PandoraPartyProject

シナリオ詳細

くまねこゆきだおれる

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「森で行き倒れがでたのですよ!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は手にしている依頼が書かれた紙を、ぱたぱたと振って見せた。
「暑い日が続きますからね。倒れてしまうのも無理ないかもしれませんが、今回の行き倒れはちょっと迷惑なのです!」


「お兄ちゃん、待ってー」
 エリーサが呼びかけると、ティムは足を止めて妹が追いついてくるのを待った。
「なにしてんだよ。遅いぞ」
「だってー。ほら」
 ちょこちょこと走ってきたエリーサは、両手の中にある赤い実を得意そうにティムに見せた。小さな赤い実は、葉の下にできるため見つけにくいが、甘酸っぱくておいしい。
「オレたち、薪を拾いに来てるんだぞ」
 そう言いながらもティムは実を1つつまんで口に入れた。
 すでに日差しは強く、気温も高くなってきているから、瑞々しい実は特においしく感じた。
「あー、お兄ちゃんずるい!」
 頬をふくらませる妹にティムはえへへと笑った。
 もう少し行ったら薪を集めなければ。
 森の近くにぽつんと1軒ある家で、両親と小さな兄妹との4人暮らし。薪集めは、10歳のティムと8歳のエリーサの大切な役目なのだ。
 けれど、進もうとした先にくまねこを見つけ、ティムとエリーサは道のわきによけた。
 ほてほてと二足歩行してくる白と黒のツートンカラーの熊は、2mを楽に超える大きさで、横幅もぽっちゃりとしている。人にとって脅威となるサイズではあるが、くまねこは草食性で、むやみに人を襲うことはない。
 だるそうにゆっくりと歩いてくるくまねこを、ティムとエリーサは見守った。
 くまねこにあったら邪魔をせず、静かに通り過ぎるのを待つこと。そう親から教えられている通り。
 森の道は狭いから、端に避けていてもくまねこはかなり近いところを通る。手を出せば触れられるくらいに。
 くまねこがちょうど2人の横を通り過ぎようとした――そのとき。
 ティムに思いっきり突き飛ばされて、エリーサは倒れこんだ。手にしていた赤い実が、ばらばらと散らばる。
 どすん。
 聞こえた音に振り返ったエリーサが見たものは。
 ――目を回してばったりあおむけに倒れたくまねこと、その下から覗く兄の脚。
「お兄ちゃん!」
 必死にくまねこを持ち上げようとしたが、でろーんと脱力したくまねこは重く、エリーサの手には負えなかった。


「ご両親はお留守でまだ連絡が取れていません。この暑さの中、エリーサちゃんは泣きながらティムくんについているとのことです」
 くまねこの身体は、つきたての餅のようにでろーんとしていて持ち上げにくい。
 けれど早くしなければ、下敷きになったティムの生命が危険だ。
「というわけで、大急ぎで森にむかってほしいのですよ!」
 ユリーカは大慌てでイレギュラーズたちを送り出したのだった。

GMコメント

Pandora Party Projectをお楽しみ中のみなさま、月舘ゆき乃(つきだて・ゆきの)と申します。どうぞよしなに。

この依頼の成功条件はティムを生きている状態で助け出すこと、です。

意識のないくまねこはでろんでろんです。実際の重さ以上に持ち上げにくいですし、でろーっとのしかかってくるので、息苦しいです。おまけに体温のせいで暑苦しいです。
意識を取り戻せば、多少でろんでろんは解消されますが、くまねこが自力でしゃきしゃき動けるようになるには時間がかかります。
ティムはうつ伏せ、くまねこは仰向けにひっくり返っています。

すべての情報がはっきりとはしていないので、シナリオの情報精度はBですが、そこまで警戒が必要ということはありません。
森の状況などにつきましては、不自然でない範囲なら、きっとこれはあるよね、こうだよね、とみなさまで決めていただいて構いません。ただし、ちょっとそれは無理……という場合は、その通りにならないこともあります。

ではでは。暑い日が続きますが、熱中症対策を万全にして、元気に依頼にきてくださいませー。

  • くまねこゆきだおれる完了
  • GM名月舘ゆき乃
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月24日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

マリア(p3p001199)
悪辣なる癒し手
桜坂 結乃(p3p004256)
ふんわりラプンツェル
風巻・威降(p3p004719)
気は心、優しさは風
アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)
煌きのハイドランジア
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
ノブレス・オブリージュ
メルディナ・マルドゥーネ(p3p006099)
虚空繋ぐ聖女
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
木津田・由奈(p3p006406)
闇妹

リプレイ


 照りつける太陽。
 しゃわしゃわと降り注ぐ蝉の声。
「これじゃあくまねこさんも、ぐんにょりするよね……」
 ティムの処へ向かいながら、桜坂 結乃(p3p004256)は眩しそうに空を見上げた。
 森に入ってからも、陽の強さは容赦ない。一刻も早くティムのもとへと足を急がせているため、余計に暑く感じられる。
「最近暑いもんね。くまねこは毛皮もふもふだし、そりゃ熱中症にもなるってもんだ」
 錐も気を付けて、と『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)は連れてきたヤギの首をいたわるように叩いた。
「この暑さではくまねこが倒れてしまうのも仕方がないが、本当に困った行倒れだ」
 そう言う『君に禦の誉』クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)も、老ロバと美しい栗毛の馬を連れている。
 『魔法少女』アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)がふわふわもこもこの黒いパカダクラ、『悪辣なる癒し手』マリア(p3p001199)が軍馬ともこもこもふもふのひつじさん、と今回の依頼では動物を連れている者が多い。
 依頼の状況、そしてくまねこのぽっちゃりした体型を考えるに、今回の依頼は力仕事になる可能性が大だからだ。
(妹にあるまじき力仕事になりそうね)
 お兄ちゃんには見られたくない恰好になるのを覚悟して、『恋するヤンデレ妹は異世界最狂』木津田・由奈(p3p006406)はこっそりため息をついた。
 妹たるもの、いつも可憐に愛らしく。力仕事なんてもってのほか。……ではあるのだけれど、今回の依頼は『妹』が『お兄ちゃん』を助けてと要請してきたもの。もし由奈がエリーサの立場であったら、どんな手段を使っても、なんとしても兄を助けようとするだろう。そう思えば、『妹』としてこの依頼は見過ごせない。
「女の子が助けを求めてる。エリーサちゃんかな?」
 アリスが前方を透かし見た。他の誰に聞こえなくとも、アリスの人助けセンサーは、助けを求める声に反応する。
「この先に癒しを求める方がいるのですねー」
 回復させたい、という衝動に突き動かされ、マリアは小走りで道の先へと進んだ。

 大きくカーブした道の先に、もこもこした白と黒の盛り上がりと、その傍らに座り込んでいる女の子の姿が見えてくる。
「エリーサちゃん、遅くなっちゃって御免ね!」
 アリスの声に、エリーサはぱっと顔をあげてこちらを振り返った。ずっとここで不安に耐えていたのだろう。涙でぐしゃぐしゃになった顔に土埃がへばりつき、目は真っ赤というありさまだ。
「おに、お兄ちゃんが……」
「もう大丈夫ですよ。さぁ、涙を拭いて……」
 『虚空繋ぐ聖女』メルディナ・マルドゥーネ(p3p006099)は真っ白なハンカチをエリーサの手に握らせた。
「私たちが来たからにはもう安心だよ。貴女のお兄ちゃんはが絶対に助けてみせるから!」
 そう言ってアリスが示す先では、もうすでにマリアがくまねこの下から覗いているティムの脚に手を触れ、意識確認を開始している。
「ティム君、聞こえますのー? 聞こえましたら返事をしてほしいですのー」
 マリアのすませた耳に、かすかにくぐもった声が届いた。手に触れる脚が左右に振られる。ティムの脚がかなり熱いのは気になるが、意識があり反応できることに、マリアは安堵した。
「すぐ助けてさしあげますのー、もう少し、頑張ってくださいませー!」
 ティムに呼びかけておいて、今度はマリアはティムの顔のある位置をイレギュラーズに教える。
「こちら側を優先的に掘ってくださいませー」
 ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)はマリアが示した位置を確認した。来た道側から見ると、くまねこが仰向けで頭をやや右側に、足をやや左下に向けて斜めに倒れており、その下にティムがうつ伏せで頭をやや左に、足をやや右下に向けている。くまねこの身体が横に広いため、ティムはふくらはぎから下の部分しか見えていない。
「ティム君のお顔があるのはー、くまねこの右胸下あたりですわねー。あらあら、お顔は完全に下敷きなのですねー、大急ぎですわー」
 ティムの息が詰まってしまわないうちに、とメリルナートは持参したスコップでさっそく土を掘り始める。
「ごめんよ、苦しいだろうけどもう少し頑張ってくれ。すぐに出してあげるからね」
 威降はティムの顔のある辺りにそう声をかけると、周囲の木々を見渡した。
 枝が二又になった手ごろなサイズの樹を探し、手でたわめて強度を調べる。大きすぎれば救出作業の邪魔になるし、扱いも大変だ。かといって、簡単にたわんでしまうようでは、くまねこの身体を支えられない。
 これぐらいか、と目星をつけた樹を威降は斬り倒しにかかった。

「くまねこさーん!! く、ま、ね、こ、さーん!!」
 結乃はくまねこの耳元で叫んだ。くまねこの片目が薄く開いたが、目が合ったという感覚もないままに、すぐにまた閉じてしまう。
「完全な熱中症のようですわねー。……怪我なら何が何でも治しますのにー」
 マリアの見立てでは、くまねこは熱中症、ティムは脚からだけでは判別がつかないが熱中症を起こしている恐れが高い、エリーサは今のところは治療が必要な状態にはない、となった。
 今一番危険なのはくまねこだが、今後生命の危機に陥ることが予測されるのはティムだ。マリアは仲間に熱中症への対策を頼むと、自分はティムに付き添いその様子を見守ることにした。


「向こうにしばらく行ったところに、小川があるよ」
 小鳥の目に映った水の流れがある方向を、結乃は皆に手で示した。
 何をするにも水は重要だ。バケツを準備してきた者たちは、さっそく小川で水を汲んできた。
 結乃、アリス、メルディナは冷たい水にタオルをひたすと、くまねことティムに当てて、体温を下げにかかる。
「人間と同じようにいくのかはわかりませんが……試してみましょう」
 メルディナはくまねこの首の後ろ、脇の下、腿など、人の熱を取るときに冷やす場所を重点的に冷やしていった。
 当てたタオルはすぐに生温かくなってしまうから、何度も濡らし直し、当て直す。
 水自体がぬるくなると、アリスはパカダクラのトロンベを連れて行って、一気に新しい水を汲んできた。冷却は熱中症の治療にも予防にもなる、もっとも基本的な対処法だ。
 できれば水も飲ませたいけれど、ティムの顔はまだ見えない。
 メルディナがくまねこの口元に食塩水を垂らしてみると、舌でぺろりとなめてくれた。
「エリーサちゃんもずっとここにいて、だいぶ暑い思いをしてるよね。あなたが倒れたら、おにーちゃんが悲しむ。だから」
 と結乃は冷たい飲み物を差し出した。
「これ飲んで、木陰で休んでてね。ボクたちがおにーちゃんを助けるから、もうだいじょうぶ」
「ありがとう……」
 エリーサも喉が渇いていたのだろう。ごくごくと飲み物を口にしたが、やはりティムが心配な様子で、その場からは離れかねている。その気持ちは理解できるから、結乃はそれ以上無理にエリーサを遠ざけはしなかった。
「じゃあ、エリーサちゃんはこの団扇を使って、ティム君とくまねこさんを扇いでくれるかな? この暑さだから少しでも涼しくしてあげないとね」
 何もできずにただ見ているだけなのは歯がゆいだろうとアリスが団扇を出すと、エリーサは飛びつくように受け取って扇ぎ始めた。
「そう、その調子。でも約束っ。自分の体調が悪くなったら、すぐに私たちに相談すること!」
「うん、おやくそく」
 ほんの少しだけれど笑顔になって、エリーサは一生懸命団扇を扇いだ。

 くまねこやエリーサへの働きかけと同時に、ティムの救出作戦も進められていた。
「よ、っと。これでどうかな」
 斬り出した木の不要な枝葉をはらうと、威降はくまねこの身体を持ち上げるように、下側から差し込もうとした。だが木を両手で支えているため、たぷんたぷんとしたくまねこの身体の下へは、なかなか押し込めない。
「このへんを持ち上げればいいの?」
 支柱づくりを手伝っていた由奈が、でろんとしたくまねこの身体を持ち上げ、威降の作業を補助した。『妹』として『お兄ちゃん』の救出に尽力したいのはやまやまなのだが、実際どう動けば良いのかとなると、気が焦るばかりでなにも思いつかない。
(どうしてみんな、即座に動けるんだろう)
 てきぱきと動く仲間たちに、軽く嫉妬を抱きつつ、由奈は手伝いに専念した。こうして手伝うことが経験となって、いつか『お兄ちゃん』が窮地に陥ったとき、今度は自分で動けるようにと。

 そうして支柱でくまねこの身体をささえる作戦が行われている間、メリルナートはせっせとスコップで穴を掘り続けていた。
「少しお水をいただきますわねー」
 掘る際の土埃を抑えるため、時折水を撒いて地面を湿らせ、そしてまた掘る。
 くまねこを持ち上げるのが難しいなら、その下の土を除いてティムが脱出できるスペースを作り出そうというのだ。
 そのまま掘ってはくまねこの身体ごと沈んでしまうだけだが、支柱でささえていればくまねこの状態を保持したまま、下に空間を作ることができる。
「よし、石鹸水の準備は完了だ! 穴を掘る手伝いをするよ!」
 バケツにかがみこんで石鹸を泡立てていたクリスティアンが、メリルナートの手伝いに入った。とはいえ、バケツなどの道具を運んできたクリスティアンは、スコップまで積んでくる余裕がなかった。
 なにか掘るもの……と考えたクリスティアンは、
「ふむ、これで掘るとしよう」
 迷いもなく、煌めくガーネットが埋め込まれ美しい装飾がされた盾――不変ノ聖盾を土に突き立てた。芸術品ともいえる盾が泥まみれになってしまったが、いくら汚れたって構わない。1人の少年の生命が関わっている上に、その子の妹までがそれを待ち望んでいるのだから。
「予備のスコップがありますからー、お使いくださいねー」
 メリルナートはクリスティアンと、付近の木で作った簡易的スコップを使っている由奈に持参してきたスコップを渡す。
「では借りるとしよう。僕の道具も必要があれば遠慮なく使ってくれて良いからね」
「ありがと。正直助かるわ」
 一刻も早くティムを助け出したいから、効率は重要だ。
 暑い中、地面を掘るのは重労働だが、メリルナートは着々と掘り進めてゆく。
「これでも大婆様に連れられていろいろと出かけましたのでー、こういう作業も特に苦とは思いませんのよー。貴族の娘としてはー、あまり褒められたことではないかもしれませんがー」
 メリルナートはふふっと笑った。


 救出作戦は進んでいるが、ティムの体力を考えれば時間の猶予はあまりない。
 つい気が焦るが、そんな皆へメルディナは食塩水を配って歩いた。
「巨獣すら倒れる暑さです。作業している私たちも、この気温には気をつけなければ……と、我が主は仰っております」
 啓示を伝えるメルディナだが、全身を包むシスター服もあって、本人もかなり暑さにうだっている。気を付けていないと、救出側が倒れかねない。
 支柱を幾つか設置し終えた威降は、配られた食塩水をしっかり飲んでから次の作業に入った。
 くまねこの身体にロープをかけ……といっても結べる状態なのは手足ぐらいなので手足に巻き付けて……そのロープを頭上の枝を経由させてから、皆が連れてきた動物たちへと結びつける。そしてゆっくりとロープを引かせた。
 まずはそれほど苦なく、くまねこの手足が上がった。そこからはかなりずっしりとした手ごたえで、じりじりとくまねこの身体が傾き、背中が……地面から少し上がった。
 くまねこの下にティムの頭が見えるようになり、小さくうめくのが聞こえる。
「お兄ちゃん!?」
 エリーサが手にしていた団扇を取り落とした。
「飲んでくださいー」
 マリアが素早く、ティムの口の端にストローを差し込んだ。
 確かに飲んだ……と安堵する間もなく。
 手足を吊り上げられた体勢が苦しかったのだろう。くまねこが手足を振り回してもがいた。
 ロープを経由させていた頭上の枝がへし折れる。
 でろん、と戻るくまねこの身体が、支柱のいくつかを押し倒す……と見て取った威降は代わりに自分の身体をすべりこませた。
「お兄ちゃん! お兄ちゃんっ!」
 歓喜の後の絶望。エリーサは泣き叫ぶ。
「大丈夫! 空間確保できてるよ」
 くまねこの下から、威降の声がくぐもって聞こえた。倒れずに残っている支柱と威降の身体とで、ティムはつぶされずにすんでいる。
「もうすぐ穴も届きますわー。あと少しー、慎重に急ぎましょうー」
 スコップをティムにあてないように留意しながら、メリルナートは土をどかしていった。
「ティム君、今助けるからね。重たいと思うけど、もうちょっとだけ辛抱してね」
 結乃は土を水で湿らせ、救出のための土堀りを補助した。暑さで乾燥した土は掘れば埃となって舞い上がる。狭い空間で耐える2人の息を詰まらせるわけにはいかない。
 皆が総出で土堀りにあたる中、エリーサは先ほどのショックからさめず、泣き続けていた。
 そのエリーサに、由奈がびしっと言う。
「貴女、いつまで泣いてるの。泣いてるだけでお兄ちゃんが救えるわけじゃないでしょ? ……貴女を庇って助けてくれたお兄ちゃんに対してできることは何?」
「ふぇ……?」
 エリーサは泣きぬれた顔をあげ、尋ねるように由奈を見た。
「お兄ちゃんが生きたいって気力を持てるように呼び掛けるのが、『妹』がすべきことでしょ? 妹力を見せなさい、エリーサ! それで『お兄ちゃん』を救うのよ!」
「う、うん……! お兄ちゃん、がんばって……」
 まだ半泣き状態ではあるけれど、エリーサは由奈の助言を受けてティムへと呼びかけはじめた。

「やった! 届いたよ!」
 そっと土をどかしたスコップが威降の身体に当たり、アリスが歓声を上げた。
 身体の下に空間ができるように掘り進めてきたが、このまま引っ張り出すと地面とくまねこの間でこすられて、ティムが怪我をしかねない。
 そこにクリスティアンが泡の立ったバケツを運んできた。
「昔ながらの知恵……抜けなくなった指輪とかを石鹸で取ろう作戦だ!」
 あわあわもこもこと泡立てた石鹸水を、できた隙間へと流し込む。威降が狭い空間の中で身体をよじり、自分とティムの周りに石鹸水をまといつけた。
 そしてティムの身体を引っ張る――と。
 するん、とティムは掘られた空間へと落ちてきたのだった。


 救出されたティムを診て、マリアはほっとした。
「骨折はしてませんわねー。打ち身とすり傷ですんだのは運が良かったですのー」
「冷やしてもよろしいですか?」
 マリアに確認してから、メルディナはティムの身体を濡れタオルで冷やし、食塩水を与えた。
 ティムの怪我はたいしたことなく済んだが、くまねこの熱を持った毛皮の下敷きになっていた疲労は隠せない。助け出されたあともぐったりとした様子だ。
「よく頑張りましたわねー。もうだいじょうぶですのー。ゆっくり休んでくださいませー」
 木に背中を預けるように座らせたティムを、マリアはいたわった。
 エリーサはそんなティムから離れようとせず、寄り添っている。
「よく頑張ったわね、エリーサ。それでこそ『妹』よ」
 由奈が頭をなでて褒めると、エリーサははにかんだ笑顔を浮かべた。
「ティム君が無事でほんとうによかったね」
 威降はエリーサに声をかけたあと、くまねこの様子を見に行った。そこにはメリルナートとアリスもいて、くまねこを見守っていた。
 身体を冷やし続けているうちに、くまねこは意識を取り戻し、ふらつきながらも立ち上がれるようになった。試しに水を与えると、バケツに顔をつっこむようにして、ごくごくと飲む。くまねこのほうもかなり回復したようだ。
「新しい水を汲んできたよ!」
 くまねこの背中はまだ、救出の際の石鹸水で泡だらけだから、クリスティアンはごしごしと洗い落としてやった。冷たい水が気持ち良いのか、くまねこは顔を空へと向けて目を閉じている。
「なんか、背中がすごくきれいになったね」
 洗われたくまねこの背中をアリスが示した。
 汚れが落ちて、太陽に乾かされてゆく毛皮は、ふんわりと。くまねこの白と黒のコントラストもくっきりと。
「そろそろ元気になったか? 今度は水分をちゃんと摂って日中は日陰にいないと駄目だぞ」
 のっそりと動き出したくまねこに、威降が呼びかける。
「皆も水分を補給してね。おつかれさま!」
 結乃は全員に飲み水を配った。
 暑い中、救出した者も救出されたものも、冷たい水に喉を鳴らす。
 救出の達成感と安堵をもって飲む水は、まさに至福の美味だった――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ティムを救出&エリーサへのフォロー、そしてくまねこさんへの対応と、いろいろおつかれさまでした★
まだまだ暑い日が続きますので、みなさまも熱中症に気を付けて、健やかにお過ごしくださいませ。

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