シナリオ詳細
<潮騒のヴェンタータ>砂原を駆り、海原を駆る
オープニング
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「そら、行くよ、お前達! こっからがお前達の腕の見せ所だろう!」
老練、精悍を絵にかいたような壮健なる女傑が豪快に笑い飛ばしながら、部下の操船を叱咤する。
「普段は砂の上をかっ飛ばしてるんだ。海の上ぐらいいけなくてどうするんだい!」
パワハラのラインをぎりぎり越えてる気もしない激励を上げるその女傑の名をカリーナ・サマラという。
ラサに存在する商会が1つ、サマラ商会の現会長である。
普段ならば砂上船を用いた圧倒的な運搬能力を駆使し、砂漠を移動しにくい大容量の物品を扱っている。
話をカリーナに戻すと、彼女にとって、この海洋は自身の故郷である。
実家は海洋の商家、サマラへ嫁ぎ、夫と死に別れてからというもの、故郷の土ならぬ海を踏んだことは殆ど記憶になかった。
だが、今回は話は別である。
2周年を迎えたシレンツィオリゾートに如何にも商機のありそうな気配とあって、食指を動かさないで何がラサの商人か。
実家のコネをほんのすこ~しばかり活用して、仕事に乗り出したところで――ダガヌ海域の話が出てきた。
「……なぁ、今更なんだが、どうして私達は船に乗ってるんだ?」
ラダ・ジグリ(p3p000271)は、船員へと指示を飛ばし続けるカリーナに隙を見て問うた。
「……ありゃ、説明してなかったかい? こりゃ済まなかったね。
でもね、ジグリの娘。あんたも言ってただろう? 『次も呼んでくれよ。せっかくなら本物も拝んでみたいんでね』ってさ」
「それって、以前に私達とレプリカを回収しに行った魔銃のことか?」
「そうさ。あの後、色々と探したんだけどね、どうにもヒントがありゃしなかった。
それっぽい座標が記されてたから、そこに行ってみたんだがね。残念ながらそこはただの砂漠だった」
「前みたいに地下にあったとか……じゃあないよな」
「もちろん、その可能性を考えて探させてみたけどね、地下にある気配は全くなかった」
ラダの言葉に肩を竦めながらそう答え、カリーナはそのまま前を向いている。
「で、より詳しく手記を調べてたら、興味深い情報があったんだ」
「興味深い情報?」
「そう……ほら、あんたらは最近見たんだってね、あの……空中都市って奴だよ」
「アーカーシュのことか? あぁ、私も少しだけ行ったことがあるが」
「それと同じさ」
「……空中都市、ということか?」
「そう、正確に言うなら『元』空中都市、だがね」
そこまで言われると、徐々にだが目的地が分かってきた。
「……まさか、あるのか? その空中都市が……この海域の何処かに?」
「そういうことだよ。色んな学者様に計算してもらってね、もうほら、もう少しだ」
にやりとそう言って笑ったカリーナにラダが以前に会った時と同じような笑みであることに気づいたころ――大海原を往く船がその帆を上げ、速度を緩めていく。
――けれど、そこは海だった。海しかなかった。
「ちょっと待ってくれ、幾ら何でも止まるのが速すぎないか? まだ都市どころか島も見えないが」
「いいや、違うよ、ジグリの。ここであってる。
ここなのさ――この下、海の底に都市があるはずなんだ。
遥かな空にあり、風によって徐々に移動して海原の底へと落ちていったってのが学者の研究だ」
「……今度は砂じゃなくて海を潜るってことか」
「なぁに、今回は竜宮だっけ? の加護も得られるようだし、気にすることはない。
もしも魔銃がなくても、海底都市ならお宝はあるだろうから見つけてもいいんじゃないか?
もちろん、報酬は弾むとしよう」
「……その言葉、忘れるなよ!」
いうや、ラダは水面へと飛びこんだ。
連れてこられた以上、今ここでいくら言ってももはや意味もないのだから――
●
沈む、沈む。沈んでいく。
そこは驚くべきことに、不思議と明るかった。
海底に沈んだ都市だけあり、かなりの深さである筈なのに、陽の光は暖かく照らしている。
(アーカーシュを見たからには驚かない……つもりだが、こんなにも大きな町が浮かんでいたのか)
その景色を眺めるラダの視界に、そいつらは姿を見せる。
上半身がサメで下半身がタコの深怪魔を中心に、首から上に魚がまるごと乗っているような造形をした半魚人がその周囲を取り囲むようにこちらを見ている。
不意に、影が差した。見上げればそこには悠々と泳ぐマンタが4匹。
溢れる敵意は温かい歓迎ではないことを如実に示している。
- <潮騒のヴェンタータ>砂原を駆り、海原を駆る完了
- GM名春野紅葉
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年08月06日 23時40分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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「こんな海底に魔銃ねぇ。普通の銃ならとうに錆びてるだろうし、本物か別の宝があるといいが」
海底へと着地した『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)は思わずそう言葉を漏らす。
その視線の先には敵対心を露わにする海洋生物――もとい深怪魔たち。
「慣れない水中、私達より数の多い敵。
情報量が多くて一瞬戸惑ったが、ひとつずつ片付ければいいのはいつもと同じ。蹴散らすぞ!」
「おう! それにしても空から堕ちた町だなんてロマンあふれる存在だな。
以前に関わった魔銃の件も関わってくるとあればなおさらだ」
ラダの言葉に呼応すように拳を鳴らす『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)はやる気十分と言った様子。
「海底の遺跡ということは、つまり手つかずの財宝があるかも知れないということですわね? 腕が鳴りますわ~~~!!」
目が金になってそうな気もする『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)のテンションはぶち上げている。
「海底都市でのバトル! 胸が躍るね! こういう気持ちで戦うのは嫌いじゃない!」
紅雷迸らせ、胸を躍らせるのは『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)である。
「ヴァリューシャ! 気を付けて!」
「もちろんですわ~~~!」
互いに普段以上にテンション高めでロマンに踊る2人だった。
「ブラックタイガー君、ひとまず退避していたまえ!」
マリアにこくこくと頷くエビ……じゃないトラ……でもないブラックタイガー君がそそくさと戦場から離れていく。
「海は嫌いなんだが……まぁ、仕事だからそんなことを言ってる場合じゃないか。
海中の敵なんて戦ったことないんだがね、全く」
扇を開きながら『戦支柱』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は思わずと言った様子で呟く。
360度全方向から攻撃を喰らう可能性があるというのは中々新鮮だ。
「前の世界では見たことがある気もする光景ね」
海底都市の様式にどことなく故郷を感じつつ『決死行の立役者』ルチア・アフラニア(p3p006865)はぽつり。
「海底都市とは浪漫があるじゃねえか。眠ってるらしい魔銃にはあんま興味ねえが……」
どっちかというと、剣でもあれば最高だ――など思いを馳せるのは『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)である。
そこまで言うと、視線を上に。悠々と泳ぐエイのような生物に目を向けた。
「ひと先ずはあれらを討伐しませんと話になりませんね!」
淡い蒼光を湛える剣を構え、『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)はこちらを窺う深怪魔の様子を確かめる。
こちらが臨戦態勢を整えたことに気付いたのか、敵の殺意が増していく。
●
「さぁ、命短しなんとやら、AP枯れる前に終わらせる」
メーヴィンはこの戦場における圧倒的な速度を以って跳び出していく。
肉薄と同時、戦扇より炸裂するは闘志の棘。
三度に及ぶ刺傷に合わせ、踏み込んで蹴りを叩きつける。
一度の一撃で百を思わせる連撃を浴びせかけ、その頃には引いた手に握り締めていた扇でもって渾身の力で殴りつけた。
めきょ、ともぺきょっともつかぬ音がしたような感触の後、そのフォアレスターが砂に沈んだ。
「確実に仕留める――」
義弘は速攻で走り出すと、一気に拳を振り抜いた。
腕力のままに振るう拳は宛ら八岐大蛇の如く。
流麗に、苛烈に、食らいつくす収奪の拳が戦場で踊る。
警戒するようにして構えるフォアレスターを捩じり伏せ、撃ち抜き、ぶん投げ、踏みつぶす。
放たれた魔弾を物ともせず、突き出された槍はへし折るぐらいの気持ちで義弘は拳を振るっていく。
「――そこだ」
動きを見せ始めたフォアレスター目掛け、ラダは引き金を引いた。
放つは鋼鉄の驟雨。鮮やかに降り注ぐそれは先行する仲間を避けて魔獣たちを撃ち抜いていく。
一方、ルカは海の中を上昇していた。
くるりと身を翻し、見下ろす視線の先にはエピゴウネが4匹。
(普段なら随分と無茶だが、コイツラは特別だ)
エピゴウネはその仕様上、下にしか攻撃できない。
上を向いて狙ってくる可能性は――恐らくないだろう。
やった所で自然落下の爆弾がエピゴウネ自体にあたるだけだ。
つまり、上を取れている時点でルカの優位。
「俺は渦潮より危ねえぞ!」
獰猛な笑みを浮かべた砂漠の男が、海を蹴り飛ばしてエピゴウネへと飛び込んでいく。
振り払われた斬撃は壮絶を絵にかいたような爆発力。
二度の斬撃は4匹あったエピゴウネを尽く切り伏せる。
「どっせえーーい!!」
向かってきたフォアレスターに合わせるように、ヴァレーリヤは思いっきり突っ込んでいく。
力任せに振り抜いたメイスによるただの薙ぎ払い。
その強烈な薙ぎ払いを受けたフォアレスターの身体が嫌な音を立て、口からこぽぽぽと水泡が溢れ出して吹っ飛んで行った。
「もういっちょーー!!」
追撃とばかり、ぐるぐるとメイスを回転させて放り投げれば、先程のフォアレスターへと着弾。
ひときわ大きな泡を吹いて、そのまま動きを止めた。
「上ががら空きだよ!」
バチリと音を立てた雷鳴、マリアは水を蹴って跳び出した。
蒼雷が青い海に異様に駆け抜け、その軌跡を眩き散らせば、着弾代わりの蹴りを叩きつける。
勢いに任せた追撃の乱打を撃ち込み、終わる頃に出力を更に上げていく。
それは桜花を思わせる乱舞。雷がフォアレスターの身体を焼いて火傷を齎し、その精神力を消耗させていく。
ヘールポップ、エピゴウネによる砲撃が放たれた頃、ルチアは祈りをささげる。
温かな光が遠き空から降り注ぎ、美しき音色が海中に響いていた。
「行きます!」
リディアが愛剣を掲げるとその剣が淡く輝きを放つ。
深海になお鮮やかな海のような光は、仲間達に加護を齎していく。
その状態のまま、リディアはその剣を敵に突きつけるように向けた。
「リディア・T・レオンハート、お相手致します!」
堂々と上げた名乗り口上に片方の集団の意識が注がれていく。
「さぁ、こちらへ! 大役、務め抜いてみせましょう!」
殺意マシマシで構えてくる敵を見据えながら、リディアは守りを固めながら視線を前へ向け続けた。
●
「邪魔です……!」
リディアは剣を握りしめ、向かってきたフォアレスターの槍を上に弾くと、大きく踏み込んだ。
鮮やかに反撃の一太刀を入れて体勢を立て直すと、全身の魔力を剣へと注いでいく。
応えるように剣身の淡い輝きが勢いを増して、鮮やかに輝いた。
それはまるであの竜の顎を思わせるような魔力の層を描き、振り抜くのと同時にフォアレスターを喰らいつくす。
壮烈なる斬撃を見舞われたフォアレスターが崩れ、その後ろに隠れていたヘールポップがたこの吸盤を露わに襲い掛かってくる。
咄嗟に剣を構えて防ごうとして――ヘールポップが視界から消えた。
「えっ……」
「よぉ、待たせたな。ま、お前さんなら1人でも大丈夫かも知れねえが、女性が傷つくのもボサッと見てられねえ性質でな」
驚くリディアに声をかけたのはルカである。
降りてきたルカはヘールポップを斬り下ろすついでにリディアの前に立つと、そのまま黒犬のレプリカを構え、緩やかに剣を振るう。
ヘールポップを庇おうとしたフォアレスター諸共、その強かにして確殺たる斬撃は黒の閃きを描いた。
「主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え」
ヴァレーリヤはメイスを掲げ、聖句を紡ぐ。
なぜか海中にて煌々と輝く聖火がメイスの先端へと集束する。
放たれた炎の濁流は海中に熱湯を生み出しながらヘールポップ2匹を纏めて薙ぎ払い、致命的な傷を残していく。
「――太陽が燃える夜」
もう一度――鮮やかに照り付ける聖なる紅蓮が迸れば、片方のヘールポップがぷかりと浮かび出す。
死んだかと思ったそいつは、途中で息を吹き返し、ぽんぽんぽん、と3発の墨を吐いてくる。
「行くよ――」
マリアは既にそんなヘールポップの背後を取っていた。
迸るは雷光。
鮮やかなる紅が海を裂くが如く爆ぜ、音が鳴っていると錯覚するほどの勢いで連打を撃ち込んでいく。
火傷を残すヘールポップが顔を歪め――雷閃が走る。
自身を弾丸とする白雷の電磁投射連撃が交わすことすらままならぬままにその精神性を削り落とし続けた。
「――これで終わりだ」
義弘はきつく握りしめた拳を、ヘールポップに向けて叩きつけた。
全体重を乗せた重い拳はそれだけでヘールポップの頭部をへこませ、吹き飛ばす。
立ち上がろうとしたヘールポップがそのまま海の底へと落ちて行った。
●
戦いが終わったイレギュラーズは早速とばかりに町の探索に取りかかっていた。
「さて、何が眠ってる?」
そろそろ本命へのヒントが欲しいところだと内心を考えるラダはそのまま海底都市の方へと泳いでいく。
「銃を扱う人間じゃねえが、ロマンは大事にするもんだ。
にしてもでかいな……余程権力があったのか、余程大型の生き物がいたからかね」
近寄りながら、義弘は思わずつぶやくものだ。
それに些か遅れつつも続くのはメーヴィンである。
(海中都市のロマンと言ったら空振りになるイメージしかないんだがね?)
実際に口に出すとフラグになりそうなので言わないが、考えてしまうのも仕方のないことだ。
「ここからが本番なんだ、金を稼がないとね。隅々までしらみつぶしだ」
嫌な予感を振り払い、メーヴィンもまた進んでいく。
ヴァレーリヤとマリアは町の外周に相当しそうな付近を探していた。
「それじゃあ、ブラックタイガー君もよろしくね!」
「海の中ならボクに任せて! もちろんだよ!」
刻々と頷いたブラックタイガー君が意気揚々と海の中を泳いでいく。
なにせ心優しき海を泳ぐ彼……彼?に手伝ってもらいながら、視線はついつい階段や柱の方に注がれる。
「立派な柱だね! それに階段が大きすぎる……何が住んでいたんだろうね……」
首を傾げながらも、ふるふると首を振って町の損傷具合を意識しながら探索を進めていく。
「えぇ、一体何が通っていたのかしら……」
隣で頷いたヴァレーリヤは通っていたそのものの残骸や、巨大なものが通過した痕跡を探しながら探索していく。
そうやって直ぐのこと。ヴァレーリヤは何やら直感が働いていた。
「マリィ~こっちに来てくださいまし~!」
「ヴァリューシャ! 何か見つけたのかい!?」
顔を上げれば、何らかの建造物の跡地を思わせるところからひょっこりと姿を見せたヴァレーリヤ。
「ほら、あそこ。あそこ、みてくださいな」
指さす方を見れば、建造物だったであろう瓦礫と瓦礫の間、何やらきらりと光るものがある。
「うぅん……何だろう? 瓶?」
「お酒に違いありませんわ!! もう住んでおられる方もおられないようですから、頂いても問題ありませんわ!」
「はっ……! なるほど! そうかもしれないね! よし、取って来よう!」
頷きあった2人は瓦礫に踏み入っていく。
ラダと義弘、ルカの3人は海底都市の中でも比較的元の形が見て取れる建物に足を運んでいた。
長方形のその建物は恐らくは神殿の類であったのだろう。
祭壇の手前、床に刻まれた巨大な紋章にラダと義弘は見覚えがあった。
「こいつは……どう思う?」
「あぁ、砂の中に合った遺跡の銃、あのレプリカに刻まれていた意匠とそっくりだな」
義弘からの問いかけにラダは深く頷いて答える。
独特の意匠はまさに魔銃に刻まれていたモノだ。
「あの魔銃がレプリカなら……本来はこの町の紋章なのかもしれないな」
アーカーシュは超古代文明の代物。
なんならそう名付けられるよりも遥か大昔から存在していた浮遊島。
浮遊期間がどれほどだったかはともかく、同じようにこの都市が大昔に空を飛んでいたのなら。
この町もまた先史超古代文明の遺産と言える。その当時の町の紋章があってもおかしくはない。
そんな2人から目を外して、顔を上げたルカは、その視線の先にある物をみた。
「宝物庫みたいなのが見つかれば話は早そうなんだが……お、あの祭壇の上にあるのは……」
上から降り注ぐ光に照らされた祭壇にはきらきらと輝く8つの光。
さっと泳ぎ見れば、それにはルカも見覚えがある。
「やっぱり竜宮幣か。とりあえず、これが合っただけ、ここまで来ても良かったかもな」
呟きつつ、竜宮幣を拾い上げた――その時だ。
ごごごごご、と音が鳴り、何処からともなく泡が溢れ出す。
やがて、神殿の奥に1つの像が姿を見せた。
顔やら何やらが砕けてろくに識別はできないが、飛行種であろうか、背中に羽が生えている。
そして手を広げる彼女の足元には石板のようなものがある。
「何やら音がしましたが大丈夫ですか!」
ひょっこりと顔を出したリディアはその光景に驚きつつも首を傾げた。
「御神体でしょうか?」
辺りを見る限り、神殿のようだと判断したリディアは思わず呟いた。
「なになに……ふむ……?」
いつの間にか石板まで近づいていたメーヴィンは首を傾げていた。
「古い言葉のようだ……わからん……だが、これは持ちだせそうだな」
石板を触れてみると、そのままずるりと落ちる。
そこには難しい文字と銃、剣、盾とそれを何かに捧げるような仕草をする女性が描かれている。
●
「と言うわけで、これがその神殿らしい場所に合った石板だ」
「そりゃあいい物を見つけてくれたね!」
ラダが石板を手渡せば、カリーナは不思議そうにそれを見て、ニヤリと笑った。
「でかしたよ、ジグリの娘。これらの文字は見たことがある。こりゃあ、あの手記に使われてた文字と同じだよ」
「じゃあ、意味が分かるのか?」
「あぁ、ついでに本物の魔銃の場所もね……」
そういうと、カリーナは悲しい目をした。
「……ところで、だ」
「なんだい?」
「知ってるとは思うが私も商会を持つ身になったんだ。
そろそろジグリの娘じゃなく名前で呼んでいただけないかな、カリーナ殿?」
顔を上げたカリーナが目を瞠り、大笑いし始める。楽しそうに、愉快そうに。
「たしかに、それはそうだ。いつまでもジグリの娘って言い方は良くない。
とはいえ……まだラダの嬢ちゃん、ぐらいだねえ。
私がそう呼ぶのは……一人前の友人(ライバル)か、あるいは顧客だよ。
まさか顧客になる気でもないだろう?」
母が子供を見るような――あるいは父が子を見るような。
穏やかな、けれど成長を望んでいるような眼で微笑まれた。
「――けどまぁ、あと数年も経てばそうなってるだろうとは、睨んでるけどね。
あんたは親父さんや私に似てる。あんたみたいな商人は大きくなるだろうさ」
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
大変お待たせしました。
お疲れ様でした、イレギュラーズ。
GMコメント
こんばんは、春野紅葉です。
<潮騒のヴェンタータ>では3本をお届け。
●オーダー
【1】不怪魔の撃退
【2】海底都市を探索する。
●フィールドデータ
陽の光に照らされたが如き光源を持つ謎の空間です。
石畳と特徴的な材質が見受けられます。
建造物の多くは落下の衝撃か波の影響によって崩れ落ちているようです。
異様に横に長く作られた階段の面影が残り、柱はやけに高い印章があります。
念のために暗視の類があるとより良いでしょう。
●エネミーデータ
・ヘールポップ×2
上半身がサメで下半身がタコの深怪魔です。
リーダー格、あるいは砲台代わりのような丁重さで使われているようです。
物神両面型で、命中、EXAも高め。
攻めに特化していますが、反面、撃たれ弱いです。
通常攻撃として牙や蛸の触手を使った近接物理戦闘、
墨を使った中~遠距離の神秘戦闘を用います。
戦闘によって以下のBSが付与される可能性があります。
牙には【出血】系列、【致命】
触手には【足止め】系列、【呪縛】
墨には【暗闇】、【混乱】、【凍結】
・小エピゴウネ×4
マンタ型深怪魔です。
海中を遊泳するようにして頭上から卵形の爆弾による爆撃を行ってきます。
この爆撃には【懊悩】【足止】【飛】の効果があります。
その一方、頭上に回られると完全に無防備になります。
・フォアレスター×10(槍・剣持ち×6、銃持ち×4)
首から上に魚がまるごと乗っているような造形をした半魚人型の深怪魔です。
各ヘールポップに槍・剣持ちが3匹ずつ、銃持ちが2匹ずつ。
槍・剣持ちはヘールポップの近くに庇い要員を1人残し、
それ以外の個体で槍による突撃から剣での至近戦闘に移行してきます。
銃を持つ個体は露払いとばかりに魔弾をぶちまけてきます。
銃持ちは神攻、槍剣持ちは物攻が高めではありますが、
あらゆるスペックが平均的にちょっと弱めです。
槍と剣には【毒】系列のBSを付与する猛毒がしみ込んでいるようです。
魔弾には【凍結】系列、【乱れ】系列を付与する効果があります。
●NPCデータ
・カリーナ・サマラ
豪放磊落たる海の女傑。
ラサに存在する商会の一つサマラ商会の会長です。
ジグリ家とも遠縁の関係に当たり、ラダさんとは既知でもあります。
今回は商機ありと睨んでリゾートに訪れています。
加えて以前にラダさんと一緒に探した骨董品の本物が海に埋まってる説を提唱しているようです。
なお、ラダさんに対しては商売人としても遠縁の親戚としても好印象の様子。
●特殊ルール『海中戦闘』
当シナリオでは完全な海中での戦闘となります。
後述特殊ルールの他、水中戦闘などの非戦スキルがあれば判定に上方修正が加わります。
無い場合のペナルティはありません。
●特殊ルール『三次元戦闘』
当シナリオは完全な海の中での戦いのため、
三次元的な戦闘時に特殊なスキルを持つ必要はないものとします。
逆に言えば、敵も三次元的に攻撃してきます、ご注意を。
例:敵の上の方から見下ろすように攻撃する、真下の位置から攻撃する、など
●特殊ルール『竜宮の波紋』
この海域では乙姫メーア・ディーネ―による竜宮の加護をうけ、水着姿のPCは戦闘力を向上させることができます。
また防具に何をつけていても、イラストかプレイングで指定されていれば水着姿であると判定するものとします。
●特殊ドロップ『竜宮幣』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります
●名声に関する備考
成功時に獲得できる名声が『海洋』と『豊穣』の二つに分割されて取得されます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、
海中の都市には浪漫と秘密がつまっています。
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