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シナリオ詳細

境界産アーカム1920:神意

完了

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オープニング

●※※※※年※※月※※日、アーカム
 コペルニクス的回転を纏った恐怖とは結局のところ娯楽に過ぎないのだ、と、局外者の群れが騒いでいた。鏡面に映り込んだ化け物の名前はおそらく人間なのだろう。面長の君が溜息を吐いたならば、成程、似たようなものが境界に在ってもおかしくはない。
 茫々と流れ往く――河を辿れば、駒形切妻屋根の眩暈、無数の窓目に触れてしまうのだ。旧き良き、或いは粘つくような匂いが鼻を擽ってくる。まるで狂い咲いた暗黒のように、煌びやかな街並みが続いている。この街の名前を読み解く事は簡単だ。何故ならば、君達は崩れないバベルの下、否、この書物に順応しているのだから。
 ちちち、と鳴いているシアエナガを観察しながら午睡のぬくもりに落ちるのも悪くはないだろう。忙しなく勉学に励むのも人類らしい。それとも、あの悪名高いもぐり酒場で、禁じられた黄金に狂うのも良さそうだ。兎も角として、素晴らしき哉。
 ――昔と少しも変わらぬ、伝説に満ちたアーカム。

 いらっしゃい。
 ああ、アンタか。アンタなら大歓迎だよ。
 この街は今も昔も『変わらない』からね。
 おっと。このアイスクリームはほんの気持ちさ。
 愉しんでいってくれ給えよ――。

●――1920年代~アーカム
「ねえ、アナタ達。この本の作者ってわかるかしら? いえ、タイトルだけなのは仕方ないんだけどね。だってほら、こんなに分厚いと気になってくるもの」
 境界案内人、こすもはポンポンとやけに分厚い本をたたいた。ぎっちりと詰め込まれた、資料のような貌はまるで禁忌の類。何者も寄せ付けない、されど如何しようもないほどの『魅力』を孕んでいた。
「皆に行ってきてもらいたい世界は『アーカム』っていうらしいの。あ、今回は別に世界の危機だとかはないわ。ただ観光してくるってだけね。なんか色んなものがあるらしいわよ。へんな形の屋根とか大学とか。全容はわかんないけどね。いやね? 栞挟んだって読破するのに数年かかるわよ、これ」
 飛び出すのは浪漫か、暗黒か――。

NMコメント

 にゃあらです。
 練達風に書き換えたら再現性アーカム。

●アーカム
 1920年代アメリカ、マサチューセッツ州、アーカム。
 に『よく似ている』世界です。
 時系列などはひどくバラついておりぐちゃぐちゃです。
 アナタが思うアーカムこそがアーカムなのです。

●出来ること
 ※※※※※※※大学の見学。
 学科は様々、アナタが書いた事こそ真実です。

 街の散策。
 様々なものを視る事が出来ます。
 もしかしたら魔女の家なんかあったりして。
 河を眺めながらアイスを食べるのも良いですね。
 シアエナガもいます。

 もぐり酒場。
 禁酒法時代でもあります。
 ダーティな人にオススメ。

 その他、思いつく限り。

●目標
 アーカム観光。
 それと正気で帰ってくる事。良いですね?

●特殊ルール
 この世界においてイレギュラーズは『現実の人間』相当になります。
 外見は『そのまま』です。

●サンプルプレイング
「のんびり散歩するのも悪くないわね」
 さっき貰ったアイスクリームを食べながら歩いていく。
 途中出会った黒猫と自由気ままに。
 そういえばこの河、深そうよね。
 なんだかおっきなお魚が棲んでそう、なんて。

「体験入学に来ました、※※です」
 えっ? 医学部の見学って出来るんですか?
 有難う御座います。
 先輩方はどんな研究をしているのですか。
 ……死体の蘇生? なんだか胡散臭いなぁ。
 そんな事はない? 明日、実験するから来いですって?
 わかりました。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はLです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 境界産アーカム1920:神意完了
  • NM名にゃあら
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年06月08日 21時35分
  • 章数1章
  • 総採用数4人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心

 噂に聞いた、兄弟じみた、ある種の不安感が私を抱いていた。その事を否定するつもりはないしヨグ=ソトホートの存在を御伽噺だと一蹴する事も出来ない。私がこの大学を訪れたのは、先祖について調べる為でした。
 局外者じみた扱いを受けていたのにはきっと意味があるのだと、鏡面、長耳一族の血筋が嗤う。長く々く、今現在においても魔女の証と見做されているそれは果たして何に由来するのでしょうか? 言い伝えによれば七代前の先祖に遡ると謂う。かの土地清掃より逃れて大陸に身をおいた頃――既に尖っていたのだと母は残していた。
 その頃と謂えばブラック・ボールライン社の定期帆船すらなかった時代。それこそボゥボゥと鳴いている、真っ白いものも観察出来ない現実なのだ。あの言葉にし難い、玉虫色に煌めく不定形の鳴き声。
 兎も角、重点的に捲るべきはミスカトニック川沿いの集落、如何様に辿り着いたかの内容だ。傍らに聳えていた碑、見知らぬ文字列の馴染み深さといったら――あれが一族、悉くが忘れてしまったスコットランド語なのでしょうか。緊張感が蔓延っている、私の後ろでは何者かの靴音――何か、大切な事を忘れているような気が……?
 乱れている、いや、空間が歪んでいるのだろうか。悪名高いキザイア・メイスンとその使い魔が齧るように促している。ダメ、これ以上の深追いは戻ってこれなくなる――エルシアが如くにプロヴィデンスを燃やす。均すのは私だった。

成否

成功


第1章 第2節

アンリ・マレー(p3p010423)
亜竜祓い

 温めたヤクのミルクをちびり、優しげな面長を一瞥してドラネコは※※と鳴いた。橙色からわずか、貪られた時はようやく真ん丸い月とやらを認識したのか。悪い子となるのに丁度いい、そんな気分で抜け出した――爛々と戯れるような破風が連なっている――良かったねドラちゃん、おやつ貰えて。点々と塗られた街中が線を孕み、遂には現実性を帯びてくる。大学に入れる年でもないけど、見るだけなら……。
 猫じみた気質を抱いているのは天文学部のおにーさんだって知っていた。綺麗に晴れた夜間ならば、ああ、今日はきっと望遠鏡を貸してくれるだろう。大学にある最新のものだからか牡牛座がやけに『よく』わかる――するりと出されたのは輝くような黄金、こんな小さい子にお酒はよくないと思うなぁ。これには特別な蜂蜜が使われているんだ、アンリ。
 怒られるよ、おにーさん。それにしても黄色が好きなのだろうか。赫々とぐるりして見ればあちこちに布。干乾びた、萎びた、肉片のように落っこちている。ふと気が付けばおにーさんは絵本を読んでいた。タイトルは――羊飼いの――。
 幸運ってのは願っちゃいけないのさ。女神様を招こうとするからダメになる。ぐにゃぐにゃと、嗤う、目が回るような感覚にちょっとした疑問符。見つけてしまったようだね。これで三度目だよ。おにーさんの声が近くて遠い、遠くて近い。
 飲んでもいないのにどうして。頭の中身を引っこ抜かれる、闇とした囁く。

成否

成功


第1章 第3節

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女

 両脚のような焔だった、膨らみ、企てを孕んだ終脳が原始的な凶暴性をボトボト落としていく。ああ――私のことを見たのね?
 ひどく若々しい娘だった。爛として輝くような赤い瞳に何処かしら『年相応』とは思えない雰囲気、魔力を纏うように振る舞う貌はまるで聖職者だ。しかし、僕はこのような人物を知らない。学内を歩んでいたならば十人中十人が凝視する美しさだ。
 私の名前は「キャラ」どこにでも居る小娘よ。
 自分から『天才』だと豪語した十四歳は、成程、博士等のお気に入りでも在るらしい。何を学びに来たんだい――民俗学よ。例えば極東のヤーポンには蔭洲升という漁村があるのをご存知?
 寂れた場所に用が在ると謂うのか。もしかしたら『あの辺りの血』なのやも知れない。いや、そんな事は在り得ない。こんなにも活発的で、飛び回るような美貌が、何よりも艶とした紫色の髪が――珍しい?
 眼のある紫の煙と緑の雲を見たことがある?
 イーリンが漿液と混ざり合った。何故、この娘は……キャラは『僕が窓の外、高く高くに双眸を見た』と……ぐぅ、緊張感を殺すように腹が鳴った。
 ふふ、ふふふふ。貴方、大変ね。
 熱い、熱いんだ。この地上と謂うものは忌々しいほどに暑いんだ。
 邪教も神も老紳士も――造る事に忙しくて目の前を失っていく。
 娘の哄笑が響く、どくんと流れ往くウェンディゴ、細長い鋭利な両脚――私を刺してみる?
 咽喉を蠢かした雲をひとつ、消失した。

成否

成功


第1章 第4節

玉ノ緒月虹 桜花(p3p010588)
神ではない誰か

 炎上するかのような記事がアドヴァタイザーとやらには記載されていた。桜花の『お目当て』には程遠く、確かに『頁続き』では在るが彼方にやってきたと痛感させられる。度重なる天災や戦火に巻き込まれ、朽ち果てていった数多の記録は頭蓋の片隅で燻っている程度なのだろう。喧しい魔種どもの神への冒涜心、そんなものが自然を侵すだなんて莫迦げた世の中だと思わないか――昏々としたルーツを探る為に戸口を叩く、ずらりと並ぶ本棚に在るのは吉か凶か。御祭神の血肉、つまりは歴史が霧散している。
 私が知っている事は村の近くの国の皇子から一ノ宮としての記録表のみ――贄とした瞳の行き先が解れば自ずと彼も応えてくれるだろうか。象徴、もしくは偶像が無ければ『ひと』は縋る事すら赦されないのだ。頼りの情報はおそらく僅か、蜘蛛の糸へと手を伸ばす。
 ※※※※に関する文献が『あった』だけ奇跡だと考えるべきだ。ぺらりと黄色いシミ、紙魚にやられた箇所を追っていく――これでは文字通りに八方塞がりだ。自国の文字すらロクに読めないほど汚れているとは――或いは穢れているのか? 目線を外せば妙な男が一人。「余所モンだろ、臭いでわかるぜ」
 山羊めいた男は何もせず、ただ奥に在るだろう『禁書』の棚へと歩み去っていった。あれが『何』なのか耽っている場合ではない。復建の為にも希望を棄ててはいけないのだ――手元の本を棚に戻そう――『復元された箇所』は真逆……。

成否

成功


第1章 第5節

 一口程も残っていない、ひどく真っ白なアイスクリームが宙へと融けた。
 アーカムの夢は一時、ここに伏せ、老紳士の寝顔だけが映り込む。
 ――猫の柔らかな声が伸び、護謨質の鬼が嗤う。
 黄金時代に入り浸り神意への身投げを終える。
 そは永久に横たわる死者にあらねど――。

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