シナリオ詳細
<Celeste et>ハイパー一本道ダンジョン(ただし縦に)
オープニング
●一本道ダンジョン(ただし縦に)
『アーカーシュの地下には広大な迷宮が広がっている』
そう聞いたあなたは早速、その入り口のひとつへと飛び込んだ。
石ブロックを積み上げて作られた円形の入り口はかなり大きな井戸を思わせ、飛び込むには充分な広さがあった。
しかし飛び込んだ先がどこまでも下に続いているなどと、流石に思わなかったのだ。
「皆さんこんにちは! アーカーシュのダンジョンへようこそ! 只今ダンジョン内です!」
上下逆さになって落下中の情報屋、デルフォイがマイクに向かって叫んだ。距離的にも状況的にもマイクは不要だが。
「このダンジョンは一本道になっていますが、まさかの! 縦方向に! 一本道なのです!」
そいやっと叫んで落下制御装置を起動。落下速度をどんよりさせたデルフォイは壁際から突き出た板状の突起へと着地した。下を覗き込むと真っ暗なのだが、ライトを照らしてみるとこれと同じような突起があちこちにあるのが分かる。
ついでに、半透明なクラゲめいた物体がぷわぷわ途中に浮いており、動物知識に詳しいデルフォイはこれが毒クラゲの特徴に似ていると指摘した。
「わたくしが案内できるのはここまでです! この一本道ダンジョン、奥に何があるのか非常に気になるところですが、それ以前にあのクラゲ型の古代獣が地上へ出てきたら危険なので駆除して欲しいという話でございました。
以上、あとはよろしくお願いします!」
せいやっと言いながら今度は簡易飛行装置を起動させ、プロペラ仕掛けで空へと浮上していくデルフォイ。
のこされたあなたは、早速この一本道ダンジョン(縦)の探索を開始するのであった……。
●アーカーシュ
鉄帝国南部の町ノイスハウゼンの上空に発見された伝説の浮遊島アーカーシュ。
そこから三人の少年少女が降りてきた(というか落下してきた)ことから実在が証明され、鉄帝軍部を主導とした調査隊が結成されたのであった。
調査隊の主要メンバーは軍人から民間人まで幅広く、そして実働部隊の大部分はローレット・イレギュラーズ(つまりあなたとその仲間)で構成されている。
まずは島唯一の村といわれる『レリッカ』へと飛空艇を停泊させ、村人と友好関係を結んだ探索隊は村をスタート地点とした長期的な探索を開始したのである。
村といっても、レリッカの民は数少なくそこそこ自給自足が出来る程度の環境を整えたっきり永きにわたって村の外へ出ることなく過ごしてきたという。
理由は単純。危険だからだ。
村の外には古代獣の生息域が広がっており、できることと言えば食物連鎖のサイクルに加わることくらいだろう。それもミミズかネズミと同じくらいの位置に。
しかしそんな状況はローレット・イレギュラーズによって一変した。前人未踏を達成することに定評のあるローレットは早速周辺地域の探索を開始。自然にのまれきった古代遺跡を見つけたり古代獣と戦って倒したり強大な古代獣に食われることなく情報を持ち帰ってきたりと大活躍の数々を早速打ち立て未知の動植物や遺物を発見し自分の名前がつけられたりした。
というわけで、これはそんな探索の一環であり環境改善の一環だ。
レリッカからほど近い位置にあった巨大な井戸みたいな遺跡入り口。クラゲ型の古代獣が時折上ってくるからと蓋を閉じていたここへ、早速飛び込み古代獣の駆除を始めよう。
このダンジョンに名前はない。クラゲ型古代獣には、一応『ポーター』という名前がついている。なんかずっと昔に使われていた銀貨の名前からとったものらしいが、村人もよくわかってないままその呼び名で定着しているらしい。
そんなことはいい。肝心なのは能力だ。
『ポーター』は青白い触手を伸ばし触れたものに毒のダメージを与えるという能力を持っている他、自力でぷかぷか浮かぶことができるらしい。
本体がぼんやり銀色に発光しているので暗闇のなかでもまあまあ分かりやすいが、うかつに近づくのは危険だろう。
そしてこのダンジョンは底に何があるのか今のところ誰も見たことがない。
進めば進むほど探索は上手くいくはずだが、危険になったら支給された簡易飛行装置を使って帰還することが求められている。
無理せず突き進み、未知を知ろう!
- <Celeste et>ハイパー一本道ダンジョン(ただし縦に)完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年05月01日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●一本道ダンジョンの底やいかに
「空に浮かぶ伝説の島とそこにある未知の遺跡……か」
風の吹く丘の上。遠い空を眺めながら、『青眼の灰狼』シュロット(p3p009930)はそんなふうに呟いた。肩へ僅かにかかる灰色の髪がなびき、どこかから抜け落ちたらしい葉が飛んでいく。
鉄帝の空に浮かぶ島アーカーシュは、その性質ゆえに空が近い。
物理的に高度が高いという意味のみならず、島のどこにいても大体空が広く見えるのだ。一方で海ははるかに遠く、空気もどこかからっと渇いた気配がする。
鉄帝の街中にいるとあまり感じない空気であり、海洋や練達ならなおのことない世界だ。
「まるで冒険小説の世界だな。これが鉄帝なのか?」
「正直鉄帝だと言って良いのかあやしいですけれど……」
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が苦笑を浮かべた。
確かに俯瞰地図で見れば鉄帝に位置しているものの、文字通り地続きではないし、領海にだって触れていない。鉄帝軍も調査隊を派遣してこそいるが、領土を主張しているかといえば微妙なところだ。
「そんな規模のことを考えても仕方ありませんわ。私たちはこの縦穴の理由すらわからないのですから」
振り返るヴァレーリヤ。
大きな穴が、そこにはあった。
石によって円形に縁取られた穴で、手前にはその穴がいかなるものかを示すであろう標識が建てられている。
とはいっても、2m程の石の柱がたちその先端に記号のようなものが描かれているだけのものだ。記号が何を意味するかなど、ヴァレーリヤには想像すらできない。
例えるなら、現代人がヒエログリフをぱっと見で解読できないようなものだ。ヒエログリフの意味がわかるのは、それを発掘した際に周囲の状況諸々と照らし合わせたがためだ。意味を口伝する人間がいたわけでもなければ、説明書が付属していたわけでもない。
未知のエリアに刻まれた記号を知るには、未知のエリア全体を知らなければならないのだ。
「少なくとも……人工的に、何かの意図をもって作られた穴なのは確かでしょうね。
この標識が『警告』なのか『案内』なのかで大きく意味がかわりそうですけれど……」
トレーラーを連結したホバーバイクをとめた『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)が、バイクから降りて穴を覗き込む。
「たしか、『ポーター』っていう古代獣が出るスよね。というかポーターってなんです? 歴史上の人物か何かっスか?」
「さあ?」
「聞いたことはないな」
揃って首を振るヴァレーリヤとシュロット。
陸鮫に跨がって穴へと降下する準備を整えていた『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)が振り返る。
「私に心当たりがない。世界中の通貨単位は知っているつもりなんだがな」
金(カネ)というものはそれを保証する存在なくして維持されない。ある日誰かが勝手に自分の名前を付けた紙幣を発行したところで誰もものを売ってくれないし、もしそれが成立したなら相応の価値をその個人が保証したことになる。
そして保証に対して信頼が生まれ、やっと通貨は使用されるのだ。この通貨の信用が失墜したなら、多くの場合それらは使用されなくなる。実質的な通貨の死だ。
「おそらくは、はるか昔に滅んだ通貨単位……あるいはその通称といった所だろう」
誰も底を見たことのない縦穴といい、興味をそそられるな。などとラダは呟いて微笑んだ。
「…………」
それまで黙っていた『ツクヨミ』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)が、ここへきてやっと頷きと肯定の声を発した。
「ここまで調べてみましたが、鉄帝の古代遺物の雰囲気に少しだけ似ていますね。これが何を現すのかとまではわかりませんが」
そう言いながら、空を旋回させていたワイバーンに降下命令を出し、自らのもとへと降りさせる。そうしながらも、ツクヨミは眼前に縦穴めいたホログラムマップを組み立てていた。
穴へ先行させたファミリアーからの情報を総合し、見える限りのマッピングを行っているのだ。
……が、それが途中でぴたりと止まる。ツクヨミもまた、びくりと身体をふるわせた。
「どうやら、先行していたファミリアーがポーターにやられてしまったようです」
マップも途中で止まっている。が、そこまではポーターが出現しないことを意味している。なかなか重要な情報だ。
ムムム、と唸る『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)。
不安そうに穴の中を覗くポチを懐に隠れさせると、鮫の尾を振って空へと浮遊した。まるで水中を泳ぐかのように飛行している。
「この井戸には底があるんじゃろか? それとも、井戸じゃなくエレベーターかなにかなんじゃろうか?」
そう言いながら、自らの尾びれや背びれから青白い光を放つ。
彼が先行して降りていくと、暗い穴の中がよく見えた。
「よっ――と」
『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が靴に装着した簡易飛行装置からプシュンと魔法の浮力を少しだけ働かせると、宙返りをかけて板のひとつへと着地する。それを繰り返していけば、飛行能力がなくとも結構普通に降りていけるようだ。
「なるほど、ものの見事に縦一直線だな。
正に巨大な井戸……或いは、逆さまの塔といった所か。
ここの底には何があるか。俄然、興味が湧いてきたよ」
「もうじきポーターの出るエリアだぜ、掴まれ」
ワイバーンに跨がりゆっくりと降下していた『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)がワイバーンの脚を指し示す。汰磨羈は『丁度良い』とばかりに脚にぱしりと捕まり、自らを振り子のように運動させて別の板へと飛んだ。
ホルスターからリボルバー光線銃をぬいたヤツェックは、その銃口でウェスタンハットのつばを押し上げた。
「俺はおっかなびっくり行かせて貰うぜ。未知のスリルを味わうにゃあ年を取り過ぎたんでね」
「よく言う」
板から別の板へと狙いを定め、跳躍する汰磨羈。
そしてその間に薄ぼんやりと光るポーターの姿が、確かにあった。
●古代獣ポーター
跳躍。滞空。意識の集中によってスローになっていく世界。
汰磨羈は宙返りをかけながら逆手で抜刀し、ポーターの傘部分へ突き立てるように突き立てると傘部分を蹴りつけた。
人を乗せられるほどの浮力がないのかすぐにガクンと傾き墜落を始めるポーター。一方の汰磨羈は簡易飛行装置を起動させて軌道を修正しつつ、すぐそばの足場へと着地する。
そんな汰磨羈を狙って無数のポーターが接近し触手を伸ばしてくるが、汰磨羈の刃がそれをひと薙ぎにした。
順手に持ち直し横一文字に払われた剣の閃きがおきたかと思うと、次の瞬間にはポーターたちがわさわさと伸ばしていた長い触手が閃きのラインにそって切断され散っていくのだ。
それで明確な敵対反応を見せたポーターがなんとしてでも汰磨羈にダメージを与えようと腕や脚に絡みつくが、それを阻んだのが潮である。
尾びれのキックと両足によるドルフィンキックで宙空を加速した潮は、水泳選手の飛び込み姿勢のようなポーズからなめらかに両手首を×字にクロスさせた姿勢へとチェンジする。
「治癒と防御は任せてもらおう」
クロスチョップによって強引にポーターたちとの間へ割って入ると、大きくターンしながら治癒力の高いサメビームを汰磨羈へと放つ。
『助かる』と小さく手をかざす汰磨羈。
そしてすぐに、『あっちを重点的に助けてやれ』とハンドジェスチャーを出した。
潮が振り返ると、陸鮫を簡易的な足場にしながら飛び飛びに足場を移動するシュロットの姿があった。
突き出た板状の足場に着地し、腕部分に格納されていたボウガン機構を露出、展開。左右にガバッと開いた弓に矢をかけると、彼を狙って宙を踊るように接近するポーターへと矢を放つ。
命中、命中、一発かすって、また命中。
次第に距離が近づき、飛び退こうとしたシュロットの脚に、足場の真下から顔を覗かせたポーターの触手が素早く伸びて絡みついた。
「こいつ――!」
身体ががくんと傾き、真っ暗な穴の中央へと転落しそうになる。
が、シュロットは冷静に腰からサバイバルナイフを抜いて触手を切ると、自分を呼んで急接近する声を察知して反射的に手を伸ばした。
ぽしりと潮に自らの手首が掴まれ、シュロットもまた彼の手首を掴み返すことでぶら下がる状態になると、口で無理矢理腕のボウガンに矢をつがえて追いかけてこようとするポーターへと射撃した。
見事命中し、ぐらんと傾くポーター。
飛行能力というものは体力の大半を失うと喪失されるものである。ポーターも例外ではないようで、傘をだらんとさせた状態で転落を始めていた。
途中足場となる板のひとつに激突し、バウンドしながら落ちていくのがシュロットの暗視モードを起動させた目で見えた。
「随分いやらしい攻撃をしてくるっスねえ」
「ま、相手も馬鹿じゃねえってことだ」
彼らの様子を観察ていた美咲とヤツェク。それぞれのワイバーンに跨がり、円柱状の穴を螺旋状に旋回するような軌道をえがいて降りている。
「んにしてもこんな穴なんのために作ったのか……あれか? 古代文明が雷とかゴーレムとかを地上に投下していたのかな? 私の世界でそんな映画があったんスよねー」
「なんでそんなことしてんだ古代人。嫌がらせか?」
「大体そうっスね!」
原作者が怒り出しそうなテキトーなことを言いながら、美咲はだぼっとしたジャケットの内側に仕込んでいたホルスターからピストルを抜いた。隠しておくのに丁度良いスリムさで、大砲かついで歩いていてもたいして不思議がられない混沌世界においてもついつい常用してしまうピストルである。美咲にとっては『無防備に見えること』『注意を向けられないこと』ほど強力な武器はないのだ。
まあ、今このときに関してモチベーションやルーティーン以外の意味はないのだが。
「それじゃあ、じゃんじゃん撃つっスよ!」
「オーケー!」
美咲は手前のトグルを握って操作すると、ピストルを思いっきり眼下のポーターの傘めがけて乱射。
対するヤツェクもまた腰にむき出しにした革製ホルスターからリボルバー光線銃を抜くと、セーフティーを親指でカチンと素早く解除して弾倉の許す限り撃ちまくった。
リボルバー光線銃の良いところはなんといってもその整備性と信頼性の高さである。ちまっこく威力が低い反面、泥沼に落ちたとて撃ちまくれるその信頼性はギターと船に並ぶヤツェックの『旅の相棒』であった。それはここ異世界においても変わらない。船は一緒に来れなかったけれど、この独特の銃声を聞く度に思い出として蘇る。心の中に、船と旅はまだあるのだ。
「いいねえ」
ヤツェクは弾倉を解放し空薬莢を乱暴に眼下(多分さっきポーターと一緒に落ちていった)へばらまくと、腰から下げた革袋に左手を突っ込み、光線銃用の.45コルトレーザー弾を取り出す。一瞬の動作にも関わらず正確に八つ。それも同じ向きになるように指を器用に動かして一つずつ高速で滑り出させ、親指でぎゅんと回した弾倉へ正確にすべて装填した。この間一秒足らずである。
「おや、手慣れてるっスねえ」
マガジンをカチンと交換しおえた美咲が声をかけると、ヤツェクは肩をすくめた。
「これができると女にモテるんだよ」
「でーすよねー。うちでもバタフライナイフ持ってた大学生は『モテ』ましたよ」
片眉だけをあげる、なんともビミョーな笑顔で返す美咲。
「なんの話をしてる?」
二人が軽快に嘘を交換し合ってる横で、ラダが不思議そうな顔をしながら足場から顔を覗かせた。
先行する仲間達にポーターへの防御を任せ、自分は後方から射撃をし続けるという作戦である。
スッと額からサイバーゴーグルを下げ、アイアンサイト越しにライフルを構える。
こういうときは変に凝った道具に頼るより、銃の中央に自分で打ち込んでピンを目印にするのが一番ハマる。
己のルーティーンにたたき込まれた一連の動作が、まるで精密機械のように正確にポーターの中心核と思われる箇所に狙いをつけ……おもむろに二発、発砲した。
それも、一発撃ってレバーアクションによって空薬莢を排出し次弾を装填し照準し直して発砲という手順をふんでである。
であるにも関わらず正確にポーターの中心核にライフル弾がめり込み、めり込んだところにもう一発の弾頭がぶつかりそのまま派手に貫通していった。
よし、と小さく呟いてから側面を見る。先ほどからずっと気になっていたが、穴の側面には時折ポーターと同じ白銀色に光るものがあった。近づいてよく観察してみると、それは五センチほどの花であった。見たことのない花だ。丁度良いとラダはその花を丁寧に採取することにした。石の間にタンポポめいたタフさで根を張ったそれを、ちょっとだけ時間をかけて採取する。
そうしている間にも、ツクヨミはワイバーンの背に乗り順調に降下を続けている。
「ヴァレーリヤさん、この先が見えますか?」
暗視能力によって覗き込むことのできたツクヨミが問いかけると、彼女のワイバーンに相乗りしていたヴァレーリヤが首を横に振った。
「残念ながら……。何かあるのですか?」
「なんといいますか……『水面』のようなものが見えます。おそらく穴の底でしょう」
その話を聞いて『まるで井戸ですわね』と言いかけてから、ヴァレーリヤは顔をしかめた。
ただの水面を話題に出すにしては、ツクヨミのトーンはやや緊張していた。
「何か、いるんですのね?」
ツクヨミは頷き、そして『私が閃光弾代わりになります』と言外に述べてワイバーンから飛んだ。
ほぼ自由落下とも言うべき降下だったが、降下しながらも自らをまばゆく発行させたツクヨミは着地と同時に強烈なパンチを叩き込んだ。
ドブンと波打つ水面。しかしそれは水面などではなく……巨大なポーターの傘であった。
光を照らしたことで反射されよく見えるようになった中心核。そこめがけ、ヴァレーリヤはなるほどと小さく呟いた。
「ならば、思い切り……」
ヴァレーリヤは声に出して聖句を唱えた。
――『主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え』
燃え上がる炎がヴァレーリヤの赤い髪を照らし、ワイバーンから飛んだ彼女の髪を踊らせまるで炎のように靡かせた。
「ど――せい!」
強烈に叩きつけたメイスが、今度は巨大ポーターの傘をぶち抜き核らしきものを破壊。ぐじゅりと音をたてた巨大ポーターは崩れ……そして今度こそ『水中』へと沈んでいった。
「ふむ、これは……」
仲間達をサポートしながらおりてきた潮が、シュロットを安全な足場へとおろし水面を抜ける。
底まで潜ってみたところ、水の底にはポーターの死体が山のようにあった。
これまで倒してきた個体だとは思うが、よくみると幼体のようなものも混ざっている。
「どうだった?」
顔を出した潮を出迎えるシュロット。その上ではヤツェクと美咲、そしてツクヨミがワイバーンでホバリングしながら周囲を観察している。
相乗りしていたラダも顔をのぞかせ、一足遅れる形で汰磨羈もすとんと足場に着地した。
「なかなか楽しい探索だったぞ。で、ここが『底』なのか? 行き止まりか?」
「いや……ううむ、行き止まりといえばそうじゃが」
潮はうなり、そして穴の底で見た光景を説明した。
縦穴ダンジョンの底には、横穴があった。
いや、穴ではない。ゲートだ。
ゲートの先には、ゴーレムだらけの水路が続いているという。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●オーダー
縦に伸びた一本道ダンジョンを探索し、沸いてくるクラゲ型古代獣『ポーター』を倒しまくりましょう。
倒せば倒すほどグッド。進めば進むほどグッドです。ただし無理は禁物ですので、あかんなと思ったら即帰還しましょう。
あんまりみんなが無理に突き進みすぎたり誰か一人置いてかれたりしたら失敗扱いになってしまいますが、普通にやればそうはならんでしょう。余談ですが殆ど倒せないまま(あるいは進めないまま)探索を終了しても失敗扱いとなります。
●ダンジョン構造
ものっすごく縦に長い一本道ダンジョンです。
横幅はそれなりに広いのですが、二車線道路のトンネルが縦向きになったものをなんとなく想像してください。
途中途中には板状の突起があり、ちょいちょい着地することが可能です。
飛行能力がない場合、支給されている簡易飛行装置を使ってぴょんぴょん足場を飛び移りながら戦闘を続けることになります。これはこれでわりと楽しいのでお勧めです。
●特殊ルール『新発見命名権』
浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
発見者には『命名権』があたえられます。
※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
命名権は放棄してもかまいません。
※放棄した場合には、何も起りません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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