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シナリオ詳細

<深海メーディウム>空飛ぶナスと夏の思い出

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ナスとの思い出
 星降る夏の夜にそれは現れる。
 流星たちの合間を、足の生えた『なすび』がぴょんぴょん跳ねて駆けていく。
 それは夏になれば見掛けられるありふれた光景で、流星に瞳を輝かせる恋人の肩を抱いて空飛ぶなずびを指差し「ご覧、なずびが元気に跳ねているよ」なんてロマンチックに囁くのが夏の定番だ。
 花火大会と重なった時なんてもう最高である。煌き燦々と降り注ぐ火花を背にした、逆光のなすび。なんてクールで美しい風景なのだろうか。
 夏と言えば、そう。
 空飛ぶなすびのことを想像する人が混沌には多く、夏=ナスなぐらい夏の思い出には欠かせない存在――NASUBI――。

●ここまでほぼ記憶を捏造していました!
 ――夜廻り中に海辺で見つけたフリーパレットが言いました。
「あのね、お空をとぶナスをたべてみたいの」
 空飛ぶ、ナス。
 ちょっとどういうことかわからない。
「空飛ぶナスって何?」
「お空をとぶナスだよ。たべてみたいの」
 何度聞き返しても答えは同じ。フリーパレットは夜空を見上げながら、「ナス、おちてこないかなぁ」とぼんやりと口にしていた。
(……ナスって空から落ちてくるものだっけ?)
 困惑を覚えながらも、劉・雨泽(p3n000218)もフリーパレットと並んで、かれの視線と同じ方向へと顔向ける。月に雲が薄らと掛かる、静かな夜だった。
(空飛ぶナスって何だろう。この子は死ぬ間際に幻覚でも見たのかな……)
 そうだとしたら少し可哀想だ。雨泽が夜明けまで、フリーパレットと星の瞬く空を見上げていた。

「空飛ぶナスって何……」
 結局空飛ぶナスを観測できなかった(本当にいるのすらわからない)雨泽は、ローレットでテーブルに肘を預けて遠くを見ていた。
 頭の中を締めるのは『空飛ぶナス』と言う単語一色。
 なすが、空を飛ぶ?
 何で? 何のために?
 はっきし言って、さっぱり解らない。
「私、空飛ぶなすびを知っていますよ」
 しかし天はフリーパレットと雨泽を見捨ててはいなかった。
 パチンと夢から醒めたような面持ちで見つめる先に居たのは、紺色のミディアムボムの少女――楊枝 茄子子(p3p008356)であった。
「本当に?」
「ええ。練達では飛んでおりますし、この時期ならば世界各地で見られましょう」
 現実では初めて会う茄子子は、にこりと如何にも聖職者らしい笑みを浮かべていた。
「もしかして、空飛ぶナスって精霊馬?」
「精霊馬? いいえ、私はそういう種であるとしか聞いておりません」
「それって食べられるのかな」
「はい。浅漬けにすると美味しいです」
 食べられるんだ……。
 茄子子から話を聞いても、雨泽の頭からは『本当に?』が消えてくれない。
「フリーパレットが食べたいって言っていたのだけれど、手を貸してもらっても良いかな?」
 僕は空飛ぶナスに詳しくなくて……と経緯を掻い摘んで説明すれば、勿論ですと茄子子が微笑んでくれて心強い。
「せっかくなので、皆さんで食べましょう。なすび、美味しいですよ」

GMコメント

 行きは胡瓜の馬、帰りは茄子の牛。
 最近は魔改造精霊馬もあって、大変興味深いですね。壱花です。

●シナリオについて
 フリーパレットの願いを叶え、竜宮幣を得ましょう。
 今回の個体のお願いは『空飛ぶなすびを食べたい』です。フリーパレットのために、なすびを調理しましょう。
 時間帯は夜。流星が観測できる日に、なすびが空を飛んでいます。
 何を言っているかわからない? わたしもわかりません。飛んでいます。
 なすびは何処かへ帰るっぽい感じなのですが、たまに足を滑らせて落ちてきます。おっちょこちょいですね。落ちてきたなすびは砂浜に突き刺さっているので引っこ抜きましょう。
 近くの海の家を借りているので、そこで調理が出来ます。

●フリーパレット
 カラフルな見た目ですが、死んだ人たちの未練であったり、思念の集合体です。
 竜宮幣に砂鉄のように結びつくことで実体化しているため、願いを叶えて未練を晴らしてあげることで成仏し、竜宮幣をドロップします。
 好き嫌いはないタイプです。

●なすび
 割り箸のような足の生えたなすびです。空を飛んでいますが、普通のナスの二倍くらいのジャンボなすびです。(今回の個体は)
 浅漬けにすると美味しいと茄子子さんが言っていましたが、焼いてよし、煮付けてよし、一夜漬けにしてよし……と何でも美味しいです。
 よく漬け込まないと不思議な加護で刃が通らないので、切る場合はまずは何かに漬け込む必要があるようです。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
 投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
 ※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります

●NPC
 呼ばれれば、弊NPC『浮草』劉・雨泽(p3n000218)がご一緒します。
 話し相手が欲しい等、お気軽にお声がけください。

 それでは、素敵なプレイングをお待ちしております。

  • <深海メーディウム>空飛ぶナスと夏の思い出完了
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年08月24日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
エル・ウッドランド(p3p006713)
見たからハムにされた
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
楊枝 茄子子(p3p008356)
古竜語魔術師(嘘)
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
ミニスカ☆プリン
型破 命(p3p009483)
金剛不壊の華
深海・永遠(p3p010289)
海の不発弾

リプレイ

●こころ尽くし、なすび尽くし
「落ちついて聞いて欲しい……なすびはね、飛ぶんだ」
 顎の下で手を組んで、『古竜語魔術師(嘘)』楊枝 茄子子(p3p008356)は神妙な顔でそう告げた。その言葉を聞いた殆どの仲間たちには「え、そうなの?」なんて表情はない。あるとすれば『無』だ。もしくは「何言ってるの?」とスルーである。
 そんな中、「あっ、うん、知ってる知ってる」と笑顔で肯定してくれる『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は優しい。けれどそれは、彼女が旅人だからかもしれない。この混沌という世界に召喚されて早5年。野菜は飛ぶし走るし湯に浸かる――そういう場面を見てきてしまったから、もう『そういうもの』だと思ってしまっている。
「こっちではこういうのが普通なんでしょう?」
「ちょっと何を言っているかよくわからないな」
 生まれも育ちも混沌であろうとも、早々そんな不思議野菜たちに遭遇したりはしない。しないはずなのだ。純粋な瞳を向けられた『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は腕を組み、まあ見に行ってみるかと茄子子の案内で海辺へと向かった。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……飛んでますね」
 見上げた夜空には、キラリと光って落ちていく星。と、茄子。
 棒のような足を動かして空を駆ける茄子。
 何度瞬きしても、何度目をこすっても、確かに茄子が空を飛んでいる。
 現実逃避したそうな顔をしているイレギュラーズたちが数名いるが、『とべないうさぎ』ネーヴェ(p3p007199)はポツリと呟いて現実を受け止めた。何故飛んでいるかはわからない。けれど実際に飛んでいるからには、きっとそういうものなのだ。
「あ、茄子だ! 丸くてかわいいなー」
 しかも砂浜に突き刺さり、茄子のお尻部分がニョッキリ生えている。手足(?)をバタつかせている生きの良いなすびに近付いた『海の不発弾』深海・永遠(p3p010289)は、なすびの回りを周って確認した。ずっと海に居たから知らなかったけれど、海の外では茄子は飛ぶし動くらしい。まだまだ知らないことがいっぱいだなー。
「――そうか、もうそんな時期なのだな」
 空飛ぶなすびに動じない『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は、空を見上げてフッと余裕たっぷりの笑みを見せる。訳知り顔と言っても良い。もしかしたらその道(不思議野菜)に通じる第一人者なのかも知れない。空飛ぶなすびの旬の時期を口にするやはり詳しい汰磨羈に、エイヴァンが『何を言っているか解らない』の表情をした。正直、彼はずっとそんな表情だ。きっと解りたくもない世界なのだろう。うんうん、わかります。
「落ちているナスと空飛ぶナスってどちらが美味しいのでしょう?」
「今! 飛んデイルヤツダろうッ!!」
 お腹をぐぅと鳴らした『見たからハムにされた』エル・ウッドランド(p3p006713)が口にすれば、夜空を見上げた『やわらか卿』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)がビシッ! と空を元気に駆けているなすびを指差す。空を飛んでいる……つまり、鮮度は抜群で活きが良い。良いはずだ。
 そっかぁと相槌を打ったエルの頭の中では、何故動き回っっているかの謎よりも美味しいナスを食べる瞬間の想像が占めていく。
「よしあれ取ってこよう!ㅤいくぞみんな!」
「ナスをつかまえるの? すごいねー」
 砂浜に落ちているなすびを引っこ抜くのかと思っていたら、どうやら新鮮ななすびを空で狩って(収穫?)来てくれるらしい。力強い茄子子の声に、フリーパレットは手をパチパチと叩いて喜んだ。
「任セロフリーパレット! 良いレシピヲ思いつイタ!」
 > pudding・can・Flllllllly!!! <
 プリンが飛んだ。いや、マッチョが飛んだ。……何れにしろ、字面が酷い。
「わたしも、いきますの」
「己れの知っている茄子とは違うが……まぁ、食えれば問題無いな」
 半透明の尾を揺らして飛び上がった『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)に続き、茄子子がノリで歌った羽衣賛歌で飛行を付与された『金剛不壊の華』型破 命(p3p009483)もついてきてくれた。
「…………」
「ボクたちも引っこ抜いていこうか」
「そうだな。よし、どっせい!」
 明るい焔の声に、何とも言えない顔で顎を撫でていたエイヴァンも空から視線を外し、永遠が勢いよく吹き飛ばしてしまった茄子を拾い集めていく。鷲掴みにすればなすびは足をジタバタと動かして、エイヴァンはもう、考えるのをやめた。
「この足は、抜いていい……のですよね?」
「調理の邪魔になるであろうしな」
 ネーヴェが首を傾げるとすかさず汰磨羈が首肯し、ジタバタと嫌がるなすびの少しだけ哀れな様子にごめんなさいと心の中で謝りながら足に手を掛けると、それはスポンとあっさり抜けた。
「足が抜けるとただの茄子だね」
 おとなしくなった茄子を掴んでジッと見つめるエル。
 手にはしっかりとしたなすびの弾力が伝わってきて、新鮮であることを伝えてきているようだった。
「ただいまー!」
「たくさんとれましたのー」
 砂浜に刺さったなすびたちを引っこ抜き、ついでに足も引っこ抜き終わった頃、空へと飛んでいっていた命やノリアたちがなすびを抱えて帰ってきた。ジタバタと足を動かしているなすびたちはこれから足を引っこ抜かれる宿命(さだめ)だ。
 そのままでは固くて包丁が入らないことは、茄子子から先に伝えられている。そのためイレギュラーズたちは思い思いになすびを漬け込むことにした。
「よく漬け込めば聖なるなんたるかが溶けて刃が通るようになるからね。みんなもよく漬け込むんだよ。私は浅漬と丸ごと焼いちゃうつもり」
「わたしはにんくと一緒に油でいため、油を染み込ませますの」
 茄子のグリーンカレーを作るのだと微笑むノリア。
「私は三種類の漬けを行おうと思う」
 辛味オイル漬けに味噌田楽、そして糠漬けはご飯にも酒にも合うと笑む汰磨羈。
「己れはアレ食いたいんだよ、アレ。まーぼーなす、ってやつ。豆板醤に漬け込んでみるか」
 知り合いから作り方もばっちり聞いてきた命は、はたと気付いてフリーパレットの前にしゃがみこんで視線を合わせた。
「フリーパレットは辛いの食えるか?」
「ピリリはすきなの。からすぎはわかんないの」
「辛くなりすぎないようにするな」
「うん!」
 好き嫌いは基本的にはないけれど、それは一般的な料理の、一般的な味付けに言えるものだろう。ゲテモノだったり飛び抜けた味のものは、食べてみなくてはフリーパレットもわからない。
「私は水に浸した後、揚げ浸しにします。それから、皆さんの茄子料理の味が濃さそうですし、ご飯も炊きますね」
「ごはんもすきー」
「おいしく炊きますね」
「うん!」
 炊きたてのホカホカご飯と皆の作った料理を食べられる時が待ち遠しい。
「それじゃあ俺は無難にデザート寄りの……」
「プリンに漬ケよう! 最高ノ茄子プリンを作ルゾ!」
 茄子ゼリーには負けない! と強い意思を見せるマッチョ。過去にゼリーと何かあったのだろうか。因縁の対決とか、なんかそういうの。
「え? プリン漬け?」
「って、プリン? ナスとプリン???」
「……えっ、プリン?ㅤ …………えっ?」
「ぼくたち、プリンすきだよ」
「オオ! エライゾ、フリーパレット! 因ミニ、プリンとゼリーはドチラが好キダ?」
「たぶんプリン? なすのプリン、たのしみだなぁ」
 イレギュラーズたちの困惑を他所に、フリーパレット自身は茄子プリンを楽しみにしている様子。よしよし偉いぞとプリン愛に溢れているマッチョはフリーパレットを大いに撫でた。
「オレは少し茹でてから肉詰めにするかー」
「プリ……いえ、ともあれ! わたくしは、美味しく食べたい、ので! ケチャップを、どばどば、して……ケチャップ漬けに、します!」
 陸の料理に詳しくなく、プリンに動じなかった永遠がのんびりと口を開けば、ちょっぴり動揺したネーヴェもトマト煮込みにすると宣言した。くたくたになるまで煮込んだトマト煮は、永遠が作る肉詰めの上に載せてもきっと美味しいやつだ。
 プリン漬けにされるなすびの行方は気になるけれど、イレギュラーズたちは調理を始めるのだった。

●おいしいなすびの時間
 食卓を彩るのは、沢山の茄子料理。
 揚げ浸し茄子、茄子の一本焼き、茄子のトマト煮込み、麻婆茄子、茄子の肉詰め、茄子のグリーンカレー、それから茄子の味噌汁。ホカホカの炊きたての白いご飯がすぐに無くなってしますのでは? と思ってしまうくらいに、おかずは沢山。
 漬物は、浅漬、辛味オイル漬け、糠漬けと、箸休めに丁度良い。
 エイヴァンとマッチョが用意したデザートは、食べる直前まで冷蔵庫と冷凍庫でひんやり寝かせてある。
 時間の掛かるものから調理を始めたが、それでも作るものによっては掛かる時間がだいぶ違うから、手の空いている者は――勿論フリーパレットも出来るだけお手伝いをしてテーブルの上をいっぱいにした。
 ご飯の炊けるお米の甘い香りが漂った頃には、料理の香りに刺激されていたお腹がぐぅと鳴ったものだ。
 テーブルに料理を並べ、皿を並べ。お誕生日席にフリーパレットを座らせたら、楽しい空飛ぶなすびの試食タイム。
「はい、それではみなさん手を合わせまして、いただきます」
「「「いただきます!」」」
 茄子子の音頭に合わせ、重なるいただきますの声。
 料理が多いとどれから食べようかと悩んでしまう。
 けれど、フリーパレットにはフリーパレットの好みがあるだろうから、どれから食べてと勧めず、自由に選んで食べてもらうことをイレギュラーズたちの間で取り決めた。自分たちもフリーパレットと同じものを同じペースで食べずに、自由に食べていく。
「カレー、おいしいの」
 まず最初にフリーパレットが気になったのは、一番匂いのあるカレーだった。
 最初に炒めたから型崩れのない茄子と、鶏肉とピーマンは食べやすい大きさ。食欲を誘う香辛料の香りは辛そうだけれど、ココナッツミルクが辛さを押さえてくれている。
「お口にあって、何よりですの」
「ちょっとあまいの、おいしいね」
「お米にもこだわっていますの」
 ノリアのカレーを掛けるご飯は、エルとは別にノリアが炊いたものらしい。大好きな人が作ったお米なのだと告げれば、フリーパレットは「のうかさん?」と首を傾げていた。
「はふはふ。からいけど、ちがうあじ」
 麻婆茄子を口に運んだフリーパレットは、カレーとは違う辛さにご飯をもぐもぐ。
 豆板醤を漬け込んだ茄子と豚ひき肉と生姜とニンニクを炒め、味付けは――中華料理屋ではないから甜麺醤が無かったため、味噌と醤油と砂糖で代用した。知人から教わったレシピのメモ書きをよく読んで、ちゃんと火を止めて水に溶かした片栗粉を混ぜたからダマになることもなかった。
「ん。初めて作ったけど美味いな」
「おいしー」
「箸休めに漬物はどうだ?」
「浅漬けも美味しいよ」
 漬物の王者糠漬けと、漬物の定番浅漬。
「どっちもおいしい」
 しんなりと柔らかくなっているものの、やはり弾力があるのが良い。
 心地の良い咀嚼音を響かせて漬物を食べ、辛味オイル漬けも食べる。
 フリーパレットもだが、イレギュラーズたちもご飯がみるみる減っていく。
「味噌田楽も優しい味で美味しいよね」
「焼き茄子も酒のつまみによいよな」
 うんうんと頷いた汰磨羈は、そこでカッと目を見開いた。
「しまった。私としたことが、重大なミスを犯してしまった!」
「どうされましたか?」
「どうした?」
 あまりに神妙な様子に、全員の視線が汰磨羈に集まるも――、
「うむ……酒を持ってくるのを忘れたのだ」
 なぁんだそんなことかと響くパリポリ音。
「うん。肉詰めもいいが、トマト煮込みを乗せると更に良いな!」
「ご飯にのせても美味しい、ですよ」
「ぼくたちおにくもすき」
「ご飯に合うし、余ったらこれでチキンライスを作ってオムライスにしちゃっても美味しそうだよね!」
 焔の何気ない一言で、おいしそう! とネーヴェとフリーパレットが目を輝かせた。他の料理もそこからのリメイク料理を話し合えば、また茄子の可能性の幅が広がっていき、茄子子も機嫌よく美味しいなすびに舌鼓。
「ご飯のおかわりは大丈夫ですか?」
「あ、おかわりほしい!」
「俺ももらおうか」
「己れも」
「お味噌汁のおかわりもあるからね!」
 揚げ浸しは、揚げ茄子を出汁に冷やしてしっかり冷やしたから、お出汁がシミシミ。大根おろしと生姜で好みの味にできるのも良く、味が濃い料理を食べたらついつい箸が伸びてしまう。
 ご飯も茄子の味噌汁も、やはりどれだけでも食べれてしまいそうだ。
 空飛ぶなすびは普通の茄子よりも大きくて。それを沢山捕まえ――収穫して料理をこさえたから、量も多い。けれど着実に減っていく料理たちとともに上がるたくさんの「おいしいね」の声たちに、フリーパレットは嬉しそうにうふふと笑っていた。
 ひと通りフリーパレットが箸をつけたのを確認したのなら、ガバリとマッチョが席を立つ。
 いそいそと向かう先は冷蔵庫。
 そして冷蔵庫には――。
「サア! プリンの時間だ!」
 そう。満を持しての、茄子プリンの登場である。
「マッチョ☆プリン特製! 熟成イタリアン式茄子プリン!」
 でーんと冷蔵庫から出てきたプリンは……思ったよりも普通のプリンであった。見た目は。生クリームをちょんと乗せ、ミントも飾ってあって喫茶店で出てくるようなオシャレ感すらあった。
 微妙な顔つきになっている数名のイレギュラーズがいるのを気にせず、フリーパレットは臆すること無くスプーンを手に、ぱくり。ちょっと硬めのプリンは口内で食感を伴い、甘さと重厚な味わいを広げていく。茄子っぽさはほとんどない。
「うーん、おとなあじ?」
「プリン酒に漬ケタカラな!」
「プリン酒って……」
「でもプリンおいしいよ」
「おいし……おいしいですか? 本当に??」
「あれ、案外いけません?」
 フリーパレットの言葉にネーヴェが疑いの眼差しをしてしまうけれど、過酷耐性で決死の覚悟で挑んだエルが口元を手で押さえた。
「そうだな。改良の余地はあるが、悪くはない」
「茄子はそもそも味が他の野菜などと比べて薄いから、下味次第では如何様にも化ける、ある意味魔法のような食材だ」
 酒を忘れた汰磨羈は仄かに香るプリン酒につられて口にし、一口食べたエイヴァンも茄子の薀蓄を語りだす。プリン狂のマッチョとは違う真っ当な理由で茄子をスイーツにしたからだ。
 茄子のコンポートは上手に煮れば食感は林檎や桃に近くできるし、果実よりもカロリーが低いため砂糖の量を調整すればダイエット時でも食べられるスイーツとなることだろう。
「という訳で、俺はコンポートにしてからシャーベットにした」
 冷凍庫から取り出してきたソルベグラスに載る薄紫の氷菓。端に添えられている薄桃色の果実めいたものはコンポートの茄子だ。
「さっぱり、おいしい」
「レモンを入れてあるからな」
 フリーパレットの口にあったようで、あっという間にぺろりと無くなった。
「美味いか? まだおかわりも――」
「ううん、ごちそ、さま」
「あ……」
 また冷凍庫へと向かおうと背を向けたエイヴァンの背に、仲間たちの吐息とも声とも言えぬ音が届いた。
 フリーパレットの座っていた席には、もう誰も居ない。
 いろんな茄子料理を食べて満足したフリーパレットは、ご馳走様の言葉とともに消えてしまっていた。
「満足、したみたいだな」
「フリーパレットくん、いっぱい美味しいって言ってくれたね!」
「それじゃあ残りの分も食べてしまいましょうか」
「オレはまだまだ食べられるぞー!」
 フリーパレットが居なくなった後も、イレギュラーズたちの楽しげな声が響いていた。
 ――ごちそうさまでしたの声が響くまで。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

茄子スイーツレシピを色々検索したところ、普通に美味しそうでした。
空飛ぶ茄子っているんですね!!!!!
フリーパレットはたくさんの茄子料理を楽しんで満足しました。
楽しいひと時をありがとうございます。

皆さんにとっても素敵な夏の思い出……うっ、空飛ぶなすび……
素敵な夏の思い出になりますように……

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