シナリオ詳細
<光芒パルティーレ>ディープ・ディープ
オープニング
●一番街:フェデリアハウスより、ダカヌ海域へ
「――我こそは!」
靡くマントとまばゆい光。すらりとしたオトナなシルエットが動いた――かと思いきや、後ろから思いっきりスポットライトで照らされた幼女がそこにいた。マントを靡かせるための扇風機もあたっていた。レフ板係と台詞カンペ係もあわせて合計四人がかりであった。
「栄えあるピラータ海賊団の後継者にしてシレンツィオ・リゾート代表執政官! キャピテーヌ・P・ピラータである!」
大きく水平にはらった右手を、自らの顔半分を隠すように当てる。
それはもう何度も訓練したであろう、熟達した動きであった。
きまった。そう小さく呟くキャピテーヌの頭を、イリス・アトラクトス(p3p000883)がわっしわっしなで始める。
「かーわーいーぃ! どこの子!?」
「ぅやぁーめーろーぉー!」
ぐわんぐわん左右にゆすられなで繰り回されるキャピテーヌちゃぬを、イリスは両手でしっかりホールドしながら堪能していた。
なんか髪質がふわっふわしていて手触りがよい。指がまるで絡むことなく抜け、高級ホテルのベッドシーツのそれを思わせる至福のなで心地。イリスは途中からマジの目をしてなで回すようになっていた。
「エルネストぉー! おぬしの娘だろぉー! なんとかしろーぉー!」
呼びかけられ、部屋の奥でティーカップを手にしていた『フェデリア総督府総督』エルネスト・アトラクトスがカチンとソーサーにカップを置いた。
「……」
黙ってキャピテーヌとそれをなで回すイリスを見た後、再びカップに口をつけ優雅にくいっとやった。
「えーるーねーすーとぉーーー!」
ここはシレンツィオリゾート一番街、フェデリア・ハウス。
豊穣の寝殿造りと海洋のコロニアル様式が合わさり見事なまでの芸術的建造物となったこの建物は、世界トップの経済地となったフェデリア島の行政中枢となっている。
いわゆるところの役所であり、海洋や豊穣、そして鉄帝やラサといったシレンツィオリゾート開発に携わる各国から政治畑の人間が集まり、派閥を考えるのも面倒なくらい入り乱れた混合団体となっているのだ。
その代表を務めているのが、このキャピテーヌ・P・ピラータ。海洋の大学を飛び級合格かつ首席卒業したというロリ少女であった。
コホン、と咳払いをするキャピテーヌ。
先に来ていたイリスに加え、部屋には数人のローレット・イレギュラーズが集まっていた。
偶然呼ばれた者もいれば、この案件を聞きつけて駆けつけた者もいる。聞く者はいずれもっと増えるだろう。
なにせここフェデリア一番街にはローレット支部が存在し、ポータルを使って幻想王国の空中神殿から直接ワープしてこれるのだ。彼らほどフットワークの軽い傭兵もいまい。
そしてだからこそ、各国が手に負えない事態や世界の危機に彼らは駆けつけられるのだ。
今回もまた、その例外ではないらしい。
「最近、シレンツィオリゾート近海に出現した深怪魔(ディープ・テラーズ)のことは知っているな?」
ローレットの何人かが頷き、残る面々が『深怪魔って?』と周りに尋ね始める。
腕組みをしていたイリスが振り返って説明を始めた。
「フェデリア南東のダカヌ海域で発見された新種のモンスターよ。アルバニアの影響を受けて広まった狂王種とは異なる種類であることからこの名前がつけられたわ。確か、船が10分足らずで深怪魔の群れに飲み込まれたって話よ」
「そうだ。さすがはローレット、よく分かっているな」
キャピテーヌは同じように腕組みして頷くと、事務机の横に置いてあった椅子をずりずり持ってきてからその上に乗った。イリスより頭の位置が高くなる。帽子込みで。
「エルネストからは海域の調査依頼が出ているから、知ってる者も少なくないな?
フェデリア開発二周年記念のサマーフェスティバルに向けて、私がオーナーを務めるクイーンエリザベス号によるクルーズツアーを計画しているんだが……ダカヌ海域が危険となると港から出る時点でツアーが止まってしまう。
出資した各国もかなりの打撃を受けてしまうだろう。フェス前までにはある程度カタをつけたいのだ」
わかるな? という目でイリスを見ると、イリスは片眉と肩をあげて了解の意を見せた。
「ダカヌ海域への調査を行えばいいのね。できれば海底を調べたいけど……」
「そう言うと思って用意してあるぞ」
キャピテーヌは机をごそごそやると、設計図のようなものを取り出して広げた。
それはなんと、大きなクジラ型の潜水艇である。
「私も一緒に行く! 心配するな、足手まといにはならない!」
- <光芒パルティーレ>ディープ・ディープ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年07月10日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●キャピテーヌと深海の秘宝?
トゥーン――というふしぎな音がする。潜水艇がソナーを使い周囲の地形を調べながら進んでいる音……だと、キャピテーヌは説明していた。
「ふーむ、海底の探索ですか……まぁ、海は僕にとっては得意なフィールドですし、否やはありませんが」
「ベーク!? あのベーク!? 海洋王国でリヴァイアサンの腹をかみちぎった神盾鯛焼(AEGIS TAIYAKI)のベーク!」
「もうバカンスとか完全にどっか行っちゃってますよねー。や、良いんですけど。休みって落ち着きませんし」
「どうだったのだ!? リヴァイアサンをその尻尾でハラパンしたって本当なのだ!? どうなのだー!?」
「圧が強い!?」
『不屈の障壁』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)のボディ(あのたいやきボディ)にしがみついてなでくりなでくりしては甘い香りを堪能しているキャピテーヌがいた。
「あとAEGIS TAIYAKIってなんですか」
「ベーク、本になってるのしらないのか?」
「しらない……」
いつのまに……と呆然と呟くベーク。
そんなベークにそっと差し出された『いーじすたいやきとはめつの竜』とかいう児童書をそっと差し出してサインを求めるキャピテーヌ。
そんな様子を、『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)は微笑ましくみていた。
「ベークも人気者になったものね。ま、海洋じゃ有名人だし当然かしら」
「イリスも、エルネストの前だったから言えなかったんだけど実は……」
キャピテーヌがスッとイリスの写真が印刷されたブロマイドを差し出してきた。
「ファンです。サインください」
「いつの間に!?」
そりゃあ大遠征の功労者にして奇跡の英雄たちである。時代が時代なら聖書に名前が載る偉業だ。商売っ気のすごい海洋商人たちが乗っからないわけがなかった。
『常夜に潜むモノ』天之空・ミーナ(p3p005003)は『なんか思ったよりミーハーなやつだったんだな』とキャピテーヌを眺めていた。
「ま、私はイリスたちほど海洋でも名が知れてるってわけではないし。別に――」
「呪われたディーキー海賊団を救ったミーナだよな?」
「まじか」
スッてミーナのブロマイドを出してくるキャピテーヌ。
かなりマイナーな事件だと思ったが……と述懐するミーナだが、リヴァイアサンや冠位魔種のインパクトが大きすぎただけであって、思えば結構な偉業であった。だがそれを差し引いても、そうそう知っている人間の多い話ではない。
『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)はサインの書かれた本やブロマイドを大事そうに鞄にしまうキャピテーヌに問いかけた。
「イレギュラーズのことに詳しいのですか?」
「イレギュラーズというか、そのお……」
えへへ、と顔を赤くしながらキャピテーヌはふわふわの髪を自分でわしゃわしゃやる。
「ローレットのイレギュラーズ、好きなのだ。パパと一緒に戦った人達だったし……」
「そうだったんですね。お父様は今――」
マリエッタがそこまで言った所で、何かにハッと気付いた『戦神護剣』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)が手をかざして話をとめさせた。
状況、立場、そしてタイミング。どう考えてもその父という人物は……。
「そうなのだ。リヴァイアサンの放った光線で死んだのだ」
さっぱりと言い切るキャピテーヌ。
だが、目尻に涙が浮かんでいるのを紫電は見逃さなかった。
「キャピテーヌ、あんた……」
「だから決めたのだ! パパの手に入れたこの『青』は絶対に守るし、一緒に戦ったローレットへの大好きは隠さないのだ!」
堂々といくのだ! そう言って、キャピテーヌは紫電のブロマイド(水着version)を力強く差し出した。
「そういうことならいいさ」
苦笑し、紫電はペンのキャップを外してサインをしてやった。
同じようにというべきか、『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)にも『よろしくおねがいするのだ!』と言ってブロマイドを差し出すキャピテーヌ。
それを眺めながら『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)は肩をすくめ……そして窓の外へ目をやった。
ダカヌ海域の底は静かで、そして異質だ。
「深い深い、海の底。嘗ての世界では海に潜るなど考えられたものではありませんでしたが……」
イレギュラーズになって一年ちょっとといった所だが、その間に地底に秘境に浮島に深海にと、世界中を所狭しと駆け回ったものだ。
「わたし、イレギュラーズには憧れるのだ。わたしも召喚されたら、絶対ローレットに入るのだ」
『あなたのブロマイドが出たら絶対買うのだ』と言ってアッシュとマリエッタに名刺を渡してくるキャピテーヌ。
アッシュは『そうなったらいいですね』と言いながら、再び窓の外に目をやる。
「けれど……いいのですか? 今は未知の脅威が潜む海底。深海魔がいまにも飛び出してくるかもしれませんよ」
「そもそも、これって自然発生したものなんですかね」
端っこでひとり気配を消していた『こそどろ』エマ(p3p000257)がえひひと引きつったような笑みを浮かべて呟いた。
ハッとして振り返るキャピテーヌ。
「『えひひ』なのだ! 本物なのだ!」
「圧力ぅ」
自分の知らないひとに知られているという事実にちょっとやりづらいエマである。
サインをねだるキャピテーヌに、ちゃっかりお金をとってサインしつつ……エマはそれにつかったペンを指でくるくると回した。
「それとも、元々棲み着いていたのが飛び出してきたのか……」
「この海域が危険にさらされれば豊穣も……となれば、見過ごすわけにはいきませんね」
鹿ノ子はそう言って、依頼書をぱたんと畳んだ。
その時である。
潜水艇のセンサーが何かの群れのようなものを感知した。
ピピピッと音を立てて魔術式投影機(ホログラムディスプレイ)にマップを映し出す。
「この反応……深海魔なのだ! 早速見つかったのだ!」
キャピテーヌはそれまでの態度を一変させ、キッと戦う者の目になると操縦席へと滑りこんでレバーを握った。
「援護するのだ。その間に水除室を通って出撃するのだ!」
●深海魔と――
『水除室』とキャピテーヌが呼んだのは、潜水艇と外を繋ぐ中間の部屋だ。別に正式な名前があるらしいが、マリエッタは知らない。部屋に入り円形ハンドルを回して扉をロックすると、『注水』と書かれたボタンを押し込む。すると足元からざばざばと水が入ってきて、みるみるうちに部屋は海水で満たされていく。
マリエッタは手の呪印をなぞるようにすると、首元に血色の模様が浮きあがった。水から直接酸素を取り込むという呼吸の魔法だ。
アッシュは同じ魔法を首にかけた貝殻のネックレスから発動し、鹿ノ子は短剣の形をしたお守りを起動させた。
「水中行動装備が限られるのは、深海を主とした探索の大変なところですね」
「だな。全く……刀身がさびなければいいが」
紫電はキャピテーヌから借りた水中行動用の呼吸装置をセットする。首輪のような装備で、それをつけただけで水中でも呼吸ができた。
一方でエマは小瓶から魔法の香水を出して自らの首や手首にふりかける。
「皆、準備はできたな?」
ミーナが振り返ると、皆水中行動が可能な状態になったことをハンドサインで示した。
ベークとイリスは種族的に最初から問題ナシだ。
『準備はいいな!? 扉をあけるぞ!』
防水伝声管からキャピテーヌの声がする。
そして、外側の扉が開かれた。
誰よりも早く飛び出したのはエマだ。
「ここは……」
周囲の風景は……言うなれば古代の遺跡。
石の柱や門。壁のような人工物があちこちに見える。
『海底に沈んだ都市』にも見えるし、元から海底にあった都市にも見える。いずれにせよ、もうここに住んでいる人間はいないだろうことが折れた石の柱や寒々しい風景からわかった。そしてはるか昔に手入れされなくなっただろうことが、はえた海藻やサンゴや通り抜ける魚たちからわかった。
バタ足移動をかけながら、エマは風景から『敵』へと視線をうつす。
こっちは明らかな敵だ。サーチをせずとも敵意がびりびりと伝わってくる。
造形はといえば、巨大なオオムガイや下半身がタコになったサメ。それに加え、槍を持った半魚人のような人型のものもある。
「バリエーションが豊かですねえ」
サメが触手をぞわりと動かし、黒い墨のようなものを身体から吐き出す。墨は広がったかと思うと無数のナイフのような形をとり、エマめがけて次々と飛んできた。
その推進力たるや流星の如くだ。しかしエマとて歴戦のシーフ。身体をねじった器用な動きでそれを回避すると、急速に距離を詰めてナイフをサメへと突き立てた。
「なかなか綺麗ですねえ。名前がないなら……私が『ヘールポップ』とでも名付けましょうか」
「あら、ここでも名前を付けるの? 確かにちゃんと名前がありそうな生物じゃないけど……」
だったら早いもの勝ちかしら。とイリスは悪戯っぽく呟き、本来の姿であるアトラクトステウス体へと変身。尾びれで器用に水を蹴って走り、乱発される墨のナイフをその体表で弾き、そしてかわしていく。
が、それだけではなかったらしい。ナイフに混じって細長く銀色の生き物が走り、イリスめがけて突っ込んでくる。
身体は虹のように一瞬だけ光り、そして銀色の光に包まれる。
「この――っ!」
体当たり――をかけるが、体表の光によって阻まれる。が、それも一瞬のことだ。
すぐにリソースが尽きたのか相手はよろめくように動いた。
「物理攻撃を無効化したのかしら。けど、瞬間的なものみたいね。そして連発できるほどのキャパシティもない、と!」
イリスは二度目の体当たりで相手を突き飛ばすと、その全容を改めてみた。
リュウグウノツカイににも似たボディ。銀色に輝く体表。
「じゃ、『エバーシルバー』かな!」
「名前つける流れなんですか?」
そういうのあんまり興味ないんですけど……と言いながらもベークは殻に閉じこもりはじめた巨大オウムガイへと突進。図鑑で見たある生物の特徴に似ているな……と思いながら、ベークは攻撃可能距離に入ったところであえて自らの香りをあおぐように相手に届けた。
防御に徹し反撃の機会を伺おうとしていたオウムガイがカッと頭を出し、慌てたようにベークへ突っ込んでくる。その食欲満点の様子に引きつつ、Uターンで仲間のもとへと走る。
「それ、それ――えっと名前なんだ!?」
「じゃあ『レーテンシー』で!」
ベークが叫ぶと、構えていたミーナは『了解』と呟いて『希望の剣』を抜いた。
飛び込み、レーテンシーの顔面に剣を突き立てる。
そんなミーナめがけて半魚人タイプの深海魔が槍を持って突進してきた。
いや、突進の途中で槍を投擲してきた。
ミーナはそれを剣で払ってかわすと、至近距離からダイヤモンドダストの魔法をぶっ放した。
海水が凍り付き、次々に飛んで相手に突き刺さる。
そこへ紫電がドルフィンキックで距離を詰め、己の刀でスパン――と相手の首を切り落とした。
首から上に魚がのっかったようなフォルムのせいで、死んだ魚が腹から血を流して浮いているように見える。
一方は首なし死体だ。
ううん……と唸ってからミーナへ振り返る。
「いい受け流しだ。で、こいつの名前は?」
「私がつける流れか?」
紫電は『自分がつけても……』と言おうとして、浮いてる死んだ魚(これでも生首)を見てやめた。
「なんでもいいから。ほら」
「そういわれてもな……」
ぞろぞろと林のように並び、そして紫電の更なる斬撃ですぱすぱと斬られていくさまを観察する。
「あー、じゃあ、『フォアレスター』でどうだ」
「林業家? なんで?」
「思いついたんだからなんでもいいだろう」
と、その時。
スッと視界が暗くなった。
一体どういうことかと下をむいて、上を向いて……目を疑う。
巨大なマンタにも似た深海魔がふわふわと泳ぎ、腹面から無数の卵形の爆弾を発射してきたのだ。それが自分達に近づいてきたタイミングで次々に爆発。
まるで航空機による爆撃だ。
咄嗟の防御にでるミーナたち。かばわれた仲間達は爆風を逃れたものの、仲間達が爆風(爆発によってできた水流)によって大きく流される。
と、その時。
「調子にのるなよ、魔物!」
キャピテーヌの潜水艇側面からパカパカッと無数のフタが開き、そこから大量の魚雷が発射される。マンタ型深海魔へとぶつかったそれは激しい爆発を起こし、グォオーンという鳴き声をあげさせた。
「今だ!」
キャピテーヌの声を受けて、鹿ノ子とアッシュが動き出す。
白妙刀『忍冬』を抜き、回り込むように上をとる鹿ノ子。
アッシュもまた『Ithildin.』を抜いて逆側から回り込み上をとる。
どうやらこの深海魔は上をとられると弱いらしい。
なのであえて――マリエッタは下側から覗き込みにっこりと笑ってやった。
ぶわりと水中に広がる赤いもや。血だろうか。それがみるみる矢の形となり、無数の矢となり、それらが一斉に深海魔の腹へとざくざく刺さっていく。
その間にも鹿ノ子は背面をがしりと掴み、刃を凄まじい速度で走らせ連撃を叩き込む。
最後にアッシュが剣を突き立てると、深海魔はぶくりと膨らんだ。
「おや、これは……」
アッシュは危険を察し、大きく飛び退く。
すると深海魔は激しい爆発を起こし、散っていった。
同じく危険を察したようで事前に距離をとっていた鹿ノ子が振り返り、『無事ですよ』のハンドサインを出してくる。
アッシュもそれに答えてから、潜水艇へと振り返った。
「キャピテーヌさん。いま爆発した深海魔の名前はどうしますか?」
「えっ?」
まさか自分にふられると思っていなかったのだろう。キャピテーヌから困惑した声が聞こえてくる。潜水艇のライトが左右にきょろきょろと動き、感情が潜水艇越しにも出ていた。
「え、ええと、じゃあ……『エピゴウネ』でいいか?」
「おや……」
その言葉の意味を知っているアッシュは首をかしげたが、深くは追求すまいと言葉には出さないでおいた。
かわりに、マリエッタがぱちんと手を合わせてこたえる。
「素敵な名前だと思いますよ。ねえ?」
それから暫し、探索が続いた。
イリスが自らを光らせ地面を照らしたり、ベークが広く泳ぎ回ったり、エマが暗いところに入っては暗視能力で観察したりだ。
アッシュやマリエッタはそうした調査を手伝いながら、鹿ノ子の鋭敏な五感での探索を記録したりしていた。
そんな中で……。
「キャピテーヌ、どう思う」
ミーナはエバーシルバーの死体を観察しながら、それがよくある海洋生物の肉体構造によく似ていることを発見していた。
それでいて、奇妙な肉体の変化がおきていることも。
「モンスターが多種で連携して動くというのはよくある話だ。だが、深海魔はどうも協力関係が密に見える。レーテンシーとフォアレスターが連携してたようにも見えるしな。
第一、この辺の種って割りには個体数が少なすぎる。外来種じゃあないのか?」
「さすがミーナ。博識なのだ。わたしも同じ意見なのだ。そもそも、この海域に深海魔が出たなんて話は過去に例がないのだ」
「元々いたやつだったら、今まで出てこない理由がない……か」
そうしていると、紫電が広い遺跡のなかから何かを拾いあげた。
円盤状の石だ。カジノチップと同じようなサイズをしていて、美しい模様が入っている。明らかに人工物なのだが、手に取ると不思議と力を感じた。紫電がアナザーアナライズをかけたせいだろうか。これがただの石ではないということがよくわかる。
「キャピテーヌ、かわったものを見つけた。回収するから保管ボックスの用意をしておいてくれ」
「ん? わかったのだ! 帰ったら総督府の研究所に持っていくのだ」
他の仲間達もそれなりの調査が済んだらしく、『このくらい探索すれば充分かな』と潜水艇へと戻っていく。
紫電は手の中でチップをもてあそびながら、これから始まる冒険の予感を胸に抱いていた。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
海底で不思議なチップを発見しました。
また、深海魔のいくつかに固有の名前をつけました。
GMコメント
●オーダー
キャピテーヌと共にダカヌ海域の深海を探索しましょう。
十中八九深海魔との戦闘になるはずです。
現地へは複数人乗りの潜水艇で向かい、水中行動装備を着用して出撃しましょう。
※このシナリオでは海中での戦闘が行われます
『水中行動』スキルがあったり『水中行動(弱)』の装備をもっていると有利にはこびますが、なくても『水中行動(弱)』の装備をレンタルすることができますので戦闘には困りません。
●探索
海底を潜水艇や水中行動を使って探索します。
着目したいのは深海魔なので、どういった場所に多くいるのか。どんな形状のものがいるのかといったデータをとって持ちかえることになります。
キャピテーヌは潜水艇の操縦をしてくれます。自分でもそれなりに戦うことができるようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●シレンツィオ・リゾート
かつて絶望の青と呼ばれた海域において、決戦の場となった島です。
現在は豊穣・海洋の貿易拠点として急速に発展し、半ばリゾート地の姿を見せています。
多くの海洋・豊穣の富裕層や商人がバカンスに利用しています。また、二国の貿易に強くかかわる鉄帝国人や、幻想の裕福な貴族なども、様々な思惑でこの地に姿を現すことがあります。
住民同士のささやかなトラブルこそあれど、大きな事件は発生しておらず、平和なリゾート地として、今は多くの金を生み出す重要都市となっています。
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●名声に関する備考
<光芒パルティーレ>では成功時に獲得できる名声が『海洋』と『豊穣』の二つに分割されて取得されます。
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