PandoraPartyProject

シナリオ詳細

全ての水を我が物に

完了

参加者 : 8 人

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オープニング


 探求都市国家アデプトによる国家プロジェクト『Project:IDEA』。
 それが産み出した練達ネットワーク上に構築された疑似世界。それがR.O.O……Rapid Origin Onlineである。
 発生したエラーにより、さながらオンラインゲームの様相をなり果てた世界「ネクスト」へ、イレギュラーズはアバターを作って攻略へと乗り出す。
 やがて、世界に満ちた悪意の正体へとたどり着き、イレギュラーズは撃破へと至る。
 滅びを逃れることができたネクストに日常が訪れるも、この世界もまた様々な問題を抱えている。架空の世界であっても、苦しむ人々は多数おり、それらなクエストという形でダイブしたものの挑戦を待っている。

 砂嵐……混沌で言うところの傭兵に当たる地。
 荒れ果てた砂漠地帯であるこの地は傭兵と同じく、ネフェルストを始めとしてオアシスを寄り辺として都、集落が作られ、栄えている。
 この乾燥地帯で人々が生きていくにあたって、オアシスは命の水がめのも言える。
 このオアシスを抑える者が現れれば、砂嵐を実質的に支配する砂嵐傭兵団にとって脅威の存在となる。
 ラサの中心にほど近いオアシスの町エルミーツ。
 織物を特産とするこの地に突如として現れた脅威。それは、サボテンの姿をした魔物サバールだった。
 フシュウウウ、フシュウウウウウウウ……。
 エルミーツのオアシスに陣取ったサバールズは唸るような声を上げ、オアシスの水で体内を満たそうとする。
 その量は思った以上に多く、サバールズが居つ「いてしまえば、オアシスの水が枯れることすらありうる。
 自分達の生活圏が脅かされると、エルミールの人々はサバールズの存在を恐れ、傭兵団に討伐を依頼したようだ。
「チッ、思った以上に数を増やしているな……」
 この討伐を請け負った砂蠍団所属アッシラは小隊を率いて討伐へと当たるが、繁殖するサバールを駆除しても新たなサバールが育ってキリがない。
 メンツを考えれば、自分達で処理したいこの任務。
 一気に叩かねばジリ損になり、被害は拡大してしまう。早急に叩くべきと判断したアッシラは先日の戦いで助力を得たイレギュラーズと接触することに決めたのだった。


 ネフェリストにあるサクラメント。
「皆さん、お疲れ様です」
 そこで待っていたのは、『アクアベル・カルローネのアバター』アクアベル(p3y000045)だった。
 アバターとして依頼説明をするのは初めてとあって、少し照れながら話を始めるアクアベルは傍にいた人物を紹介する。
「初めての者もいるだろうが、砂嵐の傭兵団『砂蠍』所属アッシラだ」
 簡単に自己紹介した彼は早速依頼内容について話す。
 現場はネフェリストからほど近い場所にあるエルミーツ。織物が有名であり、絨毯などは砂嵐の有力者だけでなく、他国からも愛用者がいるのだとか。
「そこのオアシスに巣食っている魔物サバールのいうのが実に厄介な相手でな」
 オアシスの水を大量にその身に含むサボテン型の魔物で、駆除しようにも全身の棘が邪魔になるとのこと。
 加えて、繁殖力も高く、放っておけばオアシスの水が枯れるほど増えてしまうのは必至とみられている。
「この状況を砂嵐傭兵団も重く見て、アッシラさんの小隊へと駆除を指示したようですね」
 放置すれば、広域に繁殖してしまうが、この規模であれば対処できるだろうといったところか。
 とはいえ、思った以上に手を焼いていたアッシラ。
 自分達へと依頼されているのに、本隊に助力を仰いではメンツが立たない。
 そこで、少数のイレギュラーズに依頼することを思い立ったようだ。
「お前達は数々の事件を解決した実績もある」
 現実世界を知らないアッシラだが、ネクストだけでもかなりの事件を解決しているのは知るところ。
 状況もあってか、依頼されたとあれば、イレギュラーズも全力を尽くしたい。
「それでは、よろしくお願いします」
 アクアベルは依頼を受けたイレギュラーズへと、魔物討伐依頼を託すのだった。


 エルミーツ傍のオアシスはすでに、サバールがかなりの数増えていた。
 フシュウウウ、フシュウウウウウ。
 サバールはリーダー格以外にいくつかのタイプに分化して繁殖しており、その生態系を強固なものにしようとしていたようである。
 オアシスの危機とあって、不安そうに町からその討伐劇に注目する住民達もある。
 彼らを安心させる為にも、サバールを殲滅する必要があるだろう。
「ゆくぞ」
 声をかけてくるアッシラへと言葉を返したイレギュラーズは、小隊と協力しつつ殲滅へと動き出すのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 久々のR.O.Oシナリオです。砂嵐に現れた厄介な魔物に傭兵団も手を焼いているようです。
 皆様の力をお貸し願います。

●目的
 魔物サバールズの討伐

●概要
 砂嵐にて、オアシスを干上がらせるという恐ろしい魔物の群れが核にされました。
 すでに対処に動き出していたアッシラ隊と共に、これらの討伐を願います。

●敵……魔物:サバールズ×25体
 サボテンの魔物です。内部に水分を過剰に溜めこむ性質があり、数体いるだけでオアシスの水を相当吸収してしまいます。
 数が増えると村のオアシスを干上がらせる危険すらある相手の為、優先して排除すべき相手です。
 ただ、全身を覆う棘もあり、全ての個体が「反」以上の能力を持ち合わせる厄介さを持っています。

○リーダー×1体
 全長5m程度。
 下記の特性全てを備えた上位個体です。上位「棘」の能力を持ち、体当たり、棘飛ばし、水噴射と状況によって使い分けます。

○ソーン×8体
 全長2m程度。棘に特化した個体。上位「棘」の能力を持ちます。
 遊撃もこなし、体当たりや棘飛ばし、水噴射とリーダーの下位個体としての役割もこなします。

○タンク×4体
 全長7mで楕円形をしており、大量の水を取り込みつつ盾役もこなします。体当たりを繰り出すことも。

○フォンテイン×12体
 全長5mほど。水を噴射する個体。
 距離をとり、貫通力をもつ水放射で攻撃を仕掛けてきます。
 水は一定回数で補充が必要なようです。

●NPC……砂嵐傭兵団、アッシラ隊
○隊長……赤い狂風アッシラ
 砂嵐の傭兵団「砂蠍」所属。一時はイレギュラーズの説得もあって離脱も考えていましたが、結局砂蠍へと戻ったようです。ただ、義賊のような行いも始めるなど変化もあったのだとか。
 禍々しい鉾を持つ赤い軽装鎧の人間種男性で、遠近問わず素早い動きで攻め立ててきます。
 なお、現実混沌の当人は<ジーニアス・ゲイム>にて死亡しています。

〇副隊長……ツインニードル:ラーニヤ、ラナー姉妹
 砂蠍時代に芽が出た弱冠12歳の暗殺者の双子姉妹。
 赤く長い髪が特徴的な彼女達は素早く連携して躊躇なく相手を切り捨てることから、ツインニードルの2つ名で恐れられています。
 こちらは現実世界では未登場です。

○部隊員……20人
 日に焼けた肌の持つ若い人間種男性達。
 軽装鎧を纏い、半数が曲刀を、半数が小銃、機関銃をメイン武器として武装しています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

 それでは、よろしくお願いします。

  • 全ての水を我が物に完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年04月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクシル(p3x000649)
ツナ缶海賊団見習い
じぇい君(p3x001103)
オオカミ少年
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)
不明なエラーを検出しました
ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
アウラ(p3x005065)
Reisender
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
エイラ(p3x008595)
水底に揺蕩う月の花
レンゴク(p3x009744)
炎獄の聲

リプレイ


 ネクスト、砂嵐。
 ネフェリストから程近い場所にある織物で有名なエルミーツのオアシスをイレギュラーズ一行は目指す。
(砂漠で水を独り占めする植物型の魔物っているもんだねぇ)
 『不明なエラーを検出しました』縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)……文字化けと呼称するが、彼はラサの知人がサボテン型の魔物と交戦した話を聞いていた。
「水 無い 困る」
「砂漠で水を無尽蔵に吸い上げて繁殖、しかも固有の形に変化するなんて、効果的に意地の悪いモンスターだね……」
 そんな文字化けの呟きに、『ツナ缶海賊団見習い』エクシル(p3x000649)もその存在に懸念を示す。現実側でもこういう存在がいたら危ない、と。
「オアシスを干上がらせる程の植物の魔物とは、特にこの砂嵐では絶対に放置できない相手ですね……っ」
「気に入らねぇ、気に入らねェよ!」
 『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)が討伐に強い意欲を見せると、『炎獄の聲』レンゴク(p3x009744)が同調して声を荒げる。
「本来オアシスは生命の神秘により成り立った奇跡、それを魔物が略奪するだとォ!?」
 断固許せぬと、レンゴクは激しく闘志を燃やす。
「んー、中々ぁ厄介なぁ相手みたいだねぇ」
 『水底に揺蕩う月の花』エイラ(p3x008595)が少し首を傾げてから頷いて。
「いいよぉ。最強のぉ反決定戦とぉ洒落込もうかぁ?」
 エイラは帯電しつつ、棘で覆われた敵との対決に臨む。
「アッシラ隊と共同しての討伐です!」
 また、今回はカノンが言うように砂蠍所属の一隊との共闘となる。
「考えた末に砂蠍に戻ったんだね」
「義をなすには力が必要だからな」
 隊長アッシラと関わりのある『オオカミ少年』じぇい君(p3x001103)が会話する。
 自身と同じ義賊としての活動を行う彼等は、きっと皆に受け入れられるに違いないとじぇい君は信じている。
(砂嵐傭兵団? しかも砂蠍? ふーん……まあ、混沌世界における彼らとはなんら因縁がないんだけどね?)
 『Reisender』アウラ(p3x005065)は依頼者かつ協力者達を見回す。見た目はどう見ても盗賊だが……。
(その彼らとは別存在がここにいる訳だけども……)
 アウラは微笑を浮かべ、値踏みするよう見回す。
 そのアウラの視線は程なく、オアシスを占拠する魔物の群れへと注がれて。
「あらま、デカブツばかりだね? B級映画の怪獣か何かかな?」
 そこにいたのは、サボテンの姿をした魔物サバールズ。
 リーダーを始め、盾役となるタンク、棘を鋭く伸ばすソーン、水を噴射してくるフォンテインと種類は分かれている。
「トゲトゲちくちく……あんまり触りたくないですが、オアシスの危機とあればそんなことを言ってる余裕はありませんね」
「数も多いですし、上位種に進化しているのも居る様子。気が抜けませんね!」
 『闘神』ハルツフィーネ(p3x001701)が少し眉を顰めると、カノンが武器を構えて相手の出方をはかる。
「まず狙うのはぁ敵の分断だねぇ。イレギュラーズでぇリーダー&ソーンを受け持つんだよぉ」
 エイラがイレギュラーズ内ですでに決めていた立ち回りについて確かめる。
 残りのタンク、フォンテインはアッシラ隊とじぇい君に。
 これらは敵の連携妨害とアッシラ隊の防衛にも繋がるとエイラは話す。
「あちらは隊内での連携に長けているでしょうし、無理に連携を取るのも考え物ですからね」
 さらに、カノンも協力者達のやりやすい戦い方を活かしてある程度分担し、同士討ちしないよう注意しながら討伐を目指したいと話す。
 作戦は、失礼がないようにと配慮するじぇい君からアッシラ隊へと伝えられる。
「一騎当千の僕達が手を組めば、数多の魔物も恐るるに足りません」
 サバールズに苦慮する彼らをじぇい君が鼓舞し、勇気づける。
「君達に苦しめられた僕達だから、その強さを痛いほど知っているよ。だからこそ、今回は頼もしく思う」
 じぇい君は双子の少女達にも告げると、魔物の群れに臆しかけていた砂嵐の一隊も討伐への意欲を強める。
(なるほどなるほど、頼らせてもらおうかな)
 アウラも相手の気構えを認め、共闘にする値すると感じる一方で、無力な者、武装した者に多大なる犠牲が出るものだと戦いの常を思う。
 果たして、今回はどうなるか。負傷者はたくさん出るだろうがとアウラは疑わないが。
「痛いのは我慢して頑張ります。クマさんが」
 そこで、タイミングよく呟いたハルツフィーネは抱いていたクマさん……テディベアからの突き刺さるような視線を感じて。
「大丈夫です。デスカウントが増えるときは一緒ですので」
 フシュウウウ……。
 敵もこちらに気付き、この水は渡さないと言わんばかりに威嚇してくる。
「敵の位置は……」
 レンゴクは敵の位置を熱で大まかに感じ取り、岩場で見えなかった敵までその位置を知る。とはいえ、相手も皆メンバー達に分かる位置まで進み出ていたが。
「死にたいヤツから前に出な、俺がその腐った根性を身体ごとブッ燃や(ころ)してやる!」
 フシュウウウウウウウウウ!!
 いきり立つサバールズは一斉に攻撃を仕掛けてきたのだった。


 魔物サバールズによって占拠されたエルミーツ民の水瓶を解放すべく、イレギュラーズ達は動き出す魔物達へと攻め入って。
「お前達の相手はこの僕だ!」
 じぇい君は善戦にいる巨躯のタンクへと声を荒げて引きつけに当たる。
 たっぷりとオアシスの水で身体を満たしたタンクはじぇい君や砂嵐一隊へと目掛けて突進していく。
 後方のフォンテインも引きつけたいところだが、遊撃に出るソーンが邪魔な相手。
 それらを纏めて引きつけるエイラが飛ばすくらげ型の火の玉が風に乗り、ソーン達を攪乱、誘導する。
 その火の玉……くらげ火はただ相手を引き付けるだけではなく、炎上させて動きを止めてしまう。
 敵の数は多い。それだけに、エイラも可能な限り相手の攻撃の機会を削ぐことにしたのだ。
 フシュウウウウウウ!.
 とはいえ、動きを止めるのは一部だけ。残りは体当たりを繰り出し、棘を飛ばしてくる。
 サバールズの攻撃は決して軽いものではない。ただ、殲滅に当たる仲間達も敵の体を包む棘に悩まされることになる。
「棘はとても厄介だからねぇ」
 不滅の紅によって自己回復して耐えるエイラ。
 彼女が抑えてくれている間に、メンバーはソーンの殲滅に注力する。
 サバールズはいずれも水を過剰摂取しようとする性質がある。とりわけタンクは目に余るが、そちらはアッシラ隊の担当だ。
「はあっ!」
 フォンテインをじぇい君が引きつける間、赤い旋風の名を持つアッシラは禍々しい鉾でタンクを薙ぎ払い、ツインニードルの二つ名を持つラーニヤ、ラナー姉妹が赤い髪を靡かせ敵を切り捨てていく。
 黒褐色の肌をした部隊員も水の中飛び上がり、敵の巨体を切り裂く。
 さながら盗賊として活動する者の多いこの砂嵐で生き抜く者達だ。その力量は中々のもの。
 そんな砂蠍の一隊ですら手こずるサバールズだ。
「俺の炎(ちから)に怯えて叫べ、平等に灰にしてやるよォ!!」
 レンゴクも真っ赤な炎を燃え上がらせ、向かい来るソーンの中心へと叩き込んでいく。
 その瞬間、ソーンはその名の示す棘を周囲へと飛ばし、レンゴクの体へと突き刺してくる。
 レンゴクもそれは織り込み済みで、自身の体力気力を少しずつ回復させながら、さらなる炎を燃え上がらせていた。
 エイラの引きつけもあり、少しずつ集まるソーン。そして、その中にリーダーの姿も。
 フシュウウ、フシュウウウウウウウ!!
 オアシスは渡さないと怒り心頭のサバールリーダー。
 ただ、人類だってそれを見過ごしはしない。砂漠の生存競争は苛烈なのだ。
 少しずつ激しさを増す戦いの中、アウラは敵陣へと追尾式高威力炸裂弾へと投げ込み、殺傷力の高い銃弾をソーンらへ浴びせかける。
 ただ、戦況は徐々に混戦模様となっていく。
 ややソーンから距離を置くカノンは異世界の自分の力をその身で再現し、まずは敵を纏めて捉えてその動きを止めるべく魔法による激しいプレッシャーをかけていく。
「今一番体力の少ない相手は……」
 カノンは逐一魔物知識を活かして敵の状態を確認し、最も弱っていると判断した相手を優先して狙い、再び魔法を展開させる。やはり、出来る限り範囲攻撃を狙うカノンだったが、混戦模様となればそうもいかない。
 仲間達も徐々に距離を詰めるし、じぇい君が奥のフォンテインを引き付ければそれにアッシラ隊も群がる形となる。
 ソーン&リーダーの相手を担うイレギュラーズ側もエクシルなどは遊撃に出ていく。
 仲間の傷が浅いうちはエクシルも接敵してきた相手へと向かう。
「とりっきーえっじ!」
 すでに範囲攻撃で傷ついていたソーンへと、エクシルは先端が反った片手剣を使って相手を攪乱して棒立ちにさせる。
 そうなれば、仲間にとって好機。
 2度、炸裂弾をソーンの群れへと投擲したアウラだったが、その後は仲間を巻き込むようレンジを合わせてスキルを切り替え、次なる攻撃に出る。カノンもまた魔弾へと攻撃手段を変え、ソーンを攻め立てていく。
 サバールズは確かに面倒な相手だが、リーダー以外であればイレギュラーズに力量劣るアッシラ隊でも問題なく倒せる程度。
 文字化けは互いが立ち回るオアシスで、自身の体の一部を伸ばして。
『サボテンなら 血じゃなく 水が 流れる かな?』
 鋭い針のようなものを振るう文字化けの一撃に、ソーンの体から水が噴き出す。
 サボテンとしての体液は混じっていたものの、元々サボテンは砂漠を旅する者の給水を行うこともある。魔物となったサバールもそれは変わらないのだろう。
 ともあれ、全ての水を奪う魔物は討伐必須。
 文字化けは相手の体に傷を付けて体力が徐々に減っていくのを確認し、ソーンへとさらに黒い触手の様なもので切り付ける。
 文字化けが見事にそいつを仕留めたそばでは、ドールズマスターであるハルツフィーネが操作したテディベアが猛攻を仕掛けていた。
 とっこー隊長のつもりでハルツフィーネが前に出すクマさんことテディベアはセイクリッド・クマさん・フォームで全身を輝かせ、長く伸ばした爪で広域の敵を薙ぎ払う。
 徐々に乱戦模様となり、ハルツフィーネはクマさんに威嚇のポーズをとらせてピンポイントでソーンを狙い始めるが、その頃にはクマさんの全身に棘が刺さっていた。
 だが、ハルツフィーネは体力が減っているのを敢えて相手に見せつけて。
「見てください。クマさんのおててにトゲが刺さって、カッコ良さと攻撃力がアップです」
 体力が減れば、それだけクマさんの力が高まる。
 ハルツフィーネは一気に勝負をかけ、棘を射出してくる敵へと一層強く圧をかける。
 仲間達の攻撃も重なり、限界を迎えたソーンは水飛沫を上げて倒れてしまった。


 イレギュラーズとアッシラ隊+じぇい君の2班に大きく分かれ、サバールズの殲滅に当たっているが、敵からすればその区分けは関係ないらしい。
 とりわけ、引付が遅れたフォンテインがしばらく猛威を振るう。
 なかなか前線へと出てこず、遠距離から水を放射してくることの多かった敵に、イレギュラーズもアッシラ隊も撃ち抜かれてしまう。
 フシュウウウウウウ!!
 それがリーダーと合わせて引きつけることになるエイラにとって、大きな負担となる。
「エイラがかばってるうちにぃ、回復してもらってねぇ」
 思った以上に負傷が激しいこともあり、エイラは水に入りつつ敵を抑えるが、やはり苦しい。
 放たれた砲撃が強く彼女を打ち付け、体力を奪い尽くされてしまう。
 ハルツフィーネも奮戦してはいたが、抑えのエイラがいなくなったことで攻撃が集中する。
 フォンテインによる放射を浴びるクマさんは力の限り敵を威圧するのだが……。
 フシュウウウウウウウ!!
 飛びかかったリーダーの棘を全身に受けてしまい、ハルツフィーネはクマさん共々この場から姿を消してしまう。
 仲間達が倒れてしまう状況もあり、エクシルは仲間の体力に注力する。
 じぇい君もフォンテインが好き勝手やっていることもあり、敵陣深くへと歩を進める。
 アッシラ隊もまたこれ以上やらせるわけにはいかぬと、タンクを見事に切り裂き、フォンテインの討伐に取り掛かり始めていた。
 無論、イレギュラーズとて、手をこまねいてはいない。ソーンはまだ6体残っていたが、最初の範囲攻撃でかなり疲弊していたようだ。
 エイラやハルツフィーネが倒れる前後、文字化けが黒く鋭い針でソーンを貫いて仕留めていて。
「リーダーの水噴射は危険ですね」
 カノンは現状フリーになっていたリーダーの攻撃に気を付けながら、魔弾カスタムを放ってその体を穿つ。
 その1体が沈む間、レンゴクが更なる1体のソーンを業火に包む。
 その火力は彼が事前に宣言していた通り。他の個体がまだオアシスに転がっているにも関わらず、ソーンは半身を灰と化してしまっていた。
「本当はこいつらも生物として、当然の事をやっていただけだろうに……」
 倒れ行くサバールズを、アウラが憐れむ。
 仮想空間とはいえ、混沌を模した事もあり、魔物達も自己防衛や繁殖といった生存本能のままに生きていたことだろう。
「でも、こっちにも事情があるんでね。恨むんじゃないよ」
 アウラはライフルでの狙撃を続けるが、ここまで残っているソーンはしぶとい。
 そこに戻ってきたエイラがくらげ火を飛ばすと、ソーンは残る体力ごと命を燃え上がらせた。
「……退くっすよ!」
 不利を悟った最後のソーンは一度後方へと退く素振りを見せる。
 だが、同じく戦線に戻ったハルツフィーネがその背目掛けてクマさんに指示を出す。
「サボテンさん達に罪はありませんが……これもまた生存競争です」
 トドメと放つクマさんビームは相手が反撃として飛ばす棘を考慮しての一撃だったが、敵は水を噴き上げて崩れ落ちていった。

 アッシラ隊とじぇい君は順調にフォンテインの討伐を進める。
 あちらこちらから噴射される水もあり、思うように動けぬ双子をじぇい君が庇って。
「大丈夫?」
 戸惑いながらも、双子はじぇい君の呼びかけに頷く。
 リーダーによる統制が断たれ、バラバラに動いていたサバールを確実に減らしていく。
 そして、イレギュラーズも残るリーダーに戦力を集中させて。
「だいぶ弱っているようですね」
 魔弾で相手を撃ち抜くカノンが言うように、リーダーの能力はかなり高いが、配下を失えばそれも十全には活かせない。
 金の魔眼を光らせたエイラがリーダーの注意を引き付ければ、敵も至近距離から水を噴射してエイラを倒そうと躍起になっていたようだ。
『サボテン型モンスター 水を吸わせるな って 婆 言ってた』
 狙うは根元。維管束を潰すように攻撃すれば、水の吸い上げを妨害できる。
 伸ばした鋭い針を大きく薙ぎ払い、敵の根本を大きく切り裂いた文字化け。
 態勢を崩しかけた敵はなおも踏み留まる。
「5mとはサボテンというより樹に近いですね……」
 タンクも相当だったが、リーダーも中々の給水量がある。
「しかしクマさんの心は10……いえ、100mはあるので問題ありません」
 内面は圧倒的に自身のテディベアが上だとハルツフィーネは疑わず、力強く相手のプレッシャーを与えていく。
 ボロボロになったリーダー。見れば、フォンテインも総崩れとなっている。じぇい君はかなり疲弊していたが、アッシラ隊の勢いもあって殲滅は時間の問題だ。
 フ、フシュ……。
 こんなはずはと言わんばかりに退路を探すリーダーだが、正面はエイラやハルツフィーネ、文字化けが陣取る。
 そして、カノンやレンゴクも回り込んでいて。
「逃がさねェぞゴルァ、絶対ぇ倒(もや)す!」
 確実に仕留めるべく炎を燃え上がらせたレンゴクは相手の側面から業火を浴びせかけた。
 フシュ、シュ……。
 ついに力果てたリーダーは前のめりに倒れ、オアシスの水底へと沈んでいく。
 程なく、じぇい君が仕込み刃で切り裂いた最後のフォンテインが名前の通りに水を噴き上げて倒れたのだった。


 オアシス内にいた敵は殲滅したが、イレギュラーズの中には気を抜かずに対処を続けていて。
「討ち漏らしが居たら相当不味い相手ですし……」
 この場の人手を活かし、打ち漏らした魔物がいないか捜索を行うカノンは、持ち前の技能を活かして助力する。
 また、レンゴクらはオアシス内に転がる魔物の死骸の撤去を進めるのだが、その際泳げないレンゴクは深い場所へと沈んだ魔物の回収に当たり、入水に抵抗があるのか身震いしてしまっていた。

 作業を終えて。
 文字化けはエルミーツの街で、店舗や露店に並ぶ絨毯を眺める。
「評判の 絨毯 お土産に 欲しい いくら?」
 オアシスを救った者達だと知れ渡っていたようで、店主は値引きもしてくれた。
 その傍を、アッシラらと行動するじぇい君が通り過ぎる。
 暗殺術を修めた少女達もやっぱり女の子。衣服や羽織、絨毯や寝具、小物等、可愛い品がないかと物色する。
 そんな彼女達へとじぇい君が勧めたのは小物。お揃いのポーチを手に取り、双子は初めてほのかに微笑んで見せたのだった。

成否

成功

MVP

レンゴク(p3x009744)
炎獄の聲

状態異常

ハルツフィーネ(p3x001701)[死亡]
闘神
エイラ(p3x008595)[死亡]
水底に揺蕩う月の花

あとがき

 リプレイ公開です。
 MVPはリーダーを討伐した貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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