シナリオ詳細
<太陽と月の祝福>眠るマリオネット
オープニング
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『ファルカウ攻略作戦』を進めるローレットイレギュラーズ。
目指すは、深緑を覆う『茨咎の呪い』の解除。
それを実行する為、障害となっていた竜種や亜竜。それらが王として仰ぐ『冠位』暴食ベルゼーは撤退したが、深緑を茨で閉ざした張本人『冠位』怠惰カロンは健在だ。
また、カロンの手下である夢魔や魔種、力を貸している冬の王の配下など、なおも行く手を阻む存在は多い。
「皆さんにはこれらの討伐を願います」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は端的に現状と、依頼について集まったイレギュラーズへと告げる。
そこに駆け付けてくる幻想種の一団。
「ようやく追いついたな」
彼らは度々、迷宮森林で張り巡らされた茨の中でも同胞の救出に尽力してくれていた幻想種達だ。
最終局面になってようやく大樹ファルカウまでたどりついた彼らはこの戦いに加わろうとやってきたのだ。
「助力はありがたいのですが……、正直、警備隊の皆さんにとっては辛い状況です」
というのは、行く手を阻む敵、怪王種と化した夢魔ペアが眠りについたままの幻想種達を多数、操っているのだ。
怪王種達はさながら人形のように人々を操り、幻想種達の得意とする攻撃を仕掛けさせてくる。
それだけでなく、自分達が危機に陥れば、操る幻想種達から体力気力を奪おうとするのだからタチが悪い。
「なっ……!」
イレギュラーズの反応は様々だが、警備隊メンバーは揃って驚き、嫌悪感を露わにする。
さらに上を目指したいところだが、同胞の危機とあっては放ってはおけない。
依然として、邪魔な茨が健在ではあるが、先へと進む為の障害である怪王種の討伐はもちろんのこと。操り人形となっている幻想種の解放を願いたい。
「我らもできる限りのことをさせてもらう」
「敵は操っている人々も使い捨てる気でいます。……くれぐれもお気を付けください」
そう説明を締めくくったアクアベルに見送られ、イレギュラーズ、警備隊は先へ……ファルカウをさらに上へと進んでいく。
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凍てつくファルカウ内の通路を進むメンバー達。
それぞれ、これから対する敵、操られた人々に様々な思いを抱きながら、先へと急ぐ。
冷え切った通路のあちらこちらに氷の茨が巡らされた中、さらに上へと続く階段の手前で翼を生やす男女が待ち構えていた。
「あらあら、忙しないわね」
「少し、遊んでいかないか?」
小馬鹿にするような笑みを浮かべる夢魔……いや、冠位怠惰カロンの影響を受けて怪王種となった男女ペアは全身からかなりの力を放出し、やってきたイレギュラーズ、警備隊を威圧する。
サリーと名乗る女性、シリスと名乗る男性の2人へとすぐさま攻め込もうとすれば、敵はその手前に今なお眠りについたままの幻想種達を並べて。
「ああ、そうそう。遊ぶ相手はあたし達じゃないわ」
「同胞の手によっていたぶられるのだ。最高だと思わんかね?」
含み笑いをする男女。まさに外道である。
眠る幻想種達は、狂王種の意のままに動き、イレギュラーズ、警備隊へと攻撃を仕掛けてくる。
「やめないか。我々は貴方達を助けに……!」
「……はっ」
ふと、そこで一人の幻想種男性が目を覚ます。だが、彼はそのまま流れるように弓を射かけて放ってくる。
「どうなってる? 全身の言うことが利かない……!」
「「フハハハハハ!!」」
そんな幻想種の姿に、狂王種が高笑いして。
「いいわ。最高よ、貴方達」
「ああ、存分に我らを楽しませてくれ」
階段の上からこちらを見下ろしてくる外道に怒りを漲らせるメンバー達。ただ、操られた幻想種はもちろん、周囲に張り巡らされた茨が不意に束なって襲ってくる。
耐久力はさほどないが、何せ敵陣ともいえる場所。茨はほぼ無制限に復活してくる為、ある程度抑えながら交戦する必要がある。
「ここは役割を分担した方がよさそうだ」
警備隊隊長ラウルがイレギュラーズへと相談を持ち掛ける。
茨、操られた幻想種、そして、狂王種。
この場の面々は取り急ぎ作戦を立て、すぐさま散開して立ち回り始めるのである。
- <太陽と月の祝福>眠るマリオネット完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年06月28日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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夏だというのに、氷に閉ざされた大樹ファルカウ内部。
その寒さの中でも、邪魔な茨は広域に繁殖していた。
「茨の存在は面倒極まりないね」
『決死行の立役者』ルチア・アフラニア(p3p006865)が戦略眼も伴って見回す茨。
レーカも同じく、広域俯瞰して茨が束なって奇襲してくる全長を確認し、皆への情報共有をと考えている。
「当たり前だが、操られてる幻想種達はなるべく生存させたい」
『竜剣』シラス(p3p004421)は茨が覆う戦場において、無理やり操られる眠れる幻想種達の身を案じる。
「つまり、怪王種二人を先に沈黙させなきゃ、ずっと幻想種は解放されないままということ?」
操られて、倒れても二人に操縦されて、嫌でも戦わせられる。
『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)の言葉にメンバーが頷くと、フルールは辟易として。
「それは嫌ね。だから、助けるわ」
対処に当たるメンバーもいるが、この場は迷宮森林警備隊へと対応を願いたいという意見も多く。
「分かった同胞らの抑え、全力で当たらせてもらおう」
隊長ラウル以下、隊員達もそれに応じてくれた。
それにしても、と、『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)は幻想種を操る怪王種に不快感を示す。
「悪趣味っスね」
それをきっかけに、皆から口々に意見が飛び交う。
「他者を意のままに操り、自分たちは高みの見物とは」
「カロンの配下だからか? やれ人形遊びだのと……」
『ベンデグースの赤竜』シャールカーニ・レーカ(p3p010392)や、『紅獣』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)も、今回の相手もまたあまりに悪趣味な嗜好を持つ事にうんざりする。どうしてこんなにもこの手の輩が多いのか……。
「あぁ……理解出来たら苦労しないし、理解出来る方が問題だらけだな?」
「元々の性質なのか、それとも怪王種となったからなのかは知らぬが、……いずれにせよ、慈悲を掛ける理由にはならないな」
ルナールが呆れながらも嘆息する。仮に尋ねたところで、教えもしない相手。どのみち、行く手を阻むのであれば容赦なく倒すのみ。レーカの考えに皆同意していた。
「怪王種、サキュバスにインキュバス。元からあまり人に宜しくない魔物でしょうけど、魔種の影響を受けた可哀想な生き物であることには代わりはないですね」
小さく笑うフルール。『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)もそんな可哀想な討伐対象を放置出来ないとみて。
「お待ちかねのカロンの配下を殴りに行こうか。多少厄介でも、向こうの手数を削る意味では有効な筈さ」
ここで配下を潰しておくことは決して無駄にはならない。
幻想種を救う為、そして、彼らを弄ぶ外道を討伐する為、イレギュラーズと警備隊は茨の中を進む。
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一行がファルカウ内を進むと、やがて上へと続く階段の手前へと至る。
「あらあら、忙しないわね」
「少し、遊んでいかないか?」
その前で待っていたのは、1組の男女だった。
「何時も通り……さてやろうかルーキス」
「今回は夢魔ですって」
ルナールは敵を前に、相方ルーキスへと語り掛けると。
「誘惑されないでね、ルナールせんせ。焼き餅焼いちゃうぞ☆」
「……誘惑? 俺を魅了かぁ……ルーキスより魅力があれば出来るかもな?」
苦笑するルナールに、ルーキスは万一にも敵に靡くことはないと絶対の信頼を置く。
怪王種となった夢魔の男女に、『酒場の主人』杏 憂炎(p3p010385)が早速苛立ちを露わにして。
「次かラ次へト、他人の土地を土足で踏み荒ラしやがっテ。オレ達を馬鹿にすルのも大概にしロヨ?」
「あらあら、怖いわね」
2人はすぐに、眠る幻想種を前に出してくる。
「助ける相手に命を狙われる。最高のショーだと思わんかね?」
幻想種達はほとんど意識がなく、弓矢やスリングを手にし、術や精霊をも操る。
人形の如く幻想種を操る怪王種達にルチアは呆れを隠せない。
「自分で身につけたわけでもない、与えられた力で他者を操って何が楽しいのかしら」
敵が悦に入る理由がわからないルチアは、哀れみすら向けていた。
「そう、とっても哀れ。ふふ、怒った?」
実際可哀想な生き物なのだからと、フルールも重ねて敵を煽る。
サキュバスもインキュバスも、フルールにとっては救出対象ではあるが、怪王種となった彼らを助けることは不可能だと彼女も察していて。
「だから、倒すことにします。大丈夫、罪を重ねた魂は、ジャバウォックが食べてくれますよ」
それに助かりたいとは思っていないのでしょうとフルールが問うと、夢魔達はくすくすと笑って。
「この人形は玩具だけれど、餌でもあるのよ」
「故に、我らが倒されることはないのだよ」
「彼らはあんたたちの玩具でもなければ、栄養分でもないっス。悪いっスけど、すぐに取り返させてもらうっス!」
相手が言葉を言い終わると同時に、ライオリットが反論し、身構える。
「人形遊びに人を使うって言うのも趣味が悪い。悪趣味な怪王種には御退場願おうか」
「幻想種はキッチリ助けテ、オメー等纏めてデッドエンドだ!」
ルーキス、憂炎が叫ぶのに合わせ、不敵に笑う怪王種らも幻想種を操り、こちらへと攻撃を仕掛けてきたのだった。
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こちらの人数はイレギュラーズと警備隊合わせて20人近い。
一方、相手は怪王種2体と操られる幻想種15人。加えてどこから現れるか分からぬ束なる茨はどれほど現れるかは不明。総数を考えればこちらが不利だ。
「操縦者の2体を同時に攻めれば幻想種達の行動の精度も落ちるはず」
シラスが言うように、怪王種は後ろに下がって幻想種を操ろうとする。自律操縦も可能なようだが、同時に操ることで狙ってくるメンバーなど、狙いなど精細さは間違いなく落ちる。
だから、少人数と警備隊が幻想種で抑えつつ失神させられるか試す間に、メインメンバーが操縦している怪王種をそれぞれ叩き、元を断つ作戦に出る。
zzz……。
うーん、むにゃむにゃ……。
夢の中にいる幻想種達だが、怪王種の操縦によってこちらへと攻撃を仕掛けてくる。
ほぼ全てが遠距離攻撃であり、近づこうとすれば幻想種達が放ってくる。
素早い警備隊らがそれらを引き付けている間に、ルチアが詠唱を始める。
「きっと助けてあげるから……信じて雷霆を浴びなさい!」
まずは、その挙動を止める為、ルチアはできるだけ多くの幻想種を捕捉して広範囲へと神の裁き、怒りの雷霆を模した雷を展開する。
「さすがに、一撃で倒れることはないと思うのだけれど……」
怪王種らも、精気を吸うことまで考慮して若い幻想種ばかりを集めている。
ルチアの思った通り、その雷だけで命を落とす幻想種達はおらず、動きを硬直させる。
そうなれば、怪王種達もすぐにその幻想種を思うままに動かすことはできない。
「本当、哀れですね」
共闘するフルールは呆れながらも他メンバーへと幻想種の攻撃が及ばぬよう、神気を放つ。
それで動きを止められればいいが、仮に本人が戦闘不能であっても、盾として向かわせてくるのが厄介だ。
「下手に攻撃を重ねて亡くなっては本末転倒ですからね」
攻撃は慎重に。フルールと協力し、ルチアは幻想種達の攻撃を抑える。
自己回復も考えるルチアだが、序盤は余裕があることもあり、怪王種と戦うメンバーへの回復も考慮してそちらの戦況も気に掛ける。
さて、作戦を提示していたシラスもまた自らその一員として、怪王種の片方、スロースインキュバスのシルスを討つべく攻め入る。
(怪王種のあの嫌味たっぷりの態度……)
夢魔である怪王種達は操作してる幻想種達が健在のうちは余裕をかましてるだろうと、シラスは踏む。
相手の生命力、気力を吸う力のある怪王種らは、犠牲者の命を糧に負傷を癒すのは間違いない。
(だから、先ずは回復手段を断つ)
相手に徒手空拳で挑むシラスは両腕に禍々しい闇と呪いを纏わせ、シルスへと掴みかかり、強く拳を打ち込んでいく。
「深緑の住民を助け出すためにも、怪王種を手早く倒したい所っスね」
続くライオリットは内なるリミッターを解除する。
出し惜しみはなし。燃費は度外視し、ライオリットはシルスの真下へと飛び込み、その体を高く跳ね上げる。
龍の翼を羽ばたかせて追撃するライオリットは軍刀でシルスの体を切り裂いていく。
「両方狙えれば良かったけれど……」
ルーキスも手早く倒すべく動くが、仲間が敵の連携を断つべく動いていたこともあって両方を同時に捉えることは難しい。
「手早く落としたいからね」
狙いは、仲間達の攻撃が多く集まるシルス。
接敵前とあって、ルーキスは黒銃の照準を合わせ、銃弾を撃ち込んでいく。
「悪趣味な輩はさっさと退場願いたいんだがな……!」
敵からルーキスを庇えるよう彼女の前にいたルナールは白銃で狙撃を行う。
現状はまだ涼しい顔をしているシルス。怪王種となったことで負けるはずがないと考えているのだろう。
されど、いくら強化された身体とはいえ、身体を災厄が包み込めば容易に夢魔としての力を封じることは可能なはず。
「テメーら舐めてんだろ、人間を。その油断が命取りだぜ!」
シラスは相手が仕掛けてくる魅了攻撃を装飾品によって無効化し、さらなる呪いの一撃を打ち込むことで、体力が回復できぬようにしてしまう。
「シルス」
イレギュラーズから連続して攻撃を受ける相方の状況を見ながら、幻想種立ちを操縦していたスロースサキュバスのサリーだったが、こちらには憂炎、レーカが迫る。
「幻想種を解放しロ。解放しテもオメー等は野放しに出来ねーケド」
肉薄する憂炎は憎悪の爪牙で敵の体を激しく切りかかり、自慢の篭手で強く殴り掛かる。
サリーはそちらにばかり注意を向けてもいられない。
「余所見をするな。貴様の相手はこの私だ」
すでに聖骸闘衣を纏うことで、相手の魅了対策を講じていたレーカは名乗りを上げてサリーの気を強く引く。
「あら、人形を戯れていればいいのに」
「ヘヘ、温まルまでチョット時間が掛かルタチでナ、来いヨ」
くすりと微笑を浮かべるサリーへと、憂炎は人差し指をクイっと動かし、フットワークを軽めになおも挑発する。
怪王種をうまくあしらい、交戦するイレギュラーズ。
カサカサ、カサカサ……。
その最中、周囲の茨が集まって束なり、獲物を見定めていたのである……。
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茨の狙いを定めるのは難しいが、敵と見なした者へと襲い掛かるのは間違いない。
怪王種との最前線。ヒーラー。操られた幻想種達……。
「気を配るべき場所は多いよ。油断しないで」
ルチアが致命的な箇所への襲撃を想定しつつ立ち回っていると。
「……くる」
束なる茨の前兆を察し、レーカが仲間達へと伝える。
まずは怪王種へと距離を詰めていたルーキス、ルナールペアへ。
ルナールが茨の一突きを受け止める間、ルーキスが茨も捕捉して。
「何処から伸びてくるやら、とりあえず焼いておくか」
ルーキスは束なった茨の耐性が落ちたことで、すぐさま形なき銀鍵によって攻め立てる。
攻撃するのは茨だけではない。ルーキスは序盤から狙うサリーも捉えたまま、深淵からの呼び声を直接浴びせかける。
絡みついてくる茨をルナールが抑え、ルーキスが更なる一撃を与えたことで、茨はバラバラと崩れ落ちていく。
「今度はそっちよ」
さらに、交戦が続く中、ルチアが次なる茨を捕捉したのは幻想種の付近。
主だってフルールが神気を浴びせかけると、警備隊が一斉に攻撃を茨へと集中させる。
「束なりさえすれば、茨は脆い。一気に叩くぞ」
隊長ラウルの号令で、隊員が矢やスリング石、精霊術や魔術で茨を攻め立てる。
トドメにと、フルールが茨を中心に紅蓮を瞬かせると、茨は瞬く間に燃え上がって塵と化していく。
「茨は可能なら早めに片付けてしまいたいですね」
なにせ、近場の幻想種が巻き添えになる可能性を考えれば、フルールが排除を最優先にするのは当然だろう。
時折、茨に絡まれるメンバーがいる傍ら、憂炎は茨には率先して攻撃はしておらず、サリーを抑え続けている。
「少シ、温まってきタ。こレ以上、好きにはさせねーゼ?」
執拗に相手を抑え、彼は幻想種の操縦を許さない。
その分、幻想種や警備隊へと茨が集まっていたようで、シラスやライオリットが彼らの手伝いへと回る。
「怪動操縦状態なら、失神させられそうだね」
怪王種2人が直接操縦していない状態なら、眠る幻想種を失神させることで動かなくなる。
それでも、元を……怪王種を断つ必要があるとみるシラスだったが、度重なる茨の出現とそれに襲われる警備隊の支援へと一時回り、統制を行う。
「オレも手伝うっス」
ライオリットもその手助けに入り、茨を切り払う。
意識を失ったままで幻想種らを戦闘不能に追い込めば、一時的に動きは止まる。ライオリットは警備隊隊長ラウルとそれを確認し合って。
「不必要な攻撃は避けるっスよ」
「了解した」
なにせ、怪王種2体がさらに操縦する恐れがあることに加え、精気を吸い取って絶命に至らしめる可能性もある。
彼らの対処は慎重さが必要な状況に変わりはない。
状況は厳しいままではあったが、怪王種とて不死身ではない。
速攻での討伐を目指すイレギュラーズの攻撃に晒され、スロースインキュバスのシルスが追い込まれてきていた。
そこに、ほとんどの幻想種を無力化したフルールが参戦して。
「さてさて、怪王種のおにーさんおねーさんはどうされたいのかしら? 懺悔はある?」
仲間達を助けるべくフルールは神気を放ってシルスの体を灼く。
「これだけの力がありながら、何たる失態だ……!」
全身傷だらけのシルスだが、体力の回復ができずに歯噛みする。
加えて、ルナールがそいつの前に立ち塞がって。
「怪王種といい、茨といい……碌なもんじゃない……まぁ! カロンが全部悪いんだけどな!」
「くうっ……!」
爛々と目を輝かせるシルスはルナールへと魔力を伴う爪の薙ぎ払いで直接攻め立ててくる。
防御を集中させていたルナールではあったが、思わぬ一撃に意識が遠のきかける。ルチアが気付いて福音をもたらしてはくれたが、パンドラを使うことは避けられなかった。
相方が一時落とされかけたこともあり、ルーキスが一気にシルスを仕留めにかかって。
「最後はちょっと強引にだ!」
零距離から神秘の一撃を見舞うルーキス。連撃を浴びせかけるも、シルスは見た目以上のタフさを見せる。
しかし、相手の態勢が大きく崩れていたこともあり、ライオリットが敵の胸部目掛けて破壊力を伴う一撃を打ち込む。
「まだまだァ!」
ここぞとシラスもゼピュロスの息吹を使い、上下左右から挟み込むような連撃を浴びせかけていく。
「か、体が、くず、れ……」
立て続けに浴びせかけられた高火力に耐えられず、怪王種の一角は砂のように崩れ去った。
「シルス!」
まさか相方が倒されるなんてと、サリーは現実を受け入れられないまま、まずは幻想種の操縦をと動くが、憂炎がそれを許さない。
「伊達に亜竜種舐めてっと、火傷すルゼ?」
再度名乗りを上げる彼に、サリーは怒り狂って体力気力を奪おうと立ち回る。
茨こそ襲い来ることはあったが、現状、敵対勢力としてはサリーを残すのみ。
ルチアは仲間の状態も気に払いつつも、至高と光輝の魔術によって夢魔としての、そして怪王種としての力を強く縛り付ける。
幻想種から精気を奪うことも考えていたサリーだが、イレギュラーズ達に囲まれる形となった彼女はメンバー達によって攻撃を畳みかけられ、一気に追い込まれる。
「似たような翼を生やしているのも腹が立つ。引っ込めて貰えないだろうか。無理なら切り落としてやろう」
レーカは相手をマークして突破を妨害する。
防御攻勢によって鋭く逃した爪を振るってきたサリーの攻撃を躱し、レーカは光学斥力障壁を直接ぶつける。
その圧力で潰されかけたサリーは気力を振り絞る。こちらはシルス程タフネスはないらしい。
その分、妖艶さを醸し出して攻めたいサリー。
ただ、憂炎がその力を使う前に全力で拳を握りしめて。
「歯を食いしばレ、今度はさっきよリ痛ぇゼ?」
初撃よりもさらに強い力を籠め、憂炎はサリーの体を殴りつける。
「こんなはずは……」
最後の最後まで、敗北を受け入れられぬまま、怪王種はその姿を消していったのだった。
●
怪王種を倒したことで、上に向かう階段を登れそうだ。
ただ、支配から逃れた幻想種を放置することもできず、イレギュラーズはその介抱を行う。
「立てるカ? ここは危険ダ。とリあえズ安全なトコまで送ルゼ?」
他の敵の出現も警戒する憂炎。これ以上他の敵に操られるわけにもいかぬと、彼は保護できそうな安全地帯まで送り届けることを提案する。
「茨も気になるな。私も手伝おう」
意識を失った幻想種の搬送を進めるルーキスは、繁殖が進む茨が再び束なって襲い来ることを警戒する。
負傷者の手当てを手伝うルナールは溜息を零して。
「それにしても難儀だな……さっさと帰りたい」
氷の通路に茨の襲撃。何より敵の本拠にほど近い場所とあって気が休まらず、ルナールは本音をのぞかせていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
OPの狂王種は怪王種の誤りです。この場を借りてお詫び申し上げます。
MVPは警備隊への指示出しと、怪王種の片割れを討伐した貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
<太陽と月の祝福>のシナリオをお届けします。
眠りへと落とされた深緑の民が行く手を阻んでおります。彼らを解放しつつ、操る元凶の討伐を願います。
●状況
舞台は深緑、大樹ファルカウ上層。中層にほど近い場所です。
戦場は上のフロアへと向かう階段の麓。その周囲も広間となっているので、味方、敵対勢力の両者が十分立ち回ることのできる空間があります。
そこに怪王種と操られた幻想種達が待ち構えています。
彼等はさながら下僕のように眠る幻想種を操り、こちらに攻撃を仕掛けさせてきます。
●敵
◎怪王種:スロースサキュバス、サリー
◎怪王種:スロースインキュバス、シルス
翼を生やす女性型夢魔サリー、男性型夢魔シルスのペア。冠位怠惰カロンの影響によって怪王種へと変質しています。
神秘HA吸収攻撃、恍惚、魅了のBS、高い神物両面の攻撃を繰り出してきます。
基本、どちらかが幻想種の操縦を行い、攻撃の制度を高めようとします。ただ、両者が攻撃に出ていても、自動操縦で戦わせ続けることも可能です。
○幻想種×15体
『茨咎の呪い』の影響で眠りに落ち、夢魔によって身体を操られた深緑の住民達。若者が主となっているのは、夢魔が精気を吸う可能性を考慮してのことと思われます。
戦いでは、魔力を放出する術、精霊を操る術を中心に、弓矢、スリング、チャクラムなど飛び道具を利用します。
戦闘中目を覚ますことがありますが、怪王種2名を倒さねば操縦を断ち切ることはできません。
○茨×?体
有刺鉄線の如く一定空間へと張り巡らされる謎の荊。
一体範囲の茨が束なってから敵対するもの目指して伸び、絡みついてきます。また、強引に排除しようとする者を昏睡状態へと陥らせたり、体力、気力を奪いつくりして死に至らしめようとしたりする。
茨は戦場のどこからでも束なることができるようで、その出現の把握はかなり難しいでしょう。
ただ、茨を傷つけることでその活動は低下します。
戦場に張り巡らされた状態では範囲攻撃に耐性を持つ為、非常に厄介な相手ですが、束なった茨は耐性が無くなるため絶好のターゲットとなるでしょう。
●NPC
〇迷宮森林警備隊×10名
弓の名手である隊長ラウルを中心に、弓、風魔法、風精霊を操る幻想種で構成。後方、樹上からの攻撃が得意。
基本的に茨の対処、人々の抑えなどに動いてくれますが、ラウルと協力することで、彼がより効果的な指示を出してくれることでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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