PandoraPartyProject

シナリオ詳細

海と星と浴衣とひゅうどろろん

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●悲劇の姫
 海洋ことネオ・フロンティア海洋王国にあるサン・ストリア海岸は小さな美しい入り江だ。
 海面から露出した岩石が多いが海流の流れのせいで、入り江には波がほとんどなく海面は蒼い硝子のように凪いでいて水の中では多種多様な海藻が揺れている。その合間をすり抜ける魚や貝を海女たちが獲る。
 そして、夕暮れのひとときこそがこの場所のもっとも輝く時。夕日と岩石が交わる瞬間にそこは絵画のような美しい景色を描き出す。このサン・ストリアの夕べは今まで何度も芸術の題材として取り上げられて来た。昼間は海女たちしか居ない、閑散とした浜辺であるのに対し、夕暮れ──特に初夏から秋にかけては先人に倣ってインスピレーションを得ようとする芸術家や癒しを求めた観光客が多数訪れる。
 だから、夕暮れ、特に夏の夕べには海女たちは浜辺の片隅でエキゾチックなテントを張り、軽食や酒などを振る舞い観光客をもてなして生計を立てる。

 それが、今までのこの海岸の夏であった。

「それが……それが……」
 半泣きの女性が訴える。
 健康的に陽に焼けた彼女はサン・ストリア海岸で海女をしているレシア。まだ二十歳前だが海女たちの中でもしっかり者で通っている。
「入江にマーフォークたちが現れて海を荒らして以来、おかしな噂が立つようになりました」
 その噂というのは、陽が落ちた瞬間、マーフォークに殺された貴族の姫君の霊が現れて砂浜に居る生者を海底へ引きずり込む、というものだ。
「でも、貴族の姫君が、あの浜辺で殺されたことはありません! 確かに不幸にもあの魔獣の被害にあった方も居ましたが……姫君でも従者でも無く……そもそも、マーフォークが出没する浜辺に姫君が来ますか!?」
「そうですねー、お供二人連れて家出しちゃうようなおてんば武闘派姫ならば、あるいはかもしれませんが、それたぶん撃退するでしょうし、レアケースですよねー?」
 レシアを連れて来た流しの商人リーナ・シーナ(p3n000029)はのほほんと言った。
「たんなる無責任な輩が流した噂かもしれませんが、中々しつこい噂でして。ワタクシが色々走り回っても中々無くならないんですよね。なので、よくない輩がよくない思惑で動いている可能性もありますし、ふたたびローレットの皆様を頼らせて頂いたんですよ。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
 困り顔のレシアはしおしおと頭を下げた。
「ああ! 肝心の依頼内容を話すのを忘れていました! 皆様にはこの入り江のプロモーションをして頂きたく」
 安全・安心なデートスポットをアピールするためにご協力お願いします、と渡されたのは。
「浴衣、って言うらしいです。これを着て、陽が沈んだ後に砂浜に設置する肝試しゾーンを楽しく歩いて頂ければと! えぇ、消えない噂なら上書きすればいいかなと思いまして」
「ええ、シーナさんに全力でお願いしましたらこんなことになりました……。今は見るからに腕に覚えのある強そうな方しか来ていないので、皆様が楽しく安全に肝試しをして頂ければ、きっと他の方も安心して来てくださるはずです」
 どういう理屈だろうか。



●悪計のアクニン
「……けっこう、商魂たくましいな。あの海女たち」
 岩陰から浜辺の肝試し会場の設営の様子を盗み見ているのは、新進気鋭の芸術家、アレッサンドロ・レイティ。金髪の美しい顔をした青年だ。……今はなぜか白い着物を着て厚めの化粧をしているが、素顔は恐らくイケメンの部類であろう。
「人気の落ちたこの浜辺を格安で買い上げて私のプライベートビーチにして、職を失ったレシアさんをメイドとして雇う算段が……」
「先生、ここでそんなこと言ったら誰かに聞かれてしまいますよ」
 忠告するのは茶髪の逞しい体躯の若者だ。レイティと同じくらいの年齢だろうか。しかし、きらびやかに飾り立てたレイティと比べて、彼はいかにも従者といった素朴な出で立ちだ。
「おっとそうだな。とにかく、今日も幽霊騒動レッツトライだ」
「……先生、何も先生が女装しなくてもいいんじゃないかってボクは思いますよ。モデルの誰かに頼めばいいのに……」
 一見美しいがよく見ればかなりたくましいその出で立ちに、彼は思わず進言した。
「馬鹿者、こういう事は関係者が少ない方がいいのだ! もし、モデルに頼んでぺらぺらと喋られたらあっという間にバレてしまうではないか!」
「はあ」
「それに、イデリーよ。悲運の姫を演じるのにぴったりな私ほどの美しい顔立ちの者は中々いないからな」
「わあ」
 どうでもいいや、と思いながらイデリーは能管と太鼓を抱え直した。

GMコメント

●展開
1.浴衣を選ぶ(色柄指定ご自由にどうぞ!)
2.肝試しゾーンを楽しく歩く(数人で一緒に歩いても良い)
3.幽霊として出て来たレイティに驚く、もしくは捕縛または懲らしめる
※話の都合上、アドリブが入りますのでNG行為等の記載をお願い致します

●肝試しゾーン
灯りは所々にある蝋燭の入ったカンテラと月光のみ(火事対策済)
砂浜の上に古い板の衝立を立てて作った狭い通路(幅は二人でギリギリ)
所々、広めの空間もあるがお化けや仕掛けがある場合が多い
全てではないが足元に自然の岩場も利用、あちこちを本物の海藻や蔦が這っている反面
作り物の岩や花なども混ぜてある
仕掛け
・首筋にヒトデをピタッ
・ふいごによる生暖かい風
・ちょっと乱れた着付けのレシアたち海女のお化け
・ハリセンボンのはく製
・暗闇で見る風に揺れるエイの干物
その他(文字数により)

●レイティの妨害
・迷路の壁を動かしルートを変えて数人攫う
(行き止まりの洞窟に入り立ち往生、判定(※1)に成功した者のみ元のルートに戻ることができる)
・行き止まりの洞窟にて映写機で髪の乱れた幽霊姫の画像を出す
「この浜に居る奴は殺してやる」(アレンジ有)とぼそぼそした声で言う(落ち着いて聞けば男声だとわかる)
・洞窟の外側から映写機で映しているのだが、鏡像の仕組みがうまくいかず、逆立ちで撮っている
・肝試しゾーンをクリアしたPCなら捜索(※2)にてレイティたちを見つけ出すことが可能
(一度掴まったPCの場合、その分、合流するのに時間がかかる)
・軽い戦闘で捕縛可能
判定について
今回のみの判定基準です。クリティカル・ファンブル有
※1:「メンタル+1d100」 難易度:難しめ
※2:「特殊抵抗+1d100」 難易度:普通
(映写機の向こうではレイティは逆立ち、従者イドリーは能管(寝取)を演奏し太鼓を叩く)


●NPC
・リーナ・シーナ(p3n000029):肝試しゾーン受付
・海女レシア:幽霊役
・アレッサンドロ・レイティ:ナルシストな新進気鋭の芸術家。金髪イケメンだが煩悩前回で中身は残念
 クリップやヘアピンで留めたみたものの乱れる金髪とちょっとはだける白い着物(なぜか和風の幽霊姿)
 のぞく手足は良く見ると結構たくましい
 レシアに気がある
・従者イドリー:レイティが雇っている従者の茶髪の青年で別にレイティを尊敬しているとかは無い


●MSより
RPメインのコメディです。
浴衣と肝試しを楽しんで頂ければと。
サン・ストリア海岸はシナリオ「海神たちの歌」にも登場しましたが、そちらを参照する必要はありません

  • 海と星と浴衣とひゅうどろろん完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年08月20日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ソフィラ=シェランテーレ(p3p000645)
盲目の花少女
高千穂 天満(p3p001909)
アマツカミ
サブリナ・クィンシー(p3p002354)
仮面女皇
カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)
海淵の呼び声
ジェーリー・マリーシュ(p3p004737)
くらげの魔女
ヴィマラ(p3p005079)
ラスト・スカベンジャー
凍李 ナキ(p3p005177)
生まれながらの亡霊

リプレイ

●海辺と浴衣と
 『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)は声を上げて笑った。
「あはは、すっごいね。僕そういう転んでもただで起きないみたいなの、大好き。喜んで協力させてもらうね」
 そうして、一同は夜の海岸へと向かった。
「浴衣はお貸ししてますし、お手持ちのものでも是非」
 砂浜の端に用意されたテントの中。
 まずは顔見知りの縁で『アマツカミ』高千穂 天満(p3p001909)と『くらげの魔女』ジェーリー・マリーシュ(p3p004737)、カタラァナが着付けを始めた。
「涼を味わうも気分から、涼しげな色の浴衣がよいな」
「私はこの浴衣を着るわよ!」
「僕はこれかな」
 天満の結った黒髪が水色の浴衣を引き立たせる。
 ジェーリーがヨーヨー柄の薄桃の浴衣を身体に当てて鏡を覗き込む。薄桃色は彼女の髪と相まって魅力的に映った。
 特徴的な帯の浴衣を着てくるりと回るカタラァナ。それはまるで硝子鉢を泳ぐ金魚。
「私も」
 青に桔梗の柄の入った浴衣を選ぶ『仮面女皇』サブリナ・クィンシー(p3p002354)。桔梗は凛とした美しさを装いに添えた。
 長い髪を三つ編みにした『盲目の花少女』ソフィラ=シェランテーレ(p3p000645)も海女たちに手伝ってもらいながら金魚柄の浴衣を着こんだ。ほぼ全盲状態の彼女ではあるが、この柄を自分も着てみたいと思っていたのだ。
 他の女の子たちが華やかな浴衣を選んでいく中、『スカベンジャー』ヴィマラ(p3p005079)は闇色のそれを手に取った。
「黒地に彼岸花模様、死を暗喩するモチーフのこの浴衣をワタシが着ることによって──!」
 ぶわっとテント内に赤い彼岸花が咲く。
「か わ い く な る!」

 すでに着付けも終わって浜辺に置かれた椅子でお茶を飲む男性陣の耳に歓声が聞こえた。
 『生まれながらの亡霊』凍李 ナキ(p3p005177)は思わず女子更衣室の方を見た。
 『本心は水の底』十夜 縁(p3p000099)は煙管を置く。
 ナキはクラゲ柄の浴衣で、ふわふわとした彼によく合っていた。対して縁は普段と同じ、無地の濃い青色の着流し姿である。
「向こうも終わったようだな」
 陽の落ちた砂浜に小さなカンテラの光が歩いて行く。
「おばけかいがん まっくらけ
 よいこわるいこ よっといで
 どきどきしたら そのあとは
 となりのあのこと いいかんじ♪」
 波の音すらひそやかな海岸に流れるのはカタラァナの歌声だ。
 ナキも慌てて自分のカンテラに灯を点して後を追う。
「こんだけ若くて綺麗なやつらが揃ってるんだ、プロモーションとかいうのは任せていいだろ。──おっさんは後から一人でのんびり行かせて貰おうかね」
 煙草を仕舞うと縁は煌々と輝く月を見上げた。



●ナキとソフィラ
「数人ずつがお薦めです」
 入口の海女がにやりと笑った。
「どうされたのですか?」
 そわそわするソフィラに気付いたナキが声をかけると、彼女は困ったように首を傾げた。
「まあ、まあ。楽しく歩いて肝試し……私にはなんだか難しそうだわ」
 ソフィラの目が良くないことを思い出したナキは気付く。この暗い海岸は肝試しにはぴったりだが、彼女が楽しみながら歩くことは難しいだろう。
「ふたりで一緒は、どうです?」
 遠慮がちなナキの申し出にソフィラは可憐な顔を輝かせた。
「あら、まあ……いいの? ありがとう。凍季さんのお陰で目が見えなくても安心ね」
 彼女は嬉しそうに手を差し出すと、するすると肝試し入口の紗が開いた。
(ソフィラさんを絶対に転ばせてはいけないのです!)
 そんな使命感を胸に歩くナキ。
「ここから、すこし地面が悪いです……注意してくださいね?」
「あらあら、ありがとう。ゆっくり歩くわ」
 小さな手を結んでナキはソフィラと暗い路を歩く。
(うう、きれいな人なので、少し緊張します……)
 けれども、当のソフィラは気にしていないようで嬉しそうに奥を目指す。
「ねえ、噂ってなかなか消えてなくならないものだけれど、この私達の頑張りで上手い具合に誤魔化せるかもしれないのよね! 頑張るわ!」
「あっ、そこは濡れているので気をつけて!」
「きゃっ、ありがとう」
 健気に歩くソフィラの姿に、幼子の姿のナキの胸に歯がゆい思いが過る。
(お姫様抱っこくらいできればいいですのに……)
 もちろん、この姿はナキにとって、とても大きな贈り物(ギフト)だ。
 けれども、ひんやりとした自分の肌に触れても嫌な顔ひとつせず、むしろ感謝して自分を頼ってくれるひとを、もう少し自由に歩けるように支えることができたらと思わずにはいられない。
 一方、ソフィラもナキに負担をかけすぎないように片手を通路の壁に這わせた。
(少しでも道がわかるように……こっちは蔦ね。あと、!?)
「きゃっ!? 今、首に……!」
 妙な何かに首筋を撫でられて、ナキの手をぎゅっと掴むソフィラ。
「だ、大丈夫です。偽物のおばけです」
 霊魂疎通を使い周囲を警戒していたナキは、ソフィラを安心させようと優しく声をかけた。
 だが、今度はぬるい風が撫でて白い着物がちらりと見えた。
「きゃ」
「だ、大丈夫──」
(ひゃあっ……!)
 ナキは必死に悲鳴を押し殺した。
 霊魂疎通によって本物でないことはわかっているのだが、むしろ、偽物のせいで全く察知できない。
(女の子の前なのです。大声は出さないように……本物は全く怖くありませんし、偽物だってわかっているんですがっ)
 繋いだ手が思わずビクッと震えたのに気付いたのだろう、今度はソフィラがナキの手を優しく握り返した。
「何か見えたのかしら? ふふ、大丈夫よ。きっと作り物だわ」
「そうですね──はい、大丈夫なのです!」



●カタラァナとジェーリーと天満
 ジェーリーと天満、カタラァナは肝試しをある意味、満喫していた。
「またお会い出来て嬉しいわ! ちょっとくらい楽しんでもいいわよね? ……なんて。ふふふ」
「楽しむのは無論、余についてまいれば迷う筈も無いのである」
「ん、神頼みっていうのも悪くないよね。イーニーミーニーマイニーモー♪ 天満ちゃんは神様なんだね。僕も神様の歌、知ってるよ。ふんぐるいって」
「お二人は肝試しのご経験はあるの? 私は初めてなの! どんな驚きが待ってるのかしら! とってもワクワクするわ!」
 次は首筋の異物感に三人がそれぞれ嬉しそうな声をあげる。
「ふふふ、ビックリしたわ! 今のは何かしら?」
「ヒトデかな? 懐かしくて驚いたよ」
「なるほど」
 続いて蝋燭の灯にあぶりだされたのは……恐怖の表情。
「エイだ、剥製も干ものもかわいくて綺麗だね」
 エイの干物(エイリアン風)にあちこちからランタンの光を当てる三人。
「これが肝試しの醍醐味というものなのかしら? とっても楽しいわね!」
「なんだろう、この里帰り感──懐かしい」
 カタラァナはニスを塗って固くなったハリセンボンの剥製を指でつつく。
「あらまだあるの? ふふ、遠慮なくいらっしゃい! 私がいっぱい驚いてあげるわ!
 ──皆さん大丈夫? 怖かったらこのおばあちゃんの手を握っても良いのよ!」
「心遣いはありがたいが神が心霊の類を恐れる物では無いのだ。むしろ、主こそ余を頼ってもよいのだぞ」
「私は幽霊なんて怖くないわ。幽霊よりも怖いものはこの人生の中で沢山あったもの!」
 そんなジェーリーへカタラァナがにこやかな笑顔を向ける。
「こないだのお仕事ぶりのジェーリーちゃん。ここは僕のうちに雰囲気、似てるかも。だから怖くはないけど心遣いが嬉しいよ。クラゲは食べたことしかなかったけど、かわいいクラゲさんも居るんだね」
「まあ」



●不穏
 楽しげな仲間たちの声はいつしか聞こえなくなっていた。
「戻って来ませんね」
 サブリナの言葉に海女たちの表情も曇る。
「こんなに遅くなるはず無いんですが。すみません、サブリナさん、ヴィマラさん、縁さんは一緒に入ってもらえますか?」
 顔を見合わせる三人。
「肝試しなんてそうそう機会もねぇだろうし、どんなモンがあるのか見させて貰うか」
「ふふっ、これも演出の一つかな──今日は楽しんで行くよ!」
 縁に同意して元気に歩くヴィマラ。
「ほー、中々よくできてるねぇ……」
 感心する縁へサブリナが尋ねる。
「んー……確かお化け屋敷と言う物があると……そんな感じでしょうか?? ならば、驚いてあげないとダメでしょうか?」
「おっと、確かにちっとは怖がってやらねぇと失礼かね」
「こういった物とは召喚前は縁がありませんでしたから……まぁ、なるようになりましょう」
 だらりと下がったエイの干物を前に悩むサブリナ。
「気合入ってんねー、これならお客さん呼べそうだよ!」
 ヴィマラは通路を横切るハリセンボンの剥製をひょいと避ける。
「おい……いや。何でもない」
 ハリセンボンの棘に別の意味でヒヤリとした縁だったが、毒もちゃんと処理してあるようだ。
 ふっと行く手の灯りが消えた。
 サブリナが小さく悲鳴を上げる。
「! どうした?」
 縁の表情が一転、ローレットの一員としてのそれになるが。
「あぁ、これは」
「うわ、確かにキモチワルイね」
 ヒトデに撫でられて微妙な顔をする三人の前に白い着物がふわりと広がった。
(遂に幽霊のご登場──って待て)
 さり気なくエイへ視線を戻す縁。
「レ、レシアちゃん、ちょっとセクシーになりすぎ!」
「それはいけません!」
「え!?」
 客に逆に抑え込まれて慌てる幽霊ことレシア。闇の中で二人は手早く彼女の着物の乱れを正す。
「あちこち駆けずり周っていたのでつい」
「危なかった……せっかくだから恐怖で勝負したいよね? 何なら方向性を変えてブラックメタル的白塗りメイクでも……」
 エイヒレの切り分け方を考えていた縁が我に返ると、そこには閣下っぽい悪魔メイクの白塗りレシアが居た。
「違う悪魔になっちゃった気がするぞ、これ!」
「迫力はありますが」
「か、鏡が無いのでわからないのですが
「インパクトはあるな」
 助けを求めるレシアに縁は言葉少なに感想を伝えた。
 三人とレシアは通路をてくてくと歩く。
「いい月が出てるな。こんな夜は海も特別綺麗に見えるんだがなぁ」
 縁の感想にレシアはぽんと手を打つ。
「塀を低くして一部海を見せてもいいかもしれませんね。ロマンチックゾーンとか」
「デートコースだね!」
「ええ! ただ今回は怖く無かったみたいで」
「いいえ、いいえ! 海藻が滑るところとか、ギーギーって音とか」
「それイルカの鳴き声ですね。海藻は危ないので壁に戻しておきます……」
「そう、ですか……」
「あれ」
 突然、足を止めるヴィマラ。
「行き止まり……?」



●幽霊姫
 「あ──!」
 ほどけるナキとソフィラの手。
 突然、壁が消えてナキは暗くてかび臭い洞窟へ投げ出された。
 徐に始まる不気味なヒュードロという音、そして髪を振り乱した幽霊姫がぼんやりと現れた。
「ちょ……っ! 意地悪しないで通してくださいよ!」
「リア充は殺してやる」
「り、あ……?」
 すわ、ゴーストかと霊魂疎通と霊魂操作を試みたナキであったが手応えが無い。
(ということは、これも肝試しなのです?)
 悲しいかな、レイティの企みが裏目に出た瞬間だった。
 とにかく人の話を聞かない幽霊姫に見切りをつけたナキは探索を始める。
「不気味なだけですね……出口出口……」
 バタン!
 ビクッとするナキ。
「余の勘……導きは流石であろ、お?」
 月光を背に颯爽と現れたのは天満である。ジェーリーとカタラァナも同行している。
 ハッと我に返ったナキが慌てて訴える。
「ソフィラさんを見ませんでしたか? はぐれてしまって心配なのです」
「それは大変だ。エコーロケーションを使ってみるよ。天満ちゃん、ジェーリーちゃん、行くよ」
「中々の怪作であった」
 観賞していた幽霊姫から離れる天満とジェーリー。
 すると、ランタンの灯りと共にヴィマラの声が響き、続いて縁とサブリナが顔を出す。
「幽霊になっても騒ぎを起こすとは中々にロック! 死してなお、ほとばしるパッションを感じるね!」
 だが、ヴィマラはすぐにしゅんとした。
「幽霊姫に該当する死体の気配が無いよ」
「こいつも仕掛けの一つかと思ったが、どうやら違うみてぇだな。あー……なぁ、嬢ちゃん。名前は何て言うんだい?」
(……って、よく聞いてみりゃぁ、こいつは男の声……か?)
 幽霊姫に話しかけようと試みた縁だが、違和感に気付いて眉を顰めた。
「ソフィラさんが」
 事情を聞いたサブリナが持ち込んだカンテラにも灯りを入れる。
 洞窟内が明るく照らし出された。
「こっちだよ!」
 エコーロケーションを使ったカタラァナが壁の一部を叩く。
 縁は最後に愚痴り続ける幽霊姫を最後に一瞥した。
「どうにも怪しいねぇ……ちっと近くを調べてみるか」



●正体見たり
「あら、……あら? 凍季さん?」
 突然、導いてくれた小さな手が消えて、ソフィラは戸惑った。
(……ちょっと心細いわ。いえ、でも、どこかにはいるわよね! ……いるはず、よね?)
「きっとそう遠くない場所にいるはずだわ、探してみましょう!」
 自分を奮い立たせ、壁を頼りに足場の悪い路をソフィラは進む。
 しかし、運悪く──出口係の海女は、戻らないイレギュラーズたちを探すために席を外していた。
 手探りで外に出たソフィラはそれを知らず、そのまま外壁や岩伝いに進む。
 ぺたぺた……。
「浜辺で寛ぐリア充なんて滅べ、うらめしや」
(? お化け役の方?)
「私以外のイケメンも死を……ほわあっ!?」
 熱弁を振るう逆立ちのレイティは、突然現れたソフィラに気付いて思わずエクソシスト。
「腰ィ!」
「す、すみません!」
 慌てるソフィラ。もんどりを打ちながらレイティは叫ぶ。
「ゆ、幽霊姫に何する者ぞ!」
「? 男性の姫様なんですね」
「ヒエッ、何故分かった!」
 よく見えないソフィラには裏声の男性がいることしかわからない。
「正体知れば枯れ尾花! 君をこのまま帰すわけにはいかない!」
「ばればれです」
 壁を動かし奔走していたイドリーが汗を拭きながらツッコミをいれた。
「おかえりだ、イドリー! 彼女を捕まえるぞ!」
「それなんですが」
 イドリーが何かを言う前に、浜に声が響いた。
「恐怖伝説を作り出そうという気概はよし! だけど、他人を困らす騒ぎには積極的説得コースで行っちゃうぜ、ロックンロール!」
 月光に咲く彼岸花、ビシッとレイティを指すヴィマラ。
「ソフィラさん!」
 砂浜を駆けてナキはソフィラと幽霊姫の間に滑り込んだ。
「貴族を虚仮にするのは良いとして、人様に迷惑がかかる事を行うとは何事か、恥を知りなさい俗物!」
 ギルティです、とサブリナがレイティたちの罪を問う。
 仲間たちの反応で状況を察したソフィラも構える。
「不向きなのはわかっているわ──でも、私もローレットの一員だもの。援護するわよ!」
 イドリーが沈痛な表情で手を合わせた。
「こんな感じです」
「阿呆! 早く言え。殺されるわ、こんなんっ」
 ドレスの裾をまくり上げて砂浜をえっちらおっちらと逃げ出すレイティ。
「本物を舐めるなっ!」
「ホンモノ?」
 ナキの怒りの死霊弓がレイティのドレスを縫い付けた。
「流石に殺したりはしねぇよ」
 そこに縁の柳風崩しが決まって、幽霊姫は砂浜に沈んだ。

「さかしまに うみにおちてく あなたのこころ
 はまで ころされ しずんでいった
 あなたの きもちが しりたいの♪
 ねえ、教えて。
 僕、知りたいの。
 ──教えてくれないの?」
 歌いながら、お仕置きにレイティをドッタンバッタンと砂地に叩きつけるカタラァナ。
「こ、殺さ……ゴメンナサイ……」
「あらあらひと夏の思い出に少しばかり刺激的ね……? レイティさん、あなたどうしてこんな事を?」
 頬杖をついたジェーリーが尋ねる。
 カツラの取れたレイティの渋々の自白をイドリーが補足した。
「で、結局要約すっと、レシアちゃんとお近づきになりたくて? ほにゃほにゃ……」
 ヴィマラが額を押さえる。
「回りくどーい! そんな回りくどいクリエイティブ野郎にレシアチャンはあげられませんよ!」
「さーて、もういいだろ、旦那。綺麗な浜辺を自分のモンにしようなんて馬鹿な考えは捨てて、お前さんもあの肝試し、入ってみねぇか? これが中々よくできてるからよ」
 砂浜をゴロゴロ転がるレイティに憐れみの視線を向ける縁。
「そうだよ、罰として一緒にこの肝試しゾーンを盛り上げるのだ! そんでお近づきにでも何でもなるがいい! 一緒に儲けることで築き上げられる絆もあるはずさ! ね、レシアちゃん!」
 ギョッとするレイティだったが、おどおどと現れたレシアを見て悲鳴をあげた。彼女は悪魔メイクのままであった。
「ついでにお化け役の癖に美しく見られようって気概もあれだから、恐怖メイクを施してあげよう、これで更なる恐怖伝説が生まれるかもよ!」
「いやァ!」
 響き渡る幽霊姫の野太い悲しみの声。
 顔を押さえておいおいと泣くレイティへ、カタラァナが最後にきつく叱った。
「あのね。死んだ人の想いを弄ぶのはダメ。あの子も、怒るよ」
「レシアさん、ごめんなさい」
「レシアさんもだけど」
 難しい顔をするナキとヴィマラ。代表してカタラァナは続けた。
「あの子だよ。ずっといたじゃない。ほら、そこに――」
 ──ざわああああ。
 普段は風のない浜辺に、なまぬるい風が吹いた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございます!
夏の怪談(コメディ)、楽しい思い出になって頂けたらなによりです。

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