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シナリオ詳細

<Stahl Eroberung>フレンドリー・ファイア

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 伝説の島、アーカーシュ。
 空の上に浮かぶかの地は鉄帝国や、協力するイレギュラーズにより調査が進められ多くの土地や独自の動植物も発見されてきた――そして概ね全域の調査が終了した、が。発見された『魔王城エピトゥシ』や『ショコラ・ドングリス遺跡』に対しては未だ未踏破であった。
 故にアーカーシュの全てを踏破するべく制圧作戦が練られている。

 それが鋼の進撃(Stahl Eroberung)作戦。

 今、この地の全てを解明し鉄帝国に新たな繁栄を齎すべく軍靴が――響き渡る。
「……と。なればまぁ、いいのだがな。しかし事はそう単純ではなさそうだ」
 が。鉄帝国には一つの……懸念が存在していた。
 アーカーシュ制圧作戦に大きく関わっているパトリック・アネル大佐に不穏な気配あり――
「ここ最近独自の行動が見られている。
 ……元々特務とは『そういう所』もある組織だが、しかしここ最近の活動は隠密がすぎて、な」
 その様に述べるはゲルツ・ゲブラー(p3n000131)だ。
 彼は鉄帝国の治安を統括せし保安部の一人。
 ゲルツの耳に届いていたのは『Stahl Eroberung』作戦の裏でパトリック大佐が独自の――というよりも怪しげな行動をしている――という情報であったのだ。
 アーカーシュに存在するレリッカ村の村長にして、百年前の調査隊唯一の生き残りであるアンフィフテーレ・パフを少佐として軍属に……些か強引な形で復帰させ、地上に降ろした事を始めとし更にユルグなる少年を『保護』もしたとか。
 しかしその辺りの理由が今一つ分からない。
 なぜ、村の指導者を排斥したのか。
 なぜ、一介の少年を保護と言う形で――率直に言えば、拘束状態に持ち込んだのか。
「……なるほど、確かに不可解。権力の乱用とも言えるでありましょう、が――その辺りは?」
「あぁ。あまり強権を発動する様であれば逮捕も検討されている。
 その為に俺が此処に来てもいる訳だが、な。
 ……やれやれ。噂のシレンツィオで休暇をしたかったんだが」
 同時。ゲルツの言に反応を見せるのはハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)だ。イレギュラーズにして、しかし鉄帝国軍属でもある彼女にとってみれば、今の話は全くの無関係などとは言えない。
 鉄帝国には上昇志向の強い者がおり『その範囲』であるならば、まぁまだ良し。
 しかしそれ以上であるならば――と。思考を巡らせた、正にその時。

「……なに? 通信設備が全て破壊された?
 どういう事だ――特務の姿だと!? 動き出したか、パトリック大佐ッ!」

 ゲルツの下へと新たなる情報が舞い込んだ。
 それが、作戦発動に前後して行われた――特務による破壊工作である。
 ……アーカーシュは先述したように天に浮かぶ島だ。故に、地上の施設と連絡を取るには通信設備を経由して行われていた。ソレが破壊されたという事は――実質的にこの地は情報面で孤立したという事だ。
 地上にまで直接出向いて連絡を取る? あぁそれには一体どれ程の時間が掛かる事か!
「だがこういう時の為に俺が来ているんだ」
「ゲルツ殿、では――」
「あぁパトリック大佐の身柄を拘束する。イレギュラーズ達にも正式に協力してほしい!」
「障害があるならば全て排除してでも、で宜しいでありますね!」
 故に最早地上の援軍や指示など待っていられない。
 この場における戦力でパトリック大佐を止め、事の真偽を確認する――! 彼は魔王城エピトゥシか、もしくはショコラ・ドングリス遺跡の奥にいる筈だ。ゲルツらは遺跡側へと踏み込み、大佐の足跡を追わんとする……
 ショコラ・ドングリス遺跡は無数の立方体――キューブとも言うべき代物で形成されている地である。これも古代文明の遺産なのだろうか? いずれにせよ大佐はこの奥に必ずいると歩を進めて……
 しかし、その時。
「むっ、キューブが退路を――!?」
 ハイデマリーは見た。遺跡の中でも些か広い空間に至ったと思えば……今しがた己らが歩いてきた道の後方側がキューブによって閉ざされたのを。戻る事は出来ない――と思っていれば、前方側でもまたキューブが動き、そこからは。
「呵々。侵入者とは……『四天王』に挑む愚者は、盲目に等しき存在と見える」
「――如何なる者らであろうと、この『四天王』が一角ダルギーズ、容赦はせぬ。
 主に仇名す人の子らよ。いざや尋常にお覚悟を……退くべき道はないと知れ!」
 なにやら『四天王』などと名乗る者らを筆頭に、無数の敵影が確認された。
 他にも梟型の魔物らしき存在――だけでなく。
「……あれは特務の軍人たちでありましょうかね」
「大佐に従う連中か。お前達、パトリック大佐は何処だ? 素直に答えれば罪には問わんぞ」
「――何を言う。我々は命令に従うだけだ、軍人としてな」
 ハイデマリーの推察通り、特務派の軍人たちも存在していた。
 彼らは此方と戦う意志を示している……が、どうにも覇気はそこまで感じえない。彼ら自身も目前に現れたハイデマリーやゲルツと言った同胞や、先の作戦まで協力者だったイレギュラーズと戦う事に戸惑いがあるのだろうか。
 もしかすれば戦いが優勢になれば彼らの説得は可能かもしれないが――しかし。
 いずれにせよ敵の数はかなり多い様だ。
 パトリック大佐を追う為にも、こんな所で足止めされる訳にはいかぬ。
『ガガ……ウィッチ・マスター。ゴ命令ヲ』
「ウィ……ええい、とにかく全ての敵を排除する! 続け――アレフゼロ!」
 故に。ハイデマリーは己に懐くゴーレムに指示を飛ばして戦闘態勢へと移行するものだ。
 そのゴーレムの名は、アレフゼロ。
 軍が発見し、ハイデマリーが名付ける事となった――この地の産物が一つである。

GMコメント

●依頼達成条件
 敵勢力の全撃退。

●フィールド
 ショコラ・ドングリス遺跡の内部です。
 内部は不思議なキューブで満たされており、キューブ自体が発光している為灯りにも問題ありません――が、どうもこの辺りはパトリック大佐の管理下にある様で、退路が塞がれてしまいました。
 周囲は広い為に戦うに支障はありませんが、場は完全に密室状態となっています。
 敵勢力を撃退してからでなければ脱出の模索は難しいでしょう。撃破してください!

 フィールドには敵味方に関係なく、踏むと発動する罠の様な床(キューブ)があります。
 なんらかの非戦スキルなどで見破れる可能性はありますが、主に以下の特徴があるようです。
・灼熱床:かなり熱くなっており、足元から燃え上がる場合があり、火炎系のBSを受ける場合があります。
・凍結床:凍結しつつも表面は僅かに濡れており、転倒(乱れ系BS)の恐れがあります。また戦闘が長引くと凍結系のBSを受ける場合があります。
・ダートトラップ:ある床を踏むと、不意に魔法の矢が射出される、ダメージトラップです。

●敵戦力
・四天王『骸騎将』ダルギーズ・クローン×1
 魔王イルドゼギアに従う幹部『四天王』――のクローンです。
 『四天王』とか名乗ってるのに他のシナリオの戦場とかにもいたりしますが、まぁ気にしないでください!
 バランスの良い堅実な戦い方をする剣士です。
 『反』を持ち、近範なぎ払い攻撃、ブレイク単体攻撃、必殺単体攻撃。
 更に不吉系BS麻痺系BSの神秘超遠貫攻撃を保有しています。底力系のステータス向上パッシヴ能力を持ち、復讐付きの斬撃は、追い詰められるほど冴え渡ります。

・四天王『魂の監視者』セァハ・クローン×1
 魔王イルドゼギアに従う幹部『四天王』――のクローンです。
 『四天王』とか名乗ってるのに他のシナリオの戦場とかにもいたりしますが、まぁ気にしないでください!
 搦め手が得意であり、遠近両用、範囲を含む変幻や災厄属性を持つ神秘攻撃使いです。神秘攻撃力が極めて高く、他のステータスも決して侮れません。保有するBSが幅広く『毒系』『凍結系』『不吉系』『麻痺系』『感電系』を多数同時に付与し、『呪殺』してきます。飛行しています。

・チュレイサ(魔梟)×10体
 超音波を放つ梟のような怪物です。
 空を飛行する事が出来る様で、二~三体程で一塊になりながら行動します。
 放たれる超音波は範囲攻撃と貫通攻撃の二種類があり、範囲攻撃は命中率が高いですが攻撃力は低く、逆に貫通攻撃は攻撃力が高いですが命中率が低いという特徴があります。

・特務派軍人×10名
 鉄帝国の軍人です。彼らはパトリック大佐に従う者達で、上記の四天王や魔梟らと共にイレギュラーズと戦います……が。同胞や、味方であったイレギュラーズと争うこの戦い自体に疑問を抱いている節もあり、あまり士気は高くありません。

●味方戦力
●ゲルツ・ゲブラー(p3n000131)
 ラド・バウB級闘士にして、鉄帝国保安部に属する一員です。
 遠距離射撃を得意とする飛行種であり、結構強いです。
 また、一応射撃程ではありませんが接近戦も出来、皆さんと共に戦います。彼は当初BSをバラまいてきて厄介そうなセァハ・クローンを優先的に狙いますが、皆さんから何かやってほしい指示などがあれば、他の個体を狙ったり、その行動を行おうとするでしょう。

●アレフゼロ
 ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)さんに懐いているゴーレムです。
 反応速度は鈍いですが、高い防御力を宿し、遠方まで届く熱閃を時折放つ事が出来ます。簡単な指示に従う事が出来ます。指示が無ければ近くにいるイレギュラーズを庇ったり、近くの敵や弱っている敵個体を狙う事でしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Stahl Eroberung>フレンドリー・ファイア完了
  • GM名茶零四
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年07月25日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
キミと、手を繋ぐ
武器商人(p3p001107)
闇之雲
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ジン(p3p010382)

リプレイ


 ――まさか空中神殿以外に空飛ぶ島がある所か。魔王城などというモノまで存在するとは、中々に予想外だと『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)は思考するものだ。
「それも勇者王に纏わる場所となると、俄然興味が湧いてきますね!
 まぁ、名の通り魔王城らしく……敵も仕掛けも山ほどあるようですが。
 一筋縄ではいきそうにないですね――だからこそ心躍る所もあるのでしょうが」
「いずれにしてもまずは敵を叩きのめしてから――かな!」
 同時。『不壊の盾』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は冒険者として未踏破の地域にはやはり尽きぬ興味が湧き出る所もある――が。まずは眼前の事態を片付けてからかと動き出すものだ。
 ドラマは攻勢の術式を展開しながら向かってくる敵の動きに呼応し、ミルヴィは。
「アンタ達がどうしようが知らないけど。
 その命令ってのは何なのさ? 思考放棄するって事なのかい?
 軍人の責務とかいう言葉に弄ばれて本当に見るべきモノがあるとは――思わないのかい?」
「軍人として上官に従うのは立派だが、国を裏切って害を成しては元も子もなかろう? 従うべきは本当に大佐でいいのかい? それとも、それが本当に国の為になるとでも――?」
「……くっ、黙れ! 軍に属する者は、命令こそ絶対なのだ!」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)と共に特務派の軍人達に言を紡ぐものだ。
 彼らの心を揺さぶる様に。彼らの戸惑いをより強く振るわせる為に――
 実際。大佐の行動は明らかなる独断にして暴走なのだから、ミルヴィや武器商人の説得たる言は、なんの虚言でもない――事実である。停戦を呼びかけ、彼らの戦力を大佐側から削り取れれば相応に戦況は楽になるであろう。
「遠慮せずに全員で攻撃して来い。俺はお前たちが軍人として忠実であることを咎めはしない。そちらにもそちらの立場というものがあるだろうからな――しかし、耳を塞ぐ事だけは、してほしくないが」
 故にこそ。その説得が成されるまでジン(p3p010382)が時を稼がんとする。
 特務派軍人も、流石に一声かけただけで立場を転がす程まで柔くはない……もう暫し言が必要であればこそ、ジンは彼らの動きを引き付けつつ立ち回るのだ――しかし。

「人の子らよ。希望を交えた言の葉は結構。
 しかしこの『四天王』が一角、ダルギーズを前に……隙を見せるかッ!」

 敵の側も大きく動き始めていた。四天王を名乗るダルギーズが剣を携え跳躍する。
 その動きは高速にして極大なる殺意と共に……
 この場における敵の戦力としてダルギーズは『上』側と言えよう――だから。
「おっと、させないよ――! キミの相手は私達だ!」
「ええ、マリアさん――行きましょう! ゲルツさん、微力ながらお手伝いさせて頂きますよ」
 『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)がドラマと共に飛来した。
 蒼雷の化身へ至るマリアの蹴撃が真正面よりダルギーズの抑えに掛かり。その直後にはドラマが奴の背面より襲来。両者、挟み撃ちの形をもってしてダルギーズをその場に食い止めんとするのである。
「むぅ! 小癪なッ!! しかし両面より至る程度で負けはせぬ!」
「この島は鉄帝の希望だ――! こっちこそ負けるわけにはいかない!
 そこを退いてもらうよ! 何がなんでもね――ッ!」
 行かせない。往かせない。
 ダルギーズの剣撃を捌きながら、マリアは更に高速を超えて雷速へ至らんとして。
「呵々。侵入者よ、抵抗など無謀と悟りもしないとは。然らば我が身をもってして教示せん」
「ほう――四天王とやらは随分、天上より物を見据える言い方をするものだ。
 良いだろう。その名に偽りがなければ騎士として戦うに相応しい相手。
 存分に斬り合おうではないか。その身、その名に矜持があるならば退くまいな」
 であればもう一人の四天王たるツァハがダルギーズの援護をせんと魔力を紡ぐ……が。
 そうはさせじと赴くのが『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)である。誰も彼もの視線を引き付ける様に。戦いの鼓動を響かせ、彼女は前へ。
 これでいい。少しでも己に敵の攻勢が集中すれば……
「ご一緒させていただき光栄だ、ゲルツ殿。
 私もそこの四天王とやらに用があってな。共に戦わせてもらおう」
「ブレンダか。頼もしい限りだ――ああ。ならば前は任せたぞ!」
 他が楽になるのだから、と。後方にて援護の銃撃を放つゲルツへと声を掛けるものだ。
 ダルギーズにしろセァハにしろ圧を掛けていく。そしてその間に特務派軍人への説得を行うのがイレギュラーズ達の基本方針だ……となれば後は空舞う魔梟、チュレイサ共をどうするか、であり。
「こんな部屋まであるなんて、なんだか不思議な場所ね……
 元々は一体どんな文明が築かれてたのかしら?
 まぁ、やる事は変わらないわね。向かってくるなら、敵を全部ぶっ倒すわよ!」
「全く。なんという数でしょうか……その上、ほとんど飛行しているなど難しい状況です」
 しかし成さねばなりませんね――と。『狐です』長月・イナリ(p3p008096)に続いてチュレイサへと立ち回る『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は呟くものだ。チュレイサ達は天よりこちらへと撃を成してくる……
 超音波の振動が大気を揺らし、身へと到達すれば内部より痛みも走るものだ。
 ――故にこそ機を見据える。
 イナリは自らに施す加護と共に万全へと至れば、神渡りの秘儀を行使せん。
 それは空間を超越するかの如き瞬きの移動。
 共に成すは小刀の一閃だ――さすればチュレイサの身が揺らぎ、直後にはオリーブの視線が逃さず捉えて――幻想すら穿ちうる一手を紡ごう。
 確実にして絶大なる一撃を、此処に。
 一体一体を確実にすり減らさんとし。
『援護シマス。皆サマ、ドウカ、ゴ武運ヲ』
 更に『空の守護者』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)に懐くゴーレムの『アレフゼロ』もまた、その動きを支援する様に立ち回るものだ。チュレイサ達の攻撃あらば、その身を駆使して壁となり。熱閃を投じる機があらば敵を薙ぐ様に――
 さすれば。
「……職務に忠実なのは結構ですが、パトリック大佐に肩入れしても良いことはありませんよ? そして挑んでくるのであれば容赦は致しません。かの如き一時が紡がれるのは、何も彼らの様な魔に属する者達ばかりとは限らぬのですから……」
 一度だけ、特務派軍人の方へと視線を滑らせたのは『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)だ。彼女もまたチュレイサへと向かいて……隙ありし者らを、はたき落とすが如く薙ぎ払う。
 イレギュラーズらの攻勢に次ぐ攻勢こそ戦況を手に取らんとする意志の表れ。
 今は、特務派軍人にはまだ左程その『圧』は掛かってこそいないが……

 ――それでも尚に『其方』側に付くのならば、夢々忘れなきように。

 沙月の。薄く開かれた視線より。
 イレギュラーズの『意図』は雄弁に伝わってくるものであった。


 激突。激しく鳴り響く衝撃の音は、それこそが激戦を物語るか。
 四天王を名乗るダルギーズとセァハを中心に抵抗を続ける魔王城勢力。
 彼らを抑えつつ特務派軍人の説得を試みんとするイレギュラーズ達――
 どちらの側に戦闘の天秤が傾くか今はまだ分からない。しかし、どちらの側も全霊を尽くしているのだけは確かだ……周囲をキューブに満たされたこの空間、時折床には罠らしき神秘なる場もある、が。
「そもそも踏まなければいいだけの話よね。貴方達みたいに!」
 撃を紡ぐイナリの言う通り『踏まなければ』何も問題はないのである。
 実際、彼女は先程から常に飛行を続けている。優れた三感をもってして周囲の様子を常に確認しつつ……そしてチュレイサらの飛翔能力を奪うべく翼を狙いてその身を地へ堕とさんと狙うのだ。
「さぁ。いつまでも飛ぶのは自分達だけの専売特許だとは思わない事ね……!」
「ギィィ……ッ!!」
 迸る痛みに苦悶の表情を浮かばせるチュレイサ。
 時として、上手く彼らをトラップの床に叩き落す事が出来れば、更なる負を撒き散らす事も出来ようか――そして彼女以外にも、ミルヴィもまた低空飛行を繰り返し地を踏まず、武器商人やジンに関しては自らが宿す加護によって実質無効化しているか――
「如何なる罠も、効かねば意味がない。
 これ以上後手に回る訳にもいかないのでな――些か派手に行かせてもらおうか」
 むしろジンは積極的に罠がありし床を踏んでいく程だ。
 ダーツはともかく、他の灼熱や凍結に関しては発動させて『此処に在るぞ』と味方に示す為に。それに多少の傷は何一つ問題ない。彼の行わんとする特殊な呼吸法が――自らの身を癒さんと、気を循環せしめるのだから。
 只管に耐える。そしてそれだけの力が彼にも在ればこそ、その身は正に鉄壁の如く。
「抵抗するか。愚者めら……実に滑稽。この魔王城で我らに勝てるとでも?」
「傲岸不遜だな、四天王。斯様な言葉は――実際に勝敗の趨勢を掴んでから行うがいい」
 であればセァハがその陣形を崩さんと強大なる神秘を振るうものである。
 ソレはまるで大いなる渦の如く。
 収束させた暗黒なる瘴気がイレギュラーズへと襲い掛かろうか。
 直後。天より降り注ぐ奔流を、しかし――ブレンダは恐れない。
 当たらなければどうと言う事はあるまいと。ゲルツの射撃援護の勢いと共に、踏み込むものだ。速度の儘に振るう斬撃はセァハの撃が紡がれるよりも神速に早く……あぁこの調子足れば、むしろ皆が来るまでに片付けてしまおうか――!
「ゲルツ殿、今暫く頼むぞ! コイツは……私が必ず押さえ続けてみせる!」
「構わん任せろ――! だが奴らめ存外に侮れん。直撃はしないようにな!」
 故にゲルツと共に攻勢を強めるものだ。
 ブレンダの目的はあくまでも特務派軍人の説得が済むまでの引き付けではあるが。しかし消極的な攻めを行おうものであればセァハも感じ取り突破や、他の者を狙ったりする動きなどを見せるやもしれぬ……
 故に彼女は抑えつつも全力である。
 そして四天王の片割れであるダルギーズ――の方でも。
「伝説の勇者王と争ったとされる魔王四天王の剣士……私の件がどれだけ通じるか……
 ……いえ。例え如何なる存在であろうが、全霊を尽くすのみですね……!」
 ドラマとマリアが抑え続けていた。
 ダルギーズの剣は冴え渡っている。その剛剣、迂闊に受ければ弾き飛ばされるが如く……しかし剛ばかりでなく、その剣筋の一端には隙を見せれば針の穴を突くかの如き技量も垣間見えるものだ。
 ――だが。ドラマが何を臆そうか。
 蒼剣の弟子たる称号を宿す者として。この程度の相手に!
「四天王ダルギーズ……お覚悟ッ!」
「むぅ! 退かず、逃げず、向かってくるとは……その意気や良し!」
 ドラマは往く。敵の剣筋を見切り流れを見据えて――それごと絶たんとするかの如く。
 彼女が既に纏っている戦の加護もあらば、彼女の動きは更に洗練されてもいるのだ。優れた剣士たるダルギーズにも押し負けず、蒼き剣が戦場に煌めく。さすれば同時、もう一つの蒼き存在は――地に迸る雷光の如く瞬くものだ。
「君達にも君達なりの事情があるかもしれないが、私は容赦しないよッ――!
 立ち塞がるのならば打ち砕いてでも進ませてもらう!」
 マリアである。激しき猛攻がダルギーズを押し返さんばかりに。
 上手く行けば、ダルギーズにもダーツなりの床を踏ませる事も叶うだろうか――
 超至近距離における刹那の攻防。
 剣と蹴り。幾重に衝突せし数撃数合は、はたしてどちらが先に膝をつく事か。
「――そこの君達! 誇りある鉄帝軍人としておかしいとは思わないのか!?
 パトリック大佐の行動に、大義と正当性が――本当にあると思っているのかい!?」
 更にマリアは言も振るう。特務派軍人達へと、だ。
 ――私は異世界人だ。君達と異なり、鉄帝を故郷としている訳ではない。
 だが鉄帝国を心から愛している!
「そして私ほど鉄帝に尽くした異世界人はいないと自負している――! そんな私を、君達には信じてほしい! 自分達の……目の前をしっかりと見るんだ! 今我々が君達と対立する意味はない! 目を覚ませ! 邪にして我欲に塗れた企みに手を貸してはいけない!」
「ヒヒ。然り然り――もう分かるだろう? 鉄帝国でさぞ有名な、あの『雷光殲姫』のマリア・レイシスもいる。手も足も出なくても文句は言われないし、仮に拘束されてもこの事情であればキミたちが強く責められることもなかろう。どうだい? 味方になれなかったとしても――拳を引く事ぐらいは出来るんじゃあないかい?」
 更に続く形で武器商人も、チュレイサや特務派軍人達へと言の葉を交える。
 鉄帝国の中でも最たる名声を抱くマリアの名は――鉄帝国軍人達の心に轟くものだ。彼女の名声を利用し、説得を続けつつ……しかし武器商人は攻撃の一手を紡ぐ事も忘れてはおらぬ。彼らや、チュレイサの撃が余計な方向へ及ばぬ様に引き付けんとするのだ。
 それは破滅の呼び声。武器商人を斃さねば危険だと心に誘う一手と共に。
「もうちょっと率直に言うとね、キミたちの大佐には嫌疑ありさ。キミ達も本音では何かおかしいと思っているんだろう? 最も従うべきは国か大佐か、君達は指揮系統よりも心の儘に行動した方がいいんじゃないかい?」
 然らば巻き込まれたチュレイサ達は武器商人へと攻撃を自然に集め――そして軍人達は、イレギュラーズを攻撃しなければならぬという心の戸惑いがより強くなるものであり。
「仮に。もしもパトリック大佐の側に義があろうとも、このような場所で命を散らす事はないでしょう。貴方達は、故郷たる鉄帝国で地に足を付けてこそ、命を懸ける意があるのではないですか――?
 こちらとしても、味方であった方達と殺し合いなどしたくはありませんので」
「ぐっ――それは……」
 更に沙月もまた、敵を薙ぎ払う様にしながら。
 軍人らの心へと問いかけるものだ。もしもこの戦いに疑問を抱いているのであれば降伏してほしい、と。今ならばまだ間に合う。その戸惑いこそ貴方達が心の奥底に抱いている……『本心』の欠片なのではないですか?
 彼女の動きはまるで舞踊の如く。惚れ惚れとするが如きの軽やかさと共に在りながら。
「今一度、自らに問うては如何でしょうか。
 何が真であるべきか――皆さんには、自らで選びうる意志と魂が在る筈です」
 此処に鏡はなけれども。
 それでも己を見据える事は出来る筈だと――沙月は紡ぐ。
 どうか、良き選択を。
 どうか、己の心に恥じぬ選択をと……願うものだ。
 今ならば――悪い様にせぬと、約束も出来るものだから。
「そもそも――三つ巴状態になるならまだわかりますが、そこの魔物達と共にこちらに敵対するというのは少し筋が通らないのでは? パトリック大佐が魔物の軍勢……魔王とやらと組んでいるのも、おかしい事でしょう」
 次いでドラマも純粋な疑問を呈するものである。
 魔王の軍勢がいる。四天王が何故か沢山いる。それは良い。
 だが本来鉄帝国の軍人である大佐がソレと組むなど――明らかにおかしいではないか。
 ……鉄帝の軍部に関する事情なんてさっぱり分かりませんが。きな臭い事だけは、ドラマにもハッキリと感じ取れる程に。あぁ全く。このような状況下で動かねばならないゲルツ君の苦労も窺えるものだ――
「それとも魔王と組むのが鉄帝国の道理である、と?
 であるのならば、貴方達の行動も正しいのかもしれませんが――どうなのでしょうか?」
「ぐ、ぐぐ……それは……」
「まだ決めかねてるのかい!? なんだいなんだい、ホントにガッカリだよ……鉄帝の軍人とは何度かやり合ったけど骨のある連中も多かったからサ。なのにさっきからグダグダと『戦いたくありませーん』みたいな雰囲気出しやがって……
 こーんな冴えない戦いぶりに口を開けば命令されたから……じゃねーんだよ!」
 そして。駄目押しとばかりにミルヴィが一喝するものだ。
 百歩譲ってイレギュラーズと戦う事を自ら選ぶのならば、それでもいいのだ――
 自分の道を、自信をもって歩むのならば相容れなくても理解はしよう。
 だが。自分の心にすら従えず、ひたすら気圧される情けない性根だけは認められない。

 ――鉄帝の男なら正しかろうが間違ってようが、自分が決めたからには真直ぐやんな!

「アンタ達――タマぁついてんのかい!? 男らしい所をちったぁ見せなさいよ!」
「む、むぅ……! くっ――確かに、大佐への義理立てと言えど、これ以上は……!」
 さすれば、特務派軍人達の拳の勢いが……消失した。
 元よりあまり強い意志は感じられなかったが、しかし度重なる説得の言に戦意を消失したのであろう。ミルヴィや武器商人の声色は説得に優れていたのか、彼らの耳に特に澄み渡る様に届いていた……
 その上で名高きマリアの奮闘と言も重なれば、最早戦いを続ける意味を見出せぬ。
 未だ、大佐に弓を引くべきかは悩む所があるが故に。
 説得されたからとイレギュラーズ側に即転じる訳ではない、が。
 少なくとも――このまま英雄らと交戦を続けるのが正しいとは、思わなかったのである。
「何たる脆弱。やはり人など信に値せぬ愚か者ばかりか」
「なんの。元よりこの地を守護するは我らの役目であれば――ッ!」
「――させませんよ。このまま押し潰させてもらいましょう」
 だが、当然として魔に属する四天王は止まらぬ。
 人が使えぬならば我らだけで戦況を抉じ開けんとばかりに。
 更なる力を振るわんとして――故にオリーブは、その意識の一瞬を突くものだ。
 特にセァハには注意を常に向けていた。
 奴めの放つ魔力は、対応する味方が崩されるやもしれぬと。
 故に敵の集中を乱す様に。走り込んで貫く一閃があらば。
「過去の残影に手間取っている暇はないのです。散って頂きましょうか」
 彼は跳躍する。あと一歩の――勝利の為に。


 特務派軍人の説得には成功した。が、しかし。
 元々戸惑いが強く、イレギュラーズ達への攻撃にも躊躇いが見えていた彼らからの攻勢は左程強くないものであった。故に全体的な勢いはまだ維持されている――軍人側に戦力を割く必要が無くなったが故に無意味ではなく、むしろ大きな意味はあるものの。
「さて。正念場はこれより……と言った所でしょうか」
 まだ趨勢は掴めぬと沙月は思考するものだ。
 その歩みを淀ませる事なく。彼女は邪魔立てするチュレイサを叩き伏せ。
 更に狙うのは四天王が一人――セァハである。
 奴めの周囲には凶悪なりし負の気配が渦巻いている。たった一歩、たった一息でも道を過てば、その悪意に呑み込まれようか……しかし。沙月はまるで演舞の一環であるが如く、その激流へと身を滑らせるものだ。
「死をも恐れぬとは。蛮勇なる言の葉を知らぬと見える」
「生死の境は薄氷程度の違いしかなく。恐れこそが、その境目を渡らせる船賃となるのです」
 淀めば捕まる。躊躇いこそが川辺を渡らせてしまうのであれば。
 彼女はあえてこそ死地に飛び込む者である――そして紡ぐは奥の手が一閃。
 確実に殺傷せしめる勢いの掌底、手刀、貫手の三華が舞い散れ、ば。
「おぉぉ……!! 矮小なる人間如きが、生意気なッ!」
「怒り狂うか? ならばそれがお前の器の全てだ――! 引導を渡してくれよう!」
「リーヌシュカの技をヒントに改良したオーラの刃の嵐……受けてみな!」
 更に続けてブレンダとミルヴィが畳みかけるものだ。
 ブレンダは初期よりセァハの抑えに務めていた。一人では本来中々厳しい相手であるが――それでも事を成せたのは彼女の躱す技量が遥かに優れていたが故か。奴めの放つ魔力の奔流に抗い、飲み込まれずに立ち続け。
 そうして成す一撃は確実にセァハの身を削っていたのである。
 更に。軍人らの説得を終えればこそミルヴィもセァハへと続く。
 途上にてチュレイサらの音波攻撃による邪魔があるが――纏めて捻じ伏せながら。剣気で創りし刃が飛鳥の如く飛び舞えばこそ、道を抉じ開けるものだ。止まらず朽ちず、そして紡ぐは……剣の嵐と共に。
「よし、一旦交代しよっか! ここは負担半分こするとこだよ!」
「分かったッ、しばし頼むぞ!」
 そしてそのままミルヴィはブレンダのカバーに入るものである。ブレンダは回避の技量に優れている――とはいえ、セァハを実質一人で抑えていれば無傷とはいかぬ。故にこそミルヴィがカバーに入りて負担を減らすのだ。
 攻守を転じて、連携と共に四天王を追い詰めんとする。
 然らば、セァハも数多の術を行使して抵抗を見せるも。
 奴に刻まれる傷の速度の方が――早いものだ。
 イレギュラーズ達も決して無傷にして楽に接近出来ている訳ではないが、それでも。
「おぉぉ魔王様! 今一時の力を我に――!」
「遂にこの場にいない者に懇願を始めるとは。
 いよいよ追い詰められた証左ですね……崩させてもらいましょう」
 直後。セァハは最後の力を振り絞るかのように魔力をイレギュラーズ達へと叩きつける。
 数多の負を宿した一撃は範囲を捻じ伏せ、時に壁すら貫くが如き一撃を。
 強力にして強靭。流石『四天王』の名を冠するだけはあるかと……
 マトモに受ければイレギュラーズもタダでは済まぬ――が。其処へと至るのがオリーブだ。
 彼は只管に機を見据え、セァハを打ち崩す一閃の時を待つ。
 ――例え奴めの攻撃で己に負が降り注ごうと。
 打ち消す斬撃を、此処に。
「おのれちょこまかと――鼠がッ!」
「口調も崩れ始めてきましたか。余裕の無さが表れていますね……その鼠に」
 オリーブは決して見逃さぬ。セァハの隙を。攻撃に移り行く刹那の狭間を。
 当然、斯様な動きを行えば敵は苛立ち、オリーブに向けられる攻撃の密度が高まるが……ソレで此方に矛先が映ったのなら重畳――そうでなくても敵を削れれば十分、と。彼は踏みとどまり続けるものだ。
「こう純粋な人型じゃないと急所が分かり辛いわね……でもこことか、どうかしらね!
 生物の一環であるなら重要器官は多少、似たようなモノでしょう!!」
 そして。セァハに対する圧が強まれば奴の警戒にも段々だと隙が出来始め。
 そこを突いたのが――イナリだ。狙うは首筋や眼球、脳天などの急所と思わしき箇所。
 純粋な人間体ではないが、しかし人と同じように思考を重ね、言を紡ぐ能があるのならば。
 必ずや苦手とする場所はある筈だと。
 小刀を突き立て、更に抉る様に爆裂術式を捻じ込む。
「吹き飛びなさい――! どこまでもね!」
 ――瞬間。炸裂。
 セァハの頭部で激しき衝撃が鳴り響きて、同時に壁へとまで弾かれる。
 イナリの、神が構築した式を身に纏いて紡いだ超速の一撃である。
 さすればその地にて更にダーツの罠も起動し、奴めの身体を穿てば――
「ぐぉぉぉぉ――! おのれ、虫けらに等しき人間如きにッ――!!」
「驕り昂るか、四天王とやら。此処が……其方の終着点だと知れ」
「四天王――その名を滅する誉を頂くぞ! セァハ、討ち取ったりッ!」
 怒り狂うセァハ。今ぞ撃を紡いだイナリはどこだと視線巡らせ。
 しかしその目が彼女を捉える前に――ジンとブレンダが攻めたてた。
 刀の一閃。荒れ狂う瀑布を纏った一撃は邪悪を討ち滅ぼそう。
 更にはブレンダの剣撃が両断する様にセァハへと紡がれれば。
 ――セァハの身が崩れる。
 最後の最後まで人を侮蔑し見下し、魔に属する者として戦いながら……さすれば。

「ぬうッ! 同胞たるセァハをよくも……! このダルギーズ、容赦せん!!」
「おやおや。仲間に対し思いが強いねぇ。
 だけど、そう簡単に自由にはさせてやれないねぇ――
 湖の剣士らと今少し戯れようじゃないか」

 後は。一部のチュレイサと猛り狂うダルギーズのみである。
 武器商人が抑えに掛かる。自らに復讐の加護を齎しながら。
 彼より受ける傷を力に変え――嗤う狂気を浴びせてくれようか。
 特務派の説得から攻勢へとあちこち転ずる武器商人。忙しなきが、踏みとどまるべき局面は正に此処だと武器商人も分かっていれば……足を止めずに立ち回るものだ。
「ぉお……! 四天王だかなんだか知らないけれど、倒れてもらおうか!!」
「貴方達が如何なる存在だろうが関係ありません。押し通らせてもらいますよ――!」
 次いでマリアとドラマも、ダルギーズへと死力を尽くすものだ。
 マリアの連撃に至る程の攻勢とドラマの斬撃は正に嵐の如く。
 両者共に、敵の気力を削り殺す技量に優れし使い手。
 ある意味で体力が削れてからが本番のダルギーズとは相性が良かったと言える――が。
 あと一歩攻めきれない。
 ダルギーズの剣の冴が増しているのも理由の一つではあるが、それ以上にセァハとの戦いまでにおけるイレギュラーズ側全体の疲弊も激しかったのである。後もう少しだけセァハを倒すのが早ければ状況にはまだもう少し余裕があったかもしれないが。
 ゲルツの射撃が降り注ぎ。アレフゼロがイレギュラーズを庇い立てる事によって今はまだ立てているが。このままでは一人ずつ立てなくなる方が先やもしれぬと、ゲルツが推察するものだ。当のゲルツやアレフゼロにしても疲弊の跡が見えていて……
「くっ、このままではまずいな……! どうにか退路があれば良いのだが――」
『ガガ……アチラヲ。敵勢力ガ至ッタ道ヲ使ウノハ、ドウデショウカ?』
「……ふむ。なるほど、我々が通った道ではなく、彼方側の利用ですか」
 故に。どうにかして態勢を立て直せぬかと思考して。
 刹那。アレフゼロが導き出したのは……敵が使っていた道の方であった。己らが使って来た道は封鎖されてしまったが、逆に奥に進む事によって活路が開けるのではないかと。沙月も見据えれば、一案として思考を巡らせるものである――
 幸いにしてセァハは倒されチュレイサの数も減っている。
 戦いの初め頃はまだしも、今のこの状況であれば退却も能うのではないかと。
「でもさ――出来るかい!? ダルギーズの奴、逃がしてくれそうにはないよ!」
「――ならば我々に任せろイレギュラーズ!」
 勿論……ミルヴィの言う通り、敵がそう簡単に見逃してくれたりはしないだろう。
 追撃があらばより危険になるやもしれぬ――
 だから、と。名乗り上げたのは、先程説得を果たした特務派軍人達であった。
 彼らがダルギーズを抑えんとする。先と異なり……明確な戦う意志をもってして。
「貴殿らを抑える役目は果たしたのだ……大佐への義理立ては済んだ。
 後は我々も、我々の意志で行動する――行け!」
「くっ――君達! まさか死ぬ気じゃあないだろうね!!」
「生憎と。死ぬならば故郷が良い!」
 ダルギーズの一閃。蹴りを持ってして辛うじて弾くマリアが、軍人達へと言を。
 ――あぁ良い目はしている。誇りある軍人としての瞳だと、知ればこそ。
 往くべきか。彼らの想いを、無駄にせぬ為にも。
「撤退するぞ! 急げ、援護する――!」
『ガガ……皆様ドウゾ此方ヘ。私ノ後ロニ』
「くぅ……! 決してこのままでは終わらせませんからね……!!」
 故に迅速に行動を開始するものだ。
 ゲルツが銃撃放ち、アレフゼロが前に立ちて熱閃を――ダルギーズへと。
 その刹那にドラマが魔力によって空気の振動を叩き起こし、更に注意を引く。
 撤退の為の一助が故に。最後の力を振り絞りて。
「……やむを得ん。一端撤退するより他ない、な。先に行ってくれ」
「回り込まれる前に行くわよ――急いで!」
 更にジンも退却の動きに入り始める。
 状況は不明瞭。はたして大佐の狙いはどこにあり、どこまで勢力下においているか……これ以上後手に回りたくはないとジンは思考していたものだが、しかし。この場においては撤退こそが最善かと。生きてさえいれば――次なる機会はあるのだから。
 故に周囲の気を取り込むかの如き呼吸法によって体力を維持するものだ。周囲の味方の状況を見据えつつ。更にイナリもまた、周囲の警戒を成しつつ、包囲されたりせぬ様に移動を試みるものであり。
(――ホントに死ぬんじゃあないよ。その為に停戦を呼び掛けた訳じゃあないからねぇ)
 そして最後に。高らかなる不死性を宿す武器商人が、説得をした軍人へと。
 ハイテレパスによる無言の激励を送るものだ。
 それは味方と認識したが故にこそ。
 さすれば。軍人らも無言でイレギュラーズらへと返事を返すものだ。
 親指を立てて。無事を祈るとばかりに――示しながら。

成否

失敗

MVP

武器商人(p3p001107)
闇之雲

状態異常

ドラマ・ゲツク(p3p000172)[重傷]
蒼剣の弟子
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)[重傷]
キミと、手を繋ぐ
武器商人(p3p001107)[重傷]
闇之雲
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)[重傷]
剣閃飛鳥
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)[重傷]
薄明を見る者

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ。
 残念ながら一歩目的には達しきれませんでしたが、最後に特務派軍人の心に迷いが無かったのは皆さんの説得のおかげだった事でしょう。
 ありがとうございました。

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