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シナリオ詳細

カルラッジ攻防撤退戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●地獄の撤退戦
 ――それは圧勝して終わるだけの筈だった。
 幻想西部カルラッジ地方。この近辺で魔物が大量に湧いているという報があったのが少し前だ――このままではどこの街を襲うともしれぬと討伐隊が編成され、カルラッジ地方の一角にて遂に相見える。
 当然、討伐隊の方が戦力は上であり、これは負ける筈のない戦いだった……
 しかし。

「な、なんだこの数は……! 事前情報よりも遥かに多いではないか!!」

 いざや戦いが始まれば、あちらこちらから敵が湧いて出て――想定の五倍以上の数に膨れ上がっているのである。
 情報に誤りがあったのか、それとも何らかの理由で突如として更に増えたのか。
 分からぬ。が、とにかくこれだけ事前の情報と違いがあれば最早戦い所ではない。
 援軍の要請はしていたがこれは最早間に合わぬだろう……更には。
「隊長! 左右より更に魔物の敵影多数! 敵の増援です!!」
「た、隊長!! 後方側からも敵影らしき存在が確認されています!!」
「――く、くそ! 撤退、撤退だッ!! 至急、砦へと撤退せよッ!!」
 魔物側にはまだまだ増援がいる始末だ。
 故に指揮官が下した判断は即時撤退。一体これほどの数がどこに潜んでいたというのか……原因を追究する暇すらなく、今は逃げるより他はないのだが。接敵する前までならまだしも、既に開戦している状況にあれば逃げるのも決して楽にとはいかない。
 ――殿が必要だ。本隊が撤退するまで時間を稼ぐ殿が。
「た、隊長!! 左翼の部隊が突撃しています!!」
「なにィ! そんな指示は出していないぞ――どういう事だ!!」
 と、その時。
 部隊の左翼側に展開していた者達が突如、敵の本隊へと大攻勢を開始した――鬨の声と共に往く彼らだが、本隊はそんな指示は出していない。そもそも敵の厚みは凄まじく、突撃しても最早戦局を挽回する事など……
「ま、まさか……バカ者共め、自ら殿を務めるつもりか……!!」
 しかし、彼らの奮戦により敵の動きが乱れている。
 ――そう。彼らは自ら殿を努めんとしているのだ。無論、この攻勢による一時的な乱れは一時の事だろう。勢いはやがて止まり、押し潰される時が必ず来る……しかし殿は『誰かがやらねばならぬ』のだ。そして彼らはその栄誉を自ら率先して……得に行ったのか。
 ――ならば今だ。今しかない。
 この機を逃せば、今度こそ包囲が完成してしまうだろう!
「総員撤退!! 砦に退け――!!」
 故にこそ、後ろを振り返らずに走り抜けるものだ。
 彼らの突撃を無駄にせぬ為に。一刻も早くこの戦域から離脱する――

「ぉぉぉぉお! 幻想国万歳――!!」
「右を見ても左を見ても敵ばかりだぞ――!! 俺達の手柄だ――!!」

 さすれば。遥か後方で未だ奮戦する者達の声が鳴り響き続けるものだ。
 最後の最期まで。自らの死力を尽くす戦士達の声が――其処にあったのだ。


 やがて戦局は、戦場での攻防から撤退戦へと移行する。
 殿の部隊が中央を抑えているが――左右から至る魔物達の追撃がちらほらと撤退している部隊に届きつつあったのだ。本来であれば彼らを迎撃し殲滅するのが良いのだろうが、撤退戦の最中に悠長に足を止めている暇はない。
「退け、退け――!! 砦まで死に物狂いで走れ――!!」
 とにかく彼らは突き進む。林の中に入りて、魔物達の眼から隠れる様に。
 しかし討伐隊には歩兵も多く、足並みは遅い者もいるものだ。
 このままでは少なからぬ犠牲が出てしまうかもしれない……
 ……いや撤退戦というのはそういうものだ。
 負け戦。であれば殿を除いても犠牲ゼロは難しいものか――
「はぁ、はぁ――むっ!? あ、あれは……!!」
 瞬間。撤退している部隊の前方側に――何かの影が見えた。
 すわ、魔物かと。撤退路さえ封じられれば最早これまでかと。
 指揮官は最悪の事態を覚悟したものだ――が。
「ち、違う……あれはイレギュラーズだ! イレギュラーズが来てくれたぞ!!」
「――おぉ! 援軍か!! そうか援軍が間に合ってくれたか!!」
 その人影は、撤退の部隊に追撃してくる魔物を攻撃する――
 そうローレットのイレギュラーズである。
 援軍の報を受けた砦側では新たな部隊の編成に急いでいたのだが、どうしても編成に時間もかかるもの――故に身軽にして英雄たるイレギュラーズに先行して援軍として赴いて欲しいと依頼が舞い込んだのだ。そして。
「アンタが指揮官か? 状況は?」
「残念ながら見ての通り我々は撤退している最中だ……一度砦に戻り、乱れた部隊を再編成しなければどうにもならん。頼む! 暫くの間で良い――魔物達を押し留めてくれ!!」
 簡潔に情報を共有するものである。
 足の速い魔物達から追って来ているが故に、この地で止めてほしいと。
 そして殿が魔物の本隊を抑えているが――きっとそれも長くはないだろうと。
「砦に戻り次第部隊を立て直し、再度戻ってくる。それまでなんとか……!」
「――ああ分かったよ」
 ここで部隊が壊滅すれば。決死の想いで残った者達が――報われない。
 ……幸いにしてこの先は道が狭まっている。敵が多数であろうとも迎撃しやすいポイントはあるものだ。また、戦線を維持し続ける必要はないので、ある程度時間を稼げば一端距離を取って、また別の迎撃ポイントを探す、というのも出来るだろうか。
 ――とにかく目的は一つ。時間を稼ぎ続ける事だ。
 新たなる殿の役目。
 この地獄の撤退戦の最中に、一筋の光明が――差し込もうとしていた。

GMコメント

●依頼達成条件
 一定時間敵を足止めする。
 足止めしていればやがて騎士団の援軍が来ます。
 彼らが来た時点で依頼成功になります。

●フィールド・シチュエーション
 幻想西部カルラッジという地方の一角です。
 この近くで魔物の討伐戦が行われていたのですが想像の数倍所ではない程の数が潜んでおり、あわや騎士団は壊滅されかけました。決死の殿のおかげで辛うじて撤退出来ているのですが魔物達の追撃が行われています。
 彼らの撤退支援が目的です。

 周囲は林の中。ちらほらと雨が降っていますが、そう強くはありません。
 道が狭まっている所があり、ここを迎撃ポイントにすれば敵が多数でも押しとどめる戦いをする事が可能でしょう。ただし敵の数は尋常ではない程に多いです。抑えきれないと思えば一端更に後方に退いて、木々を障害物として時間稼ぎをするのも一手かもしれません。

●敵戦力
・魔物×無数
 どこから沸いたのか不明ですが、尋常ではない数が迫ってきています。一体一体の全体的な性能は低い様です。ただし本当に数が多すぎる上に、概ね以下の様な特徴がある事が確認されています。

 小動物型(ウサギや鼠など):反応と機動力タイプ。恐らく最初に遭遇します。
 オオカミ型:反応と、若干攻撃力に優れているタイプです。
 巨大ムカデ型:耐久と攻撃力が強いタイプ。

 空を飛ぶ個体はいない様です。
 上記がランダムに襲い掛かってきます。最初は小動物型のみですが、段々オオカミが増えて、最終的に巨大ムカデ型も出現するようになります。また、時間が経てば経つ程に戦場に出現する数自体も増えていきます。

●撤退勢力
・カルラッジ騎士団
 今回の討伐戦を行わんとしていた騎士団です。
 本来であれば十分な数を用意していたのですが……あまりにも情報と異なる数の魔物に圧殺され掛けんとしていました。決死の殿のおかげで辛うじて退却出来ています。砦に戻り、部隊を再度整えて、またイレギュラーズの下に来ますので、それまでなんとか凌いでください!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • カルラッジ攻防撤退戦完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

郷田 貴道(p3p000401)
喰鋭の拳
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
シラス(p3p004421)
竜剣
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
ヲルト・アドバライト(p3p008506)
幻想の勇者
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
イシュミール・ストラトス(p3p010533)
特異運命座標
朱雀院・美南(p3p010615)
不死身の朱雀レッド

リプレイ


 逃げろ逃げろ――今はとにかく逃げるのだ――
 撤退は汚名に在らず。勝利の為に今は、と。

「――此処は任された、十分に部隊を整えてから来てくれ!」
「頼む――必ず後で戻ってくる故!」

 斯様に部隊が撤退してく様を『竜剣』シラス(p3p004421)は見据えるものだ。
 間一髪だった……あともう少し遅れていれば完全に魔物共に追いつかれていただろうか。いや、犠牲になった殿の事を想えば一歩間に合わなかった、と言うべきかもしれない……
 だが後ろを振り返っても最早やむなし。
 此れよりは未来の為に――此処にて敵を滅さん。
 切り替える。意識を。そしてその身に抱く闘志を内に秘めて。
「事前情報と現場との不一致かあ、かなり嫌な状況だね。まぁ……情報も部隊も地の利も全て万全で戦える状況なんて中々あり得ない。実際の所須らく物事は事前に知る事は出来ないんだからね――」
「なんにせよ、殿となった者達の働きで救われた者達がいるなら……
 その意思が無駄にならぬ様にしないとね。鉄火場は――僕達が引き受けよう」
 同時。『言霊使い』ロゼット=テイ(p3p004150)も撤退していく騎士団達の不運を嘆きながらも魔力を収束させ、至る敵への備えを行うものだ。あくまでも人間でしかない故に、全知なぞ彼岸の彼方……斯様な事態が時として起こるのも無理なき事だと。
 それでも。殿に成った者達の決断を『女神の希望』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)は称えるものだ。彼らがいたからこそ壊滅を免れたのだと。故にあと一時は繋がれた僕達に――任せてほしいと。
 眺めれば、来ている。魔物達が。奴らの宿す数多の敵意が。
 敵の数に対してこちらは少数。決して楽な戦場ではないが……全力でやるしかなければ。
「なんて数だ。1匹見たら30匹はいた、みたいな……なんて軽口を叩ける状況じゃないな!」
「ったく! 幾らでも掛かってくりゃいい……って言いたいところだが、この数は辟易するな、ゴキブリか何かか? 大半は雑兵も雑兵なんだろうが――面倒この上ないな!」
 同時に『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)や『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)も動き出すものである。イズマは自らの感覚を強化し万全を整えてから――紡ぐ音色の衝撃にて敵を穿たん。
 今の所は小動物型の、小さな個体しか来ないが。それでも一体どれ程の数がいるのか。
 貴道は舌打ち一つしながらも――飛び込んでくる敵へと拳を繰り出すものだ。
「だがまあ、仮にもこのミーが守るんだ。一匹たりとも抜けられると思うなよ」
 それは絶大なる威力。強靭なる一閃。
 奴らが牙を突き立ててくる前に打ちのめしてやる――ああ何匹いようとも、だ。
 此処で止める。道が狭まっている此処こそが、最も護りやすい地点なのだから。

「かかってこい。街へは一匹も入れさせない――お前達の歩みは此処までだ」

 故にこそ『幻想の勇者』ヲルト・アドバライト(p3p008506)は目立つ様に振舞おう。
 撤退戦か。いいだろう、足止めは得意とする所だ。
 身をもって示してやろう。この国は貴様らの様な連中に――侵させない。
 幾つも至る魔物の撃を受け流す様に。或いは躱して敵を弾く。
 多くを受け止め。多くを此処に釘付けにして時を稼ぐのだ、と。
「まさかこんなにも魔物が出現するなんてね……こういうのなんて言ったっけ? モンスターパレード?? モンスタートレイン?? ともかく、こんなにも大量なモンスターを見過ごす訳にはいかないよね! これ以上好きにはさせないよ――!」
「やっつけてやるのだ! 騎士の人達を追いかけさせたりなんて、しないのだ!」
 さすれば『不死身の朱雀レッド』朱雀院・美南(p3p010615)や『特異運命座標』イシュミール・ストラトス(p3p010533)も敵を狙い定めるもの。両者共にヲルトの様に敵を食い止めるのである――更には、敵に隙があれば一撃叩き込んでもやる。
 足止めで良いとは言われたけど。
「やるからには……全力なのだ!!」
 此処で倒せば倒すだけ、後に至る騎士団も楽になろう、と。
 イシュミールは力の限り戦おう。これより先には決して進ませぬと――決意しながら。


 奥から奥から湧いて出てくる。本当に一体どれ程の数が潜んでいたのか。
 草陰掻き分け至るは兎やら鼠やら。しかしそれら須らく殺意を宿した化生なり――
「ふざっけんな! こんな兎が居てたまるかよ、怪王種か……?
 それとも突然変異だっつーのか? どんだけ人に敵意持ってんっだよ……!」
「押し潰されてたまるか……! 囲まれない様に立ち回ろう! 幸いにして強くはない……!」
 故にシラスもイズマも目に入る者らを片っ端から始末していくものだ。
 敵が個別に襲ってくるのならばシラスが即座に掌底一閃。常に戦闘を継続できるだけの活力を保ちながら――敵が集合すればイズマが纏めて穿とう。彼らの精神を狂わせる旋律が、戦場に瞬き敵を薙ぎ払いて。
「フハハハ!僕こそが悪の秘密結社『シュヴァルツァーミトス』が所属!
 怪人『不死身の朱雀レッド』さ! さあ、愚かな魔物に悪の鉄槌を☆勧悪懲善!
 ――思い知るが良いよ! 悪の底力ってヤツをさああああ!!」
 更に近くに至った者には美南が往く。己が存在を示すように名乗り上げれば――続けざまに行うは、自身を起点とした爆発の力。朱雀の権化たる力(?)を此処にッ!
 特に今はまだ小動物型が多ければかなりの被害を与える事出来るものだ。痛みに怒りを伴いし魔物は美南へと襲い来るが……しかしそれこそ彼女の目論見通り。さぁ来い僕はそんな牙如きで倒れたりはしないぞおおおおアイダダダダ!! でも痛いのは痛い!!
 なんとなし、食材適正があるが故にこそ敵も寄ってきているのだろうか――? くそう、痛い痛い!
「さてさて。騎士団との合流までの『つなぎ』で良いのは幸いかな――
 これらを殲滅、なんて事になれば流石に無理難題に近かった。
 まぁ。この数の暴力を見るに……」
 保つだけでも流石に『簡単』とはとても言えないのであろうけど。
 言を紡ぐロゼット――の直後に放たれたのは、熱砂の嵐だ。木々の狭間に隠れようとも逃さぬ熱が万物を吹き荒らす。兎が天へ。鼠が天へ。弾き飛ばされながら思うはこの戦況の隅から隅まで……
 今は凌げている。足止めや停滞と言った『性格の悪い』魔術を存分に振るえるのであれば、やり様もあるが故に。しかしこれは忍耐が必要だ――今相手をしているのは魔物達の群れからすれば先遣隊程度の勢いしかなく。
 本隊はこれからだ。悪意の大渦はこれからやってくる。
「くるぞ、波が」
 その『時』を機敏に察したのは――ヲルトだ。
 林の奥から数多の敵の気配が迫ってくる。で、あればと跳躍するものだ。
 敵に先んじるべく。見えた獣……狼型の個体共の眼前に降り立ちて。
「簡単に敵陣の真ん中に来ることを許したな。本当に勝つ気があるのか?
 あぁそれともそこまで頭が回らないか――所詮肉を貪るだけの獣なら、仕方ない」
 挑発する。言葉が通じずとも表情で、言葉の抑揚のニュアンスで分かるだろう?
 例えお前達が畜生以下の存在であろうとも。
 ――さすれば歯軋り鳴らしヲルトを威嚇。今にも食って掛からんとするその流れの中で、しかしヲルトは臆しもせずに立ち回るものだ。最前線に彼が在らば、自然と魔物達も彼に牙を突き立てんと襲い来るもの。
 だがそこへ彼は波を齎す。
 多量の水にて押し流す様に。どれ程の敵が至ろうと弾き飛ばす様に。
「狼か……彼らが出てきたという事は、後続の本隊もそう遠くないだろうね。
 ここからは立ち回りを更に慎重に行う必要がありそうだ――数も増えてきたし、ね」
「HAHA! だがどこを向いても敵ばかりとは……より取り見取りだよなぁ!!」
 続けざまにリウィルディアは狼が飛び込んでくる様に合わせて蝕みの術を齎すものだ。
 確実に当て、しかし消耗はせぬ様に。より深く踏み込むのは『まだ』だと。
 ただ、敵の本隊もやはり近いのだろう。魔物の数が徐々にではあるが確実に増えつつある……各々一体ずつ対処すればよかったのに、二体、三体と――故に貴道は見うる敵を端から潰していくものだ。
 敵の多さが幸いし、味方を誰も巻き込まぬ位置取りを行うも容易。
 そして――槍の如き拳圧による刺突の連打が襲い掛かるのだ。
 狼の牙が届く前に。小動物達が抜ける前に。
 全てを貫く。全てを凌駕する。全てを叩き潰して往くッ――!
『ギ、シ、ャアアアア!!』
「そぅらどうした! ミーはまだまだ崩れないぞ! 数に任せてばかりで根性が――とッ!」
 刹那。また一体の魔物を殴り潰した貴道……だったが。
 感じた殺意に跳ぶものだ。己に至らんとしている撃があると直感した。
 ――直後に至るは鋭き刃。
 先程までの狼や小動物達の小さな牙ではない。もっともっと巨大な……
「おっと。おいでなすったみたいだな……団体でよくもまぁゾロゾロと」
「はっは! 悪の怪人たる僕よりも目立つなんて――不遜だな!」
 ムカデだ。それも、人の丈を遥かに超えた大型の化け物。
 否、それだけではない。敵を迎撃するシラスや美南の視界に映ったのは……
 まるで林の先まで埋め尽くすが如く押し寄せてきている――魔物の波だった。


 これ程の数が一体どこに潜んでいたのか……
 最初の頃と比べれば正に桁違いだ。倒すよりも増える方が早いッ――!
「これは……最早体力の温存、などと考えている暇はなさそうだな。
 全力で取り掛からねば、こちらが飲み込まれよう――ッ!」
「大型の連中は僕が。早急に仕留めさせてもらうよ……さぁ、正念場だね」
 一瞬でも気を緩ませればそこから突破されるやもしれぬとロゼットは思考しながらも、そうはさせぬ為に魔力を振るい続けるものだ。熱砂の精霊を使役し顕現させる砂嵐が、まるで魔物達を塵の様に天へと舞わせ――リウィルディアは渦中に存在せしムカデへと狙いを。
 数は多くないが、こいつをのさばらせていれば如何な被害を受けてしまう事か。
 ――見逃す事は出来ぬと撃をなすものだ。
 奴が攻撃の為の動きを見据え、その間隙を突く様に。邪を穿ち、裁きを与える宣告を此処に。
 ――貫き穿つ。甲殻の狭間を。
 さすればムカデが金切り声を挙げて地へと倒れ伏すものだ――ソレは、上手い事倒れればバリケードにも成ると。故に彼女は早急にムカデを倒さんと動いたのである。狼はともかく、小動物ははたしてアレの肉体を登れるか否か。いずれにせよ邪魔なモノとなれば良し。
「くっ、だが……なんて数だ! 無理に戦線を維持しない様に! 少しずつ下がろう――ぐっ!」
「あ、リウィルディア! くぅ、狼が生意気なんだぞ……このぉ!!」
 しかしムカデを一体上手く倒せても、やはり戦況は好転しないものだ。
 リウィルディアを狙う牙が彼女の首筋を狙い――咄嗟の防御として腕を割りこませたが、激痛が舞い込むもの。さすればイシュミールも積極的に前に出て敵を弾き飛ばしながら後退の支援を行う……が。そのイシュミールにも多くの攻勢が仕掛けられていた。
 兎や鼠が。狼が。更に至るムカデの牙がイレギュラーズ達へと総攻撃。このタイミングで火計でも用いればさぞ敵も大混乱に陥ったかもしれないが、しかし。
「うおおおお! あっちぃぃぃ!!!
 でも!! 僕が熱いという事は……向こうはもっと熱い!!
 うおおおおおおおお!! 耐える!! 悪の怪人として、仲間には指一本触れさせない・さ☆」
 代わりに美南の闘志を燃え上がらせていた。
 彼女にとって掲げる『悪』とは『弱きを守る正義の味方』と道義。
 その心を抱いている限り彼女が折れようものか。引き続きの自爆戦法が敵の注目を浴びながら敵を多く巻き込んでいる――何度でも立ち上がる。致命傷に近き傷を受けようと、倒れるものか!
 その姿、まるで遥かなる巨壁の如く。例え死んでも……この先は通さない……!
「僕が不死身の朱雀レッドだ! 死にたい奴からかかってこーい!
 って言っても殺してなんてやらないけどね!! 無駄な殺生は流儀に反するから☆」
「はは。その覚悟、俺達の奮闘を援軍に見せてやろう! 耐え抜いて勝つぞ!!
 いつまでもいつまでも、光が無い暗闇での戦いじゃないんだ……まだまだいけるさッ――!」
 耐え忍ぶ。美南の奮闘に次いで――イズマも敵を押し返す様に。
 マルカート。絶妙な力加減で叩く一撃が、周囲を押しのけ彼に力を齎さん。
 止めてみせる。託された思いが、この胸の内に確かにあるのだから。
 体力を回復する秘薬を用いて尚に前線にて戦い続けるものだ。
 それに――そろそろ援軍も来るはずだ――
「ふぅぅ……! なぁに、時間稼ぎってのは分かってるが……性には合わねぇな。
 やるからには勝つぜ。別に俺達が全部倒しちまっても問題ないだろう?」
 だが。苦境であっても……いやむしろ苦境の中でも貴道はむしろ闘志を増していた。
 彼の拳の一閃にキレが増す。空気を切り裂き、その軌跡は最早常人には追えぬ程の速度。
 ――神速の拳。
 振るわれれば砕け散る魔物共。大型の奴が肉薄すれば繰り出されるは伝家の宝刀、デンプシーロール。左右へのウィービングと共に全体重の乗ったフックを叩き込み続ければ、たかが魔物の甲殻程度に耐えられようか――
「ああ。こんな魔物達を調子付かせたままで……終わらせる事は出来ないなッ!」
 更にヲルトも往くものだ。彼の身も魔物からの撃で傷つき、体力は消耗している……
 されどだからこそに至る境地もあるのだ。失った血こそ彼の闘争の証。
 ――見える走馬灯がかつてない程の力を彼に与える。
 ああ全てが見える。奴らの軌道が、奴らの殺意が、奴らの動き、その欠片すらもが。
 ――これら。全て捌き切れると確信すれば。

「いまだ! やれ!」

 直後には掛け声一つ。
 自身を起点として再度――津波の力を顕現せしめるものだ。
 洗い流す。押し流す。万物を浄化するがいい……
「幻想国万歳だ。この国は侵させない――ッ!」
 幻想国万歳。リーモライザ家万歳。
 心の中でヲルトは称えながら踏みとどまるものだ――さすれば魔物達の金切り声があちらこちらより。一斉反撃の一手が敵陣に大きな打撃を与え……
「くそ、だが……流石に、キツイな……!」
「ごめん! ガス欠だから、しばらく大技は撃てない、持ち堪えて!」
 が。それでも、多い。イレギュラーズ達は誰も彼もが傷つき疲弊していた――
 シラスは汗を滲ませながら敵の攻撃を捌き、魔力を幾度となく放ち続けたロゼットも遂に底が突きかけてしまっていた。ムカデの刃――その一閃を頬で掠めつつ、されどシラスは敵を打ち破る。
 呼吸を整え、周囲の気を取り込む様に。
 独自の呼吸法が彼に体力と活力を維持させるのだ――
 直後に放つは彼の渾身。生命力を練り上げ撃と成せば、敵を砕いて。
 ――しかし戦線が保持されているのは、彼らが一騎当千の英雄だからに他ならぬが――集中力が一瞬でも途切れれば、それが終わりの始まりとなろう。最早事ここにまで至れば後は後方の林に撤退し、追手と熾烈なる鬼ごっこでも繰り広げてやろうか。
 判断はすぐにでもせねばならぬと。誰しもがどうするか思考した――その時。

「おぉぉ、突撃ィ――!! 魔物を薙ぎ払えィ!!」
「あれは――来たか! 騎士団だ、戻って来たぞ!!」

 どこからか大きな鬨の声が――響き渡った。
 それは後方。リウィルディアが掲げられていた旗を視認すれば……カルラッジ騎士団の援軍だ! 態勢を立て直し戻って来たのか。
「おぉ、遂に来やがったかよ……! っしゃあ! ならミーもまだまだ行くぜッ!!」
「今こそ正に分水嶺か……! 押し返す!」
 統制の取れた、そして先程よりも数を増している軍勢が展開されていく。さすれば魔物は未だ数こそ多いものの、一切の連携がない故に明らかに劣勢へと追い込まれていくものだ――その勢いに乗じる形で貴道は尚に前へ。ロゼットも幾らか整えた魔力と共に追撃を行う。
 やがて趨勢が完全に傾くのもそう遠くはないだろう。
「イレギュラーズ殿! 援軍感謝する……! 後は我々にお任せあれ!」
「フハハ! 悪に礼なんていらないさ! それより連中を逃さない様に――!」
「ああ。幸いにして撤退戦は凌げたが……連中を取りこぼせば、またいつかやってくるかもしれないから、ね」
 無論! と、美南やリウィルディアへと指揮官らしき人物は敬礼一つ。
 ――なんにせよこれで終わりだ。少なくとも、イレギュラーズ達の役目は。
 凌ぎ切り。援軍が来るまで持ちこたえた……彼らの勝利である。
「やれやれ。ガキの頃に散々鍛えた逃げ足の見せ所かと思ったんだが。それには及ばない――か」
 故にシラスは吐息一つ零すものだ。地に座りつつ呼吸を整えていれ、ば。
 遠くでは兵士たちの声が聞こえてきていた。

「幻想国万歳! 勝利に栄光あれ――!」

 勝利の美酒を、味わう声が。

成否

成功

MVP

ヲルト・アドバライト(p3p008506)
幻想の勇者

状態異常

ロゼット=テイ(p3p004150)[重傷]
砂漠に燈る智恵
ヲルト・アドバライト(p3p008506)[重傷]
幻想の勇者
イシュミール・ストラトス(p3p010533)[重傷]
特異運命座標
朱雀院・美南(p3p010615)[重傷]
不死身の朱雀レッド

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 無数の魔物を相手にした戦いぶり、お見事だったかと思われます。
 正に奮戦。皆様のおかげでこそ齎された勝利でしょう――
 MVPは確固たる意思と前線で敵を引き寄せ続けた貴方に。

 ありがとうございました!

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