シナリオ詳細
茶店『りばや』物語~お茶ァ!~
オープニング
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春の豊穣は桜の季節。花弁舞い散り、美しき色合いが豊穣の京を染める――しかし。
その一角にて勅使河原 茶々蔵(てしがわら・ちゃちゃぞう)は吐息を零していた。
彼は高天京の郊外で茶店『りばや』を営むヤオヨロズだ――『りばや』は美味なるお茶や、蕩ける様な甘味の味わいに定評ある人気高い店である、が。そんな茶店の主である茶々蔵には悩みがあった。
妻である零子が出て行ってしまったのである――!
いやそれは、その、誤解というべきか……ただ茶々蔵は新メニューを開拓せんと新しき茶葉を探していたのである――が、とても良い新茶葉を見つけ傾倒していたら『浮気ね!! サイテー!!』と零子がビンタ一つと共に実家に帰っちゃったのだ! 違うよー! 誤解だー!
「はぁぁぁ……なんという事だろう……」
「大変だね……たしか娘さんもいるんだよね? 四音さんだっけ?」
「うん。以前はタピオカミルクグリーンティーに……だけれども近頃はバナナグリーンジュースにも興味が出ているみたいで……やれやれ、時代の移ろいに対応できているというかなんというか……」
「ははは。年頃の娘さんなら、そういうのがあるんだろうね。流行りに沿う、っていうのかな」
話を聞いているのはフラン・ヴィラネル (p3p006816)にギルオス・ホリス(p3n000016)だ――おっきなお団子を頬張り、もちもち食べてるフランは特にこの店の常連の一人である。今回のギルオスと共に出向いた豊穣の依頼の帰り道に寄る程で。
まぁまさか妻の零子さんと丁度トラブってるとは思わなかったが……でも仲がいい程喧嘩するというか、こういった話を聞いたのももう二回や三回どころではない。零子さんもまたその内ひょっこりと戻ってくるんだろうなと。
フランが美味しいお茶ァ! ……間違えた。お茶を啜っていた――その時。
「おぅおぅ店主さんよぉ!! 邪魔するぜぇ!!」
「ぷぇ!?」
「あぁ!? フラン!!」
そのフランを背中から押しのけ粗雑に店に乱入する男たちがいた。
さすれば熱いお茶がフランの顔面に。お茶ァァァア! とフランが地面を転げまわりながらも――口から酒臭い匂いを漂わせる男たちは気付いていないのか、茶々蔵へとまっすぐ男たちは向かっていき。
「こ、困るんだよこういうのは! 何度も何度もウチに来なくても……」
「あぁん!? ここの店主は客をもてなさねぇってか? 俺たちは客だぞ!!
お客様は神様って言葉を知らねぇのか?
素人じゃねぇんだからさぁ、それぐらい知っとけよ! なぁ!!」
「そ、その言葉は店側の心構えの話であって……あぁ、フランさん!」
茶々蔵、フランの顔に冷えたおしぼりを。
――近頃こういう客が多いのだ。暖かな春になって、浮かれ気分の者が増えたというか。さすれば男たちは『何を大げさな』という様な笑い声を出しながら店を後にする――フランの顔が落ち着いた頃には、もう姿はなく……
「ぜぇ、ぜぇ……ひっどい人達だね!」
「うぅ。そうでなくても忙しいというのに……はぁ、困ったものだよ……
裏の方になんて菜園があるんだけど、そっちには猪も出始める始末でねぇ……」
「そうなんだ――あっ、そうだ! なら手伝おうか!!」
ぷんぷん顔のフラン。この上に、猪までもが茶々蔵の菜園を荒らすなど、泣きっ面にハチである……さらには偶然にも零子が家出した辺りから気候が穏やかになり始め、お客さんが増え茶々蔵の手が回らなくなっているとも聞く――
故にフランは申し出るものだ。茶店の手伝いを。
「うん、それはいいアイディアだね――僕もローレットの皆に通じて人を集めようか。
そうしたらさっきみたいな客が来ても十分対応できるはずさ。
乗りかかった舟とも言えるし、僕も手伝うよ」
「おぉ……ごめんね二人とも。じゃあよろしくお願いできれば……!」
さすればギルオスもまたフランに続き、店を手伝わんとするものだ。
一般の客には普段の対応を。粗暴な客にはそれ相応の対応を。
菜園を荒らす猪の問題も片付ければ……うん、後は一息ゆっくりと桜を見ながら穏やかに過ごす時間もある事だろう。茶々蔵もお茶やお団子をサービスしてくれるとの話だ――やったね!
「さぁーって、へへ。今日は『りばや』の店員として頑張るよ……!!」
さすればフランは和装に身を包み店員として備えるものだ。
店の前には美しき桜の木々が並んでいる。風が周囲を撫ぜれば、舞い上がる花弁が美しき景色を彩るもの……
このような場所を、あんな酔っ払い共の好きにさせてたまるか!
さぁ――茶店『りばや』の平穏を護るとしようか!
- 茶店『りばや』物語~お茶ァ!~完了
- GM名茶零四
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年04月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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茶店りばやに神使集う――その一角で濡れ布巾で顔を拭う『青と翠の謡い手』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の姿があり。
「うううまだ顔ひりひりする……もう!
あたしの楽しいお茶しばきタイムの邪魔をするなんて許せないよ。
悪い人を『めっ』てして、桜を見ながらお茶をしばく! ね! しばくよお茶ァ!」
「ひぃ! どうしたんだい、いきなり!!?」
天に向かって微笑むフランに茶々蔵ビビる。ついでに私もビビる。ひぃ!
次元の壁を越えた話はともかく――フランは豊穣の文化たる和服に身を包んでいた。桜を司った服の色合いが麗しく同時に靴はブーツであり……和洋折衷を意識している所があるのだろうか。大変可愛らしく似合っている!
「ふーん、暴漢に猪も現れるなんて大変だね!
ん? 猪? うんうん猪鹿蝶の猪でしょ? どれも美味しいからボク知ってるよ――!
案外甘くてね、蕩ける美味しさがあるんだよ!」
更には『( ‘ᾥ’ )の幼虫』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)の姿も、紅白の市松模様の和風メイド服に包まれていた! 狩人モードは鳴りを潜め、茶店に咲く一輪の花として此処に在るものだ――
まぁその口端からは肉! 美味しい! とかしか出てこないけど。
黙っていれば美少女なのに、やっぱりリコリスはリコリスなのであった。折角にも凝った和服を用意してエプロンにはちゃんと( ‘ᾥ’ )の刺繍も入っているのに――んっ。この刺繍、今ちょっと動かなかった……? 気のせいか!
まぁなにはともあれ。集った神使達は茶店の手伝いにあちらこちら。
いつなんぞやお客さんが来ても良いように、と。
フランは目が回りそうなぐらい種類のある茶を前に、配置を記憶中だ――えーとあっちに玉露でこっちは深蒸しでうわーここの棚全部緑! ぴええ!
「あのねー、ここのお団子のピンクのやつすんごいの! それと焼きたてのお餅が……」
うう。お腹空きながらも頑張るものである……!
「本日はこちらの茶屋にて接客などを致すであります。皆、宜しくであります」
「成程、『くれえまあ』っちゅうヤツが来とるんですな――? しかしわしらが来たからにゃ、もう安心ですけえ。店主殿はどーんと構えとってくだせぇ」
「希紗良ちゃんに支佐手君だね? うんうん今日はよろしくね!」
であれば。『はい、店主殿――』と応えたのは『鬼菱ノ姫』希紗良(p3p008628)である。豊穣の甘味処を守る重要な任務でありますが故に張り切っているものだ。甘味は大事故に!
次いで『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)も噂の『くれぇまあ』に備えるものだ。全く。春になればおかしい者達が増えるとは聞くが……店に迷惑までかけるとは、と。
「許せんな……しかし、それはそれとして、この茶店……
なんだろうか。とても不思議な感覚がする……特定の単語を叫びたくなる様な……」
この感覚はなんだ――? 『戦神護剣』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)は先程から『お茶ァ!!!!!』と全霊と共に叫びたい気分に駆られていた。しかし我慢。我慢だ。幾ら毎度毎度トンチキな依頼を持ってくる誰ぞに叫びたい事があると言っても……くっ! ここはあえて我慢だ! 茶店の雰囲気が壊れてしまうから!!
(お茶ァ!!!!! 足深いってなんだよ!!!!!!!)
だから心の中でだけ呟いて――業務に戻るのであった。
「い、らっしゃい……ませ……え、と。
ご注文は何……じゃない。お決まりでしょう、か。うう……む、むずかし……ぃ」
「はは。ハリエット、落ち着いて大丈夫だよ――大事なのは笑顔さ、笑顔」
笑顔? 笑顔って――どうやって作ればいいの?
茶店用の緑色の和服に着替えている『今は未だ秘めた想い』ハリエット(p3p009025)は、同じくお揃いの色の、男性用の和服を着ているギルオスへと視線を向けるものだ。困った……本当に困った。だって、だって分からない……
「ほら。口の端を挙げてみて? こんな感じに」
「ひょう?(こう?)」
泣き言零れるハリエット。だからと精神を落ち着かせる為に、ギルオスはハリエットの口端に己が指先を持っていき――微かに挙げる仕草をするものだ。人差し指が端を吊り上げ、堅いが口元だけでも笑顔の色を……と。
けれど歪。やっぱり他が堅すぎる。瞳が、全体の表情がぎこちない。
だから暫くギルオスの傍に居続けた。彼の後ろを付いて回り尻尾はあちらこちらへと――不安げに右往左往しながらも。視線を逸らさずに『笑顔』の色を知らんとして……
「わぁ! き、来た! 来たよ、裏の菜園に猪が……!」
が。その時、茶々蔵より指令が飛んだ。
猪! 作物を荒らす獣を倒すのも大事な依頼の一環である故に。神使の――出番である!
●
裏の庭。遠くを眺めれば『奇剣』雷霧(p3p010562)の瞳には善き景色が広がっていた――
「猪は……二匹なんやろか。少し過剰気味の戦力やけど、これも依頼やからねぇ」
「ああ。念のため周囲をもう少し探ってみるか――予想外に数がいたらまずいからな」
だからこそ荒らす猪に容赦は出来ぬ。まぁオーバーキル気味の戦力に多少雷霧は、向こう側を不憫に思いもするものだが……『竜驤劍鬼』幻夢桜・獅門(p3p009000)は使役する動物を走らせ周囲に他の猪がいないかも探るもの。
しかしごろつき共は煮ても焼いても食えないが、猪はそうではない。
団子と茶の前に肉をがっつり食べるのも悪くないと思考すれば。
( ‘ᾥ’ )ジッ…
( ‘ᾥ’ )))わるい猪はいねが〜
((( ‘ᾥ’ )猪〜
( ‘ᾥ’ )……
((( ‘ᾥ’ )))み い つ け た
同時。天より襲来するのは――リコリスだ!
⊂( ‘ᾥ’ )⊃に乗って上空より探っていたリコリスにとって、地を這う猪など獲物にしか見えぬ――! 襲撃の一手が即座に紡がれ( ‘ᾥ’ )の幼虫は今日の獲物を狩らんとするものだ。
「よーし、やる気がもりもり湧いて来た。今日は鍋だー!
二頭もいれば十分豪勢に出来るだろ! ちゃちゃっと狩るとするかねぇ!」
「肉置いてけ、なぁ!? 猪肉だ!! 猪肉だろう!? 猪肉だろうお前!」
次いでリコリスの一撃を皮切りに獅門や紫電も攻め立てるものだ――二人はこの中でも特に猪を『今日のご飯』と見ているメンバーであり、その意欲は凄まじい。
「この辺からでいいかな――うん。妖怪とかの類でもないみたいだし、簡単にいけそう」
「手加減する必要がないのは楽やね。まぁ逃がさない様にだけはせぇへんとあかんやろけど」
更にはハリエット、雷霧らも一気呵成に。簡単な柵しかない無防備な菜園を襲撃せんとしていた猪にとっては寝耳に水の事態なのか、混乱の一途を辿るのみだ……なんとか逃げんとしても紫電が先回る。
「猪肉! 肉!! にくぅぅぅ!」
「ピギッ――!!」
食欲一閃。されば猪が甲高い声を鳴らすも奴らが反撃を紡ぐより早くハリエットの狙撃が腹部に着弾。更に獅門と雷霧が猪の逃亡先へと割り込み、竜撃の一手と雷撃が如き刺突を紡ぎあげれば――一溜りもないものだ。
「オラァ! 悪く思うなよ、これも人里まで来たお前らが悪いってな!
――よっし! 後は縛り上げて茶店に戻るとするかね。向こうは……大丈夫だよな?」
さすれば獅門が猪の肉を頂戴し、同時に茶店の方へと視線を向けるものだ――
ごろつきもそろそろ来るはずだ、と。思っていれば。
「目には目を、歯には歯を、炒飯には炒飯を――
いらっしゃいませぇ! 炒飯お持ちしましたー! はい、一丁どうぞ――!!」
「ぐあああああ! 出会い頭何しやがるテメ――!!」
茶店の方で痛みを訴える声が響いていた――それは支佐手による『おもてなし』だ。
欲しかったんでしょう――? 炒飯が。
具なし味付け無しの炊きたてホカホカ真っ白炒飯を、大陸で言う所のパイ投げの様にごろつきの顔面へと一閃してやる! さすれば悶える男。あ、それ追撃にもう一丁――!! あ、ちょっと待って狙いがズレてる、そっちにはギルオスが――
「でゃあああああ――! ハッ!? これは……ギルオス殿!!?
まさか奴らめ、空蝉の術を……! なんたる非道!! なんたる卑怯な!!
身代わりを使うとは――戦死されたギルオス殿の仇です! 観念しんさいや!」
「支佐手! 支佐手! 君、滅茶滅茶すっとぼけてるが、これ全部100%君の責任だからね――!!? ぎゃあああ目に熱々の米粒が!!」
転げまわるギルオス。何という事でしょう、ごろつき共め暴力を振るってくるとは……!
身に覚えのない謂れに狼狽える男達――だが。そんな隙を迂闊にも見せれば。
「イデデデデ! この、このチビ!! 離せ! イデデ――!!」
「お客人。狼藉は困るでありますよ――ピザも炒飯も――
いや炒飯はありましたが――とにかくないものは無いであります」
「そうだよ! ピザも本場の炒飯もビリヤニもタコスもなーい!」
希紗良がごろつきの腕を掴んで背中側に曲げて取り押さえ、フランがあつあつのお茶……を投げるのはもったいないから出がらしの奴を顔面にそぉい! してやる!!
ええい全く。無礼を働くならお帰り頂きましょうかと、希紗良は無表情に告げているが……その脳裏に浮かぶのは奴らの言っていたピザやらなんやらだ……大陸側にあるのでありましょうか? なんでも聞く限り、ピザはちぃずとやらが降りかかっているそうで美味なるモノかと思われますが。
「――まぁそれはまたの機会にするとして。
これ以上騒ぐなら痛みをもって覚えてもらうであります」
「もー! お茶、熱かったんだからね……! メッ! だよ!!」
「ふざけやがって……テメェら、やっちまえ!」
それでも怒れる酔っ払い共が掛かってきたので――一蹴してやった。
希紗良が男の腕を取り投げ、フランが逆襲を防ぐべく盾を顕現――あっ。ギルオスさんも引っ張っちゃった――まぁいいか――更には鍋ごと支佐手の炒飯攻撃が襲来すれば、熱さを訴えるのがごろつき三人とギルオスと依頼人の茶々蔵も。ひどいよぉ。
ともあれその辺りは何も見なかった事にして――フラン、渾身の『めっ!』にて男たちを吹き飛ばせば、先の恨みを思い知らせてやるものであった。
●
「ところでふと思ったんだが――茶店……茶屋……
つまりここは、もしかして茶屋ヶ坂と関連があるんだな……!?」
「え、誰? 誰? 茶屋ヶ坂……え、誰!!?」
「ははは隠さなくても良いんだぞ――AKINAと関係があるお茶屋なら、これからも呼んでくれ! 困ってなくてもいいぞ! いいな、お茶ァ!!!!」
あっ。つい言っちゃった☆ 炒飯攻撃の被害に巻き込まれた茶々蔵が顔(ペットボトル)を拭いながら紫電に応える――なおちょっとAKINA脳に染まる紫電さんの思考回路はぶっ飛んでおります。まぁいつもの事だね!
ともあれ茶店りばやには平穏が戻って来た。となればこれからが念願の……
\念願のお茶しばきタイム/
「――だね! へへ、へへへ……楽しみにしてんだよ、お茶ァ……
ここには沢山のお茶があるからね……カップリ……組み合わせも膨大だよ……
ぐへ、ぐへへへへ……あ、ねぇねぇギルオス先輩は何茶が良かった?」
「なんか今凄い不穏な笑みがなかった――? まぁそうだね、僕は抹茶かなぁ。綺麗だったしね」
「ふぅん。抹茶×ギルオス(※綺麗な色が好き)っと」
おい待てフラン、何をメモしてるんだ!
テンションダダ上がりのフラン・ヴィラネル。茶々蔵の入れるお茶と妄想……もとい想像を楽しみながら一時の空気を存分に吸い込んで。さすれば紫電も一つの茶を手に取り、一気にゴクッゴクッゴクッ、プハアッ!
「――深蒸足茶だこれ!」
なんだか足に深みが出そうなお茶の味が紫電の身体の隅々――主に足――に浸透する。まて、その携行品なんだソレ! いつの間に通った!!
「ギルオス殿もゆるり休まれるとよいのであります。
案の定というか――いろいろな災難に見舞われていたでありますし。
キサは予見していたであります」
「確定ロールは止めたまえ希紗良!!」
ともあれ、茶菓子も美味でありますなぁ……と。純粋にお茶を希紗良は楽しむものだ。
ゆっくりと口内に広がる香ばしさと若干の苦みを楽しむ至福のひととき。
茶々蔵自慢の羊羹も一口頬張れば――あぁ何たる至福でありましょうか。
蕩けるは彼女の表情そのものも、か。いやはや真に、よき店である――
「次は客として来るでありますよ。この一時、結構なお点前でありました」
「うんうん! 是非是非、待ってるよ!!」
喜ぶ茶々蔵――と、その後方。店の厨房の方では。
「ハッ! 猪肉の調理――やっぱり言い出しっぺがやるべきだよなぁ!
任せなッ! 燃えよ魂! 駆け抜けろ肉の香りと共に――!!」
獅門が張り切っていた! 狩った猪の千貫が終わり、作るは先述の通り――茶鍋!
簡単に言うと緑茶の茶葉と抹茶の粉末とカツオと昆布で出汁作って肉と野菜を煮込むだけだ。まぁ流石の獅門でも、猪肉と絡み合わせる経験はないのだが。
「そこは経験と勘でなんとか工夫してみるぜ――っと、なんだリコリス嬢? 腹減ったのか?」
「じゅる……ううん、ボク良い子で待てるもん! 食欲なんかに絶対負けたりしないよ!」
「あ”っ”――!! リコリス殿、どうしてわしの手を、痛だだだだだ、放して下さい! 『これが蛇の味かぁ……べろべろ』とか述べちょる場合じゃありません!! 目の前の現実を見るのですリコリス殿――!!」
と、作業していれば様子を見に来たリコリスが涎垂らしながら支佐手の手を、あーんがぶりっ! 激しい痛みが支佐手を襲う――まずい、これちょっとずつガチ噛みになってきておりますぞ!!
ぶんぶん手を振って振りほどこうとするが、リコリスは離れない。くそー!
「春季の牡丹肉のぉ……悪うない。少し気になるわ。
ま――その前に茶と茶請けよ。こいはどら焼きに団子……おぉ饅頭までええやんか」
「沢山あるからね! 皆のおかげで助かったんだ……どんどん食べて良いからね!
はっ、そうだ。こんなのどうかな――大陸の方から入って来たマドレーヌなんだけど!」
そんな和気藹々たる様子を見ながら、雷霧は茶々蔵より差し出される甘味や茶を存分に楽しむものである――定番たる代物から洋菓子まで。より取り見取り……
「……どうしよう。どれにしたらいいのかな」
「茶々蔵さんが奢ってくれるという話だし、ハリエットの好きなの選べばいいさ――
ああ。迷うなら、これとかどうだい? 抹茶とか、まろやかな甘みが美味しいよ」
そして猪肉も出来上がり主にリコリスなどの肉食派のテンションが上がりまくる中。穏やかに過ごすのはハリエットとギルオスだ。ずらりと並んでいるお茶のメニューを眺めるが……まだちょっと文字が苦手なハリエットにとっては、どれがいいのか苦戦気味。
それを察したのか、さて。ギルオスはメニューを指差しながら言を紡ぐものだ。
――同じものを一つ。なんとなし、ハリエットの髪色にも些か似ている様な濃さ。
「うん。美味しい……お茶菓子も美味しい。あ――桜が」
「おや――花弁が丁度落ちてきて、綺麗だね」
茶に一つ。花弁舞い散り、桜が満開。
この景色はほんの一時。次の月にはもうないかもしれぬ、刹那の瞬き。
と。思っていれば、今度は鼻先にも一片落ちてきた。
ギルオスが指先で掬いながら――言を紡げば、なんだか胸の内が暖かくなるもの。
……本当に、来てよかった。
隣り合わせで座りながら――温かき茶の一時を楽しむのであった……
が。そんな綺麗な形では終わらないのが茶店『りばや』である!
「なに……なんだい君達? どうして僕の頭の上を見て……!?」
「茶々蔵さん――此処は早く、逃げた方が良いと思うぜ!」
茶店の一角。其処に追い詰められる茶々蔵の状況は、獅門が見ていた。
( ‘ᾥ’ )ジッと見ているリコリス。その目はまるで狩人が如く……
「リコリス……? あぁ、なんかなんかペットボトルの蓋ついてるのが気になるのか。
――でも正直な話、オレも気になるな。あれを開けたらどうなるんだ?」
「大丈夫ですけぇ茶々蔵殿。ちょっと。ええ、ほんのちょっとばかしだけ――試させてもらうだけですんで」
「ひ、ひぃ!! 何故、何故今、窯の火加減を強めて!!?
溶ける! 溶けるから!! ぺっとぼとるだから!!!」
それが気になっていたのは紫電も同様。さすれば支佐手も同意し――開けにくかった場合に備えてモノを用意する者だ。手ぬぐいなど、摩擦を強めるモノを用意して……あぁ。火で焙るという手もありましょうか――支佐手の眼が、ガチだ。
最早拷問。茶々蔵、命の危機!
思わず逃げ出さんとするが、すかさず追いかける神使(一部)達――!
「あっ! だめ! だめだよ! 零子にも見せた事がないのに――!」
「ちょっとこう、グリッと事故で外れるだけだから! ――今から事故が起こるだけだから!」
鬼ー! 外道ー! 叫びながら逃げ続ける茶々蔵。
フランも『あ、キャップが! 外れる? 外れない? 外れる!?』と興奮気味だ――
あぁ全く。
茶店りばやは今日も――『お茶ァ!!』の叫びで満たされていた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
えっ、茶々蔵の頭のキャップはどうなってるのかって……?
駄目ですよソレは茶店りばやの七秘密の一つですからね! そう簡単に秘密は明かされません!!(多分)
ともあれこれで茶店りばやに平穏が戻りました!
MVPは猪を再利用までして皆に振舞った貴方に。
ありがとうございました!!
GMコメント
お茶ァ!!
……はっ!? なんか、突然叫びたくなる単語が……これは一体……!?
ともあれ以下詳細です!
●依頼達成条件
茶店『りばや』を無事に営業しましょう!
●フィールド:茶店『りばや』
カムイグラの高天京の郊外に存在する茶店です。
周囲はとても見晴らしがよく、近くには大きな桜の木もあるのだとか。
此処では美味なるお茶や、蕩ける様な甘味を様々提供する人気のある茶店……なのですが、最近酔っ払いの賊や、菜園を荒らす猪に困っている様です……
お店の手伝いをしつつ、困った要素は全部追っ払ってしまいましょう!
諸々の問題が順調に片付けば、シナリオ後半では桜を見ながらゆっくりとお茶タイムが出来そうです。茶々蔵が美味しいお茶や甘味を出してくれるそうなので、穏やかに過ごしましょう!
ちなみに茶葉は茶々蔵が管理している独特なモノで、沢山のタイプを用意しているのだとか。どれかを楽しんでみてもいいかもしれませんね。
・煎茶:薄く透き通っている色が美しいモノ。
・深蒸し茶:煎茶の二~三倍の時間をかけて蒸したお茶。味に深みがある。
・玉露:旨味が多く苦みが少ない種類。
・粉茶:色が濃く、旨味が多い種類。
・茎茶:若々しい香りと爽やかな味わいが特徴的なお茶。
・抹茶:まろやかな甘味が特徴のお茶。
・芽茶:芽や葉の先端を集めたお茶。副産物ながら希少性の高いお茶。
・粉末茶:茶葉の栄養をまるごと取れるモノ。
・玄米茶:緑茶の風味と独特の香ばしさを併せ持っているお茶。カフェインも少なめ。
・ほうじ茶:強火で燻っているお茶。香ばしい香りが特徴でカフェインも少なめ。
・大福茶:煎茶に梅干、昆布、玄米などをブレンドしたもの。
●店を妨害せんとする勢力
・酔っ払いの賊×3人
ここ最近店の営業中に訪れてくる酔っ払い連中です。マナーを守らず只管無秩序に騒いで、あまつさえ店主に『ピザを出せ!! チャーハン用意しろ!!』とか無茶ぶりを仕掛けてくるのだとか。茶店だって言ってるでしょ此処は!!
ちょーっと懲らしめてやりましょう!!
酔っ払いですし、そんなに強くはないです。簡単に追っ払えます。
・猪×2匹
りばやの裏には茶々蔵が管理している菜園があるらしいのですが、時折猪が荒らしに来るみたいです……魔物の類ではないので上手く罠などを設置するとそれだけで追っ払えるかもしれません。勿論、やって来た所を直接狩ってみてもいいでしょう。
●勅使河原 茶々蔵
ヤオヨロズ(精霊種)であり、茶店『りばや』を営む店主です。
お茶ァ!! はっ、なんだこの掛け声は……!? 鬼への差別意識もない人物であり、穏やかな気性の持ち主ですが……だからこそ上述の粗暴な輩などには困っている様子です。助けてあげてください!
●零子
茶々蔵の妻。人間種で美人との事ですが……新たな茶葉にうつつを抜かす茶々蔵に愛想をつかして帰ってしまいました……! まぁもう何十回目かの出来事らしいので、放っておいて大丈夫です。その内帰ってくると思います。
●四音
茶々蔵の娘。茶々蔵そっくりです。
タピオカミルクグリーンティーとかバナナグリーンジュースとか、流行りに乗っかるお年頃。
●ギルオス・ホリス(p3n000016)
ローレットの情報屋です。
フランと共に偶々『りばや』に訪れたら、酔っ払いらの問題などを目撃。
今回は彼も手伝います。基本は接客やお茶の用意などしてますが、なんらか指示があればその通りに従うでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はTEAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。お茶は美味しいです。よろしくお願いします。
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