PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Celeste et>きっと明日のためになる

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●アトラクトス
 例えば手から落ちる石があった。
 太陽の照る、木々の深い景色の中。重力にひかれ自由落下する石はすぐにぽちゃんと水面をわった。外気は剥がれ、泡となって僅かにしがみついた気泡も何割かごとに剥がれて水面の外へと帰っていき、反対に石はゆっくりと回転しながら沈んでいく。
 光はまだ届く。だからこそ見えるのは、何階建てかのアパートメントめいた建物だ。
 それは何階層か続き、いずれも誰かが最近まで暮らしていたような痕跡はない。石作りのぽっかりと空いたスペースと、窓どころか壁すらないエリアだ。
 しかしそれらが少なからず区切られていて、人工的に建設されたものであることは明らかだった。
 これらを人の言葉で『遺跡』と呼び、実際のところこの遺跡に名前はついていなかった。
 呼ぶものがいないというわけでも、住むものがないというわけでもない。人が使わなくなってはるかに長い年月が経った今でも、水棲生物たちはこの区切られた住居を住処としていた。フジツボが張り付いた壁や、魚たちがひそむ小部屋や、エビだかカニだか分からない生物があるく通路やらがあるのだ。
 さて、やっと、底にたどり着いた。砂に優しく、これまで落ちてきた距離を感じさせないほどささやかに砂をたてて着地する石。
 砂の溜まった底部分には貝がある。これまで建物には名前はないといったが、この貝には名前がある。
 ――オイスター・パール『アトラクトス』という。


「貝の養殖場を開拓すればいいのね?」
 イリス・アトラクトス(p3p000883)は、鉄帝軍の事務官オットー・ククルーズニクからの要請(実質的な依頼である)を受け、書類を上から下まで読んでいた。
 海洋王国の出として、あるいは名誉ある父の娘として、さらには青開拓島の管理者として、鉄帝国に対して良くも悪くも思い入れがある。最も強く焼き付くのはどこだろうかと考えて、思い出されたのはリヴァイアサンの放つ光線によって数秒のうちに失われた何百あるいは何千という命だろう。その中に鉄帝軍のものも確かにあったはずだ。
 同じ命を賭した者として。
 過去幾度も戦いがあった国といえど、イリスの視点から見れば故郷の同盟国なのだ。
 ……とまあ、少々遠回しになってはしまったが、結論をいえばイリスにとって鉄帝軍によるこの頼みを承諾するに充分であった。

「というわけで! 皆さんには水没都市の底に貝の養殖場を開拓してもらうことになりました」
 ポニーテールにワイシャツというどこか活動的な格好をしたオットー事務官は、銀の縁をした眼鏡をくいっと直した。親指と薬指で左右を包むようにもつ、どこか合理性を感じる仕草である。
「オイスター・パール『アトラクトス』。この貝は可食に充分かつ繁殖力がやや強いという特徴をもつことがわかっています。養殖場を開拓できれば村の発展は勿論中長期的に島を開拓していくための足がかりとなるでしょう」
 そういいながら、オットーは手書きのシートをホワイトボードへ貼り付ける。
 簡単に書かれた図によれば、水没都市は縦に長い水槽のような形をしているという。
 水槽の壁面部にはるか昔人間達が暮らしていたであろう痕跡があるのみの場所だ。まあ、痕跡といっても残っているのは石の壁と床だけだ。他は全て風化しきって自然に還ってしまっている。それほど徹底して人工的に除去されたのか、あるいはピラミッド遺跡とその周辺のように時と自然が全てをとりさったのか。
 いずれにせよ今住み着いている水棲生物たちにとっては都合の良い住処であるらしく、これらを取っ払って巨大な水槽にするよりは、水棲生物たちを食べるために増やすほうが得だと判断されたようだ。
「とはいえ、ただ貝をまき散らかすだけではいけません。
 危険のある古代獣がいくらか生息していますので、これらを排除してからでなくては安全に収穫ができないのです」
「ここからは私が説明するわね」
 イリスがボードの前に立ち、図解された水没都市にぺたりと絵をはりつけた。
 なんか可愛いおさかなさんが描かれている。あとなんか蛇のなり損ないみたいなやつだ。
「最初に遭遇したのは巨大なラブカに似た怪物よ。とはいっても、二人がかりで倒せる程度のね。
 これと同種……だけど一回り小さくて弱い古代獣が複数体いるから、一緒に潜って倒して欲しいの。つまるところ私達の役割は『安全確保』ってことになるかしらね」
「水中用の探査艇をお貸しします。コレを使って底まで向かって下さい。イリスさんのように自力で水中行動が可能なかたはそのまま、そうでないかたは一時的な水中行動装備や探査艇を使って戦闘を行って下さい」
 他に質問は? とオットーは述べて、最後に依頼書をテーブルに置いた。
「一緒にお仕事できて嬉しいです、皆さん。ご武運を!」

GMコメント

●オーダー
 水棲古代獣と戦い、養殖場を開拓しましょう。

●水中での戦い
 皆さんには水中探査艇一台と一時的に使用できる水中行動装備が貸し出されます。
 これによって水中行動ができない方でもこの依頼中なら水中で戦闘行動をとることができます。
 このうえで、水中行動あるいはその進化形スキルをもっているPCはより有利に動くことが出来ます。

・探査艇
 一台の探査艇を借りています。古代獣の出現する深さまで便利に移動するための乗り物ですが、これを使って戦闘をすることもできます。(誰も使わなくても別に問題はありません)
 ただし一台しかないので、誰かが使う場合は相談して決めましょう。途中で交代してもOKです。
 探査艇には魚雷の発射装置と探査用のアームがついており、多少の格闘や射撃戦闘が行えます。あとなんというか楽しいです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●特殊ルール『新発見命名権』
 浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
 発見者には『命名権』があたえられます。
  ※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
 特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
  ※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
 命名権は放棄してもかまいません。
  ※放棄した場合には、何も起りません。

  • <Celeste et>きっと明日のためになる完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月13日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸
トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ
ジン(p3p010382)
玉ノ緒月虹 桜花(p3p010588)
神ではない誰か

リプレイ


 湖に落ちる小石の気分だった。
 とぷんという外殻から聞こえる音はすぐに遠ざかり、気泡すらも振り切って深く沈んでいく。
 音はすぐに水中の低くくぐもったものに変わり、視界もわずかにかすみ始めた。
 水質は澄んでいるようで、ライトをつけてみれば案外遠くまでみえる。
「なるほど、探査艇というのもなかなか便利なものですね」
 それなりの大人数を乗せられる拡張探査艇。その運転席には『柴犬さんのお散歩マスター』金枝 繁茂(p3p008917)が座っていた。
「ラプカと複数体の小さめの古代獣、地上でなら恐れるに足りませんが水中となると勝手が異なるので気を付けないといけませんね。皆さんが頼りです」
「おーおー、任せとけって」
 『最期に映した男』キドー(p3p000244)は海パン一丁で準備体操をしていた。
 体操ができるくらいのスペースがあるわけではないので、狭い場所で身体をコンパクトにねじったりのけぞったりするという奇妙な動きになるわけだが。
「濡らしたくないものがあれば預かっておきますよ、キドーさん」
「そんなモン……あっやべ煙草あった煙草」
 キドーはポケットから手のひらに収まるくらい小さな煙草のケースを取り出すとそれを繁茂へと投げた。
 紙でできたケースは簡単に繁茂の手に収まり、繁茂はソレを見て苦笑する。
「預かってはおきますが……探査艇の中では吸わないでくださいね?」
「……吸ったら?」
「全部水に浸します」
「やめろぁ!」
 二人のやりとりをはたからにこやかに見ていた『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)。
 瓶に詰めた『サンセット・ラヴ』というドリンクを飲み干すと、独特な柔軟体操を始めた。
「水中戦か。鉄帝領内で水中戦ってハジメテかもシレナイね! まあ内陸だと一年の大半水源が凍ってたりするからね!」
「今更だけど、よくそんな場所で生きて行けたわね……他に資源があったの?」
 『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)にとっては、海の恵みはあって当たり前のものだ。
 それがない暮らしというのは、なかなかつらいものだろう。
(……あっ、そうか。だから『凍らない水槽』をいち早く開拓したかったのね。やけに手が早いと思ったわ)
  海洋王国が同じく前人未踏の『絶望の青』を攻略した際、海路の確保や橋頭堡の要塞化といった作業にまず念を入れていたものだが、思えば資源への余裕からくるものだったのかもしれない。鉄帝の性急さは、餓えと乾きの現れか……。
「ま、こっちも否やは無いしね」
 鉄帝が他国を脅かす超兵器でも手に入れるんならまだしも、飢えた他国民をおなかいっぱいにすることには大賛成なのだ。
「牡蠣なら生のにタバスコとレモンかけたヤツをビールと頂きたいねェ。あ、『アトラクトス』って生食大丈夫なやつ?」
 キドーがビールジョッキを煽るジェスチャーをしてみせると、『微睡む水底』トスト・クェント(p3p009132)が小首をかしげた。
「さあ……どうだろ? っていうか、これを最初に食べた人本当に凄いよね。未知の食べ物でしょ?」
「それだけ鉄帝がホンキだったってことかな?」
 イグナートが苦笑交じりに言う。
 外洋で食べられる魚を求めて遠征する調査隊なんて話もトストは聞いたことがある。食糧問題の解決は、いつの世もあるのだろう。そして鉄帝軍の(トストが聞いている限り表向きの)目的はアーカーシュを食糧資源基地とすることだった。ここまで太陽に近く豊かな土地を、鉄帝が見つけたらまず種を蒔くだろうハナシである。
「やー、それにしても、自分たちで調べて情報を集めた結果こうして開拓が進む……って実感できるのは、なんだか嬉しいね。それに関われるのもさ」
「昔の人々が作り、失われたものが時が巡りまた人の手に戻るか。
 水没した遺構というロケーションといい、ロマンを感じるな」
 窓から水没都市の様子を眺めていたジン(p3p010382)がぼんやりと呟く。
 水のドラゴンロアをもつジンにとって水中での活動はなんら支障のあることではないが、水没した都市を泳ぎ回るなんて経験はさすがに珍しい。水中でもなんなく扱える己の刀に、そっと手をそえた。
 ペイトの穴蔵から、思えば随分遠くまで来た者だ……と。
「ここへきてまさか、未踏の地を探索することになるとは」
 おさかなパンをぱくつきながら、ここまでの道のりを思い出す『神ではない誰か』玉ノ緒月虹 桜花(p3p010588)。
 デザストルから出てきたドラゴニアたちもそうだが、カムイグラを出たゼノボルタたちにとってもこの景色は別世界のようなものだ。
「そろそろ、戦闘が必要な深さに達する頃です。外に出ておきましょうか」
 潜水艦によくある中間室を介して水中へと出た桜花たち。先に出ていた『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)がゆっくりと泳いでいる。
 まるで人魚のように美しく、そして優雅だ。
 フルールが桜花たちへと手を振ってくる。
「古代獣って色んなのがいるけど、どれも古代獣とカテゴライズされてるけど、根元は同じものということなのかしら? 確かハイペリオンの敵も古代獣だったのよね」
「そうなのですか?」
 こくりと頷き、フルールは思案顔になる。
「そもそも……古代獣って何なのかしらね。この辺りの精霊も利用しているようだし……」
 『利用』という言葉にひっかかる。
 フルールなどは共生に近い接し方をしているし、なんなら融合すらしているが、ここの古代獣は自然にあるものを一方的に利用するかのように振る舞っている……と既に見抜いているのだろうか。
「この辺りには、そういう精霊はいないのか?」
 いつでも刀を抜けるように構えたジンに、フルールが否定とも肯定ともとれない動きをする。
「水の精霊はいるわ。たくさんね。けど意志のようなものはもってない最低位のものだし、ただこの場所を満たすことだけを考えてるみたい」
 たとえば地球という世界の歴史には『目的論』というものがあって、世界は水で満たされているという考えが今でいう万有引力なみに支配的かつ常識的だった時代があったらしい。
 魚が泳げるのは水がそうしたいと意志をもったからで、魚の手前で水が別れ尾で再び閉じるのだと説明されていた。らしい。
 だからといって大声で呼びかけたところで聞きやしないし、本来の『目的』から逸れることはない。自然のものが自然なままであるのだという当たり前のことに、説明をつけただけにすぎないのである。
 ……ちょっと遠回しになったが、フルールが言ったのはそういうことである。
「それより、そろそろシゴトの時間みたいだ」
 イグナートが身構える。クリアな視線の先には、ラブカめいた巨大な水棲古代獣が見えていた。

●古代獣『×××』
 この古代獣に名前はない。つける必要がないからだ。
 より正確に言うなら――。
「今ここで倒すからね!」
 イグナートは今日売れ綱ドルフィンキックで水中を加速すると、突っ込んできた古代獣の牙を豪快なカーブですりぬけた。
 バクンと後方で顎の閉じる音がするが、イグナートは水没都市壁面にむけて前転と身のひねりをあわせたクイックターンをかける。直角以狭の角度で曲がってきたイグナートにまるで反応できなかった古代獣へ、思い切り握りしめた拳が炸裂する。
「野生動物が近寄らないようにするにはここがキケンだってしっかり分からせないとね! 片っ端からぶっ飛ばすよ!」
 パンチの威力がモノをいうのはシャコの例を出すまでもなく当然だ。
 脳を揺らされた古代獣が目をぎょろんとむき、イグナートはすかさずその肉に指をつっこみ熟練ロッククライマー並の握力で掴み固定した。
「オレタチ、ツヨイ。ココ、ナワバリニ、スル。テキタイ、スルナ。シナケレバ、ショクジニ、クルノイイゾ」
 後半自分でもちょっと何言ってるのかわからなかったが、そのままあえて口に出しながら突っ張るようなキックを打ち込む。
 古代獣は今度こそ脱力し、地面にどふんと沈んだ。わずかにだが海底の砂があがる。
「なるほど……しかしこれは……」
 探査艇の中から眺めていた繁茂は、周囲の古代獣達が怯えるのではなく逆に激高したのがわかった。牙を剥き、いまにもイグナートたちを食いちぎりそうだ。
 繁茂は眼鏡をくいっとあげると歯を見せて笑った。
「実力行使は望むところ」
 操作レバー先端にあるカバーを開くと、赤いスイッチを押し込みまくった。
 探査艇に装備された魚雷が次々に発射され、古代獣を包み込むように爆発する。
「なるほど! これは愉快痛快! 胸がすきますねぇ! はははっ!!」
 更にレバーについたグリップ部分を押し込むと急加速し、操作を脚部のデバイスへと移行。レバーを解放するように倒し装着していたグローブと肘プロテクターをタップする。
 すると探査艇のアームが繁茂の両腕とほぼ連動して動き始めた。
「オラァ!」
 ただのアームではない。鉄帝の武器商人と兵器技師が作り上げたマジモノの兵器である。巨大な鋼の塊が凄まじいパワーでもって古代獣の顔面を殴りつけた。
「逃がさないですよッ!! はははははーッ!」
 さらに開いたアームで相手の身体を掴むともう一方のアームで顔面をひたすらに殴りまくる。
 探査艇を作ったのは兵器技師だと聞いたが、むしろ探査能力のほうがオマケだったのではないかと思うほどのパワーだった。
 ひとしきり古代獣をいじめたあと、アームでネクタイでも直すような仕草をしてからライトを仲間達のほうへむけた。実際ネクタイを直したのだとおもう。
「……ふぅ、みなさん無事ですか?」
「あ、ああ……」
 いきなり暴力的なメカを見てしまって軽く引いているジン。
 が、引いている場合ではない。
 ジンに狙いを定めた古代獣が一気に距離を詰めようとしている気配がわかったためだ。
 水中での動きは慣れたものである。
 ジンは翼と尾を器用に動かすと、まるで横にスライドしたかのような巧みな動きで古代獣の突進を回避。
 と同時にぐるんと身を回転させると相手の突進の動きを利用した斬撃を撃ち込んだ。
 身体の側面から盛大に出血した古代獣が暴れ、なんとかもう一度食らいつこうとターンしてくるがその動きは予測済みである。
 スッと突き出した刀の鞘が古代獣の顎を上下に突っ張るように割り込み、顎を開いたままの状態に固定した。
 そして、ジンは桜花に『今だぞ』と首をかしげるようなジェスチャーをした。
「ありがとうございます。このチャンス、逃しません!」
 鋭く、そしてクリアな視界のなかで桜花は弓を構えた。よく引き絞られたつるとよく磨かれた軽量な矢は、水中であろうと構わず飛ぶだろう。
 そしてそれを、強く信じることができた。
「私の眼の見えている間は逃がしません!」
 矢を放つ――と同時に素早く矢筒から第二の矢を抜き、まるで連射機能を予め備えた機械のごとく正確に連射して見せた。
 一方。フルールは『精霊天花・焔』によって精霊と融合し、焔のような髪をなびかせ古代獣たちと戦っている所だった。
 複数の古代獣が荒れ狂う中、次々と『紅蓮閃燬』の技を放つ。巨大な鳥が飛んでいくかのようなエフェクトと共に古代獣へと炎が絡みつき、水中であるというのに赤く光って燃え上がる。
 それをやめさせようと後方から古代獣が回り込もうとするが、イリスがそれを許すはずがなかった。
 ディープシーらしい機敏な水中移動法でもってフルールの後方をカバーすると、翳した盾を斜めに振るようなフォームで古代獣を受け流す。
「このやりとりは、もう経験済みよ」
 受け流す動きに連動させるかのように剣を突き立て、古代獣の身体を豪快に切り裂いて行く。
 あまりに綺麗に剣が入ったのか、振り抜く動作によって動きをぴたりと制動したイリスの後ろで古代獣がすぱんと真っ二つにわかれ、そのまま水没していく。
「お、いいねえ。いかにもマズそうな見た目してるが……もしかしてこいつも食えんのか?」
 キドーはきひひと歯を見せて笑うと腰にさげた鞄からぷっくりとしたダガーを取り出した。持ち手が細く刀身がどんぐりのように太い、投擲目的のナイフだ。なんなら投射器にさして発射するような品だが、キドーはあえてこれを手で投げた。
「トストぉ、合図だすぞ! 一気にぶちこめ!」
 オラァといって投擲したナイフは古代獣に『着弾』した途端に中身のいたずら精霊たちを急激に満たし、そして当然の物理法則として爆発し破片をばらまいた。精霊式の破片手榴弾である。
 妖精が木の実を空洞化した間借りするという性質を、ワインを火炎瓶に改造するが如く利用した品だろうか。
 こうしておきた派手な爆発はトストの目印として充分すぎるほど充分だった。
「みんな、とんどんとんでけ!」
 両手を突き出すように構えたトスト下半身(?)のサンショウオボディをしゃかしゃかと動かすことで魔法のステップを完成させると、二重の魔方陣を手のひらから生成。互いに影響しあったことで拡大した巨大な二重円からにゅにゅうっとサンショウオ型のエネルギー体が次々に顔をだした。
 それらが爆発の光を目印にし、一斉に飛び出し泳いでいく。マイクロミサイルと化したエネルギー体たちは古代獣にまとわりつき、次々に爆発した。
 ここまでされて生きていられる古代獣ではない。
 最後の一匹もまた、地面におちて砂をまきあげるのみとなったのだった。

●養殖場
「このへん、珍しい魚いるかなあ」
「どうでしょう。前人未踏の地ですからね」
 危険の排除を終えたトストは桜花と一緒に都市内を探索していた。
 前回見たときもそうだったが、『水没都市』というのはちょっと誇張した表現である。規模的には団地のそれだ。
「警戒心の強い魚は顔を出さないかも知れない。身を潜めておくといいかもしれないな」
 ジンが気配をけしながら探索を始める……その一方。
「ずっと昔に人が住んでいたなら、特別な建物はないのかしら? 広くて養殖に適したような」
「それは、天敵から逃れてコロニー化するためのスペースということでしょうか。確かに、この辺りにはそういう場所もありそうですね」
 フルールと繁茂が探査艇で照らしながら周辺探索をしていた。
 探査艇の中ではキドーが煙草を一本取りだしている。
「……キドーさん?」
「え、ダメ? 一本だけ! 一本だけ!」
 とっくみあいが始まろうかというころ、探査艇の窓をイリスがノックした。
「丁度良いスペースがみつかったわ。目印をつけたいから、道具を出して」
 海底の植物が多く、貝の養殖に適したスペースがあったらしい。
 イグナートはそれらの植物を適当に抜いて、「コレは食べられるのかな?」とか危ないことを考えていた。未知の動植物はフツーに毒をもっていたり下痢のもとになったりするからいきなり食べるのはよそう。
「植物がこうして育ってるってことは、土にエイヨウがあるってことだよね。育成にいいんじゃないかな」
「私もそう思うわ。島の養殖場もそんな感じだったから」
 イリスは管理している島での漁を思い出しながら頷いた。
「この養殖が成功すれば、レリッカの村も豊かになるし……拡大できれば鉄帝にも恩恵が広がるってわけね。なかなか、意義のある仕事だわ」
 水の中なのに汗を拭うようなしぐさをして、イリスはフッと笑った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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