PandoraPartyProject

シナリオ詳細

フライングバニラアイス!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幻想ではよく見る光景なんですよ
「ぴゃああああああああああああああん!?」
 柱にくくられた『クソザコ美少女』ビューティフル・ビューティー(p3n000015)の顔面にバニラアイスがスパーキング。
 この光景だけじゃなにかの罰ゲームにしか見えないので、経緯を説明することにしよう。

「あまーい。アイスクリームってなんて甘いんでしょー。もう何個だって食べられますわー」
 ガラスのカップにのったバニラアイスクリーム。
 三角形に切られたウェハースと、ワンポイントを鮮やかに整えるチェリー。
 木でできた使い捨てスプーンでひとすくいすると、ほどよく溶けたクリームから少し強いくらいにバニラの香りが鼻をくすぐる。
 クソザコ美少女はひとくちふくんで、ほっぺに手を当てンーと目を瞑った。
 次の瞬間。
「えっ、これがもっと食べられますの? それもタダ――いいえむしろお金を貰いながら!? やりますわ! わたくし絶対やりますわー!」
 イエイイエーイとスプーンを振りかざして目をキラキラさせたクソザコ美少女。
 その三時間後の姿が、コレダ。
 one two three

「ひゃあああああああああああん!?」
 顔面に連続で叩き込まれるボール状のバニラアイスクリーム(コーンつき)。
「このように、ここシャトレ海岸では渡りバニラアイスが多くとれるのです。
 南部の暑さをさけるべく北上してきた渡りバニラアイスたちは人間の顔面や胸元を狙って飛び込んできます。
 ですので誰かをこのように柱にくくって掲げ、飛び込んできたところを専用の網で捕まえるのが伝統なのです」
 淡々と説明するアイスとりのおっさん。
 周囲ではカブトムシでもつかまえそうな網(長柄のさきに輪っかがついたやつ)を振り回しては飛んでくるバニラアイスを捕まえている。
「このバニラアイスはめちゃくちゃ濃厚でクリーミーなアイスクリームとして各地に出荷され、この土地の生活を強く支える名産品になっているのです。しかし近年子供たちによるバニラアイス漁離れから漁師も減り、皆さんに助っ人をお願いする次第となったわけです」
「もきゃああああああああああああ!!」
 ゴムボールみたくなったバニラアイスがクソザコ美少女の顔面にぼこぼこぶつかっていく。
「皆さんはめっちゃ優秀と聞いております。バリバリ働いてくださいよ! ばりばり!」

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:渡りバニラアイスをいっぱいつかまえる

 いっぱいと言ったらいっぱいです。
 ぼくは右手の指で数え切れないものはいっぱいってかぞえるのです。かしこいのです。

【渡りバニラアイス】
 幻想の八月、一日だけ海岸の低い部分を通っていく渡りバニラアイスの群れ。
 彼らがバニラアイスでいられるのはこの季節だけで、通るのもこの時だけ。そんなわけでシャトレ海岸での名産品となっています。
 牛さんのミルクから作るアイスクリームも美味しいですがバニラアイスといえばコレって方も混沌には多いんじゃあないでしょうか。
 人によってはこれをバニラアイス、そうじゃないものをアイスって呼ぶくらいですもんね。えっなにバニラアイスが飛ぶわけ無い? あなたの世界じゃ飛ばないんですか? 捕まえるの楽そうでいいですねえっ!

【バニラアイスの種類】
 渡りバニラアイスは成長度合いによってその形状が異なります。
 ゴムボールみたいなのに入ってる幼体。端っこを囓って穴開けてちゅーちゅー吸うのが一般的です。まわりのは卵だって言われてます。
 まるっとしたバニラアイス単体になった成体。みんながよく想像するやつです。いろんな加工がなされます。
 ワッフルコーンがついた抗体。群れの一部はコーンをはやすといいます。ヤドカリが殻をもつのと一緒ですね。

【たくさんとろう】
 バニラアイスは高い所にある人の顔や胸元めがけて飛んでいく習性があります。なんでかって言われてもこまるよぼくバニラアイスじゃないし。
 今回はクソザコ美少女が柱の高いところで十字にくくられてるので、バニラアイスたちの軌道の一部を限定することができています。
 他にも生けに――じゃなかった軌道限定係になりたい方がいらっしゃいましたら挙手をして木のスプーンをふりまわしてください。相談中に。モチロン。何人かいたほうがはかどります。

 まわりのおじさんに混じってめっちゃバニラアイスを獲得できたら、おまけに何個かおみやげにくれるでしょう。
 そのまま食べてもよし。とっておきの料理にしてもよしです。
(料理にプレイングかけ過ぎるとナンなので、材料とかみんな持っててよいものとします。文字数はクソザコ美少女の顔面をアイスまみれにすることに使おう)

★これまでのクソザコ美少女成長記録
『ファンブル低下』:慎重さを学びました。
『防技アップ』ハラパンに耐性がつきました。
『HPアップ』:ひどい目にあって体力がつきました。
『遠術』:前に出ない戦い方を覚えました。
『祈祷師/鼓舞』:応援団長を自負しています(タスキは宝物です)。
『料理(悪)』:雑草を沢山食べて味覚が崩壊しました。
『騎乗』:馬で死ぬほど振り回されて慣れました。
『クソザコ神』:おだてられるとなんでもやる子になりました。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • フライングバニラアイス!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年08月12日 21時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
ルネ・リエーヴル(p3p000726)
らびっとびーあんびしゃす
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
リジア(p3p002864)
祈り
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
風巻・威降(p3p004719)
気は心、優しさは風
エリシア(p3p006057)
鳳凰
シャーロット・ホワイト(p3p006207)
天使(こあくま)

リプレイ

●あのゴムボールみたいなアイスは固有商品名を避けて一単語で呼ぶにはなんて言えばいいの?
 海岸沿いを低空飛行していくバニラアイスの群れ。
 そうですね。絵はがきにもなっている夏の風物詩です。
「ばにらあいすとは、このように収穫されるのですね。桜咲も、最近の暑さの前によくお世話になっております」
 海風にゆれる麦わら帽子を押さえて、桜咲 珠緒(p3p004426)は穏やかに言いました。
「お手伝いをして、おみやげもいただける……。良いお仕事なのです」
 むかしの和菓子屋さんに摘んだヨモギをもっていくとお小遣い貰えたりするアレと一緒と考えると微笑ましいものがありました。あと畑仕事とか地引き網とか手伝うとなんかめっちゃ貰えますよね。
 ……みたいなことを考えてうっすら笑う『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)。
「すごいな。この世界のバニラアイスは空を飛ぶんだねぇ。見た目も本当に……バニラアイスだ。えっと、これ捕まえればいいんだよね?」
 少女漫画から出てきたのかってくらい優しい空気とそよ風みたいな背景トーンを纏って背伸びをする威降。
 一方で『鳳凰』エリシア(p3p006057)は風景と仲間のリアクションをひたすら交互に見ていた。
「それだけでいいのか? 我のいた世界にはこのような珍妙な生き物……いや生き物なのか? あれは? 飛んではいるし、少なくとも自我は少しはあるようだし……貝? いやクラゲ?」
 ホタテ貝とかクラゲが空を飛んでるさまと、透明なグラスにチェリーとかと一緒に乗ってるさまを想像してみる『鳳凰』エリシア(p3p006057)。
 ゲテモノ感が出てきたので首を振り、イメージを書き換えた。
「つまりこれは、牧場での羊追いと同じなのだな、うむ」
 思考を停止してなじむことにしたらいい。
「牛追いと同じ要領なら簡単ね」
 クールな顔して軍手やら長靴やら装着する『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)。麦わら帽子も相まって装備がほぼほぼ牧場農家である。
 そして十字に貼り付けられた『クソザコ美少女』ビューティフル・ビューティー(p3n000015)へ振り返った。
 何度か見た顔だけどスルーせずに話しかけるのは初めてかもしれない。
「一言だけ。良い? 絶対に飛んでくるバニラアイスから目を逸らさないで」
「そらさないどころか前が見えないんですけれど……」
 顔がバニラアイスとコーンまみれだったので、一旦モップでぬぐってやる。
「貴方がどんな状況でも相手を見ることをやめなければ、戦いにおいて得難い有利をつかめるわ。具体的には致命傷を避けるように動いたりね」
「えっ致命傷? 命にかかわるんですのこれ?」
「じゃあ、頑張って」
 といって準備運動を始めるイーリン。
 一方で『白き渡鳥』Lumilia=Sherwood(p3p000381)と『生誕の刻天使』リジア(p3p002864)はバニラアイスが飛んでる光景に軽く圧倒されていた。
「理解が、及ばない。なんなのだこれは……どうすればいいのだ……」
「初めてみたバニラアイスでしたが、これは……なんといいますか。凄まじい……ですね?」
「私が異世界人だからついていけないわけではないんだな。安心した」
 空を飛んでクソザコ美少女の顔面にひたっすらぶつかっていくバニラアイス。
 たまに漁師のおっさんがふる網をひょいっとかわして飛行するバニラアイス。
「このような物体は……いや、生命なのか……? わ、わからない……謎だ……」
 困惑するリジアの横で、Lumiliaがマントを翳して見せた。
「一年に一度の機会、きっと今を逃せば立ち会うことも出来なかったでしょう。貴重な機会に感謝しませんと」
「え? あ、ああ……依頼は捕獲。つまり捕まえればいい。なるほど。そういうことか。完全に理解した」
 よくわかんないけどやるべきことは決まっている。
 そういうときは大体身体を動かせば解決するって誰かが言ってた。誰だっけ。てさぐり部のひと?
 いっぽーで、状況にしっかり適応している子らもいた。
「渡りバニラアイス! 話には聞いていましたが、実際に動いてるのを見るのははじめてです!」
 ぴゃっほーと言いながら飛び跳ねる『らびっとびーあんびしゃす』ルネ・リエーヴル(p3p000726)。
 夏の暑さを吹き飛ばす涼しげな風と甘い香り。潮風にのったそれはまさに爽快のひとこと。
「故郷にはアイスなんてなかったし、今も割りとぜいたく品なのでテンション爆上がりですよ!」
 実際渡りバニラアイスは貴族のおやつになるくらいの贅沢品なので、これが食べられる機会もそうないはずだ。春の渡りオサシミとか野生のテリヤキチキンとかと同じだ。
 『鳥篭の君』シャーロット・ホワイト(p3p006207)がぐっとガッツポーズをとる。
「バニラアイスが飛ぶ姿をこの目で見られるなんて、嬉しいです! おいしいバニラアイスを楽しみにしている方々のためにも、張り切ってつかまえましょう!」
 いつも全力。真面目心いっぱいに、シャーロットは拳を突き上げた。木のスプーンを握りしめて。

●無性にバニラアイスを食べまくりたい時ってある
 柱をえっほえっほ登るルネ。
「バニラアイスが高いところにいるだけでタダ……むしろお金を貰いながら食べられるなんて最高じゃないですか! ビューティーさんにだけオイシイ想いはさせな――ぴゃあああああああ!?」
 ほぼほぼクソザコ美少女とおなじ動機で柱に登って同じめにあうルネである。
 そのあと係の人にベルトで胴体を固定してもらって、『腕だけ自由な鳥葬刑』みたいな状態にされたルネができあがった。
「ただ貼り付けられるだけではいけません! バニラアイスが飛んできたくなるようなポーズを……セクシーポーズを!」
 足首を交差させて手を頭の後ろで組んでみる。
 るねはせくしーぽーずをとった。
 こうかはいまひとつのようだ。
「おう誰ですか私にせくしーが足りないっていったのは!」
 巨乳(きょちち)ならいいのですか! もってやりましょうかチクショウ! とかいってボール状のアイス(幼体バニラアイス)を胸に詰め込むルネ。
 それでも容赦なく顔面バニラアイスまみれになるようだ。
 すごくいまさらですがこのお話にセクシー要素ありましたっけ。言われてみればあったような気もする。
 ともあれそんなムードお構いなしにLumiliaは袋を抱えて上昇飛行。
「高いところにいれば飛び込んでくるかなら、方向を調整して衝撃を減らすこともできるはずですっ」
 ぐっと小さく拳を握る。飛んでくるバニラアイスの群れに対してこう……なに、斜め? みたいな? 角度をとってみる。
「こうして――」
 眼前で大きくカーブする渡りバニラアイスの群れ。
「それたバニラアイスを――」
 大きくC字のカーブラインを描くバニラアイス。
「袋で受けとム!?」
 バニラアイスが全部顔面に、そして正面から命中した。
 もっというと柱に身体を固定していなかったので大きく後ろ向きに縦回転し、顔どころか全身バニラアイスまみれになった。
「は……迫力がっ、す、すごくないですか!? 傍目に見るのと自分に飛び込んでくるのとではまるで違――あっあぶなっ!?」
 おもわず海老反り姿勢でよけてしまうLumilia。よけたついでに掲げた袋にジャストイン。
 ほかではあまり見られない妙にアクロバティックなLumiliaである。
「そ、空を飛んでいるとあんなことに……」
 先輩(?)の様子を観察していたシャーロットも、いよいよ覚悟を決めて空へ飛び上がった。
「バニラアイスまみれになることを恐れていては、バニラアイスには勝てません! さあ、どうぞ!」
 ばっと両腕を広げるシャーロット。
 折角だからスローモーションで、背景にランランララランランラン的なやつを流しながらご覧頂きたい。
 なんか怒り狂ったなんとかの群れに飛び込む姫様みたいなあれで。
 当然どうなるかっていうと。
「きゅん!?」
 出したことも無いような声をあげて縦横に複雑回転しながらバニラアイスにまみれまくった。
「だ、大丈夫か?」
 仲間たちに心配されつつも親指を立てて掲げるシャーロット。
「ばびぼぶべぶ!」
 今にも溶鉱炉に沈む人みたいな有様だったが、どうやら大丈夫っぽい。
 よくよく見てみるとLumiliaたちのラインとちょっぴり被る感じのラインが作られていて、漁師さんたちはここぞとばかりに網を振りまくっていた。
「みんな頑張ってるなあ……」
 柱にくくられた威降が、右手に網を持って笑った。ついでに左手にはよくアイス買うと貰う使い捨ての木のスプーンが握られていた。
 余談ですが、コメントなんて無視して普通に表明してもよかったのに、何かを覚悟したように木のスプーン掲げて見せる皆さんがめっちゃ可愛らしかったので何かのひょうしに盛り込めないかずっと考えていました。尺不足で入らなかったのでブルーレイ購入特典にします。日常系アニメのOPで各キャラが一瞬だけ顔アップで映るシーンみたく想像してください。
「よーし、かかってこ――イったい!」
 顔面に直撃するバニラアイス幼体(ゴムボールみたいなやつ)。
 それに続いてべべべべべっと連続でぶつかるワッフルコーンつきのバニラアイス。
 網でこう、うまいこと、なに、顔に飛んでくるやつをサッて取ろうとしているけど前は見えないし痛いし気づけば網がどっか飛んでいくしでいかんともしがたいバニラ地獄。
「じ、地味に……地味に痛い!」
 仮にこの世界に吹き出し式ダメージ表示があったら、威降の頭上に『1』と『0』の数字が噴水みたいに吹き出し続けている状態である。
 結果ほぼノーダメージだけどすごく邪魔、みたいな。
「せ、せめて顔をぬぐう左手はあけておくんだった!」
 律儀に木のスプーンも振り回す威降。他の人の1.5倍くらいバニラアイスが飛び込んできてるのがそのスプーンのせいだとはお釈迦様でも気づくまい。言ってないし。
「ううむ、ここまで囮――いや限定係がいるなら我が炎で目立ってみせる必要もないな」
 網をひゅんひゅん振りまくって頭上を飛んでる幼体バニラアイスを捕まえては竹籠に、捕まえては竹籠にと丁寧に放り込んでいく。
 生体のバニラアイスは積み上げるとなんかよくわからんデカい塊になっちゃうらしいので、一個一個タッパー的なやつに入れてしまっていく。
 ワッフルコーンのついた抗体はあの……なんていうんだろ、ちっちゃい傘立てみたいなやつにさくさくさしていく。
「ふと思ったが、ここで焔式を放ったらどうなるのだろう。みなミルクにかえるのだろうか……」
 それはそれで壮絶な光景になりそうでちょっとワクワクしたが、仕事への義務感と常識的な自制心でぐっとこらえた。
「ぴゃあああああああああたすけてええええええ!」
 またもやバニラアイスまみれになっているクソザコ美少女。
「すまん、できることといえばHPを回復するくらいだ」
 シェルピアのぽわーっとしたあったか癒やし空間を作ってみるエリシア。
 意味がないのは百も承知。気分の世界である。

「ヴ”ェ”オ”ロ”ロ”ロ”ロ”ロ”!!!」
 イーリンが両手を翳して走っていた。
「ヴ”ェ”オ”ロ”ロ”ロ”ロ”ロ”!!!」
 イーリンが両手を翳して戻ってきた。
「ヴ”ェ”オ”ロ”ロ”ロ”ロ”ロ”!!!」
 イーリンが両手を翳してまた走って行った。
 夏の暑さであたまがやられちゃったわけではない。
「え、これ? キサラリっていう、ヤポンのアイヌという民族の怪物のマネで。アイスに似てるから使えると思ったのだけど、違う?」
 先端がなんかこう、三本の爪みたくなった木の棒をこうなんかあれしてみせるイーリン。実際にはくちばしに見立てた黒布巻きの鎌に赤い布巻きを伸ばして耳(キサラリ)をはやしたものらしい。
「あなたはどう思――ヴ”ェ”オ”ロ”ロ”ロ”ロ”ロ”!!!」
 軽く引いてたバニラアイスに問いかけると見せかけて即襲いかかるイーリン。めっちゃ逃げるバニラアイス。
 どういう顔してるのかはあんまり書かない方がいい気がしてきた。
「桜咲、思ったのですけれど……」
 地面に木の棒で画を描いてみせる珠緒。
「こういう具合に網をはってバニラアイスを追い込んだら沢山とれるのでは」
「一理ある。が……」
 腕組みして唸るリジア。
「仮に鳥や魚や虫の漁だとすると……『獲りすぎる』ことで彼らが学習してこの土地を通らなくなることもあるんだろう。伝統にはそういう教訓が隠れているものだ」
「なるほど……では」
 さっきのイーリンみたいな声をあげて突如ものすごい量の血を吐く珠緒。
 おもわず『ひっ』て声をあげるレアなリジア。
 誰だって目の前でいきなり大量喀血したら驚く。
 とはいえ無意味に血を吐いたわけじゃなく、血を固めて巨大な熊手めいた形をとると、どっから用意したのかめっちゃ大きな網(家畜とかの柵を覆うやつだとおもう)を貼り付けた。
「桜咲のギフトは血液と魔力で格闘用の武装をこしらえる能力」
 拡張性に関して書いてないからほんとは良くな……まって、じゃあ喀血の部分は素なの!?
「いきましょう」
「あ、ああ……」
 今日は環境に振り回されてばっかりのリジアである。
 飛翔し、バニラアイスめがけ網を構えるリジア。
「私の身体に触れるなよ。いかなる衝撃といえど加減できる気がしない。いいか?絶対だ。絶対だからな?忠告はしたぞ。絶た――むきゅ!?」
 出したこともないような声をだして縦回転するリジア。
 このあと例の破壊衝撃をばらまき始めたリジアを羽交い締めにしてなだめることになるのだが、それも素敵なかわりに尺が足りないのでブルーレイ購入特典にしておきます。

●箱にみっしりバニラアイスが詰まったやつをひとつ買っておくと夏場に重宝する
「あっはっは! たしかにこの漁はクセになるわね! まるでトンボとりでもしているようだわ! これ、お祭りとして幻想とかに吹聴しましょう」
 たくさんとれたお礼にと山みたく積まれたバニラアイスパック。
 それを皆と分け合って一個ずつたべながら、イーリンは木のスプーンを振った。
「楽しそうでよかったけど……あの声は出せる気がしないね!」
 嫌とは言わず爽やかに笑う威降。
 その横では、エリシアがみょうに難しい顔をしてバニラアイスをぱくついていた。
「ふむ。美味い。しかし……生きているようだったが、味は我の知っている物と同じなのだな」
「他の世界にもあるのですね。バニラアイス……」
 世界は広いというか無限にあるっぽい世の中なので、よその世界にアイスがあるだけでもちょっと驚けたりする。
 さておき。Lumiliaはほっと息をつき……その横でリジアがワッフルコーンのついたアイスを手に取った。
「ルミリアも食べるか? いや、食べておけ。お前が知らないならきっと貴重なのだろう。あーん? だったか。まあ、食べろ」
「いえ、その、あーんというのはあの、あむ……」
 えい、と突き出されたバニラアイスを思わずくわえるLumilia。
「つ、つい受け入れましたけど……どこで教わったのですかそれ……? 例えば、恋人とか、親しい仲ですること、ですからね? 私恥ずかし――」
 もっかいはむっとさせられた。
「分からないな。親しさならお前が私にとっては親しい方なのだが。……ダメか?」
 バニラアイスがなくても何も言えなくなるやつ。
 こういう台詞似合うなあとか、そういうことを考える場面だろうか。
 一方で、ルネは翌日お腹壊すんじゃないかってくらいバニラアイスをぱくついていた。
「さっきまでバニラアイスまみれでしたけど、これはベツバラ! キャラメルソースやチョコソースをかけて……パンケーキにのせます! おっしゃれー!」
「む、なんだそれは」
「熱で溶かされたバニラアイスの甘さと冷たさがパンケーキと絡み合ってたまらない美味しさ!」
 パンケーキアイスに上機嫌なルネ。
 興味をそそられて寄ってくるエリシア。
「美味しそうです。桜咲にもひとつくださいな」
 お皿を持ってやってくる珠緒。
「私はパフェにしてみました!」
 シャーロットはカラフルなフルーツやソースで飾り付けしたバニラアイスを掲げ、満を持して木のスプーンを差し込んでみる。
 口の中でとけるバニラアイスの甘さと香り。
「バニラアイスは何にでも合いますね……おいしいです」
 たくさん働いてみんなしあわせ。
 そんな風景のずっと後ろのほうで。
「…………」
 白目を剥いたクソザコ美少女がバニラアイスまみれでくくられていた。
 それに気づくのは、それこそもうちょっと先の話である。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

★これまでのクソザコ美少女成長記録
『ファンブル低下』:慎重さを学びました。
『防技アップ』ハラパンに耐性がつきました。
『HPアップ』:ひどい目にあって体力がつきました。
『遠術』:前に出ない戦い方を覚えました。
『祈祷師/鼓舞』:応援団長を自負しています(タスキは宝物です)。
『料理(悪)』:雑草を沢山食べて味覚が崩壊しました。
『騎乗』:馬で死ぬほど振り回されて慣れました。
『クソザコ神』:おだてられるとなんでもやる子になりました。
『囮適正』:いろんなものが顔面に飛んできます。(NEW)

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