PandoraPartyProject

シナリオ詳細

奪われた花嫁

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●二人の距離は遠く
 夏は食べ物が傷むし、参列者が体調を崩すかもしれないから秋になったら挙式をあげよう。小さな教会で、二人の数少ない身内とそれよりは少しだけ多い友人を呼んで、ひっそりと、こじんまりとしたもいいから思い出に残る式をあげよう。
 いつか子供が生まれたらお父さんとお母さんはこの教会で誓いのキスをしたんだよ。そう語り聞かせるために教会の近くに家を建てよう。
 娘が手直しして花嫁衣装にできるようにと、彼女は一針一針心を込めて白いウェディングドレスに銀糸で花々の刺繍をしていた。
 家庭的な人だった。読書が好きで、料理が好きで、掃除が好きで。虫が苦手で、掃除のときに今借りている古い家のせいで小さくても虫が出るとそれだけで大騒ぎだった。
 幸せだった。その幸せが秋になったらもっと大きくなる。豊穣がもたらされる季節に、これ以上ないくらい最高の結婚式になる。
――そう、信じていたのに。小さな村の中の、一番の金持ちが彼女を見初めてさらっていってしまったのだ。ごろつきに邸宅を守らせ、自身は何度も後妻を迎えた卑劣漢に俺の恋人がさらわれてしまったのだ。
 憎かった。さらった本人はもちろん憎かったが、彼女を自分自身の手で取り戻せない自分の無力さがそれ以上に憎かった。籠の鳥のように閉じ込められて、彼女は今どうしているだろう?
 泣いてはいないだろうか、乱暴をされていないだろうか。心や体を傷つけられてはいないだろうか。……自分のことを、まだ想ってくれているだろうか。帰ってきてくれるだろうか。
 護衛代わりのごろつきに小突き回され、殴られ、蹴られ、無様だとあざ笑われながらそれでも乞うた。どうか自分の最愛の人を返してくれ、自分にはあの人しかいない、なくしては生きてはいけない。
 そうしたら。あの村長を自称する、実際はただ金だけしかもたない、人望がかけらもない成り上がりは鼻で笑っていったのだ。ならば、死ねと。あの娘はもう自分のものだ、返すつもりはない、と。悔しければギルドに泣きついてみろ、と。貴様一人では何もできない。あぁ、なんて無様な男だ。恋人一人、自力で救えないとは。
 生きている意味がないな、恥さらしだな。死ぬ理由が二つも増えたじゃないか。三つあれば自殺するのに神も咎めまい。絶望に打ちひしがれて家畜のように哀れに泣きながら死ねばいい。死ぬ覚悟が決まったら力を貸してやろう。
 なぶり殺してやろう。粉々に砕いた貴様の誇りをもっともっと砕いて、生まれてきてごめんなさいとはいつくばって謝罪して、どうか一刻も早く殺してくださいと懇願させてやろう。
 その姿を見ればまだ私の良さに気づいていない、お前への思慕にとらわれた盲目的な貴様の恋人も目を覚ますだろう。私を受け入れ、妻となることにうなずくだろう。お前を全力で叩き潰してやる。獅子は兎を狩るにも全力を尽くすというからな。
 そういってごろつきたちと一緒に笑いながら邸宅へ戻っていったあの男の姿を、俺は一生忘れない。絶対に彼女をあんな男の妻になんてさせない。
 けれど俺は無力だ。あいつのいうとおり自分の力だけじゃ彼女を取り戻せない。だから、恥を忍んでローレットのドアをノックした。
 泣きはらした目と、青あざの残る顔を見て職員はひどく痛ましそうな顔をした。それがうれしく、そしてつらかった。

●悪人退治
「というようなことが小さな村で事件としておきまして。依頼人の男性の恋人さんの奪還と、自称を懲らしめる手伝いを募っているんです」
 噂によるとその自称村長の成金は過去にも何度か美しいと評判の村娘や町娘を恋人から略奪し、悲嘆にくれる女性の前で男性の誇りを地に貶め、無理やり妻とした後、それでも添い遂げることを良しとしなかった女性が自殺するのを嗜虐的に愉しんでいたという最低を絵にかいたような男らしい。
「悪評ばかり多い男ですからね、無理難題を押し付けられてクリアできなかったからと解雇された村人から見取り図や内部事情なんかを聴いてきました。
 私、男性が与えられた恥辱と女性が受けた屈辱をそのままにしておきたくないんです。地にはいつくばって、生まれてきてごめんなさいとわびるのは略奪者のほうがふさわしい。何人もの恋人たちが引き裂かれ、命を絶ったのですから」
 門番がわりのごろつきはオードソックスに二人、長い柄の斧をもって連携戦を得意とする人間種。
 衛兵がわりのごろつきは十人。長剣を携えた、私兵だ。そろいの甲冑に身を固めたところは騎士団のようにも見えるが高潔な騎士と比べるには所業はあまりにも唾棄するべきものがある。
「身なりは整えていますが野蛮で低俗、ろくに教養も受けておらず血に飢えたけだものといったところですね。性格はいたって粗野で好戦的、自分一人の手柄にしてボーナスをもらおうとする腹積もりの者が十人そろってるわけですからだまになってかかってくるでしょう。迎撃するにはエントランス兼ホールがいいんじゃないかな。村一番の金持ちだけあってそこそこ広い場所だしごろつきたちが侵入者に気づいて真っ先に駆け付ける場所だから探す手間が省けます。
 戦闘能力はそこまで警戒しなくていいでしょうが……言葉を重ねると極めて下衆なので。囚われの女性を人質にしないかだけが心配ですね。そこへの対処を考えれば鎮圧は容易かと。
 むしろ個人的には制裁の後、恋人二人の心のケアに力を入れていただきたいです。えぇ、ケアに力を入れてほしいですが徹底的に叩きのめしてほしくもありますね、あんなのを自称でも村長にしておきたくない。それが村の総意ですから」
 どうぞよろしくお願いしますね、とどうやら男性のひどい有様を見てかなり強く感情移入したらしい職員は邸の見取り図を差し出しながら黒い笑顔を浮かべたのだった。

GMコメント

目的
未来の花嫁の奪還・自称村長(実際はただの成金。金に物を言わせて悪童の限りを尽くす下衆で人望ゼロ)と男が雇っているごろつきへの制裁・恋人たちの心のアフターケア

恋人の女性
三階建ての建物の最上階に軟禁されています。職員が危惧した通り旗色が悪くなると人質として降伏を要求する手ごまにされます。
金髪に翠の目をしたとても美しい二十歳の女性です。
泣きはらした目をして食事ものどを通らなかったらしくやつれています。恋人に出会うことができれば再び笑うことができるようになるでしょう。

依頼人の男性
貧しいながらも清く正しく生きてきた真っ当な男性。婚約者の女性を心から愛しています。
黒髪に藍色の瞳の二十二歳。長身痩躯。
自称村長たちへの制裁の間は見届けるため隠れていますが念のため「戦闘中は前に出ないで自分たちにまかせて、恋人を安心させるとびっきりの愛の言葉でも考えていて」などの県政をした方がいいかもしれません(怒りがぶり返してとびかかっていく恐れがあります)

自称村長・ごろつき
全体的に肥満。喩えるなら豚。略奪愛が好き(ただし一方的な愛情というか所有欲。ゆがみ切っています。引き裂かれた恋人たちは数知れず。全員が添い遂げるくらいならと死を選んでいたため今回の女性で何人目かの後妻になります)
家来のごろつきたちの武器は門番は柄の長いバトルアックス、家の中の警備(という名の、実際は反逆するものへの懲罰係)は長剣と短剣(通常時は長剣で我先にととびかかってきて長剣が破損した場合などに短剣を抜きます。練度は低いですが卑怯者たちです。あと名誉欲が強いです。形勢不利な演技などをすれば調子に乗って勢いづいて攻めてきて、自分たちがかっているのだから人質は必要なかろうと安易に考えます。形勢が逆転してからもさっき買っていたのだから負けるはずがない、と態度を変えません。馬鹿です)
自称村長は略奪した女性を口説くため女性の部屋にいます。四十台の脂ぎったメタボのセクハラおやじです。わかりやすいほどわかりやすい悪役で三下。

本物の村長
人望はありますが貧しく自称村長に虐げられています。横暴に耐えながら被害を食い止めようとする村の良心。恋人たちが引き裂かれるたびに自分も抗議に行っては鞭うたれているため老体は傷だらけ。
今回は要請がなければ登場しません。

失敗条件
女性か男性のどちらかが命を落とす、自称村長たちを制圧できないことが失敗条件となります。

可能なこと
鉄拳制裁を自称村長たちに食らわせる。
または構成させる価値もないと割り切って恋人たちの心のケアに努める。
恋人二人を守り切り再会させて自称村長に二度と手を出させなければ依頼は成功です。
どれに比率を割くかは相談の上決定してください。

シナリオ傾向
敵がさほど強くないので心情メインでプレイングを組むと活躍しやすい依頼です。
悪漢に怒りの炎を燃やすもよし、女性に優しく接するのもよし、男性の勇気を認めながら「貴方があきらめたら今後誰が恋人を守るんだ」といさめるもよし。
勧善懲悪シナリオなので悪役になることはお勧めしません。

  • 奪われた花嫁完了
  • GM名秋月雅哉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月03日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

テテス・V・ユグドルティン(p3p000275)
樹妖精の錬金術士
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
ポンコツオーナー
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
エスラ・イリエ(p3p002722)
牙付きの魔女
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)
オトモダチ
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
レオンハルト(p3p004744)
解放する者
葛城 リゲル(p3p005729)
竜爪黒狼

リプレイ

●奪われたら奪い返せ
 幸せになるはずだった二人。引き裂かれた二人。それを成した自称村長への怒りは大きい。もともと自称村長の悪逆非道ぶりから彼の人望はゼロどころかマイナスで、村人たちは可能な限り今回の花嫁は助けてやってくれ、自称村長とその取り巻きのごろつきを何とかしてくれと解決にやってきた八人にこい願った。
「花嫁は幸福であるべき。たとえその美しさに激情を動かされても、心をひかれたならなおさら花嫁の幸せを願い、損なうべきではない。邪魔をする者は、どこの長を名乗ろうともこの私が許さない」
 村人たちから可能な限りの情報を得た後仲間とは別行動で『遍歴の騎士たるヴァンパイア』シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)は吸血鬼の能力としての翼を展開し花嫁のとらわれている三階へと向かった。
「窓から逃げられないとも限らない。身投げの可能性もある。悪知恵が働くなら窓のない部屋でしょうね」
最上階である三階を眺めると一部屋だけ窓がふさがれた古い跡のある部屋が見つかった。おそらくここだろう。ふさがれたのが昨日今日ではなく何年もの歳月を経ていることが感じられる風化ぶりだったので犠牲になったという何人もの美しい女性たちは全員この部屋に軟禁されていたのかもしれない。
「まったく、腹立たしい」
 エントランスでの騒ぎに合わせてできるだけ静かに窓を破壊するとシャルロットは屋敷の中に侵入した。
頑丈な扉の前に立つと気合を入れて蹴り破る。エントランスでの騒ぎは大きくなっているようだった。そろそろごろつきが全員集合して仲間たちに鉄拳制裁を食らっているのかもしれない。
「な、何者だ!? 誰の許可を得て私の屋敷に入った! この家の家具は高いんだぞ、弁償させてやる! 美しい調和を台無しにしおって! 特注だったというのに!!」
「特注とか調和とか言う割に品のない家具ね。センスと貴女の教養の低さを露見させているわ。そこの女の人、今から悪者退治をするからちょっとこっちを見ないようにして、耳をふさいでおいて。見てて気持ちのいいものじゃないから」
「あ、貴方は……?」
 金髪に翠の目の女性はシャルロットが自称村長に乱暴を働かれないか気づかわし気な様子。
「貴方の恋人からローレットに貴方の救出の依頼が来たのよ。大丈夫、恋人に会わせてあげる」
 だからもう少しだけ我慢していて、と言葉を続けると女性はローレットの名を聞いて愕然とする自称村長の腕を逃れて部屋の隅へ。
 三発ほど自称村長を殴打する鈍い音が響いた。歴戦の猛者とただ金に物を言わせているメタボとでは戦力差は月とスッポン、相手にもならずにノックアウトされてしまう。
「さて、ごろつきがこっちに来ないように貴女の身は私が守るわ。最低最悪の体験だったでしょうけど、貴女たちなら乗り越えられると信じているわ。だって貴女の恋人はあきらめなかったし、貴女もあきらめていないでしょう?」
「はい、せめてもう一度会うまでは、と……あの、彼は本当に? 無茶をしていませんか?私のせいで村で暮らせないようになったら彼にも彼のご両親にも申し訳が付きません……」
「大丈夫よ。体に悪い膿を出すために私たちが呼ばれたんだから、安心して」
「……はい」

一方少し時をさかのぼり邸宅の門の前では自分も救出に同行したい、いや、せめて同行して見届けるべきだと主張する青年をなだめる光景が見られた。
『イツワリの咎人勇者』レオンハルト(p3p004744)はギフトによってもたらされる癒しの力を用いて青年の、まだそこかしこに残る傷からくる不調を緩和させてやりながら無茶はしないようにと説く。
「腕っぷしだけが力じゃない。君は、少なくとも俺たちを動かすだけの力はあるから、自分の無力さを責めすぎるな。なにより、君が無事じゃないと君の未来の花嫁が心配するからな」
「あなたの彼女は必ずや救い出そう。おそらく彼女は不安がっているだろうから、再会したときになにか安心させるような言葉を告げてやるといい。我々はあなたと彼女を再会させることはできるが彼女に笑顔を取り戻させ、心の傷をいやせるのはあなただけだ」
 車いすの少女、『樹妖精の錬金術士』テテス・V・ユグドルティン(p3p000275)もそういって青年をなだめる。
「僕も繰り返そう。貴方の行いは恥ではない。助けを求める行動力。折られてなお立ち上がる貴方の恋人への愛を称賛しよう。これをもってあとはおとなしく待っていてくれ」
『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)に純潔の花を渡されて青年はわずかに顔をゆがめる。
「わかりました……彼女をよろしくお願いします」
「えぇ。貴方の手は人を殴るためにあるのではない。愛しい人の髪をなでて、愛しい人のために働き、愛しい人へ贈る花を摘むためにあるのです。自分で彼女を取り戻したい気持ちはよくわかります。
 ですが、ここは僕たちにお任せください。人を殴るのには僕たちは慣れているんです。だから、貴女は傷ついた彼女が少しでも癒されるようにその花を渡すときに一緒に贈るとびっきりの愛の言葉を考えていてください」
 愛しい人から引き裂かれ、愛しい人の心が裂かれ、愛しい人が嬲り殺される。そんな悪夢が現実だとしたら自分は正気でいられるだろうか、落ち着いたらしい青年を前に『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)は自問し、激しく否と自答する。
 必ず相手と刺し違えて死んでみせようとまで思い詰めるのは幻に愛しい人がいるからこそだろう。
(私情だとしても僕は自称村長、貴方を許せない)
 それは覚悟だった。それは決意だった。幸せな恋人たちを我欲のままに引き裂き、愛を得ていないのに自分のものだと公言する下衆への怒りだった。
「落ち着いたみたいね。それでいいわ。未来のお嫁さんが救出されたときに貴方が大けがしていたら何の意味もないもの。今は無事の再会と、そのあと翔琉言葉だけを考えていてちょうだい。そのために私たちがあなたの依頼を受けてここまで来たんだから」
『牙付きの魔女』エスラ・イリエ(p3p002722)の後押しで青年が門から離れたのを見て取って一歩屋敷へと踏み出す。
「ひどいことを……絶対許さないわ。こんなこと、もう繰り返させない」
 依頼人なのだから依頼を成功させるように協力してくれとたしなめた『特異運命座標』オリーブ・ローレル(p3p004352)の声は顔まで覆う兜のせいでくぐもっていたが青年の心には確かに響いた。
 そう、自分は助力を乞うたのだから彼らが最大限に力を発揮できるように協力しなくてはいけない。出しゃばった真似をしてもうしわけない、と物陰に向かう青年を見て七人は顔を引き締める。
「今回の標的はいわゆるクズか。いいだろう、クズにはクズにふさわしい末路に送ってやろうではないか」
 青年に対しては優しい面を見せていたテテスが冷えた声で宣言するとその場にいた全員が頷いた。
「けどよ、敵だろうが味方だろうが、流れる血はすくねけほうがいい。俺は常にそう考えてる。だからごろつきどもだけはなんとか更生させたい。そう思うんだ。チャンスをくれないか。
 もし失敗しちまったら、どうしようもねぇだろうがな……しかし自称村長……こいつは明らかに罪を犯しすぎた」
 生まれながらの悪人などはいないのだろうし、自称村長にも歪んでしまった理由というのはあるのだろうが。しでかしたことへの落とし前はつけないといけない。
「年貢の納め時ってやつだ」
『急がば突っ切れ』葛城 リゲル(p3p005729)の提案には説得に応じなかった場合は対処を考え直す、という意見で仲間たちから同意を得た。
 そして七人は門をくぐる。
「なんだぁ、てめぇら」
「アポイントメントはとってあるのかよ」
「ちょっと急用でな、アポはねぇが通してもらうぜ」
 そうはいかない、いや通してもらうと押し問答をしている間に他のごろつきたちも集まってくる。名誉欲の強い連中だし、助け合いの精神というよりは門番が止められなかった招かれざる客を追い返してあわよくばボーナスを、といったところだろう。
「村長様のお屋敷に不法侵入とはいい度胸じゃねぇか」
「さっさと済ませて痛い目見てもらって、村人たちの見せしめにしようぜ」
「おとなしく帰っておけばよかったのになぁ。村長様は今挙式の準備で忙しんだよ。騒がせた詫びは払ってもらうぜェ」
 バトルアクスを持った門番二人と、護衛という名の懲罰係は戦法も連携もまるでなっていない、ただ自分が一番手柄を立てるのだという功名心だけで全員がだまになってつっこんできた。
 シャルロットが女性の護衛をしているはずだが人質にされては困るし無力化するには油断させた方がいいと事前の打ち合わせ通り最初は押されている様子を演じて見せる。
 その喧騒に紛れてレオンハルトはエントランスを抜け二階と三階をつなぐ階段へと陣取った。
 私兵たちが花嫁を人質にしようと上がってきた場合の阻止と、逆に三階から昏倒させたはずの自称村長が逃げてきた場合の対処のためだ。
 リゲルは防戦で時間を稼ぎながらごろつきたちの説得を試みる。
「なぁ、あんたらだってわかってるだろ? 間違ったことをしてるってことくれぇ。あんたらにもいるはずだ、家族、大切な人……どちらもいねぇってんなら両親でもいい。もしそんな人たちと無理やりに引き離されたら……その人たちの幸せが壊されたら……そんなことすら考えられないような、本物の馬鹿だってんならもう救いようがねぇだろうさ。
 だけど俺は諦めたくないんだ……まだあんたらはやり直せる、そう信じたいんだ。目の前で死なずに済むかもしれない命があるならそれを救いたいんだ。
 だから……だから頼む。誓ってくれ、口先だけじゃなく心から……もう間違わないと」
「うるせぇ!」
「この村じゃ強くなきゃ生きていけねぇんだよ!」
「叩き潰してやる!」
 どの部分の説得が心に響いたのかは私兵たちにしかわからない。けれど明らかな動揺が見えた。
 リゲルの意をくんで他の六人もごろつきたちを殺さないように反撃を開始する。強くなければ生き残れないというなら自分たちは私兵より強く、どれだけ粋がっても私兵たちもまた弱いと知らしめることが有用だと考えたのだ。
 だまになって攻撃を仕掛けたせいで本来は仲間同士であるのに長物の武器をうまく扱うことができず私兵たちは半分まで数を減らす。
「チャンスをやる。強くなければ生き残れないと貴様たちは言ったな? 貴様たちは強いか? 今の状態を見てどう考える?」
「俺たちは……俺たたちはぁ! 今更村の連中に受け入れてもらえるかよ、頭下げてごめんなさいではいこれから仲良くやっていきましょうなんて言ってもらえるわけねェだろ! 何をやってきたと思ってるんだ、村長の命令なら人だって殺した! あいつが見初めた女を奪いもした! 今更、今更っ……!」
「なぁ、なんであんな自称村長に手を貸したんだ? 金のためか?」
 激昂するごろつきたちにリゲルは静かに言葉を重ねる。
「あいつは……私兵として雇われれば俺たちの身の回りの人間には手を出さねぇって言った、柄が悪いって言われてろくな職につけねぇで都の貧民街にいた俺たちと家族を食うのに困らない生活をさせてやるって連れ出してくれた。でもこんな仕事をするくらいなら貧民街にいた方がましだった! それでも! 飢えで家族が死ぬのは、病気やけがをしたとき医者に見せてやれない生活は嫌だった!」
 だから頭の悪いふりをしていた。歯向かう脳みそがないふりをしていた。金があれば何でもできるふりをしていた。自称村長を心から疎みながらそれでも彼の持つ財力は魅力的だった。
「念書を書いて、村人一人一人に伝わるまで謝って、誠意見せて。一歩一歩やり直せ。本物の村長は人望あるんだろ? その人にたよりゃあいい」
「俺たちは……許されるのか? あの男の報復を恐れずに生きていけるのか?」
「許されるかどうかは貴方たち次第ですが……自称村長への罰は、僕たちがしっかりと与えましょう。降伏してくれますね?」
 幻の言葉に私兵たちは武器を下ろす。油断せずに幻は言葉を重ねた。
「貴方がたが愛する者同士を引き裂き、その二人を追い詰め、死に追いやる手引きをしたこと、決して忘れないでくださいね。忘れたなら、貴方がたの命は次こそないでしょう」
「お前たちの生死に興味はない。興味はないから生きることを止めることもしなければ殺す気もない」
 依頼人が満足すればそれでいい、ランドウェルはそう語る。
「死体は見せずに済んだな。やれやれ、だ」
(まぁ、この後一つ死体はできるが……この二人はつらい目にあったし心優しい。わざわざ心の傷を増やすことはない。そちらは内密に、がいいだろうな)
 階段を守っていたレオンハルトと女性の護衛を務めていたシャルロットはお互いをねぎらい合う。レオンハルトと同じ思いを抱いたものは何人いただろうか。

 オリーブが青年を、他の者たちが女性を迎えに行って恋人たちを再会させ、自称村長は裁判にかけると村から連行した。すこし戦いで荒れたが自称村長が村人から巻き上げた金品や悪行でため込んだ財は村に還元されることになり、邸宅には本来の村長がすすめもあって近々居を移すことになる。
自称村長を村から連れ出した後テテスと幻は足を止めた。
ここから先は秘密裏に行いたかったため、村の外へと連れだしたのだ。
「な、なんだ。何をする気だ!? 今回は失敗したが次はもっと腕のいい傭兵を雇って貴様らを成敗してやる! 私は都の貴族まで上り詰める男だぞ! それとも今更非礼をわびるのか?」
「おめでたい男だな。まさかとは思ったが自分が生きていられると信じて疑っていなかったらしい。簡単に死なせてはダメだ。じっくりと、今までやってきたことを後悔させながら殺さねばな」
 ちょうどいろいろ試してみたい薬があるんだ、毒薬は作ってもなかなか試す機会がないからな、とテテスは毒薬を取り出す。
「ま、待て。金ならやる! 命だけは……! 私はまだここでは終われんのだ!」
「そう請われて助けたことがあったか?」
「まだここでは終われないとあなたはおっしゃいましたね。いいえ、貴方はここで終わるべきですよ」
 ほかの者は積極的に手を下そうとはしなかったが止めようともしなかった。それだけ自称村長の罪が深かったからだ。
「さよなら、自称村長。苦しみぬいて地獄へ落ちろ」

●本来の挙式を、秋になったら
 そんなことがあったとは知らずに恋人たちは無事の再会を祝われていた。
 ごろつきたちは居心地悪そうにしていたが自称村長に与した理由を洗いざらい吐き、念書の効果もあってか思ったほどひどい糾弾は受けなかった。
 戦いに赴く前にこれを恋人に、と渡された純潔のを恋人に手渡し、青年は久しぶりに対面する彼女を抱きしめる。記憶より痩せたからだが痛々しい。
「俺は無力だけど……頼れる人たちがいることを知ってる。みんなが助けを求めれば助けてくれるのがこの村だってことを知ってる。だから、一緒に幸せになろう」
「……はい!」
 純潔の花より清く美しく、未来の花嫁は飛び切りの笑顔で頷いたのだった。
 小さな村中に、拍手と歓声が沸き上がった。村は救われたのだ。一人の青年の、一途な愛の力によってやってきた救世主たちに。
 村の膿となった男は排除された。これからは人望のある村長が村を治めていく。不当に押収された財産も再分配される。村の未来は、明るかった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

初依頼へのご参加ありがとうございました。予想以上に予約人数が多くておののいてしまいました。
ごろつきたちがちょっといい人になってしまいましたが自称村長はクズの極みを体現したつもりです。
今回の依頼は楽しんでいただけたでしょうか?
PPPではまだまだ駆け出しなのでこれからも頑張っていきたいと思います。
また何かのご縁があればうれしく思います。

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