シナリオ詳細
<真・覇竜侵食>亜竜を飲み込む蟻帝
オープニング
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覇竜デザストルの地に現れたアダマンアント。
かなりの数の亜竜種が住んでいた集落をも滅ぼした恐るべきこの種族は、イレギュラーズを主体としたチームによって撃退されたのだが……。
「なんでも、アダマンアントに女王が誕生してしまったって話さ」
亜竜集落フリアノンに集まるイレギュラーズへ、『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)は真顔で説明を行う。
アダマンアントによって誘拐された亜竜種をベースとして生み出された蟻帝種と呼ばれる存在が主となり、亜竜種達を攻めているという。
亜竜種としては、家族や友人と同じ姿、知識を持つ相手と交戦する形となり、非常に戦いづらい状況とのこと。
「アダマンアント達は種の存続、繁栄の為、より多くの亜竜種を攫い、更なる蟻帝種を生み出そうと考えている」
多少の力、数はより強力な亜竜、魔物に潰されるのは覇竜の常。
アダマンアントクイーンの考えも生存本能ではあるのだろう。
もちろん、亜竜種として、ローレットとして、それを看過することはできない。
「交流相手がやられる様を黙ってみていられるわけもない。まして、今は亜竜種もイレギュラーズにいるね。同胞が連れ去られる様なんて許せるはずもないだろうさ」
亜竜種達とて、覇竜の地で生き残るのに必死だ。
少しでも彼らの力となり、障害であり、脅威となるアダマンアントを撃退したい。
オリヴィアが向かってほしいと依頼したのは、シャウデと呼ばれる小規模集落。
アダマンアントも少数ではあったが、そのうちの1体は蟻帝種とのこと。
「どうやら、その姿は我が覇竜轟雷拳の門下生と同じ姿をしているという証言がある」
話を聞いていた覇竜轟雷拳師範、徐・宇航がそこで話に割って入ってくる。
彼は門下生と共に、別所の集落に向かうアダマンアントの掃討へと当たるとのこと。多少力の劣る門下生でも、戦力として当てにしたい半面、連れ去られる危険もある為、宇航も戦力を避けないそうだ。だからこそ、門下生と同じ姿をした蟻帝種の相手ができないのが残念と無念さを感じさせる。
対したのであれば、本物の居場所を聞き出したいところなのだろうが……。
「蟻帝種は本人ではないと聞く」
「ああ、だが、本人の姿、知識を持っている分、厄介な相手さ」
宇航の言葉を、オリヴィアが補足する。
あくまで蟻帝種は亜竜種とそっくりな姿、知識を持つ別個体。
ただ、強化された肉体を持つ為、その強さは明らかに本人以上となるのは確実だ。
「だが、相手は蟻帝種であり、亜竜種ではない。覚えておくことだ」
宇航が意味深な一言を付け加えた後、門下生達へと呼びかけ、出立するよう促す。
「では、我々も現地に向かう。……諸君の健闘を祈る」
一礼した覇竜轟雷拳の面々は反転し、素早く駆け出して去っていったのだった。
●
オリヴィアに見送られ、イレギュラーズもフリアノンからしばらく歩いた場所にあるシャウデという小さな集落へとたどり着く。
人口は僅か数十人。亜竜種達はこの地を移動の際の中継地点に利用し、この地の人々も他の場所へと出稼ぎに行くことが多いのだそうだ。
シャウデは岩場となっており、高い岩に囲まれる形で築かれている。
守りは強固であるが、逆に言えば強者に攻め込まれれば逃げ場も満足になくなってしまう。
それ故に敵を集落に入れないことが必須だったのだが……。
「我々の繁栄の為、大人しくついてきてもらおう」
すでに、2体のアダマンアントを引き連れた蟻帝種がシャウデ内部へと入り込んでしまい、住民らに抵抗せぬよう脅しをかけていたのだ。
その蟻帝種は武闘家を思わせる青年の姿をしている。
彼こそが宇航の言っていた覇竜轟雷拳門下生と同じ姿をした相手に違いない。
「ローレット……か。邪魔はせぬよう伝達したと聞いていたが……」
構えをとる相手は王・浩然と名乗るが、自身が蟻帝種である別の種族であることを強く自覚していて。
「手出しをすれば、中立とはいかなくなる。わかっているな?」
その言葉を聞き入れる者が依頼を受け、ここまで駆け付けているはずもない。イレギュラーズは距離をとるシャウデの人々と合わせ、戦場となるこの場所を改めて見回す。
生憎とイレギュラーズは岩に囲まれたこの集落の入り口を背にして敵と対する状況。
熱さが3~4m程もある壁は高さ15~20mはありそうだ。所々に日光を取り入れる穴が開いているが、人が通れる大きさではない。
真上は開いているが、いくら飛べる亜竜種とはいえ、一気に飛べば的になる。避難させるにも慎重になる必要があるだろう。
「障害となるなら、排除するまで」
2本の両手武器を構える2体のアダマンアントに合わせ、浩然と名乗る蟻帝種もまたイレギュラーズへと飛びかかってきたのだった。
- <真・覇竜侵食>亜竜を飲み込む蟻帝完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年07月07日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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アダマンアントが出現したという、高い岩場に囲まれた小規模集落シャウデ。
そこへ、『自在の名手』リリー・シャルラハ(p3p000955)と『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)がファミリアーを飛ばす。
2人は鳥型と小型を使い分け、全体俯瞰と他メンバーの状況把握を行い情報共有を行う。
「念のためにも。広域俯瞰は蟻に不意打ちされないように使いたいし」
リリーはすでに、集落内部へと敵が入り込んでいることを確認する。
「ふむ……住民は岩場へと寄って避難はしているが……」
『真竜鱗』オウェード=ランドマスター(p3p009184)もその情報を元に、戦略眼を働かせて入口付近での戦闘を皆へと提案する。
(「……シャウデの皆さん、気づかれぬよう退避を」)
感情探知で助けを求める人々を察知した『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)は、ハイテレパスによる念話で語り掛けて。
いささか安堵した亜竜種達だが、予断を許さぬ状況に変わりないようで、「一言お願いします」と返事があった。
「隠れてもらえれば、後は俺達でどうにかなるっスかね」
同胞の無事を確かめ、『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)は腕を鳴らす。
基本的に、自分達が引き付けて討伐に当たり、集落民の安全を確保。
ここは住民の安全が最優先。自分達のことも考えねばならぬが、蟻達の思惑通りにはさせないと皆気合十分だ。
早速、突入するイレギュラーズ。
手前側へといた人々へと、『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が近寄り、人心掌握術を駆使して言葉をかける。
「約束する。蟻共にはお前達に指一本触れさせない」
ジェイクの優しく力強い一言がこの上なく心強く感じたようで、亜竜種等は大きく頷いて後方へと退避していく。
「ローレット、か……」
2体の巨大アリ、アダマンアントを引き連れた蟻帝種(アンティノア)。
亜竜種をベースとして作られた彼はその記憶を持ち合わせ、王・浩然と名乗る。
「何をしに来た。我らの行いを妨げはさせぬぞ」
しかしながら、その頭の触角や尾のようについている蟻の腹部のような器官がアダマンアントだと主張している。
「まいったね……アントとは何度か戦ってきたけど、蟻帝種とか進化が早すぎるなぁ」
Я・E・Dは表情こそ変えぬが、その耳がピクピクと動いていた。
(アンティノアが誕生した後もアダマンアントは進化を続けてる)
よしんば、亜竜種の拉致の件がなかったとしても、すでに捨て置ける連中でないと、シラスも脅威と捉えていた。
「こんな手段を取るアンティノアはソレはソレとして生き物の生態何だから思うことはないよ」
一方で、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は一件冷めた態度だが、敵の構えを目にすれば強い関心を抱いて。
「アンティノアは基になったニンゲンの拳法まで使えるんだね」
「フム……いい構え方じゃな……」
「大した迫力だぜ」
その構えは、亜竜種時に修めた覇竜轟雷拳そのもの。
高い実力を持つ蟻帝種……浩然の力に、オウェード、『竜剣』シラス(p3p004421)も思わず唸る。
「素手で戦えない事は残念じゃが、戦わせて頂こう。まあどっちにしろ中立じゃなくなるがのう……」
「中立とはいかなくなる……ね」
「わりぃな。ローレットはアリンコと手は組まねえんだ」
武器を手に取るオウェード、セレマに合わせ、ジェイクもまた身構える。
「政治を知らないようだから教えてやるが、それあくまで自分の実力が相手と同等以上の場合に通じる話だ」
セレマも相手を直視して煽る様に語り掛ける。
「この種族に敗因があるとしたらそれはただひとつ。世間知らずのバカに統治されたことだよ」
「我々に宣戦布告していると捉えてよいな?」
表情を険しくする浩然。
イグナートは依頼前、亜竜種であった浩然の様子について、別所へとアダマンアント掃討へと向かった徐・宇航師範の言葉を思い出す。
(筋が良かった。飛び上がりからの尻尾の一撃には驚いたものだ)
その実力を宇航師範も高く買っていたそうだ。
「何にしても、この場を託してくれたジョ師範の気持ちを考えたら負けるワケにはいかないよね!」
「ああ、もう一つ……」
そこで、ジェイクが声を荒げて。
「虫けら如きが武人を気取るんじゃねえ!」
「我らアダマンアントを愚弄するか」
明らかにこちらを睨みつけてくる浩然。その自我はやはり、亜竜種とそれは別物だ。
「種の繁栄のために、他の種を犠牲にしていい道理なんてないっス」
亜竜種であるからこそ、ライオリットはそれに強い敵対の意思を示す。
例え同じ姿をしてようとも、どんなに強くなろうとも、ライオリットにそれを受け入れることなどできるはずもない。
Я・E・Dも、種の繁栄自体は生物にとって重要だと考える……が。
「でも、わたし達には亜竜の人達を見捨てるっていう選択肢は無いしね。悪いけど敵対させてもらうよ」
既存種と相容れないのなら、生存をかけて戦うしかない。
ギ、ギギ……。
蟻帝種の引き連れるアダマンアントも武器を携え、威嚇してくる。
「……もうここまできちゃったらやるしかないよね、全力で倒すよっ!」
リリーも仲間達の立ち位置を確認しながら、小さな体で精いっぱい主張する。
「殺されろとは言わないから、自分達の種の存続をかけて全力で来なよ!!」
ギ、ギギキィィィ……!
Я・E・Dの本心からの叫びを合図に、両者は激突し始める。
●
退避するシャウデの民に見守られ、イレギュラーズはそれぞれ担当する敵へと向かっていく。
(敵は3体で自分達の方が人数が多い)
Я・E・Dが考えるように、フリーとなる相手を作らない限りは集落民に気概は及ばない。
できるだけ入口より離れた家、岩壁等へと固まってもらう方がよいと判断し、メンバー達も事前にそうテレパス、あるいは直接会話の間に呼びかけを行っていた。
「抑えの皆さんはよろしくお願いするっス!」
アダマンアントへと向かうライオリットの呼びかけに頷いたジェイクは、蟻帝種王・浩然を抑える為にその正面に位置取って。
「武人なんだろ? そんな弱っちい奴らよりも俺達と勝負しろ!」
集落民より自分に注意が向くよう、ジェイクは大型拳銃『狼牙』から銃撃を放った敵へと勝負を挑む。
相手も蟻帝種として作り出されてはいるが、その性格はかつてあった亜竜種のもの。正々堂々勝負を挑まれれば拒否できるはずもない。
「いいだろう」
ジェイクよりも速く飛びかかってくる浩然。
背の翼は蟻の羽根となっているが、俊敏な動きで距離を詰めてきた敵はジェイクへと蹴りを見舞った……はずだった。
だが、その間へといつの間にかオウェードが割り込んでいて。
「生憎と1人で相手するとは言っとらんワイ」
本来、オウェードは素手で相手にしたかったのかもしれないが、彼は依頼を成し遂げる為に斧を使って戦いに臨んでいた。
その斧を使いつつ彼は防御を固め、浩然の猛襲を防いでいたのだ。
そういえばと、オウェードは相手が間近にいるタイミングで、自身の髭をアピールすることで、かつての師を連想しないかと考えたのだが。
(亜竜種じゃなく人間種じゃが、相手も蟻帝種じゃな……)
種族が違っても、髭だけで連想できるものだろうか。……残念ながら、相手にその様子はない。
その浩然を引きつけを行いながら、ジェイクはアダマンアントへと銃口を向けて発砲していた。
「リリーもサポートするよっ」
また、浩然を抑える2人の為にと、リリーが浩然に呪いの弾丸を撃ち込む。まずは、相手の動きを抑え込もうと、彼女はしばらくそちらへと攻撃を続ける。
「後は……」
同時に、リリーは 広域俯瞰も働かせるリリーだが、そちらは敵からの不意打ちを警戒するのに利用する。
合わせて、彼女は先程飛ばした鳥型のファミリアーでセレマを中心とした……アダマンアントと対するメンバー達の戦況確認も行う。
「一丁前に得物なんて構えやがってよォ!」
やや重い両手武器を携える巨大アリに、シラスが叫ぶ。
「回復に乏しい以上、この勝負は初動が重要だ」
上手くジェイクが浩然を抑え始めた事もあり、セレマはアダマンアントの動きに蓋をすべきと自らをアピールし始めて。
「例え相手が蟻だろうと、このボクの微笑に釘付けさ」
自らの美貌に絶対の自信を持っているセレマ。相手が誰だろうと、目をそらすことも逃げ出すことも叶わないだろうと胸を張る。
まして、この美貌を害しようとなど、できようはずもない。
その微笑にはセレマのそんな意思全てが籠められており、アダマンアント達に攻撃をも躊躇わせてしまう。
とはいえ、武人である浩然には、セレマも警戒を強める。
(武術家というのは殺しの技術を追求している輩だ)
相手がこちらを倒すべき存在としか認識していなければ……。
だからこそ、セレマも気を抜かずにアダマンアントと対する。
「余所見している場合かな?」
セレマに見惚れるアダマンアント目掛け、Я・E・Dが伸ばした指先から幾本もの光る糸を飛ばし、アダマンアントの体を絡めとる。
さらに糸を操り、Я・E・Dは2体のアダマンアントの体を雁字搦めにしてしまう。
「モード・スレイプニル……手早く片づけるっスよ!」
己の力を高めることで神の軍馬の如き速度を得たライオリットがアダマンアント1体へと攻め入る。
一気に距離を詰めんと、ライオリットは雷鳴の神を冠する雷撃をそいつへと打ち込んでいく。
ギギギ……!
全身を駆け巡る雷撃に焼かれ、重い刃を握る4本の腕に過剰ともいえる力が籠められるが、イレギュラーズの攻撃は止まらない。
不可能なる幻想を穿つ竜撃の一手。
イグナートの拳がアダマンアントの硬い殻を砕いていく。
「コレでイッキにいけるよ!」
目で了解とイグナートに向けて合図するシラスは殺人剣の極意をその身へと宿して。
ライオリットが焼き、イグナートが砕いた敵の体目掛け、シラスは拳を連打する。
その技は殺人剣の極意だが、シラスは武器を選ばず行使できる。
一度の連打では止まらず、シラスは立ち位置を変えてさらなる連撃を見舞う。
そいつと別の1体を纏めて捉え、Я・E・Dが言の葉に霊力を籠める。
前方へと放たれるのは、神秘の破壊力を持つ魔砲。
「硬くても、あまり関係ない」
貫通力に特化した砲撃の連射により、仲間達が攻撃を集中させていたアダマンアントの体を貫く。
ギ、ギィ……。
弱弱しく呻いたアダマンアントの片割れは満足に戦うことすらできぬままに倒れたのだった。
●
蟻帝種王・浩然は激しい乱打でイレギュラーズを攻め立てる。
「ハアッ、ハアアアアアッ!!」
覇竜轟雷拳は全身を凶器として攻め立ててくる亜竜種の武術。
蟻帝種となった浩然はそれを今の自身に合うよう昇華させており、一瞬の隙すら致命傷となりかねない。
そんな相手に、リリーは小さな魔弾を撃ち込んでいく。相手が速いと思えば、彼女はセレマの力を借りてその身を加速させる。
身長30cmという小人であるリリーの攻撃は一見豆粒にも思えるが、混沌において見た目の大小など強さの基準にはならない。
数え切れぬほどの依頼をこなしてきたリリーの射撃は他のイレギュラーズに劣らぬ威力を備えており、敵対者の力を大きく削いでしまう。
それでも、浩然は攻撃の手をほとんど止めず、拳を叩きつけ、空中から蹴りを浴びせかけてくる。
ほぼほぼジェイクへと繰り出されているが、その全てを庇っていたオウェードが引き受ける。
「むうう……!」
オウェードもただ攻撃されているだけではない。しっかりと反撃を打ち込んで痛み分けようとしていた。
当然ながら、いくら防御態勢をとっていてもオウェードの傷は深まるばかり。
交戦の合間にシラスが彼へと近づき、戦士の福音をもたらすことで手厚く傷を癒す。
「彼が倒れたら、作戦が瓦解してしまうからな」
とはいえ、オウェードの防御はなかなかのもの。シラスも回復専念とまではいかずにすんでいたようだ。
狙われていたジェイクは、浩然へと掠めるような射撃で引き付けを続けながら、残るアダマンアントの首元目掛けて死神の射撃を見舞う。
イグナートはすでに相手の防御を砕いていたことで、近距離から強打を浴びせかけていき、Я・E・Dも魔砲を撃ち込む。
敵は大鎌とハルバードを振るっていたが、思ったようなダメージを与えられずにいて。
「デカい得物を何本振り回せたって技が伴ってなけりゃあな」
シラスは些か呆れながらも、邪道の極み拳を叩きつける。
加えてライオリットが一気に距離を詰めて雷を纏わせた刃を刻み込む。
(こちらの注意が向いているから、やりやすいっスね)
最悪、囮になることも考えていたライオリットだが、仲間達の作戦が功を奏していたようで、攻撃に集中できていた。
仲間達の攻撃は貫通攻撃を伴うものもあったが、セレマは相手を引き付けつつ、仲間と連携行動をとることで卒なく避け、攻勢に出る。
すらりとセレマが抜いたのは、悲恋に囚われた死霊騎士との契約の剣。
禍々しい闇と呪いで包み込んだ刀身を、セレマが深々とアダマンアントの胸部へと埋め込むと、そいつはどうと音を立てて地面へと崩れ落ちた。
ふうと一息ついたイグナートは気合を入れ直して思う。
――蟻帝種に向上心があるのかどうか。
拳士はより強く、より速く、より高みを目指すべきだというのがイグナートの信念である。
「無いのであれば、殴り合いで負けるワケにはいかないね! オレの目指す強さはまだ遥か高いところにあるもんでね!」
果たして、一緒に戦った覇竜轟雷拳が蟻帝化によってどんな技になっているのか。イグナートはその点に関しては心躍らせる。
依然として、浩然を抑えているのはジェイクとオウェード。
シラスがその2人へと再度癒しをもたらす合間に、ジェイクが拳銃を構えて。
「『その姿』も『その技』もお前のものじゃない!」
絶え間なく銃弾を撃ち込み、ジェイクは敵の力を封じ込めようとする。
「お前が誇り高き武人の技を使うのは俺が許さない!」
「くっ……!」
一時的に力を封じられはするも、高い精神力で己の力を取り戻す浩然。
Я・E・Dも相手が思うように武術を使えぬようその体を縛り付ける。そこへ、ライオリットが迫って雷鳴の一撃を振り下ろす。
激しい殺気。
ライオリットは距離をとり、思わず身震いしてしまう。
「行くよ、ボクに続いて」
セレマの呼びかけを受け、身構えるメンバー達。
敵へと愛憎の呪いを振りまくセレマに合わせ、リリーが弾丸を立て続けに呪いの弾丸を放出する。
遠距離から攻め立てるリリーだが、相手の攻撃には細心の注意を払う。
「何かくるよっ!」
リリーが注意を促すと浩然が高く飛翔する。
「我が渾身の一撃、耐えられるか……?」
浩然は気を練り上げ、空中で荒ぶるように四肢で連撃を空中へと撃ち込む。
「この構えは聞いた……来るぞッ! ここはワシが受け止めるッ!」
オウェードが浩然を抑え込むように前に出ると、敵は広範囲へといくつもの光る柱を放出する。
ただ、イグナートは事前に聞いていた宇航師範の話を受け、敵の後方から竜撃の一手を叩き込む。
「ジョ師範は言っていた。蟻帝種には我らと違って大きな翼と長い尾がない、ってね」
亜竜種よりも高く飛べず、長い尾による攻撃もできないというデメリットは覇竜轟雷拳にとって大きい。
後方から攻め入る隙を付けたことで、浩然が地に落ちてしまう。
オウェードが不滅の如く自らの傷を塞ぐ暇に、メンバー達が畳みかける。
繰り返されるイレギュラーズの攻撃の最中、シラスは攻めきれる手ごたえを感じて、確殺自負の殺人剣をその胸部へと叩き込んだ。
「強かったぜ、覇竜轟雷拳」
「む、無念……」
目から光を失い、浩然は事切れてしまう。
「貴方達の負けだよ。せめて、貴方達が共に生きられる存在だったら良かったのにね、本当残念だよ」
勝利を喜ぶことなく、Я・E・Dは蟻帝種へと寂し気に言葉をかける。
「お前さんは王殿の複製……」
さらに、オウェードが肉体言語で語り掛けようとする。
本物の王・浩然は無事なのか。もしそうなら、捕らわれている場所がわかれば。
「ワシは徐殿の代理じゃ……」
交戦できなかった師範の無念を少しでも晴らすことができれば。
倒れた浩然へと伝えたいことは伝えたものの……、相手からは目ぼしい情報を得ることはできず仕舞いだった。
●
一通り終わった後、イレギュラーズは事後処理へと当たる。
襲われた住民達へと怪我がないかとオウェードが応急手当へと回ったり、ジェイクなどが新たな奇襲を想定して集落を囲む岩壁の補強を行ったりとしばらくの間忙しなく動いていた。
程なくして、シラスは倒した浩然の遺体を里へと帰すことを提案すると、メンバー達は道場のあるペイトまで搬送することに決めた。
「……しかし、覇竜轟雷拳かぁ。全身を武器にする、思いもしない攻撃……」
全身を使い、翼や尾まで利用する拳法。
蟻帝種が姿や知識を盗むのなら、リリーも……と彼女はこの戦いで何か得るものがあったようだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは連鎖攻撃の起点として活躍した貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
こちらは、天野ハザマGM主催<真・覇竜侵食>のシナリオです。
小集落を襲撃する蟻帝種の一隊を撃退していただきますよう願います。
●成功条件
蟻帝種の撃退
●概要
アダマンアントの統率者アダマンアントクイーンの誕生に合わせ、アダマンアントによる覇竜各地の集落を襲撃しているという情報が入りました。
これらの襲撃を退け、亜竜種達を助けていただきますよう願います。
●敵……アダマンアント×3体
○蟻帝種『第一世代』……王・浩然(ワン・ハオラン)
かつて、覇竜轟雷拳師範、門下生だった亜竜種青年が帝化処理をうけた存在です。
本人の知識をベースとした個体の為、覇竜轟雷拳も使いこなし、個体の強さもあって師範の徐・宇航でさえも凌駕します。
○アダマンアント×2体
全長2m程度。硬い外骨格を持ちます。
顎による攻撃と酸攻撃に加え、蟻帝種に武器の扱い方でも教わったのか4本の腕で武器を操り、斧と両手剣、大鎌とハルバードと同時に操る恐るべき相手です。
●NPC……覇竜轟雷拳師範、門下生
ペイトにて徐・宇航が開いた武術の一派。
翼や尻尾までも技に生かし、極めるには亜竜種であることが必須です。全身を凶器として利用することで、思いもしない攻撃が可能であり、覇竜の亜竜、魔物とも互角以上に渡り合うことができると言われています。
今回は別所の集落を守る為、共闘は叶いません。
○徐・宇航(じょ・ゆーはん)
長く伸びた髭が特徴的な45歳男性。師範。
攫われた門下生の身を案じ、同じ姿をした敵との交戦が叶わぬことに無念さを感じながらも、イレギュラーズに今回の状況を託して別の戦地へと向かいます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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