PandoraPartyProject

シナリオ詳細

急募:うみのいえ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ビーチはいつでも大賑わい
 レゲエ風のクラブミュージックが大音量で流れるビーチ。
 水着の美女とアツい胸板の男たちがサーフボードやゴムボートを持って集まるビーチ。
 赤いビキニの金髪美女がスローモーションで砂浜を歩き、きわめてゆっくりと髪をかきあげて振る。
 犬獣種の男はヨットを走らせ、鉄騎種のライフガードが首にホイッスルをさげて双眼鏡型の目を動かしている。
 波間より飛び出したディープシーの男が屈強な肩の筋肉と魚化した下半身を太陽に晒している。
 ここはネオフロンティア海洋王国のビーチ。
 大賑わいのビーチ。
「ついにやって来たわに!」
 ワニ系獣種の少女ナバは健康的な褐色肌を大空のもとへとさらし、サンバイザーのつばを上げた。
 手に握るは客寄せ用の旗。大胆なフォントで『海の家 イッツミー』と書かれている。
 振り返ればこじんまりとしたオープン屋台。いくつかのテーブルと椅子と布製の屋根とカウンター。
「ここが私のお城。野望へのスタートラインなんだわに!」

●トムアイランドビーチ
「あなたたちがローレットね! 今日はよろしく!」
 両手を腰に当ててウィンクする少女。
 今回の依頼人ナバである。健康的な褐色肌と銀髪。ギザギザとした歯にワニっぽさの現われた獣種である。
 ブラックカラーのどこか挑戦的な水着をきていた。
「私の夢はネオフロンティアのビーチで生きることよ。この場所に根を張って、この場所の人たちと生きていくのがずっと昔からの夢だったの。
 長い間バイトをしてお金を貯めて、ついにこのトムアイランドビーチに『海の家』の土地と経営権を手に入れたわに。
 けれどまだスタートしたばかりで従業員もみつかってないの。
 トムアイランドビーチはかなり観光色の強い場所だから人も多いわ。
 ものすごく忙しくなると思う。けれど見つかるまでの今日一日はしのぐ必要があるわに。
 皆はそのピンチヒッターってわけ。うまく乗り切れたらキッチリ報酬は払うわ。みんな、よろしくね!」

GMコメント

 こちらは非戦能力とロールプレイ大活躍の海の家シナリオ。
 海洋のビーチであなたの腕をふるいましょう。

 成功条件は一日の店運営を乗り切ること。
 この日は二つのトラブルが起きる……という未来が待っています。勿論PCたちはそれを知らないので事前準備はとれないのですが、その時初めて知ったテイで『こんなこともあらおうかと!』と披露したり『ここは俺に任せろ!』とばかりに乗り出したりとキメましょう。
 未来予知クラスの良すぎる準備でもしてない限りは大体のことはOKとしますので、ある程度は自由にやってみてください。

 あと折角なので、皆さんも水着に着替えておこしください。
 コンテストで作った自慢の水着があるならぜひぜひ。もしイラストがなくても『こういう水着なのだ!』と妄想を膨らませるのも、よいものですよね。

●通常運営
 ビーチには沢山のお客さんがやってきます。
 海の家『イッツミー』に必要なスタッフは料理担当、給仕担当、宣伝担当、その他なんか居ると嬉しい人……の四種類の役職で回ります。
 依頼人ナバは店長兼オールマイティキャラとして存在しています。シナリオ的なことを言うとお助けNPCです。人の足りなさそうなポジションに勝手につきます。

●トラブル1:超団体客の到来
 宣伝が功を奏したのかそれとも偶然か、ものすごい団体客が押し寄せます。
 目が回るくらい大量の注文がやってくるので料理も給仕も体力勝負になります。最悪ばたんきゅーするのでバトンタッチも必要かもしれません。
 ついでに言うと、途中で食材が足りなくなってしまうのでダッシュで近くへ買い出しにいくスタッフも必要になるでしょう。
 もしくはありもので料理をこしらえるテニクニックやアイデアがあるとよいかも。

●トラブル2:ならず者の出現
 トムアイランドビーチは小島につくられた観光ビーチです。
 しかし敢行客が沢山くることから犯罪も絶えず、窃盗事件も多発しています。ビーチ客はともかく、うみのいえを標的にした売上金窃盗は問題になっています。
 また店にイチャモンをつけて賠償金をせしめようとするワルい客モドキも発生するようで、現われたならキッツイ対応が必要になるでしょう。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 急募:うみのいえ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年08月23日 20時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

春津見・小梢(p3p000084)
グローバルカレーメイド
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
十六女 綾女(p3p003203)
毎夜の蝶
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)
水葬の誘い手
ビス・カプ(p3p006194)
感嘆の
風迅(p3p006205)
CCA005「鎌鼬」改

リプレイ

●さざなみシーサイド
 寄せる波の泡が、小さな砂の城を崩した。
 かえす波のつくる平坦な砂地を、ビーチサンダルをはいた『白き渡鳥』Lumilia=Sherwood(p3p000381)が歩く。
 海側からふく強い風に、白い髪をおさえた。
「誰かが叶えた夢のスタートを切ることになろうとは……」
 振り返ると、ささやかな小屋に『うみのいえイッツミー』という看板が誇らしげに掲げられている。
「普段より気楽でも、気は抜けないお仕事になりそうです。ともあれ……」
 ひとの門出に送るには、音楽はピッタリではなかろうか。
 白銀のフルートをケースから取り出し、Lumiliaは演奏の姿勢をとった。
 音を聞いた人がうみのいえに訪れるように。どこか高揚感のある、しかし涼しげな、海辺のカーニバルを思わせるような音楽を、吹き始めたのだった。
 ここはうみのいえ『イッツミー』。
 夢の第一歩を踏み出したワニ獣種のナバが経営する、かけだしの店である。

 演奏を遠目に見る人々。
 海水浴にきていた水着の男女がちらほらと店へ足を向ける中、十六女 綾女(p3p003203)は海風にのせるかのように髪を振った。
 Lumiliaとは対照的に、どこかムーディーなクラブミュージックがどこからか流れ始める。
 スローモーションで歩く綾女は、はずむ胸を誇らしげにきわどい水着をきこなしていた。
 ここぞとばかりにゲットしたパトロンにおねだりして用意してもらってささやかな贈り物は、『うみのいえイッツミー』と刺繍された旗となって彼女のが今掲げていた。
 海風になびく旗と彼女のプロポーション、そして脳を抜けるような色香がいやでも人々の注目を集めた。
 好色な視線もナンパな声も受け入れて、綾女はビーチを練り歩く。

 Lumiliaと綾女が展開したある種両極端な宣伝は功を奏し、イッツミーには次々と客が訪れた。
「いい滑り出しだわに。この調子でガンガン行きたいわに」
 依頼人のナバも大喜びだ。褐色の肌に黄色い水着を着て、あちこちから注文をとってゆく。店を出そうとしただけはあって、接客センスはなかなかだ。
「海洋にいい店が増えるのは、おっさんとしても嬉しいねぇ。嬢ちゃんの夢の第一歩、どうせなら盛大にいくとしようや」
 『本心は水の底』十夜 縁(p3p000099)は爽やかに笑って、客の帰ったテーブルを片付けていく。
 彼の気遣いは小さなことだが、とても大きな意味があった。接客、それも飲食には清潔感が命。海の家という環境は中でも特に清潔感を保ちにくいとされ、こまめな清掃が必要だった。
「どうやらカレーライスがよく売れてるらしいな。ジャガイモやらは足りてるか?」
 厨房、というかカウンター越しにそのまま設置された調理スペースでは『カレーメイド』春津見・小梢(p3p000084)が目ぇかっぴらいて寸胴鍋をぐるぐるやっていた。
「たりません」
「どのくらいだ?」
「あとカレーを一万食は作らなくては」
「いらねぇぞそんなに」
 とはいえ少しは足りないらしい。
「後で買い出しに出てくる。足りなくなりそうなものはあるか」
 小梢の隣で『カレー以外全部』を引き受けていた『水葬の誘い手』イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)が菜箸をカチカチとやって顔を上げた。
「ンー……じゃあ、コレとコレ」
 食材をまとめた棚を指さして、少なくなった箇所を示す。
 緑がりょーかいと言って引っ込むと、イーフォは鼻歌交じりにシーフード焼きそばの調理を再開した。
「海の家、それは海にさまざまな想い出を求めてやって来る人たちのオアシス……つまり、休憩所! これは気合いを入れて盛り上げて行かなきゃネ!」
「そう、オアシス……カレーは人類のオアシス……」
 夏の暑さと海辺の太陽、そして寸胴鍋の熱で頭をやられたのか、小梢がぎらぎらした顔で振り返った。
「『うみのいえ』からやってきたカレーメイドの力……いまこそ示すとき!」
 こんなドンピシャなタイミング他に無い、と言わんばかりの気合いだった。
 プレイングにカレーって文字が18箇所。ステータス欄を含めたら30箇所くらいあった。カレーの鬼かおまえは。
 一方フロアでは『感嘆の』ビス・カプ(p3p006194)が食券を切って客に半分を手渡していた。
「海鮮蕎麦にカレーライス、イカカレーにエビカレー。かしこまりましたわにー」
 誰に求められたわけでなくナバの口調をまねするビス。
 メニュー表の半分くらいがカレーライスなことにもあえて突っ込まないビスである。
「いらっしゃいまーせー! 海の家イッツミーへよーこそわーにー! うさぎの垂れ耳でご注文をお伺いしますわにー!」
 接客は耐えることと見つけたり。
 フロア業務において、無難さこそが彼の武器。ビスは前世(?)バイト時代に培ったかもしれない接客センスと持ち前の無難さを武器に接客スマイルを振りまいた。
「ありかとうございますーわにー♪」
 フロアの担当は三人だけではない。
 『CCA005「鎌鼬」改』風迅(p3p006205)も白と薄青のチューブトップビキニを着込み、人間サイズになってフロアのあちこちを飛び回っていた。
 切り離した食券の裏に書かれたA1の文字とカウンターに出された焼き魚を見て、銀のトレーに料理をのせて所定のテーブルへとスピーディーに運んでいく。
 『うみのいえ』は利用客のライトさもあってメニューはシンプルかつ少数であることが多い。そのためビスの食券システムと風迅の席番号システムの組み合わせは絶大な作業短縮効果をもたらした。いちいちオーダー内容や席番号を声に出して伝える必要がなく、ログが明確に残るのだ。
 くわえて……。
「はいはーい、いまいきまーす!」
 賑やかな店内。小声で注文らしき呟きをした客に風迅は素早く対応した。
 耳のセンサー感度を強めて客の言葉を聞き漏らさないようにしたのだ。

「――と、このように」
 『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は眼鏡を中指でちゃきっとやると、ろくろを回すフォームをとった。
「明日以降も営業は継続するのですから、ノウハウの継承と今後の経営戦略の提案をゴールに設定します」
 寛治はこれまでの海洋活動で築いたコネクションを活用してトムアイランドビーチにほど近い漁師や農家を紹介してもらった。ゆーて三度くらいしか海洋での太い関わりはなかったが、持ち前のプロデュース能力で海の家『イッツミー』の魅力を伝え、ウナギ的食品やらなにやらを購入するルートを確保してきたのである。
 ある農家のソファに座ってろくろを回す彼は、このように説明した。
「海の家『イッツミー』はまだ開店すらしていない店舗ですし店主であるナバ氏にも目立った経営実績はありません。
 しかし、それは例えるなら白い絹……このスタートアップに携わるスタッフをすべてローレット・イレギュラーズという異色の面々で揃えることでカオス的シンギュラリティが生まれ、革命的かつ斬新な『海の家』が必ずやできあがることでしょう。
 こちらをご覧ください。たとえばこのスタッフはカレーを――」
 といった具合である。
 おかげで副次的な宣伝効果も生まれ、海の家『イッツミー』は無名の初経営でありながら初日からあるトラブルに直面することとなったのだった。
 そのトラブルとは……。

●団体客襲来
 テーブルの上のコップ。
 なかほどまではった水が、ズンという音と共に波紋をはしらせた。
 二度目のズンという音。
 それまで接客をしていたナバが振り返ると――そこには団体客がいた。
 寛治が挨拶に回った企業やそれに関連する人々。Lumiliaの歌に引き寄せられた人々。綾女の魅力にやられた人々。
 それらが渾然一体の巨大な生き物『団体客』となり、店へと押し寄せたのだ。
 『団体客』とは恐ろしき生き物である。
 全ての口が全く別の言葉を喋り、ぶつかったあらゆるものから小さなトラブルを併発し、放置すれば巨大な不満となって店に大打撃を与えてしまう。
 そこで第一の手を打ったのは……なんとカレーの鬼、もとい小梢であった。
「カレーの奇跡を知っていますか」
「えっ」
 何言い出すのこの子と振り返るイーフォに、小梢は眼鏡の端っこを中指でくいっとやる美人秘書みたいなポーズで振り返った。
「私のちからカレー・ジャスティスは一晩に込んだ美味しいカレーが出来るというもの。時間は短縮されないし素材がどこからか現われたりはしない。ただカレーが上手にできるだけの力。しかしその力を最大限に使ったとき……」
 ス、と手を翳す。
 ビスや風迅たちが持ってきた食券は黄色一色。
 その全てが、『カレー』のメニューであった。
「人々はカレーを欲するのだよ」
「なんか分かる……」
 お店の外にカレーのにおいをめっちゃ放出する洋食屋さんってあるじゃないですか。神保町とかで。あれですあれ。
 イーフォはそれまでの作業を一旦とめて、カレーのトッピング作りにシフトした。
 海の家『イッツミー』のメニューは半数がカレー。しかしその半数に絞られたということはフィッシュフライ、イカ焼き、チーズの三種さえ的確に作り続ければよいだけのこと。
 イーフォの得意とする海鮮料理スキルがここぞとばかりに火を噴き、調理を効率化していった。
「次々できるカラ、そっちはよろしくネ」
 笑顔でカウンターにカレー皿を次々並べていくイーフォ。
 対して、ビスはただただひたすらに『普通にこなす』をし続けた。
 簡単に見えるかもしれないが、これが一番難しいことなのだ。
 飲食店でフロア業務のアルバイトを一度でもすれば実感することだろう。ひとは疲労や混乱によって運動や知能の精度が落ち、料理の滑落や注文の誤解などといったミス(ファンブル)を多発するようになる。
 しかしビスは全く表情を変えず、接客スマイルを維持したままただただ普通に作業を次々こなしていった。
 なんたるありがたみ。
 一方で風迅は体内のギアをチェンジしてスピードアップ。
 両手に合計八つのカレー皿を乗せて数々のテーブルを飛び回った。
 ちなみに指で二つ、手首で一つ、肘のくぼみで一つ。それらを両腕の接触バランスで保ちつつ八つ同時に運ぶテクニックである。本当にあるんだよ?
「ふう、ふう……大体は済みましたけど、さすがに疲労が……」
 料理を運び終え、立ち去った客のお皿(使い捨て)を処分し、上向いた時。ふらりと身体の力が抜けた。
 ああ倒れてしまう。そう思ったとき、彼女の背中を誰かの腕が支えた。
「大変な混雑ですね。手伝います」
「ここからは任せて」
「Lumiliaさん……綾女さん……!」
 宣伝から戻ってきた二人が接客へとシフトしはじめたのだ。
 二人は即席の座席を増やすとBラインの席番号をふりわけ、てきぱきと注文をとっていく。
 待たせる時間が長そうな客にはLumiliaが冷たい飲み物をサービスし、細々した合間に綾女が外へ小さく愛想を振りまく。綾女がセクシーな水着で店内を飛び回るためか、ちょっとくらいなら待っててもいいよという客が増えたのも良い所である。
「どうだい、『イッツミー』の味は。知り合いへの宣伝、よろしく頼むぜ?」
 寛治が獲得してきたらしい団体客には、縁が直接話しかけて気分を和らげ、待ち時間が長くなる不満を解消していた。
 彼の軽妙なトークは人の心を掴み、結果として団体客やそれに伴うほかの客たちが不満を漏らすことは無かった。
「一万食はともかく、カレーの具材を大量に買い足しておいて正解だったぜ」
 だが、トラブルというものは続くものなのだろうか。
 団体客に大忙しになっている『イッツミー』を狙い撃ちにするように、ガラの悪い客がやってきたのだった。
「おやー? ここのカレーはこんなもんをトッピングするのかー?」
 店に、緊張が走る。

●ならず者の出現
 忙しい店は注意力を欠く。
 舞い込んだ特殊なトラブルを一秒でも早く解決すべく、安易な手にはしりがちだ。
 要求された金を払えば帰ってくれるなら払いたい。そんな気持ちにさせてしまうもの。
 そこにつけ込んだたかり屋が、店に文句をつけはじめたのだ。
 ナバもあわあわと震えてレジを振り返る始末。
 だが。
「うちはそんな料理を出さないよ。なんで嘘をつくの?」
 ビスが全くブレないポーカーフェイスで割り込んだ。
 そう、彼の無難さと普通さは、こと混雑時においても精神的動揺によるミスをおこさないのだ。
「なんだと? 神(客)にたてつくのかー?」
 掴みかかろうとしたならず客が、慌てて手を引っ込めた。
 まるで静電気のようなパチッとしたものが走ったからだ。
 よもやこいつの特殊能力かといぶかしむならず客……その肩を、縁が後ろからがしりと掴んだ。いや、風迅と縁の二人がかりだ。
「ちょっと裏で話そうや」
「ここではなんですから」
 ついに目的の金が手に入るのかと裏へついていくならず客。
 が、裏で起こったのはもっと別のことだった。
「げふう!?」
 砂地に頭からたたき落とされ、目を回すならず客。
「ここらが潮時だぜ、旦那。この大らかな海で、荒事はこれ以上ナシにしようや」
 かがみ込んで、低い声で囁きかける縁と、手をぱしぱしと払う風迅。
 風迅は後片付けを緑に任せ、表へと戻っていった。
「さあて、気を取り直してお仕事を――」
「おいネーチャン」
 へべれけに酔っ払った男が風迅にねっとりと絡んできた。
 戻ってそうそうこれだよ、という顔で天をあおぐ風迅。
「ネーチャンええことしよーや」
 こんな人いるかなってくらいベタにセクハラをしかけてくる客。
 ここは頑張ってお説教の出番か……と思っていると。
「お客様」
 急に現われた寛治がセクハラ客の肩を叩いた。
 振り返ると寛治……の横でウィンクする綾女。
「無粋な男はもてないわよ。個人的には乱暴なのも嫌いではないのだけれど……ねぇ、ちょっとあっちへ行きましょうか」
 渡りに船みたいな顔で綾女に裏へ連れて行かれるセクハラ客。
「えっと……お説教、するんでしょうか?」
「さあ。少なくともご納得はいただけるかと」
 無垢な顔で見送る風迅の隣で、寛治は眼鏡を外した。

 団体客もワルい客も去って、夜の店は穏やかだった。
 まばらに残った客たちに、余った食材をふんだんにつかった料理をサービスするイーフォ。
「おれたちの働きっぷりで店員候補が来るかもだしネ」
 とは、彼の言葉である。
 実際初日の売り上げはけっこうなもので、評判もとてもよかった。
 今回のスタッフが初日だけのものだと知れば、働きたくなる人が訪れるかもしれない。
 夜の経営はイーフォの独壇場みたいな具合で、昼で大量にはけまくったカレーで力とカレーを使い果たした小梢が『カレー完売』の札の前で白くなっていたからだ。
「今日の営業はここまでだネ」
 イーフォの声に、いつのまにかそこにいた寛治がこっくりと頷いた。
「皆さんお疲れ様です。今回の業務形態をマニュアル化してみたのですが……」
 新しいスタッフが入ってもすぐなじめるようにと、寛治が数ページの書面にまとめたものをナバに突きだした。
「ありがとう新田P!」
 それまで白くなっていた小梢がすっくと立ち上がり、懐(?)から取り出した羊皮紙を突き出す。
「今回用意したカレーのレシピだよ。これからも使ってね」
「ありがとうカレーメイド!」
 マニュアルとレシピを抱きしめ、星空のふる海へと駆け出すナバ。
「ありがとうみんな! 私、ここをきっといい店にしてみせるわに!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お仕事お疲れ様でした。
 今回のことで海の家『イッツミー』がカレー方面で妙に有名になったようです。
 これにともなって小梢さんは国外でもカレーメイドと呼ばれるようになりました。
 よって『グローバルカレーメイド』の称号をプレゼントします。

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