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シナリオ詳細

梅酒を仕込む季節

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●梅の木
 梅酒は、お好きだろうか?
 ちょうどこの初夏に瓶に梅と氷砂糖、そして酒を入れてじっくりと漬けるのだ。
 20歳に達していない人であれば、シロップ漬けにするのもいいだろう。
 じっくり、じっくりと。漬け込んで出来上がった梅酒は……幸せの味がするだろう。
 ところで、梅酒に使う梅を見たことはあるだろうか?
 あくまで一般論ではあるし例外は存在するが、基本的に梅酒用の梅は青梅を使う。
 固くて未熟な梅だが、梅酒用として知られているのは青梅である。
 その青梅をもぎ、処理をして漬けるわけだが……実は覇竜にも、そういった文化がある。
 熟す前の梅を木からもぎ、梅酒に加工する。
 漬け込む程美味しくなる梅酒の仕込みは、この時期の覇竜では夏の訪れを告げる光景であり……フリアノンにおいては『フリアノンの酒職人』黒鉄・相賀(p3n000250)がそれを担当していた。
 相賀のギフトである「酒職人の神髄」は酒造りにおいてマイナス要素に働く偶発的要因、誤差をそれなりの確率で弾くことが出来るというものであるが故に、余程の何かが起こらない限りは美味しく仕上がる。
 しかしまあ、「いつも通り」などというものとは程遠いのが覇竜という場所だ。
 梅酒の仕込みを始めるこの時期にちょっとした問題が起こって、それにイレギュラーズが駆り出されるのは……やはり「いつものこと」ではあるだろう。

●梅の木を占有するもの
「実は梅酒用の梅の調達に問題があってのう」
 相賀は集まった面々に、いつも通りの飄々とした様子でそう切り出した。
 相賀の背後には氷砂糖が積んであるが、これはどうやらラサからの輸入品であるらしい。
 砂糖はその性質上、大量に調達するにはラサから持ってくるのが早いようであるが……その辺りの事情はひとまずさておこう。
 問題は「梅の調達にどのような問題があるのか」だが……やはりというかなんというか、青梅のなっている木の近くにモンスターが居座っているようだ。
「ソードスネイクというモンスターでの。数が多いせいか、ちいとばかり面倒なんじゃよ」
 ソードスネイク。
 それは名前の通り蛇だが、羽が生えており、攻撃時に身体を伸ばすことによりロングソードのような姿になる、そんな蛇である。
 その身体も刃物のように鋭く肉厚かつ硬質であり、性質自体もロングソードに似ている、そんな相手だ。
 ソードスネイクがそれなりの数集まれば同じ数の剣士を相手にするのと似ており、とてもではないが安全な梅狩りは望めない。
 ならば、イレギュラーズの力を借りてソードスネイクを追い払い、青梅を収穫してくるしかない。
 つまりはそういうことだ。
「勿論全部採る必要はないんじゃがな。梅ジャムや梅干しにするには、もう少し熟してもらう必要があるしのう」
 そうして採ってきた梅は、その手で漬けて梅ジュースや梅酒にすることが可能だ。
 勿論、漬けてすぐ飲めるわけではないが……そこは相賀だ。
 正規の報酬以外のご褒美は、ちゃんとある。
「此処に去年漬けたものがあっての? 丁度飲み頃じゃよ」
 しっかりと漬けた薄い琥珀色の液体が、仕事を終えたイレギュラーズを待っている……!

GMコメント

成年組は梅酒、未成年組は梅シロップによる梅ジュース。
ちなみに梅の名前は「覇竜梅」らしいです。
あく抜きは必要ありませんが、ヘタ取りは必要らしいです。

というわけでソードスネイクを追い払って青梅を回収し、漬けましょう。
現場は岩場に生えた梅の木ですが、ソードスネイクが青梅をかじっています。
こっちの力を見せつけてやれば逃げていくので、一発ドカンとやってやりましょう。
お仕事を終えたら瓶の中に梅を漬け込んで保管。
去年漬けた梅酒や梅シロップで呑み会です。
甘くて美味しい、夏の訪れを告げる飲み物を皆で楽しみましょう!

●ソードスネイク×20
攻撃時にロングソードそっくりになる羽の生えた蛇。
突き刺し攻撃、切り払い攻撃を使用します。
敵わないと判断すれば逃げていきます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 梅酒を仕込む季節完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年06月04日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラズワルド(p3p000622)
あたたかな音
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)
氷の狼
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼
スフィア(p3p010417)
ファイヤーブレス
祭・藍世(p3p010536)
桜花絢爛

リプレイ

●梅酒の季節
「一発ドカンで梅酒ぅ♪ 梅酒ぅ♪ ふんふふふーん♪」
「いいねぇ、梅酒かぁ……ハハッ、これはモンスター共を蹴散らしてでも梅を取りに行く価値がある報酬じゃないか。あの爺さんの用意した酒なら味も最高だろうし、今から楽しみだねぇ……よおし、これは気合いれて行くしかねえな!」
 『流転の綿雲』ラズワルド(p3p000622)と『桜花絢爛』祭・藍世(p3p010536)が楽しそうに声をあげる。
 覇竜梅の木までの道中、2人はずっとご機嫌だ。
 まあ、仕方ない。覇竜梅さえ手に入れてしまえば、あとは熟成された梅酒が待っているのだ。
 勿論お酒は未成年は飲めないが、未成年には梅シロップが待っている。
「梅シロップ、気になります…… 梅……梅? うめぇー?? 梅ってなんですか? 桃みたいな物ですか?」
 『ファイヤーブレス』スフィア(p3p010417)も身振り手振りを加えながら、そんな疑問を抱く。
「確かお酒の代わりにシロップで漬けたあまーいものなのです。梅は……うーん、酸っぱい食べ物、でしょうか?」
 『陽だまりに佇んで』ニル(p3p009185)がそう答えれば、スフィアも納得したように頷く。
「梅酒……梅シロップ……ニルは、梅仕事? のお手伝い、はじめてなのです。なので、とってもとってもそわそわします。飲むのも、お手伝いも、楽しみなのですよ。まずは、ソードスネイクを追い払うところから、ですね」
「はい!! 当然、ソードスネイク酒も造るよ!! でも、蛇酒って相手を生きたまま捕獲しないとダメみたいなんだよね……一匹は最低でも殺さないようにしないとね」
「えっ」
 『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)の予想以上の言葉にニルは思わず声をあげるが……まあ、モチベーションの元になるモノがあるのは良い事だ。
「まあ、ソードスネイク酒についてはひとまずおいておいて……」
 『氷狼の誓い』リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)も多少上機嫌に梅酒について思いをはせる。
「梅酒は以前依頼で頂いてからすっかり大好物になってね。蛇を追い払えば美味い梅酒にありつけると聞いて釣られてしまったよ。
しかし……それにしても仕事は仕事だからね。きっちりこなすとしようじゃないか」
 さぁ、氷の狼の遠吠えを聞くがいい……と。リーディアは目的地にいるであろうソードスネイクたちに向けて語り掛ける。
 そう、まだ旬にも至っていない覇竜梅をかじっているソードスネイクをどうにかしなければいけない。
 覇竜梅を守る……それが今回の仕事なのだ。
「梅酒の梅がピンチ……もうこれは覇竜を揺るがす一大事よぉ。芳醇な香りを楽しむロックでも夏場に最高なソーダ割でもお酒初心者ちゃんにおすすめな水割りでも冬でもぽかぽかお湯割りでも美味しいお酒界の走攻守揃った梅酒が!!」
 ここまで一気かつ一息で言い切るのは『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)だ。
「ってことでご指名頂いてないお酒のお仕事でも運で掴み取っちゃう私よぉ、ふふふ相賀さんってば「来やがった」みたいな顔しちゃってー☆ あ、酔ってないわよぉまだ、報酬の梅酒があるって聞いてうきうきなだけ!」
 テンションが高い、実にテンションが高い。旬のお酒を前に酒が無くともセルフで酔っているのだろうか。
 いや、アーリアは酒が入っても入らなくてもテンションはそんなに変わらないので場の雰囲気的な問題なのだろうか。
 何しろ今日は大体皆テンションが高い。
「梅酒だー!!! 合法的なタダ酒は身体にも心にも良いよね! 飲みすぎは厳禁だけど! さて楽しいアルコールタイムの前にお邪魔虫にはご退場願おうか!」
 『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)もテンションをこれでもかと上げているが、その視線の先には覇竜梅の木と……青梅をかじっているソードスネイクたちの姿がある。
「すぱっと片付けて、あとはゆっくり飲み会だね。毎回こんな依頼が続いてくれると個人的に気楽でいいんだけど」
 特に人が死ぬわけではなく、相手を殺し切る必要があるわけでもなく。
 確かにルーキスの言う通り、こんな依頼ばかりであれば平和だろう。
「んー、全部倒す必要はないんだよねぇ? じゃあさぁ、ひとまずデカいのブチ込んでビビらせちゃお。それで逃げ出すなら楽でいいでしょー? 保護結界があるなら大丈夫だろうけど、一応、梅の木の位置には注意しておこうねぇ。そう、来年の梅酒のために!」
 ラズワルドが真っ先に反応し、ブルーコメット・TSを放つ。
「ほらほらぁ、早く逃げないとお酒に漬けちゃうぞー?」
 威嚇だし、最悪当たんなくてもおっけーおっけー、と笑いながらラズワルドはЯ・E・Dみたいなことを言うが……本気かどうかはよく分からない。
「相賀さん、蛇酒も作ってくれるかなぁ……」
 いや、本気のようだ。さておいて。
「今回はスナイパーさんやらかよわい皆さんが多いし、ここは私が一肌脱いで前線に出るとしましょうか!」
 アーリアもそう叫び、気まぐれ魔女の贈り物を煌かせながら前へ出ていく。
「はいはぁーい、梅酒を作る為に皆さんにはちょーっと退散して頂きまぁす」
 響く名乗り口上は、後衛に敵が抜けないようマークをしながら、仲間の壁になる為の準備だ。
「梅も岩場も守りますね。これでちょっと派手に動いても、大丈夫です」
 続けて保護結界を展開するニルだが、梅を守る為には必要なことだ。
「ソードスネイクも梅が好きなのでしょうか? ごめんなさい、でもこの梅は梅酒の梅なのです」
 更に時期が来れば梅も完熟するだろうが……こんな時期に食べ尽くされては困るのだ。
 そして保護結界の展開を確認するとЯ・E・Dもウキウキ、ルンルンしながらソードスネイクの撃破に入る。
(ニルが保護結界を展開してくれたから何の憂いもなく破式魔砲を梅の木の周囲にぶちかませる)
 そう、Я・E・Dはソードスネイクを殲滅するつもりだった。
 死んだ蛇は蒲焼にしてツマミにするだけなので特に手加減はせず、沢山居るなら一匹くらいは死なないよねの精神であるようだが……実に容赦がない。
「カカッ、さっさと終わらせて梅酒の味見と行こうぜ!」
 藍世のH・ブランディッシュが叩き込まれ、物陰に隠れたスフィアの破式魔砲が放たれる。
「悪く思わないでくれよ、君達がいると困る人達がいるからね。本当はここで仕留めてしまった方がいいのだろうけど……死体の片付けの手間が惜しいな。逃げてくれるならそれでいいとも」
 コールド・ブラッドを構えたリーディアのプラチナムインベルタが放たれるが、言葉とは裏腹に逃がすつもりはリーディアにはない。
「さあ、この弾幕から逃れられるなら逃れてみるといい。無理な話だと思うがね」
 そして今回はソードスネイクも食べようとしている面々がいる。逃げられるかはまさに運次第だが……。
「数が多い? 知らないなあ! 私の銀鍵に掛かれば範囲掃討なんて朝飯前だよ! 私の魔術は痛いぞー!」
 ルーキスのダイヤモンドダストも放たれて……アーリアのパルフェ・タムールの囁きが響く。
「梅酒を飲んでないのに酔ってふわふわしているみたいに同士討ちしちゃいましょ!」
 前衛で多少傷だらけになったって、後でアルコール消毒するのでヨシ! と乙女としてはあんまりヨシじゃないことを言いながらアーリアも駆けまわり……そうして、見事にソードスネイクを殲滅してしまったのだ。

●梅酒を作ろう
「梅を酒に漬けるとは聞いていたが、成程、こういう風に作るんだね。意外と重量がありそうだな。女性や子供が運ぶには大変そうだ、率先して運ぶことにしよう」
 リーディアがそんな気遣いをみせるが……梅酒作りは、意外に地味な肉体労働だ。
「ヘタ取る程度なら簡単だし、いくらでも手伝えるなぁ」
 ルーキスが言いながらヘタをとって洗うが……1つではすまないのだ。
 数が多ければ多い程、結構な重労働になってくる。
「そういえば、お酒を一から漬けるのははじめてだねぇ。収穫もヘタ取りも手伝うけど、ぜーんぶご褒美のためだし?」
 ラズワルドも言いながらヘタを取り、それを藍世がザブザブと洗っていく。
「これをお酒にしたり、シロップにしたりするのですか……酸っぱいんですか……そうですか……美味しいんですか?」
「青梅の時期は、生で食べるものではないのう」
「そうですか……」
 洗った梅を相賀と共に瓶詰しながら、スフィアもそう頷く。
「~~~~♪ 食材がいっぱいで嬉しいね、うんうん、もちろん梅酒も楽しみだよ」
 Я・E・Dはソードスネイク酒の準備がされていることに満足そうに頷きながらも、ヘタ取りを手伝っていく。
 ちなみにちょっと悩んだけど梅酒のためだからと青梅を今回は齧らないことにしたようだ。
「相賀さん、夢のソードスネイク酒の熟成はお願いして良いかなぁ? もちろん、実は去年に漬けたものがあるなら、今飲んでみたいのだけれど」
「まあ、ないことはないが……後での?」
 相賀とそんな約束をしたことでテンションが多少上がっているのもあるのだろう、Я・E・Dの手さばきは実に軽やかだ。
「梅の実ってこんななのですね。梅干は見たことがありますけど、梅干しになる前は赤くないのですね。ころんってかわいいのです」
「完熟の時期の色も中々綺麗じゃがの」
 ニルも青梅を洗ったりヘタを取ったり、丁寧に丁寧に作業を続けていく。
 おいしくなぁれのおまじないも忘れずに。そうしたものが美味を約束するわけではないが……そうした心遣いが、何かを変えるかもしれない。
 アーリアも早く飲みたい気持ちを抑え、丁寧にヘタを取って洗っていた。
「私達が漬けた梅酒が飲めるのが楽しみねぇ……はっ相賀さんちゃんと呼んでよぉ!? 瓶のラベルに名前を書いておこうかしら……」
「嬢ちゃんは、ほんに酒が好きじゃのう」
「モチよぉ!」
 一切の迷いのない返答に相賀がホッホッと笑うが、美味しく酒を呑むのが分かっているからこそ……かもしれない。
 そうして並んだ梅酒の瓶は、とても愛着が沸いてくる気が……なんだろう、なんか「あーりあ」と書いてある瓶が混ざっている。
「瓶いっぱいのお酒……ニルはなんだか、とってもとってもうきうきします。これはいつ頃飲めるのですか? できた頃に、飲みに来てもいいですか?」
「飲むだけならたいして期間はかからんが……どのくらい熟成させたいかにもよるのう」
 しかし、と相賀はニルに笑う。
「呑みたい時に来たらええ。自分の名前書いた嬢ちゃんもおるしの」
 アーリアがサッと視線を逸らすが、それはさておき。
「そーだ、相賀さぁん? これ、お土産に何本か持って帰ってもいーい?
飲ませてあげたい相手がいるんだけどねぇ、練達にいるからさぁ」
 その光景を見ながら、ラズワルドはそう相賀へ投げかける。
「病み上がりだったりして流石に覇竜までは連れて来られないし? 快くなるまではシロップを割って夏バテしないように、梅酒は快気祝いにどうかなぁって……それから、しばらく飲めなそうな人には香りだけでもお裾分けしてあげたいんだよねぇ……なんて、ダメかなぁ?」
「うむ。好きなだけ持っていくとええ。お主等の仕事の成果じゃしの」
 そんな返答と共に、Я・E・Dの焼いていたかば焼きの匂いが漂い始める。
「氷があるならソーダで割って飲みたいかなぁ。あっ、かば焼きもできたから、みんな食べる?」
「氷か、私のギフトを使うとしよう」
 そうして始まるのは、楽しい宴会だ。
「はいかんぱぁい、色んな傷にアルコールが沁みるわぁ……」
 そんな中、アーリアも思う存分梅酒を楽しんでいた。
「まずはロックで風味を楽しむ……はっリーディアくん氷ちょうだいな!」
 カランとグラスの中で鳴る氷は幸せの音だろうか?
「うーん彼のギフト、夏場一家に一台(?)ほしいわぁ……しっかり風味をロックで楽しんだら、残りは炭酸ですっきりと」
 まさに楽しみ方を分かっている感じではあるが……その辺りはそれぞれ、だろうか?
「いやあ、自分の手で取った梅でつくる梅酒は別格だろうよ……この覇竜じゃあ、いままでは来年まで生き延びられるかと不安になってたもんだがな」
 乾杯の音頭の後、藍世は梅酒の入ったグラスを静かに揺らす。
「くくっ、こうしてイレギュラーズとして戦ってるうちに、アタシもちっとは前向きになれたかな。この梅酒のためにも、来年までせいぜい頑張って生き延びるとするかね。ま、それはそれとして、爺さんが用意してくれた梅酒は遠慮なくいただくがな!」
「ニルはお酒も飲めますが、シロップもすきです。リーディア様の氷のおかげで冷たくって、きもちがいいのです」
 リーディアのギフト「氷箱<コオリバコ>」で造られた氷の欠片がニルのグラスの中でカランと音を立てる。
「みなさまののんでるときの表情がとってもとってもおいしそうでニルもとってもとっても「おいしい」なって思うのです」
 ニルにしてみれば誰かと何かを分かち合う、一緒に飲食すること自体が好きなので、お酒でもシロップでもなんでも、本人の中では差はない。
 しかし「雰囲気が味を左右する」とはよくいったものだ。そういう意味ではニルもまた、正しく梅を楽しんでいるのだ。
「梅仕事は夏の訪れ、なのですね。これから来る夏に、その先の秋に……楽しみが増えました!」
「確かにね」
 そんなニルに、リーディアも頷く。
「今漬けた梅は来年また梅酒かシロップになるんだったね。未成年でも飲めるというのはありがたい。私の愛弟子は未成年だから酒が飲めなくてね。シロップなら飲めるから。今年は一緒に来れなかったが……是非来年は一緒に来たいものだ。楽しみがひとつ増えたよ。その頃にはあの子にお師匠と呼ばれるに相応しい人物になってないといけないね」
 リーディアは言いながら、この場には居ない「弟子」のことを思う。
 あるいは彼女の為に一瓶貰っていくのもいいだろうか?
「私の好きな飲み方はロックでね。さっきギフトで顕現させた氷を削って梅酒を注ごう。無駄に大きい氷だからね。梅酒の近くに置いておけば梅酒が温くなるということも無いだろう」
 実際、リーディアの用意した氷はかなり大きい。これからの時期は重宝しそうでもある。
 普段は遮蔽物として利用することが多いのだけど、今回は冷蔵庫の役目という事だであるらしい。ついでに冷房でもあるだろうか?
「ああ、美味い……やはり梅酒は最高だな……」
「梅酒はストレートも良いけど炭酸割りもおいしいって聞いたんだ。へい持参の炭酸だけど飲む人居るかーい?」
 そんな中、ラズワルドも炭酸水を取り出してみせる。所謂梅サワーだろうか、美味しそうだ。
「覇竜に来てからお酒の依頼に縁が多くてハッピーだね」
「んふふ、イイ香りぃ……喉に残る濃さもたまんないねぇ」
 覇竜という新しい土地と、新しいお酒。
 それはきっと素晴らしいことだが……ラズワルドも楽しんでいた。
「まぁ味はわかんないんだけど、この香りは好きだよー。ロックが一番いーかんじかなぁ。みんなと乾杯して回って、お酌したり、労いのハグもしちゃおっかなぁ」
 最近暑いし、脱ぎたくなっちゃうかもねぇ……んふふ……などとちょっと危険なことも呟くラズワルドだが、まあ阻止されている。
「しかし不思議よねぇ、この梅酒が漬けられた頃これが里の外の人間に飲まれるなんて思ってなかったでしょ! 来年これが飲める時、私達はどうなってるかしら。ふふ、楽しみねぇ」
「さあて、のう。今より良くなってることを願うばかりじゃよ」
「そうねえ」
 アーリアと相賀はそう言い合うと、グラスを鳴らす。
 夏が来る。もうすぐ夏が来る。いつかを思いながら……その幸せを願いながら、全員が涼しい一日を楽しんだのだった。

成否

成功

MVP

ラズワルド(p3p000622)
あたたかな音

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました!
今回はMVPを凄い悩みました……

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