ここはお互いに見なかった事にするのが賢明と思うが」
「……ああ、その通りさ。こんな場所で撃ったらクラゲが移動して、1発でばれるってもんよ」
 ラルフの指摘に頭目は肩を竦めた。
「あんたの言う通り、さっきのまま戦ってりゃいい所相打ちだ。双方に不利益しかねぇ。確かに見なかったことにするのがこの場では最良だろうな」
 明らかにホッと安堵の表情を広げるイレギュラーズ達。
 そこへ「ただし」と頭目が釘をさす。
「先にいたのは俺達だ。クラゲを捕まえるなら離れた所でやってくれ。いいな?」
「勿論」
 ラルフが頷くと頭目も頷き返す。
 交渉成立だ。
 海賊たちは自らの船へ乗り込む。イレギュラーズはそれを見届け、ゆっくりと船を動かし始めた。

 そうして、デイジーの所持する船は海賊船よりやや離れた場所に到達した。
「交渉は上手くいったのね」
 ヒカリクラゲの群れの下を通り、船尾に取り付けてあった縄梯子からココロが上がってくる。
 海賊との交渉時、ココロは1人海賊船へ侵入していたのだ。交渉決裂の際は誰より早く生け簀へ辿りつき、そこからクラゲを失敬するつもりだったのだが。
(戦わなくていいなら時間もかからないし……それに、わたしが来たことでクラゲを少なく持って帰れるのは変わらない)
 そう、彼女の目的は『最低数での依頼成功』である。クラゲを密漁しない、仲間に密漁させないではないのでハイ・ルールに反してはいない。
 船尾のほうでルーキスが網を引き、持ってきていたつぼにヒカリクラゲを入れる。一緒に海水もいれ、光が漏れないよう蓋をした。
「捕まえたよ」
「妾も捕まえたのじゃ」
 海に素潜りしていたデイジーが海面へ顔を出す。その手に握られているのはきめの細かい網だ。
「1匹捕まえられたなら、何匹も捕まえなくていいんじゃないかなって思うの。最低条件は1匹だったよね?」
「でも、折角なら雌雄で揃っていた方がいいと思うぜー? ま、違いがわからねェから聞いてみるんだけどよ」
 ココロの言葉にことほぎが首を傾げた。
 雌雄揃っていれば繁殖できるかもしれない。1匹なら死んでしまったら終わりだが、繁殖できるならその方が長く楽しめるだろう。
「わたし、できれば1匹だけを持ち帰りたいの。持って帰りたくないとは言わないけれど、海の生き物は兄弟や姉妹みたいなものだから」
 ココロがそう告げると、ことほぎは納得したように頷いた。
「身内か。ま、依頼は成功するしいいんじゃねェの?」
 ルーキスの持つつぼごと渡してしまえば問題はない。
 その時芒と、虚と入れ替わった稔が警戒を声に滲ませた。
「皆、武器を持っておいて」
「海賊がこちらへ向かってきているようだね」
 彼らの見る方角には、夜闇に紛れてうっすら船体の影が見える。
 一体なぜ。
 デイジーが船を動かそうとしたが、海賊船に回り込まれる方が早かった。
 横付けされた船から海賊が乗り込んでくる。
「交渉は決裂のようだね」
「まあ、法の外の口約束なんて薄紙みたいなものだしね」
 ラルフの言葉に返した芒は向かってきた海賊の刀を屈んで躱し、その死角にいた頭目へ切りかかった。
(今回はなるべく殺さないように我慢、我慢、っと)
 本能を抑えるように深く呼吸をしながら、芒は物陰に隠れて頭目の攻撃をやり過ごす。
 一方、加勢しようとしたラルフは切りかかってきた海賊の攻撃を受けて後ずさった。目の前に立ったのは2人。先程の戦いで多少は作戦でも立ててきたのだろうか。
 どうやらこちらを倒してからになるらしい。
 芒と同じように攻撃を受けた稔はそれを盾で押し留め、逆の手で海賊の腕を掴んだ。
「ぐ、ぎゃああぁぁ!」
 掴まれた箇所が壊死していく痛みに海賊は稔の手を振り払い、距離を取って睨みつける。
 その背後から少女の悲鳴が上がった。
「ココロ君!」
 ラルフが少女──ココロの名を呼ぶ。
 肩を押さえたココロに切りかかろうとした海賊は、しかし横から放出された力に呑まれ床へ伏した。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう」
 ことほぎに礼を言ったココロは船上を見渡し、傷を多く付けた仲間へ回復を施す。
 疑似神性を武器である秘宝へ下ろして戦うデイジー。海賊の影から現れたもう1人の海賊にルーキスの翼狼が襲い掛かった。
 しかし人の壁は途切れず、さらにもう1人。その海賊はルーキスの懐まで肉薄し、その曲刀を横へ薙ぐ。
「おっと」
 薄皮1枚を犠牲にルーキスは跳び退き、手に持っていた魔導書で──
「うぎゃっ」
 殴りつけた。
「不用意に近付くほうが悪いのさ」
 ふん、と鼻を鳴らしたルーキス。新たに向かってくる海賊を視界に認め、再び魔導書を開いた。
 人骨──アンデットを身に纏った武器商人は、怪し気な笑みを浮かべながら海賊へ衝撃波を放った。それはラルフ同様に複数人立ちはだかるうちの1人へ直撃する。
 しかし。
「おや、威力が足りないようだねぇ」
 当たり所が良かったのか、海賊は2,3歩ほどよろけただけ。もう1度と、武器商人が衝撃波を放つと今度こそその体は海の上へ吹っ飛ぶ。
 しかしそこで慌てる海賊はいない。斬りかかってくる他の海賊から急所を守りつつ、武器商人は落ちた方を見た。海に落ちた男は泳いで海賊船に付けられたはしごから上がり、再びイレギュラーズの乗る船へ渡ってくる。

「これでもくらえ、なのじゃ!」
「くっ……こいつ、しぶといぞ!?」
「キヒヒッ……我(アタシ)はまだまだ頑張れるよ」
「かかれっ、いつか倒れるに決まってる!!」
「デカい声あげてると、巡回船に見つかっちまうぜ?」
「全くだね。そもそも、奇襲を仕掛けようとすることも無駄に感じるが……、っ」

 斬り、斬られ。少しずつ体へのダメージは増えていく。
 やがて膝をつき床に投げ出される体が増えていく。
 双方に満身創痍。そんな時だった。

「お頭!」
「皆!」
 海賊の1人と稔の声がほぼ同時に響く。そして、次の言葉も異口同音に。

「「巡回船が来た!!」」


●運の女神が微笑むのは
「ちっ……野郎ども! 引き上げるぜ!!」
 頭目の言葉に海賊の一味は素早くイレギュラーズ達の前から踵を返す。
「あんたらもさっさとズラかったほうがいい」
 捕まるぜ、と告げて頭目は海賊船へ戻っていった。
 海賊船はあっという間にクラゲの光が差さない場所を通って遠ざかっていく。
「妾たちも逃げねばの。ヒカリクラゲはちゃんと確保できているのじゃよな?」
「うん、あるよ」
 デイジーの言葉にルーキスが頷いた。先程の密漁時に使っていたつぼ、その上に乗せていた板を小さく外す。
 そこから漏れた光に一同はクラゲがいることを確認した。
 デイジーの操る船は巡回船よりゆっくりと、しかし海賊船と同じように光と光の間にある影を縫って進む。
 緊張が船の中を走る。
 ルーキスはつぼをしっかりと抱え、他の者も戦闘で負った傷を庇いながら身を低くして巡回船を伺った。

 実際より長く感じたであろう時間。
 巡回船の目を潜り抜け、イレギュラーズはどうにか光の差さない海域まで辿り着いたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

武器商人(p3p001107)[重傷]
闇之雲
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)[重傷]
我が為に

あとがき

 お疲れさまでした。無事ヒカリクラゲが届けられましたので何よりです。
 今回の重傷は参加者の中で継戦能力があり、海賊としぶとく戦った為の判定です。プレイングが悪かったわけでは決してありませんので、名誉の負傷とお考え下さい。

 それではまたご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

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