シナリオ詳細
<覇竜侵食>眠れ巣穴の底で
オープニング
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覇竜デザストルの地に現れたアダマンアント。
地下を掘り進めるこのアリの群れは恐ろしいまでに戦力を増強し、亜竜種を襲い始めていた。
先日、強固な守りで知られていた亜竜集落イルナークが滅んだことは、亜竜種達を驚愕させた。
この脅威に対し、三大集落フリアノン、ペイト、ウェスタの里長が対策会議を行うも、アダマンアントの侵攻は彼らの想像を上回る速さであった。
敵はさらに勢力を拡大し、地上のモンスターは亜竜の縄張りをも脅かす。
とはいえ、覇竜の魔物や亜竜は並々ならぬ強さを持つ。
アダマンアントとてかなりの強さではあるが、末端はそれらと対せば間違いなく被害が出てしまう。
この為、アダマンアントが目下のところ獲物として選んだのはやはり亜竜種。
彼らは最近覇竜へとやってきたイレギュラーズの助けを得つつ、これらの脅威と対することにしたのである。
●
『亜竜集落ペイト』。
この地にも、巨大アリの脅威が迫っており、一時は集落が取り囲まれる程の事件にもなった。
その状況に駆け付けたイレギュラーズ、そして、覇竜轟雷拳の修道者達によって巨大アリは討伐され、事なきを得ることができた。
ただ、他個所でも脅威となっているアダマンアント。ペイトに接近していた巨大アリはその近縁種とみられる。
巨大アリは亜竜種を獲物と見定めているようで、まず間違いなく戦力を整えて再び侵攻してくるはずだ。
「直近の2事件を考えれば、ペイト近くに繋がっていると思われる巣穴の位置の調査を迅速に行わねばなりません」
「数を考えれば、女王アリがいるはずだ。皆で巣穴へと挑みたいね」
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)、マルク・シリング(p3p001309)はペイトを囲んでいた巨大アリ殲滅後、その巣穴の捜索を行っていた。
別所のアダマンアントが活発な活動を始めていたこともあって、巣穴は思ったより早く発見に至ったようである。
「やれやれ、ここもアリか」
「アダマンアントの近縁種か」
「うん、アリを見過ごすことはできないね」
アダマンアント事件に関わっていたコラバポス 夏子(p3p000808)、仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)、長月・イナリ(p3p008096)もこの巣穴攻略に意欲を見せていた。
「では、現状について説明させてもらおう」
覇竜轟雷拳の師範である徐・宇航が簡単に自己紹介し、巨大アリ巣穴攻略作戦について話す。
巣穴はペイトから数十分のところにある通路内にあった。
侵攻時は開いたままのこともあったが、活動を抑えている間は土や岩で入口を覆っている。
ただ、その場所はすでに割れており、こちらから仕掛けることは十分に可能だ。
「全員で正面から突撃、我々が派手に暴れる間に、イレギュラーズの諸君に奥へと向かってもらいたい」
イレギュラーズの力は亜竜種達にも知れたところ。
強敵であるアリの討伐はこれまで他地方などでの実績目覚ましいメンバーに託したいと宇航は希望する。
すでに、判明している敵データについて、イレギュラーズが巣穴を突き止める間にある程度解析を進めている。
女王に関しては表に一切姿を見せぬこともあり、他種類のアリの能力から推測と合わせた部分もある。何を使ってきてもいいよう万全の準備をして巣穴へと挑みたい。
「準備ができたら、すぐに参ろう。よろしく頼むぞ」
宇航の言葉に頷く覇竜轟雷拳門下生。
イレギュラーズもまた準備を整えつつ、同意を示したのだった。
- <覇竜侵食>眠れ巣穴の底で完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年05月02日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
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覇竜の地で猛威を振るうアダマンアントの勢いは亜竜種をも脅かしていた。
「漸く、女王討伐の時がきたか」
『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は長らく続いていたアリ駆除にうんざりしていたと本音を零す。
「随分と笑えないことになってたのね!?」
「……本当にどえらい事になっちまったな」
状況を確認した『揺れずの聖域』タイム(p3p007854)がすでに滅ぼされた集落の存在に危機感を募らせ、『竜驤劍鬼』幻夢桜・獅門(p3p009000)もその近縁種がペイトに迫っていたことに少なからず驚いていた。
「このまま放っておけば、いくつもの集落と沢山の亜竜種の命が失われてしまう」
「近縁種まで活動が活発になるなんてね。巣穴が大きくなる前にここで潰し切っておきたいところだね!」
「亜竜及び人類に対し、敵対意志を持つ害虫は駆除すべきであります」
タイムの主張に同調した『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)、『空の守護者』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)もアリの侵攻を食い止めるべく、作戦への参加を決めた。
「これ以上、被害が拡大する前に蟻の巣穴を壊滅させないとね」
『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が改めて、今回の作戦について確認すると、覇竜轟雷拳師範、徐・宇航が語る。
ペイトから数十分。通路へと隠された巣穴への入り口へと攻め込むことになる。
「巣の最奥に潜む女王アリの討伐……危険な任務になりそうだね」
「命懸けの害虫駆除になるけど、しのごの言ってる場合じゃなさそう!」
戦況は苛烈を極めるとのマルク・シリング(p3p001309)の読みに、タイムが二の足を踏んではいられないと力強く叫ぶ。
「自然淘汰っちゃあそうだろうけど、幸か不幸か対応出来ちゃうのが難儀」
『イケるか?イケるな!イクぞぉーッ!』コラバポス 夏子(p3p000808)らイレギュラーズはこれまでも数々の難局を乗り越えてきている。
今回も勝利せねば、生き残ることはできないワケでと夏子は断言して。
「まあ、先手打てるなんてハッキリ言って僥倖よな」
不利な展開を覆してきたことイレギュラーズ。その場数の多さは伊達ではない。
「にしても、アリの巣を潰すならやっぱりアレですよねぇ。水を流し込んで溺れさせる奴」
そこで、鏡(p3p008705)は子供の残酷さを感じさせるエピソードを交えて語るが。
「ま、今回は人力ですから、地道に行きましょうねぇ」
大量の水を用意するのも難しい為、鏡も正面からアリを叩くことに。
「蟻の生態を考えれば女王蟻に空でも飛んで逃げられるのが最悪な状況、この場所で仕留めるわよ!」
「ここで決着を付ける!」
イナリ、汰磨羈が今作戦への意気込みを見せると、他メンバー達も続いて。
「憂いはサクッと排除して夏イベに備えようぜ」
亜竜種女性らがどんな風に過ごすのか……例えば水着。すでに、夏子の思考は夏まで飛んでいた。
「準備は良いか?」
そんな彼に少し和むイレギュラーズ、門下生は宇航の合図で巣穴へと突入していく。
巣穴の薄暗さを考慮し、個々にその対策をとっていた。
例えば、ハイデマリーは蝙蝠の飴を舐め、マルクはサイバーゴーグルを着用する。
また、両者はファミリアーを連れており、ハイデマリーはフクロウ、マルクは2体の鼠に先行偵察させ、不意打ちに備える。
他メンバーも対処はしていたが、玄関口に巨大アリが集まっていたこともあり、すぐに戦闘態勢をとって。
「総力を挙げて殲滅しましょう」
「流す程度に処理しないとね ココは」
スタンスの違いはあったが、玄関口にいる巨大アリを手早く片づけるべきという認識には違いない。
「来ちまったものは仕方ねえ。これ以上増える前に決着をつけてやるぜ!」
ナイトゲイザーを目に点していた獅門はファミリアーで周囲を偵察させつつ、玄関口の敵を見やる。
後方に兵士アリ2体、手前に働きアリが10体程度。
「ペイトの安寧のために、この任務は失敗できない。必ず最奥に到達して、女王アリを討とう」
「状況を考えれば、二の矢は放てない作戦です。この突入で、確実に女王を仕留めましょう」
マルク、『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)も身構え、目の前の邪魔な巨大アリを蹴散らしにかかるのである。
●
巨大アリの玄関口。
敵もイレギュラーズ、亜竜種混成隊の突入は気づいているようだ。奥で何やら物音がしており、突入に備えているのだろう。
それが完了する前にと、一行は一気に踏み込む。
働きアリの密集地点に突貫する鏡は納刀状態のまま鍔鳴りを敵へと聞かせ、思考と動きを奪わんとする。
ギ、ギギ……。
一部の働きアリが動きを止めたところへ、イナリが飛び込む。
働きアリが酸を飛ばし、岩を投げつけてくる中で、イナリは怯むことなく敵の触角を狙う。
(一般のアリなら、フェロモンを感じとる重要な感覚器官だからね)
敵の頭目掛け、イナリは術式で強化した爪を薙ぐ。
速攻性は確認できないが、傷ついているのは間違いない。イナリは攻撃を繰り返して敵の弱体化を図る。
早くも仲間に傷がつけば、ヒーラー兼壁役となるタイムが隊中央で敵の食らいつきを抑えながら神秘の力を展開して皆を癒す。続いて夏子も名乗りを上げつつ前線へと出る。
「頼れる味方が居るってのは素敵だね」
頷く彼は軽槍を薙ぎ払う。仲間や門下生側へと吹っ飛ばせば、門下生が後詰めしてくれる。
また、マルクが密集した敵に向けて突き出した指輪を大きく光り輝かせる。
(以前の記録から、弱点は……腹部)
数が多いうちはそれだけを狙うのは難しいが、できる限り意識しつつ神聖なる光を放って敵を灼く。
「なるほどな」
敵の体に硬さを感じていた獅門だったが、敵の腹部へと大太刀を振り抜き、余力を持って敵を攻め立てていた。
アリの攻撃を止めるべく、ハイデマリーは敵後方から土塊を投げつけてくる兵士アリ目掛けて銃砲の引き金を引き、早期決着をはかる。
倒すべきはこの場の指揮官、兵士アリ2体だ。
(可能な限り多くの敵だけ……)
リースリットも兵士アリを意識し、霧氷魔を放出展開して敵陣を凍り付かせようとする。
動きが鈍ればこちらのもの。
力を温存して立ち回るイグナートは闘争心を燃え上がらせ、拳で殴り掛かる。働きアリも決して弱くはないが、イグナートの攻勢になすすべなく倒れていく。
運気向上の卦を自身へと撃ち込んだ汰磨羈も前線で敵を纏めて切り裂いていく。
手応えは十分。働きアリは体液をぶちまけて崩れ落ちた。
増援として、玄関口へと駆けつけてくるのは働きアリくらいのもの。
苦しみながらハンマーを振り回し、叩きつけてくる働きアリの攻撃で傷こそ負うが、タイムの回復の許容範囲内。
イナリが触角を殴ってへし折ってしまえば、兵士アリの殻に異変が。
ギ、ギギ……。
「頭数が少ないなら、普通に切った方が早いですね」
支援を受け、鏡は目を付けた兵士アリの体を深く切り裂いて仕留めてしまう。
マルクの光を浴び、身体を硬直させたもう1体をリースリットが精霊術で切り裂き、さらにハイデマリーが脳天を撃ち抜いて撃破する。
「ふむ、後は雑兵ばかりだが……」
宇航師範は玄関口に繋がる道からやってくる働きアリを見て、門下生達とそちらに向かう。
「手はず通り、3名お借りします」
タイムの呼びかけに、師範代を含む亜竜種男性が頷いて同行してくれる。
この場の増援を宇航と門下生の男女2名ずつに任せ、イレギュラーズ達は巣穴の奥を目指す。
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巣穴の奥を目指す間、ほとんどアリと遭遇することはないが、その足音をイナリが注意深く聞き分ける。
「んー、こちらから匂うわ」
イナリは嗅覚も働かせ、フェロモンの匂いも嗅ぎ分ける。
こちらへと近づく敵はほとんどいないが、敵が戦力を女王防衛の為にと集めているのは間違いなさそうだ。
「近いぞ」
索敵していた汰磨羈が何かに気付く。直後、戻ってきたファミリアー達も主の元へと戻っていく。
「いやがるぜ。アリどもがな」
ファミリアーから伝え聞いた獅門は、前方を見通す。
暗い中僅かに光が見える。浮遊するハイデマリーや再び鼠へと先に向かわせたマルクが敵の奇襲を警戒する中、メンバー達が飛び込んだのは大きな広間。
ギギ、ギギギギ……!
今度は先程隊長格だった兵士アリが雑兵として群がり、奥に4本の腕で刃物を握る近衛アリ1体が控える。
グガゴゴゴゴ、ガギギギギ……!!
明らかに威嚇してくるアリ達。この先にこの巣穴の女王アリがいるのは間違いない。
ここも鏡やイナリが素早く仕掛ける。
敵はすでに布陣を整えていた為、鏡が再度そこに突っ込み、刀の鍔を鳴らせば、聞く者に暗示をかけて催眠状態に陥らせる。
「戦闘時は指揮官を最初に叩き潰すのは定石、その身体をバラバラに分解してあげるわ!」
砂時計を使って自らの力を再度高めたイナリが近衛アリを狙おうとするが、鍔鳴りに耐えた兵士アリが群がり、邪魔をしてくる。
ここでもリースリットは霧氷魔を敵陣に吹き付ける。
リースリットの術式によって巣穴の中の空気が煌めき、敵陣が凍り付くが、敵も生きるのに必死だ。
飛んでくる土塊や酸をやり過ごすイグナートは再び大地をも震わす闘争心を漲らせて兵士アリへと殴りかかる。
すでに頭の触角や腹を攻撃するのが効果的とわかっているが、兵士アリは防御するすべを持っており、簡単には倒せない。
マルクがここでも神気を瞬かせてアリの戦闘力を削ぎにかかると、前に出てきた近衛アリが剣や斧による連撃を繰りだすが、ハイデマリーが遠方から狙撃して敵を牽制する。
(敵の統制は乱れているでありますが……)
ハイデマリーはファミリアーによる戦況分析も欠かさない。戦いながらできる限りの情報を仕入れる。すぐにそれは役に立つはずだ。
「さすが近衛。しぶといな」
数人がかりで攻め立てても、簡単には崩れぬ敵に獅門はやや辟易としながらも、不可能なる幻想を穿つ一手で敵の体勢を大きく崩す。
ここでも運気を高めていた汰磨羈が邪魔な兵士アリもろとも妖刀で切り捨て、最奥の部屋への突破口を開く。
そこで、夏子が軽槍を薙ぎ払ったことで火花を起こし、竹を割ったような爆音が鳴り響かせる。
「ま ボス倒しゃ帰れるワケだから よろ~」
タイム、門下生らが増援の現れる通路を見定めている間に、他メンバーが兵士アリ目掛けて攻め込む。
ギ、ギギ……。
嗚咽を漏らして倒れる近衛アリ。兵士達がカバーに当たろうとするが、門下生達が敵を分断して思うように行動させない。
「突入です!」
リースリットが開けた奥への通路に向かうと、イナリも殴りつけて動きを止めた敵をそのままにそちらへと駆け出す。
「際限なく増援が来る可能性がありますからね」
倒すべきは女王アリ。鏡、イグナートも戦いの手を止めてそれに続く。
汰磨羈 、獅門とこの部屋を通過していく中、マルク、ハイデマリーは夏子やタイムらにファミリアーを預ける。
「卵の保管場所が2か所に分かれているようです」
他の通路は兵士、働きアリの自室が集まっているのをハイデマリーが確認し、残るメンバーへと伝えてから最奥に向かったメンバーを追う。
その通路を背にして、タイムは夏子、門下生と逆にこの場のアリを抑える形となる。
「彼女が回復くれるから大丈夫 修行だと思ってやっとくれ」
とにかく、敵をマークし、この場から奥へとアリを進ませないようにするのが残った5人の役目だ。
「了解した。健闘を祈る」
師範代の一言に門下生2人は同意して身構え、早速攻撃に出れば、夏子は軽い口調で敵を煽る。
「ほらほら、楽しもうじゃないの」
グギ、ギギギ……!
この場の5人さえ倒すのが最善手と判断した敵は夏子に殴り掛かる。
「まだいるわよ」
最奥に向かったかと思われたイナリはこの場に残り、手近な兵士アリへと武の奥義を叩き込む。
残るタイムは少し状況が変わって楽になったものの、他の通路からはぽつりぽつりと兵士アリや働きアリが駆け付ける。
(これが役割だからさ、っていつも怪我してその度に心配してるんだから……!)
タイムは壁となりながらも自身を含むこの場6人の回復を始めるのだった。
●
最奥に向かうイレギュラーズは7人。
一本道の通路を通り抜け、彼らは奥に鎮座する女王アリを前にする。
「我が巣を侵す不届きものよ。我が子らの餌にしてくれるわ……!」
その手前に現れるは先程も相手した近衛アリ。ただ、女王の守りとあって3体も控える。
「どうやら女王様は動かない様ですね」
ならばと、鏡はすぐさま武器を持つ近衛……スラッシャー1体を捕捉して納めたままの刀を走らせる。
「一本ずつ腕を落としてあげましょう」
その敵と合わせ、ハイデマリーは部屋の手前に位置取ることで敵から距離をとり、連射して鋼の驟雨を敵陣へと降らす。
(やりすぎて、近衛が倒れる前に飛行させるわけにはいかない)
女王を自由にさせる前に、近衛を倒したい。
部屋の奥から超音波を響かせてくる女王。そいつの体から放たれるフェロモンと、こちらの攻勢を削いでくるのが厄介だ。
精神攻撃への対策を講じているメンバーは多いが、それらの攻撃は大幅に体力も削ってくる。マルクは回復効率を重視して福音を紡ぎ、仲間が万全に戦うことができるようサポートする。
「合わせるわ」
確実に敵の数を減らそうと、リースリットはもう1人の自身の可能性をその身に纏ってからここでもダイアモンドダストを発動し、敵陣に吹き付ける。
抵抗する近衛はスラッシャーの他、肉弾戦を行うバウンサーとドリルを使うディガー。
それらの攻撃の多くは、イグナートが引きつけに当たる。
「仲間の前に、オレが相手になるよ!」
防御寄りにトレーニングしてきたというイグナートは、ここぞとその力を発揮して敵の猛攻をその身で受けていた。
手数の多いアリ達の攻撃が度重なれば危険だが、マルクの癒しもあってイグナートはしばらく仲間達が戦いやすいよう敵を抑えつける。
しばらく交戦が続き、近衛スラッシャーの態勢が崩れる。
それを見計らった汰磨羈が近衛と女王を纏めて射線に捉えて斬りかかれば、スラッシャーの体から体液が噴き出す。
すぐさま簡易飛行で仲間の元へと戻る汰磨羈と入れ替わるように、鏡がスラッシャーの腕を切り裂く。
そいつは腕を失うだけに留まらず、大量の体液を失って絶命してしまう。
その後もメンバーは着実に近衛を責め、獅門は勝利を自らつかみ取る一手を打ち込む。
間髪入れずに獅門は敵の腹目掛けて、強く、深く竜撃を打ち込んでバウンサーをねじ伏せる。
敵の数が減ってくれば、リースリットは確実に相手を仕留めるべく仲間の攻撃に続けて精霊剣・風神で相手のドリルを上回る勢いでその身を切り裂く。
多少なりとも消耗したメンバーだが、残るは女王唯1体。
「骨のある相手とみた。さぞいい養分になろうぞ」
不敵に笑う敵はその身を大きく変化させ、羽の生えたアリへと姿を変えたのだった。
手前の部屋は続々と敵が出現する。
イナリが手数で手前の兵士から爪や牙で攻め立て、1体、また1体と倒す。
共闘する門下生らも中々の腕前で、殴り掛かってくるアリに臆することなく攻撃を続ける。
玄関口から現れるアリはいない。宇航師範達も踏ん張ってくれているはずだ。
「本能で動いてる連中は扱いづらいなぁ」
奥から漂ってくる女王のフェロモンはこの場のアリ達を呼び寄せているはず。それが分かっているからこそ、夏子は敵を引き付けて通さないよう身構える。
そして、夏子は全力丁寧に獲物である軽槍で横薙ぎ払い、敵を大きく吹き飛ばす。とはいえ、敵が増えてくればそうもいかず、彼は次第に防御に回る。
「タイムちゃん居てくれて助かるよ 1人より頑張れる」
時折励ましてくれる夏子を倒れさせはしないと意気込んでいたタイムだが、このままでは彼は……。
(夏子さんが倒れるのを黙ってなんて見てられない)
回復が間に合わない。そう判断したタイムは身を投げ出し、夏子を庇う。
「たまにはわたしの気分も味わって欲しいわ……あとは、お願い」
とはいえ、タイムもただで倒れるつもりはなく、パンドラを使って踏ん張り、なおも夏子の傷を癒す。
こんな状況で倒れるわけにはいかず、彼は奮起してなおも軽槍を振るう。
これ以上敵を勢いづかせるわけにはいかない。イナリが術式によって敵の行動を強く阻害し、門下生が四肢と尻尾を叩き込んで撃破していた。
羽虫の姿となった女王アリ。
制限された空間内であったが、枷を断ったアリはその強さを見せつける。
地面を蹴りつける敵が起こす地響きから逃れるべく、浮遊する汰磨羈やハイデマリー、春嵐に騎乗した獅門が敵頭上から抑えつけに当たる。
メンバーの多くが地響きを懸念して浮遊するが、地面にいたイグナートはそれに耐え、鉄帝国の武技である鋼覇斬城閃を女王アリへと叩きつける。
「ほう、子供達が敵わぬわけじゃ」
決定打にも敵は笑みを浮かべたままで今度はメンバーへと直接蹴りかかる。
その一撃はとてつもなく重く、通常の生物であれば一撃で粉砕されかねない威力。
風の精霊を操るリースリットがそれをまともに食らってしまう。
「ほれ、こっちじゃ」
さらに、女王は踊るように空中で一回転し、鏡の体を蹴りつけた。
両者ともにパンドラを使って堪えるものの、傷は残っており、すぐさまマルクが聖体頌歌を響かせてカバーに当たっていた。
「こんな相手を亜竜種の集落に近づけさせるわけにはいかないね」
巣穴の外へと女王が出てしまう前に。ハイデマリーは敵の頭上をとって踏みつけつつ、仲間達が攻撃しやすいようにと誘導する。
マルクの援護もあって立て直した鏡も高くジャンプし、その背をとる。
「折角生やしたその羽、断たせてもらいますよ」
同じタイミング、汰磨羈もまた女王へと飛びつき、強引にその背に刀を突き立ててとりつく。
「おのれ……!」
女王が空中で暴れるも、鏡が刀を振るうと同時に汰磨羈も力技で羽根の根元を攻撃する。
羽根は全てが断ち切られ、女王は真っ逆さまに地面へと落ちていく。
「あああああああ!!」
獅門は女王の落下に合わせて超高速で斬り上げ、斬り下ろしを同時に行う。
さらにリースリットが風の精霊術でその全身を切り裂くと、回復の手を止めたマルクも呪言を紡いで硬いアリの装甲をも撃ち抜く。
「はぁ、はぁ……」
地面へと激突した女王は超音波を発してきたが、やはり限界は近くそれが最後の攻撃となる。
イグナートが耐えきる間に殲滅兵装の引き金を引いたハイデマリーが黄金の煌めきと共に敵を撃ち抜けば、空中で態勢を立て直した汰磨羈がなおも仕掛ける。
「地に落ちた女王に未来などない。このまま朽ち果てろ!」
背中からなおも追撃をかけた彼女が女王の内臓まで破壊する。
吐血した女王は言葉すら紡ぐことができず、その場で絶命したのだった。
「まだ、終わってないであります」
皆ボロボロではあったが、巣穴のアリを殲滅せねばならない。
ハイデマリーの情報で手前の部屋の戦いが続いているのを知ったメンバー達はすぐにその部屋を後にしていった。
●
アリの数にも限界はあるはずだが、最奥手前の部屋での戦いはかなり苦しい状況が続いていた。
ただ、アリ達は女王が倒れたことを知ってか、勢いが完全に止まってしまった。
加えて、玄関口からは師範らが駆け付け、一気に戦況が覆る。
「援護に行く気満々だったのに」
ファミリアーを通して女王討伐の知らせが入ったことを残念がるイナリの言葉に夏子、タイムは力を振り絞り、仲間が駆け付けるのを待つのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは女王アリを討伐した貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
こちらは、天野ハザマGM主催の<覇竜侵食>と合わせ、当方で案内している巨大アリとの決戦シナリオとなります。
今回のアリの動きもあって、先日現れた巨大アリの巣穴を発見。これを叩いて巣穴内のアリの殲滅をはかります。振るってご参加願います。
●成功条件
巨大アリ巣穴の制圧
●概要
亜竜集落ペイトを包囲するほど繁殖していた巨大アリ。
その巣穴が一連の事件で発見できたことで、その駆除に乗り出すことになりました。
巧妙に隠された通路の奥、まさにアリの巣のように枝分かれした場所で、アリ達が待ち構えています。
最初の巣穴の玄関口となる場所に働きアリ多数と兵士アリ2体。
奥底へと進み、最奥手前のフロアで近衛アリ1体、兵士アリ10体以上と対します。
最奥フロアで女王アリ1体と近衛アリ3体と対します。
1つ目、2つ目のフロアへ、枝分かれした部屋から増援が現れる為、敵総数が不明です。ある程度戦力を分散させて抑えることが必要となるでしょう。
●敵……魔物、巨大アリ
アダマンアントの禁煙種のようです。
戦闘中、枝分かれした通路から続々と増援が現れます。
巣穴を崩すわけにはいかない為か、これまでのシナリオのように穴を掘って増援を呼んだり、逃げたりすることはありません。
○働きアリ
全長2.5mほどもある働きアリ。
土塊や岩を叩きつけてくる他、直接食らいついたり、酸を撒き散らしたりしてきます。
○兵士アリ
全長3mほど。働きアリを統率する隊長格です。
体術の他にハンマーを使い、下位の働きアリ同様、土塊、岩の叩きつけ、食らいつき、酸撒き散らしを使うこともあります。
○近衛アリ
全長3.5m。複数小隊を統べる部隊長クラス。
4本の手で剣、斧を扱うスラッシャー、拳での連撃を行うバウンサー、ドリルで貫かんとしてくるディガーの3種。
2戦目にスラッシャーと、女王アリ戦で3種全てと対します。
メインとする武器の他、他アリ同様、岩や酸も使用します。
○女王アリ
全長5mほど。最奥に控えるこの巣穴の女王アリです。
戦闘開始直後はほとんど動かず、フェロモンを使って相手を惑わし、超音波でこちらの攻勢を削いで近衛アリの賦活してきます。
全ての近衛アリを倒すか、体力が減ると羽が生えたアリへと姿を変えます。
羽ばたきを伴って頭上から襲撃、フェロモン、超音波と合わせて舞うように躍りかかり、自重を伴って踏みつけたり、敢えて地面を蹴りつけて地響きを起こしたりします。
●NPC……覇竜轟雷拳師範、門下生
ペイトにて徐・宇航が開いた武術の一派。
翼や尻尾までも技に生かし、極めるには亜竜種であることが必須です。全身を凶器として利用することで、思いもしない攻撃が可能であり、覇竜の亜竜、魔物とも互角以上に渡り合うことができると言われています。
指示がなければ最初の部屋で働きアリを抑えてくれますが、必要とあらば、数人を2つ目、もしくは最奥の部屋まで連れていくことも可能です。
○徐・宇航(じょ・ゆーはん)
長く伸びた髭が特徴的な45歳男性。
師範。選りすぐりの門下生を連れて参戦してくれます。
○門下生×7人
精悍な亜竜種達。20~30代。男性5名女性2名。
宇航に教えを乞う門下生ですが、その中でも師範代など優秀な亜竜種達です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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