PandoraPartyProject

シナリオ詳細

蓋世アトリビューション

完了

参加者 : 8 人

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オープニング


 鉄の国は武を良しとする。
 それこそが至上であると、皇帝の地位すら力によって成される程に。
 単純にして明快――それはこの国の良い所であるのかもしれないが。

「……場合によっては悪ですら良しとされる風潮があるものだ、この国には」

 ゲルツ・ゲブラー(p3n000131)は語る。
 それは己が住まう鉄帝国の……特に軍部の側面に、だ。
「最悪なのは、力さえあれば横暴すら押し通せる所だろう」
「軍の構成にもそういった気質が蔓延している、と?」
「ああ。まぁ、蔓延というよりは……傾向がある、という程度だがな。だがなんでもかんでも無法を許していては立ち行かない――だからこそ俺の様な保安部という部門があるんだ」
 彼の話を聞く一人はベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)である。
 ゲルツより依頼を受けたイレギュラーズがいるは……鉄帝と天義の国境に程近い場所に存在する軍事拠点バルグラ。あまり規模の大きい拠点ではないが、軍の一部が駐在出来る程度の地ではあり――そしてこの司令官が不穏な動きを見せているという。
「……天義への軍事侵攻? そんな事が、本当にあるのか?」
「分かりやすい意味での軍事侵攻ではないだろうがな――が、自分の所の領地を増やしたいとする輩はいつもいるものだ。ここの司令官は近々バルグラの規模を独自に広げ、各地に監視塔を設置。天義側に幾らか食い込まんとする動きを目論んでいるとの情報を得ている」
「だがそんな事をすれば天義だって黙っていないんじゃないか? それ以前に、部下の連中だって下手すれば一触即発の危険になることだって分かる筈だろ?」
「そこで出てくるのが『力』と言う訳だ。
 『黙って俺に従え』とすれば、その意思に従う者は多い――そうでなくても、この国にとって領土拡張は悲願だからな。飢えを凌げるチャンスがあると思えばそれに賛同する者もいるだろう」
「…………飢えを凌ぐ、ね」
 同時。シオン・シズリー(p3p010236)もまた言を紡ぐものだ。
 ゲルツの話していた内容にはどれだけ信憑性があるのかと……まさか、そのような国境侵犯が本当にあるのか? と。しかし当のゲルツは『隙があれば狙う輩がいる』と返すもの。
 ……鉄帝国は、近年ではまだ大人しい方ではあるが。
 過去を辿れば幻想や天義とは幾度も領土争いの戦争を繰り広げた事もあるのだ。
 それが故にか、戦争に対する忌避感が少ない者もいる。
 国境に近い場所に領土を持つ者の中には――隙あらば拡張を狙わんとする者もいる、と言う事だ。幻想方面は、南部方面軍としてザーバが常に控えていて、つまりは彼の目が在る故に勝手な行動を起こす輩はそう多くないと見込まれているが……
「しかしザーバや中央の目から離れていれば、時々不穏な連中の動きも見えるものだ」
「――成程。それで、今回はその司令官の逮捕、という事で良いんだな?」
「あぁ。勝手に国境侵犯をされて、それで戦争の始まりなどとなっては冗談ではない。
 中央が『やる』と決め、国家として取り組むのなら否はない――かつて大号令の最中に海洋の連中とやりあった事もある様にな。しかし一司令官如きに勝手をされてたまるか」
 下手をすればまた両国間の感情が悪化する可能性もあるのだ。
 此処の司令官……ガードン・ガルグという人物はなんでも、戦場に姿現さば真っ先に先陣を切って戦果を轟かせた事もある人物らしい――故にこそ『力あり』として従う者も多いそうだ。が、戦場において功績があろうが力があろうが、成していい事に『限度』と言うものはある。
「よし、もう一度作戦を説明しておくぞ。
 まもなく保安部の連中がバルグラ司令官逮捕の為に正面から施設を訪れる予定だ――勿論混乱や、下手をすれば一部の連中が抵抗を見せて、そうすんなりと事は進まないだろう。だからこそ裏から俺達が回り、司令官を直接叩く」
「施設内の地図はあるのか?」
「あぁ、既に入手済みだ。だから迷う事はないだろう――
 俺達の目的は抵抗する連中を排除し、司令官を捕縛する事にある。
 ……ここの連中も同胞だからな。
 やむを得ない場合は仕方ないが、可能な限り命は助ける様にしてやってくれ」
 そしてゲルツが地図を広げる――
 拠点はそう大きくない上に、周囲は木々などに囲まれている。近付く事まではそう問題ではないだろう……そして保安部が正面から訪れれば、そちらに注目が集まって他方面では動きやすくなる時もある筈だ。
 その隙に警戒網を突破し、司令官を捕縛する。
 彼や彼の側近などは抵抗してくるだろうから、やはり力尽くな面は出てくるだろう――
「……この国は、どこまでも戦いからは逃れられんようだな」
「ま。昔からずっとこうで――きっとこれからも、そうなのかもな」
 吐息を一つ零すベネディクト。同時にシオンは目線をバルグラへと向けるものだ。
 微かに振る雨が、彼らの姿や足音を掻き消し、施設へと近付く一助となるだろうか。
 ……しかし、今回の件の様な潜在的な危険要素は、この国にはもしかしたら溢れているのかもしれない。
 強者が、己が儘に己を振るう。
 それがこの国の長所にして短所であり。
 もしかすれば強者の判断一つで、昨日までの全てが一夜にして一変する事もあるのではないかと。

 ――誰かがふと、思うものであった。

GMコメント

●依頼達成条件
 司令官ガードン・ガルグの捕縛。

●フィールド
 天義との国境線の近くに存在する軍事拠点『バルグラ』です。
 時刻は昼ですが、雨が降っていて薄暗いです。ですが足音などは掻き消せるかもしれませんね。

 施設の外周は簡易の針網が張り巡らされていますが、破るのはそう難しくないでしょう。
 また、施設内の地図は入手できていますので迷ったりする事はないでしょう。
 ただし警備の位置などは不明のままです。
 その為、周囲を警戒する様なスキルなどがあると便利かと思われます。

 司令官は最初、施設中枢の自らの執務室にいます。
 時間が経つと施設から脱出しようとする動きを見せます。
 執務室を襲撃するか、その途上で襲撃するかは作戦次第でしょう。

●敵戦力
●ガードン・ガルグ
 軍事拠点バルグラの司令官たる男です。
 戦場では真っ先に先陣を切るなど勇猛果敢な男で功績も少なくないそうですが……それが故にか些か自信過剰であり、今回の件も『(敵国に)隙のある方が悪い! 領土が広がれば国の為になるだろう!』という独自の勝手な思想からの行動の様です。

 巨大な斧を振るう近接パワー型であり、周囲を薙ぎ払う一撃は強力です。
 一方で反応やEXAなどには優れておらず、遠距離攻撃の類もない様です。

●ガードンの側近×10
 ガードンに従う側近達です。
 彼らはガードン逮捕の件が伝われば、鉄帝国の命よりもガードンを護る事を優先して動く事でしょう。戦闘の際は近接型が6名。後衛型が4名の様ですが、治癒スキルを使えるタイプはいない様で、かなり攻撃的な編成です。

●その他、鉄帝国軍人×??
 バルグラに務めている軍人たちです。
 彼らは当初、警備などをしている事でしょう。施設正面から訪れる保安部による司令官逮捕の件が伝わればかなり動揺する筈です。側近と異なり何が何でも司令官の身を優先する! と言う程の忠誠心はない様です。その為、皆さんの敵になるとは限りません。

●味方戦力
●ゲルツ・ゲブラー
 ラド・バウB級闘士にして、鉄帝国保安部に属する一員です。
 遠距離射撃を得意とする飛行種であり、結構強いです。
 彼は保安部の一員ですが、司令官が逃亡する姿勢を見せるだろうと見破り、皆さんと共に行動し直接逮捕を狙います。戦闘の際は敵の後衛型から狙う動きを見えますが、何か皆さんから指示があれば、その行動を優先するでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 蓋世アトリビューション完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年07月31日 22時07分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)
ゲーミングしゅぴちゃん
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
※参加確定済み※
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手
シオン・シズリー(p3p010236)
餓狼
※参加確定済み※
リエル(p3p010702)

リプレイ


「さて――拠点を襲撃して司令官を逮捕する、なんて」
 ふふ。大胆で中々に面白そうな作戦だわ――と紡ぐは『狐です』長月・イナリ(p3p008096)だ。ゲルツの手配により手に入れていた地図に線を引いて、彼女は事前に拠点をエリア別けしておく――つまりは実際の潜入時に味方に伝達しやすくするように、だ。
 更にはファミリアーによる小鳥を複数使役し各地に飛ばす。
 空より基地内の様子を探る為。
 歩哨のルートや時間帯、兵の動き……細かな動きも彼女の瞳は逃さず見据えよう。探し求める存在は何処か。捜索し、時には耳すら澄ませて……
「しかし国境付近で見過ごせない動きがあるとは……保安部も気苦労が絶えんな、ゲルツ」
「力押しで何でもできるって思ってる辺りがいかにも鉄帝らしいな。帝都から遠く離れすぎて調子に乗ってるんじゃないか――? まぁなんにせよ、あんたの苦労が窺い知れるよ」
「ザーバの目が届いている所はまだマシなんだろうがな……ま、これも俺の仕事の一つだ。今更愚痴ってもられんよ」
 ともあれもうすぐ時間だ――よろしく頼む、と。ゲルツが述べるのは『黒き葬牙』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)や『餓狼』シオン・シズリー(p3p010236)に対してである。困った事態ではあるが、だからこそ確実に成さねばならぬと。
 ベネディクトが見据えるのは指令室があるであろう方向。
 警備に注意しながら鉄網を乗り越えんとする。さて後はどこまで上手くいくか……
「なぁに! こんな僻地の司令官なんて、狼とハイエナの美少女ワイルドハンターコンビが獲物を逃がす訳がありません! 頑張りましょうねシオンさん! ね、シオンさん! あのシオンさ……あれ!? ガン無視されてる!!? こんなに可愛いしにゃを無視するなんて――正気ですか!? しにゃですよ!!?」
 私、世界のしにゃですよ!!? 何度となく繰り返す『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)だが、当のシオンの意識は眼前に集中していた――建物の壁を透視し、中の様子を窺っているのである。
 さすれば中の人員たちが何やら焦っている様子が見て取れた。
 計画通り保安部が真正面から行動を開始したのだろう。
 しにゃこの優れし三感も騒々し気な足音や声を捉えている。
「ふふ、これぞしにゃ秘奥義、美少女センサーですよ! しにゃぐらいの美少女になると、しにゃの追っかけの気配を感じ取るぐらい造作もありませんからね!」
「やれやれ頼もしい事だ……その調子で頼むぞ、しにゃこ」
 ふふん、しにゃにお任せあれ! と、ゲルツに褒められれば、胸を張ってしにゃこは周囲に警戒を張り巡らせる――しかし天義への領土拡張を画策するなど正気だろうか?
「とても許せるものではないわ……鉄帝軍人たるもの、正々堂々正面から打倒して領土を広げるものだと思っていたのだけれど。どんな手段をもってしてでもと考える人もいる訳ね。良く言えば知恵が回る。悪く言えば……目先の利益以外考えない」
「しかし――力で全てをねじ伏せるなどあってはならないことです。
 ましてやそれによって苦しむのは結局の所、力のない民となる訳ですしね。
 果ては……国をも巻き込んだ問題に発展もしましょう。愚かな選択です」
 そう思考するは周囲を警戒しながら進むリエル(p3p010702)に『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)である。今回の首謀者と目されるガードンへの思考を巡らせながら……同時、前方より聞こえてくる足音を捉えるものだ。
 さすれば沙月は素早く動き、拾いし石を彼方へと投げれば――音が鳴る。
 刹那の意識の逸れがあらば逃さず移動を。
 同様の行いはベネディクトも……ファミリアーで使役せし鼠を使いて物音を立てて見張りの注意を逸らすのだ。余計な戦闘は論外。司令官の下に辿り着くまで力は温存するのだと。
「独断専行は指揮系統の乱れ。成果を持ち帰ればよいのだろうと……それを誉れと勘違いされては――上も困るというものですな」
「まぁ、マリカちゃん達が来た以上、好き勝手はもう出来ないだろうけどね~♪」
 更に進んだ『ゲーミングしゅぴちゃん』DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)は通路の影より誰ぞいないか目を凝らすものだ。更には己が身に宿る祝福……霊体たる少女による偵察を願えば、視界が通らぬ場所すら警戒する事が叶い。
 そして――誰ぞがいれば『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)が再び陽動を行う。此方もまた、彼女の『お友達』が音を立て物を落として視線を奪い。
 保安部が至った混乱の最中を――駆け抜けていく。
「こそこそイタズラ作戦☆ ……なんてね☆」
 薄暗い雨の狭間が故にこそ『お友達』も活動しやすいのだと。
 ほくそ笑むマリカの歩みは更に奥へ奥へと……


「クソ! 保安部だと、まさか……俺の動きに勘付きやがったのか!!?」
 基地司令ガードンは焦る――己に忠実な側近を集め、脱出せんとしているのだ。
 此処で逮捕される訳にはいかない。連中が辿り着く前に脱出を果たさんと……

「――見つけたわ。この先、こっち側に向かってくる……絶好のタイミングね」

 しかしその姿はイナリによって捉えられていた。
 彼女の宿す数多の警戒から逃れられようか。彼女自身に宿るギフトの祝福が複数のファミリアーの使役さえ可能とする程の高速並列処理を行い……さすればすぐさま味方へと、ガードンがいるエリアが通達される。
 念話だ。言を発さずとも視線が通れば意志を伝える事が出来る術をもってすれば隠密のままに。
 ――そして。沙月が軽快なる跳躍と共に執務室へと至れば。
「失礼。司令官のガードン・ガルグ殿ですね」
「むっ!? 誰だお前達は……此処の兵ではないな!」
「俺達は特異運命座標、保安部の依頼で貴殿を捕縛しに来た――投降してもらいたいが」
 無為かな、と。紡ぐのはベネディクトだ。
 執務室から正に出んとしていたガードン――へと一応の言を掛けるのだが、彼は一切そういう意志はなさそうだ。むしろ自らを邪魔立てする者と分かれば……即座に臨戦態勢を整えんとする者。
 ――ならば容赦はすまい。元より、穏便に済むとは思っていなかった。
 敵が態勢を整える前に強襲せんとして。

「――存在強度、固定(スクリプトオーバーライド)
 ――機能確認、異常無し(システムオールグリーン)
 ――SpiegelⅡ、起動(行くよ、シュピーゲル)」

 了解(ヤヴォール)。
 同時にSpiegelⅡも戦闘用外骨格を召喚し乗り込めば、鎮圧する意志を此処に。
「戦争を肯定も否定するつもりもありません。ただ」
 ――それ以上に無意味だから、止めるのです。
「ほざけ小娘……! お前達程度に止められる程軟弱ではないわぁ!」
「随分と自分に自信があるみたいね――小賢しい事を考える輩の割には」
 一斉に動く。敵を補足し、リエルもまた首謀者の捕縛を目指して。
 だがまずは取り巻き共が邪魔だ――故に先んじて踏み込んだ沙月が狙うのは側近組。他の者がガードンに集中できるように、まずは取り巻きを排除せんとする……美しき花弁のように舞いながら。紡ぐ一閃が数多を捉え、貫き穿つ。
 続けざまにはSpiegelⅡが自らに戦いの支援と防護を齎す加護を幾つも宿そうか。
 万全を整えた後に――彼女が向かうはガードンである。
 速度の儘に吶喊し、かの者の野望を打ち砕かんと……さすればリエルも不可視の刃を投じ、彼に傷を与え。ベネディクトもガードンの逃走経路を潰す為に前に出て――彼の斧を受け止める。
 ガードンの一撃たるや実に重い、が――黒狼の牙はこの程度では折れぬ。
「ガードン様! おのれ……!」
「おっとぉ。マリカちゃん達の邪魔はさせないわよ☆
 正々堂々と真っ向勝負、素敵だわ❤ じゃあこちらも正々堂々、卑怯なコトするネ♪」
「此方の狙いは司令官だけなのよ――大人しくしてれば怪我をしなくて済むのだけど?」
 然らば無事な側近達が幾つかガードンの援護に至らんとする、が。
 それらを纏めて薙ぐのがマリカやイナリだ。
 マリカは周囲の味方に常に活力を満たす治癒の一端を齎しながら――敵が纏まればその地を纏めて穿つ。死者の甘言が敵の集中を乱す様に。『お友達』の枠組みに誘うかのように……
 更にはその撃の狭間で隙を見出せば、イナリが急速接近。
 敵の死角に回り込まんとする勢いと共に――敵に撃を浴びせようか。
 特に。肩や太ももを狙って、だ。致命傷は避け、命は助かる様に……
「おっとぉ、司令官ともあろう人が小娘相手に逃げ出すんですかぁ!? まっさかー! そーんな筈ないですよね! あ、それともしにゃの威光にひれ伏しましたか!? なーら仕方ないってヤツですかね、あはは!」
「小うるさい奴がいるな……! そのよく回る舌、引き抜いてくれようか!」
「ひー! ちょっと何か言ったらすぐキレる高年齢怖い! 怖すぎですよ!」
 次いでしにゃこもまたガードンを狙う。近くに側近がいれば、彼を庇わんとする動きもある故に必ず狙える訳ではないが……しかしそれでもいい。取り巻きが減れば奴の戦力が低下する事に違いはないのだから――!
 庇う連中諸共纏めてしにゃこのスーパー銃撃タイムが炸裂。
 ガードンが逃げないように挑発も繰り返しながら攻勢を続けれ、ば。
「バルグラ基地司令ガードン。もう分かっただろう……此処にいるイレギュラーズは強いぞ? いくらお前でも逃げ切れる筈もあるまい――大人しく武器を収めれば悪い様にはせんと約束しよう」
「やかましい保安部の小童如きに、指示される謂れはない!」
「頭のかてぇ奴だな……これだから鉄帝の力自慢って連中は……」
 さすればゲルツがもう一度降伏勧告を行う。
 無論、銃撃を繰り出しながら、だ。正直ガードンが大人しく降伏するとは思っていない――ただ責務として告げただけの話なのだから。しかし実際に意固地な所を見せられると、シオンは思わず舌打つものである。
「――じゃあ仕方ねぇな。多少砕けても、怒るなよ?」
 故に。彼女は全身全霊。
 最初から自らの至高を投じ――ガードンに直死たる一閃を叩き込んでやるものだ。
 さすればガードンも大斧を防御に使い防ぎて。
「ぐぉぉ……! 中々やるじゃねぇか……!」
「……堅いな。ガードン・ガルグ、話を聞くにお前もまた鉄帝国にて功績も上げた力ある者なのだろう――だが。思いさえあれば何をしても良いとでも思っているのか? 今一度思考を巡らせるべきだな」
「ほざけ! この国の住民でもねぇテメェに何が分かる!」
 然らばベネディクトが再びガードンと刃を交えつつ――言を一つ。
 イレギュラーズの攻勢をも弾く力がありながら、どうして暴走するのか。
 国の為を想うならば……他にやれるべき事が在る筈だと。
「私は天義の生まれだけど。鉄帝のザーバ将軍みたいな正面突破主義、嫌いになれないのよね」
 そして『国』に対して思うリエルもまた言を紡ぎ。
「だから小賢しくも狡猾な謀略とか一部隊の暴走は、我慢ならないの
 特に……自分こそが正しいだなんて思ってるのは、ね!」
 故にこそガードンを許せず――攻勢は緩めないのである。
 再びに紡がれる不可視の刃。それすらガードンは耐えて逆にイレギュラーズに一撃を。特に己を抑え込まんとするベネディクトなどに強烈な一撃を叩き込み……己を護らんとする側近達と共に状況を好転させんとする。
 激しき激戦。
 されば外にも騒ぎが次第に伝わるものであり……
「な、なんだこれは――指令が危ない!」
「いや待て……あれはイレギュラーズだ! それに保安部じゃないか!?」
 そして。道中は多くを回避できた施設の警備兵達の目にも――留まるものであった。


「おぉ、テメェら来やがったか――! 侵入者だ! こいつらをぶちのめせ!」
 故に。基地司令としてガードンは彼らに参戦を促すものである。
 若干押され気味だったが……基地警備兵も参戦すれば状況は一変する、と。しかし。
「お前ら、ガードンが何考えてるのか知ってるのか?」
 言うはシオンだ。邪魔立てする側近らを相手にしつつ状況に戸惑う警備兵に、声を。
「こいつはな。天義の領土を侵そうって腹だ――最悪、帝都に逆らったとしてまとめて叩き潰されるだけだぜ? ま。それでもいいなら味方すればいい。逆に、あたしらに協力してくれりゃあ巻き添えにはならねえはずだ」
「そうだな――俺が証人と成ろう。俺は保安部のゲルツだ。
 今回の狙いはガードンのみ。その他の罪を問うつもりはない」
 同時。シオンがゲルツへと視線を向ければ、その意を察したように彼も紡ぐ。
 協力せずとも邪魔さえしなければ何もしないと。正面から保安部が来ていた話を聞けば……これが荒唐無稽な話でない事も分かるだろう。盲目的に上に従う事が正しいとは限らぬと――知れ。
「そもそも――ここに我々がいる意味を理解しておりますか?
 国元はアナタ方の、いえ、アナタの判断を誤りだと認識しております」
 さすればSpiegelⅡも攻勢は続けつつ言うものだ。
 保安部が。そしてイレギュラーズが来ているのは其方に間違いがあるからだ、と。
「無用な争乱は控えなさい。
 補給とて無尽蔵にある訳では無いのですよ。
 戦争よりもまずジリ貧でこの前線が干上がる方が先でしょう」
「ぬぅぅぅ……!」
「部下を、ひいては部下の家族も含めて無用に苦しめる事になりましょう」
 ――その場合アナタは英雄ではありません。
「ただの戦犯者です。暴虐にして無謀を司っただけの」
「黙れェ! もう俺が今更、退けるかよぉ!」
 直後。ガードンはたじろぐ警備兵達が役に立たぬと悟ったか――もうよいとばかりに、道を切り拓かんとするものだ。大斧を振るいイレギュラーズ達を薙がんと。その先にこそ己の抱く道があるのだと――
「ふぅん。でも、もう逃がさないわ――此処で貴方の命運は、終わりよ」
「力を正しいと墓標するのであれば、より強い力によって抑えられる事もあると知っていただきましょう」
 しかし。その道を潰すのがイナリや沙月である。
 この執務室に来るまでに警備兵などに発見されイレギュラーズ達が疲弊していれば話は別だったかもしれないが……イナリの索敵や、警備兵の気を逸らす戦法によって巧みに戦闘を回避したイレギュラーズ達はゲルツを含め万全。そんな彼女らとぶつかりあえばタダでは済まぬ――
 イナリは引き続き瞬間的な移動を繰り返し、翻弄と共に敵を打ち倒せば、沙月は側近の一人を掌底にて捻じ伏せガードンへの撃を更に紡ごう。全霊たりうる一撃が襲い――遂に彼の身が保てぬ。
「ぐ、ぅ、ぉぉ……だがまだだ俺は……!」
「ありゃ☆ しぶとーい☆ でもさ、ここまでだネ――♪」
「あぁ――ガードン・ガルグ。その身、帝都まで捕縛させてもらうぞ!」
「牢屋の中で筋肉以外――ちっとは頭の方も鍛えておくんだな!」」
 それでも。幾つもの戦いを乗り越えた誇りを胸に抵抗せんとする、が。
 そこを狙いすましたかのようにマリカが薙ぎ払うものである――生ける屍の鎌を一振りすれば、残存の側近達諸共ガードンを払わん。そして完全に態勢が崩れた所を……ベネディクトとシオンが同時に襲来。
 不殺の刃が彼の顎筋を襲う。脳を揺らす一撃、いや二撃が在らば。
 ガードンが倒れる。
 その巨体が遂に沈みて――
「はい捕まえたー! おーらグルグル巻きですよグルグル巻きぃ!! これに懲りたらもう少しお勉強した方がいいですよ! 力だけあっても仕方ないんですから! ま、しにゃは可愛さだけで生きていけますけど! むしろ困るぐらい可愛くてすみませーん!!」
 直後。ドヤァァァと勝ち誇るしにゃこが身柄を抑えた。
 さすればもう勝ち目などありはしない。
 残った側近数名も降伏し、ゲルツが連行せんと表側の保安部員と合流して……
「仮にも奇襲で収奪出来たとして、その後に待ってるのはきっと尻尾切りだわ。軍人じゃなく盗賊として補給もないまま騎士団と……が精々よ。でも――そうなる前に、止められて良かった。また刃を交えましょう?」
「……けっ。小娘が、言いやがるぜ」
 そして。ガードンが移送される前に、リエルは最後の言を繋ぐものである。
 率直な己が心を。
 ……飢えているのもきっと事実なのでしょう。勝ってお腹いっぱいになる前に戦わずして飢え死ぬ軍人の無念は如何ほどのものなのか……ガードンにもガードンなりの立場があったのだろうと憚ればこそ……
「……なぁゲルツ。俺達が、特異運命座標がこの国に出来る事は一体なんなんだろうか」
「……さぁな。必要なのは無限なる飯か、温暖なる気候か……なんてな」
 そして最後に。ベネディクトがゲルツへと問うものだ。
 特異運命座標としての役割を。
 ……その答えは難しい。神の真似事など誰にも出来ぬし、ソレらが真に望まれている事か。
 この国が――真に必要としているのは一体なんだろうか……

「皆が安心して。明日を夢見て、腹一杯に飯を食べられれば――良いのにな」

 そう、呟いたベネディクトの瞳に込められていた感情は、はたしてなんだったか。
 ……いずれにせよこの場における乱は見事に鎮圧された。
 僻地なれど。基地司令のトップの暴走という不穏は――取り除かれたのである。

成否

成功

MVP

長月・イナリ(p3p008096)
狐です

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ。
 鉄帝国にも色々と不安定な所はあるという事でしょう……
 しかし此度の件は皆様の活躍により――阻止されました。

 ありがとうございました。

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