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シナリオ詳細

<Stahl Gebrull>鉄の猛進

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 いけ好かない。それがパトリック=アネル特務大佐に対する印象だった。それはパトリック個人にというより、"頭脳派"と呼ばれる者たち全体へのものでもあったかもしれない。
 弱き者を救う為に頭ばかりではどうしようもない。もちろん武に頼り切ってしまうのも問題ではあるが、やはり重きを置くのは武力なのである。
 どれだけ知恵を持っていたとしても、弱いままでは強い者に屈することしかできない。それでは――誰かの明日を守るなど、豪語できるはずもなかったから。
 しかし、好かないだけで毛嫌いしているわけでもない。彼らだって守られるべき鉄帝の民だ。武も持ち合わせた者であれば自ら道を切り開けようが、鉄帝の者であることに変わりはない。
 故に、彼は怒りを抱いていた。エッダ・フロールリジ(p3p006270)大佐と同様に。
 鉄帝の魂が穢されるなど、あってはならない。それが例え嫌われ者であったとしても、鉄帝の民である以上は歪められて良い理由など存在しないのだ。
(俺は、鉄帝軍人だ)
 エッダの命令であるならば、この場にある軍人は皆作戦に参加する。けれど彼女の演説があった今、それはただの命令に止まらない。
 ひとりひとり――彼もまた。パトリックの魂を歪めた魔種へ怒りを燃やし、弔い合戦に自らの意志で参戦している。
 魔種などに負けてなるものかと、鉄帝軍人たちのなかで闘志が燃え盛っているのだった。



「今回もよろしく頼む」
「うん、よろしくねっ。……エイヴンさん、なんだか怒ってる?」
 かくりと笹木 花丸(p3p008689)が首を傾げ、それを受けたエイヴン・ファールは目を瞬かせる。どうにも彼の顔が険しく、眉間に深く皺がよっているように見えたのだが。
 指摘されたエイヴンはその眉間を揉みほぐすも、やはりまだ皺が深い気がしている。じっとそこを見つめる花丸にエイヴンは苦笑した。
「すまない。同胞への仕打ちには思うところがあってね」
 同胞――パトリックのことか。彼もエッダの演説を聞いたらしいので、それを受けてのことかもしれない。
「これからの作戦には問題ない。遺跡の深部へ向かうのだったな」
「うん! 迷宮みたいになっているから、迷わないように注意しないとね」
 魔種パトリックの潜伏するショコラ・ドングリス遺跡はキューブ状、あるいは多面体状の超硬質な動くブロックで構成されている、不思議な空間となっている。そこにはアーカーシュの最高権限を得た魔種によって敵となるモノが配置されているはずだ。
 それと、と花丸は少し言いづらそうに口を開く。
「特務派だった軍人さんが、一部は魔種の配下になっているみたい」
 まだ反転はしていなさそうだと言う情報は上がっているが、ただの人間が反転するのは時間の問題だ。さらに、狂気から戻って来られるとも限らない。
「だが、正気に戻る余地はあるんだろう?」
 ならやるだけさとエイヴンは笑みを浮かべ、手のひらに拳を打ち付ける。
 どんな逆境にいたとしても、誰かを守る為に。守れなかった者は弔ってやる為に。
 自らの掲げる信念のため、アイアンマンはイレギュラーズと共に遺跡深部へと向かう。

 パトリックを弔う為にも、まずはそこへ至る道を作らねばならない。その為には魔種の放った敵を払い除け、安全を確保するのだ!

GMコメント

●成功条件
 エネミーを撃退し、フロアの安全を確保すること
 サブ:狂気化した軍人の保護

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●フィールド
 ショコラ・ドングリス遺跡はキューブ状、あるいは多面体状の超硬質な動くブロックで構成されている、不思議な空間となっています。遺跡内を進むには近づき、あるいは離れていくブロックを渡りながら進むことになるでしょう。
 安全確保を目標とするフロアも足場は動くブロックになります。
 ブロックの下は底がどの程度下にあるのか計り知れません。運が良ければ下の方のブロックに落下しますが、落下ダメージが生じ、また元の場所まで移動するにはかなりの時間を要するでしょう。

●エネミー
・スムニエスニ(紫夢花)×1
 巨大な紫の花で、無数の触手を持っています。アルベリヘ(紫夢花)の群れと共にいることが多いです。
 イレギュラーズの通るフロアのブロック上から生えており、人間を食おうとしてきます。麻痺と恍惚効果のある触手により、犠牲者は死ぬ間際に幸せな夢を見ると言われています。
 戦い方はEXAの高いBS使いといったところです。また、触手による強打をしてくることもあり、【スプラッシュX】の攻撃も見られます。

・アルベリヘ(幻惑蝶)×20
 よくスムニエスニ(紫夢花)の周囲を舞っている、美しい翅の蝶です。不思議な存在であり、物理的には触れることが出来ません。また、アルベリヘの放つ攻撃は狙った対象にしか効果を発揮せず、燃え移るなどがありません。
 フロア内を舞いながら幻の炎や雷などを放って攻撃してきます。BSは攻撃に見合ったものが考えられるでしょう。触れられないため、物理攻撃は通用しません。
 高火力アタッカーで、スムニエスニが狙ったものへ攻撃を加えます。ただし防技自体はそこまででもなさそうです。

・狂気に侵された鉄帝軍人×??
 魔種パトリックによる狂気伝播で狂気化しています。正確な数は不明。そこまで多くはないでしょう。
 侵入者を視認次第、真っ向から戦いに来ます。獲物はいずれも剣を持っています。
 CT・FBともに高めのギャンブラー的なステータスです。捨て身の攻撃が目立ち、避ければ勢い余ってブロックから落ちていくことが十分に予想されます。
 また、言葉をかけることによっていくらか正気に引き戻せる可能性があります。完全に正気とするには不殺攻撃による気絶が条件となりますが、全員が正気に戻れるとは限りません。

●友軍
『熱血のアイアンマン』エイヴン・ファール
 笹木 花丸 (p3p008689)さんの関係者。鉄帝の軍人です。
 戦闘時以外は穏やかな口調や受け答えで、軍人という役目だけにとらわれず、皆様とも気軽くお喋りしてくれるでしょう。イレギュラーズという強者たちに信頼を寄せています。
 右肩から先は機械であり、戦闘時は強化された拳で敵を一掃する強力近接ファイターです。皆様と共に戦い、必要に応じて指示も聞いてくれます。

●ご挨拶
 愁と申します。
 アイアンマンと共に敵をぶっ飛ばし、救うべき者を救いましょう。誰もが明日を迎える為に。
 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <Stahl Gebrull>鉄の猛進完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月01日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
一条 夢心地(p3p008344)
殿
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
ミスト=センテトリー(p3p010054)
伝承を語るもの
メイ・カヴァッツァ(p3p010703)
ひだまりのまもりびと

リプレイ


 それは遺跡――の、はずであった。しかし足を踏み入れた者たちは、少なくとも一度は驚き、感嘆したことだろう。
「これは……」
「古い遺跡には仕掛けがあるんだね」
 すごいものだ、と瞬きもせずに遺跡内部を凝視する『熱血のアイアンマン』エイヴン・ファール。『元心霊機械第十三号』岩倉・鈴音(p3p006119)もぐるりと見回した。
 超硬質な動くブロックが動き、まるで横方向に動くエレベーターのようだ。落ちたらどこまでも落下していきそうなものだが、しっかりとブロック中央上に乗っていたなら落ちることは早々ないだろう。
「遺跡の仕掛けも色々なものがあるんだなぁ」
「うん。とはいえ、創造者の望んだ攻略方法とは変わっちゃうかもしれないね」
 『新たな可能性』ミスト=センテトリー(p3p010054)に返しながら鈴音はひらりとワイバーンへ乗る。空を飛ぶということはそれだけ敵に見つかりやすいということだが、同時にこちらも敵を見つけやすいという利点はある。加えて、会敵前であるなら遺跡のギミックを無視して進めるのも早期攻略に一役買うだろう。
(悠長なことはしていられないよな)
 どのような謎を秘めているか、どのような仕掛けが用意されているのか――それらを突破することこそ、このような遺跡の醍醐味と言える。しかしそのような時間をかければかけるほど、鉄帝の危機が迫るのだ。
 風の護符の力を頼りながら、軽やかにブロックとブロックの間を飛び移っていくミスト。後続でジェットパックを背負った『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)が足を踏み出す。
 ふわり。
 ジェットパックによって柔らかく浮いたメイは、危なげなく次のブロックに着地する。メイはちゃんと動いたことに心底ホッとした。
(落ちたら絶対痛いのです……!)
 果たしてどこまで行けば底なのか。見えもしない底へ辿り着く前にいずれかのブロック上へ着地するだろうが、それも場合によってはいつになるのやら。結論、落ちないに限るのだ。
「エイヴンさん、ちょっといいかな?」
 移動の最中、『竜交』笹木 花丸(p3p008689)に声をかけられたエイヴンは目を瞬かせる。
 彼は同胞たる軍人のことに心を痛め、弔い合戦なのだと共闘を申し出た。弔うために戦うことは構わないし、彼ほどの実力が有れば、強敵が出たとしてもマイナスにはならない。
 だが。
「フロアの安全確保は当然として、助けられるかもしれない人は助けたいんだ。だから、その為の力を私達に貸してくれないかな?」
「ああ、元よりそのつもりさ。彼らには魔種に洗脳されることのないよう、鍛え直してもらわないといけないからな!」
 強くなることへの向上心は人一倍のエイヴンである。彼がしごくのならハードな内容になりそうだと――そしてエイヴンが彼らを救う気満々であるのだと感じて、花丸は笑みを浮かべた。
「この辺り、精霊が見当たらないわね」
 ワイバーンに乗った『決死行の立役者』ルチア・アフラニア(p3p006865)は周囲を見回して、それから小首を傾げた。遺跡といえど、いるところにはいるものだが。裏を返せば、いないところにはどんな場所であれいないのだ。
「あ、いたいた。あの辺りのブロックみたいだよ」
 鈴音は少し離れた場所に大きな花を視認する。遺跡に咲くにはあまりにも違和感が大きく――しかも、大きい!
「本当だわ。行きましょう」
 空を飛ぶルチアと鈴音。ブロックの移動制限を受けることなく、順調な滑り出しだ。遺跡のギミックを攻略したいのならば、機会がある時にあのブロックを伝って行けば良い。
 進んでいけば、空中から見下ろす者にはブロック上の障害――特務派軍人の姿も見えて来る。それを仲間へ伝えれば、『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)がなんとも言えない表情を浮かべた。
「……放っておくわけにはいきませんものね」
「そうですねぇ。パッと片付けられたら良いのだけれど」
 そう簡単にはいかないだろう、と小さく苦笑いを浮かべる『風と共に』ゼファー(p3p007625)。相手はあの鉄帝に属する軍人だ。その武の矛先がイレギュラーズたちへ向く以上、お互いに無傷とはいかない。
「でも、なんやかんやあっても、鉄帝ってのは一気に勢い付くのね」
「この状況が危険なことに変わりはないさ。だがここで力を発揮せず,いつ発揮するんだ?」
 ゼファーはエイヴンにそれもそうねと頷いた。けれど、誰もがそのような考えをできるというわけではない。これが鉄帝という国の、強さの芯のひとかけらなのだろう。
「それにしたって、だいぶ匂いが濃くなってきたじゃない?」
「ええ。あそこに見える蝶……あれも敵になるのかしら」
 すん、と鼻を利かせたゼファーは、ヴァレーリヤの指摘に視線を向ける。スムニエスニの周囲を舞っている美しい蝶たちは、今のところ無害に見える。
 だが、敵の周囲を飛び回るのだから、イレギュラーズの敵にならなくともスムニエスニの味方ではあるかもしれない。花へ手出しをすれば、襲いかかって来る可能性は十二分にある。
(軍人はあまり好きではないけれど、等しく救われるべき命ですものね)
 救えるかもわからないが、救おうとしなければ救えない。まだ間に合う者もいるはずだとヴァレーリヤは視線を移す。そんな彼女を見ながら『殿』一条 夢心地(p3p008344)ははらりと扇を開いた。
(倒すべき敵も、救うべき者もおる。そこにさまざまな思いもあるようじゃが――)
「――皆の者! 何も心配することはないぞよ。迷宮案内人たるこの麿がいるのじゃ、大船に乗ったつもりでおるが良い!!」
 パチン、と音を立てて扇を閉じ、一際明るく笑って見せる。足元を疎かにしてしまうような諸々は一旦吹っ飛ばして――いざ、敵のもとへ!
「次はこちらのブロックじゃ。それ、」
 優れた方向感覚で動くブロックと敵の位置、そして自分達の位置を把握した夢心地。敵陣へ切り込むべく、しっかり跳躍してブロックからブロックへ渡る。その姿はそう、ヒゲの生えた配管工のように。
 その頭上を飛び越えていくひとつの影が、敵陣へ真っ先に近づいていく。ワイバーンに乗った鈴音は含み笑いを浮かべながら蝶たちの群れる場所を観察にかかった。
「ンッフッフ♪ どんな感じかな――わぁっ!?」
 唐突に目の前へ迫った炎の球に目を丸くする鈴音。ワイバーンが慌ててそれを回避するも、振り返ると既にそれはなかった。
 痕跡は全く存在しない。どこまでも落ちていったというわけでもなさそうだ。まるで幻を見たかのように。
(実は幻だったり……)
 さも本物のように見せて、実際より戦力を上に見せる作戦か。そう考えた鈴音は、しかし再び現れた火球にその認識を改めた。
 幻にしてはリアルが過ぎる。光源としての明るさも、燃え盛る熱も、肌を乾燥させていく空気も。これが本物でなかったらなんだと言うのだ。
「あ、まずいかも?」
 気づけば蝶々たちが鈴音を取り囲んで、まるで包囲網のように取り囲む。それらが繰り出そうとする攻撃の気配に、鈴音は慌てて戦線を離脱し、仲間たちへ情報を齎すべく宙を駆けた。
 だが、彼らもそう簡単に逃してはくれないらしい。蝶の向かう先に気づいた鉄帝軍人たちもまた、イレギュラーズを倒すべく動き始める。その奥で巨大な花が揺れているのを見て、ルチアはブロックを力強く蹴ると鉄帝軍人の間をすり抜け、一気に花のもとまで肉薄しに進んだ。
 まだ遠い。けれどこの距離ならば範囲内。ルチアが手に開いたのは、神の位階へ達しようとした者たちの記憶の断片。そのひとつを、読み上げる。
 その瞬間。どこからともなく雷が降ってきて、スムニエスニ向かって落ちていった。

「こりゃー! 鉄帝軍人たる者が何を呆けておる! とっとと――目を覚まさぬかっ!!!」

 足場が小さく震えるほどの声量に、振り返らない者はいない。視線を総取りした夢心地は愛を以て得物を振るう。殺さずの剣閃が軍人の鳩尾を打った。
「ぐっ……」
「思い出すがいい、そなたらの護るべきは何であるのか! この遺跡でも、あの魔種でもなかろうよ!!」
 国があるから人がいるのではない。人がいるから国になる。鉄帝だって、彼らのような人間が必要なのだ。
 ゆえに目の届く範囲は救うのだと、心を決めた夢心地の得物は重い。相手をする軍人たちがブロックから落ちてしまわないよう、花丸は自身へと注目を集める。
「こっちにおいで! 花丸ちゃんに勝てるとは思わないけど……相手してあげる!」
「馬鹿にしやがって!!」
 ちょっと煽れば簡単に怒りに包まれる。この感情の暴発もまた、狂気の一端というべきか。
(でもでも、悪いひとじゃないなら助けてあげるです。悪いのは狂気なのですよ!)
 ジェットパックを使いながら軽やかにブロック上を移動するメイは、1人の軍人を前に「待ってください!」と声を張り上げる。
 が、止まれと言われて止まることはなかなか無いだろう。例に漏れず剣を振り下ろして来る相手にひやりとするが、目測を誤った攻撃はただ足元のブロックを悪戯に傷つけただけだ。
「お、おちついてくださいです!」
 目の前の彼はまだ間に合うように見える。その感覚を信じてメイはきっと相手を見つめ返した。
「『軍属たるもの、いついかなる時も軍の為に』です!」
「軍……? ――そうだ、俺は……命じられて……命じられて?」
 狂気と正気の狭間で迷いを生じ始めたか。軍人は頭を抱えるも、剣は手放さない。そこへゼファーがすかさず切り込んでいく。
「矜持を見せてみなさいな。魔種に使われて、挙句死ぬなんてつまらない終わりは望んじゃいないでしょう!」
 魔種。そのワードに軍人たちは多種多様な反応を見せた。

 ある者は何かに抗うように苦しみの表情を見せた。
 またある者はなんの反応も見せない、という反応をした。
 またある者は――誰の目から見ても異常というほどに、くだんの魔種を褒め称えた。

(全員を救うことは難しい……かしら)
 ヴァレーリヤは空気をクッションのように使ってブロックの足場へと飛び戻る。そのブロック上ではミストが軍人を落とさないよう体を張りながら、拳で彼らと語り合っていた。
(狂気に陥っていると言っても軍人か……!)
 力強い一撃につぶれてしまいそうにもなるけれど、そう簡単に負けられるものか。救える命は出来る限り救うのだ!
「しっかりなさい、それでも鉄帝軍人ですの! 貴方達が何のために戦ってきたのか、忘れたとは言わせませんわよ!」
 そこへ乱入せしメイスが軍人を打つ。ヴァレーリヤはすぐさま交代しながら彼らの様子を見た。まだいけそうだ。鉄帝人ならタフな者が多いだろうが、限度はある。うっかりトドメをささないように、十二分に気をつけなければ。
「落ちちゃうよー。そーれっ」
 得物を振るった勢いに持ち主が飲まれ、ブロック外へ転倒しようとするのを見て、咄嗟に鈴音の手が伸びた。むんずと掴んで力一杯引っ張り上げれば、くるんと自身の立ち位置と入れ替わって。
 宙へ投げ出された鈴音は、しかしてすぐさまワイバーンの背に着地した。軽く撫でてやり、ブロック上へと戻ると仲間たちへ回復を施していく。
「何のために武器を振るうか考えろ! 何のために誰につくのか思い出すんだ! 俺たちは――弱きものをすくい、鉄帝の民を守る! そうだろう!!」
 二つ名の元となった機械の拳を握り,猛攻を加えるエイヴン。そこへトドメと花丸の拳が天を突く。
「この人は大丈夫そう……って、エイヴンさん、先行したら危ないよっ!」
 スイッチが入ったか――軍人の安否を確認する花丸を置いて、エイヴンは別のブロックにいる軍人へ殴り込みをかける。その真っ直ぐな声は思いと共に、この戦場のどこへだって届いていることを花丸は感じていた。
(きっと……同じ軍人だからこそ、届くこともある筈)
「良い勢いじゃない。目指すならビターエンドよりベターエンドよね」
 軍人の頭を殴り、ゼファーは相手を昏倒させる。なに、当てどころには気をつけているから死にはしない。
「痛いかもしれませんが、ごめんなさいです!」
 メイの神気閃光に軍人の体が傾いで――外側へ。あ、と慌てた表情を浮かべたメイはジェットパックを背に飛び降り、軍人を掴むなりジェットパックを最大出力。そしてゆっくりと近くのブロックへ着地していったのだった。

 こうして着実に軍人たちは無力化されていたが――忘れてはならない。敵は彼らだけではないのだ。

「っ……」
 ルチアは堪えきれずに膝をつく。自らも回復しながら踏ん張っていたが、限界か。
 しかしそこへ駆けつけた影がルチアの前に立つ。花丸は共にヴァレーリヤも庇いながら、巨大な花と蝶たちを見上げた。
「これ以上好きにはさせない!」
「ええ、最大火力でいきますわよ!」
 ヴァレーリヤのメイスが炎を起こし、明るく周囲を照らし出す。アルベリヘの何体かは炎の濁流に飲まれていった。漏れた敵も鈴音やメイの追撃がその羽を無惨に散らす。
「くっ……なんだこれは……」
 触手に打たれたミストは意識がぼんやりすることに焦る――が、焦ってもどうしようもないものだ。仲間の回復を信じながら、その状況でも十分視界に入れられる巨大な花へ向けて猛攻を仕掛ける。
「蝶々の相手は任せたわ!」
 ゼファーが渾身の力でスムニエスニへ突っ込んでいく。たくましいタックルに、花粉が盛大に舞い散る様が見えた。
「このぱくぱくフラワー、弱っておるぞ! ここで麿が決めて見せようではないか!」
 イレギュラーズが、エイヴンが、度重なる攻撃を加えることによって数の利を覆していく。夢心地は力強く跳躍し、重力のままに落ちながら振るった妖刀が花を千々に刻んでいく。崩れ落ちた花はブロックから落ちていき、どこまでも小さくなりながら落ちて行って――見えなくなった。
「なーーーっはっはっは! ぱくぱくフラワー、討ち取ったり!!」



「この辺りはもう大丈夫そうじゃない?」
「ああ。魔種が何か仕掛けてこない限りは何もないだろう」
 ゼファーの言葉にエイヴンは振り返りながら頷く。薄汚い手段を取る魔種だ、これから何か仕掛けて来る可能性を否定し切ることはできないが、少なくとも今は十分安全だろう。
「はい寄って寄って〜」
 安全を確認する者がいる一方で、負傷した――負傷させた、が正しいが仕方ないことだ――軍人らを癒す者もいる。まとめて怪我を治そうとする鈴音や、応急手当を行うヴァレーリヤの傍らで、メイは1人を集中して治療していた。
「嬢ちゃん、もう回復はいらな――」
「だめ」
「いや、だから」
「だめ。痛いのは、やだ」
 頑として譲らないメイによって軍人たちは治療されていく。それこそ、痩せ我慢なんて必要ないくらいには痛くない。その分メイの負担は高くなっただろうが、本人的には満足そうな表情である。
 大部分の人は痛いことは望まない。自分だって痛いのは嫌だ。だから、それを取ってあげられるなら嬉しい。
 イレギュラーズの尽力によりモンスターは倒され、大部分の操られていた軍人も正気に戻った。しかし、犠牲がゼロとも言えず――一同は亡くなった軍人に黙祷を捧げたのだった。

成否

成功

MVP

メイ・カヴァッツァ(p3p010703)
ひだまりのまもりびと

状態異常

ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)[重傷]
鏡花の癒し
ミスト=センテトリー(p3p010054)[重傷]
伝承を語るもの

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 想定よりも多くの軍人を掬う事が出来ました。

 それではまたのご縁をお待ちしております。

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