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シナリオ詳細

オーク「姫騎士だ! 野生の姫騎士が攻めてきたぞ!!!」

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ウェルカムトゥオークの街
 オークの街――幻想のとある地域に存在する、オークたちの住む街である。
 オーク、と言っても、混沌世界に生息する、いわゆる魔物としてのオークではない。彼らはおおむね知性はなく、崩れないバベルを以てしても意思疎通のできない【怪物】である。
 が、ここにいるオークたちは違った。古来より生活し、地域にも浸透した善良なるオークたちだ。もちろん、意志疎通も可能。おそらくその発祥は、オークタイプの旅人(ウォーカー)なのであろう。複数で同一の世界から、或いは異なる世界から召喚されたオークたちは身を寄せ合わせ、オークタウンとでもいうべきこの街を作り上げた。
 例えば、この街の有名人と言えば、ドゥオモ、と言う名のイケメン・イケボオークがいる。彼は練達で映画スターとして活躍しており、幻想でサイン会などを開いていたりもする。
 オークたちの歴史はさておき、ここではたくさんのオークたちが身を寄せ合わせ、平和に暮らしているのだと思ってもらって間違いない。が、大小のトラブルは発生する。特にここ最近、特にオークたちが困っているのは――。
「姫騎士だ! 姫騎士が来たぞ!」
 ちょうど、広場にオーク男性の声がこだました。説明するのにいいタイミングだ。そう、困っているのは、姫騎士である。え、姫騎士に困っているの? どういうこと? と思われるかもしれない。ひとまず皆には、このままオークたちの困りごとを見てもらおう。
「ええ、またきたの!?」
「ちょっと、えーと、まず女性オークの皆さんに説得してもらうか……?」
 男たちがわたわたし出したので、女性オークが嘆息する。呆れたというか、しょうがないな、という表情。
「そうよねぇ、男オークが出てくと、アイツらテンション上がるのよね」
「最近は女オークが出てきてもテンション上がる姫騎士いない?」
「あー、わかる。なんなのかしらね、あれ」
「とりあえず、たむのわ姐さん方。対応は見てから考えるからさ……」
 男性オークたちの言葉に、女性オークたちは「はいはい」と返事をすると、めんどくさそうに広場へと出ていく。女性オークたちが広場についてみれば、なんか胸をはだけたりした姫騎士たちが、屈辱の顔でこちらを睨みつけていた。
「くっ……卑劣なオークどもめ! ころせ!」
「いや、殺さないけど」
 姫騎士の言葉に、女性オークたちが嘆息する。
「えっと……毎度来るけど、その、なにが目的なの、アンタら……」
「目的だと!? おのれ、やはり私の身体が目的なのだな、ケダモノめ!」
「いや、あたし女なんだけどさ……」
「それはそれで! こう、色々使えるだろ、こういう形の」
「それ以上言ったら洗井落雲の首が飛ぶでしょ! 黙ってなさい!」
 隣の姫騎士がめっ、ってした。
「とにかく、くっ、殺せ!」
「いや、あの……」
「卑劣なオークどもめ! あれやこれやあんなことやこんなことをするつもりなのか……くっ、殺せ!」
「おかーさん、あれやこれやこんなことってなぁに?」
 と、近くにいた子供オークが言ったので、おかあさんオークは「気にしちゃだめよ、帰りましょ」といって子供の手を引っ張っていった。
「えーとさぁ、とにかく、迷惑なんで帰ってくれないかな……」
「なんだと!? 我々を逃がすというのか!? しょうがないなぁ、今回は帰ってやろう!」
 すっ、と立ち上がった姫騎士たちは、こくり、と頷くと、すたすたと去っていった。
「また明日来るからな!」
 そういう姫騎士たちに、
「いや、来ないで……」
 と、女性オークが言った。
 ――この村に迫る、トラブル。
 そう、それは、姫騎士たちによる毎日の襲撃であった――!!

●レガドイルシオン姫騎士モドキ
「レガドイルシオン姫騎士モドキですね」
 と、ローレットの情報屋がそう言ったので、アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)はその美しい眼を死んだ魚のそれのように曇らせてから、こう言った。
「レガドイルシオン姫騎士モドキ」
「そうですね、レガドイルシオン姫騎士モドキ。幻想に生息する、ドッペルゲンガー種の魔物ですね。
 ドッペルゲンガー種の魔物はご存じですか? いわゆる人間に擬態するタイプの魔物で」
「それはなんとなく」
 そうつぶやいてから、ハッとした表情を、アッシュはみせた。
「分かります。ええと、それはさておき、レガドイルシオン姫騎士モドキ?」
「はい。特に姫騎士に擬態するタイプのドッペルゲンガーです。くっ、殺せ! というのが鳴き声で」
「鳴き声なんですか、それ」
「はい。姫騎士のそぶりを見せて、相手を誘惑したりするのですが……まぁ、実際のところは剣や魔法の腕も立ちます。相当厄介な相手ですよ。ただ……なんでしょうね、バグぅ……なんですかね? オークとか悪漢にはめっぽう弱いみたいで……」
「なるほど、読めました」
 アッシュは嫌そうな顔をした。
「つまり、悪いオークや悪漢のふりをして、「げはは、姫騎士様はお美しいなぁ」みたいなロールをして、野生の姫騎士を「くっ、殺せ」みたいな感じに弱体化させつつ戦うタイプの依頼ですね? これ?」
「詳しいですね。経験者ですか?」
「こんな経験はしたことありませんが、過去の報告書などを読めばだいたい想像がつきます」
「なるほど」
 情報屋が頷くのへ、アッシュは本当に嫌そうな顔をした。
「まぁ、お受けするかどうかはお任せしますが、まともに衝突すれば相当強力な相手です。
 ですので、素直に悪人ロールをしておけばいいと思いますよ」
 情報屋の言うことは事実である。レガドイルシオン姫騎士モドキは強力な魔物であり、正面からぶつかれば相応に損害の発生する恐ろしき魔の姫騎士だ。ん、それって悪落ち姫騎士って事? それはそれでいいな。いや、すみません、本音が出ました。
「いま何かが地の文をジャックしませんでしたか?」
 情報屋がそういうのへ、アッシュは「この人は何を言ってるんだろう」みたいな顔をした。
「さておき、よろしきお願いします。一応、オークの皆さんは困っていますので」
 情報屋の言葉に、イレギュラーズ達は頷いた。
 妙な依頼だが、お仕事なのだ! 頑張れイレギュラーズ!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 此方はアフターアクションなので、まぁwinwin関係みたいな感じです。

●成功条件
 悪漢のふりをしつつレガドイルシオン姫騎士モドキと戦い、くっ殺させる。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 幻想にある、とあるオークの街。そこでは旅人(ウォーカー)を祖先に持つオークさん達が平和に暮らしていました。
 そこに現れる、野生の姫騎士! そう、レガドイルシオン姫騎士モドキ! レガドイルシオン姫騎士モドキはオークの皆さんに毎日くっ殺をせまり、大変迷惑をかけています!
 そこで皆さんの出番です! レガドイルシオン姫騎士モドキをやっつけて追い払うのです!
 とはいえ、レガドイルシオン姫騎士モドキは高位のドッペルゲンガー種モンスター。正面から戦えば、相当の損害は免れません。
 ですが! 此方には手があります! レガドイルシオン姫騎士モドキは、悪いオークとか悪漢みたいなロールプレイにめっぽう弱いのです! 思わず「くっ殺せ!」と言いたくなってしまうような相手と戦う時、レガドイルシオン姫騎士モドキはかなり弱体化します!
 みなさんは、悪漢のふりをしながらレガドイルシオン姫騎士モドキと戦い、弱体化させた状態で撃退しましょう!
 大丈夫です! ちょっとした姫騎士くっ殺せプレイをしていればいいですし、なんなら姫騎士に混ざって率先してくっ殺せって言ってみれば、他の姫騎士モドキたちもつられて弱体化するはずです!
 というわけで、あらゆる手を使い、レガドイルシオン姫騎士モドキを撃退してください! 頑張れイレギュラーズ!
 作戦決行時間は昼。周囲は、オークの街の広場になっています。戦闘ペナルティは特に発生しないので、沢山姫騎士くっころロールプレイ溶かしてください。

●エネミーデータ
 レガドイルシオン姫騎士モドキ ×8
  レガドイルシオン姫騎士モドキです。ドッペルゲンガー種と呼ばれる、人間に擬態する強力な魔物の一種。
  特に姫騎士に擬態しており、強力な剣技と魔法を併せ持つ、強力なユニットです。
  が、悪漢とか悪いオークにはめっぽう弱く、遭遇するとよく「くっころ!」と鳴きます。
  まともに戦うと強いですが、悪漢ロールをしていればただの面白い女なので、適当に遊んでていやーってしてください。
  ちなみに、どんな顔をしているかはお任せします。
  了解がとれていれば、参加メンバーで一番姫騎士っぽい顔してる人と同じ顔や声しててもいいです。

 以上となります。それでは、くっ、殺せ!!

  • オーク「姫騎士だ! 野生の姫騎士が攻めてきたぞ!!!」完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年07月11日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
白薊 小夜(p3p006668)
永夜
高槻 夕子(p3p007252)
クノイチジェイケイ
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
鈴鳴 詩音(p3p008729)
白鬼村の娘
シャールカーニ・レーカ(p3p010392)
緋夜の魔竜
古谷 斎(p3p010672)
たぶん人生のラストチャンス
雑賀 千代(p3p010694)
立派な姫騎士

リプレイ

●少女が後に語ったところによると。
 ――此の世界が混沌と呼ばれる由縁……。
 其の神髄を垣間見た、正にそんなひと時でした……。
 |・x●メ) なんですかあの生き物は……。
 ――『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)の日記より。

 というわけで、ここは平和なオークの街です。あちこちには様々なオークがおり、平和な生活を送っています。
 オークと言っても、いわゆる魔物のオークではない。恐らくは、祖先は旅人(ウォーカー)なのだろう。兎に角、旅人のオークの子孫たちなので、当然、性格も穏やかだし話も通じる。
「なんだな、故郷と一緒の景色ってわけじゃないが、こうやって普通に生活してるオークを見ると……やっぱり故郷を思い出すもんだなぁ。宇宙エルフがいれば完璧だったんだが!」
 と、どこか懐かし気にいうのは、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)だ。オークであるゴリョウには、何処か見慣れた光景なのかもしれない。
「なるほどなー。あーしには流石混沌世界、って感じの光景だけど……。
 オークも普通の生活してるってなると、やっぱり背広着て満員電車に乗ったりしてんのかなぁ」
 口元に人差し指など当てつつ、そう思案するのは『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)だ。
「意外と、練達に再現性オークシティとかあるのかも。おもしろ、探してみよっかな」
「練達なら何でもありそうな気がしますね……ここは幻想ですが」
 アッシュがそういうのへ、『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)が、静かに苦笑した。
「ええ。仕事内容を聞いた時、練達の話かと思ったわ。
 幻想なのよねぇ」
「まぁ、それこそ混沌世界、って事なんだろうな!」
 ゴリョウがぶははは、と笑った。
「そこは、確かにそうね。ドッペルゲンガー。
 人をまねた剣、楽しませてくれるとよいのだけれど」
「ええと、今回は、そんな真面目なお仕事じゃなさそうだけど……」
 苦笑するように言うのは、『白鬼村の娘』鈴鳴 詩音(p3p008729)だ。おどおどとした様子であたりを見ている。
「確か……ヒメキシモドキ、だよね……?」
「うん、そうだね。で、こう、悪い奴? に弱い……みたいな」
 困惑した様子で言うのは、『たぶん人生のラストチャンス』古谷 斎(p3p010672)だ。
「俺、今回が初仕事なんだけど……ローレットってこんなこともやるんだね……?」
「慣れとくといいぞ。ある時はある。
 俺もなぁ、なんか最近、姫騎士に縁があってなぁ」
 ゴリョウがそういうのへ、斎は「えぇ」と唸った。
「あるんだ……いや、不思議な世界だなぁ……」
 そんな一行の下に、オーク男性と女性が近づいてきた。この街の住人で、依頼者の一人でもある。
「ああ、ローレットの皆さん。この度はありがとうございました」
 そう言って二人が何度も頭を下げるのへ、『緋夜の魔竜』シャールカーニ・レーカ(p3p010392)が頷いた。
「気にするな。これも仕事だ……今回は災難だったな」
 そういうレーカへ、オーク女性が頷く。
「ええ、別に男どもも頼りにならなってわけじゃないんですが……なにせ、姫騎士でしょう?」
「そうだな、姫騎士だからな……」
 レーカが相槌を打つのへ、オーク女性は嘆息した。
「ええ、こっちが真面目にやろうとすればするほど、アイツら喜んで寄って来るし……困るんですよね。何せ、姫騎士でしょう?」
「そうだな、姫騎士だからな……」
 心底同情したように、レーカが相槌を打った。オーク女性が嘆くように続ける。
「これじゃあ、外の畑にも作業に出られない。知ってます? アイツら、外の畑で自分を縛って倒れてたんですよ。で、『卑劣なオークめ、私も耕す気か!』って。意味わからないじゃないですか。なにせ、姫騎士でしょう?」
「そうだな、姫騎士だからな……」
 オーク女性の嘆きを心から理解したように、レーカは相槌を打った。
「何なのこの会話」
 たまらず『烏天狗』雑賀 千代(p3p010694)が声をあげる。
「絶対この報告書書いてる本人も理解してないよこの会話。
 姫騎士って何なの? ゲシュタルトほーかいしそう」
 むむむ、と頭に手をやって困惑する千代。
「え、ええと、姫騎士っていうのはね……?」
 詩音が真面目に解説しようとしたので、千代は慌てて手を振った。
「大丈夫! 分かってる! その根底がちょっと崩れそうなだけ!」
「本当に、混沌世界って何でもありなんだな……」
 斎が困惑したようにそういう。
「えーと。さっきも言ったけど、悪い奴に弱い……って言うと、オークの人達になんか失礼だな。でも、その、悪い奴に弱い、んだろ?」
「そだねぇ。真面目に戦うと結構な強敵みたい」
 夕子がいうのに、斎は頷いた。
「流石に、まだまだ鍛え足りない俺じゃ、正面からやって勝てる相手じゃなさそうだ。
 となると、やっぱり、この悪人の演技が必要になる、わけだけど……」
「うー、正直あたいもローレットに所属して初めての依頼なわけだけど、すごく困惑してる。
 けど! 任侠のものとしては、悪役ロールはちょっと!」
 千代が言うのへ、小夜はくすくすと笑った。
「まぁ、好きにすると良いわ。此方もサポートはするわよ」
「お願いします! けど足を引っ張るつもりはありません!
 私の任侠道をみせてやるー!」
 おー、と千代が声をあげた刹那――かんかん、と防災用の鐘が鳴らされた。本来なら、災害や魔物の襲来に際して鳴らされるそれは、今日この時に関しては――。
「姫騎士だ! 姫騎士が来たぞ!」
 姫騎士の襲来によって鳴らされていた!
「ああ、本当に来るんですね……」
 少しだけ遠い目をして、アッシュが言う。
「なんだかな……」
 ゴリョウも少し遠い目をして言う。
「まぁ、しょうがないわね。やりましょう、皆?」
 小夜がそういうのへ、仲間達は頷いた。
「イレギュラーズさん達! こちらです!」
 と、オークに呼ばれて向かった町の広場には、どこからどう見ても姫騎士としか言いようのない集団がいた。
「くっ、卑劣なオークどもめ! オーク、おー……あれ?」
 姫騎士――いや、レガドイルシオン姫騎士モドキが此方の姿に困惑した様子を見せる。
「オークいないじゃん……」
 しゅん、とした様子を見せる姫騎士モドキ。
「うーん、露骨にやる気をなくされると、ちょっとイラっと来るね……」
 千代が肩を落とす。
「なんでだろうな……別にやる気を出されても困るだけなんだが……」
 レーカが言う。
「いや、まて! いるぞ、オーク!」
「ほんとだ……黒豚系オークがいる!」
 ゴリョウの姿を認め、にわかに活気づく姫騎士モドキたち。ゴリョウが少しだけしゅんとした。
「こんな風に喜ばれても嬉しくねぇよな……」
「け、けど、せっかくの状況だし……!」
 励ますようにいう詩音に、ゴリョウは頷いた。
「ええと、じゃあ、はじめるか、皆……?」
 ゴリョウの言葉に、夕子が頷いた。
「おけまるー。じゃ、はじめよっか!」
 と、こほん、と咳払い。夕子は悪い笑みを浮かべると、
「来たわね、姫騎士……のこのこ殺されに来るなんてね?」
 と、悪いギャルの顔をする!
「悪いギャルだ! 悪いギャルもいるぞ!」
「きっと敵の女幹部に違いない!」
 にわかに活気づく姫騎士モドキたち!
「なんか……大変なんだな、ローレットの仕事って……」
 斎が嘆息する。
「まぁ、その内良い事あるさ……。
 さて、えーと」
 ゴリョウはコホンと咳払い。
「ぶはははッ、随分とイキのいいネエちゃんどもじゃねぇか!」
 不敵な笑みを浮かべ、くい、と人差し指を曲げて見せるゴリョウ。姫騎士モドキたちのテンションが上がる!
「あ! 悪いオークだ!」
「これはもう、倒すしかないな!」
 じゃき、と剣を抜き放つ姫騎士モドキたち!
「ふむ……気配は確かに、それなりにやるように感じるけれど」
 小夜が言う。間違いなくおかしな連中だが、どうやら実力のほどは確かなようだ。
「とにかく……やりましょうか。悪く、よね。悪く」
 小夜が言うのへ、皆が頷く。
「うう、でも、でも、私は正々堂々と戦う!」
 どーん、と千代が頷く。
「その意気やよし! かかってこい!」
 姫騎士モドキたちが叫ぶのへ、千代は頷いた。
「いくぞ! 雑賀 千代、参る!」
 さておき――戦いである!

●姫騎士VS悪いイレギュラーズ達!
「うわーーん! ころせーー!!!」
 と、千代が触手にまみれて泣いていた。状況を説明すると、得意の飛行状態で戦いに挑んだ千代は、なんやかんや落下して(ドジっ子なので)姫騎士モドキの群れに突撃した(ドジっ子なので)後、ペットの触手植物ミサキちゃんに乗って戦おうとしたら逆に乗っかられて身動きが取れなくなったのだ!
「フ、フフ……まさか自分のペットに拘束されるなんて……なんて無様! こんなの雑賀家の恥じゃない!
 ……くっ! 殺せ! こんな無様な姿を晒し続ける位なら……いっそ、一思いに殺せー!」
 じたばたしながらギャン泣きする千代! その姿は何か後光が指すようにすら見えた!
「す、凄い……見事な姫騎士……!」
「これは私達も負けていられませんね……!」
 そのすばらしい姿に、姫騎士達が奮起する!
「勝負だ……そこの男!」
「えっ、俺かぁ」
 斎がこほん、と咳払い。
「──のこのことオークの住処へ現れるとは、余程の身の程知らずと見えるねぇ。
 君達がどこまで気高く立ち振る舞えるか、ここで見世物にしようじゃないか」
 一生懸命悪い顔をしながら、斎が銃を突きつける。姫騎士モドキがくって言った。
「なんと卑劣な男だ……恥を知れ!」
 なんかノリノリでそういう姫騎士モドキに、斎は嫌そうな顔を一瞬、しつつ。
「──おっと、そんな態度でいいのかな?
 もし俺に手を出せば、たちまちに周りを取り囲んでいるオークが君を……ね?
 さぁ、死ぬより酷い目に遭いたくなければ武器を置くんだ。
 例えその身が汚されようと、騎士の尊厳まで殺されたくはないだろう?」
 くくく、と割るっぽい笑みを浮かべる斎。姫騎士がくっ、って鳴いた。
「何と悍ましい……騎士の尊厳は奪わせんぞ! 殺せっ!」
 なんか勝手に剣をガシャーンって捨てて、姫騎士が跪いた。
「チョロすぎる……」
 斎がドン引きした。

 さて、そんな感じで無駄に弱体化した姫騎士達を順調にていやーしていくイレギュラーズ達。とは言え、弱体化したとはいえ、相手は高位の魔物達。もちろんそれなりに傷はおっているが、此方が追い込まれる、というほどではもちろんない。
 が。ここに追い込まれた悪のくノ一がいた――夕子である!
「くっ……まさかここまでやるなんて……!」
 夕子が荒い息をつく。姫騎士は得意げに剣を構えた。
「お前のような悪漢に、気高き姫騎士は負けない! さあ、トドメ――!?」
 そういった刹那、姫騎士の体がぐらりと揺れた。
「体が痺れる――これは!?」
「そろそろ効くころね。最初に傷つけた場所から回った毒が。
 満足に剣が振るえなくなってくるんじゃない? 騎士姫様?」
 と、妖艶な笑みを浮かべる夕子!
「毒か! なんと卑劣な……!」
「貴方の正義はあーしの毒で負けちゃうのよ。悔しい? でもこれが現実よ。
 情けないわね、姫騎士さん。正義は負けないとか言っておいて、そのざま。笑っちゃうわ」
 くすくすと笑う夕子。ゆっくりと近づき、そのつま先で姫騎士の顎を持ち上げてみせた。
「卑怯者め……正々堂々と戦え! あと殺せ!」
「卑怯? 正々堂々と戦え? ばーか、勝負は勝てばいいのよ。そんなのもわからないの?
 それに、殺せ? そんな事するわけないでしょ。最後の最後まで、遊んでア・ゲ・ル。その顔が泣き顔になるまでね――」
 些かエロティックな展開が始まろうとしている一方、小夜は相対していたわんわんっぽい姫騎士を見事切り伏せていた――。
「ふふ……それなりにできると思ったけど。この程度なのね」
 力を失い、倒れ伏した姫騎士の頬に、自身の唇を近づける。
「くっ……殺せ!」
「まだ殺しはしないわ。私が勝ったら、好きにさせてもらう。その約束よ」
 つ、と、刀傷に指を沈めた、ああ、と姫騎士が鳴く。
「良い声で鳴くのね――すきよ、そういうの」
 かぷり、と首筋にかみついた。
「いや、やめて……」
「殺せ、って言ったのに。可愛い」
 歯に力をこめる。動脈をかみ切らないように加減をしながら、その歯を食いこませた。
「やめて、お姉様、やめて……!」
 小夜は首筋から顔をあげると、手にした刀をゆっくりと、姫騎士モドキの腕へ突き刺した。
「大丈夫、殺さないわ。でも、でも逃がしてあげない。貴女はここで終わるの。
 だって、私の好きにしていいのでしょう? 私の好きになってくれるのでしょう?
 壊して、優しくして、また壊して優しくして――楽しませて頂戴?」
 そう言って、小夜は――いや、これ以上はヤバい気がするので視点を移します。一方詩音は、
「アハハ! アハハハハ!」
 壊れたような笑いを声をあげながら、赤き刀身を引きずる様に歩く。
「ねぇ~、なになになに? なにをするの??
 御手洗は三途の川の向こう岸に逝く前にすませてね?
 バラバラに解体してあげるね?女のモツは嫌いじゃないの」
「う、うわああ! 快楽殺人鬼だ!!」
 姫騎士モドキが悲鳴を上げる!
「くっ、殺せ……!」
 シンプルにおびえた姫騎士たちが浮足立つ!
(えーと、悪役っぽいロールってこれでいいのかな……? 怯えてるみたいだから、これでいいんだよね。よし)
 心の中で頷きつつ、詩音は笑う。
「あぁ~、でも、姫騎士さん魔物だから、ハラワタは人間とは違うのかなぁ~?
 気になるなぁ……でも、どんなモツでも血でも、綺麗な花にしてあげるからね?」
 と、その赤い刀身を振り上げ――いや、こっちはこっちでヤバい! 視点を変えよう!
「皆、結構ノリノリなのでは……?」
 レーカが嘆息する。とは言えレーカも、その足元に姫騎士を転がしていた。
「そら、頭がぼうっとしてきただろう。身体が自分の物でなくなるような感覚はどうだ?」
 レーカが言うのへ、姫騎士が言う。
「くっ、殺せ……!」
「殺す? 馬鹿を言うな。これほどの器量だ、高値で売れるだろう……」
「下衆め……!」
 くくく、と笑うレーカに、アッシュが嘆息する。
「……レーカさんも結構、堂に入っていますね……」
 というアッシュの足元にも、縛り上げられた姫騎士達が転がっていた。新鮮な姫騎士達は、くっ殺せ、くっ殺せ、と元気に鳴いている。それを嫌そうに眺めながら、
「……私は何をしているのでしょうか」
 と、ぼんやりと呟く。回りにはこう、悪人たちによる姫騎士討伐光景が繰り広げられていた。いや、イレギュラーズ達は悪人ではなく、姫騎士達こそ悪人なのだが、絵面だけ見たら、悪い光景である。
「くっ、殺せ!」
 足下で、姫騎士が鳴いた。アッシュは頭を振ると、
「いいえ。とりあえず木につるしたりします。あ、氷漬けとかもいいかもしれませんね」
「なるほど……姫騎士的にもそれは大変マニアック。石化とかも訴求できるかもしれない……」
「しますかね、それ……でも、コーナリングで差をつけるにはぴったりかもしれません……」
 アッシュが適当な相槌を打ちつつ、姫騎士を凍らせた。

●さらば姫騎士
 さて、姫騎士達は順調に討伐されていく。
「さーて、あと一人か……」
 と、姫騎士を拘束し、近くの野良猫のしっぽでぺしぺししていたゴリョウが声をあげる。残る姫菱は一人――なれば、止めを刺すのはオークの仕事。仕事か?
「深く考えたら負けだな……最近、姫騎士について真面目に考え過ぎた……」
 ゴリョウは嘆息すると、天恵(ギフト)を発動した。瞬く間にスマートになったイケメンオークが、身構える姫騎士へとゆっくり迫った。姫騎士がおろおろしているところ、ゴリョウは姫騎士に壁ドンした後、姫騎士のあごをくい、と指で持ち上げた。
「悪い子猫ちゃんだねぇ」
「きゅん」
 姫騎士がきゅん、ってしたので、そのままデコピンした。姫騎士がきゅう、って言って倒れる。
 終わった……全てが。倒れた姫騎士達は、まるで影が光にさらされてとけるように、しゅう、と消えていった。
「あら……連れて帰って飼ってあげようと思ったのに」
 小夜が冗談めかして言う。冗談なのだろうか。
「つかれたー! 変な仕事だったね。
 っていうか、いろんなドッペルゲンガーがいるのね。他にもいるのかな?」
「考えたくないけど……例えば?」
 尋ねる斎に、夕子はんー、と考えるそぶりを見せてから、
「満月の夜になると萌え系妹になるウェア妹とか、鏡に映されるとイヌ系お姫様になるとか……?」
「それ、どんな属性なの……?」
 詩音が苦笑した。
「しかし、まぁ、厄介な相手だったな」
 レーカが言うのへ、千代がうなづく。
「まったく……恥ずかしい姿を見せてしまいました!」
 というが、半分くらい千代の自爆のような気がする。
「……しかし……な、慣れねぇなぁこの手の仕事……ッ!」
 ゴリョウが言うのへ、アッシュは苦笑しつつ、
「ゴリョウさん、どうか元気を出してください。
 ああいう生き物は偶にいるのです……此の世界には……」
 そういうのであった。

 混沌。それは不思議な世界。
 今度は姫騎士モドキは、あなたのそばにやってくるのかもしれない……。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 くっ、殺せ!

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