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シナリオ詳細

<Celeste et>Calendula

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「凄いわよね。空の上に誰かが住んでいて……。
 何だか御伽噺みたいで、とーっても凄い! 覇竜の外ってこんなに凄いのね!」
 鉄帝国上空――突如として姿を現した『伝説の浮遊島』アーカーシュ。
 分厚い積乱雲に包まれている、古の魔王の居城であった。そんな伝説が残されたこの地に降りたって珱・琉珂 (p3n000246)は感激したようにぴょん、と跳ねた。
「鉄帝国としても実在していたことに驚くわ。
 ……しかも、グライダーを作って地上を目指した子供達が齎した情報だったなんて」
 驚愕しながらもアーカーシュに存在する小さな村『レリッカ』に降り立ったエリアス・ティーネ・マイセンは周囲を見回した。
 鉄帝国の南部に存在する町ノイスハウゼンからエリアス始めとする鉄帝国軍人や外交官がアーカーシュに向かったのはこの地の調査を目的にしてのことだ。
 快くイレギュラーズを受け入れてくれた『レリッカ』に感謝は尽きないが、そもそも彼らにとっても周辺地理は安全が確立されたものではないらしい。
「何処から行くの? ワイバーンに乗って遊びに行く?」
「……そうね、一先ずは地上を探索するのもいいかもしれないわ」
 外交官であるエリアスも『鉄帝国の外』に当たったこの地を細かに調査し、国家の役に立てたいと考えていたのだろう。
 そんな彼女に同行を申し出る琉珂は『優しそうなお姉さんが調査するからついて行く!』と言った調子だ。
 つまり、この里長はまだまだ慣れぬ外を探索したい気持ちで一杯なのである。
「そういえば、遺跡とかもあるのよね……。
 どんなものがあるかしら? 私、綺麗なお花を見付けたいわ。イレギュラーズの誰かが名前を付けて、それを大切に育てるの」
「危険なものかも知れないけれど」
「危険だったら其れを武器にすれば良いだけだもの!」
 興奮した様子で裁ち鋏を担ぎ上げる琉珂にエリアスはさてどうしたものだろうかと肩を竦めた。
 自然豊かなアーカーシュ。頬を撫でる初夏の風は鉄帝国の上空である事も相まってやや冷たい。
 歓迎されていることは嬉しいが、何処を見回しても不思議な光景ばかりなのである。
「ねえ、エリアスさん。あれってなにかしら?」
 指差す琉珂へと釣られて顔を上げれば、蝙蝠のような翼をした良く分からぬ『ひとがた』が飛来していくのが見えた。
「……さあ? 分からないけれど、この地は分からないものばかりだから気をつけて行きましょうね」
 まるで母親のように注意するエリアスは、娘の姿が何処かにありはしないかと探すようにレリッカの村へと調査随行を希望するイレギュラーズの姿を眺め回した。


 向かうのは遺跡であると言う。朽ちているが、嘗て何らかの精霊が存在した可能性を感じさせる。
 地下に続く部分が存在しているようだが、そこから先は上からは確認は出来ず降りるしかなさそうである。
「この向こうに行って見て、遺跡の中に何か花が咲いていたりしないかしら」
「……確かに、こういう場所にひっそりと花が咲いている可能性はあるわね。それよりも……」
 覗き込んだ琉珂に「先行しないで」と嘆息するエリアスは気付いたように顔を上げる。
 美しい翅を持つ蝶々だ。だが、それはテングハナの上から飛び去った後、直ぐに枯らしてしまう。
 小さな蝶々は群れを成し、複数が身を寄せ合って巨大な蝶々を作り上げる。
「綺麗、だけど……綺麗だけど危険な気がするわ!
 私、知っているの。群れる生物って言うのは自分より大きい生き物を威嚇するか、捕食するかのどっちかだって!」
 覇竜領域で生活しているからこそ琉珂はそうしたモンスターの機微に詳しいのだと叫んだ。
 先程小さな花を枯らしたのも捕食の一種だとすれば生気を吸い込む類いであることも推測される。
「もう此方を餌だと認識したようね」
「戦うしかないみたいなので! 戦いましょう!」
 折角綺麗な蝶なのにと憤慨する琉珂にエリアスはああした存在が無数に飛び交うからこそアーカーシュとは未知で危険なのだと改めて実感するのであった。
 その背後に見える遺跡はあの蝶達の根城か――さて、調査に赴くにも、この蝶を蹴散らさねばならなさそうだ。

GMコメント

 琉珂曰く「覇竜の外は凄いのね!」です。

●成功条件
 群雄蝶の撃破
(遺跡内部探索は成功条件に含みません)

●群雄蝶(カレンデュラ)
 巨大な姿を象っている群れが2つ存在します。
 キンセンカのような鮮やかな色合いをした小さな蝶々です。どうやらそれらは数十匹で群れを成し巨大な蝶の姿を作り上げて自身等より大きな獲物を狩るようです。
 生物の生気を喰らうことのみが判明していますが、1匹1匹はそれ程の敵ではなさそうです。問題はとても数が多いこと。
 獲物と認識した存在を追いかけ回します。
 数十匹が一斉に襲いかかってくるので、出来るだけ的として絞られにくいように対策した方が良さそうですね。

●フィールド
 遺跡と思わしきフィールド出る。群雄蝶の住処となっていました。
 地下に下る階段がありますが、どうやらそこに行くためには群雄蝶を撃破しなくてはなりません。
 アーカーシュ木イチゴなどが実っているほか、鼠が出入りしている様子などが外からは確認出来ます。
 この先に何か敵対勢力が存在するのか、どうなっているのかは分かりません。
 精霊の気配などを感じさせ、火の精霊を利用したコンロの遺物『暁の火』と類似したものが転がっているのは確かです。

●同行者
 ・エリアス・ティーネ・マイセン
 エルス・ティーネ(p3p007325)さんの生き別れ状態だったお母さん。旅人。
 エリアス側からは可愛い娘であると認識していますがあまりその認識は表に出していないようです。
 ちなみに、エルスさんが現在どのように認識しているかは分かりません。
 鉄帝国の外交官を務めており元ラド・バウファイター。外見こそ若々しいですが、結構なご年齢です。
 戦闘ではサポート役に回ります。いざという時の退路の確保を行ってくれます。

 ・珱・琉珂
 亜竜集落フリアノンの里長。天真爛漫系猪突猛進ガール。竜覇は火。支援行動及び多少の攻撃を行います。獲物は巨大な裁ち鋏。
 好奇心で突き進みがちな子なので、其れなりに制御してあげてください。

●特殊ルール『新発見命名権』
 浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
 発見者には『命名権』があたえられます。
  ※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
 特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
  ※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
 命名権は放棄してもかまいません。
  ※放棄した場合には、何も起りません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Celeste et>Calendula完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
天之空・ミーナ(p3p005003)
紅矢の守護者
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
エルス・ティーネ(p3p007325)
砂国からの使者
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎
ウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)
ドラゴンライダー
百合草 瑠々(p3p010340)
偲雪の守人

リプレイ


 ――母であることを先行しすぎると久方振り過ぎた娘が可愛すぎるので己を律しようと思うの。

 エリアス・ティーネ・マイセンの宣言に珱・琉珂 (p3n000246)が「分かった」と返していたのは実は秘密の話ではあるわけだが。
 アーカーシュの遺跡を前にして同行を申し出てくれたイレギュラーズを手をぶんぶんと振って迎え入れる琉珂へ『ドラゴンライダー』ウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)は手を振り返した。
「ウテナさん! 皆~! 覇竜の外ってこんなに凄いのね!」
「ええ、覇竜の外は凄いんですよっ!
 といってもうちは深緑と覇竜以外はあんまり行ったことないんですが。それに今回は初の鉄帝、の上。分からないことが沢山です。これはワクワクハーモニアですねっ」
 にんまりと笑ったウテナとハイテンション里長琉珂の背後ではエリアスが「良く来てくれたわね」と今日は鉄帝国の外交官として任に赴いたらしい。
「さてと……こういう未開の地ってのは難しいな。
 いつものブーツで行っていいのか? こういう所って専門の冒険装備とか必要そうなもんだが」
 探索隊としてイレギュラーズを迎え入れてくれたエリアスに『血反吐塗れのプライド』百合草 瑠々(p3p010340)は問いかける。ある程度の装備は必要であれば鉄帝国軍が用意した品を使用できるそうだ。
「……へえ、これを使っても良いと。
 ま、いいか。新種のもんなんか見つけて、歴史に名を遺すってのも悪かない」
「それで、向かうべき遺跡には群雄蝶が舞い踊っておりますのよね?
 ふふ……美しい胡蝶も、こうもわらわらと群れれば風雅とは程遠く、寧ろ忌避感が湧きますわね。生命を吸うとなれば、尚の事」
 姿形は前情報やアーカーシュアーカイブの類似例を見る限りならば美しいはずではあった。だが、無数に集い巨大なる蝶を象らんとするという『群雄蝶(カレンデュラ)』は情報を文字列としてなぞるだけでも『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)に忌避感を植付けたのだろう。
「エルスのお母上殿か。お会いするのはずいぶん久しぶりだね。空の上で会うとは思わなかったけど、お元気そうで良かった良かった」
 穏やかに声を掛けた『奈落の虹』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)にエリアスは「ご活躍はかねがね」とスマイルを作る。
 ウィリアムはふと、彼女が『青鋭の刃』エルス・ティーネ(p3p007325)を見ようとしていないことに気付いた。
(なんだかなんとも言えぬ空気のお二人。つい先日も、親子の対面に同席したような、ないような。
 ……母にあたるがいるということは、果たしてどんな気分なのでしょうか)
 首を捻った『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)にエリアスは視線の意味に気付いたように罰が悪そうに肩を竦めた。
「ええと、エルス。その……久しぶりね」
「はい。母様。任務地では母様とお呼びしない方が宜しいですか?」
 永く別たれていた二人であるが故に、その距離感はまだまだぎこちない。二人きりならば甘やかして可愛いエルスと頭を撫で繰り回しそうなエリアスも今日という日は「いいえ、母と呼んで構わないわ」と凜とした表情を崩さない。
「……まあ、うん。この歳(1000歳超え)したら親と素直に話しにくいってのはわからんでもないんだけどな。できるうちにしておかないと後悔するぜ、マジで」
 でもこの場合はどちらかと言えば母親側が緊張してるのか、と『黒花の希望』天之空・ミーナ(p3p005003)は外野から眺めて感じていた。
 母エリアスは娘エルスの身の上に起こった出来事を耳にして激しく後悔しただろう。彼女の背負った重責を母でありながらも何ら手出し出来なかったのだから。
「母様は強い方だと伺っているけれど、母様の力になりたいから……ええ、頑張りましょ!」
「と言うわけだ。とりあえず……目の前のヤバいやつを片付けるとしますかね」
 冒険の中で繋がる絆もあるだろうとエルスとエリアスを眺めてから宣言したミーナに遺跡を覗き込んだ『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は「まあまあ!」と仰け反った。
「凄まじい『蝶』としか言いようがありませんわね。ご覧下さいまし。
 一匹一匹は綺麗なのだけれど、こうして集まるとすごく威圧感がありますわね……」
「そうでしょ? さっき覗き込んだらエリアスさんに怒られちゃったんだもの」
 唇を尖らせる琉珂にヴァレーリヤは「仕方ありませんわ」と返そうとし――エリアスに首根っこを掴まれた。
「危ないわよ」
「ええ、そうですわね。探検に来た先でご飯にされてしまうだなんて笑えませんわ、戦いましょうっ!」


「琉珂も初めまして。人気がありすぎてそちらへはなかなか行けないから会えて嬉しいよ。楽しい探索になりますように。今回はどうぞよろしくね」
「やだ、里長だから皆構ってくれてるだけよ? ウィリアムさんも、皆も! 仲良くしてね」
 にっこりと笑う琉珂にウィリアムは頷いた。先走り掛ける琉珂の傍で「早速行きましょう琉珂さん!ㅤロスカ!」とウテナが宣言した刹那、琉珂は「ごー!」と走り出す。
「いけいけどんどんですっ!ㅤあっ琉珂さん行き過ぎないでっ!ㅤ先走ったらだめだめですよっ!!ㅤロスカもだめですよっ!ㅤめっ!」
 その様子を背後で眺めてから瑠々は「ウチらも行くか。琉珂も行き過ぎるなよ?」と声を掛けた。
「この先にある遺跡に……行く前にあの蝶からだね。分からない事が多いし、予想外の事にも対応出来るよう気を付けながら頑張ろうか」
「そうですわね。幾ら綺麗だと言えどもこの数は……何とも言い難いですもの」
 玉兎が目を伏せる。カレンデュラは鮮やかな金盞花の色彩をその身に纏い無数に集いながら巨大な蝶々を構築していた。
 正しく、小さな生き物が生き延びるための術を体現しているかのような姿である。一匹一匹ならば容易に潰されて仕舞うであろう蝶々は身を寄せ合い、出来うる限りの脅威から逃れて自身等よりも巨大な生き物を食らい尽くさんとしているのだろう。
「群はふたつ、数は無数。全て焼き払わない限り、気は抜けそうにありませんね」
 アッシュが僅かに姿勢を屈めた。銀の一振りは蒼穹の空で光を帯びている。遺跡内部に至るための階段より一気にその姿を現した群雄蝶に「勢いが良すぎますわね!?」とヴァレーリヤが目を剥いた。
「ええ。けれども、1つの巨体に見えようとも、本質は群体ですもの」
 天降り星より打たれた霊刀が光を帯びる。玉兎が纏う月気が一気に拡散し、広範囲に降り注ぐ蒼銀光を眺めやった後、ミーナは一気に前線へと魔術を放った。
 死神の大鎌を振るう事で霧散し、美しくも周囲を凍て付かせた霧氷。魔術を受けた群雄蝶の『統率』が僅かに乱れる。
「母様! 助太刀します、共に切り抜けましょう!」
「――ええ、ありがとう」
 下がっていて、と言い掛けた『母心』を飲み込んでからエリアスは前線へと飛び出すエルスの指輪が大鎌へと変化するその様子を眺める。
 揺らいだ髪に、その横顔。大きく、強くなったものだとラサで名を轟かせる娘の一撃を眺めた後、エリアスは玉兎を獲物と定めた群雄蝶をその双眸に映した。
「一方はそちらよ――もう一方は!」
「『こっち』だろ?」
 瑠々の唇が釣り上がる。真紅の旗が翻るは激戦の証。ばさりと揺らし、復讐心をその身に宿した乙女は死にたがりの身を前線へと躍らせた。
 クソッタレな人生に、お安くお涙頂戴不幸自慢を並べ立てれば『復讐』の心は躍る。
「琉珂は前に出すけど盾以上に前に出るなよ? こいつらはウチらで十分だ」
「あらっ、ふふ……私の出番はまだまだって事よね!? 了解!」
 頑張ってと手を振る琉珂を一瞥して瑠々が一度後方へと飛ぶ。飛び込んだのは『ロスカ』の焔の息吹。
「ロスカっ!ㅤそこです!ㅤ燃やしちゃってください!!」
 ロスカに騎乗しているウテナはびしりと指差して、くぁ~~と鳴き声を上げる相棒のブレスを指示し続ける。
「妖精さんはあっちをお願いします!」
 蝶々達の周囲へと飛び回る妖精達。一方の蝶々は玉兎を、もう一方は瑠々へと狙いを定める。
 群れを同時に狙い、張り巡らせた糸は蝶の翅を捥ぐ。群れの中心に存在した蝶が玉兎へと攻撃を仕掛けると、群れも同じように動く。
「アレを狙えばこの群れは霧散しそうですね」
「ええ。そろそろ終わりにさせてもらおうかしら、私を甘く見た事、後悔させてあげる!」
 小さいからこそ、巨大に見せる。その戦法は賢いものだと素直な称賛を贈りながらエルスは地を蹴った。
 食い千切るように現れた魔性が牙を剥く。群れの中心の蝶の翅が捥げ、燐光が当たりに散った。美しいカレンデュラ。
 霧散した群れが『別の群れ』へと合流する様子を眺め、サポートをしていたウィリアムは「瑠々、気をつけて」と声を掛ける。
「食い意地が張ってますこと!」
 唇を尖らせたヴァレーリヤは真っ直ぐに飛び込んだ。『どっせえーーーい!!!』と勢い良く薙ぎ払う。信仰は物理だと言わしめんばかりのヴァレーリヤの一撃に、群れの中心から漸く顔を出した群雄蝶が狙いを別に変化させようとし――
「狙いやすくなったな」
 ミーナが笑った。群れの中心の蝶々を失えば次のリーダーが誕生するまで蝶達は散り散りに飛び交う。
「こんなヤバい蝶がいるってことは、近くに姿が似てるだけで弱い蝶がいる可能性もあるんだよな。
 たまに自然界であるやつだよ。虎の威を借る狐じゃないけど、強いやつの姿を借りて天敵の目を誤魔化すやつ――けど、お前は『倒すべき相手』だ!」
 故に、その中心に向けて放つ最大火力が蝶の身をちりちりと焼いた。
「出来るだけ逃がさずに行きましょう!」
「ええ、母様!」
 器用に散った蝶々を攻撃するエリアスにエルスは大きく頷いた。「私も頑張るわねっ」と瑠々にうきうきと宣言する琉珂は蝶々を勢い良くぶん殴った。
「この子、食べ応えなさそうだもの」
「……食べますの?」
 丸い瞳を向けるヴァレーリヤにロスカが「くぁ~(美味しくなさそう)」と琉珂へと同意を示す。和やかな――それでも、相手は『割と危険な存在』ではあった――戦闘を行う一行の中でアッシュはミーナの言うとおり虎の威を借りたかのように群体に混ざっていた別の蝶々が逃げ果せて行く様を視認する。
「この群れは蝶々たちにとっては隠れ蓑だったのかも知れないね」
 逃げ果せた蝶々たちが成長し群雄蝶のように群れを作り襲い来る可能性はある。それはアーカーシュで生き抜く為の動物たちの知恵であったのかも知れないとウィリアムは焼け落ちて行く蝶々の姿をまじまじと眺めていた。
「先日は仲良く出来そうな動物と出会えましたが……今日はそうともいかないようですね」
 ひらひらと逃げ征く無数の蝶々の姿を一瞥し、危険生物が多いことをアッシュは改めて感じ入るのだった。
 幾許かの群雄蝶は逃しはしたが、大元を倒したことで『群れ』は撲滅できたと言えるだろう。遺跡地下へと探索に向かう事は出来そうだ。


「さあ、出発!」
 意気揚々と走り出そうとする琉珂の傍らで淡い光を放った玉兎は「お待ちください」と声を掛ける。
 地下へ繋がる遺跡は苔も茂り、古い時代のものであることが感じられた。
「焜炉の遺物と似たものが存在するという事は、嘗ては生活或いはそれに準ずる用に供されていた場所なのかしら?
 まあ仮に居住空間で罠など無いとしても、崩落などの危険はございますから相応に慎重に進むべきですわね。
 ……そういう訳ですから、琉珂様はどうか歩調を緩めてくださいまし。要人なのですし。見ていてハラハラしますわ」
 少しばかり姉の気持ちが分かった気がすると肩を竦める玉兎に琉珂は「はあい」とぴたりと足を止めた。
 彼女の気を引くような美しい花や綺麗な品があれば良いとは考えながら。うきうきとしている琉珂の様子は幼い子供の様だとヴァレーリヤは微笑ましいと目を細める。
「ふふ、そういえば琉珂、自分のお花が欲しいって言っていましたものね。
 私も一緒に探しましょう。こんなに広いのですもの。頑張って探せば、きっと見つかるはずでございますわっ!」
 ヴァレーリヤは何か見つかれば良いですけれど、と周囲をきょろりと見回した。
「琉珂にピッタリなお花が見つかるといいですわね。情熱的で真っ直ぐに咲いている、そんなお花」
「あるかしら? ヴァレーリヤさんにぴったりな花の方が多そうだわ!」
 どっせーい! と情熱的に敵を殴り飛ばしそうな大輪よ、と笑いかける琉珂に「一緒に探しましょうっ!」とヴァレーリヤは大きく頷いて。
「お土産の木の実を差し上げますゆえ、なにとぞー」
 ちゅうと鼠がアッシュに返事をする。玉兎の考え通り、中に存在する脅威なども内部の生物たちを通じて調査をしておけば良いだろう。
 琉珂はアッシュの傍で「鼠さんとお話しできるのねっ」と興味津々である。
「動物たちで細かな場所はフォローできそうね。後は何か新しいモノがあるかどうか……だけれども」
「もう既に色んな方が色んなものを見つけてるみたいなので新種がいるかはわかりませんが……
 でも母様と戦えた…お会い出来た事が何よりも嬉しいから……ふふ」
 エリアスは面食らったように傍らのエルスを見た。母として、心配しすぎてしまう彼女は『距離を少し置いていた』けれど――
「母様は心配性です。けれどラサは意外と平和なので心配には及びませんっ。勿論、この平和を持続させる為に活動は惜しみませんけれど!」
「けれど、女の子だもの。顔に傷なんかできたら……」
「それに――最近鉄帝の仕事も受けているんですよ? なんでだかわかります? ……ふふ、母様がいるからです。
 いつもこの依頼を受けたら母様を見かけないかなぁなんて……こっそり思ってしまってたんです。今日は沢山話せて嬉しいです!」
「……降参よ、エルス」
 肩を竦めるエリアスは『愛娘』との再会を喜ぶように微笑んだ。その様子に笑みを浮かべたウィリアムに「親子ってのは面倒だよな」とミーナが揶揄うように笑う。
(……しかし母親、か。エルスサンに取っちゃ、生き別れの大事な親だよな。
 ウチも混沌来てから思ったけど、ウチの親はどうしてんのかな……向こうじゃウチは神隠し扱いだろうな。ハ。笑えて来る)
 自身の家族を思えばこそ、瑠々は『家族と再会できる』事は中々にレアリティのケースだと改めて感じていた。
 エルスとエリアスが出会ったことだって、屹度奇跡のようなモノなのだ。
「皆さん、鼠さんがあっちは『危ない』って」
「確かに。精霊達も『あの辺りは誰も触れていない』と言っているね」
 嘗て、何かが暴れたような跡が残されている。アッシュが問うた鼠やウィリアムが声を掛けた精霊達は其れに怯えるように遺跡の中で生きてきたのだろう。
「何かが暴れたような後……精霊が暴走していたのかな? 此処には、それ以外の痕跡は残されていないけれど」
「かも、しれないです」
 こくりと頷いたアッシュのファミリアーはその辺りへと進み征くが――同時に、てこてこと歩いて行くのはワイバーンのロスカ。
「あとはもう勘で行きましょう。琉珂さんの勘はどうですかね。
 うちはぽんこつハーモニアなのですが。ロスカはどこ行きたいですか。どこかに炎とか感じませんか。
 新発見したいですねっ。がんばれ琉珂さん、がんばれロスカ」
 にんまりと笑ったウテナに琉珂は「深層に繋がっている道はいろんな場所にありそうよね。ロスカ、どう思う?」と周囲を見回しているロスカに問いかける。
「くぁ~~?」
 首を傾げたロスカがずん、と何かを踏み抜いた。草でも何でも良いから見ておきたいと適当に眺めていた瑠々は「おっ!?」と振り返る。
「ウチだってせめてなんか見つけてえし。いいじゃん。歴史に残るって。そんな死に方もしてえな――って思ったけど、何だ!?」
「くぁ~~」
 ロスカが何か仕掛けを踏み抜いたのだろうか。瑠々の足下が揺らぎ、慌てた様に身を立て直した彼女の靴先に何かがごつんとぶつかった。
「……あら? コレは綺麗な花……ですけれど」
「くぁ」
「それ、毒だってロスカが言ってますよ!」
 ヴァレーリヤが覗き込めば大輪の華を咲かせた『毒草』が其処には堂々と鎮座している。
 ミーナが「そいつは?」と問うたのは瑠々が覗き込んでいる『鉄』である。
「……ゴーレムでしょうか?」
「毒草だけじゃなさそうだな。このぶつかった鉄。何だと思ったが毒草さえ排除すりゃ使い物になりそうだ」
 瑠々が指差したそれは玉兎の言う通り、ゴーレムと呼ぶべき存在であっただろうか。
 修復を行う事が出来そうな代物である事を判断し、エリアスは「やったわね! エルス!」と喜び勇んで娘を抱き締める。
「――――!」
 あら、と顔を見合わせたアッシュとウィリアム。母子の楽しげな様子を眺められただけでも此度の探索は得るものがあったと報告書には付け加えておこうか。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした!
 エリアス母さんも『仕事』ではエルスさんにどう接すれば良いの……という顔をしていましたが今後は良き母として頑張る事でしょう。
 琉珂里長のアーカーシュ探索は、きっと、続く!

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