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シナリオ詳細

気まぐれ妖精と焼け落ちた木々

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 一時は茨によって閉ざされた深緑、アルティオ=エルム。
 イレギュラーズは大樹ファルカウで待ち構えていた事件の元凶となる1人、『冠位怠惰』カロン・アンテノーラ。そして、その権能の一つで使役されるフェニックスと交戦する。
 激しい戦いの中、森はかなりの部分が燃え広がり、灰燼と期してしまっている。大樹ファルカウは生命の秘術(アルス=マグナ)の効力でその危機を脱してはいるものの、傷痕は深い。
 目覚めた深緑在住の幻想種達は国土の状況に愕然としながらも、少しずつその復興に力を注いでいる。
「戦後処理として、深緑の復興は必須です」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は荒れ果てた深緑の実状を憂い、イレギュラーズ達にも復興の手伝いを呼びかけていた。
 何せ、霊樹の力は衰えており、失われた植物も多岐に渡る。
 この為、主に大樹ファルカウの近場で焼けて炭と化した木々が転がる場所を均し、新たに植林する必要があるのだ。
「無論、我らも力になろう」
 そこで、先の戦いまでに幾度か交流、共闘した迷宮森林警備隊のメンバーが声を上げた。小隊長ラウルも配下と主にこうした活動に力を貸している。
 そして、もう1人。
「アイシィも……て、てつだう……の」
 全身、美しい氷の肌を持つアイススプライトのアイシィもまたこの依頼に参加していた。
「良かった。無事だったんだね」
 『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は先の戦いで彼女の手助けができなかったことを悔やんでいたが、戦いの後になってこうした交流の機会ができたことが嬉しそうだ。
 もっとも、妖精郷にある自分の領地を見せることができないという新たな悩みもあり、アイシィと交わした約束……秋の色濃い自分の領地へと連れていくという話が現状叶えられないが、いつかはとサイズは考えている。
「急ぐ必要はないの」
 無事なら、いつかは行くことができると彼女も考えている。
 とはいえ、気ままな彼女のこと。慣れない植林作業などにはモチベが上がらないようなので、何とかしてあげたいところ。
「合わせて、今なお、迷宮森林には魔物の存在も確認されています」
 迷宮森林警備隊と同行していることもあり、彼らが排除に当たるだろうが、折角だから彼らと共闘して速やかに外敵を排除すると作業がスムーズに始められるだろう。
「数か所の植林作業が一通り終わったら、ご自由にお過ごしください」
 アイシィや警備隊との交流はもちろん、参加メンバー同士で大樹ファルカウ内の店を巡ったりなどすると幻想種達も喜ぶだろう。
「大変な状況ですので、どうか、力をお貸しください」
 説明を終えたアクアベルは改めて、イレギュラーズ達へと協力を願っていた。


 荒れ果てた深緑、迷宮森林内。
 木々の間を歩いていると、一面焼けた瓦礫の転がる区画が所々に確認できる。
「いくら、深緑を守ることができたとはいえ、これでは……」
 警備隊ラウルを始め、隊員達は無残に燃え尽きた木々に視線を向けるのが辛そうだ。
 それは、アイシィとて同じ。自分達が自由に振舞ってきた結果がこれなのかと少なからず自責の念はあったようだ。
 そこに、飛び込んでくる魔物達。
 全長は1.5~2m程度あるやや大きめのムササビを思わせる魔物、フライングローデンである。
 グルルルルル、グルルルルル……。
 やや高めの声で鳴くそれらは群れで行動しており、木々を飛び回って移動している。しかし、木々が無くなったことで地面を駆けて移動していたのだろう。
 もっとも、足場となる木々を齧り倒すことも多い魔物達だ。さほどこの状況にも問題を感じてはいないと思われる。
 キュルルルルル……。
 群れて襲い来るそれらはこちらの一団に気付いて、威嚇してくる。
 この魔物達は小動物も食用としている。もちろん、森に住む幻想種達にも襲い掛かってくる為、駆除対処とされる害獣である。
「復興作業に水を差すとは……」
「折角やる気になってたのに、邪魔しないでなの!」
 ラウルもアイシィも魔物の出現を受け、戦闘態勢をとる。
 そんな妖精や幻想種達と協力しつつ、イレギュラーズ達もまたまず魔物達の排除へと乗り出すのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
 今回はサイズ(p3p000319)さんのアフターアクションによるシナリオです。
 茨の呪いから解かれた深緑で、復興の手伝いをしつつ氷の妖精と交流するシナリオです。

●状況
 茨の影響もあり、戦場となった場所を巡りつつ傷んだ木々、植物の植生、植林などを行います。
 警備隊を始め、他の幻想種達が見ておりますので、作業はしっかり願います。
 スキルなどで効率は大幅に上昇するでしょう。イレギュラーズの腕の見せ所です。一緒に行動するアイシィや迷宮森林警備隊とも協力し、効率よく作業を進めていただければ幸いです。

 事後は大樹ファルカウや深緑の集落、迷宮森林、お持ちの方は深緑内の領地などでのんびりお過ごしください。
 下記のアイシィ、警備隊らとの交流の他、プレイヤー同士での交流の場としてもどうぞ。

●敵……魔物×20体
○フライングローデン×20体
 全長1.5~2m。いわゆる空飛ぶげっ歯類。
 森の中を集団で飛来して木々を齧りまくって倒してしまったりする為、幻想種に厭われる存在です。
 木々だけでなく小動物も集団で襲って食用とするようです。
 飛びかかり、食らいつき、2体で連携して風を巻き起こすこともあります。
 とはいえ、幻想種、アイシィの助けもある為、しっかり対処すれば問題ない相手でしょう。

●NPC
○アイススプライト・アイシィ
 深緑の関連作品に登場。
 全長5,60センチ程度で、見た目だけなら氷の肌を持つ美しい妖精。一時は冬の王に味方していましたが、先の戦いでは説得によりイレギュラーズの味方をしてくれました。
 戦闘では、凍てつく視線、凍てつく吐息、宙を舞うダンスを使用。
 植林作業は多少なりとも自責の念を抱いて協力してくれます……が、やはり慣れない作業。彼女のこともくださいませ。
 作業では直接植林を手伝う他、ダンスを舞い踊ってメンバーや警備隊に活力を与えてくれます。
 事後は妖精郷に戻れぬ妖精達もファルカウに多く残っている為、彼らと共に交流するのもよいでしょう。

〇迷宮森林警備隊×10名
 同じく、深緑の関連作品に登場。遡ればROO編からの登場です(向こうは同じ姿の別人ですが)。
 弓の名手である隊長ラウルを中心に、弓、風魔法、風精霊を操る幻想種で構成されています。戦闘においてもそれらを使ってくれます。
 彼らは戦闘後、警備に当たってくれる他、植林の手伝い、スキルで植林した若木に活力を与えて成長の促進など、森の木々を育む為にも尽力してくれます。
 事後は、お誘いがあれば登場します。買い物や手合わせ、食事しながら語らいなど。ご自由にどうぞ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 気まぐれ妖精と焼け落ちた木々完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年08月16日 22時01分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サイズ(p3p000319)
妖精■■として
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女
イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)
生来必殺

リプレイ


 深緑、迷宮森林。
 先の戦いで焼け落ちてしまった区画を、イレギュラーズ、森林警備隊と氷の妖精が巡る。
「さて、色々片付いたからには、元通りを目指さないといけないわよね!」 
「深緑復興のお手伝い……だね」
 『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)の呼びかけに、『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)が呟くように返す。
 現地へと到着すれば、真っ黒になった倒木があちらこちらへと転がる広場のようになっていて。
「みんなボロボロね……ごめんね、守れなくて」
 その惨状に、『桜花の決意』キルシェ=キルシュ(p3p009805)は森の木々へと謝らずにはいられなかった。
「まったく、魔種ってやつはもっと穏やかに各地を破壊できないもんかね」
 戦後に毎度復興作業を行う方の身にもなってほしいものだと、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は都度現れてはやりたい放題振舞う混沌の脅威に辟易した態度を見せる。
 もっとも、魔種は混沌を滅ぼす存在であり、そんな気遣いとは無縁だと独り言ち、世界はなおも嘆息する。
「放っておいても、いずれ植生は回復するだろうが……」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は自然の力の強さを認めながらも、掃討な時間が要することも指摘して。
「復興を早めるためにできる事があるなら、手を尽くしたい」
「はい、少しでも早く元の森に戻れるよう、私も頑張ってお手伝いしましょう」
 そんなイズマにヴァイスも同意し、森の再生に力を貸したいと告げた。
「ワタシもがんばろう」
 深緑にはフラーゴラの好きな人が持つ領地もあるからと、彼女も植林作業にやる気を見せる。
 それに、フラーゴラは頑張るサイズの姿を見て応援したいと考えていた。
「前回は参加できなかったが、今回はしっかり力にはなるよ」
「よろしくなの」
 妖精武器であるという『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は全力を出そうと躍起になると、アイススプライトのアイシィも嬉々としていた。
 だが……。
「植林する前に敵を排除しておいた方がいいな」
 エネミーサーチを働かせていた世界は、こちらへとやってくる敵を察知する。
 グルルルルル、グルルルルル……。
 森に住むムササビのような姿をした大型のげっ歯類、フライングローデンの群れである。
「ほう、奴らは環境破壊までするのか。傍迷惑と言ったらありゃしないな」
「木々を齧りまくるとはいただけないな。これ以上、好きにはさせない!」
 イルマやイズマが言うようにこのげっ歯類らは木々を齧り倒して環境を破壊する害獣として知られる。
「一々行動を邪魔されるのも癪だしな」
 世界が魔眼を煌めかせて魔力を高めると、森林警備隊も隊長ラウルを中心に、排除の為陣形を組み始めていた。
「すぐにみんなが過ごしやすいようにするから、もう少しだけ待ってね」
 折角、とりかかろうとしていた植林作業を止め、キルシェはその場に用意されていた苗木や残る木々へと呼び掛けてから、保護結界で皆を護る。
「疫病神には永遠の眠りについてもらおうか?」
 キュルキュルキュルキュル……!
 イルマが呼び掛けると、げっ歯類らは激しく怒り狂い、こちらへと攻撃を仕掛けるべく駆けてくる。
「皆さんも助力を頼む!」
「「任せてくれ」」
「わかったの!!」
 イズマの共闘への狙いに対し、警備隊もアイシィも士気高く応じる。これには、世界も手こずらずに撃退できるだろうと安堵気味だ。
「これ以上みんなを傷つけさせない。ムササビさんたち、ここで倒すのよ!」
 高らかに宣戦布告し、キルシェは仲間達に先駆けて突撃していくのである。


 この場に現れたフライングローデンの群れは20体。
 数が多いこともあり、キルシェやフラーゴラが前に出て。
「アイシィお姉さんとラウルお兄さんたちは援護お願いします!」
 そう告げ、キルシェは深緑復興の為ならと初めての突撃戦法へと出て、敵の引き付けに当たる。
「こっち!」
 その間にフラーゴラが素早く立ち回り、木々の焼け落ちた場所の中央部まで引き付ける。何より、残っている木々を傷つけない為だ。
 キュルキュルキュル……!
 威嚇する鳴き声を上げていた敵は一斉にフラーゴラへと飛びかかってくる。
「俺が敵を集めるから、そこを狙うんだ!」
 イズマもその近くで名乗りを上げて魔物の注意を引く。
 身構える彼は飛びかかりや連携による風での攻撃に対し、すぐさま反撃を叩き込むべく身構えていた。
 木々を齧じ倒すほどの牙と顎を持つ魔物達だ。
 仲間達の傷を癒すべくヒーラーとなるフリークライは自身を中心として陽光を降り注がせ、慈愛の息吹で仲間達を癒す。
「イレギュラーズに続け!」
 警備隊が弓を射かけ、風術、風精霊を飛ばして攻めかける横から、サイズがアイシィを護るように位置取って。
「アイシィもやるの」
 強力な支援者である氷の妖精は早速凍てつく視線で魔物の動きを止める。
「強力な加護を君に!」
 サイズはそんな彼女を支え、大きく口を開いてくる魔物を抑えるべく盾となっていた。

 植林の対象となるその場所は多数の木々が焼け落ちて広場のようになっていたが、イレギュラーズに警備隊、氷妖精にフライングローデンと入り乱れればかなりの数となる。
 フラーゴラ、キルシェ、イズマがメインとなって引付を行うが、やはり数もあってか、漏れる敵が暴れることもしばしばあったようだ。
「負けないわ!」
 敵陣で激しく動き回るキルシェは呼び声を上げる。
 応じて聞こえてきたのは、悲しき亡霊の慟哭。それらに耳を傾ければ、魔物もその身を呪いへと侵されてしまう。中には気を失う敵も出始めていた。
「そろそろか」
 魔物複数体を引きつけていたイズマも合間を見て攻勢に出る。
 演奏家であるイズマは音を奏でて終焉の帳を自らを中心にして降ろす。
「耐えるだけじゃなくて倒さないと進まないからな!」
 終わりをもたらすその技に、1体が顔を見開き卒倒していた。
 タンク役となるメンバーが引きつけた魔物を狙い、他メンバーも撃破すべく奮闘する。
「貴様らの暴食ぶりは目に余るんでな。森の木々や動物の代りにこの弾丸を喰うがいい」
 イルマは弾丸を雨を振り注がせると、世界が少し位置をずらして虚空に描いた白蛇を具現化して解き放って食らいつかせていく。
「もう、駄目よ? あまりおいたするならお仕置きよ」
 ヴァイスも無数の思考を展開させつつ、もう1人の自身の可能性を纏って一気に傍若無人な森の魔物へと短剣で斬りかかる。
「仕掛けるわ。注意して」
 前方の仲間へと呼び掛けたヴァイスは暴風を発して魔物どもを吹き飛ばす。勿論、森への被害が軽減することは織り込み済みだ。
 大きく吹っ飛ばされた1体は地面をもんどり打ち、失神してしまったらしい。
 ただ、魔物も狡猾だ。
「此処に貴様らの食糧は無い。このまま無に還れ」
 仲間の攻撃によって弱った敵を狙っていたイルマは、目のも止まらぬ抜き打ちで1体を仕留めてみせ、さらなる連射で敵を追い込もうとする。
 ただ、魔物数体が彼女の後方から風を巻き起こす。
 煽られたイルマへと一気に魔物が飛びかかり、彼女へと襲い掛かる。
 フラーゴラが庇いに向かうも間に合わず、イルマは地面へと倒れてしまっていた。
「気を付けて、敵も連携を仕掛けてくるよ」
 これだけ人数がいてなお、裏をかいてくるフライングローデンは侮れない。
 世界が調和の力を回復へと転じて癒しを振り撒いていたが、そこへとなおも強襲してくる魔物達。
 滑空するように飛びかかってきた敵の牙に世界も傷つくが、代わりに歌唄へと当たったフリークライがその猛攻を引き付ける。
「フリック マダ 動ク」
 全身を齧られ、フライングアタックを喰らうフリークライはパンドラを使って堪え、自らに福音をもたらして損傷修復を行っていた。
 ただ、やはり数の利は大きく、徐々にイレギュラーズ一行へと勢いが傾く。
「はああっ!!」
 警備隊隊長ラウルの矢が敵の体を穿ち、隊員達の術と精霊の連携プレイがもう1体を討ち倒す。
 キュルキュルキュル……!
 小型のアイシィなら狙いやすいだろうと魔物が牙を剥こうとしたが、サイズの発した黒い顎がそいつを噛み砕く。
 逆方向では風を操ろうとしていた2体をアイシィが纏めて凍てつく吐息で完全に動きを止めてしまうと、なおも妖精へと飛びかかる敵目掛け、サイズが短剣を投げつけてその頭を切り裂いていた。

 敵の数が減れば、タンク役となるメンバーも幾分楽になる。
 余裕が生まれたイズマはさらに終焉の帳を敵陣へと降ろす。
 視界が紫色に包まれる魔物達はそこから逃れようともがくも、2体が力尽きていた。
 続けてキルシェが飛び込み、再度呼び起こす呪いの歌声によって魔物達の意識を奪っていく。
 とはいえ、キルシェもあちらこちらに傷を負っており、自らの回復も行ってそれらを塞ぐ。
 ただ、ここまでくれば、仲間達にも余裕が生まれ、フリークライや警備隊が仲間達を癒すべく術式を展開させていた。
「もう一息だ。気を抜くな」
「ああ、皆イレギュラーズに負けるな!」
 イズマの呼びかけ、そして警備隊隊長ラウルの叫びが森にこだまし、彼らの奮闘ぶりが冴える。
 イズマの発した紫の帳のよって動きを止めた魔物らを、警備隊メンバーがそれぞれ風の術、精霊の起こした竜巻でその身を引き裂いていた。
 そこまで引き付け役を請け負っていたフラーゴラも攻撃に転じる。
 ここまで残っていたタフな魔物目掛け、真っ赤な魔弾を撃ち込む。
 大きく目を見開いたそいつが地面をのたうち苦しんでから力尽きると、残る1体が恐れを知らずに飛び込んできたところをヴァイスが仕掛けて。
 ヴァイスが展開していた結界術。そこへと飛び込んできた最後のフライングローデンはその身を切り裂かれ、地面へと落ちていったのだった。


 害獣……フライングローデン達を駆除すれば、植林作業の再開である。
「植林でも頑張るよ!」
「頑張るの」
 サイズについていたアイシィも掛け声を上げる。
「順番に復興作業を進めようか。班を組んで協力したら効率よさそうだな」
 イズマはここでも協働を行うべく先導役となる。
 瓦礫、苗木の運搬、植林と班を分け、効率よく作業に当たる。
「まず、瓦礫除けね。木馬さん、お菓子をあげるから瓦礫を運んでくれないかしら?」
 キルシェはその作業に妖精の木馬を担当させようと呼びかける。運ぶ場所は他メンバーと話し合って本日は作業しない場所へと移動させる。
 イズマや警備隊メンバー数名が大きな瓦礫を、キルシェは小さな瓦礫をたくさん運ぶ。
 空いたスペースへと、フラーゴラがそこに農業知識を活かして植林する場所を考える。土砂崩れの懸念や生物が住めるようにと合わせて考慮する。
 また、フラーゴラはひとにぎりの灰も使うべく、警備隊と共に穴を掘り始めていた。
 なお、フリークライも灰は使っていたが、この灰がフェニックスの起こしたものだということを深緑民を中心に、皆が気に病んでいるのではと気にかけていて。
「デモ ダカラコソ フリック達 灰 植物 糧ニナル所 見セル シタイ」
 フリークライ曰く――フェニックス 破壊 再生 象徴。
 開放されたフェニックスは森を焼いただけではなく、今日から明日を繋げてくれた。
「大丈夫。植物 トテモ 強イ。コノ身 証拠。保証スル」
 自身をもって告げるフリークライの言葉を受け、イズマもまた自らの想いを語る。
 ――復興は過去への逆戻りではない。根付くのは新たな生命だし、森の様相も変わるだろう。
「……喪ったのは辛いけど、転機だと思おうよ。より良い深緑を新たに育むんだ」
 灰となった草木も肥料となる。
「新たな草木が芽生えるから、受け入れてあげてね」
 土の性質を気にかけつつ、イズマは最良の土壌を作るべく幻想種達、そして植物疎通によって木々の意志を汲み取り、作業を進める。
「次は植林ね!」
「どうするのがいいのかしら」
 ある程度土壌ができれば、キルシェが新たな仲間を植える場所を木々に尋ねる。同じく、ヴァイスも森と対話しつつ、植物知識も生かして植林する最良の方法を模索する。
「やはり、先ずはここから始めたいところだな」
 目覚めたイルマは一度近場を飛行して上空から眺めて森の焼失箇所を観察していた。
 情報を合わせ、メンバー達はこの地から植林を進めていくのだが、そこでフリークライが自らのギフトを宿した苗木を植えることを提案する。
「フリック ギフト 宿シタ植物 元気。安心 安全」
 植物を運んできた小規模版青竜みたいなフリークライの姿に、アイシィは改めて不思議がる。
「動ク花畑? 盆栽? ノシノシ」
「どうなってるのか不思議なの」
 秘宝種という存在もあってか、警備隊の面々と合わせてフリークライに興味を示していたようである。
「さあ、頑張ろう」
 サイズがそこでカリスマを働かせ、警備隊を統制することで効率を上げるが……。
「もっと人手が欲しいな」
 植林を行う手数を増やそうと、世界は簡易式召喚陣によって精霊を呼び出す。同じく、警備隊の中にも精霊を行使できる者がおり、助力を得ていた。
 イルマ、キルシェ、フリークライと作業を進める傍ら、サイズがアイシィへと手取り足取り教導し、分かりやすく面白く彼女へと植林の楽しさを伝え、慣れない作業のサポートをしていた。
 そんな彼女を気に掛けるメンバーは多い。
 フラーゴラも時折アドバイスをくれていたし、フリークライに住む青い鳥2羽が彼女の手伝いを行ってくれていたし、一緒になって舞い踊ることで皆のやる気を向上させてくれる。
「まだまだこれからなの」
 そんなアイシィを見つめる世界は元々敵対していた時期があった事を思い返すが、杞憂だったと作業に戻る。
「このくらいでいいだろう」
 下手に上過ぎると水やりが大変になること、密かに土中で眠っていた植物が芽吹くチャンスを活かしたいこと。
 ある程度作業が進行したところで、イズマがそれらを指摘し、全体的な作業を止めるよう皆に促す。
 そこで、キルシェが苗木へとギフトによる聖水を振り撒いて。
「お手伝い有難うございます! ルシェのお水、飲むと元気になるの! 皆さんもよかったらどうぞなのよ!」
 彼女が作り出す聖水は作業で疲れた面々の体へと染み渡る。
 苗木も、土中から芽吹こうとしている種も、皆元気に育つようにとメンバー達は願う。
 さらに、フリークライは雨が降るよう祈る。自然の恵みもこの森が育むには大切なことなのだ。


 事後は皆、思い思いの時を過ごす。
 フラーゴラは仲間や警備隊の女性陣と共に、お茶や食事を共にする。
「皆は何食べるかな……」
 お肉屋さんを営むフラーゴラはビーフジャーキーを所持してきたが、合わせてベリーやナッツといった植物も用意していた。
 サイズも料理して作ったサンドイッチを振舞っており、皆それらを美味しそうに頬張っていた。
 そこで皆が気にしていたのは、アイシィのこと。
 彼女は自責の念を抱いてこの作業を手伝ったそうだが、その理由を警備隊が気に掛ける。
「申し訳ないの……」
 この先何をしていいのかわからないというアイシィに、サイズが寄り添い、美味しいフルーツケーキを手渡す。
「これ食べて笑顔になってほしいものです、笑顔が一番ですよ」
 可能な限り、力になるとその手を握るサイズ。
「良ければだけど、サイズさんを手伝ってほしい」
 その意志を尊重し、フラーゴラもまた助力を促す。
 傍でのんびりしていたフリークライもこちらの状況を見守っていたが、そこでヴァイスが先程間引いたり、抜いたりしていた草花の中から押し花にしたものを差し出す。
「ふふ、これからも頑張りましょうね」
 なお、ヴァイスはメンバーや警備隊にも、草花を利用したお茶や香袋を渡していた。
「ありがと……なの」
 フルーツケーキを口に入れ、アイシィは嬉しそうにヴァイスから受け取った押し花を眺めていたのだった。

成否

成功

MVP

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

状態異常

イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)[重傷]
生来必殺

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは戦闘、植林作業で活躍を見せたあなたへ。数名に称号もお送りしています。
 氷の妖精が今後どのような道を歩むのでしょうか。
 今回はご参加ありがとうございました!

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