シナリオ詳細
再現性東京202X:アリス・イン・バニーランド
オープニング
●カジノ・ロワイヤル
人生きる場所欲望あり。
欲と人とは、斬っては切り離せぬもの。
射幸心、という言葉がある。大雑把に言ってしまえば、「ギャンブルで一発逆転したい」というような欲であるが、如何に欲にまみれた感情として否定したとしても、人の心の中にはそう言った欲求は確かに存在する。それを否定しても、仕方ない。
重要なのはどう付き合っていくかであるが――この場において、そんな説教じみた話は意味をなさない。
話を戻そう。欲望と、人の生活の関係である。
それを解消するために、人はあらゆる『誘惑』を生み出してきた。シンプルに言おう。前述したとおりの『ギャンブル』である。
一時の勝負に、自分のすべてを賭けて遊ぶ遊戯。踏み出せば、すべてを失うか、莫大なリターンを得るか。
人生を賭けるもの。それ見るもの笑うもの。すべてを養分にして肥える胴元。あらゆる『欲望』の渦巻く場所。
……希望ヶ浜とて、人の住む場所。そう言ったモノとは無縁ではない。
だが、希望ヶ浜の常識とシステムは、地球世界の日本のそれに準じている。パチンコはあってもカジノはないのだ。だが、この場所はどうか。牌ビルに囲まれた小さな階段をおり、薄汚れた扉を開けば、すぐにきらびやかなホールへと案内される。
スロット・バカラ・ポーカー・ブラックジャック。カジノと聞いて思い浮かべる、全てが存在するそこは、いわゆる違法カジノ店である。
――欲がある所、人が生きる所、夜妖の影あり。
このカジノとは、すなわち夜妖によって生み出された、欲望の狩場であるのだ――。
「というわけだ。皆には、このカジノに潜入してもらいたい」
と、そういうのは『練達の科学者』クロエ=クローズ(p3n000162)だ。潜入してもらいたい、とは言うものの、既にカジノ自体には潜入済みだ。ここは、まず入店前に通される部屋で、バーのような休憩所と、着替えるための化粧室が存在する。
「それはいいのですが」
ハンナ・フォン・ルーデル (p3p010234)が胡乱気な顔で言った。
「なぜ、そんな服を」
そういうのも無理はあるまい! 何故ならクロエは、いわゆるバニーガール服を着ているからだ! 発注しておいてよかったバニーガールイラスト!
「いや」
クロエは顔を真っ赤にして、続ける。
「ドレスコードらしいのだ」
「え?」
「ドレスコードなのだ! このカジノの! 男も女も!」
ざわ、と、イレギュラーズ達の間にどよめきが走った。いや、もしかしたら、よく聞かないできてしまった男性イレギュラーズが居たかもしれない! それはさておき、男も女もバニーガール?
「どういう事なんですか。正気ですか。騙そうとしてませんか」
「いや、事実なんだ! そこのお姉さんを見ろ!」
と、指さす先には、バニーガールが居た。
「そっちのお兄さんを見ろ!」
と、指さす先には、バニーボーイ(?)が居た。
「みろ、バニーだ」
「そんな……」
ハンナがうろたえた様子を見せた。
「この流れ、あれですか? まさか『欲望全開でギャンブルするバニーガールやボーイを見るのが好きだから、闇カジノを作ってバニーを凝視するタイプの夜妖』とか、そういう流れですか? 結構シリアスな導入をしたのに?」
「詳しいな、経験者か?」
そういうクロエに、ハンナはうんざりした顔をした。
「……どうして……」
「しかし、ここまで来てしまったからには仕方ないぞ。とにかく皆には、さっさと夜妖を見つけてていやーってしてもらわなければならない。
このカジノは、夜妖の魔力のようなもので維持されている。夜妖さえ倒してしまえば、全て幻のように消え去るだろう……」
それって、全部やっつけたら夜の街にバニー姿で放り出されるっていうオチになりません? とハンナは思ったが、黙っておいた。実際そういうリプレイ書かれたらいやだし。
「敵の夜妖は、このカジノ内で使われているコインに宿っているらしい」
「コイン、ですか」
「ああ。実際に金銭のやり取りをしているわけではないからな。敵の目的は、金銭ではなくバニー姿で欲望を発散させる姿……未成年でも、我々のような人間でもカジノにはいれる理由がそれだ」
「ですが、いくら店内だけに流通しているといっても、膨大なコインの中から探すのですか?」
「ああ。可能性の加護を持つキミたちなら、一目見ればそれだとわかるだろう。とにかく、あらゆる手段を利用して、コインを探すんだ。シンプルに、ギャンブルに勝つのもいい。バックヤードに潜入して、情報を仕入れてもいい……あ、楽しそうにするのを忘れるな。それが敵の目的だ。バレれば追い出される可能性がある」
「つまり――」
ハンナが肩を落とした。
「バニー姿をして楽しそうにカジノを徘徊しながら、ギャンブルしたり潜入したりして、コインに宿った夜妖を探していやーってする……?」
「そうだ」
はぁ、とハンナがため息をつく。
「……分かりました。受けてしまった以上、逃げられませんからね……」
「そういう事だ。一応、私も同行する。戦闘の役には立たんが、敵の注目を引き付ける位の手伝いはできるだろう」
クロエがそういうのへ、ハンナ、そしてイレギュラーズ達が頷く。
かくして、バニーたちの潜入ミッションが始まった!
- 再現性東京202X:アリス・イン・バニーランド完了
- GM名洗井落雲
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年05月20日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●ほんじつのバニーの皆さん
今日のバニーの皆さんは!
『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)
『ボクを知りませんか』ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)
『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)
『♡の瞳』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)
『華奢なる原石』フローラ・フローライト(p3p009875)
『天空の魔王』ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)
『うまうま』巫馬・峰風(p3p010411)
以上八名です! ありがとうございます!!!
●欲望と兎のダンス
「潜入任務と伺いましたが、バニーさん? ふぇえ……?」
と、もじもじと己が身を抱くようにするフローラ。ここは欲望渦巻く夜妖のテリトリー。具体的には『欲望全開でギャンブルするバニーガールやボーイを見るのが好きだから、闇カジノを作ってバニーを凝視するタイプの夜妖』のテリトリー。必然、ドレスコードはバニーになる。男も女も。
「うちのメイドも、何故かぴったりな衣装を既に用意してあったり、で……うぅ……」
なるほど、どうやらそのバニー衣装はカジノにあったものではなく、フローラのメイドが用意したものらしい……此処で地の文をジャックさせていただきます、お嬢様のメイドで御座います。今回の衣装テーマは『スニーキングバニー』。お嬢様のスタイル抜群な体を強調したバニースーツに、ギフト発動用の羽織り物を肩をはだけて着用。やはりバニーさんにおいては肩から胸元にかけての無防備な素肌のラインは捨てがたい物だと私は思うわけですよ。ええ。ちなみに絵姿も用意する予定ですので、皆様是非ご期待くださいませ……ありがとうメイドさん!
「変な所で意気投合しないで……!」
虚空に向けて声をあげるフローラ。一方、ふわふわふるもっこのロンパース風うさぎ部屋着を身を包んで抗議の声をあげるのは峰風である。
「これだってばにーだもん! まちがいじゃないもん!
……だめであるか?」
そう尋ねるのへ、虚空からぶぶー、という音がした。だめらしい。むぅ、と峰風が口をとがらせる。
「むむう……致し方ない、着るのであるぞ……そのばにーすーつとやらを!」
と、ごそごそと峰風が化粧室へと引っ込む。そんな姿を見ながら、ハンナはため息をついた。
「どうして……どうして……こんなことになってしまったんでしょう……」
他人事のように言うが、これはリクエストシナリオである……ハンナは自身の胸のあたりを見た。なだらかな丘が、そこにはある。
「自分でいうのもあれですが、こんな起伏も皆無の貧相な体のバニーを見て何が楽しいんでしょう……?」
めっちゃ楽しいですけど?
「めっちゃ楽しいですけど?」
と、バルガルがうんうんと頷きながら言った。
「先ほど洗井落雲……いえ、夜妖ですかね。とにかく夜妖も頷いたように、バニーとはすなわちそれだけで美しいのです。男も女も、それは変わりません……バニー、なんと甘美な響き。バニーが居れば戦争は治まりますが、しかしバニーを巡って新たな戦争が起きるのです。人は愚か……」
「大丈夫かバルガルさん、先ほどからプレイングにかかれていないセリフを言わされているようだが……」
そういうウェールも、またバニーである。首元には蝶ネクタイの代わりに、息子の目と同じ色の首輪をつけて、自分は息子のものだとアピールしている。えっ、子持ちパパ首輪バニー? ご褒美か?
「……中々業が深いのだな、夜妖は……」
ウェールが諦めた様子でいう。
「ええ、殊バニーに関して言えば、私と洗井落雲(ヨル)は無敵と言っていいでしょう」
バルガルが頷く。ちなみにバルガルもしっかりバニースーツを着ている。助かります。
「バニーになるって一体どんな……って思ったら本当になってますね?!」
と、驚いたように言うヴィクトール。その姿はもう最高に最高なので、ここ https://rev1.reversion.jp/illust/illust/64475 を見てください。見ましたね? ヴィクトールはこういう格好をしているんですよ……ふふふ……。
「なんかすごく気持ち悪い思念を感じたのですが……どうしても、バニーにならなければならないのですね……」
そうだよ。
「回りくどいですけどとりあえずバニーを見たいという執念はわかりました。いやわかりたくないですが」
シフォリィが諦めた様子でそう言った。シフォリィは、今回はディーラースタイルのバニーである。ディーラー風のジャケットにシャツ、タイトスカートにうさ耳をつけ、胸元をはだけたその姿は、なるほど、ノーマルとは違う、色気を感じさせるバニースタイルだ。流石『性癖の総合商社』シフォリィ・シリア・アルテロンドである。バニーなどはもう何年も前に経験している、ノーマルなバニーなんかじゃ心は躍らないよ……そう言わんばかりのスタイルだ。え、『性癖の総合商社』って称号無いの? 今回配布しておきますね。
「……何かひどい事を言われたような気がしますが、しかしこうなっては仕方ありません。ええ、私はこういうのには慣れていますから。
こういうのに巻き込まれた場合は、素直に従い、さっさと終わらせる。これにつきます」
「ま、でも、夜妖のこじれた性癖も、一周回ってかわいく思えてきたわよ?」
ふふ、と妖艶に笑うノア。その姿はクラシックなバニースタイルだ……いや、もう描写する必要はない、とりあえずイラスト一覧を見ろ、具体的には https://rev1.reversion.jp/illust/illust/63333 を見ろ、見たな? 見たよな? 君ももう友達だ。ありがとう。
「ひとまず、なにをするにもここではコインが必要。ついでに、皆は欲望でギラギラの目……となれば、まずはコインを稼ぐところから、かしら?」
ぺろり、と唇を舐めるノア。一体これから何が始まるんだ……。
「よーし、なら出発である!」
ばーん、と化粧室の扉を開けて、峰風が現れる。シンプルなバニースーツ。その胸元をぺちぺち叩きつつ、
「胸元がすかすかでフィwーバーwwwしてしまいそうなのであるが?
ポロリったらりばー倫にタイーホされてしまうのであろ?」
そうだね、でもその平らなお胸も素敵だよ。
「気持ち悪い奴であるな! そうだ、ポケットから取り出したるこれは! じゃじゃーん! あーんーぱーんー!
これを胸元につめることで、りばー倫回避と非常食で一石二鳥であるぞ!」
僕は甘食くらいのも好きです。
「本当に気持ちの悪い奴であるな! とにかく、この気持ちの悪い奴の書くリプレイとももうすぐおさらばである!
さっそく、仕事にかかるぞ!」
おー、とイレギュラーズ達が手をあげた。
●コインとバニーと人の欲望
欲望――それはギャンブルによって満たされるだけのものではない。
シンプルに言えば、いい女、いい男を見たいという欲望。それは夜妖がバニースーツを着た男女を見たい、と言ったそれとも合致するが、とにもかくにも、そう言った欲望は、確実に存在するものである――というわけで、ポールダンスだ!
「そう――もっと見つめて頂戴? その目で――」
そう、ポールに抱き着き、キスをするように頬を寄せる。その淫靡な仕草に、男女問わず、ほう、と熱のこもった声が上がる。
本来ならば、一世一代の大勝負を演じるための大舞台に、今宵踊るは妖艶なる兎が一匹。まさに人を誘惑する夢魔の兎か。男女を問わず、その性的魅力は、人心を掴んで離さない。
「頂戴――もっと、たくさぁん」
舌なめずりするように唇に舌を這わせる――すると、観客たちが大量のコインを、舞台に向けて放り投げた。
「はい、ありがとうございます。ありがとうございます――」
と、バニー姿のバルガルが、それを拾ってはひょい、ひょい、と籠に放り込む。それをそのまま、隣にいたヴィクトールに渡して、ヴィクトールは籠の中を一瞥した。
「この中には居ないですね」
「では、種銭行きですね」
ふむん、とシフォリィが頷いて、別の籠にじゃらり、と放り込んだ。その籠の中身を確認しつつ、はわわ、と顔を赤らめながら舞台に踊る淫靡な黒兎から目をそらすのは、フローラだ。
「……大胆、と言いますか。女性から見ても素敵なのは分かりますが……」
こぼれそうな体を惜しげもなくさらして踊るノアの魔力(みりょく)は、純情可憐なフローラにはいささか刺激が強い。
「欲望の解消、という点では、あれも一つの手段ではありますけれど」
ハンナが嘆息した。それにしたって、随分とコインが集まるものだ。まぁ、もとより夜妖の領域。恐らく欲望のタガのようなものが、外れやすくなる雰囲気は、この場に満ちているのだろう。
「……そうですね、フローラや峰風には刺激が強すぎるかもしれません……」
「何を言っているんだ、ボクは成人しているのだぞ」
峰風がぶぅ、と頬を膨らませていった。
「なんだその目は。なら見せてやろう、ボクってアレくらいのポールダンスはな――」
「や、やらなくていいですわ!!」
慌てた様子で、フローラがバタバタと手を振った。ふむぅ、と峰風が唸り、
「では、そなたが――」
「やりませんわ!」
慌てた様子で、フローラがバタバタと手を振った。
「さておき、とりあえずノアには引き続きコインを集めてもらう方向で良いでしょうか?」
ハンナが言うのへ、ノアは怪し気にウインクしてみせた。大丈夫だろう。
「では、これを種銭に、少しポーカーでも遊んできますね」
シフォリィがにこにこと笑いながら言った。
「ふふ、今日は稼ぎますよ~! 勝てる気がするんですよね、なんだか!」
鼻歌交じりで去っていくシフォリィを見やりつつ、ヴィクトールが嘆息した。
「……なんだか、場の空気に飲まれてないですか? こう、瞳が『お金!』って感じになっているというか」
「一時の作戦で正解でしたね……それに、このコインも実際にお金になるわけではないでしょうし」
『没落令嬢シフォリィ、バニー地獄に落ちる』というタイトルを思いついたが、バルガルは黙っていた。
「では、自分はブラックジャックに挑戦してみよう」
ウェールが言うのへ、フローラが籠のコインを手渡した。
「大丈夫でしょうか?」
「ああ、一応、ルールや技術は調べた。瞬間記憶があれば、カウンティングも容易だろう……最悪、イカサマもあるしな」
「なるほど……それでは、ご武運を……」
「フローラ様はどう為されるのですか?」
ヴィクトールが尋ねるのへ、フローラは頷く。
「はい、念のため、バックヤードを調べておこうかと……」
「では、私も裏を調べましょう。念のため、トイレや従業員用の休憩スペースなど。
変装は……しないでもいいでしょう。警備員もバニーでしたし」
バルガルが言う。
「なるほど、裏の方はお願いします。残りのメンバーで、表の方を探りましょう……」
そう言った刹那、奥のポーカーテーブルから歓声が上がる。見てみれば、シフォリィが此方を見て、ニコニコと手を振っている。
「シフォリィも絶好調のようです。このペースで、速やかに、さっさと、仕事を終わらせましょうか」
その言葉に、皆は頷いたかくして、ノアの稼いだお金を元手に、一行はカジノ内へと散っていく――。
それから一時間ほど。バックヤードから姿を現したフローラとバルガルが、メインホールへと戻ってくる。
「コイン倉庫はありましたが、やはり夜妖の気配はありませんでしたね……」
フローラがそういうのへ、バルガルが頷く。
「やはり、欲望を間近で感じられる……メインホールの方にこそ、自己を置きたいのでしょうね。ええ、気持ちは分かります」
うんうんと頷くバルガルに、フローラは「わかるんだ……」みたいな顔をした。
「居場所を絞れれば、後は探すだけですわ。それに、警備員たちの警備ルートも確認できました」
その情報は、万が一の場合にイレギュラーズ達に有利をもたらすだろう。さて、残る仲間達の首尾はどうだろうか? 二人がホール内を見渡す。見れば、ノアは相変わらずポールダンスを艶めかしく踊っていたし、ヴィクトールも艶めかしくポールダンスを踊っていた。先ほどと変わりない。変わり、変わ、アレ?
「……ヴィクトールさん!? どうして!?」
フローラが思わず声をあげるのへ、ヴィクトールは不思議気な顔をした。
「どうして……でしょうか? なんだか、写真を撮影させてほしいとか、パンツにコインを挟ませてほしいとか、色々要求を聞いてい入る間に、気づけばここで踊っていたのです……」
「ダメですよ、そういうのは断らなければ!」
フローラが頭を抱える。バルガルは「なるほど……」とかなんか納得していた。
「おー、かえってきおったか!」
と、声が響くので、そちらの方を振り返ってみれば、一升瓶をラッパ飲みしている峰風の姿が!!
「峰風さん!? 何でお酒を飲んでいるのですか!?」
「なんでって! おしごとー、です! いや、よくぼうを発散と言えばお酒! そこで、いろんな人にお酒を勧めて飲んだり飲まれたりお膝に乗ってお酌してあげりしたわけですよ! そうしたら、なんかかわいー、って、コインくれるし! お酒は美味しいし! 完璧なのだ! わーっはっはっは!」
ぐでんぐでんに酔っぱらっている! とはいえ、確かに峰風の周りには大量のコインと酔いつぶれた男女がぶっ倒れている。未成年はいないから健全です。
「いえ、いえ、だめですよ、そんなぐでんぐでんになっては……!」
「そうですよ。それに、酔っ払ってふにゃふにゃになって、アンパンが見えそうになっていますよ」
バルガルがそういうので、峰風は、むむ、とうなった。
「本当であるな……でもあんぱんだからいっか!」
「よくないですよ! ど、どう収拾をつけたら……そ、そうです、ハンナさんは……!」
ふ、とあたりを探してみれば、ノアたちとは別の舞台の上で、困惑した表情で蠱惑的なポーズをとっているハンナを見つけた。周りには男女が群がっており、「ポーズお願いします!」とか「視線ください!」みたいな声とともに、シャッター音が響いている。ハンナが、泣きそうな顔で、フローラに視線をやった。
「指定したポーズで写真をとったら、コインをくれるって……」
『ハンナちゃーん、こっちむいてー!』
「はい……」
もはやちょっとしたアイドルの撮影会めいたバニーハンナの撮影会! フローラは視界がぐるぐる回る感じを覚えていた!
「ま、まずいです、これは絶対にまずいです……!」
「いえ、でもコインは順調に集まっていますよ?」
バルガルが言う。確かに、コインは集まっている。だが、フローラは異様な危機感を覚えていた! 具体的に言うと、このままでは絶対に、収拾がつかなくなる! 実際、もはやイレギュラーズ達の手から、事態のコントロール権は失われていたといってもいいだろう! 酒を飲んでる者はいるし、撮影会とポールダンス会を開いてる者も居る! 欲望の渦中に、誰もが巻き込まれている……!
「もしも活躍できて、その話をうちの次男に聞かせれば、パパと同じ服を着たいです! という事で次男のバニー姿が見れるかもしれない!!
既に存在が可愛く愛しい理弦を更に魅力的にするバニー……絶対に見たい! だから俺は勝つ! ここで!」
うおおお、と観客たちが吠える! ブラックジャックテーブルのウェールも、もはや目が尋常ではない!
「だ、誰も正気を保っていない……!」
「……いえ、シフォリィさんは――?」
バルガルが言うのへ、フローラは頷いた。そうだ、シフォリィは――? 慌てて探すと、そこにはポーカーテーブルですました顔をするシフォリィの姿があった!
「よかった、シフォリィさんは無事……!」
駆け寄ろうとしたフローラが、しかしその途中で顔をしかめた。
シフォリィさんは、笑っていました。
この上なく、幸せそうな顔で――。
大量のコインに囲まれながら――。
「ああ、まさかこんなに稼げるなんて! 今日は運がいいですねぇ。ふふ、ごちそうさまです♪」
にこにこと、にこにこと――。まるで、日頃のストレスを解消するかのように!
シフォリィが、手にコインを掴む――刹那、イレギュラーズ達の脳裏に、声が響いた。
『見つけたようだな……私こそが、夜妖』
「うるさいです」
ばぎり、とシフォリィがコインをへし折った。『あ』と、コインと、フローラと、バルガルが声をあげた。刹那、カジノ内に漂っていた、夜妖の妖気のようなものが、消え失せた。消え失せた、のだが――。
「ふふ、さぁ、もっともっと遊びましょう! 夜はまだまだ終わりませんよ!」
と、シフォリィが声をが得ると、周囲の男女たちが歓声をあげる。
もはや、こうなっては収拾などはつくまい。
気に恐ろしきは人の欲望。夜妖ごときに、それをコントロールすることなできなかったのだ……。
「どうしましょうか……」
フローラがそういうのへ、バルガルはふむん、と頷いた。
「……とりあえず、依頼達成という事で……」
もう誰にも、事態を止めることはできなかった。
けっきょく、朝になって熱気が薄れるまで、バニーたちの夜は続いたのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
皆様も、欲望と付き合う時はくれぐれも、平常心を捨てないように――。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
これはリクエストシナリオですが、洗井落雲はバニーは好きなのでwin-winって感じです。
●成功条件
夜妖の宿ったコインを探し破壊する
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●状況
夜妖の生み出した闇カジノが存在する。
クロエに連れられ、潜入任務へやってきた皆さん。
しかしそこは、夜妖『欲望全開でギャンブルするバニーガールやボーイを見るのが好きだから、闇カジノを作ってバニーを凝視するタイプの夜妖』のテリトリー! ドレスコードはバニースーツ! 男も! 女も! バニーになれ!
というわけで、バニースーツを着てください。バニースーツが嫌ならバニーボーイ的なアレでもいいです。着てください。欲を言えばイラストも作って洗井落雲あたりにメンション飛ばしてください。
さておき、皆さんはバニースーツを着て、カジノに潜入します! 夜妖は、一枚のコインに宿っており、それを見つけ出して破壊せねばなりません。コインを見つけ出す方法は、いくつかあるでしょう。
運と実力、或いはイカサマの技術に自信があるなら、ギャンブルに挑んでもいいです。
潜入調査に自信があるなら、バックヤードに入り込んで情報を取得するのもいいです。
重要なのは、フロア内では楽しそうに欲望を発散してください。潜入がバレれば追い出される可能性も無きにしも非ずです。
●エネミーデータ
『欲望全開でギャンブルするバニーガールやボーイを見るのが好きだから、闇カジノを作ってバニーを凝視するタイプの夜妖』 ×1
コインに宿ったすべての元凶です。
見つけ次第、コインをていやーってすれば倒せます。
警備員 ×???
バニー姿の警備員です。と言っても、目をつけられなければ戦う必要はないでしょう。
店内の注目を引くために、あえて大立ち回りを演じる、というのも一つの手ではありますが、そこは皆様の作戦次第。
警棒を持って襲い掛かってきます。近接レンジの物理攻撃を得意とします。
夜妖の生み出した幻影のようなものなので、容赦なくぼこぼこにしてくださって大丈夫です。
●同行NPC
『練達の科学者』クロエ=クローズ(p3n000162)
希望ヶ浜学園の科学教師です。今回皆さんに同行し、色々お手伝いしてくれます。持っててよかったバニーイラスト。
戦闘面では全く役に立ちませんが、陽動やなんや、指示いただければお手伝いします。
以上となります。
それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。
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