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シナリオ詳細

焦燥の雨

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 雨が降る。
 雨から逃れる様に森の奥に逃げ込んだパサジール・ルメスのキャラバンが一つ。
 怯える様に身を寄せ合った彼らは一つの地には定住しない。移動続きで憔悴しきった彼らの前できらりと光ったのはどこか幼くも見える妖精の姿であった。


「雨の精霊?」
 そう告げた特異運命座標に『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)はこくこくと大きく頷く。
「そうっす。パサジール・ルメスは移動が多い都合上『そういうの』ともよく出会うんすけど、妖精からお願いしたいことがあるそうで」
 旅人ではなく、混沌に住まう妖精。それは元素と存在は似ているのだろう。
 リヴィエールは云う。雨の精霊は自身の力が暴走し、森の雨が降り止まないのだと。
「雨の精霊の大元、力を暴走させてる『彼』と全力で戦ってけちょんけちょんして欲しいんすよ」
 悪い部分を倒しさえすれば妖精はその力を収めることができると力強く告げた。
「精霊ってどういう姿?」
「精霊っすか。んー……あたしらが今回であった精霊は水って感じで……」
 水。
 リヴィエールは精霊は色々存在するから一概にこうだとは言えないという。
 水で模られた体は通常の人間よりも大きく、森の木々ほどの大きさがあるそうだ。
 開けた場所へと移動し、銛を傷つけぬように戦いたいという雨の精霊の言葉を聞いて、リヴィエールは感動したそうだ。
「森も、湖も我々パサジール・ルメスにとっては大事で大事で大事なんすよ。
 精霊のお願いもしっかりバッチリ聞いてやってほしいっす!」
 お願いするっすよ、と手を合わせてリヴィエールは特異運命座標を見詰めた。

GMコメント

 夏です。梅雨が終わらない気分ですね。

●森
 緑鮮やかな森。鉄帝と幻想の国境。
 森を傷つけぬ開けた場所です。

●雨の精霊
 水で体を模った精霊です。大きさは大体2.5m位。
 雨を降らせる攻撃などを行います。基本的に攻撃の内容は範囲攻撃となります。
 暴走してる悪い部分が大暴走中です。けちょんけちょんにしてあげてください。
 巨大な敵なので強いのです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

頑張ってくださいね。宜しくです。

  • 焦燥の雨完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月22日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュグナート・ヴェクサシオン(p3p001218)
咎狼の牙
ゲンリー(p3p001310)
鋼鉄の谷の
黒杣・牛王(p3p001351)
月下黒牛
紫・陽花(p3p002749)
Hydrangea
Briga=Crocuta(p3p002861)
戦好きのハイエナ
ニア・ルヴァリエ(p3p004394)
太陽の隣
西園寺 姫乃(p3p005034)
想拳
アマルナ Ⅳ世(p3p005067)
いもより脆い

リプレイ


 雨が降る。
 まるで渦巻くようにくるくると、降る雨の気配を感じながら身を隠したキャラバン一つ。
 ぱちゃぱちゃと水溜りを踏み締めて、雨を歩む事に怯える事無く。少しばかり冷えた体を震わせて『Hydrangea』紫・陽花(p3p002749)ははあ、と湿気に濡れた空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
「雨って、生きるためにとっても大事なモノで。
 まったく降らなくても、降りすぎてもダメなんだ」
「そうね。それに、なんだか湿っぽい気分になるから好きじゃないんだよね、傘がないと濡れちゃうし」
『想拳』西園寺 姫乃(p3p005034)は落ちた葉を踏みながら雨の道を行く。混沌に住まう妖精たちからのSNS。精霊と呼ぶに相応しい程に神秘の力を手にした此度の原因の属性は雨。『雨の精霊』と呼ばれているのだと、パサジール・ルメスの少女はそう言っていた。
「『都合、精霊にはよく合う上に夏の雨は恵みだけれど』、か」
 確かめる様に告げた『咎狗の牙』リュグナート・ヴェクサシオン(p3p001218)に『月下黒牛』黒杣・牛王(p3p001351)はどこか悲し気に眉根を寄せる。
「精霊を痛めつけるのは少々心苦しいですが……本気で止めなければ、雨の精霊もリヴィエールも悲しむでしょう。
 雨の精霊の御好意を無駄にしない為にも、全力で戦わねば」
「ああ。要は相手を殴ればいい。結論としてはいたってシンプルな依頼じゃな」
 分かりやすいほどに拳を固めて、その力を振り翳せばいい。『鋼鉄の谷の』ゲンリー(p3p001310) は堂々と大きく頷いた。
 雨の気配が濃い山道をぐんぐんと進めば鉄帝と幻想では少しばかり機構が違い事を感じさせる。牛王は冷えますね、と静かに囁き、雨の気配が濃い場所――森を傷つけぬ緑豊かな広場には巨大な水がぽかりと浮かんでいた。
「水――」
 ほう、と息を飲んだのは『戦好きのハイエナ』Briga=Crocuta(p3p002861)。Brigaが戦った事のある『精霊』とはまた姿の違うそれ。ゲンリーが言った通り『シンプルに倒せばいい』のだから実にBriga好みではないか。
「今回は邪魔者もいねェんだ、存分にやらせてもらうぜ」
「うんうん。暴走しちゃってる以上、戦って止められるなら全力で頑張ろう! ボクも助けたいんだっ」
 力強くそう言った陽花に『水面の瞳』ニア・ルヴァリエ(p3p004394)はにぃと笑う。水で模られた体は確かに人間らしさを僅かに帯びている。しかし、光を透けさせる様子は混沌世界に住まう種族のどれとも違い旅人にも似ていた。
「精霊ね。精霊。精霊ったヤツにはなんだかんだと縁があってね。
 キャラバンにも色々と世話になってることだし、しっかりやり遂げてやんないとね」
「うむ。それに見事じゃ。雨の巨人――こうして見遣れば中々どうしたものか、大迫力じゃな。
 しかし、余とて太陽王の端くれ! 雨如きに陽を洗い流すことは出来ぬと教えてやるのじゃ!」
 びしり、と前線を指さした『光輝なるワンパンファラオ』アマルナ(p3p005067)。太陽王たる威厳をいっぱいに、今回は『ワンパン』では済まされぬぞと胸を張る。

 くすくす―――
 どこからか笑い声が聞こえる。はて、と顔を上げたニアは精霊が嗤っていることに気付いた。
「なるほど?」
 ぱちりと瞬くニア。精霊の『悪い部分』とリヴィエールが呼んでいた暴走箇所。自我を飲み込み、今は雨を降らせ続けるだけになっている精霊が只、笑い続けて居ることが良く分かる。
「あたしはあたしの仕事をするまでだ」
 泥濘を踏み締めて、ぐん、と距離を詰める。ニアは堂々たる名乗りを見せて、精霊を惹きつけんと声を発した。
「こちらにも」
 次いで、雨の精霊の動きを制御するように牛王は前線へ立つ。巨大な体を受け止め、放つ一声に精霊はくすくすと笑い続けている。

 あそんでくれるのかなァ――?

 まるで幼子の様に。それでいて、精霊の云う『遊び』とは戦いの事である事をゲンリーはその身で感じる。
「暴走……なるほどね?」
 暴走かぁ、と繰り返し呟いた姫乃はそっと、姿勢を正し、一気にその距離を詰めた。


 最近雨続き。大雨が攻撃手段――そう聞いてアマルナの脳裏に過ったのは『ひょっとして地面とかゆるゆるになっちゃってべしゃっと転んじゃう系』なのかということだ。
「うむ、ぬかるんでおるなら気をつけろよと警告するのも余の役目じゃな!」
 ふふ、と笑うアマルナ。後方で経つアマルナは『ミイラ太陽兵団』と名付けしアンデッドを盾に防御姿勢を整える。
 前衛陣の後ろに布陣してはいるが、近づきすぎては攻撃に巻き込まれる可能性とてある。気をつけながらの戦闘になると立ち位置も着にはなってくるものだ。
 雨の精霊の意識が牛王とニアの間をふらふらとしている。それを好機を見定めればゲンリーはぐん、と距離を詰めた。
「儂をただの脳筋と思っとるようなら、酷い誤解じゃの」
 ランページを振り上げて距離を詰める。きわめて攻撃的なスタイルで攻め切る彼ではあるが、その節、戦い方は『頭』に刻み付けられている。接近し、一打与えたゲンリーはすぐ様に後方へとその足を向ける。
 ヒット&ウェイを駆使し、出来る限りの範囲攻撃の回避を徹底するゲンリーにちら、と視線をやり小さく頷いた陽花の髪がきらりきらりと光を帯びる。七色の髪には感情が宿っている。
(雨だからって……まさか広場全域に攻撃なんて、ない、よね?)
 僅かな不安と共に周囲へと広げた保護結界。森を傷つけないのは、移動し生きるパサジール・ルメス達のためであり、そしてここに住まう精霊たちのためでもある。
 ミラージュレイピアを手にした陽花から発された魔力を追い掛けてBrigaはくつくつと喉鳴らす様に試作型強化外骨格に覆われた手足をぐいんと動かす。
「雨なンだってなァオマエ!!」
 ざあ、と強くなる雨に打たれながらBrigaの耳で三連のピアスが揺れる。内側に一つ掘られた「A・C」の文字の感覚を感じるかのように両腕を振り上げて、間合いに飛び込んだBrigaの牙がむき出しになる。
「攻撃が効いてンのかも分からねェけど……それがどうした!! 一回でダメなら三回、それでもダメなら、十回でも百回でも殴り続けてやらァ!」
 ざああ、と降る雨の中。ぴくりと動いたのは雨の巨人。
 精霊はぐぐぐと身を屈め、眼前の牛王と――その背後に立つアマルナ目掛けて鋭い雨を降らせ続ける。その範囲の広さに、さ、とその身を避けたリュグナートと姫乃。
「雨だけあって結構広範囲なのね」
 姫乃の言葉にゲンリーはこくりと頷いた。牛王とニアはじりじりと距離を離し、巻き込まれぬ立ち位置で巨人の体を囲む。
 降る雨は刃の様に傷つけ、その身を切り裂く感覚に僅かに牛王の表情が歪む。
(このパーティーは継続戦闘には向いて居らんからな……ささっと決着をつけるべきだ)
 ゲンリーの脳内に浮かんだヴィジョンは範囲攻撃で前衛、後衛問わず疲労が蓄積した場合に苦戦を強いられる可能性があるという事だ。
「大丈夫――ボク、癒すから」
 回復をセレクトし、前線を支える方向へとシフトした陽花の表情にも僅かに不安が浮かんでいる。その髪色に僅かに紫を帯びさせて、困った様に目を伏せる。
 降る雨は鋭さを増す。振り続ける雨に重なる様に『雨の攻撃』が強襲し、その身を削る感覚にニアは深呼吸をつき、小さく笑った。
「さあ、こっちだよ! まだまだ付き合ってもらわなきゃ困っちまうんでね!」
 そうだ。その怒りを自身に向けて只、守りを固めることで戦闘を有利にしていくことが出来るはずだとニアは誘うように手招いた。

 きゃはははは――!

 楽し気に笑った精霊から感じる悪意が暴走しているという証左なのだとニアは感じる。風の助けを手に、風の力を乞うて、雨の合間を吹き抜けんと願うようにニアは盾を握る拳に力を籠める。
「的が大きいというのは、当たりやすくて良いのう」
 それは攻撃を続けるのに適しているという言葉にもとれた。雨の精霊の意識がニアや牛王に向いている内に出来うる限りダメージを蓄積させることができたならば、それこそが勝機につながるはずだ。
 降る雨の中、牛王はおはぎのことを考える。愛らしい黒猫はここで己が主人が膝をついては悲しむだろう。そう思えば僅かにでも心は踊った。


 ぐるん、と雨の巨人たる精霊の攻撃がリュグナートへと向いた。振り荒む雨の苛烈さに脚が僅かに竦む感覚を感じて姫乃は精霊の攻撃範囲内に立つ事は策として理に叶わぬとその身を逸らすが――

 ひとりィ――!

 リュグナートの体が地面へと叩きつけられる。可能性を削ろうとも姫乃はここで止まるわけにはいかない。森の木々を傷つけぬように気を使いながらぬかるんだ地面を踏み締めて姫乃は歯を噛み締めた。
「目を覚まして! いくよ、これが私のフルパワー!」
 拳に力を籠める。雨の精霊は気紛れに、攻撃を繰り返している。それを留めるべくニアと牛王は己らの体力を削りながらも懸命に雨の精霊の標的となり続けた。
「もう少しで、本物の太陽もきっと見えるよー」
 癒しを与える陽花の言葉を受けて牛王は大きく頷いた。
 もう直ぐだという事は精霊の動きからもわかる。いやいや、とい首を振りながらも懸命に攻撃を重ねていく精霊は何処か泣き出しそうな表情をしている。

 いたいのやだよォ――!

「痛いのは一瞬じゃ!」
 アマルナの言葉に頷くように前線へと飛び出したBriga。悪い部分と言われてるそれが何らかの寄生ではないかと疑いながら戦うBrigaはぐるると喉を鳴らし、己の血潮全てを変換し戦う力と変えてゆく。
「チッ……鬱陶しい雨だぜチクショウ!!! さっさと正気に戻りやがれ馬鹿野郎!!」

 だってェ――!

 如何すればいいのかわからないといやいやと駄々をこねる子供。それがニアの瞳に移った精霊だった。
 その攻撃は熾烈を極めるものの、徐々に体力を削れているのは目に見えてわかる。攻撃を受け止めて、傷付くその体を跳ねさせれば、風の声は囁くように耳元をすり抜けた。
「いける――!」
 ぐん、と距離を詰めたニア。その動きに気付いた様に牛王がこくりと頷く。
 もうすぐなのだ。陽花はき、と精霊を見上げる。七色の髪は雨に濡れ、緩やかに頬を撫でていた。
「カラカラに乾いた地面を潤してくれたり、パラパラと葉っぱに落ちる音は楽しくて――ボクは雨が大好きなんだ。
だから、このまま暴走を続けて、君が嫌われちゃうような事になったら悲しい」
 陽花の言葉に雨の精霊の攻撃の手が緩む。好機だとゲンリーは距離を詰め暴走した力全てを消す様にその斧を振り上げた。
 ゲンリーの口角があがる。気づけば彼の距離は精霊とゼロ。リュグナートが倒れた事により、縮めた距離の分だけ彼の攻撃は重ねられていた。
「どうじゃ」
 囁くようにドワーフはそう言った。
「すまんがこの距離で殴る他に脳が無くての。全力で斧を振らせてもらおうぞ」
 痛いと泣こうが、精霊の『暴走した悪い部分』全てを失くしてしまえば全てが元通りになるとゲンリー走っていた。
 水はばしゃりと音を立て、洪水の様に流れていく。気づけば、雨は徐々に弱まり、雲間より陽射しが差し込み始めていた。

 あ、あ――……

「止まない雨は、ないのよ」
 そう、柔らかに告げた姫乃の声を聞いたか、どうか。精霊のその身から水が大きな音を立てて弾けた。


 落ち着いた精霊の姿はするすると小さく変わっていく。助けて欲しいと声を発した妖精と同サイズ程度に落ち着いた精霊にアマルナは「可愛らしいものじゃな」と指先でその頬をつつく。
 やぁーと擽ったいと身を捩った精霊はぱちぱちと瞬き首を傾ぐ。アマルナは太陽の王。共に歩むすふぃんくすを気にする様に精霊はぱちりと瞬いた。
『にゃん』と鳴いた飼い犬――その時点で謎は深まるばかりだが、旅人がくれたのだからしょうがない――は精霊に興味を持ったようにてしてしと手を上げている。
「雨上がりの心地よい陽光を浴びるというのも、森での一つの楽しみじゃ。雨の精霊ちゃんも一緒にどうじゃね?」
 その言葉に、ぱぁと表情を明るくした妖精たち。まるで子供のようではないかと姫乃の口元にも僅かに笑みが浮かぶ。
「次に逢った時は一緒に遊んで欲しいな」
 ゆっくりと、確かめる様にそう告げた陽花の言葉に精霊たちは嬉しそうにきゃっきゃと笑い『もちろん』と笑った。精霊の扱いについてはパサジール・ルメスの面々が長けているのだろうと考えながらも、無事に精霊の暴走を鎮めることができた事を喜ぶように牛王も柔らかに息をついた。
「しかし、暴走の原因は何じゃろうなあ」
 ゲンリーの疑問を聞いても精霊は子供の様に首をかしげてくすくすと笑っているだけだ。
 気づけば空には珍しくも美しく。虹がきらりと架かっていた。

成否

成功

MVP

紫・陽花(p3p002749)
Hydrangea

状態異常

リュグナート・ヴェクサシオン(p3p001218)[重傷]
咎狼の牙

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ!
 混沌世界には様々な不思議があります。
 妖精さんとか精霊さんとかそういう存在ってときめきですよね。
 MVPは森をしっかり守りながら、精霊さんにも声をかけてくれたあなたへ!

 また、皆さまの活躍を描けますように!

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