シナリオ詳細
枝豆で一杯、覇竜式
オープニング
●初夏の風物詩
夏が来る。
当然のようにだが、覇竜にだって夏が来る。
夏には何をすればいいだろう。
水浴び?
それもいいだろう。きっと楽しい。
けれど、大人の楽しみ方は少し違う。
夏らしい食材で、夏らしい酒宴を。
では夏らしい食材とは何か? これもまた意見が分かれるだろう。
だが、丁度この時期に旬を迎えようとしている食材……となれば覇竜の人々の意見は一致するだろう。
山菜とは別に、一部の趣味人が高所で育てている豆……そう、覇竜枝豆である。
通常枝豆とは大豆の完熟前の実を指すらしいが、覇竜ではそんな眠たいことは言わない。
覇竜枝豆は枝前として生まれ、枝豆として完熟し収穫される豆なのだ。
それはなんかもう別の種な気がするが、実際に別の種だし覇竜枝豆と名前がついてる辺りから誰もが察するところではある。
そう、例によって「外の食材と似たようなものを名付けた」系の食材である。
さて、そんな覇竜枝豆だが……大々的に育てられていないのには、少しばかり理由がある。
それは今まさに収穫の時を迎えようとしている覇竜枝豆に近づけば誰でも分かるだろう。
この食欲を誘うフレッシュな、嗅ぐと口の中に心地よい塩気を感じてしまうかのような、強烈な「夏の香り」としか言いようがない香り。
それが……余計なものを引き寄せてしまうからだ。
●覇竜枝豆を収穫せよ
「まあ、そんなわけで覇竜枝豆を収穫してきてほしいんじゃよ」
『フリアノンの酒職人』黒鉄・相賀(p3n000250)は集まった面々にそう切り出した。
覇竜枝豆。
茹でれば「外の枝豆」の2倍美味しいと言われ、先だって収穫された覇竜芋と共に枝豆コロッケにしてもホクホクコリコリと美味しい、何をやっても美味しい枝豆である。
そして何より……これが酒と、合うのだ。
勿論子供はジュースだが、ひとまずそこはさておこう。
そんな覇竜枝豆だが、形態としては外の枝豆と似ており、株ごと引っこ抜いて収穫するものである。
特に苦労もないはずのものなのだが……残念なことに、覇竜枝豆を狙うモンスターも存在するのだ。
その名をオドゥカメムシ。光沢のない茶色の身体を持つ全長3m程の生き物だ。
おおよそ3匹ほどの群れで動くのだが、このモンスターが実に面倒な生態をしている。
他の敵から身を守るためにとんでもなく臭い匂いを放つのだが……死ぬと、その場に長期間取れない臭い匂いを染み込ませて死ぬという、身体を張った嫌がらせをしてくるモンスターなのだ。
そんなことをされては覇竜枝豆まで臭くなってしまうかもしれない。
だからこそ、殺さないように気をつけながら追い払わないといけないのだ。
「まあ、覇竜枝豆を無事に収穫してきてくれれば……儂も礼に酒を出しても構わんしのう」
覇竜枝豆を肴に一杯楽しむ。
そんな覇竜では標準的な「大人の夏」。
この仕事をこなして一足先に過ごしてみるのも……きっと、悪くはないだろう。
- 枝豆で一杯、覇竜式完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年06月07日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●枝豆を収穫せよ
「全長3mのカメムシ、だと? そんなものから生じる匂いなど、想像もしたくないな……」
「害虫は……いやカメムシは許さない……体長が3メートルだろうと殲滅する……」
『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が嫌そうな顔をする横で『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が闇堕ちしたのか勘違いするくらいの様子でボソボソと呟いているが、以前カメムシと何かあったのだろうか?
そう、此処は覇竜枝豆の畑。出来る限り採れたての状態にするため、オドゥカメムシを撃退してから収穫するべく待ち構えているのだ。
「ともかく、枝豆は楽しみー! ぜひとも完全な状態で収穫したいよね! 嫌なにおいもなく、完全に……カメムシを……排除……」
戻りかけたアクセルがまた闇堕ちしようとしているが、すぐに我に返る。
「そういえば体長3メートルで枝豆畑に飛んできたら全部食べつくされちゃうよね。それを防ぐ面でもオドゥカメムシはやっつけないとね!」
どうやらメンタルが元に戻ったらしい。安心だろうか。
「へぇ、覇竜枝豆。もうそんな時期なのね」
「覇竜枝豆かぁ……うちの村でも、栽培しようとした記録があるのだけれど、村の中ではうまく育たず、外に畑を作ったものの、危険すぎて収穫できず、放置されたらしいわ。だから、手に入れるのが結構大変なのよね。祭りで称えられるぐらいよ?」
『炎の剣』朱華(p3p010458)と『グルメ・ドラゴニア』アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)もそう頷きながら初夏の味覚に想いを馳せる。
「お酒に合うとか合わないとか朱華にはまだよくわからないけど、覇竜枝豆が美味しいって言うのは朱華もよく知ってるわっ! ……で、美味しい物とくれば当然のように狙われるまでがワンセットよね。知ってるわよ、その位」
まだ16歳の朱華はお酒は呑めない。吞めないが、覇竜枝豆に年齢制限はない。
だからこそ覇竜枝豆は覇竜の住人に人気なのだ。
「オドゥカメムシだか何だか知らないけど、折角育った覇竜枝豆を臭い匂いでダメにされたら堪らないもの。収穫まで含めてマルっと朱華達に任せなさいっ! なんてね?」
そう朱華はキメるが、そう。それこそが今回の仕事の肝なのだ。
「全長3mの茶色のカメムシ……????? あー、うん。虫が苦手ってわけじゃないが……デカすぎないか???? 所変わればってヤツかねぇ……」
カメムシ。『紅獣』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)が真顔になる程度には嫌な虫だが、それが巨大化すると嫌さ加減が凄い。
そんな彼等を見ながら、『ためらいには勇気を』ユーフォニー(p3p010323)も思う。
(覇竜地域には美味しいものがたくさん! でも美味しいものの近くにはいつも何かしら障害があるんですよね……働かざるもの食うべからず、ということでしょうか)
そうかもしれない。あるいは単純に美味しいものを食べたければ実力を示せという論理かもしれない。
「カメムシさんには申し訳ないですけど、せっかくの枝豆に悪臭が付くのは絶対嫌です。ささっと追い払いましょう……!」
「……来ます!」
『友人/死神』フロイント ハイン(p3p010570)が叫び、こちらに飛んでくるオドゥカメムシを睨みつける。
「上から狙ったら羽壊して飛べなくできないかな? 多分最終手段は近場の崖とかあったら捨てる事だと思うんだ。後は足を狙って走れなくするのもアリかなって」
『亜竜祓い』アンリ・マレー(p3p010423)も言いながらゴルゴダを構える。
(捕まえて運んで崖下にポイとか、畑に関わらない、生活に使ってない水辺に沈めちゃうとかもありだよね。トリモチとか粘っこい物ビーム発射してるところに詰めたらどうなるんだろ?)
分からない、分からないが……ビームの発射器官らしきものはなく、魔法的な能力であると分かったのはその後のことだ。
「( 'ᾥ' )……臭いんだが。激烈にッ!!」
先制攻撃で放たれた悪臭ビームがアンリを撃ち、アンリを中心にカメムシ特有の……それを強化した匂いが放たれる。
アンリは悪くない、何も悪くない。悪くないし悪いのはオドゥカメムシだ。
だがエキスパートな平常心をもってしてもフレーメン反応を抑えきれない汰磨羈が( 'ᾥ' )な顔になっている。
ハインもどうやらBSであるらしい悪臭の解析をしようとしているが……こんなアホな能力の前例がないので中々に難しい。
「無駄にタフって話だし、遠慮は無用ね。撫でてあげるわ。早々に死んで臭いをまき散らすんじゃないわよ?」
朱華も灼炎剣・烈火を振るい、オドゥカメムシへと攻撃する。
「連中を気絶させられたら二度と来れない様に、アクセルや汰磨羈が言ってたみたいに谷底から突き落したり、穴に埋めるなりで対策が取れないものかしらね?」
「追い払うだけで済むならそうしたいです。彼らだって生きていますから……」
ユーフォニーはそう慈悲のあることを言うが、オドゥカメムシは根性が腐っているのでどうだろうか?
少なくとも汰磨羈はKOしたカメムシ達は、匂いを通さないような布や袋で包み、崖下に放り捨ててトドメといくつもりだった。
崖が無い場合は、しっかりと埋めるしかないか? とすら考えていた。
「どちらにせよ、万が一を考えて、畑よりも風下となる位置で処理したい所か。最後の悪あがきが少しでも流れていくのは御免だ」
そう、これだけ臭いのだ。風上に行かれては匂いが流れてしまう。
そんな汰磨羈はアッパーユアハートを発動していたが……結果として( 'ᾥ' )になっていた。
「デカいし臭害だし、通常サイズと同じで相変わらず好ましい虫じゃないな?!」
「まさにその通りだな」
汰磨羈も頷く程度には迷惑なオドゥカメムシ相手にルナールはノーギルティを放つ。
ちなみにルナールも最終的にカメムシは谷底に突き落とす派である。
「まさかカメムシ相手に戦うとは……まぁ、仕事だしなこういう事もあるか……」
しかも触るわけでもないのにこっちを臭くするカメムシだ。迷惑にも程がある。
「殺虫剤が欲しい、切実に殺虫剤が……」
あったとしてこのサイズに効くかは不明だが……それほどまでにルナールの視界を飛ぶオドゥカメムシは害虫だった。
「追い払うならまあそれはそれで仕方ないけど、倒したら匂いの漏れない袋とか……いやもう適当に足を縛ってもいいね。大きいし」
アクセルがまたちょっと闇堕ちしているが「崖からフォール。完璧」と言いながら神気閃光を放っている。
そうしてまあ、オドゥカメムシはナイナイ(意味深)されたわけだが……畑はちゃんと無事であった。
「大丈夫そうだし収穫していこう。覇竜の事分からないから新鮮だよね。後お父さんが枝豆食べたいってお酒見ながら言ってたからお土産にしたら喜ぶかな?」
「農作業は腰にくるっていうよなぁ……俺の場合筋肉痛の心配はないだろうけどな」
アンリとルナールがそんな事を言いながら率先して枝豆の収穫を始めていく。
アクセルも豆が太った株や色のいいものを探していくが、中々に収穫は順調だ。
そう、後はいよいよ……宴会である。
「それはそれとして……なんだけど、朱華……臭くなってたりしないわよね? なってないわよねっ!?」
( 'ᾥ' )
汰磨羈のフレーメン反応に、朱華は現実を察する。
大丈夫、皆臭いし時間で治る。
●枝豆で一杯
枝豆をフリアノンまで持って帰れば、アルフィオーネが早速調理を始めていく。
まずは枝豆サラダ。
山菜と一緒に。ドレッシングはオリーブオイルのみ。
枝豆スープ。
枝豆をすりつぶし、生クリームと合わせ、ひと煮立ち。敢えて調味料は使わない優しい味だ。
枝豆の串焼き。
茹でた枝豆をさやから取り出し、串に刺す。焼色がつく適度にかるく、一ブレス。串を持てばいいので、手が汚れない真心仕様だ。
そして枝豆ハンバーグ。合挽き肉をつなぎに、枝豆たっぷりと。コリコリとした枝豆の食感がアクセントになるだろう。
デザートは枝豆おにまんじゅう。
小麦粉と砂糖、少量の水を練った生地に枝豆を加え、蒸したお菓子。本来はサツマイモを用いるのだが、夏らしい風味に仕上がっている。
「どうかしら? 枝豆のフルコースって感じで、作ってみたのだけれど」
そう、まさにフルコースだろう。そしてユーフォニーもやる気満々だ。
「枝豆レシピの事前準備は万端です!茹で枝豆、覇竜芋での枝豆コロッケと枝豆ポテトサラダ、チーズと一緒に枝豆入り春巻き、かき揚げにしてみたり、すり潰してずんだ餅にも……お出汁と一緒に炊き込みご飯もいいですね」
そう、茹で枝豆にずんだ餅。どちらも定番だ。定番というのはそうなるだけの支持があるということだから、物凄く大事なことだ。
「それじゃ、頑張ったご褒美をいただきましょうかっ! 収穫お疲れ様、カンパーイ!」
朱華が乾杯の合図をとり、全員がそれぞれの飲み物を口に運ぶ。
「う~ん。やっぱり、枝豆にはお茶が一番ね」
アルフィオーネなどはティーセットを組んで、枝豆クッキーをお茶菓子に優雅にティータイムを始めているが……それもまた個人の自由。宴会に正解などないのだ。
「茹でただけでも十分美味しいけど、こっちの枝豆コロッケもやっぱり美味しいわねっ! 聞いた話だと枝豆とベーコン、ウィンナーだとかのガーリック炒めもお酒のつまみに良いって言うし、飲兵衛にはそっちもいいんじゃないかしら?」
「ほれ、そう言うと思って用意してあるぞい」
朱華に応えるようにして『フリアノンの酒職人』黒鉄・相賀(p3n000250)がベーコンやウインナーを置いていくが……これまた飲み物の進む濃い味だ。
(ジュース飲んで、お豆ちょっとだけ楽しんだら後はお土産にまた帰ろっかな。お酒飲めないからお酒飲める人が食べる方が良さがわかるんだろうなと思うから)
アンリもそんなことを考えながら枝豆を食べる。実に深みのある、良い枝豆だった。
「悪いな、家で家族が待ってるんだ。この枝豆でうちの可愛い奥さんに何か作ってもらおうと思ってね」
愛妻家なルナールもそう言って帰っていくが、それもまた自由。
そう、自由とは素晴らしいことだ。
(ボクは子供にしか見えないでしょうが、これでも製造から100年以上経過しているハズです。ローレットの定める飲酒制限の規則には、何も抵触していません。もっとも、酒を飲むのも初めてではありますが。今まで、そういうモノを楽しむ機会はありませんでした)
年齢に換算するなら172。そんなハインは自分のことを思い返しながら「自由」を口にしようとする。
「それでは、一献……いただきます」
酒を飲み干したハインだが、味については分からない。
しかし、アルコールはハインにしてみれば弱い毒のようなモノだ。。
(耐毒性に欠ける今のボクの体には、きっと影響を与えます。全身がポカポカと、太陽のように温まって……これが、酔うという感覚なのでしょうか)
決して悪い気分ではない。仲間達と一緒、というのもあるのかもしれない。
「ニルにも、食べさせてあげたいですね」
食事の必要がなくても、食事を楽しむことができることを教えてくれた同胞(はらから)の名前を口にしながら、ハインは枝豆を食べてみる。
(……やっぱり、ボクに味はよくわかりません。でも、こうして仲間とワイワイと楽しむ食事は……悪くないです。ボクにとっては、この風情こそが「おいしい」と言って良いものなのでしょう)
そう、それでいい。それもまた「食べる」ということなのだから。
そんな中、ユーフォニーは花火セットを取りだしていた。
「手持ち花火や線香花火をしっとり楽しむのも素敵ですよね……花火、やってみたかったんです。やっぱり子どもっぽい……でしょうか」
「そんなことはないよ。オイラも好きだよ、花火」
「楽しめる時は精一杯楽しみたくて。冒険はいつも、一期一会、かもしれませんから」
枝豆をもぐもぐと食べるアクセルと頷きあいながら、ユーフォニーは花火を取り出す。
流石に打ち上げ花火は出来なかったが……どの花火も、夏らしい風情で。
枝豆も酒も、ジュースも、各種の料理も。どれも素晴らしい美味しさだ。
「枝豆と来たら、やはりビールだろう! この黄金の組み合わせは、世界や場所が変わっても不動だな。そう思わないか?」
「麦の酒じゃったか。作るのも良さそうじゃのう」
汰磨羈がプハー、とジョッキを置いてご機嫌な声をあげる。
「茹でた枝豆も、枝豆コロッケも、全てヨシ! いやはや、頑張った甲斐があったというものだ」
そう、終わりよければ全てよし。
夏の日に食べる枝豆は、とても美味しくて。
その微かな塩味は、何処となく夏の海をも思わせていた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
( 'ᾥ' )
( 'ᾥ' )
( 'ᾥ' )
( 'ᾥ' )
--<000>
(皆様の心を癒すための精一杯の枝豆表現)
GMコメント
カメムシを追い払って枝豆を収穫、一杯やりましょう。
混沌の夏、覇竜の夏。プレイング比率は収穫まで&宴会で半々を基本に描写を濃くしたい方に振り分けると思い通りの描写になるのではないかと思います。
以下、必要情報です。
●覇竜枝豆の畑
フリアノンから少し離れた岩山の中腹に畑があります。
地図があるので迷いはしません。
●オドゥカメムシ×3
全長3mの茶色のカメムシモンスター。飛んで畑に向かってきます。
そんなに強くないのですが、無駄にタフ&性根が腐ってるので下手にダメージを受けると「畑で死んでやる」くらいのことはやってきます。実際死ぬと身体から死ぬほど臭い成分が大量に漏れ出します。
攻撃方法は「悪臭ビーム(臭い)」と悪臭の波動(臭い)」です。
特殊なバッドステータス「悪臭」がつく可能性があります。気をつけましょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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