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シナリオ詳細

駆け出し冒険者キータは見た

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●なんてことのない日常が大切だったと気が付くとき
「あーあ、つまらねえな~」
 そうつぶやいた男の名はキータ。
 イレギュラーズたちのように、人々のため、世界のために役に立とうと修行を重ねる駆け出しの冒険者だが、……イマイチ真面目さと集中力に欠ける男だ。
 今日も今日とて幻想(レガド・イルシオン)の何の変哲もない町の警備員(町の入り口に立っているだけ)のぱっとしないお仕事をこなしている。
 なにごともなく既定の時間が過ぎ、交代の声がかけられる。
 休憩時間。
 宿舎には戻らずに欠伸をかみ殺しながら町をうろうろしていると、キータは、何やら黒ずくめの男たちの集団と出くわした。
(おっ、なんだ? 怪しいやつらだな)
 この季節でもコートである。
 依頼主である町の領主は、「何か異変があれば報告するように」と言っていた……ような気がする。ような気がするが、今は休憩時間であることだし、それになにより、キータは好奇心と無駄な行動力だけは人一倍くらいあった。
 ぶらぶらと歩いている風を装ってあとをついていくと、何やら男たちは馬車に乗り込んでいく。積み荷を覗こうとしたが、人がやって来たので、慌てて隠れる。
「よくぞまあこれだけの魔物を集めたものだ……」
「ククク、これを町中に放てば大騒ぎでしょう」
「この”氷の召喚精霊”がいれば、あのいけ好かない領主にも一泡吹かせてやれるというものだ!」
(ま、魔物?)
 布の被せてある積み荷は、なにやらうごめいている。そっとめくると、巨大な二足歩行をするような氷の魔物が、彫像のように突っ立っていた。
 ぞっとした。
 早くここを出て、このことを伝えなくては……。
 しかしそうこうしているうちに、馬車は走り出してしまった。

●馬車の中
(まずいぞ)
 首尾よく空の檻の積み荷に隠れたキータは恐ろしい事に気が付いた。
 魔物の影響なのだろう。ここはすごく寒い。
……ロクに身体が動かない。震える手で何かないかと探すと、黒づくめの男たちのものらしい目録がみつかった。
 ペンはある。何か書いて、これを馬車の外から放り出せば……。
 かじかんだ手ではうまくは書けないが、放り出せば……誰か気が付いてくれるだろうか?
 いや、目的地にさえつけば、隙を見て逃げ出すこともできるに違いないが、それでも、手がかりは多いほうが良い。

●特殊倉庫
「目録はどこにやったかな」
 かくして、馬車は目的地へとたどり着いた。そこは港湾にほど近い貨物倉庫。
 氷で冷やされた、本来であれば生鮮食品を扱うための特殊な倉庫である。
「たわけが」
「どっかに控えがあるだろう。それよりもこの兵士たちを、早くお披露目したいものだ、ククク……」
「いちにい、おや、一体多いような?」
「ぞっとするようなことを言わんでくださいよ、ボス。真夏だって言うのに」
「ははは」
 キイ、と、分厚い倉庫の扉は閉ざされた。
 キータはすでに気を失っている。
 キータを助ける道はない。
 ……誰かが、これに気が付いてくれない限りは。

GMコメント

●目標
・氷の召喚精霊の討伐
・キータの救出(ついで)

●状況
 イレギュラーズたちは、ローレットにおいて、魔術に用いられる「氷の核」が盗まれたという事件を解決する任務を受けていて、それについて調査しているところ。
 材料が悪用されていれば、正しく破壊することになる。すなわち、最終的には氷の召喚精霊を討伐しなくてはならない。
 盗まれた核は15個。

 メモを見てもしくはメモを拾った者たちを見て、異変に気が付く……はず。

●場所
特殊冷凍倉庫
 とても寒い倉庫。
 コートを着込んだ黒ずくめの男たちがいる。
 積み荷が多く積んであり、うち一つにキータがヘンなポーズで氷漬けになっている。

 この情報は、何かしらの調査か聞き込みが必要だろう。

●登場
黒ずくめの男×2
 領地のかく乱を狙う男たち。二人だが「ボス」と呼んでいる。
 ノッポとチビの好対照で、チビがボス。
 「氷の核」を盗み出した。
 もともとは商売絡みで領主を逆恨みしており、一泡吹かせたいという動機で行動している。
 戦闘能力はなく、場で「いけ! 氷の精霊たちよ!」とけしかけるのみ。
 
氷の召喚精霊×15
 どんな暑さにも溶けない氷を核とした魔物。
 大きさは2mほどで、動きはそう素早くはない。
 遠距離からツララを飛ばしてくる、近距離で巨体で殴り掛かるなどの攻撃を行う。
 氷の召喚精霊の攻撃は【凍結】、【氷結】、【氷漬】をランダムで引き起こす。また、氷の召喚精霊は【凍結】、【氷結】、【氷漬】を受けない。
 炎には弱く、破壊後は核とともに水たまりとなる。

 一応、精霊は黒づくめの男たちには攻撃しないが、別に忠誠心があるわけではないので、彼らを捕縛しても自動的に動き続ける。破壊するまで動きは止めないだろう。

●キータのメモ(倉庫まで3枚のメモが道なりに落ちている)

1枚目:
 事件。
 黒ずくめの男、氷の精霊たくさん、住民を襲わせる計画
 この紙を見たものは、
 至急ローレットに知らせたし。キータ

2枚目:
 貨物は20箱くらい、うち精霊15?
 ほかの貨物は果物、野菜

3枚目:
 ここはどこだ
 汽笛が聞こえる……
 たすけて

  • 駆け出し冒険者キータは見た完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月15日 20時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
主人=公(p3p000578)
ハム子
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
ルフト=Y=アルゼンタム(p3p004511)

リプレイ

●奪われた核
「氷の核を大量に盗んで、何に使う心算なのか……」
『終焉語り』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984) は思案する。
「魔術の触媒ですし、碌な事で無いのは確かでしょうけど」
「魔術の触媒の盗難……となると大方の目的は絞れますね」
『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397) は切れ長の目を伏せる。
「そんなリスクを負って手に入れるのなら、売買目的でない限りは所謂悪用以外に無いでしょう」
 同族が悪用される可能性のある事態に、『慈愛の恩恵』ポテト チップ(p3p000294) は難しい表情を見せる。
 無表情に見えるのは、憤りをどう表せばいいかわからないからだ。
「騎士の誇りにかけて悪事を滅する!」
 悪用、と聞いてはりきっているのは『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442) だ。
「うん、人助けだね」
『ハム子』主人=公(p3p000578)もまた、人助けするにやぶさかではない。

「魔術、でございましたか。わたくしの出身世界ではファンタジーな概念でしたので、実に興味深いですわね。わたくし自身が扱えている事にも驚きを隠せないばかりです」
『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774) は好奇心に目を輝かせ、小さな氷の核を眺める。
「氷の核……どこなんだろ……」
『魔動機仕掛けの好奇心』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188) のメモには、聞き出した情報がこと細かに書き込まれている。
「だいたい、このくらいの大きさか」
  ルフト=Y=アルゼンタム(p3p004511) は、氷の核の大きさと、運ぶのに使われる入れ物について確認する。
「ってことは、荷物にすると人が運べる量じゃないんだね」
 チャロロの言葉に、ルフトが頷く。
「ああ、そのあたりから調べればよさそうだ」

●調査開始!
 街を行き交う交易品を運ぶ馬車を、アリシスはちらりと見る。
(『犯人』達は、即座に事を起こさない限り街に潜伏するのはリスクが勝ち過ぎますから、恐らくは街の外に運び出している公算が高いでしょうね)
 街から運び出したのならば、警備の兵に怪しまれないように堂々と街を出て行ったというのが妥当だろう。
 持ち出す荷物が多くかつ怪しまれないようにという事なら、他の荷物に混ぜて運び出すのが一番自然だ。
 そう、例えば荷馬車である。
(検問でもない限り全ての荷物を検めるなどする筈も無く、目録と幾つかを検めるだけで堂々と通れるでしょう)
 であれば……。
 調査をするべき場所は限られている。
 アリシスの慧眼は、事態を恐るべき正確さでとらえていた。

 イレギュラーズたちは、手分けをして調査にあたることとなった。

(これだけの事をしたのだから、何かしら人目についている筈)
 リースリットは、まずは氷の核を保管していた施設の周辺へと足を向ける。
 といっても、話を聞く相手は街の住人ではなく、施設周辺の植物と精霊だ。
 施設の隅にいた小さな精霊は、異常な冷気について語り、寒さを思い出したように身を震わせる。
「こちらですね……」
 精霊が示す道は、街道へと、そして外へと続いている。

「捜査パートってやつだね」
 公はアリシスと街の出入り口の近く、大通りに面した店の人間に聞き込みをする。
 ちょうど窃盗のあった時刻に、大きい馬車が通っていったという証言を得る。

「ローレットからきたんだけど、怪しい奴とか見てないか教えてくれるかな?」
 チャロロが警備員に声をかける。
「この辺りで盗みがあってな」
 チャロロの言葉を、ルフトが補足する。
 警備員たちも快く協力の要請に応じる。
 どうやら、馬車が通ったのは間違いないようだ。
「なるほど。ありがとう。できれば交替前の者からも話を聞きたいのだが」
「わかった。おい、キータはどこ行った?」
 聞き覚えのある男の名に、ルフトは眉をあげた。
 居場所を聞くが、どうにも見当たらないらしい。
「アイツか。また厄介事かもな」
「また危ない目に遭っていたりしないだろうか? 心配だな」
 リゲルとルフトは顔を見合わせる。
 キータは、何かと色々引き起こす人物だ。

「リースリット様によりますと、このあたりに向かったのは間違いがないとのこと。行方を追うのでしたら、ここは精霊に尋ねるのが手っ取り早いような気が致します。この状況で氷の精霊は珍しいでしょうし」
「ああ。私も植物や精霊に聞き込みをしてみようと思う」
 街道へとやってきたエリザベスとポテトは、精霊や動植物に話しかける。
「ちょっとそこ行く精霊様、キミかわうぃーねー、お茶しない?」
(変わったやり方だな……)
 まるでナンパのような誘い方だ。何々、と集まってきた軽いノリの精霊たちが、ぺちゃくちゃとおしゃべりをする。
 ポテトは少し離れたところで、植物のささやきに耳を傾けた。
 急いで走って行った馬車。冷気の気配。
「あっそう言えばね! 変な紙が落ちてるんだよ……」
 エリザベスに話しかけていた精霊がそう言うと、ポテトが話しかけていた植物の一部が「ここだ」と示すようにそよいだ。
 ポテトとエリザベスは、奇妙な紙を拾い上げる。
 それは、まぎれもない手がかりだ。
(盗品の追跡は時間との勝負でございます)
 エリザベスが指を鳴らし、ペットを呼び出した。

●馬車を追え!
 エリザベスの電子妖精が、街で聞き込みをしていたイレギュラーズたちの前へと現れる。一度集合、という運びになり、入り口で合流して情報を共有する。
「……そうか、良くやったな!」
 リゲルがポテトの頭を優しく撫でる。
「リゲルたちもキータに関する情報と地図、お疲れ様」
 くすぐったそうに笑み、ポテトもまたリゲルの髪を撫でた。
「何かわかった?」
「こちらをご覧ください」
 尋ねる公に、エリザベスは紙切れを差し出す。
「これは……」
「ええ、追いかける必要がありそうです」
「移動手段なら任せてくれ」
 イレギュラーズたちはルフトの馬車に乗り込む。
 鍛え上げられた軍馬の隣に、リゲルが愛馬アルタイルをつなぐ。首筋を撫でてやると、アルタイルは主人の期待に応えるように顔を手のひらに擦り付けた。
 ルフトの馬車は、通常の馬車よりも遥かに身軽に街道を駆けてゆく。
「荷馬車等を使うなら主要街道を外れる事も無いでしょう」
 アリシアの言葉に、ルフトは頷く。
(何れにせよ、追跡時も手がかりを探し続ける必要はありますけれど)
「氷の核を抱えている以上、移動先は街からそこまで長時間の移動が必要な距離とは考え難い………馬車等を使うにしてもです」
 リースリットは冷静に分析を重ねる。
「故に、そんな荷物を抱えての移動なら整備された街道を外れるのは考え難い。尚且つ保管するなら冷凍保管の可能な施設の可能性が高い……。条件に合致する物件がそうそうある筈も無し、ある程度目星はつけやすいかもしれませんね」
 だから、探すのは街道に限定されるのだ。
「しかし、道が分かれているな」
「こっちだ」
 ポテトがすばやく断言する。精霊たちが、そう囁いた。
「そうみたいだな」
 ルフトが頷く。ルフトには植物の声が聞こえる。
「待って、メモがある」
 発車しそうになったところで、公が呼び止める。そこに落ちていたのは、2枚目のメモ。リゲルが拾い上げ、頷く。
「「村周辺の倉庫」だな。よし……」
 ……着実に近づいている手ごたえがあった。
「盗品が敵の制御下、もしくは暴走状態にあった場合、戦闘になるでしょう」
 エリザベスの言葉に、一同は気を引き締める。

 しばらく馬車を走らせると、港湾の町についた。
「3枚目、あったよ!」
 入り口でチャロロが目ざとくメモを見つける。
「ここならば港の倉庫、だ。間違いない」
「ええ。おそらく街からの輸送物として倉庫に収めている筈でしょうから」
「この辺りに、冷蔵の食品を保管する場所はあるか?」
「た、たくさんありますが……」
「たぶん、あれ」
 公が断言した。透視により、建物の中を覗き見て、不自然な荷物の倉庫を見つけた。
「うん、反応あり!」
 チャロロの人助けセンサーが反応する。
「かなり大きい? そして戦場は倉庫? ふ~む……数からしても、囲まれたくはないですわね」
 エリザベスは、敵の位置を『温度視覚』で把握した。
「15体、きっちりですね」
「マスターキーを貸してくれると助かるな」
 公の言葉に管理人は頷き、慌てて鍵を持ってくる。
「なるほど、あれか……」
 ポテトは精霊たちの話で、中にいるキータの位置を判断する。
(戦闘になったときにキータに被害が行かないようにな……)

●戦いの火蓋は切って落とされた
「ちい、嗅ぎつけられたか!」
 倉庫の中には二人の男たちがいる。
 素早く動いた精霊の一体が、両腕からイレギュラーズたちにつららを飛ばした。
 一つはルフトに、もう一つはチャロロの方へと一直線に跳んでいく。
「立ち止まらないぞ!」
 チャロロは波濤の盾をかざしながら、勇ましく敵陣へ踏み出していく。
 まとわりつく氷も、冷気も、チャロロをひるませる理由にはならない。
 ルフトは素早く攻撃を受け止めながら、後衛へと移り、返しざまに『蒼華氷刃』を振るう。氷の塊よりも洗練され、鋭く輝く刃がきらめき、一体の精霊の姿勢を崩す。
 攻撃に割り込もうと氷の巨体が突進してくるが、心得ているとばかり、ポテトが前衛へと進んで立ちふさがった。
「通さない」

 チャロロが予め張っていた保護結界により、つららは荷物のコンテナや壁ではじけ飛ぶ。

 リゲルは軽く倉庫を見渡し、見当をつける。
(積み荷があるのは……ポテトの言う通り、あの辺りか)
 避けられるはずの攻撃を、リゲルはあえて受け止める。戦場を誘導し、キータへの巻き込みを少しでも減らすためだ。
 ギフトの光輝が、鎧を輝かせる。
「如何なる冷気であろうと、俺の闘志の炎は消えはしない、悪いが君達を破壊させてもらう」
 力強い宣言が、辺りに響き渡る。
 無機質に動き回る精霊に、騎士の言葉など理解はできていないだろう。ただ動く者に反応し、拳を振り上げ、前線で突出したリゲルへと向かう。
 氷のつぶての反射が、なおいっそうまぶしかった。

「オイラの炎で溶かしてやる!」
 チャロロはリゲルに群がる精霊たちに、ブロッキングバッシュを仕掛ける。
 重い拳が振り下ろされるが、勢いで押し切る。焔式で燃え上がる精霊は、炎にあてられ、ものすごい勢いで身を縮めていく。
 氷の刃が身を削る。

 相手の数は15体。それと、……戦力にはならないだろう人間が2体。

 氷塊飛び交う戦闘の中で、アリシスの狙いは精霊ではない。二人の首謀者たちだ。告死天使の聖衣がたなびき、二人の行く手を遮る。
 正確無比に放たれるアリシスの威嚇術の威力は、ノッポの方を気絶させるに足りた。
「ええい! 使えない部下だ……やってしまえ!」
 もう一人が氷の精霊を盾に、倉庫の奥へと逃れようとする。
「む? 小さい方がボスだったのか」
 ルフトが小さな小男の姿を見送る。
 追いかけようとするが、精霊の数が多い。
 まずはそちらが先決か。
 アリシスは標的を変え、今度は殺傷力のある魔力撃をぶつける。
「行きますよ」
 リースリットが美しい構えでオーラソードを構え、氷の精霊の一体を、フレイムバスターで焼き払った。
 耐え兼ね、氷の精霊の一体が蒸発する。振り向きざま、美しい銀髪が揺れる。さらに、リースリットは素早く刃を返し、もう一体に致命傷を負わせる。

「もう少し右、でございますかね」
 エリザベスは喧騒に紛れ、ひょいひょいと氷を避けながら、荷物の隙間に身を隠す。配置からして、あのあたりがちょうどよさそうだ。
 激戦区からはぐれた2体の精霊が、エリザベスを追うように向かっていく。
「通さないよ」
 しかし、SCRを構えた公がそれを阻止する。
 身を凍りつかせそうな冷気も、サイキックメイルを纏う公の前では完膚なきまでに意味をなさない。
 公のパイロキネシスにより、精霊の一体にヒビが入った。反撃で負った怪我を、ルフトのライトヒールが即座に癒した。

●乱戦、氷の精霊
 戦闘は徐々に混戦する。
 再び、リースリットが1体を仕留めた。まだ原形を保っていた精霊が、一撃でがらがらと崩れ落ちる。
 アリシスは男たちを気にしながらも、接近してきた氷の精霊に至近距離から魔力撃を放つ。
「君達に勝機があるとすれば、只一つ。団結し、束になってかかってくることだ!」
 リゲルの勇ましい口上に、精霊たちが群がる。
 血が流れ、動きが鈍る。だが、これはチャンスだ。
 多い程いい。
『針鼠』による反撃が、迂闊に振れる精霊たちを傷つける。
 相手が体勢を崩したところで、さらに畳みかける。
 戦鬼暴風陣。厄災の如く、辺り一帯を薙ぎ払う。
「やった!」
 チャロロは喜びの声をあげる。
 だが、その瞬間に敵の反撃が一気に群がる。リゲルは崩れ落ちるが、膝はつかない。パンドラの使用によって、即座に戦線に復帰する。……新たに大きな炎を纏って。
「済まないな。実は炎を操ることもできるのさ」
 振り向きざまに、『紅焔剣』を振るう。太陽の炎を纏わせし光が、無傷の一体を焼き払う。さらに精霊が群がってくるが……。
「こっちが相手だよ!」
 今度は、チャロロが名乗りを上げる。盾を持つ手に、力を籠める。

 敵が一直線に並んだ。
 エリザベスは、その瞬間を逃さない。
(『魔砲』の餌食ですわ)
『愚者』のカードが宙に浮かび上がる。エリザベスの恐ろしいまでに研ぎ澄まされた大技が、冗談のように。塵も残さずに敵を消し飛ばした。
 まるで何もかも嘘のように、倉庫は無傷だ。
 あと、5体。

「ひい……!」
 あれだけいた精霊たちは、三分の一へと減っていた。逃れようとするもう一人の男へ、名乗り口上をあげたルフトの遠術が飛んでいく。
 鼻先をぎりぎりかすめていったそれは、わざと外されたものだ。
 ルフトを狙う精霊を、公はSCRの陰から神秘攻撃で妨害する。
 男を、アリシスが戦乙女の槍の柄を振るい、素早く昏倒させる。ルフトが蹴戦を食らわせ、ひっかけて転ばせると、ロープでぐるぐる巻きにした。
 アリシスは近場にいた精霊を、魔力撃で葬り去る。

 猛攻。
 リゲルとポテトに向かう精霊を、チャロロが素早く庇った。
 氷のつぶては、チャロロの銀色の髪にくっついたまま。それでも勇ましく戦線に斬り込んでいく。倒れかけたチャロロは、パンドラの力をもって、勇ましく立ち上がる。
 ポテトのメガ・ヒールが傷を癒す。
 互いに礼を言い、再び敵へと向き直る。

 1体、また1体。

 最後の精霊が、地面に崩れ落ちる。
 意思はないだろう、痛みも、おそらく。
 召喚精霊たちに罪はない。
 その最期ををポテトはじっと見据えていた。

●あたたかい
「うん、みんな無事だったね」
 公はプレイ・パンドラ・ポータブルで、自分の状態を確かめる。
「あとはキータさんの救助ですね」
 リースリットはキータの方を見る。
「それにしましても、氷漬けになってこの酷暑を乗り切ろうとするとは、なかなか斬新な方法でございますわね」
 エリザベスは氷像と化しているキータをコンコンと叩いてみる。不思議なポーズで凍りついている。
「ポーズもなかなか前衛的……これは是非記録しておかねば」
「いや、死んじゃうよ!」
 そう言ってスケッチブックを取り出すが、チャロロら仲間に制止される。

 眠い……。
 このまま、眠ってしまいたい。
 そう思っていたところで、ハイテレパスによる公の声がキータの脳裏に響き渡る。
”寝るなー、寝たら死ぬぞー。キミのおかげで事件は未然に防げたんだぞー”
「……はっ!」
 かろうじて目を覚ますと、目の前にはイレギュラーズたちの姿があった。

「その勇気はすごいけど、とんだ災難だったね……」
 チャロロは、持っていた木の枝にギフトのコアの種火で火を灯し、簡易的なたき火をしてやった。リゲルが温めた湯をかけて、氷を払ってやる。
 ルフトが寝袋にキータを突っ込んでやると、体温が戻ってくるようだ。
「あったけえ……」
 この天気で凍えているキータを通行人は不思議そうに眺めている。
「寒い場所にいたんだ。しっかりあったまろう」
 ポテトから、全員にココアが差し出される。
 湯気の立つココアが体に染みる。
「しかし残念です。ええ……」
(何が!?)
 エリザベスはココアを飲みつつ、まだ記録に残せなかったことに未練がありそうだ。
「キータは今回も大変な目に遭ったけど頑張ったな。お疲れ様」
「へっ、ありがとう……なんもできなかったけどよ」
 ポテトの言葉に、キータは皮肉げに答える。
 どうやら多少いじけているようだ。
「キータの情報のお陰で助かったよ。有難うな」
 リゲルは屈託のない笑顔を見せる。まっすぐな言葉が、凍りついた言葉を溶かしていく。
「勇気と蛮勇は違うがその行動力は称賛に値する」
 ルフトはポンと優しくキータの背を叩き、小声でそっと付け加える。
「あとは自分の身を守れれば文句なしだが、よくやった。お手柄だな」
 思いのほか素直に褒められて、じわじわと言葉がしみていく。
「実は……何時の日か、剣を交えて共闘できないかと楽しみにしているんだ。だから早く元気になるんだぞっ!」
 寝袋からずっと鼻をすする音がした。

 こうして、イレギュラーズたちの依頼は、成功をおさめた。
 男たちには、法の裁きが下されることだろう。

成否

成功

MVP

アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン

状態異常

なし

あとがき

夏場の中の冷凍依頼、お疲れ様でした!
キータも無事に救出されました。
ありがとうございました。
一時は冒険心をくじかれそうになったキータですが、イレギュラーズたちの温かい言葉により、その好奇心は燃え尽きることはなかったようです。
また機会がございましたら、ご一緒出来れば幸いです。

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