シナリオ詳細
突然の闇バニー!
オープニング
●お前もバニーになるんだよ!
突然だがご想像頂きたい。
バニースーツを着せられるクレマ――。
「させるかあ!」
誰かの脳内イメージボードをドロップキックで粉砕するクレマァダ=コン=モスカ (p3p008547)。
素早くスピンで立ち上がり、開いた両手で壁をアシンメトリーに撫でるように流麗な動きで構えをとると、クレマァダは相手をにらみ付ける。
「させぬ、させぬぞ! 今年の夏はシリアスにいくと決めておるのじゃ!」
「ドロップキックでボードを砕いた時点で無理なんじゃあないか? 少なくとも今日は」
バニースーツのジョージ・キングマン (p3p007332)がいた。
「そんなことはない。ここから立て直せば今日の依頼はただならず者とバトルするだけのスッカスカした依頼にできるはずじゃ。わしはそう、充実よりも純血を取――」
自分語りを始めようとしたところで、クレマァダは停止した。
ゆっくりと振り返る。
バニースーツのジョージ・キングマンがいた。
「もう着ておるぅ!」
「だから言ったろう」
「まてまてまて、今年の夏はシリアスにキメるんじゃ! オールバックに眼鏡の46歳がバニースーツを着た様は描けん!」
「具体的に説明するな」
「だが未だ間に合う! ジョージよ! 『あの手』を使うのじゃ!」
「ハッ!」
ご想像し直して頂きたい。
デカいコウテイペンギンがバニースーツをつけているさまを。
「よし可愛い! シリアスに間に合う見た目になったぞ!」
「なったかあ……?」
クエーとくちばしを開くジョージ。
なんか絶望の青を踏破した後あたりからこんなノリが板についてきた気がする。
「なあ、そろそろ話を進めてもいいかい。まだ背景すら出てないんでね。おじさん黒い背景にずっと立ってるんだよ」
死ぬほどメタなことを言いながら、十夜 縁 (p3p000099)は後ろを振り返る。
大変お待たせしました。今ココがどこかをご説明致しましょう。
「ヒヒヒヒヒ、テメーはこれからバニーになるんだよォ!」
「バニマァダが見てぇぜ!」
「男のバニーも見物だなァ!」
「ハァァァァ――イーヤッハァァァー!」
ナイフをペロォって舐めながら、モヒカンと棘つき肩パットの男達が並んでいた。
彼らは煌々と輝くスポットライトの下に立ち、床は不自然なほどに白い。散った血がよく見えるようにか、はたまたライトの反射をねらったものか。
周囲は大きな八角形のリングとなっており、特殊な珊瑚でできた折で覆われている。これがいかなる衝撃も魔法も遮断するのだと、経験でわかった。
檻越しに周囲を眺めれば、それは美しい海底と珊瑚礁の風景。岩に腰掛けるディープシーや水中行動装備を着用してふわふわと浮かぶどこかの金持ちが、早く始めろとばかりにヤジを飛ばしてきている。
そう、ここはなんとはるか海底。海洋の先シレンツィオリゾート北西部にて時折開かれる闇闘技場なのだ。
やれやれと首を振り、十夜は苦笑を浮かべた。この衰えや諦観をイメージさせる表情は彼を象徴するものだが、案外最近は見れない顔でもあった。
やはり青を踏破した経験が彼を魂のレベルから変えたのかもしれない。
「闇闘技場の摘発のために送り込まれたんだが……まさかバトルで決めようって話になるとは。さすがは鉄帝派閥の考えることだねえ」
海の中でもどういう理屈か知らないけど煙草をくわえ、煙をポッと吐き出す十夜。
「縁ィ! 貴様もさっさとタツノオトシゴかなにかになれェ!」
「できてたまるか」
折角状況説明が纏まってきたのに、とクレマァダへ振り返る十夜。
「だってお主、ウィーディーシードラゴンの海種じゃろ? ジョージみたいに海の生き物に変身できるんじゃろ?」
「忘れてるかもしれないが、ジョージはスカイウェザーだぞ。ペンギンになれるのはギフト能力だ」
そういえば! ともっかい振り返るクレマァダ。
くえーと声を上げるバニージョージ(ペンギン)。
耳とかをかぽっと外すと、人間ジョージへと戻った。
ここからは渋い声で想像して頂きたい。そうそうディルクから軽薄さと遊びを抜いたような感じのやつ。
「シレンツィオを治める代表執政官からの依頼を受け、島北西部の海底にて不定期に開かれる闇闘技場の摘発にやってきた俺たち。
直接殴り込んだところで会場や主催者が変わるだけだ。俺たちはまず主催者を突き止め交渉を持ちかけることにした。
闘技場の主催者は俺たちとの交渉に応じ、ひとつのゲームを提示してきた。
この闇闘技場で3対3のチームバトルを行い、一勝でもできれば今後闇闘技場を開かない。鉄帝の執政官を通し合法的な闘技場への転換を約束するということだ。
俺たちローレット・イレギュラーズはフェデリア島では皆英雄。一度でも試合を開けば莫大な利益になるだろう。その上、合法化のきっかけをヤツは待っていたようにも思える。
俺たちとて無益に血を流したいわけではない。穏便に……そう、鉄帝式の穏便さでハナシがついたわけだ。そして今――」
「なぁにを悠長に語っておるんじゃ! 負けたらこのままバニーなんじゃぞ! 負けたら全員闇バニーにされるんじゃぞ!」
「バニマァダ、落ち着け」
「落ち着いていられるかそしてバニーではない!」
コノォと言いながらジョージにヘッドロックをかけるクレマァダ。
その様子をじーっと眺めていた十夜は、カメラ目線でフッと笑った。
「ま、今日はこういう空気ってワケ」
あと言い忘れたので最後に想像して頂きたい。
今日は全員バニーである。
- 突然の闇バニー!完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年08月07日 22時05分
- 参加人数6/6人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 6 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(6人)
リプレイ
●
「いやじゃー! バニりとうない! バニりとうない! バニりtonight!」
いやじゃいやじゃーといいながら両手両足をばたばたさせる『海淵のバニー』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)はすでにバニーだった。称号からしてバニーだった。
「しまった!?」
「クレマァダさん”覚悟(トラスト)”決めましょ」
『反応が足りてるバニー』アルプス・ローダー(p3p000034)がバニーだった。
どのくらい足りてるかっていうと一昨年の冬にはもうバニーだったくらい足りていた。
「ウワァ!? バイクまでバニーになっておるぅ! そこは車体に耳だけはやして視聴者をガッカリさせるところじゃろ!」
「あーウサギより時速で勝ってるとかいいながら」
「そうじゃそうじゃ網タイツをシートにかぶせたり」
「ちょっと何言ってるかわかんないですね」
「かけたハシゴを外すな!」
こういうときにハシゴ外されがち祭司長、クレマァダ。
「だいだい考えてみるのじゃ。
我は祭司長ぞ?
自慢するのではないがいずれ辺境伯の地位を受け継ぎ海洋の貴族として重要な役目を……やめろやめろぉ! 我はうさちゃんではない!!」
「待って下さいバニ司長」
「誰がバニ司長じゃ」
「確かに僕たちは闇闘技場の摘発の為にここに来ました。
けれどただモヒカンを倒して条件を満たすだけで良いのでしょうか?」
ふとみるとモヒカンたちが『ウララララララ』て言いながら両腕をくるくる回していた。
「合法に舵を切るとなっても、この場の彼らが納得していなければ別の闇賭博に流れてしまうでしょう。
それを避ける為にも僕たちは……バニーを着こなす必要があるんです!」
「な、何と……」
ドゥーンという効果音と共に顔アップになるアルプス。
ハッとした顔でアップになるクレマァダ。
『海淵のバニー』フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)がちょっと離れた所で優し~い顔をしていた。
「勢いで丸め込まれてる」
フェルディン(逃れようのないバニーボーイ)は爽やかな雪月花ボイスでクレマァダの斜め後ろへと立った。
「例えそこが深き海の底であれ、我が忠義に揺ぎ無し――『放浪の騎士』改め『海淵の騎士』フェルディン・レオンハート、推参致しました。お忘れ物ですよ、クレマァダさん」
「フェルディン……」
振り返るクレマァダ。かぶせられるうさ耳。
「…………おまえもかフェルディーーン!」
「単純な勝利だけでは不十分、要となるのはその内容。
思い出して下さい、我々は騎士や祭司長である前に、シレンツォオ政府に雇われたsubmariner……日本語で言うと水商売の人です」
「ちがうぞ?」
「彼らの心をつかみ取り、闇バニーを脱し光のバニーとなるよう真のバニーを見せ導くことこそ、この海を任された者の責務を果たせるというものでしょう」
「む、むむ……」
責務とか海とかいう言葉にだいぶ弱いクレマァダ。お口を波線みたいにしていると、フェルディンが頷いてスッとクレマァダの前に出た。
「ええい、静まれい!
静まれい、静まれい!
お前たち、此方におわす方をどなたと心得る!
畏れ多くも現の祭司長――バニマァダ=コン=モスカ様にあらせられるぞ!!」
ぶるんぶるーんとバイクのエンジンをふかしまくるアルプスローダー。そのシートにはちょっとプルプル震えてるクレマァダが腕組み姿勢で胸を張っていた。急にデコられたアルプスのシートにはなんかすげーデカい背もたれがつき、『バニー道』とか書かれている。
「くっ、屈さぬぞ……バニーを着ようと心は錦! 我はやれるというところ見せてやるのじゃ!」
「その意気ですバニマァダさん!」
斜め後ろでガッツポーズをとるアルプスアバター。お主は乗らんのかいというツッコミを『さすがです!』の声でかき消した。
「さぁ、バニマァダさん、今です! 存分にキメてやってください!」
「うむ!」
「「ヒャッハー!」」
闇のバニーヒャッハーたちがナイフを手に一斉に飛びかかる!
「海嘯!」
「スパヴァ!」
「リガブレ!」
「「グワーーー!?」」
そして四行で消し飛んだ。
「なあ、聞いて良いかい」
『幻蒼バニー』十夜 縁(p3p000099)が腕組みをしたまま目を閉じていた。
「皆まで言うな」
『絶バニ』ジョージ・キングマン(p3p007332)が背を合わせて立ち、やはり目を瞑り腕組みしていた。
「おかしい……どうしてこんなことに……」
最新の水着姿の上からバニーをかぶせられた『散華バニー』ルーキス・ファウン(p3p008870)が両手で顔を覆っていた。
そして、覆ったまま叫んだ。
「どうして俺がバニースーツを着せられてるんだ! どうして俺の左右に四十路のおっさんがバニースーツ姿で並んでるんだ! どうして対戦相手が棘のついたモヒカンバニーなんだ! せめて一人くらい見目麗しい女性であれよ!」
「運命というのは、皮肉だな」
「一体誰に受容があるのかねえ」
「いやお二人は最初からいたでしょう!?」
先に覚悟をキメてしまったらしい十夜とジョージ。覚悟の周回遅れとなったルーキスは困惑とツッコミで心のエコバッグをパンパンにしていた。心の店員さんにやっぱビニール袋下さいつって微妙に嫌そうな顔をされること請け合いである。
「まさかこの歳でこんな格好をすることになるとは思ってもいなかったぜ。もっと映えそうな生き物はいくらでもいただろうに」
十夜がシニカルに笑うと、ジョージが手のひらの付け根でくいって眼鏡の位置を直す仕草をした。この仕草するキャラ古今東西探しても一人か二人しかない。一人は昔ワンピで見た。
「何。この程度で揺らいでいては海洋では生き抜けないぞ」
「海洋を奇人の万博みたいにいうのはやめてくんないかね。建てるかい? バニーの塔を。作るかい? バニーのかがやきを」
「マスコットキャラクターはバニバニくんだな」
「普通にウケそうじゃないですか」
そっとうさ耳をもぎとろうとしたルーキスの手をガッと掴んで阻止すると、ジョージはもっかいあの仕草で眼鏡をなおした。
「海は広い。何が起こるか、どんな摩訶不思議な生き物がいるかも分からないからな」
「眼鏡のレンズに光反射しながら言ったらなんでも知的に見える分けじゃないですからね!?」
眼鏡で許されるライン越えてますからね! と釘をさすルーキス。
彼はネクタイ(つけてた)をキュッとしめて襟(上半身裸に襟だけついてるやつ)をなおす。
「まあ、いいでしょう。今日はシリアスにやると約束したのです。どんな格好でも、真面目に戦えばそれらしくなると言うところを証明しましょう」
「いいだろう……今年の夏は俺が『来てる』季節でもあるからな」
ジョージは刀をとり、すらりと刀身を数センチだけ抜いた。
一方の十夜はわざと刀を抜かずに杖のように地に着けると、やれやれと言って背を丸めてみせる。弱った老人のようなしぐさだが、このフォームで取り囲まれたアズマが最終的に全員を血の海に沈めていたことを十夜は知っている。いや、目の前のモヒカンたちもそれは知っているのかもしれない。決して十夜に油断することはなかく、むしろ警戒すらしていた。
「アズマのシマがからんでりゃ、そりゃあ警戒もされるかね」
が、構わない。
「さっさと来な」
囁く十夜に、モヒカンたちは一斉に飛びかかり――。
「「ヒャッハー!」」
「引潮」
「海皇」
「瑠璃雛菊」
「「グワー!?」」
やっぱり四行で吹き飛んだ。
●ここからが本当のバニーだ
モヒカンがあまりにもあっけなくやられたのでこのお話は終わりだ――と、思われたかも知れない。
だが、これは始まりにすぎなかった!
珊瑚でできた檻が動き合体し、クレマァダたちのチームとジョージたちのチームがそれぞれ同じ檻の中へと閉じ込められる。
「これより――当闇闘技場最後の試合! ファイナルスペシャルマッチを開催しマァス!」
バニーをつけ目の周りにタトゥーいれたヤベーやつがマイクに向かって叫んだ。
湧き上がる歓声。鳴り響く拍手。
観客のボルテージは最高潮へと達し、中にはイレギュラーズたちの名を呼ぶ声もあった。
「くっ……!」
「ローレットは島の英雄。互いに戦わせるのが一番盛り上がるってワケかい。やれやれだねえ」
「最初からこれが狙いだったのですか……!」
唇を噛むルーキス。観客たちからの『ヤレー!』という声に首を振る十夜。
フェルディンは慎重に檻の様子を観察し、そしてクレマァダに耳打ちした。
「檻の出口はなさそうです。ここは言うとおりにすべきかと」
「ひょわっ!? 急に耳元で囁くな!」
ただでさえイイ声なんだから、とはいわない。
クレマァダは耳(ひとみみ)を抑えたまま顔を赤くすると、手袋をきゅっとつけなおすジョージと目を合わせた。
「まあ……まだ我らも本気を出しておらぬ」
「その通りだな。モヒカンたちはさしずめ、俺たちの自己紹介係といったところか」
あらためてジョージは周りをみてみた。
この一戦を目に焼き付けようと集まる人々の目はみなキラキラとしていて、闇も光もない、まっすぐな人間性がそこにはあった。
「終わったら、ここは正規の闘技場になるのだろう? はじめは面食らったが、こういう闘技場も悪くない」
「確かに……な」
向かい合う英雄と英雄。戦力を均等になどと言われたのはこのためだったかと思う一方で、十夜&ジョージ&ルーキスという三人を相手取ることの難しさに歯がみする。
「クレマァダさん、彼らと戦うなら僕に秘策があります」
アルプスローダーの囁きに、クレマァダはキラリと目を光らせた。
「さすがは闘技場荒しのバイク。で、その秘策とは?」
「顔をこちらに」
アルプスがちょいちょいと指で手招きすると、アルプスがぐいっと顔を近づけた。
思わず身をそらし、きょとんとして顔を赤くするクレマァダ。
ニッコリと笑うアルプスと至近距離で目が合い……その様子はまさに。
「こ、これは――百合営業!」
ルーキスの顔にバックライトと後光が差した。
「まずいですよジョージさん、十夜さん! 人類はソフトな百合が好き。百合に勝ってもらいたいと思うもの。観客がにわかにあの二人に注目しはじめています! ムードが相手に傾けば……実力で拮抗している我々は余りに不利です!」
「ルーキス、お前さんそんなキャラだったかい?」
「こちらも対抗するしかありませんよ!」
腕まくりし、うさみみをぴこぴこさせるルーキス。
「まずは十夜さんとジョージさんで――」
「いや」
十夜がスッとどこからともなくイラストを取り出した。
眼鏡しかつけてないジョージの胸板をルーキスが指でくるくるなぞって囁きかける絵であった。
「どこからこんな絵が!?」
「需要があるんだよ、二人には」
「いやいやいやいや」
ルーキスは両手を顔の前でふり首も左右に振りまくった。
「俺にはエルピスという大切な人が――」
「大丈夫だ」
例のフォームで眼鏡を直し、レンズをキラリと光らせるジョージ。そしてルーキスの肩に手を置いた。
「あの子はおそらく許す。不思議な確信があるんだ」
「眼鏡のレンズに光反射しながら言ったらなんでも知的に見える分けじゃないですからね!?(本日二度目)」
「そんなことを言って……本当は俺の子ウサギちゃんになりたいんだろう?」
ルーキスをのけぞらせ、その胸板に刀の柄を押し当てるジョージ。
「クッ……今日は『匠の勝負下着(セキガハラ)』なんです、せめて、やさしく……」
ウオオとボルテージのあがるギャラリー。
フェルディンは百合営業の邪魔にならないようにスゥーって距離をとり、十夜はひとりだけ安全圏に逃げていた。ていうかフェルディンと並んで何やら相談していた。
そして――。
「スーパーノヴァ・バニー!」
凄まじい初速で走り出したアルプスローダー。跨がるアルプスアバターのうさみみがなびき、ニッとどこかボーイッシュに笑う。
対抗するのはジョージだった。大刀『海皇』を抜刀術の構えで握り、車体激突の瞬間を狙って抜刀。刀身を斜めに叩きつける。
衝撃は斜めに逃げたが、しかしアルプス自体のもつ速度と重量が完全に逃がすことを許さない。
「俺の背にはキングマンズポート……ファミリーがある! おいそれと轢き逃げられるわけにはいかん!」
ギンッと音をたてアルプスとすれ違うジョージ。だがアルプスは素早くターンをかけ、再度ジョージへスーパーノヴァ・バニーを繰り出してくる。車体を激しく傾けたがゆえガードの難しいそれに対し、ジョージはあえて防御しないという選択をとった。
刀を逆手に握る。
振り上げ、振り下ろす。
ただそれだけの動作だが、下ろしたその瞬間は高速回転するタイヤに向いていた。
「な――!?」
その場で派手に回転しあさっての方向へ飛び、クラッシュするアルプスローダー。
対するジョージも衝撃をころし切れずに弾き飛ばされ、檻へと激突。
「ゆくぞ、フェルディン! お主はルーキスを抑えるのじゃ」
「仰せのままに、バニマァダさん」
走り出したフェルディンとクレマァダ。
十夜は『まかせるぜ』とだけ言ってその場に立ったまま刀を地に着き、一方のルーキスは二刀を抜いて走り出す。
白百合、瑠璃雛菊。彼の人生を変えた二人を象徴した刀であり、彼の力そのものといっても過言ではない。白百合のほうはさっきのバトルでそっと背に隠していたけど。
「フェルディンさん。まさかあなたと戦うことになるとは。しかし相性で言うなら互角!」
「先に有利を取った方の勝ち、だね」
二人の狙いは全く同じ。
相手の強みを殺すべく、【怒り】を付与するというものだ。そしてその戦法は互いに効く。
双方射程距離!
フェルディンが蒼き宝剣『レプンカムイ』を解放し大上段に構えた――その時!
「お客様」
素早く懐へと滑り込んだルーキスが、刀の柄をトンッとむき出しになったフェルディンの胸板にあててのの字を書いた。首を伸ばし、耳元に唇を近づける。
「ふふ、興奮してきたでしょう?」
「クッ!」
突然同人誌みたいな顔をするフェルディン。たぢま絵男子は伊達ではなかった。
だがまだ敗北が決まったわけではない。手持ちのカードの半分が奪われただけ。受けた被害も【怒り】と【ショック】のみ。【混乱】効果は『ディープブルー・レコード』によってカットできた。
更には相手の攻撃を反撃するだけの能力も持ち合わせている。倒されるまえにこの状態を脱することができれば……!
その、一方!
「十夜ぁ! 貴様がこんな仕事をとってきたばかりにぃ!」
「おっと、そいつぁ言いがかりってもんだぜ」
クレマァダが『ソング・オブ・カタラァナ』にディスクをさしこみ発動させた歌から絶海拳『紋花』の力を引き出す。
繰り出す拳は渦となり、渦は相手の守りを穿つ。
対する十夜はあえてその攻撃を避けずに受けると、その一瞬の間にクレマァダの腕に親指を押しつけた。
「――ッ!?」
何かを察して飛び退くクレマァダ。
構え直そうとするが、その姿勢ががくりと斜めにくずれる。
「な、何をした!?」
「さあ、なにかねえ」
「そんなうさみみをつけているくせに……!」
「うさぎってのは意外と獰猛なんだろう? “らしい”戦い方だと思わねぇかい?」
どこか獰猛な、そして闇をはらんだ表情を一瞬だけ見せる十夜。
クレマァダも本気を出さねば彼を攻略できぬと察したのだろう、だらんとさがった片腕を後ろにまわし、無事な片腕だけで構えをとる。
互いに距離はとっているが、既に両者必殺の距離。
クレマァダは片腕だけで、十夜はわざと面倒くさそうに刀を抜き――。
「――絶海拳・海嘯!」
「――操流術・渦潮」
力と力が、真正面からぶつかり合う。
賭け試合は大盛り上がり。
元締めは大もうけし、丁度良い機会とばかりに闘技場を正式なものへと変更。
全ては丸く収まった。
最後のイレギュラーズ同士のバトルはどちらが勝ったのか……気になる読者もおられよう。
しかしながら、その結末を語るのは、もはや野暮というもではなかろうか。
バニーの美味しいところを隅々まで堪能したのだから。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――mission complete! nice bunny!
GMコメント
今日は全員バニーです。
敵も味方多も観客も全員バニーです。
●闘技場でのバトル
あなたは闇闘技場摘発を依頼され、交渉の上でバトルを受けました。
3対3のチームバトルが行われますので、まずはまあまあ戦力が均等になるように3人ずつに分かれてください。
敵チームはバニーを着たならず者たちです。
深くは描写しません。PCのバニーをよく描写するためです。彼らは適当に肩パットつけてヒャッハーしててもらいます。
適度に強さはあるはずなのでいい感じに自分の強みを見せつつ連携バトルをしてください。バニーで。
あと多分ないと思うんですが二チームとも敗北した場合は全員闇バニーとしてなんか地下で丸太を回す係をやらされます。バニーの意味は?
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