シナリオ詳細
<潮騒のヴェンタータ>揺らぎ遮る海草群
オープニング
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海洋、フェデリア島。
かつて絶望の青と呼ばれたこの地域は静寂の青と呼ばれるようになり、人々の行き来が活発になり始めた。
海洋と豊穣、そして鉄帝。それらの貿易もあり、中継地点となるこの島は今や世界最大級のリゾート島となった。
シレンツィオリゾートと呼ばれるようになったこの地域で、各地から有力者、富豪などを集めてクルーズツアーが開催されようとしている。
……しかしながら、その航路は【ダガヌ海域】と名付けられた三角形のエリアを必ず通る必要がある。
そこへ入った船が高確率で遭難、難破、行方不明になってしまうのだとか……。
「深海魔と呼ばれる怪物の出現が確認されています」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は集まるイレギュラーズへと状況説明を行う。
この海域に現れた未知なる怪物、深怪魔。
なんでも、深海の都もこの怪物の脅威にさらされており、玉匣(たまくしげ)なる神器があれば追い払うことが可能なのだそう。
しかし、現状、玉匣は破壊され、コイン状の竜宮幣(ドラグチップ)へと分割されてしまい、周辺の海底や一部の島へと散ってしまった。
深海、竜宮城からやってきた少女の願いもあり、竜宮幣を集め、玉匣の完成が求められている。
「その……竜宮幣の一つを、ダガヌ海域の海底にある古代遺跡にあるとの情報を得ました」
海底に開いた穴。それは誰も立ち入らぬ古代遺跡に繋がっているのだとか。
遺跡攻略はもちろんだが、内部には深怪魔の存在も確認されており、近づくこともままならない状況であったらしい。
「どうかこの遺跡の攻略と合わせ、竜宮幣の回収を願います」
アクアベルは簡潔に説明し、依頼を受けたイレギュラーズへと具体的な話に移るのだった。
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ダガヌ海域の海底に、ぽっかりと穴が開いている。
そこへイレギュラーズが飛びこむと、やがて空気のある空間へとたどり着く。
入口から遺跡の通路へと向かおうとすれば、内部は天井が低いことも手伝い、海草が群生している場所で視界のほとんどが覆っている印象を受ける。
イレギュラーズの1人が海草を切り払おうと試みるが、いかなる手段をもってしても海草は斬れないし、破れない。破壊することも適わない。
どうやら、遺跡内の機構を維持すべく特殊な魔法がかけられているようだ。迷宮の海草は色とりどりであり、見ていて飽きることはない。これも攻略の手がかりとなるのだろうか……?
また、海草によって作られたその迷宮は時折急激な海流が巻き起こり、入口まで放出されることがある。
海流に関しては突入段階では何とも言えないが、調べれば何らかの規則性などを見出すことができるかもしれない。
海草フロアを突破すれば、天井も高くなり、大きなフロアへと出る。
そこに待ち受けるのは事前情報の通り、深怪魔「テンタクルグラス」とお供の妖怪「若布童子」達。
いずれも全身に海草の生えたような見た目をしており、それを使った攻撃を行ってくるようだ。
奥には光る何かが確認でき、それが竜宮幣だろうとイレギュラーズは皆疑わない。
竜宮幣の回収の為、そして、海底の都市の脅威を払拭する為、イレギュラーズはこの怪物らの討伐へと乗り出すのである。
- <潮騒のヴェンタータ>揺らぎ遮る海草群完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年08月05日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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海洋、フェデリア島を出港した船は、ダガヌ海域へ。
依頼を受けたイレギュラーズはそこから海中へと飛び込み、海底を目指す。
「試しておくに越したことはないわよね」
『決死行の立役者』ルチア・アフラニア(p3p006865)は海底に至るまでの道のりの間に、味方全員へとAve MarisStellaを使う。
海底へと潜っていくメンバー達だが、今年新調した水着を着用して依頼に臨む者も多い。
例えば、ルチアは黒に赤い花と緑の葉をいくつもデザインされたパレオ付きの水着だ。
なお、その色違いの生地を使ったサーフパンツ姿の『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)。
白地に水色の花と青い葉。何より、水色とピンクのレイも合わせ、お揃いの水着を着た2人の仲の良さを感じさせる。鏡禍の表情が緩んでしまうのも納得だ。
「まさか海底にこんな遺跡があるなんてね」
『銀青の戦乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)は大人の色気漂わすネック型の黒ビキニだ。
「海中遺跡とはな……まあ、ありえるのか。ここに流れ着くのは」
「三角形、舟が遭難……元の世界でも似たようなお話ありましたねえ」
背の翼と同じ色をしたビキニを着た『天駆ける神算鬼謀』天之空・ミーナ(p3p005003)が船の難破する原因について口にすれば、旅人の『憤怒』すずな(p3p005307)が元いた世界で聞いたことを思い出して語る。
「面倒なことが起きなきゃいいがな」
ミーナはそう言うが、すずなが主張するように、深怪魔という相手の仕業であることが濃厚だ。
「改めて、ドラグチップの回収をするために遺跡の攻略だね」
左目に眼帯をした『元憑依機械十三号』岩倉・鈴音(p3p006119)は海底に開いた穴の内部を覗き込む。
海の底なのに、空気が溜まっている場所なら、陸地同様に歩いて探索できるのかと疑問を抱く。
ただ、内部では海流が発生し、押し流されてしまうこともあるという情報もあり、水中行動できるよう対策も講じている。
「いったいどういう魔術機構で空気を維持しているのか、何の目的で此処が作られたのかしら……?」
アルテミアが遺跡について考察していたが、入口から眺めるだけでは何とも言えず。
「まぁ、海底遺跡だしまだまだ未知の領域だと思うから、油断はできないよね」
「なかなか挑戦しがいのありそうな洞窟じゃないか」
水色のスポーツビキニ姿をした『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)が納得のコメントをしつつも真っ先に遺跡へと飛び込むと、『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)も準備を整えて。
「いいさ、なんでもこい。だてに修羅場はくぐってないよ」
「兎も角、生い茂る海藻を突破し、深怪魔を叩き切ると! ふふっ、分かり易くていいですね!」
史之もまた遺跡内へと飛び込み、すずなも続く。
「まぁ、何にしても今は竜宮幣を取り返しに行かないとね!」
「ああ、気合い入れていこう!」
他メンバー達も続々と遺跡内へと突入していく中、アルテミア、咲良も意気揚々と飛び込んでいった。
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海中と思いきや、空気が溜まっている不思議な海底遺跡。
「結局ここは水中……? 兎も角進みましょう!」
すずなと歩調を合わせるメンバー達。
「今回は……まずは群生してるワカメが厄介そうだね」
咲良の前方では、低い天井のフロアに縦に長く揺らめく多数の若布が群生し、迷宮を描く。
「おかげで景色に飽きることはないでしょうが!」
すずなも海藻というには非常に鮮やかだと感じる。
それらは見ていてとても綺麗で、咲良も景色としてずっと眺めていたい気分になっていたようだ。
「ところで、これ、ほんとに斬れないんでしょうか」
めちゃくちゃ試したいと思っていたすずなは後でこっそり試そうと思っていたのだが、ミーナが先にその若布へと直接触れてその硬度を確かめる。
「確かに頑丈だな……どういう造りになってるのやら」
揺らめく若布は遺跡の一部となっているようで、多少叩くくらいではビクともしない。
「こほん。綺麗なのはいいですが、その分視界悪いですね……」
「えっと、海流がいきなり起こることがあるんだね」
遺跡全体を見通せぬ状況にすずなが愛嬌ある眉を顰めると、咲良がこの遺跡についての情報を思い返す。
時間帯……というより、不規則にその海流が発生しているらしいということ。
それに巻き込まれて迷子になることを咲良は懸念するが、皆万全の対策を期していた。
例えば、ルチアは精霊を使い、合わせて広域俯瞰の視野を持つことで鉄砲水の兆候を読み取ろうとし、史之は先行させたファミリアーと合わせて超聴力で物音を聞き取らんとする。
物音に備えるのはアルテミアも同じで、彼女はハイセンスによって聴力を研ぎ澄ますのと合わせて若布の遮らぬ場所を見通せるよう視覚も強く働かせていた。
「やはり頼れるのは耳! 狼の耳の本領発揮!」
すずなは己の聴覚を信じ、即座に仲間と方角を共有して危険に備える。
早速流れてくる水流。ただ、これだけのメンバーが感覚を強めている為、備えは万全に近い。
「気圧が変わったわ」
「来ます! 水流に備えてください!」
アルテミアやすずなの呼びかけもあり、折角、進んだ距離を全て戻されてしまうことを是とはしないイレギュラーズは、なんとか水流をやり過ごせる場所を探す。
水流は天井から地面まで流す規模。高台は存在せず、天井に張り付くのも難しい。
丁度8人が隠れられるほどの若布でできた窪んだ袋小路を発見したメンバーは、そこに一時退避して水が流れ去るのを待つ。
海藻は場所によって自分の体へと絡めることもできそうだが、現状その必要はないと判断した一行はさらに先へと進む。
できる限り、次の水流が来るまでにと皆全力移動で奥を目指す。
「それにしても、前の見えない状態で歩くのはちょっと大変だね」
史之はほとんどが音頼り。こうした窪みがすぐ見つかればいいのだが、現実はそうはならない。
「また……」
今度は鏡禍が反応する。
彼は広域俯瞰で周囲を見渡すが、隠れられそうな窪地は水流の方向的に巻き込まれてしまいそうだ。
「ワカメにしがみつかないと」
轟音が近づいてくる。退避が困難と判断したメンバー達は鈴音のように通路の両サイドに群生する海藻を身体にしっかりと絡め、或いは前方から来る大量の海水に流されぬよう堪える。
……………………。
どうにか全員が堪え切ったが、幾分体力が削がれた面々はミーナが気掛けて体力の回復に当たっていた。
その間も色とりどりの海藻を眺めるミーナに手当を受ける鈴音はしばし考える。
「侵入者排除なのか、定期的に洗い流しているのか。決戦場への行き順がわかればいいんだけどねっ」
鈴音は足を止めたこのタイミングでファミリアーのカエルを召喚し、ワカメの色に規則性はないかと探る。
「仕掛けとか、隠れやすさとか分かればいいのですが」
鏡禍も更なる海流を気にかけるが、周囲のワカメの色をチェックしていく。
その後、もう1度水流に見舞われる一行だが、アルテミアが考察する。
「数の少ない色の海藻……」
アルテミアは仲間と共に行動しながら、試しにとここにあって自然な色のワカメに目をつける。
当たっていれば、水流に襲われることなく最奥の部屋へと至ることが……。
「ほら、見えたわ」
アルテミアの予測は当たったようで、急に天井が高くなり、メンバー達の前方が大きく開けたのだった。
●
最奥の部屋までたどり着けば、水流に巻き込まれる心配はなさそうだ。
部屋の奥を目指す前に、メンバーは部屋の奥で待ち受ける存在との戦いの前に……。
「生チョコタルト、腹が減っては戦はできないということですよっ」
もぐもぐとスイーツを腹ごしらえする鈴音。
傍では、ミーナがここでも仲間達の体力回復へと勤しむ。
そして、メンバー達は準備を整えつつ奥を見やると。
「妖怪、妖怪ですか、ちょっと仲間意識が……いやあれはちょっとないですね」
元々、姿見の妖怪という鏡禍はワカメに身を包む妖怪……若布童子……童子に僅かな間親近感を抱くが、飛ばしてくるぬめった液体は鏡が汚れる為、やはり苦手だと首を振る。
試しにと、鈴音が若布童子の絡む力を試そうと食べていたタルトを投げつけると、若布童子が早速ワカメで絡め取る。
その様子に鈴音が唸っていると、若布童子がそれを主である深怪魔テンタクルグラス……触手草へと献上すると、触手でつかんだ敵は自らの口へとそれを放り込んでむしゃむしゃと食べ始めた。
「触手プレイを思わず想像しちゃいますけど、目的は竜宮幣ですからね!」
気を逸らさぬようにと鏡禍が気合を入れ直していると、敵がこちらに気付いて近づいてくる。
「……アタシたちからしたら、食べられるわけにはいかないよね!」
シャアアッ!
触手草が触手を前方へと振るうと、3体の童子達が前へと進み出て、ぬめった粘液を飛ばして牽制してくる。
「せっかく海に来てるのに、ぬめぬめして気持ち悪い思いをするっていうのってなんか嫌だしね……!」
「味噌汁の具にしてやる! まってろ」
咲良が敵の様子に嫌悪感を示すと、鈴音が回復の構えを見せる。その前方へと皆出て、早速敵を迎え撃つ。
敵が攻撃に出る前に、颯爽と咲良が触手草へと迫る。
「ガンガン殴り掛かっていくよ」
彼女は相手の動きを遅らせるべく、多重に残像を生じるスピードで殴り掛かっていく。少しでも相手が怯めば、彼女の思惑通りだ。
「触手草を手早く、と行きたい所ですが……」
すずなは触手をうねらせて襲い来る触手草を敵視するも、取り巻きの童子達が邪魔そうだと考えて。
「3体程度で鈍るほど、私の連撃は手緩くないですよ――!」
前衛、攻めてとなるすずなは澱み無き清流の刀身で連撃を見舞い、若布の体を切り裂いていく。
ただ、放射してくる粘液弾は厄介で、接敵していたアルテミアが即座に回避する。
「折角の水着がヌメヌメになるのは嫌だし、見た目的にも色々とマズイわよ!!」
男性の目の毒になれば、戦いの手も鈍りかねない。
なお、男性の1人、史之は触手草へと向かっており、毒手を叩き込んで相手を少しの間致死毒を与える。
対する相手の麻痺は毒によるものと、毒無効の装備で対処を想定していた史之。ただ、触手から分泌される毒液はやはり麻痺成分があり、身体にピリつくような痺れを覚えてしまう。
だが、すかさず鈴音が動けるようにと彼に祝福をもたらす。
触手を蠢かせてくる触手草。粘液を飛ばしてワカメを絡めてくる童子。
ルチアは仲間の状態を把握しつつも、この場は回復の必要なしと判断して至高と光輝の魔術で手近な童子の力を封じていく。
敵とは一定の距離をとるミーナも仲間の状態は気に掛けるが、やはり戦いが始まった直後とあって高位術式によって四象の力を顕現させ、童子を襲わせる。
触手草や童子らはとかくこちらの動きを止めたがっている。
ならばと、前に出るのは鏡禍だ。
(さすがに女性の方々にこういったやつの相手をさせるのは悪いですからね)
ルチアのそんな姿は少し見たい……と思いかけて大きく首を横に振る鏡禍は戦闘に集中する。
「相手になりますよ」
とにかく、敵の注意を引くよう立ち回る鏡禍。
弱った童子目掛けて不滅の闘法で攻め立てていく彼は闘争心を高ぶらせて覇竜穿撃を繰り出し、童子の体を強く打ち付けるのだった。
●
妖怪、若布童子らはワカメを伸ばし、粘液弾を飛ばして抵抗するが、イレギュラーズの勢いは圧倒的で止まることはない。
なかなかメンバーを拘束できぬ童子は次第にその攻撃が大振りになっている印象を受ける。
それもそのはず。後方から腹をすかせた触手草が童子らへ早く餌をよこせとプレッシャーをかけていたのだ。
実際、それで童子の攻撃に当たれば手痛いダメージとなるだろうが、放たれる粘液を避けたアルテミアは細剣で斬りかかりながら童子の体を空中へと跳ね上げる。
空中でなおも追撃するアルテミアの剣戟によって、若布童子の全身が切り裂かれて地面へと落ちていく。
程なくして、メンバーが畳みかける中、残像を展開していた咲良もまた、空中へと2体目を跳ね上げる。
全身のワカメを払いのけ、咲良の掌打や蹴り、肘鉄、落ちていく敵に踵落としをし、そいつが地に落ちる前に仕留めてみせた。
そして、事前に宣言していた通り、すずなが淀みなく童子たちへと連撃を浴びせかけており、残る1体を追い込む。
「一気に行きますよ」
虚空に煌めくすずなの技。
いつの間にか敵の背後に回っていた彼女はその首へと刀身を走らせ、胴から切り離してしまった。
シャアアアアアアアアアァァァァァァ!!
役立たずどもめと言わんばかりにいきり立つ触手草が禍々しく触手を動かす。
それまで空腹もあって動きが鈍かった印象だったが、自身が動かざるを得ないと感じた深怪魔は本気で仕掛けてくる。
史之はその攻勢を削ぐ為、再度毒手をねじ込む。
致死毒を受けて苦しむ触手草だが、それでも一度暴れ始めた危険な深海の魔物は止まらない。
激しくワカメ状の触手を振り回してメンバーを殴打し、あるいは斬撃を与えてくる。もちろんそれらには毒、麻痺成分が含まれ、一撃もらうだけでも致命傷になりかねない。
史之がそれらの触手を切り裂いていく傍で、すずなも攻め入って。
「流石、親玉だけあってなかなか根性がありますね。しかし――それも此処までです」
ここでも一気に仕留めようと、すずなはその機敏さを活かして殺人剣を刻み込む。
前線で仕掛けるメンバーを強かに触手が打ち付けるのを見て、ミーナが高らかに号令を上げる。
「そう簡単にお前らの好きにさせっかよ」
的確に癒しを振りまくミーナだが、そこへ素早くワカメが伸びる。
鋭い先端がミーナの身体を一突きしてしまい、彼女はパンドラを使ってよろけつつも戦闘態勢を維持する。
「こちらです」
仲間の危機を察し、鏡禍が相手を煽る様に動き、触手群を引き付けようとする。
ただ、触手草も深怪魔の一員。冷静に彼へと多数の触手を打ち付けて体力を削ぐ。
(大切な人だしね)
これにはルチアも黙ってはおれず前に出て、鏡禍の為に福音をもたらして傷を塞ぎ、万全の状態で戦えるよう支える。
ただ、そのルチアも敵にとっては捕食対象。
すかさず伸ばされた触手によって全身を痺れさせた彼女目掛けて突き出された鋭い一撃をまともに受け、ルチアはその場へと倒れてしまう。
「…………!!」
大切な人が倒されたことで、鏡禍が途端に激しく闘争心を燃え上がらせる。
1本、2本、また1本と触手を切り裂かれ、触手草の本体の一部が外からでも露出するように。
その間も、火力となる仲間の回復に鈴音が尽力し、強力な支援態勢をとって仲間の体力気力の回復に当たる。
ただ、広域に伸びる触手に捕まれば、いくら体力が残っていても危険と判断した鈴音は支援を行えばすぐに距離をとり、また近づくというヒットアンドアウェイの立ち回りで仲間をサポートする。
しばらくは激しい攻防が続くが、徐々にイレギュラーズの攻勢が強まって。
「……っ」
思わぬ方向から振るわれる触手を、咲良はギリギリのところで避ける。触手草は全ての触手を自在に操ることができる様で、その動きに規則性はない。
仲間達の号令、呼びかけもあり、触手による被害を食い止めていた咲良は乱舞を見舞って触手草の無力化をはかる。
さながら、死の大鎌を思わせる咲良の襲撃が触手をもがれた敵の本体へと叩き込まれる。
触手の動きが一層激しくなり、触手草の苦しみは一目瞭然。
アルテミアはそこを見はらかう様に蒼と紅の刀身に乗せて。
「……イソギンチャクの冷やし〆ってどうなのかしらね? いや、食べるつもりは無いですけど!」
燃やし、凍てつかせるアルテミアの恋焔。
ブハアァァ……。
溜まらず大きく口を開く触手草。それを待っていたとばかりに、史之が飛び込む。
渾身の一撃が敵の身体深くへと埋め込まれると、残っていた触手の動きが一斉に止まり、しなだれる。
直後、その巨体が後方へと倒れ、海底の遺跡を僅かに揺らがせたのだった。
●
戦いを終えて。
メンバー達は体力気力を回復させ、態勢を整え直す。
そして、史之が奥へと進み、安置されていたドラグチップ……竜宮幣を入手する。
「それにしても、ドラグチップの影響でこうなったのかな? そこのところ気になるなあ」
史之が言っているのは、深怪魔のことだろう。
なお、彼は後でバニーのお嬢さんに聞いてみようと考えているらしい。
「ちょっと遺跡の探索もしたいね」
改めて、行くことのできなかった場所も巡ってみたいと主張する咲良。
そこで、鈴音が目の色を変えて。
「遺跡が終わればただのワカメ。遠慮なく採取していくぜ~。ワカメ味噌汁じゃあ~」
さぞ良いダシが取れるんだろうなと、メンバー達は微笑み合うのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ公開です。
ワカメは海藻の表記が正しいようですね。申し訳ありません。リプレイではそちらに統一させていただきました。
MVPは遺跡攻略と戦闘の双方において活躍を見せたあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<潮騒のヴェンタータ>のシナリオをお届けします。
●目的
ダンジョン奥にある竜宮幣(ドラグチップ)の回収。
●状況
ダガヌ海域の海中に発見された古代遺跡の一つに挑みます。
海中にある遺跡は海底に開いた穴から飛び込むと、程なく空気の溜まった空間へと出て、遺跡内へと突入します。
遺跡は低い天井内に多数の海草が揺らめく迷宮となっています。
色とりどりの大きさは幅1m、高さは5mほど。遺跡内の高さも同程度です。何らかの魔力が働いているのか、その海草はいかなる攻撃をもってしても破壊できません。
時折迷宮内に巻き起こる海流が侵入者を入口まで押し流すことがあります。これを避けつつ、海草に覆われた遺跡内を素早く突破する必要があります。
海草フロアを突破すると天井も高くなり、広い場所へと出ます。
ここも空気の存在する空洞で、待ち受ける妖怪を従えた深怪魔を討伐できれば、チップを回収することができます。
●敵
略称はプレイングの字数軽減などにご利用くださいませ。
○深怪魔:テンタクルグラス(略称:触手草)×1体
全長5m程と巨大な怪物で、ワカメ状の触手を多数生やしたイソギンチャクといった姿をしています。
触手からは毒液を出し、相手を痺れさせ、弱らせてから丸ごと食らうようです。
○妖怪:若布童子(略称:童子)×3体
全長1.5m程。全身をワカメで覆った妖怪。
相手にぬめった粘液を飛ばし、全身のワカメを伸ばして相手を絡めとり、テンタクルグラスへと献上しようとするようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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