PandoraPartyProject

シナリオ詳細

露命につないで

完了

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●
 幻想種にとっては瞬きひとつ。転た寝のはざま。
 あわいの中、芽吹いたばかりの草木であれど巨大な樹木に育ち征く途方もなき時間。

 人間種にとっては気が遠くなるほどの年月。
 眠れど、醒めれど、手を伸ばしても届くことのない永遠と呼ぶような遠い場所。

 蒼鷹は命を別つ術を追い求めました。
 ぬばたまの髪を持ったそのおとこは、薄氷の眸に愛を湛えておんなの名を呼んだ。
 古き夜(ニュイ)の民であったおとこは日の光の下に飛び出して、遂げられぬ愛を永遠と信じてしまった。

 ――私を、攫って。

 枯れ枝のような手を伸ばした愛するひと。
 おとこは、おんなの手を引いて闇へと紛れるように西へと姿を消したのだった。

 だからこそ、タオフェの民は長命の彼らを憎んだ。
 愛しき村の民。いのちを散らすまでの刹那を刻んだおんなの身を攫っていったおとこ。
 存在するかも分からない。有り得るかさえも分からない。永劫のさいわいを求め続けた。

 ――ねえ、あなた。
 もしも、遠い遠い未来に……あなたの血を分けた子が訪ねて来たならば。
 私の分まで、うんとその子を愛してあげて頂戴ね。


「何処まで、進もうか」
「西の森、深緑から外れて、ラサに流れた鉄帝の冷たい空気。
 ここからさきに、ずうっと進めば……あのひとに、会えるはず」
 母の手記を辿るようにしてエーリカ・メルカノワ (p3p000117)はやってきた。
 となりにはラノール・メルカノワ (p3p000045)が居てくれる。

 悪魔が歌姫を拐かしたこと。
 悪魔の血を引いた『おとうさん』、人間種だけで閉じたちいさな集落に齎された恐ろしきできごと。
 それが故郷タオフェと幻想種を別ったのだと知った。
 普遍による平穏を乱した『おとこ』への道筋を、『おかあさん』は残してくれた。

 寒々しい冬の気配。永久に解けぬ雪はラサと鉄帝がほどけぬように合わさった場所だった。
 ラノールの手をぎゅうと握りしめてからエーリカは言う。

「きっと、おとうさんは……恐ろしかっただけだった」

 ――エーリカ、

 名前を呼んでくれた、おとうさんの優しい声が。
 マルトリッツのむすめで無くなったエーリカを引き留めんとした縋る声音は、エーリカの歩みを留めることは無かった。

 ――ヘリガ。最愛の。

 美しいきんいろのかみ、みどりいろの眸。受け継ぐことが出来なかった、母と父の象徴。わたしの、罪のありか。
 けれど、このいのちには『あのひと』が巡っていることを知れたから。

「永劫のさいわいは、あると思う?」
「わからない。けれど……わたしが居る事を、世界を、教えてあげたい。
 わたしとあなたが愛をささやけるように。あのひとだって、この世界を愛していたはずだから」

 だから、征こう。
 その森は永久の氷に包まれた静かな場所。
 あのひとが、生きているせかい。

GMコメント

 リクエストありがとうございます。
 お二人の、せかいをつくるお手伝いができましたらば。
『とこしえの、いのち』『えいごうの、さいわい』『つみのありかた』、そして、『露命につないで』――

●成功条件
 『蒼鷹』との面会を果たす

●永久のもり
 ラサと鉄帝の国境に存在する銀の森を汲んだ永久氷樹の森。深緑の木々にも似た、美しい森が広がっています。
 エーリカさんとラノールさんにとっては地図でちらりと見たことがある場所でしょうか。
 人の立ち入ることのない、冷たい気配のする場所です。

 この森には小さな精霊達が住んでいます。その姿はずんぐりむっくりとしたひとがたであり、亜人と呼んで差し支えはありません。
 彼らは『蒼鷹』によって命を救われ恩を受けており、彼の願う『愛するものを静かな場所で』という願いを叶えたいと考えています。
 蒼鷹の居場所を教えて貰うには想いを示す必要があります。

●『蒼鷹』
 夜(ニュイ)の民の血を引いたぬばたまの髪に薄氷の眸を持った幻想種。
 森の外を目指した弓の名手にして、嘗て『ひとりのおんな』を愛した軌跡を残した青年。
 彼はエーリカさんを知らず、おんな亡き後も彼女の亡骸を飾った氷の花畑を慈しみ過しています。
 彼が求めるのは、永劫のさいわい。いのちを別つ秘術が無いかと、そう、望んだからこそ。
 きっと、彼はエーリカさんと、ラノールさんを、ありのままに受け入れることを恐れるでしょう。
 失われてしまった命は、戻らぬ事を知っていながら。まだ、求めているから。

●『蒼鷹の愛したおんな』
 透き通るような歌声の、うつくしいおんな。
 人間種であった彼女は、蒼鷹によって拐かされてこの場所まで、遠く、遠く逃避行をしてきました。

●小さな住民
 蒼鷹の友人ともいえる隣人です。ずんぐりむっくりとしており、蒼鷹を護る為にと来訪者にそっぽを向きます。
 エーリカさんとラノールさんの来訪にも外方を向きますが、その気持ちが悪いものでなければ、きっと。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 あなたの、いのちのみなもとへと
 すこしでも、たどりつけますように。

  • 露命につないで完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年06月02日 22時05分
  • 参加人数2/2人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(2人)

ラノール・メルカノワ(p3p000045)
夜のとなり
エーリカ・メルカノワ(p3p000117)
夜のいろ

リプレイ

●
 罪は、ひとつふたつと数えても、決して消えないものだから。
 タオフェの者達が指を差し糾弾したのろいのような出来事が、廻り巡ってこの身を災難だとしても。
 それが罰だいうならば、かみさまはなんて怖いひとなのだろう。罪はだれだって、持っている。罰はだれだって、病棟に訪れる。
 けれど。『棘』を。武器を持たずに外を出歩くのはいつ振りだろうか。
 村を出てから、武器を握りしめたのは自分の身を守るためだった。

 のろいと呼ばれた夜のいろ。氷のようなひとみの彩。
 夜鷹と呼ばれたのろいのような日々を恐れて武器を握りしめた。躯が軽い、棘を持たないという事はどれ程に凄いことだったのか。
 少女は傍らの『夜のとなり』ラノール・メルカノワ(p3p000045)を見上げた。
 不安は、あった。不安だらけだった。
 それでも、わたしに齎されたせかいからの贈り物――この耳を信じてくれるラノールに応えたかった。
 その手をぎゅっと握りしめて『夜のいろ』エーリカ・メルカノワ(p3p000117)は「いこう」と言った。
 何度目かの旅路は、いのちの源を知るためだった。過去と、因果と、重なり合った無数の可能性を。エーリカは紐解くことを選んだ。
「大丈夫か」と問うてくれる彼がいる。何度躓いても良いから、そばにいてくれるだけで勇気を持てる。
「ラノール、だいじょうぶ。いこう」
 永久のもりは、きらりきらりと光を放つ。氷は陽の光を受け入れて七色に姿を変えた。
 美しいその場所はラノールのルーツが存在したラサ――いや、今はエーリカにとっても帰る場所になったラサと、その隣国鉄帝国に跨がるように存在していた。さくり、と葉を踏み締めれば草陰から音がした。ラノールの指先に緊張が滲んで、エーリカの手をぎゅっと握りしめる。
「話してみよう」
「話せるか?」
「……きっと、大丈夫だよ」
 言葉を用いれば、分かり合えるかも知れない。エーリカがそれを学んだのは傍らの彼から、それからイレギュラーズとして歩いてきた過去があったから。
 草陰に向かって身を低くして「こんにちは」と声を掛ける。唇から震えて飛び出した声は、きっと緊張していたから。
 目線を合わせるために。精霊達はずんぐりとしていて小さな存在だったから。エーリカはその氷のいろでまじまじと彼等を見詰めた。
「こわがらないで、驚かせてごめんね」
 優しく幼い子供に語りかける様に。エーリカは言った。後ろで待っていてくれるラノールはエーリカの行動ひとつ、ひとつに対して見守ると決めてくれていたから。
「……きみは」
 きょろきょろとした黒い瞳がエーリカを見た。ラノールを見てひいと怯えて竦んだ精霊に「こわいひとじゃないよ」と微笑みかける。
「わたしが一緒に、つれてきた大切な人だから。こわがらないで」
「……きみが、いうなら」
「ありがとう。わかるかな……わたし、似ている?」
 誰に、と言わずとも精霊は小さく頷いた。ぬばたまの髪も、薄氷のひとみも。エーリカを構成する色彩が彼等の愛するひとと同じだったから。
「よく、似ているよ。フオルとそっくり」
 よく見せてと精霊の一人がそっと手を伸ばした。ちいさな、赤子のような掌がエーリカの頬に触れる。見た目よりもずっと確りした皮膚が肌を擦るたびに少し擽ったい。思わず目を細めたエーリカに精霊は「わらったかおも、一緒だね」と言った。
「フオル、そのひとに似ているのね」
「よくにているよ。きみはフオルを知ってる?」
「ううん。けど、逢いに来たの。探していたの、ずっと、ずっと……ずっと、自分自身を責め続けているかもしれない、そのひとに」
 フオルと呼んだ青年とエーリカは良く似ているらしい。ラノールは辿々しくも言葉を紡ぐエーリカの背をまじまじと見詰めてから唇を震わせる。
「君達にとって、エーリカは『フオル』と良く似ているかも知れない。けれど、私は恐ろしい存在に見えるだろうか。
 それでも、構わない。どうか彼女の言葉を聞いて遣って欲しい。私は彼女が望むことを叶えてやりたいだけなんだ」
 願うように、言葉を連ねて。愛おしい夜の色が陰ってしまわないように。星がきらめくように、愛おしい言葉を重ね続けた。
 エーリカが、苦しんで泣いてしまわないように。傍らには何時だって立っていた。
 尖った耳。女である事。本当の名前さえも捨て去ってがむしゃらに逃げてきた『夜鷹』の痛ましさ。
 エーリカと名を呼べば笑ってくれるようになった、愛おしいラノールの夜。
「会いたいの。わたしの……とおい、とおいおじいさんと、おばあさんに」
「きみは、フオルの?」
 エーリカはこくりと頷いた。震えて怯え竦んだ小さな精霊。彼等の平穏を崩さないように。彼等が望んだ安寧は永久に氷で編んだ森の中に佇んでいるから。
「おねがい、おしえて――わたしたちは、ふたりの逢瀬を穢さない」
 ゆるゆると頷いた小さな精霊は背を向けた。ついておいでと告げるように一歩一歩を踏み出す彼を追うようにエーリカはラノールの手を握る。
「着いてきてくれる?」
「君が、そう望むなら」
 指先が重なれば、ぬくもりが躍る。靉靆の雲など遠く、回雪の葉はふわふわと頬を撫でる。さくさくと踏み締めた葉は、此れまでの旅路を象徴するかのようだった。

●
 世界に真実が存在するなら。それがひとつであるとは限らない。
 エーリカ・『マルトリッツ』が『夜鷹』と呼ばれていたのろわれた日々。のろいをその身に宿したと謂れなき罪を着せられた母。
 それらすべてが、あの村の真実だった。そんな嘘だらけの真実が、世界にはふんだんに溢れていて。
 だからこそ『おかあさん』の心が正しかったことを示したかった。
 エーリカは精霊の誘いを受けて、広場へと辿り着く。木々に凭れ掛かったおとこは目を伏せていた。
「フオル」
 精霊の呼びかけに男は――フオルはゆるゆると瞼を上げる。その色彩にラノールは息を呑んだ。愛しい色だと、何度も見遣った彼女の色彩。
「エーリカ」
「――――、」
 ラノールの言葉も届かないほどに、エーリカはその色彩に見蕩れた。
 ぬばたまの髪、薄氷のひとみ。鏡写しの、色彩。
「あなたが、蒼鷹」
 口蓋に張り付いたような声が裏返った。喉が、乾いて言葉にならない。上手くは言葉が紡げない。
 フオルは、蒼鷹はエーリカの姿を見てぴたり、とその動きを止めた。
「……お前は?」
 まるで鏡写しのようなふたりが見つめ合う。フオルの視線がラノールに注がれて、苦々しく細められた。
 けっして赦されぬ恋をして、けっして遂げられぬ愛を信じた『同じ運命』の少女。
 その苦しげな表情にエーリカはからからに乾いてしまった喉からなんとか言葉を絞り出した。それが、声となって狩れに届くように。
「……わたしは。遠く、遠く。遙か東の最果て、光座す主の御許。人の子の隠れ里、タオフェに生を受けました」
「タオフェは、あの信仰の都にあった?」
「はい。……わたしは、夜の末娘。あなたと、『ラーレ』の。遠い、遠い子どもです」
 フオルの眸が、見開かれた。氷のいろが揺らいでいる。
 ラーレ、と彼の唇が戦慄いた。花冠を手にしていた精霊がぽとり、とそれを取り零す。
 フオルの愛した『彼女』の色彩は、エーリカには残されては居ない。瓜二つの、ぬばたまの薄氷を纏った娘はフオルと同じように、異なる物差をいのちに宛がっている種と連れ添ってきた。
「愛するひとと添い遂げることを、わたしも、ラノールも、望んでいます。教えて欲しい。あなたの旅路を」
 エーリカをまじまじと見遣ってからフオルは唇を震わせた。

 ――ねえ、あなた。

 優しいラーレの声を思い出す。

 ――もしも、遠い遠い未来に……あなたの血を分けた子が訪ねて来たならば。
 私の分まで、うんとその子を愛してあげて頂戴ね。

 彼女は、知っていたのだろうか。このぬばたまの髪をした娘が此処に訪ねてくる未来を。
「名前は?」
「エーリカ」
「エーリカ。お前は、あの村で生まれたのか?」
 エーリカは小さく頷いた。フオルは引き攣った吐息を漏す。ラノールはそれが彼が『エーリカが受けて来たであろう恐ろしいできごと』を想像する事が出来たからだと感じた。
「……君は、タオフェの現状を知っているのか?」
「いや。私は何も知らない。だが、私が罪を犯したからこそ、お前は――」
 エーリカを痛ましく眺めるフオルは唇を震わせた。古き夜(ニュイ)の民であった青年は、とこしえの涯てにさいわいを望んでいた。
 枯れ枝のようになった腕ををとって攫っていったあの日のことを思い出す。
「罪なら、きっと。誰しもが。……けれど……誰も、悪くなかった」
 エーリカは唇を震わせる。誰も悪くなんてなかった。『蒼鷹』は唯一の愛を信じて旅をしてきただけだったのだから。
「恨んでも、いいものを」
「恨む事なんて、ないの。教えて下さい。あなたの旅路を」

 ――おとこは愛し合う者達が、ただ、寄り添い合う事が出来れば良いと願っていた。
 たったのそれだけの事が出来ない世界に憂いた。おとこはおんなが亡き後も旅を続け、羽を休めにこの森へと戻ってくる。
 何処を旅しても、命は残酷だった。
 失われる命は、何も残さず。愛した笑顔さえも遠い記憶に消えていく。
 あの美しい歌声も。透き通った声も、屹度いつかは忘れてしまうと、男は恐ろしかった。

 その恐ろしさの前に、光が差した。
 同じぬばたまの髪に、薄氷のひとみ。
 瓜二つの色彩の彼はゆっくりとその手を伸ばしてから「エーリカ」と呼んだ。
「お前の声色はラーレに似ているね」
「ほんとうに? ……わたしは、とおいとおいおばあさんに似ているの?」
 フオルは頷いた。森の外に焦がれて飛び出したフオルと、森の外で生まれたエーリカは生まれ方も育ち方も違った。
 フオルがおんなの手を取って逃げたからこそ、エーリカは村で迫害され続けた。
 長い耳は悪魔の証だと、指を差し石を投げられるような恐ろしい目にだってあった。
「とおい、とおいおじいさん。フオルさん、と呼んでもいい?」
 手を差し伸べたエーリカにフオルは頷いた。
「ああ」
「フオルさんは、さみしかった?」
「ああ」
「わたしはね、すきなひとができたの。宝物。ラノールというの。
 それから、沢山の出会いも、別れもあった。わたしが生きていて良いと、教えてくれたの」
 幸あれと願った天使様のようなあのひとは、優しい笑顔で手を差し伸べて。はじめてを歩んでくれる。
 大切だと笑った小さな猫のようなおとこのこは、何時だって一生懸命に前を見て走っていてくれた。
 そうやって、たくさんのしあわせを抱き締めてきた。
「月が満ちる。夜が降りてくる。恐れることは、もう、ない。――ああ。わたしは、『あい』を知ったの」
「私だって、そうだった。あの人に出会って、あの人の笑顔を見ていて、『あい』を知ったんだ。
 夜が降りて来て、月が満ちた。その場所に響いたあの人の歌声が永遠であればと――」
 おとこは涙を一筋流した。
 エーリカ。おとこにとって、愛する人との宝物。
「私は叶うならば。愛する人と、時を分かち合いたかった。
 ひとの命は瞬きほどに。あまりに、……あまりにも、短すぎたんだ」
 血を分けた彼女が、求める答えをフオルは持っては居なかった。探しても、探しても見つからないままだったその応え。
「だが、お前が来た。エーリカ。
 私とラーレが生きてきた、愛し合った証。お前が、笑って、生きていてくれるだけで」
 おとこはそっとエーリカに手を差し伸べる。緊張したように、エーリカはゆるゆるとその腕の中へと飛び込んだ。
 いってらっしゃいと背を押してくれるラノールは知っている。
 エーリカは、夜鷹は、終ぞ父にはそうされなかった。
 あいするひとにすべてを否定されたままでは、きっと悲しくて、凍えるような想いで居るはずだった。
 ゆるされない色彩と、ゆるされない姿をしていた。

 ――さようなら、おとうさん。もう、……自分のことも、ゆるしてあげて。

 美しいきんいろの髪も、緑色のひとみも。何もかも持っていなかった。
 とん、とん、胎を蹴る愛おしさに微笑んでくれていた『おかあさん』の苦しさも、信じ切られなかった『おとうさん』も。
「エーリカ」と呼んでくれたあの声も。求めた者の何にもならなかったけれど。

 フオルがエーリカをぎゅうと抱き締めた。肌に触れたぬくもりが、生きていることを伝えてくれる。
「エーリカ」
 呼んだ優しい声の愛情が、擽ったくて、涙が溢れた。
「エーリカ」
 何度も、彼は呼んだ。
 探し求めた答えは見つからなかった。それでも『彼等が確かにあいしあった』証はそこで生きていてくれたから。
「エーリカ、お前はしあわせか?」
「……わたしは、いま。しあわせです」
 ずっと、伝えたかった。『おとうさん』は彼の血を引いていたけれど、知らないままだった。
 それでも良かった。この人が『あいしあった』証を持ってくるのは屹度、同じように生きることになった自分だったから。
「これから、沢山、沢山、話をしよう。エーリカ。それから――」
「ラノールです」
「ラノール。君も。この世界は、愛する人と時を分かち合うことを許してやくれはしない。
 けれど、余りに短いその命で何か、たいせつなものを残せるように。うんと話を聞かせてくれ」
 一筋の涙が、おとこの心に雪解けを与えたことを教えてくれた。
 エーリカはそのぬくもりの中で小さく頷いて。

 愛を分かち合うには、その命は、短いけれど。
 それでも確かに何かが残せたなれば――

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。命のルーツを知る旅路へのお誘いを有り難うございます。
 あなたにとって、この出会いが素晴らしい物となりますことをお祈りして。

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