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シナリオ詳細

造船島“ロッソ”。或いは、伝説の遺物…。

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●赤い船の島
 造船島“ロッソ”
 かつて、海洋の海に消えた一団が中心となって発展させた島である。
 ロッソで採掘される赤い金属を使った鋼鉄の船と、一団の持つ造船技術の噂は広まり、当時は多くの船乗りがロッソの船を求めたと言う。
 けれど、ある日、ロッソの船大工たちは姿を消した。
 島に迫る海の怪物を相手に、自分たちの造った“赤鉄の軍艦”で挑み、海の底に沈んだのだ。
 
 青い海に波紋が広がる。
 すぅ、と水中から浮かぶように顔を覗かせたノリア・ソーリア(p3p000062)は、島を眺めて目を丸くした。
「……ここが造船島“ロッソ”。あちこちから煙が上がっていますの」
 島の外周には幾つもの造船ドック。
 そこかしこから煙が空へ上っているのは、金属部品の精製などしているためか。
 伝説の船大工たちは遥か昔に海へと消えた。
 しかし、ロッソで採掘される赤い金属も、伝説の船大工たちの残した造船技術もまだ残っている。
 かつてほどの技術は無いが、今なおロッソの船は船乗りたちに人気のモデルだ。
「以前“名前のない島”で拾った金属部品には、確かにこの島の名前が刻まれていましたの」
 かなり古い部品だった。
 名前の無い島に沈んでいた船は、島を起こした船大工たちの造ったものではないだろうか。
「rosso.No.1dockと記載がありますが……さて、地図にはそのようなものはどこにもないですの」
 島の周囲を、ゆらりゆらゆら、暫くの間泳いで回ったノリアは金属部品に記されていたドックがどこにも存在しないことを知った。
 島にあるのは№2から№8までの“7つ”のドック。
 それから、廃船の残骸ばかりを集めた廃棄場。
 ドックの配置から考えるなら、廃棄場こそが1番ドックの跡地だろう。
 しかし、なぜ島の発祥にも繋がる1番ドックを廃棄場などにしてしまったのか。
 疑問に感じたノリアは、単身“ロッソ”の調査へと乗り出したのだった。

●ジェーン・ドゥとの邂逅
「そしてわたしは健闘虚しく捕まってしまったですの」
 よよよ、と泣き崩れるノリアの前には青と白の髪色をした細身の女性が立っている。
 ノリアの手足は、触手のように伸びた女性の髪で縛られ拘束されている状態だ。
 身動きのとれぬノリアを見下ろし、女性は眼鏡を押し上げる。
「いえ、それは捕まえたけれどね。健闘も何も、干からびかけていただけでしょう」
「……そうですの? 一体、何がありましたの?」
「廃棄場で熱線に焼かれたのね。何で生きているかは分からないけど。あれの直撃を受けたなら、息絶えておくべきではなくて? 生物として」
「体力には自信がありますの。干からびたって、海水をかければ元通りですの」
「……そう」
 納得はしていないだろうことは、その口ぶりからよくわかる。
 とにもかくにも、廃棄場へ調査へ赴いたノリアは、そこで何かに襲われて目の前の青白髪の女性に助けられたというわけだ。
「名前の無い島で会ったわね。貴女も財宝を探しに来たの?」
「……財宝?」
「あ、やべ。財宝のことは知らなかったのね」
 不味いことを口走ったかもしれない。
 そう思って、青白髪の女性は慌てて口を手で塞ぐ。
 しかし、ノリアはしっかりと「財宝」という単語を聞いた。
 じぃ、と無言のままに女性を見つめ……その圧力に耐えかねたのか、青髪の女は仕方ないという風に事情を語って聞かせたのであった。

 女性の名前はジェーン・ドゥというそうだ。
 彼女は自分をトレジャーハンターだと名乗ったが、きっとそれは嘘だろう。
 “名前の無い島”で連れていた連中を見るに、ギャングか何かの一員か。ともすると幹部クラスかも知れない。
 ジェーンは“名前の無い島”から、金貨の詰まった宝箱を回収していた。
 その中にロッソの地図と、古い日記を見つけたそうだ。
「曰く、財産の大部分を1番ドックの金庫に納めているのだそうよ。まだ回収されていないのなら貰ってしまおうかと思って。私って貯金が趣味なの」
「貯金……ですの」
「そう。貯金。でも、肝心の一番ドックにはアレがいてね。調査も出来ないでいたのだけれど……そこに貴女が現れたってわけ」
 ほら、とジェーンが差し出したのは数枚の金貨だ。
 “アレ”にノリアが襲われている間に、ジェーンは少しだけ廃棄場の調査を進めたらしい。
 そうして手に入れたのが、数枚の金貨というわけだ。
「これ、きっともっと沢山あるわ。ねぇ、手を組みましょう。貴女が囮、私が調査。どう?」
「……私、また焼かれなくてはいけませんの? というか、アレって?」
「アレって言うのは、廃棄場を守っている赤鉄の船乗りたちよ。【紅焔】に【必殺】【飛】の効果が付いた熱線に【業炎】の剣。それが全部で4体ほど」
 おそらく、伝説の船大工たちが遺していったものだろう。
 それがいるせいで、1番ドックは廃棄場になったのだろう。
 何しろノリアのように近づく者がいれば、それが船だろうと人だろうと、見境なしに襲うのだから。
「もしかしたら壊れているのかもしれないわね。それに、探せば財宝だけでなく“機械仕掛けの船乗り”や“ロッソの軍艦”の設計図なんかも見つかるかも」
 それを探しに行きましょう。
 ジェーンはそう言っているが、どうにも信用できる相手でないことは確かだ。
「……闇雲に廃棄場を探し回るのは得策ではないですの」
「そこはそれ。廃棄場のそこかしこに案内板があるから。それを辿っていけばきっと管理室に辿り着くわ」
 大事なものを納めているのなら、それはきっとそこにある。
 なるほど、確かに道理だろう。
「分かりました。その話、乗りますの。でも、少し時間をくださいな」
 その間に仲間たちを島へ呼び寄せるから。
 最後の一言だけは口にしないまま、ノリアとジェーンは手を組んだ。

GMコメント

こちらの依頼は『昨日まで無かった島。或いは、あるかもしれない宝を探して…。』のアフターアクションシナリオとなります。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/7588

●ミッション
「rosso.No.1dock」から、財宝or船の設計図or機械仕掛けの船乗りの設計図、のいずれかを持ち帰る。

●ターゲット
・機械仕掛けの船乗り×4
右手に小型のカルバリン砲、左手には熱伝導率のいいカトラスを備えた機械仕掛けの船乗り。
大きさは2メートルと少し。
全体としては細身。しかし、船の操舵には力が必要なのだろう。見かけの割に怪力だ。
元は1番ドックを守るために配置されていたものらしいが、壊れかけているのか近づく者を闇雲に襲う。

熱線砲:神遠貫に大ダメージ、紅焔、必殺、飛
 カルバリン砲より放つ熱線。

熱線剣:物近単に中ダメージ、業炎
 赤熱するカトラスによる斬撃。


・ジェーン・ドゥ
青と白の2色が混ざり合う特徴的な髪色をした女性。
クラゲの海種。
また、スーツ姿の男たちに指示を出している姿も目撃されている。
シンプルながらも仕立ての良いサマースーツに身を包んでいる。
貯金が趣味のトレジャーハンターらしい。名前も仕事も、きっと全部嘘っぱちだ。
※現時点では協力関係にあるが、ノリアの直観では今一つ信用しきれないとのこと。

クラゲスパイラル:神中範に中ダメージ、致死毒、麻痺、窒息、連
 彼女の髪はクラゲでいうところの触手に相当するらしい。


●フィールド
造船島“ロッソ”
かつて伝説の船大工たちが興した島。
現在も造船は島のメインの産業として成立している。
島の外周には2番から8番までの7つのドックと、1つの廃棄場がある。
今回向かうのは廃棄場。遥か昔は1番ドックだったであろう場所。
廃棄場には膨大な量の船の残骸が転がっており、足場や視界は非常に悪い。
また、一部は海水に浸っている。
所々に案内板があるらしく、それを辿って行けば管理室へ辿り着けるらしい。
廃棄場への侵入経路は2つ。
陸地から入るか、海から入るか。


●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 造船島“ロッソ”。或いは、伝説の遺物…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月19日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
防戦巧者
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)
ツクヨミ
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ヲルト・アドバライト(p3p008506)
パーフェクト・オーダー

リプレイ

●誤算
 造船島“ロッソ”
 海洋のとある海域にある、その名の通りに造船の盛んな小さな島だ。
 島で出土する上質な赤鉄と、かつて島にいた伝説の船大工たちが遺した技術。
 その2つが揃ってはじめて“ロッソ”の船は、荒ぶる波を超え、猛る嵐を突き進む頑強さと速さを手に入れる。
 船の存在意義はたった1つだけ。
 乗り手を島から次の島へと、無事に運び届けることにある。
 そう言う意味では、ロッソの船ほど“船らしい”ものはこの世に存在しないだろう。
「お前を港から次の港へ運んでやろう」
 たった1つの約束が違えられては、船は船として成立しない。
 
 ロッソの外周には、2~8の合計7つのドッグがあった。
 それから1つの廃棄場。
 船の墓場とも呼ばれるその場所は、きっとかつては「№1」を冠するドッグだったのだろう。その証拠に、廃棄場にはかつて伝説の船大工たちが作成した機械仕掛けの船乗りが今も徘徊している。
 体長はおよそ2メートル。
 右手に小型のカルバリン砲、左手には熱伝導率のいいカトラスを備えた骸骨のような体の機械だ。しかし、見かけの割に力は強く、そして強靭である。
 船の製造、そして操舵には力が必要ということだ。
 その頭部が、ジョリーロジャーのような髑髏に似ているのは、製作者たちの遊び心の現れだろうか。
 そんな機会の船乗りが4体。
 人のいない廃棄場を、今も彷徨い歩いているのだ。
 遥か昔に主たちより下された、番人としての役割を、完全に壊れるその日までそれらは果たし続けるだろう。

「それで、何で私まで一緒に乗り込まなきゃなんないのかしら? そっちが囮、私が捜索。そういう役割分担でいいじゃない?」
 くい、と眼鏡を押し上げてジェーン・ドゥは憤る。
 先ほどから落ち着きなく眼鏡を何度も触っている辺り、相当に苛立ちが募っているのだろう。
「ぶははは! ここにいる面子は耐久に優れるのばっかでなぁ。耐久性においては無類の強さを誇るんだがいかんせん火力が足りねぇ」
「熱線は相当な火力でしたの。ジェーンさんひとりで大丈夫か……心配ですの」
 廃棄場の片隅。
 半径したガレオン船の影に隠れた『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)、そして『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)がジェーンを宥めるように言う。
 2人の言っていることは、確かに事実なのだろう。
 しかし、本心は他にある。
 ジェーンは視線を背後へ向けた。そこにいるのは『金色の首領』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)と『太陽の翼』カイト・シャルラハ(p3p000684)だ。
 ノリアもそうだが、エクスマリアとカイトとも今回が初対面というわけではない。以前、別の島で遭った際に、見つけた金貨の山をジェーンは持ち去っている。そのことを2人が覚えていないとは思えなかった。
 つまるところ、一塊となっての行動には、抜け駆け阻止や監視の意味もあるのだろう。
「よぉ、久しぶりだな? や、別にしょっぴくつもりはねぇぞ? トレジャーハンターは禁止行為じゃないからな。仲良くしていこうじゃねぇか、な?」
「ジェーン・ドゥ。これで3度目、か。存外、縁があるものだ、な? 貯金より、宝探しが趣味にも思える、が」
 海を背にしてカイトとマリアが言葉を紡ぐ。
 妙にフレンドリーな対応だが、顔を合わせるのも2度目、3度目ともなれば、なるほど頷ける態度であった。
「ねぇ、火力が足りないってことは無いでしょう? そっちの鳥……名前が知れているわ」
それに、とジェーンは次に視線を『狐です』長月・イナリ(p3p008096)へと移す。
 宝探しというシチュエーションを楽しんでいるのか、イナリは絶賛、柔軟中だ。戦闘の準備は整っていると言っても過言ではないだろう。
 その身のこなしや、危険を前にした現状での落ち着き様から、ある程度以上に修羅場慣れしていることを、ジェーンは正しく理解していた。
 さらに言うなら『幻想の勇者』ヲルト・アドバライト(p3p008506)の眼差し。
 表面上は自然体を装っていても、内心の警戒までは早々隠し切れない。
 試しにジェーンが、髪をひと房、ゆらりと揺らせばヲルトは即座に身構える。
「……食えない連中ね」
 そう言ってジェーンは、先行していた『ツクヨミ』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)と『不屈の障壁』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)の背を見やる。
 ジェーンが動いた瞬間に、ツクヨミは一瞬、背後を気にした。衣擦れの僅かな音を聞きつけて、意識をジェーンへ向けたのだ。
 一方、ベークは身動きの1つもしなかった。
 ジェーンが不意に攻撃を仕掛けたところで、何ら障害にもなり得ないというように。
「本当、頼もしい連中ですこと」
 なんて。
 そう呟いて、ジェーンは一つ溜め息を零す。
 ノリアが呼びつけた7人は、戦力として上々だ。危険な機械の船乗り相手に渡り合うだけの実力は、きっと誰もが有している。
 問題があるとすれば1つだけ。
 ジェーンと彼らは協力関係にあるが、だからといって味方ではないということだ。

●造船島の片隅で
 ひょこひょこと、妙に軽い足取りで白い人影が進む。
 目鼻も口もない顔に、僅かな体毛も筋肉さえも見当たらぬ白くぬらりとした体。
 明らかなる異質の顕現。
 イナリの喚んだ式神だ。
 廃材や部品、破損した船体の転がる廃棄場を、それは軽快に歩く。
「あれは何?」
 ジェーンの問いに、イナリは一言「囮です」と答えを返す。
「……4体まとめてあいてにするのは厄介だもの。機械仕掛けの船乗りを1匹ずつおびき寄せるのがいいと思うの」
 そう告げて、イナリはそっと外へ顔を覗かせた。

 現在、一行が隠れているのはツクヨミの見つけた小屋だった。
 元は船の船室か何かだったのだろう。
 小屋の中には、海図を描くための机と備え付けのコンパス、それから伝声管が残っていた。
「来る、ぞ。準備はいい、か?」
 伝声管に耳を近づけ、エクスマリアはそう問うた。
 視線の先には、室内の備品を物色していたジェーンの姿。彼女は頬に冷や汗を垂らし、壁際へと身を寄せた。
「本当に大丈夫なんでしょうね? 劣勢だと思ったら、すぐに離脱するわよ?」
「問題ない。敵の火力も相当らしいが、マリアの目の黒い……もとい、青いうちは、抜かせないし、倒れさせない」
「私の安全は保障されているのよね?」
「干からびたノリアを拾って貰った、借りはある。心は配ろう」
 そう言って、エクスマリアが刀を抜く。
 直後、ざわりとエクスマリアの小金の原にも似た髪が、波打つように揺らめいた。
 次いで、轟音。
 地面の震える衝撃と、イナリの短い悲鳴が響く。

 船乗りの放った熱線は、船の残骸ごと式神を焼き切った。
 狙いを定めた攻撃は、どうやら苦手なのだろう。式神1体を狙い撃つには明らかに過剰な威力を誇る砲撃だ。
 地面を抉り、船の残骸に火をつけて、一行の潜伏していた小屋の壁を焼き切った。
 壁面にいたイナリの腕を、熱線が掠めていったのだろう。
 肉の焼ける臭いが辺りに漂っている。

 濛々と漂う粉塵の中、ゆっくりと進む巨体が1つ。
 機械仕掛けの船乗りが、それに気づいたのと、ゴリョウが拳を振り抜いたのはほぼ同時。
 強いて言うなら、船乗りの方が僅かに動きがぎこちない。どうやら関節部などが、錆び付き始めているようだ。
 赤熱するカトラスが、籠手に覆われたゴリョウの腕を斬りつける。
「全滅させて安心安全にたっぷり調査しようぜ! なぁに熱線一本たりともそちらには向かわせねぇさ!」
 腕で刃を防いだままに、ゴリョウは強引に前進を開始。
 船乗りはその場で踏みとどまると、右腕に装備したカルバリン砲を持ち上げた。
 けれど、しかし……。
「撃たせねぇ! 焼き鳥はゴメンだしな!」
 突風を纏ったカイトが急接近し、三叉の槍を肘関節へと突き刺した。
 飛翔の勢いを乗せた初撃。
 突き刺さった槍を抉るように捻って、もう1撃。
 砕けた肘関節を、引き裂くように横へ薙ぎ斬り、ついでとばかりに砲身を足で蹴りつける。
 ミシ、と軋んだ音がして、船乗りの肘から火花が散った。
 腕の破損によりカルバリン砲を持ち上げることは出来なくなった。メインの兵装を使えなければ、カトラス程度はゴリョウ1人で止められる。
「今、だ。火力を全力で叩き込む」
「くるぞ 、波が」
 エクスマリアの魔弾が飛んだ。
 次いで、荒ぶる大波が船乗りの身体を飲み込んだ。
 荒れ狂う大波が、辺りに散らばる瓦礫や木材を巻き上げる。そのうち1つ……穴の開いたボートの上に、エクスマリアはひょいと飛び乗る。
 ヲルトの波に乗るようにして、エクスマリアが船乗りへと接近。
 すれ違いざまに刀を一閃させると、船乗りの首を断ち斬った。

 再び、大地が激しく揺れた。
 倒壊しそうになる廃材の山を結界で保護しながら、カイトは慌てて周囲を見回す。
 鷹の目が捉えたのは、遠くからこちらを狙う2体の船乗りの姿であった。どうやら戦闘の物音を察知し、こちらへ近づいて来たらしい。
 この分では、姿の見えないもう1体もきっとこちらへ向かって来ているはずだろう。
「今ので式神が2体ともやられたわ!」
「2体ですか……生存能力や防御能力に寄ったメンバーが多いですし、少しの間なら抑え込めそうですが」
 イナリが警戒を促すと、ベークは仲間を庇うように前へ出た。
 そうしながらも、ベークは視線を巡らせて物陰に隠れたジェーンを一瞥。何かしら、こそこそと作業をしているようだ。
「僕の知人は変な善人でしたが……この人は、うーん。どうなんでしょうかね?」
「はっきり言うとアイツは信用できない。下手に誤魔化すより言ってしまった方が早くないか?」
 ベークの零した呟きに、ヲルトがひそりと言葉を被せた。
 戦闘の最中、ジェーンは何かを見つけたらしい。そして、今は戦闘のどさくさにまぎれ、1人でコソコソと動いている。
 無駄なことに時間を使うタイプの人間ではないだろう。
 だとすれば、ジェーンの行動には何か意味があるはずだ。
「でしたらわたしが行きますの。ドックのなかの壁くらいなら、わたしは見とおせますし なかを泳げますから」
 接近して来る2体の船乗りは、ゴリョウとエクスマリア、そしてツクヨミが抑えている。
 一瞬、躊躇うような素振りを見せたノリアは、しかし結局、ジェーンを追いかけることにした。

 狭い水路に身を潜らせて、ジェーンは1人、先を目指した。
 頭上で聞こえる破壊音から、現在位置を把握する。
 水路に潜る直前に、ジェーンが発見したのは1枚のプレートだった。プレートには矢印と「rosso.No.1dock」の文字が刻まれていた。矢印の示す先に、おそらくジェーンたちの目的地があるのだろう。
「ちょうどいい感じに、進路上に機械の船乗りが出てくれて助かったわ。今のうちに先行して……」
 と、そこでジェーンは言葉を止めた。
 視線を僅かに上へ向けたその瞬間、水路の天井部分をすり抜け顔を覗かせたノリアと視線が交差したのだ。
「っ……!?」
「わたしたちがあちらにかかりきりだからといって、かくれてこそこそできるとはおおもいになりませんように」

 熱線に焼かれ、ツクヨミが地面に倒れ伏す。
 蒸発した海水が、霧となって周囲一帯に立ち込めた。
 消耗したゴリョウが、一時的に後退を図った直後の出来事である。壊れかけとはいえ、防衛のために造られた機械だ。僅かな隙を見逃すほどに甘い相手ではないということだ。
「ぐ……抜かりました。どうやら距離を取ると、熱線を撃って来る様子」
 全身を焦がしたツクヨミが、そう呟いた、その直後……。
 撃ち出された2度目の熱線が、ツクヨミの意識を刈り取った。

 倒れ伏したツクヨミへ、イナリが肩を貸して立たせる。
 1度は戦闘不能となったツクヨミだが【パンドラ】を消費することで、どうにか意識を繋いでいた。
 しかし、体力が少ないことに違いは無い。
「……少しでも時間稼ぎになればいいけど」
「1体だけでも、引き付けられれば上出来だわ!」
 ツクヨミが、離れた位置に自身の幻影を作り出す。
 それを確認したイナリは、ツクヨミを引き摺るようにして瓦礫の影へと跳び込んだ。

 熱戦を浴び、カトラスで抉られ、それでもベークは立っていた。
 否、立っているというのは正しい表現ではない。
「うーん、この手の機械は食欲がなくていいですよね。ないですよね?」
 何度地面を転がされ、刃で深く抉られても、すぐに再生し起き上がる。惜しむらくは、そんな不可思議なたい焼きの様子を疑問に感じるだけの機能が、船乗りに備わっていなかったことか。
「さて、向こうは片付きました。後はこっちの1体だけですね」
 ゴリョウが抑えていた1体は、カイトとエクスマリアの連携を受けダウンした。
 そして、残るもう1体は……。
「……遅いな。あくびが出る」
 腹部に裂傷、頬から肩には熱線による大きな火傷。
 相応のダメージを受けながらも、ヲルトの技はここ一番の冴えを見せた。
 ごう、と地面を激しく揺らし。
 湧き上がった大波が、渦と化して機械仕掛けの船乗りを空高くへと打ち上げた。

●予定調和の不協和音
 イナリの喚んだ式神が、カトラスに斬られ霧散する。
 機械仕掛けの船乗り……その最後の1体へゴリョウとベークが同時に向かった。
 振り上げられたカトラスが、ベークの胴を貫いた。
 たい焼き姿のまま、ベークはカトラスを掴んで止める。
 ならば、と掲げられたカルバリン砲。
 しかし、それはゴリョウの拳によって叩き落される。
「残念ながら、僕を斬っても刺身にはなりませんよ」
「今だ! ジェーンも攻撃に参加してくれ!」
 カトラスと砲を封じられ、船乗りは身動きが取れない。
 その隙をついて、ジェーンの触手が船乗りの膝に巻き付いた。ギシ、と軋んだ音をたて、関節部分に罅が走る。
 脚部は破砕寸前だ。
「これ、本当に私は狙われないんでしょうね?」
「平気ですの。必要とあれば、海の中へ逃げますの。海種の特権ですの」
 海面から顔だけを覗かせた姿勢で、ジェーンとノリアが言葉を交わす。
 一度は先行したジェーンだが、ノリアによって戦場に連れ戻されたのだ。その際、ジェーンの見つけた案内板についても共有を受けた。
 機械仕掛けの船乗りを倒し、少し進んだ先がどうやら目的地であるらしい。

 両腕と脚を押さえられ、しかし機械仕掛けの船乗りは構うことなく動き続けた。
 その肩を、イナリの爪が深く抉った。
 連続して放たれる斬撃が、硬い装甲を少しずつだが削り、剝がす。
 そうして顕わになった内部の回路へ向けて、エクスマリアが刀を突き刺す。
 激しく火花を撒き散らし、船乗りの腕から力が抜けた。
 そうして、がら空きになった頭部へ向けて……。
 一閃。
 カイトの槍が深く突き刺さる。

 瓦礫に埋もれた家屋の壁には「rosso.No.1dock」の文字が確かに記されていた。
 海水に侵食された室内には、朽ちかけた本や設計図らしき紙面が大量に保管されている。
「崩落させようとか思うなよ? それと、ちゃんと情報はくれ! じゃないと囮になるメリットが無いからな。当然仁義は守ってくれるよな?」
 柱へと手をかけたジェーンへ、カイトが言葉を投げかける。
 これ見よがしに舌打ちを零したジェーンは、柱から手を離して壁面へと向かった。
「書棚はあるけど、湿気ていてページは捲れなさそうね」
「壁にかかっている設計図も、インクが滲んでいるわ。書類は全滅と考えても良さそうね」
 室内をぐるりと一周し、イナリとジェーンは言葉を交わす。
 それから2人は、壁に埋め込まれている小さな金庫へと視線を移した。
「金庫の中身は分配、だな」
 そう言ったのはエクスマリアだ。
 彼女は髪をうねらせながら、本の表紙や設計図をじぃと凝視し続けている。

 金庫の中には、古い金貨や紙幣があった。
 大金とは言えない額だが、歴史的な価値も加味すれば相応の金額になるだろう。
 そのうち半分をジェーンが、残る半分はイレギュラーズが確保する。
「それじゃ、お疲れ様でした。またどこかで遭ったら、その時はどうぞよろしくね」
 なんて。
 苦々しい表情で立ち去っていくジェーンの背中を、ノリアは微笑を浮かべて見送る。
 ふわり、とサフランの香りが鼻腔を擽った。
 ゴリョウの作るパエリアが、もうじき完成するようだ。
「意趣返し、成功ですの」
 そう呟いて、ノリアは視線をエクスマリアへと向ける。
 髪を操り「V」のサインを出しながら、エクスマリアは小さく1度、頷いた。
「設計図は、記憶した。書き起こすのに時間はかかるだろうが、な」
 戦果は上々。
 エクスマリアは、自分の頭を指で叩いてくっくと肩を震わせる。

成否

成功

MVP

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚

状態異常

ヲルト・アドバライト(p3p008506)[重傷]
パーフェクト・オーダー

あとがき

お疲れ様です。
ジェーンと協力し、無事に古い金貨と船の設計図を手に入れました。
ジェーンからの心象はあまり良くありませんが、任務は達成されました。
依頼は成功となります。

この度はご参加いただきありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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