PandoraPartyProject

シナリオ詳細

革新派斬首計画

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●あの地獄が残したもの
「以上が、『ちょっとした情報網』で確認できたあの街の毒の成分表……というか材料表(レシピ)だな。成分だけじゃいまいちわからないから、材料も絞り込んでもらった。それでちょっとおもしろいことが確認できた」
 ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は問題の内容が記載された羊皮紙を取り出すと、その場にいたイレギュラーズの目に留まるように机上に広げた。『あの街』というのは、以前アドラステイアと関わりがあり、疑似人間牧場として『運営』された「デュフォン領」という天義の城塞都市のことだ。その地では大多数の市民が薬品漬けにされ前後不覚に陥り、されるがままに労役と死を強制されていた経緯がある。なお、結託していた領主は既に断罪されている。
「ここに記載されてる毒草……というか便宜上は薬草なんだけどな。これはとある町で育てられてるものらしい。毒にも薬にもなるから厳重に管理されてるもので、持ち出しなども規制されているらしいが、重大な問題がひとつだけあったんだな。それは、ちょっと前まで町を管理していたのが保守派だったってことだ」
「つまり、今は革新派に支配権が移って、その薬草の流通に怪しいところが見つかった……って話よね?」
 話を聞いていた鬼城・桜華(p3p007211)はヤツェクの言葉の意図を汲み、問う。黙って頷いた彼の顔を見た桜華は、思わず顔をしかめてしまう。
 保守派が天義における全ての病理を統べている、というのは極めて乱暴な論理である。先立ってセツナ・ロウライトがかなり強引な手段で改革を進めようとし、その責を認め姿を眩ませたことを鑑みれば、天義という国そのものに未だ歪みが深く刻まれている事がわかるだろう。……さりとて、革新派の調査で過去に薬草があらぬルートで流出していたこと、それを使った麻薬が生まれていたことは紛れもない事実なのである。
「諸々調査を進めているところらしいが、その町で数日前から新しく町長に就いた人物を非難する運動を起こしている集団がいる。最初は一人ふたりだったが、徐々に規模を増している……んだそうだ。明日には町長が人々の前で調査の中間報告を行うとしている。目の上の瘤が、大勢の前に出るわけだ。何が起こるかなんて分かるだろう?」
 つまり、反対派の者達が暗殺を企てている可能性。
 その阻止の依頼が、ローレットに届いているというわけか。
「で、ここまでなら保守派市民による内部分裂の教唆とか、そういう話で終わる。問題は、既に過激な妨害工作で捕まった連中が居て、そいつらが大なり小なり前後不覚に陥ってることだ。住民照会を行っても、革新派寄りの意見のヤツまでいる。……というか首謀者も革新派だった筈だ。もしかしたら、黒幕がいるのかもな」

●-10days
「わたくしはあなたと同じような考えを、いえ……『同じ欲』を持っているだけです。そうでしょう? あなたもわたくしも、『この国の正しい姿を見たい』だけなのですから」
「……ああ、間違ってないな。俺はこの国が……正しく……続いていく姿が見たい」
「でしたら、どなたをどうすれば正しくなるのか、おわかりでしょう?」
「そう、そう……だな……」
 夜闇に沈んだ繁華街の路地裏で、妖艶な姿をした女が一人の男を組み敷いていた。
 男の名はティデリックといい、革新派を名乗り、今般の町長交代劇の立役者となった者である。彼は天義が正しくあらんとすることを望み、そのためにあらゆることを――少しイリーガルな行いも――してきた。
 多くの人にとって正しいと思われる行動を。誰からも支持される自分を。彼は表舞台に立ちたくはないが、よく思われたいと思っていた。
 謂わば過剰なまでの承認欲求である。原始的であるが酷く現代的であるその欲求は、彼を組み敷く女を満足させうる程度には深かったわけだ。
 でなければ、彼女の魅了魔術がこうも覿面に作用するわけがない。
 だからこそ、彼女はティデリックの表情が虚ろになっていくさまを酷く美しいとすら思ってしまった。
「あなたはこれからこの町を変えるのです。ただし、今の革新派への変化ではなく、旧弊をよしとする元の町へと。貰い物ですが、これも役に立つでしょう」
 女は麻袋に入った錠剤をティデリックの懐に忍ばせ、そのまま欲望の儘に覆いかぶさった。
 恐らくは革新派の町長は公明正大に振る舞うため、人々の前に現れるだろう。その日にすべて明らかになる。人の欲望というのは、とても美しく汚いもので在る……と。

GMコメント

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 参考シナリオ:天義領馘首刑(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/7380)
 というわけで色々明らかになってなんとか正常に動きそうだナー……ってところで引っ掻き回す謎の敵の思惑を潰しましょう。

●成功条件
 ティデリック以下、『保守派デモ集団』および『セフィロト信徒集団』の鎮圧

●失敗条件
 鎮圧前に革新派町長が死亡する。または鎮圧中に一般人の被害が大きくなる

●保守派デモ集団×多数
 OPで説明されていますが、非常に強い信念とリーダーシップで集団を先導する『ティデリック』と、彼の言葉に盲目的に付き従う心根から保守派の人々、そして「なぜか」自由意志を完全に喪って機械的に振る舞う人々、という三重構造になっています。めちゃくちゃ面倒臭い……。
 ただし目的は『デモ』であり『暗殺』というより流れで殺してしまうことを企図しているため、問答無用で露骨に町長目掛けて接近するわけではありません。
 ティデリックはもと一般市民ですが何故か非常に肉体が強化されており、かなり死ににくい一般人レベル。
 後者2つはちょっと死ににくい以外手に手に打擲武器か包丁など単純な徒手格闘武器、一部銃器を持つ程度なので個別には大したことはありませんが、集団であるため取り囲まれれば先ず回避は無理でしょう。また、ブロックしようがないので怒りで引き付けるなどが有効ですが打ち漏らしが不安要素ではあります。
 生死不問ではありますが、倒すと正気を取り戻します。

●セフィロト信徒集団×10
 状況開始後少しすると合流してきます。
 一般信徒のため能力は高くありませんが、デモ集団と別方向から、周囲にアピールしつつ前進するデモ集団と異なり『まっすぐ』町長暗殺に向かってきます。
 こちらも、町長を庇うにしてもそれだけでは厳しいです。ぶっちゃけ生死不明で死んでも大して心象的に困る相手ではありません。

●町長
 今回の一件で、薬草の流通経路や裏帳簿の存在を確認しその調査結果を公表しようとしています。
 庁舎前の広場で登壇しての演説となり、所要時間は10分ほどを予定しています。ぶっちゃけことが始まってからは逃げようがないです。

●???
 本件の黒幕です(この事件の、という意味で)。
 非常に妖艶な姿をしているらしい、としか確認できておりません。
 でも多分一連の事件を確認しやすい位置で高みの見物とかしてるのかもしれませんね。

●戦場
 前述の通り庁舎前演説会場。
 庁舎を背にしていますので背後からは襲撃できず、また、庁舎内に忍び込んで信徒が奇襲というルートもありません。
 ただし、前と左右のみといっても波状攻撃のような形になりますし、識別なし範囲攻撃で一般人を巻き込めばかなり心象はよろしくありません。
 「不殺にとどめたじゃん!」って言われても何の席もない一般人がいきなり神気閃光食らって死ぬほど痛い思いしたらいい気分しないのです。

  • 革新派斬首計画完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月20日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

郷田 貴道(p3p000401)
喰鋭の拳
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
鬼城・桜華(p3p007211)
子鬼殺し
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
陽気な歌が世界を回す
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ


「めんどくせーなぁ、パンピーはパンピーなりに命を大事にして欲しいもんだぜ。どうすんだよ、プチっと潰しちまったら?」
「それも含めての謀略だろうぜ。町長を殺すのも、それを止めようとして死者が出るのも。俺たちに対しての宣戦布告のつもりなんだろ。全く、ヘドが出る話だ」
 『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)の心から面倒そうな声音をやんわりと宥めつつ、『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)もまた、内心で今回の件について堪り兼ねるものがあったのは確かである。怒れる一般市民を装っての襲撃。軽々に『排除』できないことを活かしての人海戦術は、バチバチに正面から殴り合うのを信条とする貴道とは相性が非常に悪い。壇上、周辺、何処かに敵の影や仕掛けは及んでいないか。町長の周囲に怪しい影はないか。
 懸念はあまりに多すぎるが、ジェイクが2体の使い魔で哨戒し、各々十分な警戒を敷いている以上は軽々に接近は難しいように感じられた。とはいえ、市民をかき分けて襲ってくるのだからそれも希望的観測か。
「声が大きい人間というのはえてして、正規の手続きでものごとを進められない人間でありますよ。そういうのは、ちょいと都合の良い情報を目の前にぶら下げれば如何様にも操れる」
 昔よく使った。『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)はそんな言葉を飲み込み、あらためて雑踏に目を向けた。市長が登壇しマイクの調子を確かめる傍らに控え、その姿は『メイド』として違和感なく溶け込んでいるが、その身から発露する玄人としての空気感は到底隠しきれるものではない。それに気付けるのは、また玄人でしかなかろうが。
「ティデリックについて保守派の連中に探りを入れたが、逆に憤られたぜ。『あんな革新革新煩い狗に尻尾振られちゃ立つ瀬がねえ』ってな。金の流れも見当たらない。よく隠してる……だが、薬の流通だけは隠しきれなかったと見える。やつを中継してばらまいてるまでは分かるが、やつに『誰から』来たのかが分からねえときた。怪しいことだらけだ」
 『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は手元に集まった資料を捲り、『革新派』の所業としてはあまりにも業の深い行いに目眩を覚えた。この町に住む保守派からは蛇蝎の如く嫌われる彼が、保守派の資金源ともいえる薬物を捌いて保守派を率いようとしている。何が起きているのか、理解に苦しむ。
「革新派の急先鋒が薬に手を出すなんて、確かに怪しいな。洗脳や薬漬けの類か? ミイラ取りがミイラみたいな……」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)はヤツェクの報告に顔を顰め、ティデリックの変心が彼の本音に依らぬところで起きたことをあらためて悟る。町長を通して薬物排斥に回った彼の所業とは到底考えがたいのだ。如何にもすぎる変心は、ストーリーとして出来すぎている。
「政争の為に暗殺を企て、しかも暗殺を利用して両派閥を煽る事が目的なんて……なんて卑劣なの!」
「豊かな資源があっても、理想郷を築くのは難しいことなのですね……」
 『子鬼殺し』鬼城・桜華(p3p007211)や『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は『恵まれた』天義の者ですらも斯様な所業に走ること、暗殺すらも目的の為に消費される、恰も娯楽であるかのような扱いに怒りを隠せない。鉄帝では求め得ぬものがありながら、これだ。ヴァレーリヤの嘆息にエッダが鼻を鳴らすのも致し方あるまい。
「混沌デビューした後の私は、政治的中立(ノンポリ)を貫くはずだったのだがなぁ……」
「混沌にいる以上は完全中立も難しいだろう、仕方ないよ」
 『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は嘗ての世界で政争を見てきている以上、そういったものとは関わり合いになりたくなかったというのが本音である。が、今般の天義の混乱の裏にアドラステイアが見え隠れする以上は主義主張の為に無視するのは躊躇われた訳だ。
 交通整理がてらデモ隊を近づけぬよう動くイズマは、それでも制止しきれぬ人のうねりを視認していた。
 そして、モカとジェイクは使い魔たちの動きが何かを忌避するかのような、近付くまいとしているような……そんな違和感が『どこかに』生まれていることに気付く。どこか、ははっきりとわからない。深掘りしようとすれば、ともすれば使い魔がその手を離れ姿を消す可能性すらあったから。
「特等席をもう見つけてるのか、ヘドが出る周到さだな」
「そういうタイプは、想定外に弱い筈だぜ。……さて、どう出る」
 ジェイクの吐き捨てるような言葉に応じたヤツェクは、帽子を深くかぶり直す。
 やがて、壇上に上がってきた町長が恭しく礼をし、マイクをつかむと同時に……声が上がる。
 高らかなシュプレヒコールは、まるで開戦の合図のようであった。


「町のあり方を乱し、我々の一体化を乱す町長に断固として否を突きつける! 我々の選択が改めて間違いであったことをここに標榜し、罷免を要求する!」
 ティデリックのよく通る声、突き上げられた拳は隔離された位置からでも人々の波を割るように響いた。そして、イズマの交通整理は一定の効果を齎したが、それも『想定以下に抑える』のが精一杯だった。四方八方、小さな声が大きなコールへと繋がり、波を打って人々を内応させる。
「そ……そうだ! 信用出来ないぞ!」
「町長の身辺調査を再度! やはり隠し事とかあるんじゃあないのか……!」
 民衆というのは同調圧力にとみに弱い。10人あつまって3人ほどが声高に叫べば、同数かそれ以上の自主性を揺るがすことも難しい話ではない。しかるにそれは少数派から多数派に変えるに十分な数。
 だが。
「アンタらの思想には一理ある。だが、ティデリックに利用されていることには気づかないのか!  奴は裏切り者だ!」
 ヤツェクの声に、流されそうになっていた人々がざわつく。
 ティデリック、という名を聞いてまさかと思った者も居たはずだ。町長を推した男が、こんなデモをするのかと。
「危ないからここから離れて!  演説は戦闘を収めた後で再開する!」
「させるか! そんな報告、無効だ!」
「そうだ、好き勝手言わせてたまるかー!」
 ヤツェクの言葉で鈍らされた人々は、信念が薄い一般人だ。強く保守を信じる者、もとより声の届かぬ者を止める手立てはない。そして、イズマの言葉を聞いて賛否どちらにあろうと、一般市民は退くだろう。……普通の考え方をするならば。それでも止まらない連中は、明確に敵といっていい。
「お待ちなさい。今はまだ、ここは通せませんわ。町長が絶対的に正しいかと言われれば、きっとそうではないのでしょう。ですが、今回の演説は、麻薬に関する調査結果を報告するためのもの。麻薬によって多くの人々の生活が破壊されていることを考えれば、貴方達としても看過して良い問題ではないはずでしょう」
 そして、それでも向かおうとする一同にぴしゃりとヴァレーリヤが言い放つ。彼女は曲りなりにも(鉄帝の、だが)信仰者だ。相手の心を撫でる言葉選びには一日の長がある。
「町長の言っていることが真実か否かという問題もあるけれど、それは彼の言い分を聞いてから判断しても遅くはないのではないかしら。それとも、演説が終わるほんの10分程度を待てない理由が? 何か表沙汰にされると不都合ことでもありまして?」
「……っ、その男が町長の座にある事自体が看過できないのだ! 今ここで断罪する!」
「言うに事欠いて暴力頼みか。それじゃあ通せないな」
「あなた達に恨みはないけど、町長を守る為に止まってもらうのだわ!」
 ヴァレーリヤの言葉に反駁出来ぬ時点で、ティデリックは『思想』ではなくなんらかの意思の固着により動いている。要は操られているということがわかる。ならば議論の余地なし。ジェイクと桜華はそれぞれ町長を守るよう立ち塞がり、信徒達の進行を食い止めに回る。
「痛いから下がってろよ、でっかいコブ出来るぞ!」
 貴道は拳に息をふきかけ、真上から振り下ろすようにデモ隊に次々と振り下ろしていく。
 小気味よく打撃音が響くごとに倒れていく人々は、頭に大きな瘤を作っているのがわかる。相当量の内出血だが、これでも加減しているのだ。フラストレーションが溜まるだろうに。
「できれば一人も殺したくない! あなた達はこの街の市民なんだ、革新派だろうが保守派だろうが、この街を変えていく力になるはずだから!」
「だからこそ! 無理に変えようとする行為は毒になりかねない!」
「下がれ。貴様らの手にしている、それは何だ」
 エッダはティデリックの一撃を徹甲拳で受け止め、その狂ったような視線に無機質なそれを返す。たじろぐ気配を見逃さない。
「暴力には暴力を以て応じる。だが貴様らの心は変わらないだろう。町もそうだ。力で町の総意は変えられない。……天義では天義のやり方が肝要だ。それとも“鉄帝式”が望みか? 革新を望んだお前がそれをするのか?」
 エッダは攻撃を捌き、寸止めで次々とティデリックの急所を狙いにいく。拳圧だけでも心胆寒からしめるその威力は、正常な判断と思考力を奪うとともに、暴力を向けるという行為そのものの無益さを痛感させるに足る行為。
 思考に貼り付けられた薄皮を剥がされる感覚に震え、膝を屈したティデリックの顎を鋭く撃ち抜くと、エッダはまっすぐ近付いてくる一団を見た。この場で最も愚か者である、信徒達の姿を。


「来たか、本命」
 壇上から遠ざかろうとする人波に逆光し、かいくぐり、ひとかたまりとなった集団が壇上へと向かってくる。白いローブで体を覆った彼等は、進みづらさすらも己の有利にしようと考える節すらあった。モカはその姿をいち早く看破し、誘いをかける。挑発が通じているのか否か、彼等の歩調は些かも緩まず殺到し、手に手に得物を突き出した。
「一般人はたんこぶで済ますが、人を操って悦に浸る奴に容赦は要らねえな? 綺麗な石榴を咲かせてやるよ!」
 次々と向けられる得物でモカが避けるに窮し、動きが鈍る。が、それをカバーするかのように貴道のフリッカーが唸りを上げて信徒の下顎に滑り込み、撃ち抜く。脳震盪を狙ったそれは、しかし鼻から噴出した鈍い血で『それ以上』を為したことを悟らせた。
「全員生かせなんて言うつもりはねえ、情報源は残しとけよ貴道!」
「HAHAHA、努力はするけど手加減はできねえかもな!」
 ジェイクは、貴道が崩した一人にすかさずトドメの一射を叩き込み、仮死状態へ追いやることで追撃の手を引き剥がす。貴道は大げさに肩をすくめると、未だ向かってくるデモ市民にげんこつを振り下ろし視線を巡らせた。
「ティデリックを倒したことで勢いは殺せましたが、やはり薬漬けになってる人達は逃げませんのね……」
「だが、殺さず残しておけば正気を取り戻した時にもっと面白い話が聞けるかもしれないでありますな」
「エッダ、それって……」
 デモの主導であるティデリックを失い、デモ隊は多くが統制を失っている。だが、意識が虚ろであるものはそのまま町長がいる位置へ……壇上ではなく背後のテントへ向かおうとしている。ヴァレーリヤは彼等を押し留めつつ、殺さぬことの難しさを痛感する。薬物で従わせまでした者が、果たして保守派である必要があるか? エッダはその点を『面白い』と形容したのだ。
「我が名は鬼城・桜華! 卑劣な手を使うセフィロトなる邪教集団よ! 町長を暗殺などあたしがさせないのだわ! 我が子鬼殺しの錆となるがいい!」
「町長へ近付けさせると思うな! 俺達の目が黒いうちに勝手させて堪るか!」
 桜華とイズマは互いに信徒を引き受け、モカの負担を減らしつつ着実に敵戦力を削いでいく。殺さず、好きにさせず、そして迅速に。
 演説が中断された以上は早々に再開させねば、届く人に届かず終わる。それすらも計算のうちなら看過できない。
「あと一息、ってところか。しかし黒幕の位置が大雑把にしか分からないから追いようがないのは面倒だな……写真のひとつくらいは撮っておきたかったが」
「なに、それなら問題ないでありますよ」
 ヤツェクは徐々に鎮圧されつつある広場を見渡し、黒幕がいたであろう区画に視線を飛ばした。
 使い魔達の反応が完全に途絶えた辺り、『妖精殺し』によるものならかなり広範で大雑把であり、人ひとりを絶えず追うには難度の高い位置取りだ。
 後を負えぬことに歯噛みする彼に不敵に笑ったエッダに、彼の頭部には疑問符が浮かんだ。
「――うちの“メイド”から逃げられると思わないことだな、黒幕とやら」

 報告。
 ティデリック以下デモ集団の大多数の鎮圧に成功、保守派デモ集団の瓦解を確認。
 セフィロト信徒は三名ほどを自死、他殺を避け確保完了済み。引き続き情報収集にあたる。
 薬物を投与されていた者らはいずれも革新派でティデリックの旧知。何れも本件に囲い込まれた理由などの記憶が欠落している。
 町長による報告はその後、滞りなく完遂のうえ、浄化作戦が開始される見通し。

 補遺。
 エッダからの情報により、黒幕と思しき人物の特定完了。
 ローレットの人物情報ほかと照会し、『七星剣』構成員『紂・妲己』である可能性が濃厚と相成る。

成否

成功

MVP

エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト

状態異常

モカ・ビアンキーニ(p3p007999)[重傷]
Pantera Nera

あとがき

 新情報獲得。
 お疲れ様でした。

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