豪快に笑って奪う海賊達

オープニング

●笑いながら奪う者達
　ネオ・フロンティア海洋王国（通称：海洋）は大陸東の諸島に拠点を構え、絶望の青と隣接する国家。
　この国で突出すべきは、他国にはない航海技術。
　海では現在、近海では漁業が行われ、行商人があちらこちらの島へと荷物を運搬している。
　また、遠方には新たな遠洋彼方を目指し、冒険者航海団が頻繁に海へと出ている。
　海には、まだまだ可能性がある。
　海洋の人々はそんな考えを抱き、船を出す。
　ただ、それは漁業関係者、商船ら、働く真人間ばかりとは限らない。
「ぐわーっはっはっは、笑え笑え！！」
「「「わっはっはっはっは、わーーはっはっはっ！！」」」
　船に乗ったその男達は、豪快に笑って行商人の船へと近づいていく。
　白地にドクロの旗を掲げた一団。彼らはこの近海を襲う海賊団なのだ。
　名前まで、『ガハハ海賊団』などと笑いにこだわる一団。
　しかしながら、その行いは、笑えるものでは全くありえない。
「ぐわーはっはっ、奪え、ありったけ財の全てを奪って来い！」
「「「わっはっはっ、はい、団長！」」」
　彼らは襲った船へと乗り込んでいき、乗組員へと銃で発砲し、あるいは手にする剣やナイフの刃で切り裂き、脅しつつ、積荷を根こそぎ奪っていく。
「よし、奪ったな。退け退けー。ぐわーっはっはっ！」
「「「わっはっはっ、はい、団長！！」」」
　笑い声をこだまし、海賊団達は去っていく。
　全ての物資を失った商船の乗組員達は舵を切り、命からがら港へと戻っていくのだった。

●近海警備依頼
　ローレットに出されていた海洋からの依頼。
　それは、貴族派筆頭のソルベ・ジェラート・コンテュールから出された依頼らしい。
　海へと様々な活動を広げる海洋にとって、海で幅を利かせる厄介な連中は悩みの種となっている。
「海洋の海には海賊が活動をしていて、漁船、商船、航海団など、片っ端から襲っているようなのです」
　そこは、幻想のローレット。
　『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は独自に集めた情報をイレギュラーズ達へと話していた。
　略奪を行う海賊が心情的に許せないという感情論とは別に、海洋の依頼を解決することは、イレギュラーズやローレットにとっても大きくプラスとなるはずだ。
　まして、海洋において有力者であるソルベ卿の依頼とあれば、繋がりができる大きなチャンスとなるかもしれない。
「それで、詳細なのですが……」
　目下、討伐対象として目をつけられているのは、「ガハハ海賊団」を名乗る一団。
　団長パーヴォ以下、１０名ほどの集団だが、笑い声をこだまして海洋を行く船へと襲い掛かるのだという。
　全員が銃を持つ。団長パーヴォのみ大斧を所持し、団員はナイフ、サーベルで合わせて武装している。
　作戦としてはこうだ。
　海洋の首都リッツパークにおいて、商船を１つ借りることとなっている。
　この乗組員は一度、「ガハハ海賊団」に襲撃された者ばかりとあって、報復のチャンスと今作戦における士気は非常に高い。
　船にある程度積荷を載せてから出航するのだが、その際に載せる積荷の量は通常、多め、少なめ、ほとんど載せないと、イレギュラーズに選択を任せるとのこと。
「積荷の量は、襲ってくる海賊団の関心を引きつけるのに役立つはずなのです」
　積荷が少なければ、戦況で相手を追い込むとすぐに逃げられる可能性がある。
　逆に、積荷が多ければ、すぐに撤退と転じることはない。
　また、うまく海賊団を殲滅できたなら、船はリッツパーク付近の島々にある幾つかの集落を巡るという。
　積荷が無駄にならないようにとの配慮だが、依頼主は利益も合わせて考えているのだろう。なんとも抜け目ないことだ。
「ただ、それだけに積荷に被害があれば、イレギュラーズとしての評価は落ちてしまうのですよ」
　積荷を守る自信がなければ、積荷を少なくして出航すればいい。
　逆に、報酬を多めにほしいとやる気であれば、積荷を多くしてもらうとよいだろう。もっとも、失敗した場合のリスクが大きくなるが。
　一通り説明を終え、イレギュラーズへとユリーカが告げる。
「無理はせず、自分達のできる範囲で依頼を完遂してほしいのです」
　そうして、彼女は海洋へと向かう一行を送り出すのだった。

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

リプレイ

●積荷を載せましょ！
　海洋までやってきたイレギュラーズ達。
「近所に海なかったもんでえ。思ったより好きみたい、海」
　海を前に、片田舎出身の青年騎士『駆け出し』コラバポス 夏子（p3p000808）は開放的な気分を覚えたようだ。
「とは言え、どこでも居るね。野盗義賊山賊。んで、海賊～」
　一行の目的は、その海賊を討伐することだ。
「ガハハ海賊団、なんざ頭悪そうな名前だな……」
　改めて、討伐対象の海賊団の名前を口にし、『太陽の勇者様』アラン・アークライト（p3p000365）が呆れてみせた。
　『ガハハ海賊団』。
　なんともマヌケなネーミングセンスに、白い祭服を纏った少女の姿をした『The Omniscient』全てを知る者（p3p002656）が頭を振って。
「笑いながら蛮行を繰り返す海賊だなんて、知性の欠片も感じられないわ」
　本音では、知る者……全てを知る者もこの海賊の相手を敬遠したいところなのだが、依頼とあっては致し方ないと割り切っていたようだ。
「やってることはいただけないし賛同も出来ないケド、コンセプトは嫌いじゃないよ」
　楽しげに活動するという一点のみ、夏子はこの海賊団に好感を示し、我々も笑ってやろうと声を上げる。
　それに、軽装で引き締まった肉体美をさらす『寄り添う風』ミルヴィ＝カーソン（p3p005047）も同意して。
「笑顔ってのは、アタシの信条だけどサ。……笑いながら暴力する連中はキライだねっ！」
「随分と陽気な人達みたいだけど」
　梟の因子を持ち、半人半鳥の姿をした飛行種、『応報の翼』ミニュイ・ラ・シュエット（p3p002537）はほのかに微笑む。
「いつまで笑っていられる？」

　その後、イレギュラーズ達は首都リッツパークの港へと出向く。
　すでに海賊団から被害を受けた商船の乗組員と、メンバー達は接触した。
「海賊が居たら、安心して旅行が出来ないもの」
　だから、片目をメッシュの入った髪で隠す幻想種の『夢色観光旅行』レスト・リゾート（p3p003959）はこの機会に、皆で何とかしてあげましょうね～とゆるふわなムードを漂わせつつ呼びかける。
　そんなリゾートに癒された乗組員達は次に『まほろばを求めて』マナ・ニール（p3p000350）へと視線を向けて。
「人様の荷物を強奪するなんて、到底許せません……」
　対して、小さな白い翼を持つマナは怒りを滲ませ、今回の仲間と共闘して海賊達を懲らしめようと意気込む。
　それに、乗組員達からは大きな拍手が巻き起こる。
　彼らも絶好の報復の機会だと、気合十分だ。
「荷物運びなら任せて！」
　積荷に関しては丸眼鏡が印象的な『絆の手紙』ニーニア・リーカー（p3p002058）が仲間の指示も踏まえ、乗組員達に指示を出す。
「私は全てを知る者。大切な積み荷を愚かな海賊から守る術を、私は知っているわ」
　知る者も、乗組員に荷物をできる限り満載の状態とするよう依頼する。
　ただ、その４分の１を積荷に偽装したダミーの荷物とするよう彼女は話す。
「その中には、消化砂を入れてほしいのよ」
「重量で奪取を妨害するのと、火災対策だね」
　そこで、ミニュイが捕捉説明する。
　消化には水というイメージが強いが、それはとある世界における日本という国において水資源が豊富だからこそ。
　扱いや処理に困るデメリットが大きいが、消化の為に砂を用いることは十分可能だ。
「あっ　積荷はマシマシの大盛りで大丈夫ス。商売も上手くやっちゃいましょう船長！　あっはっは！」
　夏子は乗組員達へと笑って呼びかけ、さらに積荷の中身について盗られにくいよう配置するようにと願う。
「『ここなら１番に海賊に目がつくだろう』って場所に、そのダミーの荷物を積んで頂戴」
　知る者は乗組員にそう頼み、無事に輸送できたら資材として売り捌くのも一興だと続ける。
　それなら、甲板に思いっきり載せる形で、外側にダミー、内側に金目の物を積む形で積載しようと船長は提案していた。
　また、物を運ぶのが得意と、自らも積み降ろしを手伝っていたニーニアは商船内に罠を張り巡らしていく。
「船の横合いの縁にワックスを塗って、あと、船倉のドアに墨を入れたバケツを仕掛けるのもいいね」
　とはいえ、積荷を目一杯載せるのであれば、甲板にもかなりの量を積んでいくこととなる。
　船倉へと優先的に高価な品を入れていくが、果たしてどうなるものかと船長は唸っていた。
　ともあれ、それらの罠を皆に周知しながら、ニーニア主導で、リゾートやミルヴィが仕掛けるのを手伝っていく。
　小道具を運びつつ、罠の把握をしていたミルヴィは途中で船員に声をかける。
「絶対、積荷の防衛と任務の達成をしてみせるよ」
　ミルヴィはギフトを使い、乗組員達へと約束してゲン担ぎしてみせるのだった。

●接近、ガハハ海賊団！
　準備を整え、イレギュラーズを乗せた商船は王都を出航し、海洋の海を沖に向け巡回し始める。
　ミニュイ、ニーニアは自らの翼でマストの高い場所まで飛び、怪しい船の接近に警戒していた。
「来たよ、２時の方向！」
　ニーニアがいち早くその接近に気付き、仲間達へと伝達する。
　そうして、イレギュラーズ達もすぐさま戦闘態勢を整えていく。
「ぐわーっはっはっは」
「「「わっはっはっはっは、わーーはっはっはっ！！」」」
　風に乗って、聞こえてくる下卑た笑い声。
　その船のマストには、大口を開けたドクロの海賊旗が掲げられていた。
　相手の船を見つめるマナはできるだけ、積荷の近くに位置取る。
　同じく、リゾートは荷物を背にはせずに態勢を整える。彼女がこの場にいるのは、すぐ消火に当たれるようにする為だ。
　また、荒事が不得手な知る者も、荷物の護衛にと考えていたようだ。
　ある程度船が近づいてきたところで、メンバー達は遠距離スキルで先制していく。
　アランが巨大剣「フォートレスブレイカー」に纏わせて発するのは、『ブリリアンス・リリーフ』。
　それは光芒を放ち、相手を救済する技のはずなのだが。
「死ねぇ！」
　ただし、彼にとっての救済は、肉体からの解放を意味する。
（命を奪わず、捕縛の方針じゃなかったかな）
　ミニュイはそんなことを思いながら、自らの翼を大きく振るって青い衝撃波を相手の船へと放ち、団員を海に突き飛ばそうとしていく。
　個別に狙われる笑う海賊達も、接触前からこちらが仕掛けてきたこともあり、銃を発射しつつ船を横付けしようと迫ってくる。
　自身に信念の鎧を纏うこと夏子は相手の船を注視しつつ、できる限り海賊船が接近してきたタイミングで名乗りを上げた。
「あっはっは！　あーっはっは！　ひい！　はあー……ゲラゲラ！　愉快髭！」
　対する海賊達も、豪快に笑い返す。
「ぐわーはっはっ、奪え、ありったけ財の全てを奪って来い！」
「「「わっはっはっ、はい、団長！」」」
「配達業の郵便屋さんとしては、運送の邪魔をする海賊は許せないよ！」
　敵意を見せるニーニアに続き、応戦の構えを取るミルヴィ。
「これで弱かったら良いんだが、そうでもねぇな」
　頭の悪そうな相手に改めて嘆息するアランだが、団員はともかく、団長であるヒゲ面の大男パーヴォは、見るからに強い力を持つことが窺える。
「全力でぶっ飛ばして行くぞ」
　拳に力を込めるアランは仲間と共に、その海賊団の制圧へと乗り出すのだった。

●積荷と海賊と
　甲板にまで、山盛りの状態で荷物が積載された商船。
　この上で敵を迎え撃つのであらば、メンバー達は荷物の上で戦うことになってしまう。
「わーっはっはっは！」
　船に乗り込んでくれば、団員達もナイフやサーベルに武器を持ち替え乗組員やイレギュラーズ達を威圧しようとしてくる。
　ミルヴィは全体を見渡し、積荷に迫った敵へと妖剣イシュラークで斬り合っていく。
　できる限り相手の攻撃を受け流しつつ、ミルヴィは舞い躍りながら相手を魔性の瞳で見つめ、強く団員達の注意を引き付けようとしていた。
「ぐわーっはっはっ！」
　馬鹿みたいに笑う団長パーヴォだが、団員を商船に乗り込ませながらもしたたかにこちらの出方を窺い、マグナム銃で発砲する。
「砂……か」
　どうやら、相手は積荷も合わせて狙い、その中身を見定めていたのだ。
　銃は箱の上部を狙い、中身が分かるようにと調整していることから、射撃に腕はかなりのものらしい。
「積荷も盗れず！　恐れも与えず！　ぐふっ！　わっは！　ダっせブホォｗ」
　だが、壁となるよう意識する夏子もそんな海賊団を挑発しつつ、乗り込もうとする海賊団団員を数人抑えようと防御に集中する。
　予めニーニアが船の縁に塗ったワックスに足を滑らせ、なかなか船に乗る事ができないでいた残念な団員もいたようだったが、そいつらを甲板から狙うアランは巨大剣を全力で振り払い、再度海へと叩き落とす。
「オラオラァ！　ガハハ海賊団なんだろ！？　いつもみたく笑って俺を殺しやがれや！！」
　彼は全体的にガハハ海賊団の団員達の体力を削り、いつでもトドメをさせるよう拳を握る。できるなら、生け捕りたいとはアランも考えてはいたのだ。
　その団員の中には、目ざとく船倉へと駆け込もうとしてくる者もいる。
　ただ、その先陣を行く団員の頭に、墨の入ったバケツがぶちまけられた。
　すかさずミルヴィが向かい、そいつらを魔性の瞳で引き付けていく。
「へへっ、地味でも援護がアタシの得意技なの」
　低空飛行するニーニアはそばに仲間がいることを意識し、気力の続く限りスキルを使う。
「ガンガンいくよ」
　まずは、オーラの縄を放ち、荷物を狙う相手の拘束からだ。
　そんな状況にも笑い声を止めぬ海賊団の男どもに、知る者が業を煮やしたらしい。
「なにが可笑しい、無知なる蛮族共よ！」
　一喝する彼女はさらに、けたけたと笑う相手に呼びかける。
「もし私達の力量を計り知る程度の知性があるならば、一刻も早く武器を捨て投降するが良い！」
　だが、それで投降する相手であれば、略奪など蛮行に及んではいないだろう。
「わははは、積荷をよこせええ！！」
　刃を振りかざす敵へ、知る者もニーニアと同様、マジックロープで敵の足止めを行う。
　相手の支援に当たっていれば、他所で海賊を倒した仲間が駆けつけてくるはずだ。
　徐々に、海賊達が甲板で暴れ出し、メンバー達の傷が増えてくる。
　リゾートは積荷への注意を怠らず、同時に仲間達の回復の為にパラソル・ステッキを振るって治癒魔術を施していく。
　マナもまた同様にブルー・スフィアを輝かせ、前線に出る夏子やアランの傷の回復へと当たっていた。
（やはり、敵が多いね）
　商船の甲板が徐々に混戦となってきたのを受け、ミニュイは絶望の海を歌い、相手を冷たい呪いで追い詰める。
「航行に支障が出ないよう気をつけないと」
　呟くミニュイは梟の翼を羽ばたかせ、青い衝撃波を放ってサーベルで切りかかってくる団員を海へと突き落としていった。

　積荷の防衛と海賊団の撃破。
　敢えて積荷を最大量として敷居を高くし、この作戦に臨むイレギュラーズ達。
　慣れない船での戦いは海賊達の得意とするところだが、修羅場を潜るイレギュラーズ達も戦いにおいて引けはとらない。
「ぐわーっはっはっ、思った以上にやりおる」
　マグナム銃を撃ち続けていたパーヴォは、海に落とされる団員を見て、自らも大斧を構えて商船へと乗り込んでくる。
　笑い声同様に豪快な着地をしたパーヴォは、燃え上がる斧をイレギュラーズ達目掛けて叩きつけようとしてくる。
「積荷が……」
　小さな幸運をもたらして仲間の回復に当たっていたマナは、すぐに近場の荷から消化砂を取り出して振り撒く。
　裏からとって振り撒くことで、ダミーだと悟られぬようにしていたマナ。しかし……。
「ぐわーはっはっ、こいつはダミーだな」
　敵はこちらの攻撃をしていただけでなく、弾丸を放ってその中身のチェックもしていたらしい。荷に開けられた穴から、所々砂が零れ出していた。
　そこへ、１人の団員を殴り倒したアランが飛び込む。
　憎悪の爪牙で彼はパーヴォに襲い掛かるが、相手はそれを食らってなお汚らしく笑い続ける。
「やっぱし、他の連中とは違うなァ！？　団長さんよ！！」
　ただ、パーヴォの目はまるで笑ってはいない。
　逐一、そいつは自分の状況を見ており、不利を察していた。
「えひひっふひっ、っひ……、ゲホっふあはーっはっは！」
　時折むせつつ、団員の攻撃を引きつける夏子はロングスピアを振るって反撃の一撃を叩き込み、甲板へと沈めていく。
　ミニュイは相手に威嚇術を打ち込んで相手を卒倒させ、団員を１人ずつ捕縛していった。
　パーヴォは次々に倒れる団員の姿に、あっさりとこう結論付ける。
「ぐわっはっはっ、割りに合わんな」
　だが、それに相手が気付いたところでもう遅い。
　ニーニアが生成した毒薬をパーヴォに投げ飛ばして毒に侵し、回復の合間に知る者もオーラの縄を飛ばして相手の身体を縛りつけようとしていく。
「ぐわーっはっはっ、それで抑えたつもりか！」
　それでも、パーヴォは笑いながら、燃え上がる斧を躊躇なく繰り出してくる。
　多すぎる荷物が裏目に出て、甲板にはさほど金目の物は積んでいないと相手に悟られてしまっていたのだ。
　おかげで、リゾートやマナは回復以上に火消しへと追われてしまう。
　ただ、その間にも、少しずつ自身の船へと後退しようとするパーヴォを他メンバーが追い詰める。
　夏子が自身の理力障壁を生かして突撃し、相手へと強打を与えれば、ワルツの拍子に乗るミルヴィが素早くパーヴォの懐に潜り込み、妖剣イシュラークで相手の腹部を斬りつけた。
　その一撃で防御が崩れた相手に、アランが強く殴りかかっていく。
「ぐわーっはっ……おおっ！？」
　そこで船の縁に塗られたワックスで滑ったパーヴォは態勢を崩し、海へと落ちていったのだった。

●事後処理もしっかりと
　多くは海へと逃げ、あるいはイレギュラーズ達によって落とされた『ガハハ海賊団』。
　メンバー達はアランが出した小型船を使って、できる限り団員達を捕縛を目指す。
「笑う時は略奪で……じゃなくて、皆が楽しい時……だろぉ？」
　捕まえた団長パーヴォへと、彼は告げる。
　笑いを浮かべたままではあったが、そいつの目だけは明らかに不満げに見えた。
「いやっほ！　皆さん水着……は、ないですね。すいません」
　夏子もまた団員達の確保に当たるが、その際アランが投げ付けたネットでうまく数人の身体を絡めとっていく。
「はいはい、夏子さん、手を貸してよ」
　ニーニアはアランが引っ張り上げた団員数名の捕縛に、援護を求めると、ミニュイと共に手助けに当たる。
「危ないものは、ないないしましょうね～」
　またその際に、リゾートは敵の武器を押収していた。
　捕縛に成功したのは、団長パーヴォと団員６名。
　残念ながら、敵は全員を確保するとはいかなかったのは、ダミーの積荷もあって、うまく相手の気を引けなかったことが災いしたらしい。
「出来れば、全員を改心させたかったのですが……」
　逃がした団員達はまた別の海賊団と合流する恐れもあることを示唆し、マナは残念がる。
「色々と、おばさんに教えて頂戴ね～」
　にこやかにリゾートが盗品をどうしたのかと尋ねると、パーヴォはすでに各地へと横流しして売り払ったとのこと。
　聞き出せた話は依頼人も喜ぶだろうとリゾートが考え、マナがしっかりとメモを取る。
　また、そのマナは相手の船にある物やアジトなどの情報に注目し、ローレットへと共有できるようにと漏らさずチェックしていく。
「被害に合われたほうや、今後の被害が出ないようにする為にも事後処理もしっかりしたいですね……」
「後は、海洋の警察組織に引き渡しちゃうわね～」
　とはいえ、現状のイレギュラーズ達の活動には限界がある。
　リゾートはそれも察し、この場は聴取に留めて相手の船と共に最寄の港へと向かい、しかるべき海洋の組織へと引渡しを考えていた。
　イレギュラーズ達が約束を守ってくれたこともあり、乗組員はミルヴィへと感謝の言葉を告げていたようだ。

　なお、イレギュラーズ達の報酬だが。
　船倉の荷物はほぼ無事であったが、甲板の荷物はかなりの被害を受けたとの事。
　その差し引きでもプラスはあり、依頼主は確かに色を付けてくれはしたものの……。
　確かに消化砂は資材にはなるのだろうが、それだけで多額の売上に繋がる価値を見込むのは難しい。
　これには知る者も想定外だったらしく、眉を顰めてしまう。
　もう少し、積荷を少なくしたほうが荷物に被害を及ぼさずに守りきれただろうか。
　雀の涙のような上乗せ報酬を受け取るイレギュラーズ達は渋い顔をしながら、そんなことを考えていたのだった。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

海賊討伐と積荷の防衛、お疲れ様でした。
ＭＶＰは団長に大きな隙を作ったきっかけをつくった貴方へ。
また、次なる依頼がありましたら、よろしくお願いいたします。