PandoraPartyProject

シナリオ詳細

男達の冒険

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●語り合う者達

 青い空の下、とある貴族達は河川敷の芝生に横になっていた。
「……雲の動きが早いなぁ」
「卿もそう思うか」
「私もそう思っていた」
 幼い頃より仲の良い家同士で付き合って来た彼等三人は、この日は勝手に執務を抜け出して遊んでいた。
 齢四十を越えるおっさんだと言うのに何をしているのか。とは、彼等の執事や侍女達の言である。
 ぼーっとして時々火酒(ウォッカ)を飲みながら、彼等は空を見上げていた。
「私はな」
 そんな時、真ん中の貴族が呟いた。

「もっと、こうな。あの王都の『迷宮』とかに関わったり冒険するものだと幼い時は思っていたよ」
「あー、わかるなぁ」
「異世界の冒険譚を読むとそんな妄想するものだよな」
 男達は食い付いた。
「なんか特異運命座標のアレ、ギフトみたいな能力ですんごいの。あれで無双したりして~……とかね」
「私は女体化に憧れたものだ」
「その気になればできそうな気がするが」
「無理無理。家があるからな」
「「ですよねー」」

 それぞれ長男坊として生まれた身だ、勝手な夢を見て迷惑を多方面にかける事は出来なかった。
 三人は再び静かになって。空をぼーっと見つめ始めた。

「「…………」」

 眠そうな空気になってきた。
 流石に彼等の着ている物からして、このまま眠り落ちるのは危険だ。右にいた貴族が背筋を伸ばして立ち上がった。
「冒険、するかー」
「何を言い出すんだ卿は」
「なに、いやさ。そろそろ私達もいい歳だし、やりたい事が残ってるのはそれはそれで寂しいだろう」
「で?」
「だから、冒険しよう」
 明らかに呆れた顔で彼等は立ち上がった親友を見上げた。
「思い当たるだろう? ……彼等はあのサーカスを倒したんだ。
 変に難度の高そうな依頼を出さず、護衛して貰いながら普段なら行けない場所へ行こうとするのはどうだろう」

「ギルド、ローレット。きっと彼等なら私達の冒険を手助けしてくれるだろう」

●ということで
「護衛依頼です」
 『完璧なオペレーター』ミリタリア・シュトラーセ(p3n000037)は胸元の薔薇を模したブローチに指先をトントンしながら告げた。
 卓に着いたイレギュラーズ達を見た彼女は小首を傾げて微笑む。
「今回の依頼主はさる御方の三人組。つまり貴族三人の護衛を受けて頂きます、
 皆様が依頼主と共に向かうのは幻想国内にある中で少し古い鉱山ですね。それなりに宝石等が採れていたらしいのですが、
 モンスターの類が住み着いたり不慮の事故が相次いでしまい山の権利すら放棄されてしまったそうです」

 宝石!
 イレギュラーズ達の表情が微かにピクつく。
「どんなモンスターがいるんだ」
 ミリタリアは手元の手帳を確認した。
「鉱石を媒介にして繁殖すると言われる『ストーン・ブロブ』や、放置された事で採掘途中だった宝石類から
 格闘型エレメントエネミー『ジュエルナイト』が出現するかもしれません。いずれも暗い鉱山内部では多少発光していると聞きますので奇襲の心配はないでしょう」
 宝石がモンスターになるというのか。イレギュラーズ達は難しい顔をした。
「最終的な依頼達成基準としては、鉱山の奥に残されているとされる巨大なダイヤの原石が存在するかの確認と共に依頼人達を無事に連れ帰って来て下さい。
 ……あ、ちなみに採掘権は最終的にグレーな所にあるので、拾ったりネコババはいけませんよ?」

「それ先に言ってくれ!!」

GMコメント

 かつては三馬鹿と呼ばれていた貴族の長男達が今、冒険の片鱗を味わう……!

 以下情報

●依頼達成条件
 依頼人三人を鉱山の奥まで連れて行って無事に帰って来る

●棄てられた鉱山
 名前すら忘れ去られた小規模な鉱脈、鉱山の内部へ冒険しに行きます。
 各自必要なスキル・装備・心構えや依頼人を守る事を念頭に向かいましょう、落ちてる宝石はとっちゃだめです。
 鉱山には細かい鉄鉱石やその他砂利を含んで成長するスライムや、『ジュエルナイト』という名前の通り近接格闘で人を襲い追い出そうとする、精霊の亜種ともいえるモンスターが出現する事が予想されます。
 いずれも発光している個体ばかりなので、暗闇に紛れての奇襲は無いでしょう。
 (尤も、無防備な鉱夫が通り過ぎた宝石から現れたナイトに襲われたという事例があります)
 奥には巨大なダイヤの原石が放置されているとされ、皆様は行き止まりとなる最奥部まで依頼人を連れて行く必要があります。

●貴族達
 時々立ち止まってお喋りしたり、もしかしたら綺麗な石を見かけたらそちらへ行ってしまうかも知れません。
 オフだからか、中々のおバカですが許してあげましょう。

 以上。
 イレギュラーズの皆様も含め、冒険らしく楽しめると素敵ですね。
 ご依頼を受けて下さる事をお待ちしております。ちくブレードです宜しくお願いします。

  • 男達の冒険完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月26日 23時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レッド(p3p000395)
赤々靴
那木口・葵(p3p000514)
布合わせ
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
光の槍
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
イーディス=フィニー(p3p005419)
翡翠の霊性

リプレイ

●いざ行け冒険隊!
 晴れ渡る空の下。町から離れ、街道沿いで馬車を下車した一行が向かい、侵入して行くのは灰色の肌を見せている鉱山。
 立ち入りを禁じられてから久しいこの鉱山の内部を行く者は恐らく彼等しかいないだろう。仮にも危険地帯なのだ。
 しかし、場の雰囲気は歓楽のそれである。
 普段着用している汎用貴族の為の仮面を脱ぎ捨て、気の良いオッサンと化している男達。今回ローレットに護衛兼エスコート役を依頼した当人達の醸し出している空気によるものだった。
「外の天気は晴天、しかして乾燥し過ぎぬ程良い露具合! よもや鉱山の中で粉塵爆発という事もないだろう!」
「卿はいきなり怖い事を言うんじゃないよ!? まぁ天気が晴れ晴れしていると気分も高揚するのは確かだ」
「ここもう坑道だがね!」
 既にその士気は謎の高まりを見せながら歩く彼等の足取りは軽く。その割に妙に力の入った音が坑道に響いている。
 そんな彼等の傍、半ば囲い込むような隊列で護衛しているのはいずれも可憐で頼もしいイレギュラーズ達だ。
「護衛依頼っすけど貴族さんの初冒険っすか。ボクもっすけど冒険は何時になっても憧れるっす」
「冒険に憧れる気持ち、よくわかるよー! 私もさー、いつか大冒険! って感じの冒険してみたいもの!」
「んふふ~、たまには童心に返るのもいいものだわ? 三人の冒険譚、ギルドローレットがお手伝いしちゃいましょう~」
 三人組の隣を歩いている『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)に同意を示す『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)。
 『夢色観光旅行』レスト・リゾート(p3p003959)もゆるりとした調子で続いて微笑んでいるが視線は時折辺りを見回す。全員遊び過ぎず、楽しそうに言葉を交わしながらも警戒を忘れていないのは流石だと言える。
 そしてその独特な『仕事の空気』は、貴族達も自然と肌で感じ取れるものだ。だから安心した様子で冒険に臨めるのである。
「私も幻想に来たときは……あぁ今でも思い出しますね……」
 『笑顔の体現者』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)は不意に混沌へ来てからとある友人達との事を思い出す。あれもまた冒険だろう。
「あ……! 棄てられた鉱山とのことなので、もしかしたら道具とかその辺にあるかもしれません。アイテムを見つけたら、私に知らせてくださいねっ!」
 既に使い物にならない元作業具らしき物が暗闇に散見する中、ユーリエは自身のギフトで使い方が分かる事を説明する。
 暗闇とは言ってもユーリエを始めとした一行の進む手元は明るい。それは隊の中心である貴族達がそれぞれ視界の先を上手く照らしてくれているからだった。
「進境の程は如何ですか? 貴族様方♪」
「ただの迷路を描くのとはやはり勝手が違う、いや若い頃を思い出すなぁ」
「卿がやたらと宝の地図を量産していた時のか。やたらと計算されたある種不自然な出来のハイクオリティマップだったかな」
 『お節介焼き』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が覗き込んだ先で貴族の一人が鉛筆に糸を結び付けた物を用いて描いていたのは、一枚の地図だ。
 まだ鉱山の書き出しではあるが、地形の予想図から傾斜まで、事細かに記し始めている辺り。遊びとしては相当力が入った一品になりつつあった。
 華蓮とリゾートは冒険気分を満喫している様子を見て、互いに顔を見合わせ微笑む。
 冒険はこれからなのだ、彼等はまだまだ体験する事になるだろう。それが何かはイレギュラーズにも分からないのだが。

●煌く宝石の様な
「鉱山といえばトロッコですよ! あれいいですよね、ぎゅーんって移動するんです」
「ほうほう……馬車や船ならいざ知らず、考えてみたら確かに乗った事が無かったなぁ」
「ルル君は中々目の付け所が違うな、いざと言う時はシュトラール君もいるからその気になれば乗れるな!」
「レバーで進行切り替え、ロマンと楽しさを兼ねている至高の乗り物です! 地底湖もロマンの塊です、未知の巨大魚……捕まえて食らうのです!」
「わいるどすぎる」
 増えている。いつの間にか貴族達に混ざって狐の少女が一人ぴょんぴょんしている。
 また妙に盛り上がっているのは『悪い人を狩る狐』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)だ。勿論ただ談笑しているだけではなく、周囲を歩き回っている『ぬいぐるみ』と交互に斥候役として偵察する事もある。
 ただその姿も愛らしいかな、耳をピンと立てて辺りを見回しながら会話する姿はどこか忙しないながらも快活な印象を与えて来るものだ。
 ぬいぐるみ──『布合わせ』那木口・葵(p3p000514)が練達上位式の一種である式達。彼等は前後をトコトコと見回りながら一行の様子を見上げている。傍目に見てこの冒険隊、可愛すぎではないだろうか。
「さながらゆるふわパーティーと言った所か」
「何の話っすか?」
 貴族の呟きにレッドは訝し気に眉を潜めた。
 と、暫く進んだ所で彼等の視界に淡い光が差し込む。鮮やかな色彩。しかし光量が弱い。出た先はそれまでに比べて凹凸の激しい、例えるなら虫食いの様な空間になっていた。
 先頭のユーリエとそれまで光源の外を歩いていた『翡翠の霊性』イーディス=フィニー(p3p005419)の二人は後続に警戒を促した。
 視界に広がるのは無数の鉱石。あるいは美しい彩を有した物、つまり『宝石』が原石含めあちこちに山積みにされ放棄されていたのだ。
「何だか思ってたよりゴツゴツしてますねー」
「ルルリアちゃん、宝石って綺麗に整えてからお店で見る様な形になるのよ~?」
「綺麗な物は興味はあるけどそんなモノよりボクは冒険が欲しいっす」
「冒険か。まぁ、気持ちは分からなくもねーな。俺だって、冒険譚ってやつに憧れたクチだし」
 それぞれ隊列は維持したまま、周囲を探索しつつ道を検める。
 しかし警戒をしていても、目を凝らせば余計に際立って視界に映ってしまうもの。アレクシアは周囲を見渡して僅かに不穏な空気を感じ取っていた。
(情報通りに考えるならこれだけある宝石の中からモンスターが出て来るんだよね……?)
 数が多い、と。アレクシアは傍でユーリエ達前衛の視界を照らしている貴族を見やりながら、思わず息を呑んだ。例のジュエル・ナイトなるモンスター以外にも鉱石を媒介にしたスライムも居るというのだから。
 積み上げられた石も、凹凸のある壁も、どれも妖しく見えてしまう。
 だがそこで視界を通ったぬいぐるみやリゾートの召喚したコウモリに気付いて、何かを思ったアレクシアは不意にカンテラを持っていた貴族達に声をかけた。
「そういえば、貴族さんたち名前はなんていうの?」
「む?」
 敢えて名乗らないのかもとは思っていた。だがこれから名前を呼べる方が何かと困らない筈だと彼女は思う。
 暫し三人で目配せをし合った彼等は、アレクシアへ向き直り親指を立てて言った。
「私はインカだよ」
「こちらはクォーツだとも」
「ここだけの名だけど、私はオーラと呼んでくれよ!」
 改めて名乗る何故かハスキーボイスの貴族三連星。
 踏み込んではいけない話題と思っていた他の者達は今のやりとりを耳にして噴き出した。

 そんな彼等を眺めながら、周囲を剣で突いたりして警戒していたレッドが首を傾げた。
「おっ、初めて見るっすけどキラキラで綺麗っす。コノ宝石は何ていうんっすか?」
 刹那……指を差すその背後で、淡い光に映し出された影が不自然に揺らいだ。

「レッドさん、モンスターです!」
 葵が声を挙げたのと、その手から糸のように伸ばした魔力の粒子を瞬時に伸ばしてロープへと編み上げたのは、同時だった。
「おわぁっと!?」
 蠢くその形状は不定形。ゴロゴロとした輪郭。鉱石の礫を粘液で固めた様な姿の『ストーン・ブロブ』は葵のマジックロープに近くの石柱へ縛り付けられ、その動きを停止させられた。
 咄嗟に伏せたレッドは近くの貴族の手を取ってその場から退けようとする。
「っ! レッドさん、リゾートさん、こっちに来ては駄目です!」
「こいつら……急に出て来たな、狩りのつもりか?」
 ユーリエの声が走る。視線を向ければイーディスと彼女の前に赤、黄、青といった様々な色合いの騎士の様な姿をした人形が蜃気楼の様に佇んでいた。敵意の有無を確かめるまでもなく、鋭利な刃が薄暗い中で深緑の光を放っている。
 挟撃は偶然か、それとも特性か何かなのか。少なくとも前後で十の敵に囲まれたのは間違いなかった。
「依頼人達の事は任せた」
 近付くまでもないと判断したイーディスは片足の爪先で地面を軽く叩く。
 直後、轟音と共に足元から跳ね上がった石礫が散弾の如く撒き散らされ、宝石騎士を二体吹き飛ばした。
 衝撃波に煽られた貴族達が「なんだなんだ!?」と騒ぐのを彼等の傍に寄り添って華蓮が落ち着かせる。安全を考えるなら、早期に敵を退けられたイーディス達前衛寄りになるのが一番だ。彼女は貴族達をそちらへ移動する事を指示した。
「インカさんはこちらへ!」
────【 PLLLLLLッ!! 】
「君はそっちじゃなくて、こっちだよ……!」
 葵とレッドが他個体を相手取っている隙を突いてブロブが体当たりを繰り出した瞬間。アレクシアが華蓮とクォーツの前へ間一髪割り込む。
 高速で流動する鉱石に身を削られ微かに苦悶の声を漏らした彼女へ、貴族のインカが駆け寄ろうとしたが。アレクシアはそれを勢いよく振り上げた手で制止した。
「大丈夫、何があっても護るからね!」
 ブロブが半濁音の奇声を上げて体躯の一部を一閃させる。それをアレクシアはタイミング良く理力障壁を展開し二度、三度と弾いた。
「たぁー!!」
「行かせないっすよ……!」
 葵が一気に両手を引いた直後、二体のブロブが石柱にマジックロープで絡め取られ、叩き付けられる。
 仲間達が集中しているからか。アレクシアへ向かい始めたブロブへ横合いからレッドが滑り込み、一息に抜き放った剣を乱打して足止めに成功する。反射的に繰り出された打撃を受け止め、返す刃で斬り飛ばし屠った。
 二人の視線が僅か後方の貴族達へ向く。アレクシアに圧し掛かろうとするブロブの背中が映るが、その脇からもふっとした尻尾が一瞬見えた。
 視点は切り替わり、アレクシアの眼前にぴょこっと狐耳が下から生えて来た。
 刹那。坑道内に閃光と炸裂音が連続する。三点バーストによる射撃で撃ち込まれるは毒の魔弾、縦に伸び切ったブロブの体躯を駆け上がり跳ぶのはルルリアの姿。
 続けて炸裂音が連続し、二丁の白と黒の拳銃が火を噴く度にブロブに禍々しい色の魔弾が弾け、鉱石を砕いて仰け反らせるように形状を歪めてしまう。
 銃声が鳴り止んだ時。それはブロブが死を迎えた時を意味していた。
「どうです?ルルの雄姿はっ! あ、オーラさんも一発撃ってみますか?」
 糸が切れた様に鉱石が辺りに散る中、ルルリアは貴族達へ愛銃を差し出しながら提案する。直ぐにオーラは開いた口が塞がらない様子で首を横へ振ったが。


 敵を全て退けた彼等は、凹凸の多い空間を抜けた先に在った元休憩所らしき木造の小部屋で休憩を取る事にした。
「は~い、お手当てしましょうね~」
 リゾートのゆるい声と共に、部屋に白く暖かな光が満ち溢れる。
 手当てを受けたアレクシアやレッド、ユーリエは彼女に礼を言うと各々荷物や装備を下ろした。
「皆さんに怪我が無い様で安心しました! それでは少し遅めの昼食にしましょうか?」
「おおっ……!」
 華蓮が手ごろな空間を見繕うと、そこへルルリアの煉獄炎狐による火炎を纏った子狐を座らせる。そこで華蓮はバッグや鞄から取り出した簡素なフライパンやベーコンを横に並べ、何やら卵を取り出した。
 それ以外にも道中で拾っていたらしき木の実を置くと、フライパンを熱しながら料理に入り始めた。
「三人が冒険する切っ掛けを詳しく訊いてもいいっすか?」
 レッドは手持無沙汰に一息吐いている様子の貴族達へ切り出した。
「今回の……?」
「フッフフフ、ははは! 卿もこれには応え辛い様だな!」
「聞くも下らない話だが、あれは青空の日にだな。インカの奴がまたいきなり『雲の動きが早いなぁ』とか言い出した事から始まるのだよ!」
「おい馬鹿やめろ」
 喧々囂々と騒ぐも、そこにあるのは常に彼等三人の付き合いが長い事を示す仲の良さだ。
 こうして面と向かって話を聞いていると珍しいタイプの貴族だなとユーリエや他の者は思う、彼等は幻想貴族としては人間味がやけに強かった。
 彼等は皆長男坊で、元より家同士が付き合いのある仲だった事から交流が多々あったものだが。それにしてはよく根が一切変わらずこうして時間を共にできたと、彼等自身も思った事だった。
「そんな私達だが、まあ男というのは時に冒険に憧れるものさ。地図とかな」
「地図に特化し過ぎだろう卿は……」
「君達イレギュラーズはそういうのは無いのかい?」
「私は冒険していると依頼者や同じイレギュラーズの方達と出会えるのが良いですね、なんたってそうすれば色々な服が見られますからね!」
「ほう、服か!」
 かつてのインカは十字架をジャラジャラ付けた漆黒のコートをよく着ていたのだが、どう思う? と聞かれた葵はユーリエと「うーん」と答えた。貴族インカはその場に崩れ落ちたが問題ないらしい。
「みんな! できたのだわ!」
 そこへ良い匂いをさせながら華蓮が声をかける。
 彼女が大きく丈夫な葉の上に並べたのは。砂糖を塗して揚げた木の実のおやつと、シンプルに塩と胡椒のかけられたベーコンと目玉焼きの乗ったゼシュテルパンの薄切りであった。
 まだアツアツで尚且つぷるんと揺れる卵は半熟の証。一口食べれば先ずとろけた卵黄がパンとベーコンを黄金に染めるだろう。
 貴族達の反応は……

「「美味い……っ!」」

●ラストアドベンチャー!
 それから暫く、遭遇戦を二つ経て一行は最奥へと辿り着いていた。
 宝石や結晶が壁から無数に突き出ている広大な空間……恐らくかつては採掘が行われていたであろう中。中央に地面から半分突き出た、恐ろしい大きさのダイヤの原石が妖しく光を内部で乱反射させて鎮座していた。
 周囲の索敵を入念に行いながら近付いて行く彼等は、間近でそれを見上げる事になった。
「……なるほど、こりゃデカイわ」
 イーディスが半ば嫌な予感を募らせながら一歩下がる。
 もし周りを見渡していたら、『彼女』以外にも仲間達が引きながら後退りしているのが見えただろう。どう見ても異様な大きさだった。
「うわー! すごいおっきーい! 見て見て! ほら!」
 キャッキャ。ルルリアだけはワクワクが弾けていた。
「卿はどう思う?」
「いや面白いな。自然的に生まれた物ではなさそうだ」
「やはり魔術か……幻想の者にしては回りくどいな」
「……?」
 そんなイレギュラーズを他所に、リゾートは貴族達の話がふと気になった。彼等の纏う雰囲気が貴族のそれに戻っているのが見えたからだった。

「……すぐ離れた方がいいかもですかねー」
「任せるっす。インカさーん、此処以外にもっと冒険したくないっすか? 良い場所知ってるっすよ、ほらさっき通った時にあの……」
「皆さん逃げますよーーー!!」
 突然ユーリエの叫び声がその場に響き渡る。
 直後。弾かれたように全員が一斉に走り出す、それはまさにユーリエの一声があったから間に合ったような物だろう。
 巨大なダイヤから突如浮かび上がった見上げる程の巨大な蜃気楼……否、それは一騎のジュエル・ナイトだった。宝石騎士は出現と同時に駆けだす。目標はどう見ても明らかにイレギュラーズ一行だった。
「ちょおおっ……! あれ、やばくないですか! 大きくないですか!」
「あんなの、依頼人守りながら戦うのはきついぞ!」
「い、依頼は完了で良い! おれ帰る!!」
「卿、口調が崩れてるぞ!」
 葵とイーディスが後方から貴族やリゾート達を押し、あるいは引っ張り上げながら全力で駆け抜けて行く。
 しかし距離がある。おまけに振り返って見れば宝石騎士はどういう原理か壁を抜けて迫って来ていた。追い付かれるのは時間の問題だ。
「この先にあったあれ! あれ使えない!?」
 アレクシアが叫んだ。
「えぇっ、でも線路は最初の部屋までしか……!」
「上手くやれば脱線しても勢いで出られるかもしれない、やるっす!」
「最初はルルが乗りますね!! わーい!」

 彼等は走り抜けた先にある角を曲がり、とある空間に出る。そこで放置されている『トロッコ』へそれぞれ乗り込むとユーリエが操作法を端的に説明して全員が配置に着く。
 静かに大気を震わせ現れる色彩ある影。
 宝石騎士が追い付いたその瞬間、葵、ルルリア、リゾート、華蓮が一斉に遠距離術式と銃撃を噴かせる……!
 ────── ッッ !!!
 反動と衝撃波に押された車両は半ば飛び出すように走り出す。
 イーディスとレッドが全力でハンドルを漕ぎ、加速を得たトロッコは凄まじい揺れと速度で坑道を一気に駆け抜けて行った。
 そして最初に戦闘を行った採掘場で線路が途切れるも、その勢いは尽きず。穴に落ちる事も無く一直線に出口に続く道へと突っ込んで行く!

 外の光が見えた瞬間、彼等は浮遊感と共に空中へ投げ出されるのだった。


成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ーー「最高の冒険だったよ! 最高の仲間、最高のスリル……これからの仕事も君達のおかげで頑張れそうだ!」
ーー「地図を記念に貰ってしまったが、いいのだろうか? くれるなら勿論家宝にするがね」
ーー「皆良くやってくれた。感謝しかないよ、ありがとうローレット!」

 お疲れ様でしたイレギュラーズの皆様。良き冒険を体験できたようです。
 またのご参加をお待ちしております。

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