PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Stahl Eroberung>eclissi lunare

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「待って待って待って!! 何あれ!?」
「テンション上がりすぎじゃない?」
 指差して恐れ戦き、振り向いて『亜竜姫』珱・琉珂 (p3n000246)はびしりと眼前のエピトゥシ城を指差した。
 亜竜集落フリアノンの竜骨を居住区域にしている亜竜種とは思えぬ怯えを一心に表した琉珂に『煉獄の剣』朱華(p3p010458)は首を捻った。
 彼女の隣には『R・F・V』(レッド・フレイム・ヴォルケイノ)が鎮座している。
「確かに、陰鬱とした雰囲気を感じさせます。……どの様な場所なのでしょう」
 とみかさんに付き添われやってきた『舞い降りる六花』風花 雪莉(p3p010449)はぱちくりと瞬いた。

 ――時刻は少し遡る。
 アーカーシュ全域に調査の手が入ったと鉄帝国軍は報告した。島内で確保したゴーレムの修繕も完了し、命名者によく懐いているこの状況で次のステップとなる作戦<Stahl Eroberung>が発令されたのだ。
 目下最大の目標は魔王イルドゼギアによる後詰めの城『エピトゥシ城』の攻略。
 そして、もう一つが強力な防衛機構を持つ遺跡深部『ショコラ・ドングリス遺跡』の探索である。
「ってなわけで来たけど。シュカニウム鉱石は持ってきた?」
「琉珂は朱華に何を求めてるの? 何をするの?」
「いざとなれば魔王っぽいやつに投げれば良いかと思って……」
「混乱していらっしゃいますか?」
 雪莉と朱華にサポートされながらやってきた琉珂は混乱していた。とげとげしい黒曜石の様な不思議な素材で出来たエピトゥシ城。
 罠も多く魔物も存在するというこの場所では古代獣を製造するプラントも存在して居るらしい。
 それ以上に、少しの問題が鉄帝国軍のパトリック・アネル大佐が独断行動をし、事実的に敵対しているという情報だ。
「シュカニウム鉱石をパトリック大佐に投げちゃだめなのかしら?」
「怒られると思うけど、琉珂はそんなに石を投げたいの?」
「……混乱していらっしゃいますか?」
 自体が混迷したのは間違いなくパトリックが一枚噛みである。
 軍務派と特務派で派閥闘争が行われる切っ掛けを作ったのだ。男の現状はさておいても、彼等よりも先にエピトゥシ城を制覇する必要がある。
「だって!」
 琉珂は叫んだ。
「だって、何があるか分からなくってとっても怖いじゃない!」
 ――紛うことなき本音を。


 折角なら未知に溢れた冒険がしたいという亜竜姫を連れて遣ってきたのはエピトゥシ城。
 帝国軍の事前調査で古代獣の製造プラントが存在するとされたこの場所には様々な罠が存在して居るらしい。
 取りあえず、石ころを鞄一杯に詰め込んできた琉珂は「えいや」と石を投げてみて――シュンと音を立てて眼前を通り過ぎて行く弓矢に「ぎえ」と女子らしからぬ声を上げた。
「罠だらけすぎない!?」
 落とし穴にダートトラップ。それから熱された鉄板のような床だとか寒すぎる床だとか。
 火炎の気配は恐ろしくない琉珂ではあるが、つるんと滑って怪我を負う凍結した床はちょっぴり怖い。
「この罠を通り抜けて、取りあえず古代獣の製造プラント? なんか作られてぷかぷかしてる硝子の柱を壊せば良いのよね。
 うう……ちょっとずつ、ちょっとずつ……でいいから進んで、少しでも成果を上げて褒めて貰いましょうよ……」
 そろそろと進む琉珂は何者かの気配を感じて顔を上げた。

「よくぞ来たわね!」
 誰だよと言いたくなった琉珂は翼を持った粘土のような外見をした奇妙な生き物をマジマジと見詰めた。
「我が名は琉珂である!」
「絶対嘘、琉珂はそんな話し方しない! こっちが琉珂!!!」
 慌てて自分を指差す亜竜姫。粘土は堂々と己を指差している。余りに琉珂が騒ぎすぎたのか上位古代獣(アークエルディア)は琉珂を歪にもしているかのようであった。
 助けてと言いたげな視線をイレギュラーズに向ける琉珂は「あの人は何!?」と困惑しながら武器である裁ち鋏を構える。
 粘土のようなその存在はまだ4体程度居るだろうか。その構えなどは正しくイレギュラーズと同等だ。
「くくく――驚いたか!
 我輩は四天王が一柱、獣王ル=アディンである。
 怯え、竦めよ、さすれば血肉も臓腑も美味くなる。喰らうてくれよう、その魂の一欠片さえ!」
「そして我輩も四天王が一柱、獣王ル=アディンである。
 怯え、竦めよ、さすれば血肉も臓腑も美味くなる。喰らうてくれよう、その魂の一欠片さえ!」
 何故かその背後から出て来たのは四天王『獣王』ル=アディンを名乗っている二体の獣であった。
 ……どう見ても同じ貌が二体も出て来たのだ。琉珂は困惑して「あれってなに」と何度も指差す。
「「我輩を越えて行けるか!」」
 ええいままよ。
 良く分からないが、あれらを却けて古代獣を製造するプラント破壊を行わねば――!
 どうやらあの『理不尽にも程がある』謎の生き物たちは逃がしてくれるつもりはない!

GMコメント

夏あかねです。大暴走琉珂ちゃんと進むアーカーシュ。たすけてー!

●目的
 ・四天王『獣王』ル=アディン・クローン2体を撃破する
 ・粘土さん(ネピリム)を全部撃破すること

●ネピリム 5体
 琉珂は「意味分からない怖い粘土さん」と呼んでいます。飛行します。
 琉珂の攻撃パターンを有した突撃近接炎タイプ(笑)なネピリムと
 依頼参加者←(左)側(ID順で1、3、5、7番目の方)の攻撃パターンを歪にコピーしたネピリムが存在します。
 大騒ぎしたので琉珂の事は歪にコピーして謎に自我を持ったように「我が名は琉珂である!」「控えろー!」と叫んできます。
 PCをコピーした個体はまだそこまで暴走していませんが、徐々に歪なコピーを完成させそうな気配もあります。
 此処で倒さなくっちゃ……。

●四天王『獣王』ル=アディン・クローン 2体
 ステータスはとても高め。特にEXFが極めて高いです。
 殺傷力の高い物理連続攻撃の他、火炎系BSの乗った神秘範囲魔術も行使します。再生を持ち、飛行しています……が、2匹居ます。
 スペックは勇者アイオンが斃したものよりも劣っており、真似て作られただけの存在のようです。
 極めて高い破壊衝動を有しています。敵を倒すことをとても優先します。
 因みに何方がイレギュラーズに止めを刺すかで喧嘩することもあるそうです。

●フィールドデータ『エピトゥス城内部』
 熱された床(火炎BS)や凍結した床(凍結BS)を付与する罠や、踏むと弓を発射したり落とし穴の罠が点在している少し広めのフロアです。
 天井は高くぎりぎり3m程度なら飛行が可能。それ以上は天井に頭をぶつけます。
 ル=アディン・クローンの背後には沢山の培養用の柱が見えいます。古代獣が製造されているようです。壊さなきゃ……。
 ネピリム達は其れ等を護るように動き回り、ル=アディン・クローンは「「我輩は此処に居る!!」」と存在するようです。

●同行NPC 珱・琉珂 (p3n000246)
 お転婆亜竜ガール。覇竜領域フリアノンの里長です。
 とっても混乱してとっても騒いでます。罠にはよく掛かる方です。
 裁ち鋏を駆使した近接攻撃、炎を利用した戦いが得意です。また、多少の支援なども可能。
 竜覇(火)、直感には優れており、どちらかと言えば物理攻撃が中心です。小細工するより物理で殴れ!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。たすけてー!

  • <Stahl Eroberung>eclissi lunare完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年07月23日 21時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー
梅・雪華(p3p010448)
梅妻鶴子
風花 雪莉(p3p010449)
ドラネコ保護委員会
煉・朱華(p3p010458)
未来を背負う者
劉・紫琳(p3p010462)
未来を背負う者
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女

サポートNPC一覧(1人)

珱・琉珂(p3n000246)
里長

リプレイ


 ――うわ、また出て来たわ!

 そう叫んだ『煉獄の剣』朱華(p3p010458)はシュカニウム鉱石を構えたままの『亜竜姫』珱・琉珂 (p3n000246)と目の前の『意味分からない怖い粘土さん』に挟まれていた。
「ええと……?」
 少し頭を悩ませたのは『舞い降りる六花』風花 雪莉(p3p010449)。その隣で「姫様だからな」と言いたげな『梅妻鶴子』梅・雪華(p3p010448)が立っている。
「待って下さい。少し状況を整理しますね?」
「ええ。落ち着いた方が良さそうです」
 眼鏡の位置を正した『紫晶銃の司書竜』劉・紫琳(p3p010462)は対物ライフルDominatorを手にしながら頭を悩ませる雪莉に状況整理を促した。
「とみかさんに付き添われてフリアノンの里長さんたちと未知に溢れた冒険という事に思わず心が躍っていました。
 ……ですがその先に待っていたのは獣王を名乗る二体の魔物と、私を含めた皆さんのコピー。
 想像以上の展開です……ある意味期待通りとも言えますけれど。後々の思い出話としては十分ですね。
 ですがそれも無事に帰る事が出来ての事。まずはこの場を切り抜ける事を考えましょう」
「コピー……そうですね、コピー……。琉珂様を真似ているような様子を見るに、こちらをコピーしているようですね。
 ということはあのライフルを持っている……あれ、もしかして私なのでしょうか……? ……おかしな変化をする前にここで仕留めなければ」
「あ、確かに紫琳さんかも!?」
 ライフル持っているものねとシュカニウム鉱石を握る琉珂が頷く。何とも言えない微妙な気持ちになったことは否めない。
「わあ! ブランシュ達のコピーですよ! それに琉珂さんもいるですよ!
 エルフレームシリーズの違法コピーは禁じられていますですよ! それに作るならもうちょっと正確に作って欲しいですよ!」
 ぷうと頬を膨らませた『猛き風』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)は外見まで正しく模倣できていない翼を持った粘土に憤慨していた。
「何で二人いて、何でみんなの姿を模倣してるの? え、何この状況。琉珂ちゃんじゃないけどこっちだって叫びたいよ!」
 どうして、と叫びたくなる『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)に『純白の聖乙女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は「わあ、あれって私?」と指差してにこりと笑う。
「琉珂ちゃんの偽物が出てくるなんて不思議な所だね。お揃いだね、琉珂ちゃん!
 ってそんなこと言ってる場合じゃないよー! なんとかしないと! どうしてー!」
 大騒ぎの女子達の中で『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は穏やかに微笑んだ。
「琉珂さんは本当に元気なお方ですね……と、しかしこの状況は笑ってはいられませんね。
 しかし人をコピーしてしまうだなんて……もし私が対象だったら――?」
 今の姿を其の儘コピーしてくれるのか。それとも内なる魔女の姿と鳴って現れるのか。そんなことを考えたくはないが調べたい衝動はふつふつと湧き上がる。探求意欲が向いてしまうのは前人未踏と称されるエピトゥシ城なれば仕方がないだろうか。
「……手早く、終わらせましょう」
 元気すぎる琉珂に「石は投げない!」と叫ぶ朱華。混乱の一行を宥めるように雪莉はそっと琉珂の背を撫でる。
「はい琉珂さん、深呼吸して落ち着きましょうね。こういう時焦らず慌てず腰を据えて適切に対応する心持ちが大切です。
 とみかさんも無理はなさらずに。貴方のあのプールを管理する事がお仕事。戦う事ではありませんから」
 とみかさんに後ろで見ていて下さいねと微笑みかける雪莉。琉珂がすう、はあと大きな深呼吸を繰り返し――戦いの幕が切って落とされたのだった。


「アイツが黒光りしてかさかさ動き回る例のアレに思えてくるわね。
 冗談みたいなヤツだけどふざけて相手が出来るような敵でもないし、ホントに厄介」
 頭を抱えた朱華。四天王『獣王』ル=アディン・クローンが堂々と立ち塞がっているのだ。他戦場から漏れ伝えられる声を聞く限りそれは朱華の言う通り無尽蔵に存在して居る。
「それに琉珂が、二人!? って、冗談よ冗談! だからその手に持ってる石ころをこっちに投げようとするのやめてくれるかしらっ!?
 おふざけはここまでにして全力で行くわよ! 要は全員ぶっ飛ばせば全てマルっと解決する話なんだからっ!
 それにしても意味分からない怖い粘土さん……だったかしら? どこまでコピー出来るのか知らないけどスティア達までコピーしてきたのは厄介ね」
「ね、ね、朱華。貴女の琉珂ちゃんをコピーしたことは厄介じゃないの?」
「厄介よ。石握ってるんだもの!」
 揶揄うように笑った朱華は灼炎の剱を一気に引き抜いた。仲間達の行動パターンはある程度は分かって居る。問題は余り戦う事の無い琉珂だけだ。
 それでも最初の一手は決まっているとスティアは魔導書に魔力を奔らせ、天使の羽根を周囲へと舞い散らせる。
「ここを通りたかったらまずは私を倒してからだー! ……あれ、なんか私って悪役っぽいことしてる?」
「「ふむ、面白い」」
 ハモるル=アディン・クローンを前にしてスティアは二体を引き寄せるように氷結の花を魔力で形作り舞い散らせる。躍る終焉の花の気配に顔を上げたが早いか、二体のクローン体の視界にはスティアしか存在して居なかった。
『粘土さん』は仲間に任せ、ル=アディンを引き寄せる。スティアが後退して行く中でアリアはすう、と息を吸い込んだ。長靴を履いた喋る猫、ニョアの持っていた剣の複製品は『剣』と言うよりもナイフに近いか。アリアが標的としたのは雪莉。
「黙って見過ごせるわけにもいかないので、速攻で破壊するですよ」
 全て纏めて全面制圧飽和殲滅に徹するブランシュはR.O.Oで認識した概念武装を権限抽出したメイスを振り上げる。無数の弾丸の雨を走り抜けるアリアは思いの限りに雪莉(らしき粘土さん)をぶん殴った。
「自分だと思うと、何とも言い難い気持ちではありますね」
 ふむ、と雪莉は首を捻る。仲間の立てた作戦は自身の在り方を考えさせる切っ掛けでもあったか。気を惹きを付与し、回復行動を阻害する。それは自身にと手有効打だ。支援役が立っているかどうかは継戦能力に直結する。
 一人でル=アディン・クローンを引き寄せるスティアは心配はいらないだろうが純粋な支援役である自らが戦線維持を心掛けなくてはならないと強く雪莉は認識していた。
(皆が無事で帰らなくてはなりませんから……それにとみかさんだって私が倒れそうになると無理をしそうです)
 雪莉の前に立っていたのはマリエッタ。飛びながらの戦闘は困難を極める。ネピリムが飛行して罠を回避するというならば琉珂に石ころを投げて貰って罠を作動させておいた報が安心だろうか。
「朱華さん支援します。文字通りめぐり続ける血のように……ガス欠なんて起こさせませんよ?」
「ふふ、上等!」
 マリエッタの片腕には清らかなる聖印が。そうしてもう一方には禍々しい血印が。その何方にも魔術が踊り出し活性化しながらマリエッタの魔力を向上させ続ける。エメラルドの瞳に僅かに差し込むヘリオドール。その気配を忍ばせたマリエッタの支援を受けて、朱華は地を蹴った。
「琉珂。アンタにはいつだって朱華達が付いてる。怖いって言うなら傍で支えてあげる。だから、戦えるわよね?」
「上等!」
 朱華を真似るように琉珂は大きな裁ち鋏を構えた。仲間達が傍に居るだけで心強い。雪莉を、ブランシュを、そして紫琳を倒した後に琉珂のネピリムを倒すのだ――因みに、スティアのネピリムは固そうだという理由で後回しにされている。
「雪莉さんとブランシュさんをいかに早く落とせるかが戦場の胆ですね。私とルカ様は後ほど……。落ち着いて狙いましょう」
 すう、と息を吸った紫琳は静かに標的を定める。致命的な一撃は後方より密やかに迫り来る様に叩きつけられるのだ。


「そういえば気になったんだけどどっちの方が強いのかな? 同じ姿だから同じ強さだったりするのかな?
 それとも二人で一人ってパターン? どうせ倒されるなら強い方に倒された方が嬉しいなーって思って」
 にんまりと微笑んだスティアは口ではそう言っては居るが2対1は中々骨が折れる。仲間が合流するまでの時間稼ぎに何とか同士討ちさせられないだろうかと考えていた。ル=アディン・クローンの動きが止まる。
「ふむ、考えたことがなかったな。我輩よ」
「ああ、我輩よ。我輩は四天王が一柱、獣王ル=アディンであるが、貴様も強いのか?」
 いきなり向き合って討論を始めたル=アディンにスティアは今のうちだと言わんばかりにぱちりとマリエッタにウィンクをした。
 頷くマリエッタが作り出す苦痛のキューブが雪莉ネピリムを包み込む。飛び上がらんと翼を広げた彼女を逃すまいと接近しアリアが放ったのは零距離攻撃。刃の先に乗せられた魔力が破裂しばちんと大きな音を立てた。
 消滅するように粘土が崩れ去って行く。土塊のようなそれを一瞥し、後退するアリアと立ち替わるようにブランシュは己のコピーネピリムへと向き直った。
「なんでこんなことするですよ! ちゃんと作成許可書は提出したですよ?
 何でも世の中には通さなきゃいけない機関と言う物があるですよ。出るとこで出てないとブランシュ達も容赦なく違法製造を破壊しなくちゃいけないですよ!」
 ぷうと頬を膨らませて叩き込むのは雷鳴の神の名をほしいままにした雷撃。メイスを勢い良く振り下ろすブランシュは叱り付けるような口調ではあったが、実のところは嬉しかった。エルフレームシリーズが増えると言うことは自身の姉妹が増えることと同義だ。秘宝種である彼女は生殖による一族繁栄があるわけではない。だが、此れは違う。違うのだ。
「でも基本理念を理解しないで構築した物に魂は宿らないんですよ。あなた達だって、同じでしょう?
 コピーされたものとはいえ、その基本理念がしっかりしているのだから、こうして四天王として出張れる。
 だから、作るならちゃんとして欲しかったですよ……」
 こんな何方が強いかで討論会を始めてしまう四天王達のような――そう言いたげなブランシュに朱華は「確かにそうね」と呟いた。
「姿を似せたって、攻撃までが皆そのものじゃないもの。朱華達の動きを把握していない、連携がとれるわけじゃない。
 心が宿ってない相手に朱華達は負けやしないわ! 琉珂、石投げてやりなさい! ほら、ドンドン投げてプラントもぶっ壊すわよ!」
「えいえいおー! 紫琳さん、雪莉さん、私のパーフェクト投擲フォーム見ていてね!」
 誇らしげな里長に紫琳は「ええ。その隙にネピリムはしっかりと倒しておきましょう」と微笑んだ。相変わらず元気なフリアノンの里長を微笑ましそうに眺めるマリエッタは「どうにも歪……というのは此処に出るのですね」と頷いた。
(完成度は高くない。それは分かりきっています。付け入る隙だって幾らだって――ああ、けれど少しも戸惑わない自分が嫌になりますよ……)
 流石に粘土人形と言えども仲間を模倣していると言われたとされている。そんな相手に血で象った変幻自在の刃を放つのだ。何とも自己嫌悪が心によぎる――が。
「マリエッタさん、どう!?」
「え? あ、はい。とても素敵な投擲フォームだと思います」
 今は其れを悩んでいる場合でも無さそうだ。ブランシュネピリムが消え去り、次の標的は紫林、続いて琉珂だとアリアが号令を掛けている。
「とおおおりゃあああああ――――!」
 アリアも何も構うことも躊躇うことも戸惑うこともなかった。
「しかし、一体全体どうしてこんなことに……? これじゃあどこかにあるクローンシステム壊さないと延々とこの四天王を倒さないといけないの?
 め、めんどくさーい!! 四天王が二人いてたまるかああああああ! ……あ、二人ならいてもいいのか。同一人物が二人いてたまるかああああああ!」
 巷には五人目の四天王というものまで出て来たらしい。もう意味が分からないと渾身の零距離殴打。宝珠が魔術行使を支援したことにより、更なる強化を帯びたフルルーンブラスターは勢いよく紫琳ネピリムに叩きつけられた。
「私あの勢いでアリアさんに殴られたら泣いちゃうかも知れない。どうしよう、紫琳さん」
「殴られるような事が身の覚えがあるんですか?」
 おお、よしよしと頭を撫でる紫林に「ないと思う」と震える声音で囁いた琉珂は「私めー!」と自身のネピリムに裁ち鋏を振り下ろした。


 スティアの前で喧嘩をし続けるル=アディン・クローン。討論が白熱している間を突いて、ネピリムの数は随分と減った。
 勢いよく飛び込んでくる琉珂ネピリムは紫琳が想像していた『琉珂』そのものだった。琉珂には罠の位置を教え石を投げて罠の発動を促して排他が敵であるネピリムには教えることがない。
 つまり――「びぎゃあ!」
 紫琳の『予想通り』琉珂のネピリムは勝手に罠にはまって無力化されていた。その間に自らのコピーを撃破すれば良いのだ。援護攻撃を主体にしながら、素早く銃撃をする紫琳の淀みない攻撃を確認しながらマリエッタも続く。
 痛みを内包したキューブは更なる苦痛をその身に齎すことだろう。血印と呪印が僅かな光を帯びた。それは死をもたらす血の魔術――指先からぽとりと垂れた血が影と変貌し変幻自在にネピリムを切り裂いた。
「此の儘、スティアさんの援護に行きましょう。コピースティアさんは後ほどに」
「ががーん!」
「ががーん! 私の模倣が始まってる!」
 叫んだスティアに朱華は「そういえば琉珂のコピーも割と精巧だったわよね。時間経過でコピーが進んでいくって事かしら」と首を捻った。
「そ、それって問題なんじゃないの!? だって、スティアってとっても硬いんでしょ!?」
「琉珂ちゃん、その言い方語弊あるとおもうな!?」
 スティアと琉珂がきゃあきゃあと言葉を交わし合う横をするりと走り抜けたアリアは「なら、此処で倒すのみだよ!」と渾身の破壊力を放つ。
 頷いたのは紫琳。がちゃん、とライフルが音を立てる。使い勝手は犠牲にしたがその分威力には自信がある。膝をつき、放つのはアメイズ・グラヴィティ・ヴァレット。重力変化を起こす弾丸がネピリムをその場に縛り付ける。
「びえー!」
「あ、琉珂コピーが泣いたわ。幾ら琉珂に似せてても粘土じゃ朱華は戸惑わないわよ!」
 炎の剣を振り下ろす朱華は堂々と琉珂コピーを切り裂いた。「とりゃああ」と勢い付けるアリアの迫力にも(本物の)琉珂は若干怯えた様子である。
「朱華、アリアさん! 真に怖いのは味方かもしれないわ! だって、イレギュラーズってとっても強くて怖いものね!」
「その仲間入りしたのですよ。琉珂さん。大丈夫です。落ち着いて。此方は私が居ますから多少巻込まれても……」
「やだあ、雪莉さん助けてぇ!」
 ばたばたと騒ぐ琉珂を宥める雪莉はル=アディン・クローンとスティアネピリムが残された戦場を淡々と眺めていた。其れは其れとして培養用の柱を壊していたブランシュはその騒ぎを掻い潜って、勢いよくル=アディンを殴りつける――が。
(ううん……作られただけの存在で過去の記憶や情報は無さそうなのです。ただの『破壊衝動』で動いているだけの獣というか……)
 正に、培養されて作られただけなのだろう。魔王イルドゼギアの破壊衝動をデータに作成された四天王達。明るい対応をしているがその内に秘められた破壊衝動が憤怒に変化した際には更なる恐怖を与えられる可能性とてある。
「ネピリムも此方をコピーして来ますし、模倣が得意なお城なのです!」
「此処で逃がすと完璧な私が出て来たらどうしよう!?」
 慌てるスティアは「その前に私を殺すよ!」と意気込んでいた。討論中のル=アディンをスルーしたスティアは雪莉の回復支援を受けながら花吹雪の如き炎乱を咲き乱れさせた。
 炎の中を駆け抜けたのは朱華。確殺自負の殺人剣は未だ未だ未完。だが、その一撃は重く、鋭く叩きつけられた。紫琳は小さく頷きル=アディンその1に致命的な一撃を放つ。
「我輩に攻撃の手が迫るだと――!?」
 教学に振り向いたル=アディン・クローンの視界へと入り込んだのは血鎌。マリエッタの血影は刃と化してル=アディンを切り裂いた。巨大な獣を思わせるその肢体が飛び退いた。
 だが、此処で逃すまいと迫るのはブランシュの鋭き弾丸とアリアの渾身の一撃。破壊力を伴った攻撃を放つが故に、前線へと走るアリアを支える雪莉の周囲に鮮やかな光が満ち溢れる。
 がしゃん、と音を立てて壊れた培養プラントを踏み抜いてから朱華は「スティア、覚悟!」とスティアへと剣を振り下ろす。
「何だか私が倒されるみたいだね!?」
 悪役みたいな言葉を発していたスティアに「スティアさんは強敵だったのです」とブランシュが汗を拭い――紫林のライフルが弾丸を放った。

「ぐわあああああ――――――――!!!!」

 四天王のクローン体の叫び声が木霊する。とみかさんも、皆も無事。その事に安堵した雪莉はしんと静まりかえったエピトゥシ城を振り返る。
 紫色の光が照らす城内にはまだ僅かな喧噪が響いていた。

成否

成功

MVP

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女

状態異常

梅・雪華(p3p010448)[重傷]
梅妻鶴子

あとがき

 お疲れ様でした。楽しく(?)探索&攻略できましたね!

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