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シナリオ詳細

魔獣遭遇戦―ゴキクマの悪夢―
魔獣遭遇戦―ゴキクマの悪夢―

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●一矢報いる心
 バルツァーレク領の北、王都から西方へ抜ける街道は商売を生業とする者がよく利用していました。
 何故ならバルツァーレク領にほど近いこの街道は商人ギルドに影響力をもつ『遊楽伯爵』ガブリエル・ロウ・バルツァーレクの影響がとても強い、その為彼の庇護を求める商人はバルツァーレク領下で護衛の融通がききます。しかし特定の領主に寄った商売を行おうとしない者からしてみれば護衛の融通は貴族達からの借りともなる為護衛は自前の戦力で、という商人もちらほら居ました。
 だからこそ、運の良し悪しが命運を分けてしまう事もある。これはそんなよくある話の一つーー。

「こんなところで、死ねるかぁ!」
 叫んだのは壮年の男性。商人風の風貌に似つかわない両刃の剣で魔獣の爪牙を受け、そして気合と共に蹴りで魔獣に一撃を見舞う。
 たたらを踏み仰け反る魔獣、その姿は地球でいう熊に近く獰猛な牙と爪が特徴的ではあるものの地球のそれと比べると大きさは小さく30センチに満たない太った黒い小型犬のようなもこもことした魔獣でした。
 見る者によっては可愛いとも思うかもしれないその魔獣、しかし厄介なことに一匹見たら十匹と言われるほどの繁殖力と群れで行動する習性、そして繁殖期になると肉食化することからゴキクマと呼ばれています。
「この!おい、皆無事か……ッ!」
 男性は剣を振るいゴキクマを時に斬り、時に打払い家族や仲間のいる方を振り返り驚愕しました。何故ならその目に映ったのは数十匹が群がり見るからに手遅れな家族や仲間たちの姿、狂いそうなほどの激情が男の心を支配していきます。
「俺の家族に、何してくれやがる!」
 剣を投げ一匹のゴキクマを串刺しにした男は商品の中から仕入れた銃を取り出し撃ちまくります。一匹、また一匹とゴキクマを仕留めていく男でしたが周囲のゴキクマは未だ十匹をゆうに越えており視界に入らない一匹が男の死角から爪牙を振るいました。
「か……っ!ちく、しょう……ちく、しょう……!」
 小さな体に反して強力な膂力を誇るゴキクマの一撃に男の身体は地を転がり、受けた部位は切り裂かれ既に感覚もなくなっています。
「ぜんぶ、おまえら、には……!」
 既に死に体、男は己が助からない事など承知した上で……それでも全てをこの魔獣に奪われる事だけは認めない気持ちでまだ感覚の残っている腕で懐から筒状の何かを取り出しました。
「ぜったいに、ただ奪わさせは……させん……!」
 その筒状の何かを男が強く握り引き抜くと光が弾け、音と共に閃光が周囲へ広がっていきます。
「は……これで、誰かきづっ!」
 その音に驚いた一匹のゴキクマの一撃は男の顔を捉え、男はまたも地を転がり倒れると今度こそ動かなくなりました。
 しかしその行動は繋がり、周囲に居たイレギュラーズ達が事態に気づきます。
 魔獣ゴキクマとの遭遇、見てしまった惨劇を前に、彼ら彼女らはどう動くのか――それぞれの遭遇戦が始まろうとしていました。

GMコメント

第二弾は魔獣遭遇戦を提供させていただきます。レーサン兄と申します。
今回NPCはガイド時点で死亡している為、実質ただ魔獣とバトルするのがメインのシナリオになるかと思われます。

よければご参加頂ければ嬉しいです。
なお遭遇戦という事もあり相談期間は短めの設定となっておりますのでご注意ください。

下記に敵情報を載せておきますので参考にしていただければ

●ゴキクマ
全長30センチ程度の四足歩行、もこもこの毛玉に四足が生えているような生き物。
また速度や俊敏さも犬と同程度には速く、特に熊の名の通り膂力は一般的な男性の膂力を上回っており爪による一閃には注意が必要。
また、基本的に群れて行動しており今回の場合20匹以上は居るものと思われる。
群れる魔獣にしては珍しくリーダーはおらず、ただ群れて獲物を狩る盟友のような関係性で生態が成り立っている。

耐久力はとても低く一匹一匹は簡単に倒せるものの獲物の死角を見切る能力に長ける魔獣の為、波状攻撃を受けて死角から強力な一閃を受けて倒れる冒険者も少なくない。



●戦場情報
バルツァーレク領の北、王都から西方へ抜ける街道の道すがら。
基本的に平地であり隠れる場所は皆無、唯一商人が使っていた馬車の残骸が隠れられる場所ではあるが内部にゴキクマが潜んでいる可能性もあるので注意は必要。

  • 魔獣遭遇戦―ゴキクマの悪夢―完了
  • GM名yakigote
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月13日 21時00分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
久遠・U・レイ(p3p001071)
特異運命座標
ウォリア(p3p001789)
終焉の騎士
Masha・Merkulov(p3p002245)
ダークネス †侍† ブレイド
メルト・ノーグマン(p3p002269)
山岳廃都の自由人
Selah(p3p002648)
記憶の欠片
Briga=Crocuta(p3p002861)
戦好きのハイエナ
月雲 才蔵(p3p004321)
根無し草

リプレイ

●ホェン・ユゥ・ドナ・ラァン
 負けても得るものがあるという話を聞いた時に、えらく安全な所からものごとを語るんだなと思ったものだ。
 警備が行き届いていない、管理が行き届いていない。そういう世界においては、日々の行動が命に関わるものであり、敗北とは死に直結する事柄であることも珍しくはない。
 盗賊の類ならまだいい。彼らには慈悲がある。
 賊に対して何をと思うやもしれないが、彼らの生業は殺すことではなく奪うことだ。
 必要なのは金品であり、奴隷であり、生命ではない。
 彼らは殺すことにおいて得るものは何もなく、暴力は目的のための手段にすぎない。
 生肝を喰らうのは異常者か野獣のすることだ。
 よってこの場合、それら理性のない獣の類の方がよっぽど恐ろしい。
 それらは紛うことなく、生命を奪いに来ているのだから。
『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)が使い魔を召喚し、偵察に出している。
 ギルドから聞いたところ、ゴキクマという連中は群を成して行動しているとのことだ。
 数は向こうが上。個々の戦力で劣るとは思えないが、正面から順当にやりあっていい相手でもない。
 使い魔と同期したレジーナの右眼が横たわる商馬車の姿を捉えた。それと、ゴキクマの群。
 これか、と思うと同時に眉をしかめる。
 嗚呼、食ってるな。
「ふぅん。初任務が魔獣駆除か」
『特異運命座標』久遠・U・レイ(p3p001071)が仲間の偵察結果を待っている。
「召喚されたばかりの私にどこまで出来るかわからないけどしっかり倒しておかないとね」
 それは仕事だからか、情によるものからか、読み取ることは難しい。
「あぁ、別に依頼人に興味は無いんだ。無念を晴らしてあげたいわけでもないし……なんでもないよ。気にしないで」
 レイは誰にともなし、言葉を打ち消すように手を振った。
「魔獣駆除が此の世界での初陣か」
 似たような感想を漏らしたのは、『嘘か真か、虚の戦士』ウォリア(p3p001789)。
「よかろう、随分と弱体化したが力試しがてらにいざ参らん」
 元いた世界に比べ、えらく虚弱となったものだが、今の自分を正しく認識するには野獣の群くらいが丁度いいのかもしれない。
 拳を強く握り込んでも、かつての膂力を出せはしない。だが、戦えぬことはないだろう。
「さぁ、命を懸けてかかって来い」
「ふ、現役宇宙最強の特異点たる拙者に毛玉と戯れる依頼とな?」
『ダークネス †侍† ブレイド』Masha・Merkulov(p3p002245)は大仰な口調で大言を叩いた。
 大丈夫、名乗るのは自由だ。ていうか特異点って何だろう。
「うむうむ、よいよい。今回はこの新兵器スペースコスモリボルバーの試射を兼ねて参戦したのでござるよ」
 お、もうサムライ要素霞んできたぞ。既に語尾くらいしか痕跡がない。
「存分に暴れさせてもらいましょうぞ」
「やれやれ、どうにもこうにもやるせない現場にきちゃったね」
『山岳廃都の自由人』メルト・ノーグマン(p3p002269)がため息を吐いた。
 獣の類だと聞いている。
 だとしたら、助かっている見込みは無い。
「ゴキクマ……だっけか。弱肉強食も世の摂理、一方的に悪たあ言わないよ」
 普遍的な善悪の価値観ではない。これは単に、人類種から見て都合が『悪』いというだけの話だ。
「つまりアレだ。一切容赦はしない。かかってきなよクソ魔獣」
 理性のない相手が狩りの対象となるということは、つまりそういうことだと『■■■』Selah(p3p002648)は理解していた。
 世界的な調和、種族の垣根を超えた共生。
 そんなものは自分が潤っているという前提のもとでしか起こり得ない。
 自分たちで管理できる範疇を飛び出していれば、事故利益を最優先とするのが当然なのだ。
「それが食物連鎖であるならば、致し方ない自然の摂理であるセラは思っていますが、
この際仕方ないですね。懲らしめに参りましょう」
『戦好きのハイエナ』Briga=Crocuta(p3p002861)が憤る。
「数は多いし脆いくせに油断したらこっちがやられそうだ……どこまでもムカつくなァ!」
 その上倒して得られるも肉も、野生のそれがそうそう美味いわけもない。数ばかりは多いが、一体一体が小さくて毛皮としても物足りない。
 ゴキクマは獲得できる収益が少なく、害獣としか呼びようがないのだ。
「さっさとぶっ殺して酒だ酒! そう思ってねェとやってられねェよ!」
 偵察を行っていた仲間の合図で進路を修正する。
 近辺に隠れている可能性もあるが、概ね、襲撃地点で戦うことになるだろう。
 カチャカチャと金属音を鳴らして歩を進めた。

●トゥ・ヤング・トゥ・ダイ
 それを何と言えばいいのか。
 わかっていたことではあったが、彼らが到着した時にはもう何もかもが遅かった。
 複数引きにたかられ、食い荒らされている死体。死体。
 荷物の幾つかが動いている。奥に餌となるものがないか探しているのだろう。
 返り討ちにあった何匹かのゴキクマは、埋葬されているはずもなくそのまま横たわっている。
 狩りを終えた後の現場。
 それだけだった。
 わかっていたことだ。わかっていたことだ。
 人情もなく、理性もなく、復讐もなく。
 獣害とはそういうことだ。
 よって、ここより行われるは駆除である。
 彼らは強いから食うた。
 だから、より強いものに除かれるのだ。

●ハイ・タイムズ
 夢中で肉を貪る一匹のゴキクマ。
 その右眼に飛来した得物が突き刺さった。
 痛みと驚愕によるフリーズ。
 それは野生を生きる彼にとっては生命を放棄したに等しい。
 レジーナによる第二射、第三射を受け、わけのわからぬまま絶命する獣。
 それを見た他のゴキクマが、一斉に飛来した方向へと視線を向ける。
 心配する素振りも、仲間をやられたという怒りも見受けられない。
 そういう習性なのだろう。
 外の仲間の状況に感づいたのだろう。
 荷馬車の中からもわらわらとゴキクマらが姿を表した。
 レジーナは敵が増えたことを想定外とはしない。わかっていたことだ。ここに到着する以前から、既に使い魔がここの状況を得ていたのだから。
 小さな、それでも獰猛を宿した獣。
 威嚇なのだろう、熊を甲高くしたような唸り声を上げる。
 次の一匹に、狙いを定めた。
 感慨はない。獣相手には無駄な行為だ。
 引き絞り、穿けと念を込めながら。

 飛びかかってきたゴキクマを、レイが大鎌の腹で打ち返す様に叩き落とした。
 体重の軽さから小気味よく吹き飛んでくれるが、追い打ちをかけたりはしない。
 群を相手に孤軍奮闘なんて英雄物語を夢見ていては、いかに戦闘の心得があろうと待ち受ける末路など荷馬車の持ち主とそう変わらない。
 防ぎ、生き残り、確実に始末する。
 皮肉なことに、時間制限は存在しない。とうに意味をなしてはいないということだが。
 これは駆除なのだ。
 焦ってはならない。冷静さを欠いてはならない。
 それは敵には存在しないマイナスの要素だ。こちらだけが抱えるだけ損をするものだ。
 別サイドから飛びかかってきたゴキクマを、また刃の腹で叩き落とす。ゴキクマが転がっていき、その終着点で狙撃され、絶命した。
 それでいい。刃は立てない。万が一にも打ち返せぬ可能性を孕んでいるのなら、線よりも面で対応すべきが自明の理だ。
 後ろには通さない。
 なにせ、こちらが無勢なのだから。

 叩き落とし、地に転がったた一匹をウォリアが思い切り踏みつけた。
 ぐしゃりと、ぼきりと、嫌な音と感触が伝わってくる。
 そのまま足の甲で思い切り、サッカーシュートのように蹴り飛ばす。
 他の個体にでも当たってくれれば儲けものだったが、そうそう上手くはいかないようだ。
 蹴り飛ばしたゴキクマが痙攣しているように見えたが、それが生命活動によるものか最後の電気信号によるものかは判別がつかない。
 つける必要もない。ただしくは、つけているだけの余裕が無いと言うべきか。
 一呼吸を置く前に次の、その次の、さらにその次の個体が襲い来る。
 単体であることもあれば何匹かが纏まってくることもあった。
 何度かは噛みつかれ、それでもそれ以上に迎撃できている。
 数で劣りながら対応できているのは、ゴキクマにおよそ統率というものが見受けられないからだ。
 リーダー個体が居ない、というデメリットはそういうことなのだろう。

 前で立つ味方に群がろうとした一匹のこめかみを、マーシャの放つ魔弾が貫いた。
 闇とか暗黒とかそういう単語を散りばめた必殺技を叫ぶのも忘れない。ただし早口でだ。ゆっくりと口上を垂れたり詠唱までつけている余裕など、ともすれば乱戦にもなりかねないこの状況ではあろうはずもなかった。
 技名だって同じような単語は出て来るが毎回ちょっとずつ違う。細かいことを気にしてはいけない。格好良さが先にくるのだ。
 異世界の言葉を混ぜてみるのもいい。最近少しだけ単語を教わったが、あの言語は中々に魂の中枢へと響く何かを感じたものだ。確か、ドイッチェとか言ったっけ。
 意味は知らないが、気に入っている単語を叫びながらトリガーを引く。確か筆記具の名前だ。大丈夫、異世界の言葉だからきっと皆わかんないし。
 腕を十字に交差させ、銃を持たない方の腕を土台として狙いを定めた。
 即席の銃座で安定させる意味もあるが、ポーズの格好良さが第一だ。

 仲間の右方。
 別個体の対処に気を取られた隙に、逆側から攻撃しようとしたゴキクマの存在をメルトは見逃さなかった。
 仲間の背面をすり抜けるように移動し、剣をまっすぐ前方に突き出してやる。
 飛びかかるという行動は、攻撃性で長けていても特攻であることに変わりはない。
 空中で姿勢を変えるには哺乳類にはない機構を持つか、それに伴った能力が必要だ。
 そして、ゴキクマはそのどちらでもなかった。
 結果。
 無謀な獣はするりと先端から刃の中腹まで自分の推進力により差し込まれ、絶命する。
 メルトはそのまま、味方と配置を交代し、慌てて剣を思い切り振り抜いて刺さったゴキクマ引き抜き飛ばした。
 筋肉の収縮が始まられては敵わない。ただの肉の塊が取り付いた剣など荷物なだけだ。
 グロいし重いし、いいことなんて一つもない。
 だが、その切れ味はゴキクマらに印象づいたようだ。
 飛びかかりを躊躇するさまが見て取れる。
 守るには好都合だ。

「敵、左方7メートル。接近してきます」
 前衛で戦う仲間の眼となり、セラが警告の言葉を発した。
 視界外から迫るゴキクマをなんとか弾き返すことには成功した者の、腕に引っかき傷を負ってしまう。
 傷は思ったよりも深いのか、どろりと流れた血は止まりそうにない。
 だが、問題はなかった。
 セラの手から発せられる緑色の光が仲間の傷に触れると、まるで動画の逆再生のようにそれを癒やしていく。
 血は止まり、傷は塞がり、痕が消えた。
 事前の偵察からゴキクマの総数は二十匹以上と予測されていたため、覚悟はしていたが、やはりその数は多い。
 一匹一匹は物の数になどならないが、これだけの集団となると話は別だ。
 純粋に手数が足りない。
 よって、どれだけ防備を固めようとどうしても傷は増えていく。
 セラの仕事がなくなることはない。
 これはリソースの勝負だ。
 ゴキクマか、こちら側か、どちらの体力が先に尽きるのかの。

「あと何匹だよ!? 鬱陶しいにも程があるだろォ!」
 バリガは、自分が倒したゴキクマの数をカウントしていない。
 総数を把握していないし、これだけ手数に差があるとそんなことをお互いに伝えあっている余裕もないからだ。
 どこに何匹見える。自分が何処を対処する。そういった今対処すべきそれへの連絡以外を行う余地が無いのだ。
 目の前の一匹を大上段から真っ二つに切り裂いた。
 数は減ってきている。そうでなければ自分にも仲間にも疲れが見えだしたこの状況で、今なお戦線が瓦解していない事実の説明がつかない。
 わざと大きな音を立てた。ゴキクマの視線がこちらを向く。
 だが、これまでのように安易に飛びかかってくることはない。
 気づいているのだろう、自分たちの数が無視できないほど減っていることに。
 躊躇っているのだろう、次は自分が死ぬかもしれないという事実の現実味に。
 だが、その逡巡を見逃してやるほど甘くはなかった、
「このッ……動き回るな! いい加減大人しく死ねェッ!!」

 攻撃の手が緩くなったことに、『根無し草』月雲 才蔵(p3p004321)は気づいていた。
 そろそろかという気持ちと、ようやっとかという思いが綯い交ぜになって沸き上がる。
 ここまでくれば、敗北の懸念はもうないだろう。
 ゴキクマらもそのうち、群としての意地よりも自分という個体の生命を優先し始めるはずだ。
 つまりいつ逃げ出してもおかしくないということ。
 ならば出来るだけ数を減らしておきたいというのが人情だろう。
 この群が生息の全てとは思えない以上、根絶やしは不可能であろうが、かといって放置するのでは駆けつけた背が立たない。
 よって、ここで取っておいたカードを切る。
「さて、もうちょーっとだけオジサン早くなるよぉ。頑張って捕まえてみんしゃいなぁ」
 身体が軽くなる。一歩の踏み出しが疾い。ほら、もう目の前に。
 状況判断に躊躇っていた個体を切り裂いた。
 対処される前に、もう一匹、もう一匹を切り伏せていく。
 さて、そろそろか。

●ハァフ・ザ・マン
 今までの威嚇とは明らかに違う、媚びたような鳴き声を上げて、ゴキクマの一匹が逃げ出した。
 それに呼応し、一匹、また一匹と逃げていく。
 無理に追いかけたりはしない。
 彼らのテリトリーに入り込み、そこで別の仲間が待ち受けていれば立場は逆転するだろう。
 欲張って、自分が餌になったのでは笑えない。
 全ての個体が逃げ出したのを確認し、倒したゴキクマが本当に死んでいるのかを確認していく。
 野生では重傷も死亡も同じようなものだが、それでも万一を防ぐべきだろう。
 帰り道、後ろから噛みつかれたのではたまらない。

 最後に、今や骨だけとなった知らない不幸な誰かに手を合わせる。
 彼らの宗法は知らない。だからそれぞれが思い思いに礼式で死者を弔った。
 縁もゆかりもあった相手ではないが、明日まで引きずることすらしてやらないだろうが。
 それでもひととしての終わり方を、させてやらねばと思ったのだ。
 
 了。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

代わりとして筆を取らせて頂きました。

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