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シナリオ詳細

<Celeste et>さめさん水路探索記録

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●井戸の底にあったものは……
「迷路の如き水路、じゃのう」
 海音寺 潮(p3p001498)は周りをふよふよと浮かぶポチ(ちっちゃいサメ)の顎を指でよしよししながら、そんなふうに語った。
 まずは彼が調べてきた水路の内容について……その背景から順に話していくことにしよう。

 鉄帝上空にて存在が確認された『伝説の浮島』ことアーカーシュ。早速鉄帝軍主導でその探索隊が結成され、ローレット・イレギュラーズが島のあちこちへと派遣されることとなった。
 とはいえ最初に分かっているのはレリッカという村落のみ。少しでも外に出れば危険な古代獣たちに襲われると知っている彼らは外の情報を殆ど知らず、探索もまた村を中心として少しずつ手を伸ばしていくほかなかった。
 そんな中で探索が行われたのが『ポーター』という浮遊クラゲ型モンスターの出現する巨大な縦穴型ダンジョンである。ダンジョンというより巨大な井戸か何かに見えるのだが、実際底までたどり着いてみると水路へと繋がっていた。
 当然、ポーターが湧き出すだけあってただの水路ではない。
「少し内部を探索してみたんじゃがのう、迷路のように入り組んでいる上にあちこちにゴーレムが配置されておった。近づけば……おそらく戦闘になるじゃろう」
 呼吸も食事も必要としないゴーレムを水中の防衛装置としたのだろう。
「なかなか賢い判断だ。電子機器とは違って水中でも半永久的に動作するしくみなのだとしたら、なおのことな」
 ラダ・ジグリ(p3p000271)が感心したように言う。アーカーシュの一部でゴーレムの残骸が見つかったという報告はあって、中には命令を出すための回路が存在しているとも聞いている。(発見者によって造花回路と名付けられたものだ)
「しかし、防衛装置があるということはすなわち『それだけ重要なもの』が奥に存在していることになる。朽ちて無くなっていたりしなければ……だがな」
「調べる価値はあるとは、あると思うのう」
 うむうむと潮が頷く。ラダも同意見だったようで、すぐ近くで話を聞いていた『オーリー・バイエルン』という鉄帝軍の男に目を向けた。
「水中行動用の装備は持ってきているか?」
「ええ、戦闘に差し支えない程度のものを。魔術をこめたアクセサリータイプで、海洋王国海軍でも採用された品なので信頼性は高いはずですよ」
 オーリーという男はよどみなくそう喋る。刈り上げた頭に小さな丸眼鏡。軍人らしくガタイはいいが、デスクワークに向いた物腰をしていた。ラダは経験上、こういう男は仕事をしくじらないと知っている。仮にミスがあっても発見が早くフォローも早くおまけに準備がいいというタイプだ。
「ならそれを借りよう。潮殿は……」
「わかっておる、大丈夫じゃよ。ディープシーじゃからのう」
 では早速探索に向かおう……と潮が腰を上げたところで、オーリーが手をかざして二人を(厳密には潮を)止めた。
「待って下さい。折角見つけたのです。水路に名前をつけませんか?」
「ふむ……?」
 潮は小首をかしげ、そして難しい顔で固まった。
「決められんのう。代わりに考えてくれんかのう」
「はあ……では……」
 オーリーは丸眼鏡をちょいっと指であげ、潮の横に浮かんでいるポチに目をやった。
「『さめさん水路』としましょう」
「さめさん……」
「さめさん……」
 ラダと潮がなんともいえない顔をして、オーリーだけがぱちくりと瞬きをする。
「何か変ですか?」
「いや……うん、いいだろう。その『さめさん水路』の探索、請け負った」

 おさらいをしよう!
 『さめさん水路』は正体不明の縦穴の底から入ることの出来る水路型ダンジョンだ。
 迷路のように入り組んでおり、そのあちこちには水中でも活動可能なゴーレムが配置され侵入者へ攻撃をしかけるという。
 幸いなことにと言うべきか、他に脅威となるモンスターはおらず『ポーター』もゴーレムを恐れてか水路内には巣を張っていなかった。警戒すべき対象もゴーレムのみとなるだろう。
 水中行動がとれるならそのままで、そうでなければ軍から行動用の装備を借りて突入することになる。
「水路の先に何があるのか……楽しみじゃのう」

GMコメント

●オーダー
 『さめさん水路』の探索と攻略を依頼されました。
 水路は迷路のように入り組んでおり、その構造上透視能力を使っても先を見通すのは難しいでしょう。上手にマップを記憶したり音の流れから行き止まりを予め察したりといった迷宮探索能力があるとgoodです。

 水路は『水路』などといっていますが非常に幅が広く、多少なら広がって進むこともできる程度の大きさがあります。
 戦闘もそれだけ動き回って行うことになるでしょう。

●エネミーデータ
 水路内にはゴーレムが配置されています。
 ゴーレムは水中での戦闘に寄せたカスタマイズがされており、なんだか半魚人みたいなシルエットをしているようです。
 武器は三叉の槍やハープーンガンが確認されています。他にもあるかもしれません。

●特殊ルール『新発見命名権』
 浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
 発見者には『命名権』があたえられます。
  ※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
 特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
  ※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
 命名権は放棄してもかまいません。
  ※放棄した場合には、何も起りません。

  • <Celeste et>さめさん水路探索記録完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)
ツクヨミ
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ロト(p3p008480)
精霊教師
ライ・ガネット(p3p008854)
カーバンクル(元人間)
佐藤 美咲(p3p009818)
無職

リプレイ

●古と対話せよ
「ティンダロス、ここでいい」
 長い縦穴を下った先。『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)は騎乗していた騎乗生物を停止させ、水の張ったエリアのすこし上で待機するように命令した。
 夏に買ったばかりの水着をきて、水中行動用の魔法(あるいは権能)を発現させる。
 ティンダロスに相乗りする形で下ってきた『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)が額の宝石を発光させて周囲を照らすと、その様子に『うえっ』という
顔をした。
 それもそのはず。水面には大量にクラゲの死体が浮いており、そのサイズはエチゼンクラゲのそれであった。ある地球世界ではエチゼンクラゲ大量発生問題の対策として巨大な漁網いっぱいにクラゲが詰まっているという光景が記者によって撮影されたそうだが、光景があまりにグロテスクさに有名となったことがあるらしい。今目の前に広がっているのは、まさにそういう光景である。
「ここに潜るのか……? マジか……?」
「安心しろ。全員死んでる。真ん中のやつもな」
 『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)が指さしたのはひときわ巨大なクラゲだった。ひと家族がならんで座れるくらいの広さがあり、これが意志をもって攻撃してくるというのはなかなかイヤな光景である。
 ラダはといえば、装備していたジェットパックを外すとなんということもなく水面下へと潜っていく。
 ライはイヤイヤながらももぐり、そしてうっかり上を見上げて更に嫌な顔をした。これはなんていうか、描写すらしたくないほどのグロテスクさである。
「うわあ……うわあ……ええ……」
 『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)がなんともいえない声をあげながら見上げている。
「皆これが平気なのかい!? 我慢しているんだろう!? 無理矢理やらされてるんだよね!?」
 指をさしばたばたするマリア。
「まあ、喜んでやっているかと言えば嘘になるのう」
 『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)がうむむと唸りつつ、なんだか冷静そうに水底へと沈んでいく。
 ぽちはさすがに危険だからということでティンダロスの背にのっけて待機させたらしい。ここにはいない。
 そんな中で、『ツクヨミ』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)だけが妙に冷静に巨大クラゲの触手を観察していた。
「クラゲの触手が下向きに生えているのは、より海底からの脅威に備えるためなのですよね?」
 問いかけた相手は『精霊教師』ロト(p3p008480)だ。彼のどこか知的な雰囲気をみて、生物学に詳しいのかなと考えたのかもしれない。実際はそこまでではないのだが、ロトとてそれなりに博識である。
 借り物の水中行動装備の様子を確かめていた彼は、眼鏡をくいっとやってツクヨミに応えた。
「確か、そう本で読んだことがあるよ。臓器を一通り上に向けてるのもそのためだよね」
「では、なぜ『巣から上に向かって』侵攻するのです?」
「……え、あれ? そういえばなんでだろ」
 以前の依頼記録を見るに、このポーターとかいう古代獣は巨大な縦穴から現れ集落に危険を及ぼしていたというはなしである。そもそもの探索目的がその危険の排除だったはずだ。
 わざわざ自分達にとって不利な場所へ進む意味とはなんだろう?
「あのー、これ、予想なんスけど……」
 すいすいと水中を泳ぎながら水底へ、『ゲート』の前へとやってくる。
 開閉するフタのようなものはなく、円形の横穴があるだけだ。周囲にはポーター(例のクラゲ型古代獣だ)の卵らしきものが底にはびっしりついていたらしいが、それらを駆除した痕跡がのこっている。が、ゲートから先にはその痕跡が一切なかった。
 たかが丸穴ひとつでこんなにキッパリ巣を途切れさせるものだろうか?
「『この先にあるもの』から逃げてたんじゃないっスかね」
 美咲は当初、このゲートに魔術的効果があるのではと睨んでいた。いくつかの実験をしたことでそんな効果はないと確認できたが、であれば明確な理由があって『巣が途切れる』という現象がおきたことになる。そしてそれは、誰かが意図的に『一定ラインを越えた存在を攻撃した』ときにこそ起こるものだ。
「むむむ……」
 うなるライ。ツクヨミが水中を自由に泳げるタイプのファミリアーを専用の水槽から解放しつつ、そっとゲートをくぐった。
「『向き』の話もあわせれば……ポーターはこの『さめさん水路』に挑みつつも敗れ、いつまでもこの穴底に『攻略前キャンプ』を貼り続けていたことになりますね」
「古代獣と島の関係がちょっと見えてきそうな話だね」
 マリアは話にのっかり……そして。
「どうして『さめ』なんだい? でるのかい?」
「いや、わしが見つけたからじゃないかのう」
 『オーリーはぽちが好きだったんじゃろうか?』などといって潮は自分の顎をさすった。

●迷宮探索
「ううむ、しかし……こうも分かれ道が多いと迷いすぎるのう」
 ポーターの縦穴の先に発見された水路型ダンジョン。通称『さめさん水路』は異常なほど複雑だった。
 というのも、道のあちこちが崩落しており進行不能な場所が存在するのだ。元々は大きく分岐しあちこちに繋がった水路だったのだろうが、こうも崩落だらけだともはや迷路である。
 先があるだろうとわかるのは、水の流れがある程度清く一定であるためだ。
 詳しく語れるのはやはり……。
「水の精霊を知るというのは、水を化学するのと本質的には一緒なんだ」
 ロトは水路に流れる水流を手で受けながら、その流れの方向や純度を精霊疎通能力によって確かめていた。
「疎い人の中には、精霊はみんな流ちょうな言語を語って自我のある行動をとるって考えるひとがいるけれど、大抵の精霊というのは『目的をもった自然現象』でしかないんだよ。目的っていうのは、雨が雨として降ったり、火が火として燃えたりすることだね。それは化学的に当たり前の現象をあたりまえに起こすことをさしていて……これを専門用語で『精霊目的論』というよ」
「まるで学校の先生のような説明じゃ!」
「学校の先生だからね」
 あははと苦笑するロト。
「この大本は『目的論』という事象を目的と手段の連関において説明しようとする考え方で、機械的原因とその結果の連関によって事象を説明する機械論に対立する考え方なんだ。そしてそのどちらも効力を発するというのが、この世界の混沌肯定なわけだね」
「なるほどね!」
 マリアはうんうんと腕組みをして頷くと……ものすごくキリッとした顔で目を開いた。
「よくわからなかったよ!」
「自信満々に言う……」
「大抵の場合精霊と疎通するは水流や水の成分を化学的に計測するのと一緒ってことかな!?」
「わからないなりに凄く良く分かってる!」
 それまでなんとなく聞きに徹していたライが『それで結論は?』と先を促してきた。
 頷きかえすロト。
「この水路に流れてる水は水路内部を循環してるわけじゃない。雨としてふって土で濾過されて、それがまた雨に至るまでの高度な循環が成されてる清い水なんだ。だから、この水路は必ずどこかに繋がっているし、元はこの島の水道インフラを司っていたんじゃないかな」
「おそらくはそうじゃろうのう。そして……」
 潮が水路の曲がり角や継ぎ目のような部分に対して、撫でたり近くで見つめたりといった観察をしていた。
「いま無機疎通で確かめてみたんじゃが、これである程度は分岐を絞れるかもしれん」
「むき……そつう……」
 ライが一瞬『壁が喋るのか?』という顔をしたが、さっきのロトの話を思い出してポンと手を叩いた。
「あ、減り具合か!」
「そういうことじゃ。流れが多い川は石がまるく、流れのないくぼみは石がとがるんじゃよ。ここには石はないが、壁の減り具合には必ず違いがでるんじゃ」
「見た目にはぜんぜん一緒に見えるのに……すごいね!」
 マリアが壁をつんつんしながら感心したように目をキラキラさせている。
 ラダがフッと小さく笑い、水路の先へとバタ足で泳ぎ始めた。
「二人のおかげで、この水路には先があること。島全体を包むインフラの一部であることがわかった。それに、潮のおかげで大体の方向を定めることができたわけだ。だが、正確に分岐の先を確かめるにはやはり試行回数を増やすしかないんじゃいのか?」
「でしたら、良い方法があります」
 ツクヨミがファミリアーの水棲生物を新たに二匹はなってみせた。
「手札を増やすのです」
 単純に『迷路の総当たり』という作業において、ファミリアーによる調査回数の増幅は効果的だ。それもファミリアーの数を増やすという手段はなおのこと効果的である。
「あつめた情報は逐一記憶できますので、時間さえかければ間違った道に進んでしまうことはないでしょう。ゴーレムとの遭遇によって『危険なだけのハズレ道』も探ることができるでしょうしね」
「これはなんとも……今回はやたらに味方が頼りになるな」
 マカライトが『だろう?』といったように美咲に話をふってみた。美咲はといえば、完全防水型のヘッドセットをつけてなにかに意識を集中させているようだった。
「……どうした?」
「何か、こっちに近づいてくるっスね。ファンの音が大きくなってるので、多分ゴーレムかと」
「そいつはいい」
 マカライトは不敵に笑うと、身体から伸ばした鎖を両腕両足にぐるぐると巻き付けてから最後に拳をぎゅっと固めると格闘の構えをとった。
「俺もそろそろ活躍の場が欲しかったんでな」
 前方。カーブを描いた水路の先から出現したのは人型のゴーレムであった。背部にスクリューが装備されているようで、かなりの速度でこちらへ迫っている。手にはハープーンガン。
 情報にあった通りのゴーレムだ。こちらに対する敵意はむき出しである。
 ゴーレムがハープーンガンを構えるのと、マカライトが前に出て拳を引き絞るのは同時だった。
 金属製の銛の発射――とマカライトがパンチを繰り出すその刹那。腕に巻き付いていた鎖が一瞬でほどけ、奇妙な錯視めいた増幅現象を起こしながらふくらみマカライトすらも飲み込みそうな竜の顎へと変化していた。鎖によってできあがった大顎が銛を飲み込み、そのままゴーレムへと食らいつく。
「やった、直撃だね!」
「油断するな、左右だ」
 マカライトはマリアたちに『警戒しろ』のサインを出した。彼もまたエコーロケーション能力によって周囲を観察していたのである。そして、水路左右に隠された『蓋』がひそかに開いていくのを察知していた。
 ハッとして振り返るマリア。既に開いた蓋の先にはラグビーボール状のくぼみがあり、そこにぴったりとゴーレムが収まっている。目をギラリと光らせたゴーレムはマリアめがけて襲いかかる――が、マリアは即座に対応して相手の繰り出してきた槍をつま先で蹴り上げた。
 コォンという小気味よい音がしたかと思うと、一瞬遅れて縦向きに無数の赤い電撃(スパーク)が走る。更に上下に揺するような水流の暴れがおきゴーレムはぐるんと回転しながら水路の壁に叩きつけられた。
 完璧なカウンターである。が、それで終わるマリアではない。、
 ヴゥンとノイズのような音を立ててマリアの姿がかすんで消えたかとおもうと、先ほど壁にぶつかったばかりのゴーレムの『背後』に出現した。
 壁に手をつき、突っ張るような両足蹴りをゴーレムの背へと叩き込む。
「水中特化のゴーレムか! 相手にとって不足はない! 食らいたまえ!」
 螺旋を描くように走った衝撃と雷撃。ゴーレムの中身がドッと漏れ出して崩壊していく。なんとも理解のしづらいパーツだらけだが、今は分析している暇はない。
「ラダ君、そっちは任せたよ!」
 言われて、ラダは先ほどマカライトが『左右だ』と発言したのを思い出した。
 美咲がラダの首に装着している簡易通信機に『トトン』というノックを伝導させた。それによって素早く反応できたラダがライフルに手を伸ばす。
 既にラダの背後で蓋が開き、ゴーレムがハープーンガンを構えている。
 ラダは手にしていたライフルを手元でくるんと逆向きに回転させると親指でトリガーをひいた。
 腰ごしに後方へ銃口をつきつけ、ちょうど真逆の状態で銃を撃つという非常にトリッキーな動きだが――それでも命中させるのがラダである。
 ゴーレムの腕に命中したことで腕組織を破壊。ハープーンガンは狙いをそらしラダの頬すれすれの位置を抜けていく。
 ぱっと銃から手を離し、今度は自分自身が後方へ反転すると今度こそ銃を正しくにぎって発砲――かと思えば懐から出したサブウェポンの拳銃を片手で撃ちまくる。ライフルとリボルバー拳銃によるフルアタックである。
 どう考えてもラダのスナイパーライフルはそんな決闘中のカウボーイみたいに撃つものではないが、長年の(そして多彩な)経験がそれを可能にしたらしい。
 破壊されたゴーレムが崩れるその瞬間、ガチンと何かが稼働する音がした。
 そうした異変は美咲やラダ、ロトのように耳の良いものにはいち早く、それ以外の者にはほぼ強制的に周知されることになる。
「おおっ!?」
 美咲の体勢が急に崩れる。日本にある非常に流れの速い河川を無理矢理遡上するという滅茶苦茶な訓練をさせられたことを思い出し、そしてそれはほぼ真実だった。
「この水路、いきなり流れが速くなってるっス! みんなどこかに捕まって!」
「捕まるってどこにだよ!?」
 つるつるの壁に肉球をがががっと叩きつけて最後には回転しながらすっとんでいくライ。
 それを、流れに完全にのったゴーレムが並走。大きな目のようなカメラが彼に向いたかと思うと槍を構えた。
「こんにゃろ!」
 フロストチェインの魔法を至近距離でぶっぱなすライ。
 そこへロトが飛び込み、ライを小脇に抱えるような形で槍の突きを回避させつつ片手を翳す。パパパッと三連のカメラフラッシュめいた光がはしったかと思うとゴーレムを中心に小爆発が連発。
 ツクヨミが強引にそこへ突っ込み、ライフルを乱射しながら通り過ぎていく。
 破壊されるゴーレム。それでも腕を伸ばしツクヨミの脚へがしりとつかまったので、勢いよく加速した潮がその手刀でもってゴーレムの腕を撃ち落とした。
 同じく美咲も通り過ぎながらH1973自動拳銃を抜いた。至近距離でどかどかと撃ちまくり、ゴーレムの残りを破壊する。
「女性の脚を掴むとかとんだ執念っすねえ」
「ツクヨミ、例の魔法を!」
「只今」
 がしりとツクヨミを掴んで泳ぎを補佐する潮。その間にツクヨミはファミリアーとの接続もきってある付与能力に全集中した。
 『水遁神楽術』というその術は、彼女を中心とした全員に対して【水中行動】の力を付与するというものである。
 配布された水中行動装備よりもより鋭く水中での動きをとることができる。
 八人はこれによってなんとか激流のなかを泳ぎ切り、時折途中の大きな岩ブロックに激突しそうになるのを回避しながら――

●そして新たな
「うわあああああああああ!?」
 ライたちがまとめて、大量の水と共に放り出された。
 べふっと地面にぶつかり転がるライたち八人。
 あとから降ってきたのはゴーレムの残骸のみ。どうやら乗り切ったようだ。
「ここは……?」
 頭をあげたライは、目の前にそびえ立つ巨大な門にハッとした。額の宝石を発光させて門を照らす。そこには古代文字らしき記号が並んでいるが、ところどころが崩れて正しく読むことができない。
「これは一体?」
「解読能力でもあればいいんスけどね」
 とりあえず記録しときますかといって、小型の撮影機材を取り出して門を端から順に撮影していく美咲。
「いや、それならできる。こう見えて元トレジャーハンターだ」
「私もです。(トレジャーハンターではありませんが)お任せ下さい」
 ピッと片手をあげるツクヨミ。
 美咲はカメラを翳したまま、『今回はメンツに恵まれてるっスねえ』と呟いた。
 解読をツクヨミたちに任せつつ、美咲はこれまでの事を思い返しながら推測を並べていく。
「『ポーター』という古代獣……そもそも古代獣っていうのは、古代の魔王が放ったモンスターなんスよね。アーカーシュの在来種じゃあなく。ゴーレムはその防衛のために配備されたものだと仮定して、ポーターはそこへの侵攻が目的だったと考えるのが妥当っス。
 ただの水道インフラをわざわざ攻める理由はないっスから……目的はやっぱりココ、っすかね」
 『さめさん水路』の先に隠されていた、巨大な門。
「これはなんだか……秘密に迫ってきた感じがするっスねえ」

成否

成功

MVP

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)
ツクヨミ

状態異常

なし

あとがき

以下命名権です

 発見者:『ツクヨミ』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)
 種類:遺物
 備考:さめさん水路の先にて厳重に隠されていた門です。劣化した文字には『これ以上先に進んではならない』ということが示され、先には危険が待ち構えているように見えます。

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