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シナリオ詳細

渡りし民の財成して

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●渡りし民の財成して
 鉄帝国北部、ヴィーザル地方。
 その一角に存在する、高原が広がるハイエスタ地方は、丁度春風が吹き始めており、人々は一時の幸福を覚えながら生活している。
 そして、そんなハイエスタ地方にて、場所を転々と渡り歩きながら、ハイエスタに住む人々に踊りや歌等、娯楽を提供する旅団『エタナエル』。
『ふぅ……卿は皆様、ありがとうございました!!』
 仰々しく頭を下げるのは、この旅団をしきる旅団長。
 そしてシルクハットを地面に置いて、彼は。
『本当、今日は愉しんで戴けたようなら何よりです! さぁ……皆様、盛大なる拍手を頂けませんか!!』
 と誘導しながら、おひねりをシルクハットの中に入れて貰う彼。
 地に根を生やした行き方ではなく、芸事で生きるかれらにとっては、村人達から貰うおひねりやら資材、食料等々が生きる糧。
 そして貰った物を、芸事道具を満載にした幌馬車に乗せて……次なる街へ。
 ……しかしそんな彼等の行き方を、恨みがましく睨む視線。
『あいつら……楽な生活しやがって。許せねえ……絶対に許せねえ……!!』
 怒りに震えるは、このハイエスタにて好き勝手暴れて村や町を襲う『カルツター』一族。
 自分達の縄張りであるこの場所で、このような興業をやられるのが気に食わない……勿論、それに深い理由は無い。
 だが、そんな彼等の恨みはドンドンと湧き上がり……とある日の夜、次の街へと移動している彼等の下へ。
『てめぇら……! 止まれぇ!!』
『その荷馬車の荷物、全部置いてけってんだ!! 口応えする様なら、皆殺しにするだけだ!!』
 血走った瞳で怒りを叫ぶ彼等に、エタナエル旅団達は、立ち尽くして悲鳴を上げるのであった。


「あ、イレギュラーズの皆さん! こっち、こっちなのです!!』
 と、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、偶然ローレットにいた君達に向けて手をブンブンと振り、こっちこっち、と召集する。
 それに従う君達が連れてこられた先には、トリフェニア・ジュエラー(p3p009335)の姿があり。
「今日はですね、ちょっとトリフェニアさんのお話が面白かったので、聞いて貰いたかったのですよ! さっきの、旅団さんの話、もう1度話て貰っていいです!?」
 とユリーカの言葉に、トリフェニアはこくりと頷き。
「ああ……ま、鉄帝国北部のヴィーザル地方に、余り聞かない『芸事を披露して回る』旅団が居る様でな? ちょっとこの前、それを見てきたんだ」
「彼等の歌や踊りは、人を楽しくさせようと言う気持ちで一杯で、見ていて楽しくなる……そんな素晴らしいものだった。そして彼等は同じ地に根を張る事無く、場所を転々と変えてその芸事を披露しているんだ」
「だが……ちょっと小耳に挟んだのがあってね。どうやら……それを気に食わないと思っている輩達が居る様なんだ。最近彼等の所には矢が放たれたり、石が投げられたり……と言う嫌がらせが続いている」
「このままエスカレートすれば、彼等の命を狙う羽目にもなりかねない。彼等のような芸事を披露して人の心を安心させる様なものを、奪わせてはならない。ただ、彼等に着いていくと、恐らくちょっかいを出している連中は警戒して手を出してこないかもしれない……という訳で、彼等を追跡しつつ、襲撃に迅速に対応したい、って訳なのさ」
 とトリフェニアの言葉にユリーカはうんうんと頷き。
「そうですね! ヴィーザル地方の人々は、厳しい生活を強いられている所もありますし、その心の安寧をもたらしてくれる旅団さんは、素晴らしいお仕事をしていると思うのです! それを殺されたら、ヴィーザル地方にとって大損害になってしまうのです! それじゃ、イレギュラーズの皆さん、宜しく頼みますなのですよ!!」
 と、元気いっぱい拳を振り上げるのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 今回は、北方のハイエスタ地方でジプシー的に芸事を披露する旅団を守るという依頼になります。

 ●成功条件
  芸事旅団『エタナエル』を、『カルツター』一族の魔の手から護る事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
   舞台となるのは、一面に広がる平原に城・街などが点在するハイエスタ地方です。
   今回旅団員達は、街から次の街へと移動する途中に襲われます……時間は夕方の辺りです。
   芸事旅団の人々の所に皆様がいると、ノーザンキングスの奴等は手を出してきませんので、離れた所から監視しつつ、襲撃と同時に割り込む必要があります。
   尚、旅団の人達は自己防衛出来る位の実力はありますが……人数が6人程なので、『カルツター』一族が徒党を組んで襲撃されてくると、流石にひとたまりもありません。
   旅団の人達と協力しながら、確実に敵を迎撃して下さい。

 ●討伐目標
  ・疎ましい『カルツター』一族(50人程度)
    楽して過ごしたい、その一心で動いている一族です。
    旅団の人達が芸事を磨いて生きているのに、それを楽して動いていると勘違いして襲ってきます。
    戦闘能力は、個々はそこまで高くはありません……ですが、人数が多い様です。
    又、魔法剣士的に立ち回る種族の様で、魔法が使用可能で、攻撃・回復何方にも使用可能です。
    

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 渡りし民の財成して完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
水瀬 冬佳(p3p006383)
水天の巫女
アルトゥライネル(p3p008166)
バロメット・砂漠の妖精
雨紅(p3p008287)
愛星
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護
トリフェニア・ジュエラー(p3p009335)
深き森の冒険者
囲 飛呂(p3p010030)
君の為に

リプレイ

●旅の旅団
 鉄帝国北部、ヴィーザル地方。
 草原の緑が色鮮やかに色付き始め、人々を楽しませて暮れる春過ぎのハイエスタ。
『本当、今日は皆様ありがとうございました! 私達の歌や踊りが、皆様を少しでも楽しませたのならば何よりでございます!!』
 深々と頭を下げるは、このハイエスタにて娯楽を提供し、街村を渡り歩いていく旅団『エタナエル』。
 そして彼は、シルクハットをくるっと曲芸の様に地面にすたっと落とすと。
『さぁ、皆様の心付けを幾ばくか頂けないでしょうか? 皆様の善意のお陰で、私達はこうやって色んな方々に娯楽を提供出来ております。勿論、無理強いは致しません、どうか宜しくお願い致します……!』
 深々と頭を下げる旅団員達に、おひねりや食料が投げ込まれていく。
 見る限り、この村の人達の大多数がその芸を見に来ているようで……そこまで人数が居ないこの村においても、その金額と量は中々のもの。
 ……そんな旅団『エタナエル』を遠目に見るイレギュラーズ。
「いやぁ……これは確かに素晴らしい演舞だね。こんな素晴らしい旅団が鉄帝に居るだなんて、知らなかったナ」
 と嬉しそうに微笑むのは、『夜に一条』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)。
 彼女もまた、ラサを拠点に旅芸人をしているからこそ、彼ら彼女らの素晴らしさは身に染みて理解出来る事だろう。
 だが……そんなエタナエル一座に、鉄帝に抗いし一団『ノーザンキングス』の一派『カルツター』一族が襲い来ると言う噂。
「まったく……悪い事を考える人は居なくならないものね」
 と深い溜息を吐くのは、その噂を聞きつけた『深き森の冒険者』トリフェニア・ジュエラー(p3p009335)。
 傍目からみれば平穏そうなこの地方だが……実の所様々な所でノーザンキングスの奴等が村や町を襲撃している。
 奴らからすれば、そのターゲットがこの旅団になっただけ……という事は言えなくも無い。
 ただ、その理由こそが『芸事を披露して金や食料を貰うだなんて、楽して生活している』……というものであるので、救いが無い。
「ここヴィーザル地方のハイエスタの領域で……という事ですか。となると、これは彼らもハイエスタの者達、という事なのでしょうか?」
 『水天の巫女』水瀬 冬佳(p3p006383)が小首を傾げると、それにトリフェニアは。
「まぁ……ハイエスタの者達と言われれば、そうかもしれないね」
「そうですか……尚武の土地柄とは言え、基本的には誇り高い部族だと聞いていましたが……まぁ、何毎にも例外は居るという事ですね」
 冬佳の言うとおり、確かにハイエスタの地に住む者は、そういった傾向があるとは聞く。
 とは言え今回のノーザンキングスに属した彼らは……奪う事で楽を知り、誇りを捨て去ってしまったのかも知れない。
「楽して過ごしたい……か。その気持ちは分からなくは無いが……これだけは言える。『旅芸人は思った以上に楽ではない。かなり厳しい道』という事じゃな。だから……ワシは護衛をする……」
 『炉火の番人』オウェード=ランドマスター(p3p009184)が静かに頷く。
 それに、舞踏を嗜んでいる『舞祈る』アルトゥライネル(p3p008166)が。
「そうだな。誰かの目に留めて貰うのがどれだけ大変か……奴らは分かって居ない。舞踏を愛する者として『楽をしている』だなんて、聞き捨てならない暴言だな」
 と吐き捨てる。
 芸事で生活をするのは簡単な事ではない……彼らも恐らく、下積み時代は苦しい生活を強いられていたことだろう。
 でも、諦めずに修練を続けたお陰で、今はこうして生活が出来て居るという訳なのだ。
「まぁ、自分がキツイ時って、どうにも穿った見方をしちまう時ってのはあるよな……?」
 ただ、そんな『カルツター』一族の行動に、多少ではあるが『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)は思う。
 確かに彼ら一族も生きる為に精一杯なのかもしれない。
 とは言え、生きる為に奪う……そんな生活に手を染めてしまえば、後は落ちるしかない。
 その様な事例を、今迄多くのノーザンキングスと戦ってきた『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は良く理解しており。
「ノーザン・キングスの連中に期待している訳ではありませんけど、こういうのが無尽蔵に湧いてくるのを見ると流石に辟易します」
 と吐き捨てると、『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)も。
「そうですね。気に食わないだけなら構わないのです。しかし、手を出したのならば、その責任を取って貰わなければなりません」
「そういう事です。さっさと排除して、エタナエルの方々と、こちらからの被害者を助けましょう」
 二人の会話に、飛呂とトリフェニアが。
「まぁ、皆の言う通り、追い詰められてたとしてもやっていい理由にはならない……真っ当な恨みじゃないとしても、ここまですんなら、怒るよりも呆れるしな」
「そうね。少し痛い目を見て貰う事になりそうね」
 と零し、そして。
「他人の成果を妬むだけでは、どれだけ奪っても同じ物を得られない。それは楽ではなく、思考の放棄だろう。蜃気楼より身の無い奴らだ」
 中々辛辣に吐き捨てるアルトゥライネルに、ミルヴィも。
「そうだね。真心も磨いた芸も、荒んだ心には届かない……とっても悲しいね。なら、心は行動で示すのみだよ!!」
 真摯な表情で、強く頷く。
 そして……遠目の芸団の人々が、荷物を荷馬車に詰め終わるのを見届けると共に、先程のシルクハットを被った男が。
『お待たせ致しました。本当に助かります』
 既に話をしておき、彼らは驚きはするものの……イレギュラーズ達の提案を受け入れる。
「いえいえ、こういうのから守るのがアタシ達の仕事だから。それじゃ、あの馬車に隠れる人と、少し後から着いていく人に分かれましょ」
「了解。それではミルヴィ殿、宜しく頼むの」
 オウェードに頷くミルヴィ……そしてイレギュラーズ達は二手に別れ、旅団と共に次の町に向けて移動を開始するのであった。

●命の藻屑
 そして『エタナエル』旅団と共に、次なる街へと向かうイレギュラーズ。
 空の陽射しは地平線へと落ちて、丁度夕刻の頃……茜色の空が視界に広がり、どこか郷愁を抱かせる。
 勿論郷愁に浸っている様な暇は無く、イレギュラーズ達は二手に別れ、適度な距離を取りながらその進路を進んで行く。
 ……そして、夕焼け空が最後の陽射しを煌々と照らし始めた、その時。
『!!』
 遠くから、何者かの気配。
 その気配の方向に向くと……遠くから放たれるは、数番の弓矢達。
「しゃがめ!」
 咄嗟に飛呂が叫ぶ。
 すぐさましゃがむ芸団員達……矢は幌に何個も刺さるが、人的被害は無い。
『くそっ! 避けただと!?』
『仕方ねえ! んじゃあ力尽くでぶっ潰すまでだ! 皆、続け!!』
 と苛立つ威声を上げながら、次々と後方の丘の上から駆け下りてくる男達。
 そんな彼らの襲来に飛呂が更に。
「早速現れやがったか。芸団員の人達に手出しはさせないぞ!」
 と声高らかに宣言すると、道具を満載した馬車の中に隠れていたイレギュラーズ達が、次々と姿を表す。
『護衛だとぉ!? 巫山戯た真似しやがって! そんなに稼いでやがるのなら、絶対に奪い去ってやらぁ!!』
 心底まで妬み辛みを口にする『カルツター』一族。
 そして彼らが芸団の馬車近くまで接近した所で……。
「今じゃ!」
 オウェードが号令すると共に、少し後方から追跡していた仲間達に合図を送る。
 その合図に応じ、姿を隠して居たイレギュラーズ達も、次々とカルツター一族の後方に構え、包囲する。
 瞬く間に前と後ろを封鎖されたカルツター一族は、グヌヌヌ……と顔をしかめて憤怒の表情。
『このやろう……本当に巫山戯た真似しやがってよぉ!! 全て殺す。全て奪い去ってやらぁああ!!』
 狂気の咆哮を上げると共に、仲間達を鼓舞し、攻撃命令。
 その命令に従い、彼らは己が武器に炎や氷の魔力を込めて、怒濤の如く反撃の猛攻を開始する。
 そんな敵の動きに先んじて、冬佳が。
「みなさん、こちらへ!! 私達の仲間に任せて下さい!」
 と、エタナエルの人達を先の方へと誘導し、万が一にも敵の攻撃が当たらないように避難誘導を行う。
 とは言え、当然敵陣の第一の目的はその積み荷な訳で。
『くそっ、逃がすか!』
 と、攻撃の手数を一箇所に集中させ、一点突破を企む。
 ……しかし、そんな敵の攻撃を、鉄壁が如く立ち塞がるオウェード。
「ここから先には通さん!」
 と力強く宣言、そして。
「ワシと勝負じゃ! もししなかったら『ワシは楽して過ごす事』になる……一族としてそれでいいのかね?」
 ニヤリと笑みを浮かべ、敵陣を挑発。
 カルツター一族は……その『楽して過ごす』に敏感に反応し。
『何だと!? させてたまるかよっ!!』
 と、ギロリ睨みを効かせ、『エタナエル』からのターゲットを逸らせ、足止め。
 勿論足止めしている最中にも、後方から仲間達が距離を詰めて……完全に包囲網が完成。
「さぁ……始めましょう。彼らが楽に過ごしているとなど思うような、不躾な貴方達には確りとしたお仕置きが必要でしょうから」
 そうオリーブが言い放つと共に、後方に居るエタナエルらを纏めて凶悪な乱撃の一閃を繰り出す。
 更に雨紅、トリフェニア、アルトゥライネルも。
「貴方達は、彼らが楽していると思いの様ですね……ですが、彼らは絶え間ない努力の末に、こうして芸事を披露して生活をしているのです。そして彼らの歌や踊りを次の街の方々が待って居るのです。怪我などさせたくありません」
「そうよ。貴方達の様に楽して稼いでるなんて事は無いわ……大変な努力と研鑽の末に、素晴らしい仕事に身を投じているのだから……あなた達は楽して稼ぎたい、それだけでしょ? そんなの考えるのがいけないのよ。地道に稼いでこそ、手にした時の喜びがあるって言うのに……特に宝石は良いものだわ」
「そうだな。お前達、何を以て楽だな、と。表の煌びやかさだけを指すならやってみろ。やる覚悟も無いか……それとも俺が踊らせてやろうか?」
『うるせえうるせえ!! 俺達に説教垂れてんじゃねえ!!』
 完全に聞く耳を持たない『カルツター』一族。
 前後を完全に封鎖され……万が一にも自分達の助かる道は無さそうだと、端的に理解は出来る事だろう。
 でも、そんな彼らの奥底にあるのは、やはり楽して過ごしたい、それ一つ。
「本当に……まるで駄々っ子の様ですね。ですが……人を殺めて奪おうというその手段は、決して許す事は出来ません」
 と、彼らの態度を断じながら、雨紅も鮮血の乱撃を撃ち放つと、応じるようにミルヴィの妖しの剣による一閃と、アルトゥライネルの乱舞、そして冬佳の祓魔の光陣。
 それら範囲攻撃は、包囲されている敵陣に逃げる余地を与える事無く纏めて攻撃し大きなダメージを与えていく。
 その攻撃を受けた敵の被害状況を見定めながら、もう数撃で倒れそうな者を見定めると、そこにミルヴィは。
「あんたら避けな! この技はあまり加減が出来ないの! 避けて!」
 攻撃をしながらも、避ける事を宣言。
 流石に敵陣は戸惑うが……本能の部分で避ける動きをし、命への致命傷を避けるが、流石に倒れていく。
 そんな敵への宣言に、オリーブは眉を顰め。
「……救おう、という事ですか?」
 とミルヴィに問い掛ける。
「まぁ、ね……リーダーは救いは無いかもしれないけど、配下の人達は泣く泣く従っているのかもしれないしね? ま……アタシの欺瞞かもしれないけどネ」
「……全く。ミルヴィ殿は優しすぎる。ワシが……醜く見える程にな」
 ミルヴィの答えに、オウェードは複雑な表情。
 とは言え、そんなミルヴィの動きは少なからずカルツター一族の動きに影響を及ぼしている様で。
『……』
 次の刻、攻撃に躊躇を見せる様な者も。
『おい、何惑わされてやがる!! 攻撃しろ! 楽して過ごしたいんだろうが!!』
 と首領の声が響きわたり、はっ、となって攻撃してきたり。
「……何にせよ、自分は倒します。まぁ、一度倒れた者に止めを刺す程ではありません」
 そうオリーブが言うと、飛呂も。
「そうだな……お前達。人を傷付けてもいいって思ってんなら、こう傷付けられる側になってみてどうだ? して当然とか思えねーだろ、こういうのはよ!」
 と声を掛ける事で、更にカルツター達の心を揺さぶる。
 そんなイレギュラーズ達の揺さぶりに部下達の一部は更に戸惑い、攻撃を止める。
 それでも攻撃を止めない奴らには、もはや躊躇する暇もなく。
「……覚悟は出来て居る、と言う事でしょう。ならば、こちらも容赦はしません」
 とオリーブの言葉に雨紅も。
「そうですね……出来る限り、被害は最小限に抑えるようさせて頂きましょう」
 オリーブの攻撃の後に、識別にて、抵抗勢力だけを狙い済まして、鋭利の乱撃。
 そしてイレギュラーズ達の攻撃に……戸惑いし者は気絶させ、抵抗するものは全て仕留めていった。

●人を救う仕事
 そして、『カルツター』一族全てを撃退した後。
「……皆様、ご無事ですか?」
 息を吐きながら、振り返る冬佳。
 旅団の荷馬車は、少しばかり傷はついてしまったものの……殆ど無事な状態。
 勿論旅団員達も、僅かな怪我程度で、概ね問題無いと言えるだろう。
「取りあえず、怪我した人達は手当をしないと……冬佳は旅団の人達を御願い。アタシは『カルツター』の方に回るわ」
「え? あ、はい、分かりました」
 ミルヴィの言葉に頷き、二手に別れて怪我人を治療していく。
 ……勿論カルツターの者達は、既に息絶えている者も居る。
 だが……命までは奪わなかった者達について、治療を施していく。
 手当を受けて……意識を取り戻した彼らは。
『……なぜ、オレ達を生かした? 俺達は、略奪しに来たんだぞ!?』
 何故命を助けたのか、訝しがる。
 ……そんな彼らに、ミルヴィは優しい口調で。
「それはね、辛い時は全てが憎たらしく見えちゃうから。もう、頭は冷えたでしょ?」
『なっ……!?』
 どうやら図星だったらしく、彼らの表情が赤くなる。
 そしてミルヴィは、旅団員達と仲間達に。
「ねぇ、彼らに折角だから、私達の踊りと歌を披露してあげない? 彼らは確かに略奪しようとしたけど……きっと、それは心の余裕をなくしたからだと思う。私達の歌と踊りで、それを癒してあげたいんだけど……どうカナ?」
「それはいいな。俺も、踊り手として参加させて貰おう……すまないが、協力して貰えないか?」
 ミルヴィとアルトゥライネルの言葉に、旅団員達は。
『そうですね……確かに。ええ、私達も協力致します!』
 パパッ、と簡単に用意出来るものを取り出し、旅団員達が奏で、ミルヴィが歌い、アルトゥライネルが躍る。
 楽しげな旋律で、自然と乗れるようなメロディは……最初はきょとんとしていた彼らも、ちょっとずつ身体を揺らしていく。
 そんな、心を癒す公演をすれば……彼らも、次第に心を開き……もうしない。むしろ、彼らを守る為に、何か出来ないか……と提案する。
『ふむ……分かりました。それでは、私達の護衛に付いて貰えませんか? 芸事は得意ですが、こういう荒事はてんででして……』
『ああ、分かった!』
 胸を叩くカルツター一族……数人になってしまったけれど、旅団に感銘を受けた彼らが裏切る事は……恐らく無いだろう。
 それに拍手しながら、トリフェニアが。
「それじゃ、取りあえず次の街まで行きましょう?」
 と皆を促し、次なる街へ。
 公演をしつつ、彼らはその警備をしっかりと熟していく。
 そして……そんな旅団の旅団長へ、オウェードは。
「良かったのう……すまん、旅団長。一つ頼みがあるのじゃが……」
『ええ? 何でしょう?』
「ワシはヴィーザル地方の領主でのう……もし良ければ今度ワシの領地に公演に来て貰えぬかの? その際にはランドマスターメロンやメロンソフトも提供しよう! 執政官にはワシが言っておくでな」
『ええ、勿論ですとも! 近くを通りがかった際には、伺わさせて頂きます!!』
 と、公演の予定も取り付けつつ……この街の公園も、また盛況の内に終わるのであった。

成否

成功

MVP

ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥

状態異常

なし

あとがき

ノーザンキングスの旅芸人をお守り頂き、ありがとうございました!
旅芸人旅団という事で、皆様の心持ちも高かったようで……とても楽しかったです。
彼らは流離い行く旅団ですので、いつ行くかは分かりませんが……皆様の領土にお邪魔する事もあるかもしれませんね?

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