シナリオ詳細
神より逃れよ生命は我が物である
オープニング
●天義に反するもの
聖教国ネメシス。首都フォン・ルーベルグを中心とする神を愛した国は、しかし神に愛されているとは限らない。
そんな国の夜。
美しく舗装された石畳にはきわめて美しく整頓された下水道通用口が並び、マンホールには等間隔に紋章が刻まれ、それを囲むように神への祈りが刻まれていた。
この地を治める貴族の強い信仰心と祈りの心が示された道。
その道を、闇夜に混じり子供たちが走る。
シスター服を纏った女が、その先頭をゆく。
急いで。兵隊に見つからないように。そう小声で述べるシスターの後ろで、幼い少女が転倒した。
泣き声をあげる少女。
ハッとしてシスターが口を覆うも、すぐさま近くの家で明かりが灯った。
窓が開き、カンテラを手にした男が顔を出す。
「見ろ、孤児院の女が子供たちを浚っているぞ!」
声が響いてから一分とたたぬうち、通路の前後を兵隊たちが取り囲んだ。
ネメシスの印と貴族の印。その二つが刻まれたカブトはまぎれもなくこの土地を納める貴族の兵隊であった。
剣を、杖を、銃をつきつける兵隊たち。
シスターは膝を突いて両手を組んだ。
「どうかお願いです。私はどうなっても構いません。この子たちを見逃してくださいまし。貧しい暮らしが続けばこの子たちは生きていけません」
対して兵隊は表情のひとつも変えずに、シスターを文字通りに斬り捨てた。
剣で首をはねたのである。
「正しき民ならば、貧しさに屈することはない」
石畳に転がる生首。マンホールへと流れてゆく血。
おびえる子供たちに膝をつき、兵隊たちはとても穏やかな顔で手を差し出した。
「恐かったろう。正しき民をたぶらかし、国外へ浚おうとする魔女は倒された。さあ、孤児院へ戻ろう」
●知られざる亡命
「どうかお力を貸してくださいまし。あなた方は王に認められ入国を許されていると聞きます。そしてきわめて『良い人たち』とも……」
老いた修道女が手を組み、酒場の汚らしい床に膝を突いていた。
ここは幻想の東側に位置するスラム街。その中でも裏の仕事があちこちから舞い込んでは闇へ消えてゆく、裏酒場である。
こうなれば困るのは『黒猫の』ショウ(p3n000005)である。
紹介できるからとイレギュラーズたちに引き合わせたものの、急に膝をつかれてしまうとは。
「ネメシスっていうのはまあいい国みたいなんだけど、神様が好きすぎるのかな。信仰心によるメンタルヘルスにかなり頼っちゃってるみたいでね……。
長くなるといけない。要点だけつまんで話そうか」
ショウは頭をかりかりとやって、修道女へ椅子に座るよう促した。
「この人たちの目的は『亡命』だ。
ネメシスから幻想へと移り住もうとしている。
幻想の孤児院が受け入れ先になっていて、あとは子供たちを移すだけなんだけど……そんなことあの国が認めると思うかい?
『正しき民が国を捨てるはずがない。そうする者は魔種かその手先に違いない』って考えで、即時処刑する有様さ。
実際亡命を試したみたいだけど……うまくいかなかったみたいでね。
今は子供たちは『魔女にさらわれそうになった正しき民』としてネメシスの孤児院に戻されている。
彼らを手引きして、国を脱出させるんだ」
ここで堂々とローレットの名前を出してぶつかれば立場が非常に悪くなる。やるべきは『正体を隠して連れ出すこと』だ。できれば天義の兵隊にすら名前や顔を知られないほうがいい。
未だ膝を上げぬ修道女が、更に深く頭を下げた。
「容易ではないことは承知しております。けれどこれ以上子供たちが貧困に晒されることは耐えられないのです。
全てとはもうしません。せめて半数……子供たちがこちらに来ることができれば……」
- 神より逃れよ生命は我が物である完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年08月10日 21時30分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●聖なる町の、聖なる闇
聖教国ネメシス。通称『天義』。
神を愛する聖なる国は、正義の人々で成り立っている。
彼らの信仰心は皆完璧に厚く、不正義など絶対にありえない。
もしそうであるならば、魔に冒されたものである。
……そんな国の表面は、きわめて清潔で整然としていた。
道路は玉をどこまでも転がせそうなほど丁寧に舗装され、等間隔のマンホールは排水および大雨への対策がきわめて誠実に守れていることを示す。その理由は、マンホールの表面に刻まれた紋章と祈りの言葉から分かるだろう。
幻想の貴族主義とはまるで違う、きわめて誠実な町作りとその管理がなされている。
特にこの町、エインサンドはそれが如実に表われた町であった。
すれ違う国民はみな穏やかに微笑んでおり、爽やかに挨拶を交わす。紙袋からパンを覗かせる主婦や熱心な道路掃除夫。みな豊かで穏やかな町。
兵隊たちは一切の怠惰を見せず、一人一人網のように細かく規則正しい見回りをこなしている。
そんな町の様子を、『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)はあえて身分を隠さずに見て回っていた。
今は仲間たちと共に地形の兵士の巡回パターンを把握すべく、あえてこうして『イレギュラーズの来訪』を装っているのだ。さきほど述べた情報は、その観察によって得られたものだ。
けれど。
「堅物相手って苦手だわぁ。融通がきかなくって……」
これが幻想の兵士であれば、リノの色仕掛けひとつで警備に大穴を開けられたろうに。まるで神の作った彫像のごとく意志の硬い町の兵士には誘惑が通じる様子がまるでなかった。
いや、人間欲望なくして生きられないと考えれば通じてもおかしくはないのだが、『通じやすい人間』は片っ端から『殉教』したのだろう。
そして貧困に負けた人間も、同様である。
「貧困をどうにかしようという考えはこの国にはないのかな? 正しき民は貧困にあえいで死んでも、それがカミサマの御意向って考えてるのかな……?」
リノ同様小声で語らう桜坂 結乃(p3p004256)。
『記憶喪失の旅人』ティバン・イグニス(p3p000458)が目を細めた。
「町の設備はこれ以上無く整ってる。福祉にも熱心なんだろう。信仰による統治ってのはそういうもんだ。だが……こういう連中には本当に反吐がでる」
信仰が『強制的な教育』と呼ばれることがあるように、多くの人は信仰の意味を理解できない。末端市民は思考停止し、信仰に人生を捧げてしまう。
ティバンが嫌っているのは、これが富裕層を肥え太らせるためのズルいルールなどではなく、国家国民全体を維持するために機能しているということだ。誰を殺しても変わらない国家摂理なのだ。
「うーん……思うところはいっぱいあるけども」
七鳥・天十里(p3p001668)は頬を指でとんとんとやってから、きわめて小さな声で言った。
「子供たちをちゃんと逃がしてあげないとね」
ここエインサンドは天義の西に位置している。海に近く、下水道は浄水設備を通してそのまま海へ排出されるようにできていた。
……ということを、配管工の男はごく普通に教えてくれた。
加えて、町の地図も譲ってくれた。
最後にこう述べるのだ。『神と共にあらんことを』。
「チッ……胸糞悪い連中だ」
『黒キ幻影』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)は舌打ちをして、逆十字のペンダントを取り出した。
世が世で土地が土地なら持ているだけでつるし上げられそうなシンボルだが、ここエインサンドにおいて十字架シンボルをあがめる風習はないらしい。それでも、シュバルツはかの者たちと同様の何かを感じたようだ。
「知ってんだよ。神様は誰も救ってくれやしないって」
「融通の利かないのも考え物だな……神が孤児達を救わないのであれば、我々が救うしかあるまい」
『砂狼の傭兵』ラノール・メルカノワ(p3p000045)が首をこきりと慣らした。
「できる限りはね」
『執嫉螺旋』エリシアナ=クァスクェム(p3p001406)はあえて目を伏せ、地図を確認する。
「人は親と生まれた土地は選ぶ事はできない。そこに巣くう悪神から逃れる事もできないのでしょう。哀しい事です」
地図の内容が鳥の視点から俯瞰したものときっちり一致したことを確認した『虚空繋ぐ聖女』メルディナ・マルドゥーネ(p3p006099)が、小さく首を傾げて言った。
「それにしても……この町って地図が当たり前にあるのね」
「…………」
言われて見て、ラノールとシュバルツは別々の反応をした。
測量技術が基礎教養レベルで一般に広まっており、地図の作成とその配布が可能なネットワークを持ち、それがタダ同然で人に譲れるほど政治的バックアップがなされているというのは……言ってみればかなり珍しいことである。幻想だと『町内会の大雑把な手書きマップ』がせいぜいだ。道が間違ってるなんて当たり前で、土地の変化にいつまでも対応しない古い地図が使われるのもザラである。
そして……この金を孤児院のパンにかえればいいのにと言い切れないのが、胸くその悪いところだった。
「さあ、やるか」
やらなければ子供が死ぬという。この国の……いや、町の摂理から外すのだ。
●隙間のない壁を抜けるには
昼の観察でわかったことがもう一つ。
見回りの兵士たちは完全主義で仕事をこなしており、手を抜かないどころか聴覚や嗅覚を強化してまで小さな異変を察知していた。
勿論町の様子に少しでも違和感があれば徹底的に調べ、小石の位置すら覚えているのではと思うほど熱心だった。
雑兵の集まりだと思っていたら足下をすくわれる。
そこで、イレギュラーズたちは地上と『地下』の二つに分かれて作戦を進めることにした。
シスターたちがすぐに見つかってしまったのは、町の人々が兵士側に好意的ですぐ通報してしまうことに加えて、子供たちの足音や気配が兵士に気づかれすぎることも影響していたと考えたのだ。
そしてその判断は、とても正しい。
ラノールたちは孤児院を出てすぐにマンホールを通して下水道へ移動し、兵士たちの居ない地下をひっそりと進むことを選んだのだ。
一方でリノやエリシアナたちは闇に紛れ、町のあちこちに潜んだ。地下の町脱出ルートの節々に待機し、兵士の有無を確かめたり危険を知らせたりする役割だ。
これもまたとても正しい判断だった。地下だけを進んでいたなら、きっと兵士はマンホールからの『大きすぎる足音』に気づいてしまうだろうから。
そして予め決めたルートから外れた際のガイドに、メルディナがファミリアーによって使役した動物が使われた。鼠を通して把握した地下チームの状況を地上チームに伝え、逆に地上が危険であれば地下チームになんやかんやで伝えるのだ。(使役した動物の、それも二匹同時の操作を通常動作と平行して行なう困難さは一旦横に置くとして)非常に整ったチームプレイができるはずだ。
そうして夜。天義亡命計画は実行に移された。
結乃が片目を押さえるようにして呻く。
「監視のために飛ばしていた鳥が落とされたみたい。兵士たちが警戒してる」
次に耳に手を翳し、周囲の音を探る。
ずっと遠くから、『鳥が不自然に飛んでいた』『必要の無い監視がなされている可能性がある』『警備員に伝えろ』という話し声が聞こえてくる。
レッドシグナルはまだ通い。まだイエロー……それも『なんだか疑わしいのでまず殺した』という天義らしい動作にすぎない。まだ、安全だ。
逆に言えば、警戒しているのを逆手にとって利用できるとも言えた。
「誰かー! 誰かー!」
兵隊の気配が近いことを察して、結乃はわざと声をあげる。
駆けつけた兵隊に泣いている子供のような演技をして、このように述べた。
「両親と逸れて迷い込んだの。ここどこ?」
結乃が町の子供でないことはすぐにバレるだろう。
だが身元が分かったとしても、それがローレットのイレギュラーズであることがわかればすぐに開放されるはずだ。亡命に荷担している証拠も今のところない。そしてなにより、相手が熱心にそれらの作業をしている間、人員を引きつけることができる。
……そんな結乃のすぐ足下を、ラノールたちは子供を連れて通り抜けていく。
「急ぐんだ。静かで良い子に出来ていれば、あとで甘いお菓子や楽しい遊びができる」
「うん……」
彼らが連れた子供たちは8人。10人中の8人だ。
病弱で貧しい生活に耐えられそうにない子供を優先して、次に年上の子供から逃がしていく。取捨選択の中でも、残された子供の生存率をできるだけ上げた選択方法だ。
「さてと、次はこっちね……」
闇の中に紛れじっとしていたリノ。
彼女は兵士が少し慌ただしく移動し始めたのを察知して、道の真ん中へと出た。
「ねえ、兵士さん」
あえて声をあげる。
自分の後方15メートルのマンホールを、地下チームたちが通り抜けている最中だ。
それを察知されるわけにはいかない。
闇に自らのシルエットを浮かべ、ネコのような歩みで兵隊に近づく。
相手の顎に中指を当て、甘い声をかけた。
「私と遊びましょうよ、楽しいサービスしてあげる」
「……貴様。天義の者ではないな。何者だ」
「あら」
見抜かれるのは一瞬。自分へ向けた警戒が高まるのも一瞬。
けれどその間、後方のマンホールは死角になる。
リノは露わになった唇を色っぽく歪めた。
神の名の下に欲望を殺すがいい。その僅かな時間が、子供たちを彼らの目から遠ざけられる。
綱渡りのようなリレー。
その三番目のポイントに、エリシアナはいた。
一切乱れぬ歩調で町の見回りを行なう兵士。
その後を、エリシアナは巧みに尾行していた。
足音を殺し、時には立ち止まって気配を殺し、その上で相手を逃がさず気づかれずに追跡する。サイバーゴーグルの効果もあって、ここまで兵士に気付かれている様子は無い。
だが……。
「(このままだと通過ポイントと重なるわね……)」
見回り兵士のひとりが結乃の対応に集中したことで、残る兵士の見回り順路が変更されたのだろうか。
昼に通っていた順路とやや変えて、子供たちの地下進行ルートとしばらく被るラインを歩くように見えたのだ。
マンホールの小さな穴から金属製のボールを落とす。
中で小刻みに跳ねた音を確認すると、すぐにその場を離れた。
「止まれ、合図だ」
地下で子供たちと共に移動するチーム。
ラノール、ティバン、シュバルツ、天十里はそれぞれ感覚をブーストして危険の察知につとめていた。
ラノールは聴覚、ティバンは嗅覚、天十里はその全部である。
もちろん天十里が全てカバーしているから残る二人がいらないなんてことは全くなく、視界を狭めると対象発見率が上がるのと同じような理由で、それぞれの特化には意味があった。実際、音の合図にいちはやく気づいたのはラノールである。
ルートを変えるぞ。メルディナ、ガイドしてくれ。
先頭をあるく鼠に声をかける。
鼠は勿論、メルディナがファミリアーによって五感を共有している使役鼠だ。
チュウとひとなきすると、それまで進もうとしていたルートを引き返し、別のルートへと走り出す。
「ここらの作りがシンプルで助かった。つーか……」
シュバルツは小さく息をついて、子供たちを先導した。
下水道は作りによってはあちこち壁でふさがっていたりするものだが、ここはものすごく真面目に一括工事をしたおかげで網目状につながっているらしい。住民が死ぬほど協力的だったおかげで子供たちが安全に逃がせると考えると……。
「嫌な皮肉だな」
子供たちは町を出て、マンホールから脱出した。
このまま地下を進むとまた別のなにかに察知されてしまうので、地上に出る必要があったのだ。
マンホールを僅かにあけ、外の気配を確かめる天十里。
皆を手招きして、ラノールも嗅覚をはたらかせながら外へ出た。
外で待っていたのはメルディナだった。
「よくご無事で。私はここに残ります。あとからきた兵士を足止めしなければなりませんから」
そう言って、箒をその場に捨てる。
結乃が使役して飛ばした鳥が落とされたことをうけて、飛行による逃走が自殺行為であることに気づいたためだ。
よその世界ではいざしらず、この世界で空は逃げ場として安全ではないのだ。むしろ遮蔽物がなくて危険ですらある。
「ありがとう。ガイドのおかげで地下を迷わずに進めた」
「いいえ。問題はここからです」
メルディナは首を傾げて見せた。
国境警備隊はきわめて頑強な兵士が守っていた。
というのも、幻想からの不正義な侵入を『絶対に』許してはならないという精神からひときわ精神や肉体のすぐれた兵士たちが配置されているがゆえである。
逆に言うとこの辺りに配置されている辺境貴族みたいな連中はこういうのと渡り合える知略の持ち主だったりするのかもしれない。(今回の孤児の受け入れ先がまさにそれである)
「どうする? 地上チームは兵士の足止めに回っててこっちに来れねえ」
「強行突破か搦め手か……」
腕組みするシュバルツとティバン。
するとラノールがそっと懐からあるものを取り出した。
「両方で行くっていうのは、どうかな」
「賛成。手伝うよ!」
天十里がニッと笑顔を見せた。
仲間たちに、そして子供たちにだ。
笑顔は人を安心させる。天十里の武器であり、強さであり、そして能力だった。ずっと笑って居られるという、ある種最強の能力である。
「兵士さん、こんにちわー!」
大きく手を振って近づく天十里。
彼女(彼)の背には病弱そうな子供。
その隣には、同じく身体の弱そうな子供を抱えたラノールがいた。
ラノールは懐からあるもの……天義の免罪符を取り出して翳した。
「悪いが、この子供は国外の病院に見せる必要がある。この罪はネメシス正教会が免除するものである」
「ふむ……」
兵士は免罪符が不当なものでないことを確かめると、子供たちの様子をうかがった。
ちらりと天十里を見れば、にっこりと笑顔。
それらが相対的に見て不正義な行ないでないと判断したのか、小さく『通れ』と言って道を開けたのだった。
やや不服そうなのは、免罪符で通せるギリギリより少しだけオーバーしている可能性があったからなのだが……それでも通したのは天十里の笑顔にあてられたせいかもしれない。
なにより。
扉が開いたことが重要だだった。
「今だ、突っ切れ!」
ナイフを握ったシュバルツが兵士の一人に突撃し、タックルでその場に押し倒した。
同じくティバンが槍を水平に構えて突撃。兵士を壁に押しつける。
その隙をついて、子供たちは開いた門から外へと駆けだした。
「不正出国だよ! 兵士さん、捕まえて!」
なんて言いながら、自分たちは無害ですよという顔をして門をゆっくり通っていく天十里たち。
しかし国のラインを超えてまで自国のルールを適用することはできない。
兵士たちは歯噛みして、子供たちを見逃すしかなかった。
ニヤリと笑うシュバルツ。
「やっべえなあ。こんなミスをおかしちまったら、最悪アンタの首が飛ぶぜ」
むろん、比喩ではない。子供たちの拉致を支援したと疑われたら、本当に首を切り飛ばされるだろう。
「ホラ、神に祈れよ。時間を巻き戻してくださいってな」
この後、シュバルツたちは自らの技能を使って無事に逃走、身元を知られることなく国を脱出した。
地上で兵士の足止めをしていたメルディナたちもまた、今回の事件とは無関係なものであるとして国から脱出したという。
「ありがとうローレットのみなさん。僕らはここで生きていきます」
亡命に成功した子供たちは幻想の貴族が運営する孤児院に引き取られた。勿論そこには貴族なりの利益があり、取引があったのだが、それゆえ子供たちの生活は守られることだろう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。
かなりプレイングの力やOP読解力や、相談での連携性が求められるシナリオでしたが、見事しっかりしたプランを組んで依頼を完遂することができました。
GMコメント
このシナリオは天義を舞台としていますが、正体を隠して幻想に連れ帰るシナリオであるため幻想側に名声ポイントが入ります。
幻想のスラム街から『あいつやるじゃん』と言われる感じです。
ただし依頼が失敗した場合いろいろ取引して身柄を返して貰う必要があるため、全員一括で天義側に悪名がつくことになります。
【オーダー】
成功条件:孤児院の子供を『半数以上』ネメシスから脱出させること
孤児院の子供はよちよち歩きの少女から16歳くらいの男の子まで計10人います。
このうち5人以上亡命させることができれば成功です。
というのもネメシスの孤児院に残る子供が半分になればそれだけ貧困が軽くなるからです。
もし取捨選択をするのであれば、その条件を話し合っておいた方がいいでしょう。
【障害】
ネメシスを脱するにあたって目立つ障害をいくつか紹介します。
ここに紹介されていないものでも色々細々とひっかかることがあるので、それについても考えておくとよいでしょう。
●兵隊
優秀な兵隊が見回りをしています。
住民から通報があれば即座に駆けつけられる体制を整えており、全員が非常に真面目です。
賄賂・交渉・言いくるめや論破がまあ通じないくらいメンタルが頑強です。
そのうえ人数や装備も整っているので『全員ぶっ殺して突破する』が死ぬほど困難です。もし力押しの作戦を立てるならとてつもなく厳しい判定ラインを潜らねばならないでしょう。(しかも相手の装備や戦闘レベルが不明なままで)
●整頓された町
孤児院から外に出るには町の一部を通らねばなりません。(それ以外の道は兵隊たちが常時固めているような施設ばかりで通れたものじゃありません)
治めている貴族が真面目かつ優秀なせいで道路はきっちり舗装され碁盤目のように整理されています。なのでよほど頑張らないと『誰とも会わずに通り抜ける』ことはできないでしょう。
地味にOPにヒントを書いておきましたが、これを使わなくてもやり過ごす手段がないわけじゃありません。
●国境警備
ネメシスの管轄エリアから抜け出す最後のラインでどうしても警備隊と鉢合わせます。
彼らの目をかいくぐるか、死ぬ気で突破するかの二択が迫られるでしょう。
【おすすめ】
全員で相談をして『これぞ』という脱出プランを組み立てたら、その上で各個人が『非常脱出手段』を持っておくとよいでしょう。
たとえば兵隊に気付かれた時ひとり残って「ここは任せて先に行け」をしつつ自分も何かしらの手段でめっちゃ逃げるとかです。正体を隠した状態で一度逃げおおせれば、あとはローレットのイレギュラーズですよといって単独で国境くらいは通れるはずです。
逆におすすめできないのが体型変化や『変身』『変身Ⅱ』を使った正体の隠し方です。体型はともかく変身は獣種なら割と誰でもできるので疑われやすく高確率でバレます。よっぽどの演技力でもないとこの手は使えないでしょう。
また、このシナリオでは正体を隠すことがデフォルトになっているので、プレイングにそれらしい明記がなくても『仮面やローブを装備して正体を隠している』という判定を行ないます。自動でおまけします。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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