シナリオ詳細
斥候アダマンアントを妨害せよ
オープニング
●アダマンアントの斥候
「ヒ、ヒイイイ……」
緊急避難所として使われている洞窟に隠れながら、亜竜種の男は震えていた。
固い岩山に存在する、あまり大きくはない……つまるところ巨大なモンスターは入ってこれないような、小さな天然の洞窟。
多少手を伸ばした程度なら奥に逃げれば大丈夫でありワイバーンも手を出せない、そんな「安全」な避難所。
しかし亜竜種の男は今、その安全なはずの洞窟が非常に頼りないものに思えて仕方がなかった。
それは何故か。その理由は……男の視線の先にあった。
隠れながら覗く視線の先には、巨大なアリ型モンスター……アダマンアントの姿がある。
アダマンアント。そう聞けば誰もが「覇竜侵食」を思い出すだろう。
覇竜侵食。
そう呼ばれる一連の事件と戦争が終わってから、まだ日は浅い。
亜竜集落においてアダマンアントという生物の危険性は広く知られることになり、ワイバーンに並ぶ有名な脅威として語られるようになった。
まあ、当然だろう。ワイバーンが空から来るなら、アダマンアントは地下から来る。
今まで安全とされていた場所を危険地帯に変えたアダマンアントの脅威が大きく語られたところで、何の不思議もない。
そうして「その」アダマンアントは近くを調べるように触角を動かしながらウロウロしていたが……やがて、別の場所へと消えていく。
この近辺の調査でもしているのだろうか?
それとも新しい縄張りの確認だろうか?
分からない。分からないが……アダマンアントは男のことなど簡単に殺せる力の持ち主であることは限れもない事実で。
だからこそアダマンアントがいなくなった隙に男は悲鳴を必死で押さえながら逃げ帰っていく。
それ故に……イレギュラーズに依頼が来るのもまた、当然なことと言えるだろう。
●アダマンアントの排除依頼
「何処の巣の連中かは分からんが……アダマンアントが地上に出てきているようでのう」
『フリアノンの酒職人』黒鉄・相賀(p3n000250)は集まった面々を前に、そう切り出す。
アダマンアント。本来であれば地下の巣に引きこもっている彼等だが、地上に出てこないわけではない。
分派による新しい巣の作成、何らかの事情による引っ越し……あるいはその他の何か。
色々とあるが、今の時期アダマンアントが地上に出てきているというのは……しかも亜竜種の移動ルートの近くにいるというのは、心情的にもあまりよろしくはない。
それに、アンティノアのこともある。彼等がいればアダマンアントの命令権の獲得は容易であり、そうした事情によるものではないとは否定できない。
「ま、総合的に考えれば一当てして追い返すのが一番ってことじゃのう」
どんな目的かは分からないが「強い相手が此処にいる」と知らしめれば、アダマンアントはその情報を持ち帰るだろう。
それは近辺の安全に繋がるはずであり、今後の為にもなるはずだ。
「ま、そんなわけで追い返してきてくれるかの?」
- 斥候アダマンアントを妨害せよ完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年07月19日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●アダマンアントの脅威
「今回の任務は斥候の撃退、並びに巣の捜索、周辺集落への警告ですか……数は少ないと言えど目標は記憶に新しいあの「アダマンアント」、警戒するに越したことはないでしょう……」
『旧世代型暗殺者』水無比 然音(p3p010637)の声が、岩場に響く。
フリアノンと数多の小集落を繋ぐ道の1つ。
然音の言う通り、今回の敵はアダマンアントだ。
かの覇竜侵食からまだ然程の時間もたっておらず、アダマンアントに対する警戒も高まったままだ。
特に一歩間違えばフリアノンを貫きラサまで被害が及び、小集落に至ってはかなりの確率で襲撃を受けた。
これでアダマンアントを警戒するなというのは無理な話だが……アダマンアントを絶滅させようというのもまた無理な話だ。
その辺りに関してはワイバーンを絶滅させようという程度には壮大な話になってしまうのだ。
「まあ、覇竜侵食の一件が終わったとはいえ。まだまだ残党は居るでしょうね。これもまた戦後処理。皆さんが安全に生活できるようにせねば」
綾辻・愛奈(p3p010320)もそう呟く。そう、残党。あの決戦に参加していなかったアンティノア・ファーストたち。
そして何よりも、アダマンアントの巣は1つや2つではない。デザストルのあちこちに別の指揮系統を持つアダマンアントたちが存在するし、それらを全滅させるのは、あまり現実的ではない。
ないが……それでも、ある程度の安全を確保することは可能なはずだ。
「なるほど、まだまだアリさんの脅威は残っているという事なの。前に戦った相手とは別の巣から来たのかしら~。何はともあれ、危険はあらかじめ遠ざけておきたいのは理解できるの。お引き取り願うのよ」
「ある程度アダマンアントの件は落ち着いてきてると思ってたけど、まだ油断はできない状況が続いているってことだよね」
『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)に『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)も、そう頷く。
「危害を加える可能性がある以上、正直いまうろうろしている奴はすぐに倒しておきたいけど、ぐっと我慢だよ。きちんと元の巣から断っておかないと、将来的にまた集落が危険にさらされちゃうことになる。今回うろうろしているのは2m程度の個体が2匹ってことだけど、ほかの個体がいる可能性だって十分に考えられるし……! 戦いが終わったら愛奈さんと一緒に集落への連絡に行こう。少しでもみんなが安心して暮らせるような環境を作っていくことも、正義の味方の役目だし、頑張っていこう!」
「そうだよね、アンティノアとは関係ないならいいんだけど今回ばかりは単に退治や追い払うだけじゃなくて奴らの出処突き止めなくっちゃ!」
『不壊の盾』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)も咲良にそう頷くが、全員が凡そ統一した見解であるようだ。
「やーれやれ、頭を潰したから一件落着、とはいかねーもんなんだなぁ 。見逃すわけにもいかねーし……少しばかり、話(物理)つけにいきますか」
「だな。あの戦いでは確かに俺達が勝利したが、アリンコはまだ残っていやがる。こうなると、ここで蟻を倒すより追い返して巣を見つけた方が良さそうだ。臭い物は元から絶たないと終わりゃしねえ」
『天駆ける神算鬼謀』天之空・ミーナ(p3p005003)に頷いた『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)は鳩のファミリアを召喚し、上空からの偵察を行うべく準備をしていく。
ミルヴィも同様に借りてきた周囲の地図とファミリアで得られる情報を確認しながら差異がない事を確かめていた。
「さって、周囲を把握しとかないとねー」
結果としては……今のところ大きな差異はない、といったところだろうか?
「では、行こうか。出る場所は分かっているのだ。そう、重要なのは『理解』する事だ。書き手と読み手の望みを『掴む』事だ。――私には視えたぞ、GM」
何やら第四の壁を発動させている『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)の言葉に全員が移動を開始すれば……なるほど、2体のアダマンアントが周囲を探査するように触角を動かしている。
「貴様等に問うべきはひとつ。硬質な貴様等の顎は私を『貪り尽くす』と謂うのか」
当然、答えなどない。こちらの戦意を察知したアダマンアントはその顎をギチギチと鳴らし、戦闘態勢に入っていく。
「先手をしかけていくよ!」
ミルヴィの声が響き、戦いが始まった……!
●戦いのその先に
「俺が手番の起点となるぜ……!」
大型拳銃『狼牙』と凶銃『餓狼』を構えたジェイクのダニッシュ・ギャンビットからのプラチナムインベルタが放たれる。
「皆、行くよ!」
そこから連鎖するように咲良、ミルヴィ、オラボナ、胡桃が動き出す。
咲良の残影百手が多重に残像を生じるスピードで攻め立て、胡桃のクエスタータイムが発動しこやんふぁいあ〜が放たれる。
「体力だけじゃなくスタミナも削ってヘロヘロにしてあげるの。これで撤退させやすくなるかしら」
そして当然、そこでは終わらない。ミルヴィのロザ・ムーナがアダマンアントに命中する。
「くっ! 相変らず装甲かったぃ!」
硬い。そしてタフ。1体で複数のイレギュラーズを相手しきる程度には強力なアダマンアントの実力は未だ健在。
しかし、どうにも士気が低いようにミルヴィは感じていた。あの相対した突き動かされるような狂気が、目の前のアダマンアントからは感じられないのだ。
「――貴様等の酸味を啜るのは容易だが、やはりホイップクリームが不足していないか? 私を攻撃すればするほどに此方が有利になる筈だ……ああ、二匹とも私に集中してくれれば最高だ。範囲攻撃を赦してはならない、単体で、私を、食い千切るのだよ」
オラボナが囮、あるいは壁になるようにしてアダマンアントたちの前に立てば、その背後からピューピルシールを然音が放つ。
「目標の殺害ではなく撃退が任務……殺さないように一体ずつじわじわと攻めることにします……」
更にミーナが界呪・四象を放ち、愛奈が大天使の祝福を展開する。
アダマンアントは硬い。恐ろしく硬いが……何度も戦ってきた相手だ。ある程度分かっているからこそ、対応は難しくないし……何より、アダマンアントが強いからこそ間違って殺す事がない。
アダマンアントたちは静かに撤退していき、しかしそこからが本番だ。
「下手に恨み買うとまた面倒になりかねないからな」
アダマンアントが撤退していくのを見てミーナが呟くが……その後をジェイクとミルヴィのファミリアーが追尾していく。
そう、後を追って巣を見つけようというのだ。
ミルヴィ自身、持ち込んだ香水で匂いを薄めて闇の帳を発動しアリ達を追尾していく。
勿論、全員が追うわけではない。
「わたしのギフトだと尾行しているのには気付かれそうなので周辺にアリさんの影がないかとか見て回るの。巣穴以外にも斥候ルートがあるなら把握しておきたいし」
胡桃はそう言って早速行動を開始するが、それは重要なことだろう。
アダマンアントの今回の目的が何であるにせよ、それを把握しておくことは今後の為になるのは間違いないのだから。
「アタシと愛奈さんは一緒に集落に一段落ついた旨を連絡しに行くね」
「そうですね」
言いながら、愛奈は今回の情報を纏めなければ……とも思う。
出没したアダマンアントの特徴・出現位置・戦闘力等々。
実際に対峙した上で…観察した上で情報を纏め、集落の皆さんとローレット側への提出資料とするのだ。
(後から読み返せるようにしておけば、ここに来られなかった方への情報共有も楽になるでしょうから)
出現位置については、もし集落に地図があればそれとも情報を揃えておきたいところだ。
具体的に「この辺で見たよ」と判れば、そこからラインを引いて危険地帯を可視化しやすくなるのは間違いない。
そうした総合情報は、今後の危険を避ける1つの道標ともなるだろう。
「――この情報から殲滅戦になるのか、それともラインを引いて様子を見るのか。それは判りませんが……」
そして咲良も少しでも覇竜の地域を頭に入れたうえで、集落周囲の地図を何枚か持ってアダマンアントの出没地点を個体ごとにマークしていくつもりだ。
(アタシたちの目撃情報だけじゃなくて集落の人たちの目撃情報があればよりマーキングの精度も上がると思うんだ。そのうえで、今後について集落の人たちと対策を立てていかなきゃ!)
2人の目論見が上手くいけば、この周囲の安全度が上がるだろう。
あとの問題は、アダマンアントを何処まで追跡できるかだが……ミーナは距離をとって追跡開始していた。
パカダクラの砂駆は更に距離を離して追従するよう指示を与えていたが……基本的に闇の帳の技術で足音、気配は消して、なるべく枝などの音がするものを踏まないように気をつけていた。
たかが枝の音……などとミーナは甘く見たりしない。それでバレれば、最悪もう一戦、今度は敵の増援アリということになりかねないからだ。
そして空にはファミリアーたち。ジェイクのファミリアーは二匹のの内一匹を事前行動と同じ高度でアダマンアントの後をつけさせていた。
首尾よく巣まで辿り着いたら、ミルヴィの使い魔とは違う方角を調べた後に皆の情報を擦り合わせて位置の割り出しを行うつもりだ。
もう一匹の鳩には足にリボン(飼い鳩の印)と手紙を巻き付けて、集落に撃退の旨を伝えた上で現状蟻の追跡中である事を伝える手はずだが……。
「……アレですね」
岩山に空いた穴に入っていくアダマンアントたちをみて、然音はそう呟く。
なるほど、巣の拡張中に地上に穴が空いた結果、周囲の探索に出た……ということ、だろうか?
「静かにしといてね……」
アダマンアントたちが穴に入っていくと、見張り用の個体だろうか、別のアダマンアントが巣の入り口を入ってすぐのところに陣取っているのが見える。
あれでは鳩のファミリアーでは追跡しきれないだろう。入り口のアダマンアントを躱すことが不可能であるように見える。
ファミリアーを残った仲間達の元へ戻らせ、ファミリアーと自分の目で確認した道筋をメモしていた地図に印をつける形で状況と位置を仲間に伝達しようとミルヴィは考え……自分の服の胸元に、いつの間にか鞄に潜り込んでいたミードくんを押し込んで隠す。
「見張りか……特に増援が出撃する様子もなし、か」
「……そうですね」
ジェイクにミーナも頷く。ここで撤退するのが無難ではあるだろうが……オラボナと然音は、残って監視を続けるつもりだった。
「何か行動があれば【忍び足】で離脱、皆に報告。一定期間何も無ければ帰還します……バレなければ【食眠不要】で数日間は監視を続けられると推測していますので」
自分が監視している間に咲良さん達が対策案を出してくれる事を祈りましょう……。まぁ、何もないに越したことはないんですけどね……と然音は呟くが、今のところ対策については今回の件でアダマンアントが危険有りと近づかないのが一番ではある。
「情報が十分に集まり、奴等が寝静まったところで帰還するとしようか。そうすれば集落での情報共有、ローレットへの報告などを行う。統治で『連絡網』を作るのもありだろうか……ああ、秩序は守るのではなく語るものなのだよ。容易ではないが」
オラボナもそんなことを呟くが……一晩見ていても、アダマンアントが眠る様子は一向に見受けられない。
それどころか、時折オラボナたちがいる方向に向けて触角を動かしている様子も見受けられるが……同時に、そこから何かに発展する様子もない。
巣穴の見張りを主とした警戒防御。かつてペイトの近辺で見つかったアダマンアントの巣で見られたものと同じ行動をしているようだが……この様子では、こちらから仕掛けるような真似をしなければ攻撃してくることはないだろう。
とはいえ、あまり長居しすぎれば敵と判断される可能性も高いだろうか?
それを確認し戻れば胡桃も戻ってきていて、どうやら「付近の危険度調査」をしていた可能性が高いという結論に至った。
恐らくは巣穴が外に繋がったことで、ある程度の情報を必要として斥候を出していたのだろう。
……となれば、この巣穴に現状アンティノアが関わっている可能性が非常に低いだろう。
そして、予測通りであればアダマンアントがしばらくこの近辺に近づくこともないだろう。
それは覇竜侵食によってアダマンアントという新たな脅威に脅える人々への、確かな安心となるだろうことは……間違い、なかった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
この巣においては、更なる危険が発生する可能性は低そうです。
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
フリアノンから別の小集落へのルート近くをウロウロしているアダマンアントを追い払いましょう。
ある程度のダメージを与えればアダマンアントは逃げていくはずです。
追い払ったら、余裕があれば小集落に伝えにいってあげると喜ばれるかもしれません。
敵データ
●アダマンアント×2
全長2m。嫌になる程硬い巨大アリ。攻撃方法は岩をも溶かす酸を弾丸のように飛ばす技と、強靭な顎による振り回し&叩きつけ攻撃です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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